以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
<光学系の概略>
図1は、本発明に係る平板状光学装置の一例であるマイクロレンズアレイを搭載した液晶表示装置を利用して構成された投影型の表示装置の一例である液晶プロジェクタにおける光学系の概略構成を示した図である。
液晶プロジェクタは、B(青),G(緑)、R(赤)の3色の何れかを処理対象とする各色用のモノクロ液晶パネルをB,R,Gの光路ごとに設けて構成した3板方式のカラー表示装置として構成されていて、標準的な15.6μmピッチ用の3板式透過型液晶プロジェクタ用に構成されている。
具体的には、液晶プロジェクタの光学系3は、照明光L0を出射する光源5と、図示しないスクリーン上を投写する投写光学系7と、光源5から出射された照明光L0を投写光学系7側に導く光学部材群9とを備えている。
光源5は、照明光L0を発する光源ランプ52を有するとともに、照明光L0の内の紫外線UV(UltraViolet rays)および赤外線IR(InfRared rays )を遮断し、可視光VL(Visible light )を透過させるUV/IRカットフィルタ54と、所定形状のレンズセルを配列してなる平板状光学装置(集合レンズ)の一例であるマルチレンズアレイ(MLA;Multi Lens Array)56とを光路上にこの順に有している。
光源ランプ52は、レジストレーションずれ防止のため(単板式の場合は混色防止も兼ねる)、高輝度の揃った白色平行光を発することが可能な、アーク長の短い光源とする。一例として、アーク長1.0mmのメタルハライドランプあるいは短アーク水銀高圧ランプ(UHP;Ultra High Performance)を使用する。後述するように、本実施形態の光学系では、インテグレータレンズや偏光変換素子などの複雑な光学系を用いており、これらの性能を十分引き出すためには、光源はできるだけ理想的な点光源に近いものが望ましい。この点、UHPランプは、従来使われてきたメタルハライドランプに比較しアーク長を約1/2に抑えることができ、高輝度・高性能の液晶プロジェクタ光学系の高効率化を図る上で好ましい。この光源ランプ52から発せられた照明光L0をUV/IRカットフィルタ54に透過させることで、B,G,Rの各色成分光LB,LG,LRでなる可視光成分(白色光)L1のみがマルチレンズアレイ56に入射する。
投写光学系7は、B,G,R各色用の液晶パネル1枚に向けて、B,G,Rの各色成分光LB,LG,LRをB,G,Rの各色の液晶パネル上に導き得るように、B,G,Rの各色成分光LB,LG,LRをそれぞれ取り込む入射部72B,72G,72Rと、入射部72B,72G,72Rで取り込んだ各色成分光LR,LG,LBを略同一の光路に合成して出射端79aから出射するクロスプリズム79と、液晶表示部76から出射されクロスプリズム79で合成された各色の光を図示しないスクリーン上に投写する投写レンズ80とを備えている。
出射端79aから出射された各色成分光LB,LR,LGは、投写レンズ80で集光されスクリーン上にて色合成される。後述するように、本実施形態では、対向基板130に設けられるマイクロレンズを長焦点距離にすることで、出射側光線の広がり角を小さくできるようにするので、クロスプリズム79からの出射光をすべてカバーするためには、投写レンズ80のF値は、従来マイクロレンズ用に使用した投写レンズのF値よりも大きくできる。一例として、投写レンズ80のFナンバーはF1.7とすることができる。
入射部72B,72G,72Rは、それぞれカラートリミングコートが施されたフィールドレンズ74と、液晶表示部76と、液晶表示部76の光路上の両側に配された偏光板77,78とを備えている。
液晶表示部76は、光スイッチ素子として薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor )を使用した液晶パネル110と、液晶パネル110上に設けられたカバーガラス120と、透明基板の表面に1次元または2次元に配列した複数の屈折率分布型マイクロレンズを有するベース基板に透明カバー基板を貼り合わせた構造の平板レンズアレイを備えた対向基板130とを備えている。液晶表示部76は、液晶パネル110が偏光板77を挟んでクロスプリズム79側となり、対向基板130が偏光板78を挟んでフィールドレンズ74側となるように配されている。
光学部材群9は、光源5から出射されUV/IRカットフィルタ54およびマルチレンズアレイ56を透過した可視光成分L1(LB,LR,LG)を反射するミラー212と、ミラー212で反射された可視光成分L1(LB,LR,LG)を透過させる光学部材群220とを備えている。
また光学部材群9は、光学部材群220を透過した可視光成分L1(LB,LR,LG)の内の青色成分光LBを反射し、残りの赤色成分光LRおよび緑色成分光LGを透過させるダイクロイックミラー(DM)232と、ダイクロイックミラー232で反射した青色成分光LBを入射部72Bに向けて反射させることで入射部72Bの液晶表示部76に所定の入射光発散角にて入射させるミラー214を備えている。
また光学部材群9は、ダイクロイックミラー232を透過した赤色成分光LRおよび緑色成分光LGの内の赤色成分光LRを入射部72Rに向けて反射させることで入射部72Rの液晶表示部76に所定の入射光発散角にて入射させるとともに、緑色成分光LGを透過させるダイクロイックミラー(DM)234を備えている。
マルチレンズアレイ56、ミラー212、および光学部材群220とで、導光照明部が構成されるようになっている。すなわち、先ずマルチレンズアレイ56はX方向にm個およびY方向にn個の凸レンズ型のレンズセル56aを透明基板56b上に有しており光分割部(フライアイ)として機能する。具体的には、光源ランプ52から出射されUV/IRカットフィルタ54を透過した可視光成分L1(LB,LR,LG)を、X方向にm分割およびY方向にn分割して合計m*n本の可視光成分L1としてミラー212側に出力する。一例として、フライアイ(すなわちレンズセル56a)のコマ数は、縦10個、横8個である。
光学部材群220は、光分割部として機能するマルチレンズアレイ56から出力されミラー212で反射したm*n本の可視光成分L1を集光してダイクロイックミラー232に導く。
このため、光学部材群220は所定形状のレンズセルを配列してなる平板状光学装置の一例であるマルチレンズアレイ(MLA)222と、偏光を利用して液晶パネルへの入射光の偏光を揃えるPS合成素子(PS偏光変換素子)224と、PS合成素子224を透過した可視光成分L1をダイクロイックミラー232の所定位置に導くコンデンサレンズ226とをこの順に、光路上においてマイクロレンズアレイ222がミラー212側となるように備えている。
マイクロレンズアレイ222は、X方向にm個およびY方向にn個の凸レンズ型のレンズセル222aを透明基板222b上に有しており光合成部として機能するもので、ミラー212で反射された合計m*n本の可視光成分L1を集光してPS合成素子224に導く。
すなわち、マイクロレンズアレイ222の凸レンズ型のレンズセル222aの配列間隔は、マイクロレンズアレイ56から出射されるm*n本の可視光成分L1の間隔と同一で、各凸レンズ型のレンズセル222aが各可視光成分L1の光軸上に設けられている。これにより、マイクロレンズアレイ56から出射されたm*n本の可視光成分L1は、マイクロレンズアレイ222によって一旦集光されてm*n個の2次光源(点光源)として整形されてから、コンデンサレンズ226に入射される。つまり、マイクロレンズアレイ222は、2次光源生成部の一例をなす。
PS合成素子224は、液晶パネルへの入射光の偏光を揃えることで、従来吸収されていた偏光の利用を図ることを目的に用いている。すなわち、液晶パネルは光源からの光のうち、ある一方の偏光を変調することにより画像を出力しているが、他方の偏光は利用されず偏光板に熱として吸収されてしまう。これに対してPS合成素子224を用いて液晶パネルへの入射光の偏光を揃えることで、従来吸収されていた偏光の利用を図る。
具体的には、PS合成素子224は、マイクロレンズアレイ222側にはPBS膜(Polarizing Beam splitter;偏光ビームスプリッタ)224aが形成され、コンデンサレンズ226側には所定間隔で1/2波長板224bが形成されている。マイクロレンズアレイ222からPS合成素子224に入射した光は、PBS膜224aでP波とS波に分離される。このうちP波は1/2波長板224bによって偏光面が90°回転させられ出射光はすべてS波に偏光面が揃えられる。この結果、液晶表示部76の液晶パネル110に入射する光はS偏光一成分となるため、従来熱として捨てられてきた光を照明として有効に使うことができるようになる。
コンデンサレンズ226は、マイクロレンズアレイ222で集光されPS合成素子224を透過した合計m*n本の可視光成分L1を合成して、ダイクロイックミラー232上の所定の照射領域に集光する。このとき、マイクロレンズアレイ222をなすm*n個の凸レンズ型のレンズセル222aの内の同一のものからから射出された可視光成分L1同士は、コンデンサレンズ226によりそれぞれ略平行光束となり、ダイクロイックミラー232上に導かれる。
ここで、マイクロレンズアレイ56とマイクロレンズアレイ222とで、インテグレータレンズを構成するようにしている。このような構成のインテグレータレンズを採用することにより、液晶パネルへの集光効率と周辺光量比の向上を図ることができる。すなわち、第1のインテグレータレンズ(ランプ側)であるマイクロレンズアレイ56の各レンズセル56aの像を第2のインテグレータレンズ(液晶側)であるマイクロレンズアレイ222とコンデンサーレンズ226とにより液晶表示面に結像させることで、光源ランプ52からの光を効率よく液晶表示面へ集めると同時に、レンズセル像の重合せにより照明むらを改善することができる。
また光学部材群9は、ダイクロイックミラー234を透過した緑色成分光LGを集光するリレーレンズ242と、リレーレンズ242を透過した緑色成分光LGを反射するミラー216と、ミラー216で反射した緑色成分光LGを集光するリレーレンズ244と、リレーレンズ242を透過した緑色成分光LGを入射部72Gに向けて反射させることで入射部72Gの液晶表示部76に所定の入射光発散角にて入射させるミラー218とを備えている。
なお、一例として、液晶表示部76B,76R,76Gに対する入射光発散角は、縦方向9°、横方向11°である。つまり、各色成分光LB,LR,LG用の液晶パネル110の画素の開口窓(画素電極)に集光される光量(実効開口率)を略±10゜の白色光源を用いる。従来のマイクロレンズを搭載したプロジェクタの入射光発散角は±10°程度であるのに対応して、現実的な入射光発散角としている。特許文献3に記載の仕組みでは、非現実的な入射光発散角±4°の光学系を想定しているのと、大きく異なる。
このような構成により、液晶プロジェクタの光学系3は、光源ランプ52から発せられた照明光L0の内の可視光成分L1(LB,LR,LG)を、マイクロレンズアレイ56,222、PS合成素子224、コンデンサレンズ226を透過させた後、2つのダイクロイックミラー232,234で各色成分光LB,LR,LGのそれぞれに色分解し、入射部72のフィールドレンズ74を経て、液晶表示部76の液晶パネル110面に均一照明を得るようにしている。
各色成分光LB,LR,LGは対向基板130に設けられた図示しないマイクロレンズにより液晶パネル110内の所定位置に集光され、液晶パネル110の各々対応する画素位置を通過する。このとき、与えられた画素信号に応じて液晶パネル110の図示しない画素電極への印加電圧が変化し、これに応じて図示しない液晶層中を通過する各色成分光LB,LR,LGの偏光方向が変調を受ける。
そして、液晶パネル110内でそれぞれ焦点を結んだB,R,Gの各色成分光LB,LR,LGは、液晶パネル110の裏面から出射し偏光板78を選択的に透過して、クロスプリズム79に入射し、クロスプリズム79で合成され、その出射端79aから出射して投写レンズ80によってスクリーン上にて変調度合いに応じて色合成される。
なお、クロスプリズム79は、たとえば液晶表示部76からの出射光を、緑はP波に、赤と青はS波に設計することで、同じダイクロイック膜でも緑の透過特性と赤・青の反射特性の波長域を広げることができ、その結果、ランプのスペクトルを広く利用することができる。
<液晶表示部の構成>
図2は、平板レンズアレイを有する対向基板130を用いた液晶表示部76の概念を示す断面図である。
液晶表示部76の液晶パネル110(TFT基板112)は、光スイッチング素子(液晶駆動素子)としてのTFT(薄膜トランジスタ)を配したTFT基板(画素基板)112と、ツイストネマチック液晶などの液晶材料でなる液晶層117と、透明電極でなる対向電極118とを備え、カバーガラス120表面の対向電極118とTFT基板112との間に液晶層117を狭持するように配されている。なお、単板式とする場合には、対向電極118のカバーガラス120側表面にR,G,Bの各色分離用の有機材料で形成されたカラーフィルタが配設される。
液晶表示部76の対向基板130は、ベース基板132と、規則的に並んで形成された多数のマイクロレンズ133を有する平板状光学装置としての平板レンズアレイ134と、集光側基板136とを備え、集光側基板136上にカバーガラス120が密着配置されている。
この対向基板130は、集光側基板136の表面にカバーガラス120を挟んで液晶パネル110が密着配設されており、液晶パネル110のTFT基板112に対する対向基板(レンズ内蔵型基板)として使用され、液晶表示部76としてマイクロレンズ付液晶表示パネルが構成されるようになっている。
TFT基板112は、光透過性の支持基板113と、支持基板113の片面側(図の光入射側)に透明電極でなる開口窓としての画素電極114と、これらの各画素電極114に対して画像信号に応じた電圧を印加することで液晶層117の光透過性を制御するスイッチング素子として機能するTFTなどからなるブラックマトリクス部115とが規則的に並んで形成されている。画素電極114とブラックマトリクス115とで光スイッチング層116が構成される。
平板レンズアレイ134のマイクロレンズ133のピッチPと、画素ピッチWDすなわち画素電極114の幅WD1とブラックマトリクス115の幅WD2との和が同じになるようにしつつ、開口部(画素電極114)とマイクロレンズ133の各中心C/Lが一致するように、液晶パネル110の画素1つ(1ドット)に対して1個のマイクロレンズ133が対向配置するように対向基板130上に搭載する。
液晶駆動素子としての各TFTには、たとえばアモルファスシリコン(a−Si)や多結晶シリコン(p−Si)などが用いられる。通常a−SiTFTには、多成分系無アルカリガラスが支持基板113として用いられ、p−Siには特に成膜時に高温を必要とするため、石英ガラスが支持基板113として用いられる。
図示を割愛するが、各TFTは、たとえばポリシリコンからなるゲート電極、ドレイン電極、およびソース電極を備えている。このうち、ゲート電極は、アドレス配線に接続され、ソース電極はデータ配線に接続され、ドレイン電極は各画素電極に接続される。対向電極118は、カバーガラス120の全面あるいは必要な領域(すなわち、少なくともTFT基板112の画素電極114と対向する領域)に形成された透明電極であり、一定の電位に固定されている。
そして、アドレス配線とデータ配線とによって選択された画素電極に画像信号電圧が選択的に印加されることによって、その画素電極114と対向電極118との間の液晶層117中の液晶分子の配向が変化し、ここを通過する光の偏光方向を変化(変調)させるようになっている。
液晶層117と、これを挟持するように両側に設けられている画素電極114およびブラックマトリクス115でなる一方の透明電極層および対向電極118である他方の透明電極層とで、集光用レンズとしてのマイクロレンズ133で集光された光が照射される照射層の一例である表示層119が構成されている。
一方、平板レンズアレイ134を形成するベース基板132や集光側基板136さらにはカバーガラス120の材料は、TFT基板112と同じ材料もしくは略同等の熱膨張係数を有する材料を用いることが、TFT基板112と対向基板130すなわちマイクロレンズ133との重ねズレ、すなわち画素と照明光との位置ズレをなくする上で好ましい。
また、平板レンズアレイ134を構成する各マイクロレンズ133は、たとえば蒲鉾型レンズとして形成されてもよいし、一般の球面状またはそれに近い曲面のレンズであってもよい。また、本実施形態では、マイクロレンズ133の光入射側を凸面とし出射側を平面としているが、これとは逆に、光入射側を平面とし出射側を凸面としてもよい。
たとえば、図示するように、略球面で接する屈折率の異なる2つの材料で平板レンズアレイ134を形成する場合においてマイクロレンズ133の光入射側を凸面とし出射側を平面とする場合には、ベース基板132側を低屈折率材料で形成し、集光側基板136側を高屈折率材料で形成し、その境界部分に多数の略球面形状部を形成することで、略球面形状部をマイクロレンズ133として形成することができる。
このような構成により、平板レンズアレイ134によって集光された照明光(本実施形態では青色成分光LB、赤色成分光LR、緑色成分光LGのそれぞれ)は、集光側基板136表面付近に位置する画素電極114を効率よく透過する。
<光学系の光学常数の特徴点>
ここで、本実施形態では、画素開口部上すなわち画素電極114上に焦点を結ばないように光学系3の光学常数を設定する点に特徴を有する。つまり、平板レンズアレイ134を形成する各マイクロレンズ133の焦点距離fを、画素電極114すなわち開口窓上またはその近傍ではなく、マイクロレンズ133の主点位置(主平面の位置)Hから液晶パネル110までの距離よりも長くして支持基板113の内部の深い所に設定する点に特徴を有する。
たとえば画素電極114とマイクロレンズ133の主点位置Hとの距離よりもマイクロレンズ133の焦点距離fを大きく設定する。なお、焦点距離fは、マイクロレンズ133の主点位置Hから焦点位置F0までの距離であって、空気換算値すなわち空気中の焦点距離とする。
一例として、マイクロレンズ133の主点位置Hからカバーガラス120の液晶パネル110側表面までの光学距離(空気換算値)Tsよりも焦点距離f(波長550nm、空気中)を大きく設定する。ここで、光学距離(空気換算値)Tsは、マイクロレンズ133の主点位置Hからカバーガラス120の液晶パネル110側表面までの厚み(実効距離)をTsub 、マイクロレンズ133の主点位置Hから液晶パネル110表面(つまり表示層119表面)までの媒体の屈折率をnsub (空気中の可視光の中心波長550nmでの値)としたとき、下記式(1)で定義されるものである。
また、マイクロレンズ133の主点位置Hから液晶パネル110表面(つまり表示層119表面)までが、厚みts1,ts2,…,tsk(それぞれ空気換算値)、厚みt1,t2,…,tk(それぞれ実効距離)のk個の層が存在し、それぞれの層の屈折率がn1,n2,…,nkである多層構造からなる場合には、光学距離(空気換算値)Tsは下記式(2)で定義されるものである。
従来の一般的な光学常数の設定では、画素位置、具体的には画素電極114上に焦点を結ぶように設定するが、これは実際の混色や輝度低下の防止を考慮したものと考えられる。しかし、マイクロレンズは必ずしも画素上に焦点を結ばなければならないものでもなく、混色については光源ランプのアーク長の短縮やダイクロイックミラーの分光特性を適切化することで現実的な対応は可能である。また、輝度低下についても、有効開口部(画素部)を光が透過すれば問題は生じないはずである。本実施形態の光学常数の設定は、この点に着目しているのであり、マイクロレンズの焦点位置を画素開口部(画素電極114)上ではなく画素基板(TFT基板112)内に設定したのである。
なお、マイクロレンズ133で集光された各色成分光LB,LR,LGが焦点F0を結ぶ前の未だ完全には収束していない集光度合いの低い状態でTFT基板112に入射すると、集光度合いによっては、画素上に投影される集光径(すなわち各色成分光LB,LR,LGが画素電極114を通過する位置での光束径)が隣接する画素にまで達し、隣接する画素の画素電極114にも入射してしまう可能性が生じる。
よって、本実施形態の仕組みを採用する場合においては、この隣接する画素への入射が生じないように、画素上に投影される集光径が、画素ピッチWDすなわち画素電極114の幅WD1とブラックマトリクス115の幅WD2との和を超えないようにすることが必要となる。
このように焦点距離fを長くすることにより、マイクロレンズ133で集光された各色成分光LB,LR,LGは焦点F0を結ぶ前の未だ完全には収束していない集光度合いの低い状態でTFT基板112における各々対応する画素位置、具体的には各画素電極114を通過して、TFT基板112の内部で焦点F0を結ぶようになる。各色成分光LB,LR,LGを確実に各画素位置を通過させつつ、画素位置での集光度合いを低く抑えることで、輝度低下を防止しつつ、液晶パネル110を構成するの有機材料の耐光性寿命を確実に改善することができ、プロジェクションTVなどの品質向上に寄与できる。
加えて、焦点距離fを長くすることによって、レンズ形状を浅くできるので技術的に作製し易くなる。よって、高歩留まり、低コスト化が可能になる。また、樹脂の屈折率が低いものが使用でき、樹脂の選択がし易くなり、高寿命樹脂、低コスト樹脂などを使用し易くなる。
また、長焦点距離にすることで、出射側光線の広がり角を小さくでき、光が蹴られることなくすべての光が有効に利用されるようになり、スクリーン上に投影された画像に輝度むらや色むらが生ずる虞れが少なくなる。
さらに、従来マイクロレンズ用に使用した投写レンズのF値よりも大きくできる、すなわち有効径が小さく暗いレンズ系にでき、かつ蹴られが生ずることがないので、液晶表示装置の構成要素のうちコスト比率の大きい投写レンズとして、製作コストの安いF値の大きいレンズを使用することができる。投写レンズの設計がし易くなり、装置全体としての低価格化にも寄与できる。
なお、特許文献2には、本実施形態の光学系3の構成と同様に、マイクロレンズアレイを構成する各マイクロレンズの焦点距離をマイクロレンズアレイと画素基板との距離よりも長く設定し、各マイクロレンズで集光された光が画素基板における各々対応する画素電極を透過して画素基板の内部で焦点を結ぶように設定することで、焦点距離を相対的に小さくすることに起因する出射側光線の広がり角とそれによる蹴られと、これに基づくスクリーン上での輝度むらや色むらの問題や、製作難易度やコストの問題を解消しようとしている。
しかしながら、液晶表示部76の有機材料である液晶層117の耐光性寿命の問題を確実に解消できる光学定数については一切の開示がなく、その問題の認識もなされていなかったといえる。したがって、特許文献2に記載の仕組みを用いたとしても、液晶表示部76の有機材料である液晶層117の耐光性寿命の問題を解消すること保証することができない。
<光学常数の設定手法>
以下、マイクロレンズ133の焦点位置をTFT基板112の画素電極114上またはその近傍ではなく、より深い位置に設定するための光学系3の光学常数の具体的な設定手法について詳細に説明する。
図3は、マイクロレンズあり/なしにおけるTFT画素開口部での光強度分布の状態の違いを示すシミュレーション図である。
ここで、図3(A)はマイクロレンズの主点からカバーガラス120のパネル表面までの光学距離(空気換算値)Ts=12μm、マイクロレンズ133の主点位置Hから液晶パネル110表面(つまり表示層119表面)までの媒体の屈折率nsub (空気中の可視光の中心波長550nmでの値)が3.3程度であって、焦点位置が略画素開口部面となるような焦点距離f(=40μm)の場合であり、図3(B)はマイクロレンズなしの場合である。
また、図4は、マイクロレンズありの場合であってマイクロレンズの主点からカバーガラスのパネル側表面までの光学距離(空気換算値)Ts=12μmにおけるTFT画素部での焦点距離f(=50μm,65μm,80μm)と光強度分布の関係を示すシミュレーション図である。
また、図5は、マイクロレンズの主点からカバーガラスのパネル表面までの光学距離Ts(空気換算値)はすべて12μm、屈折率nsub =3.3、と一定とした場合における焦点距離fと寿命係数との関係を示すシミュレーション図である。また図6は、寿命係数の定義を説明する図である。
図3(A)および図3(B)から分かるように、マイクロレンズなしの光強度分布(図3(B))は略均一だが、マイクロレンズありの光強度分布(図3(A))は中央が強く場所による差がみられる。すなわち、集光用レンズとしてのマイクロレンズ133を液晶表示部76の光入射面(すなわち画素開口面)側に搭載した場合(図3(A))、光強度はマイクロレンズ133の集光に起因して強度分布が場所によって異なり、画素開口面における焦点位置に対応する部分(マイクロレンズ133の光軸中心に対応する部分)での強度が、マイクロレンズ133なしの表示パネル(図3(B))よりも強くなる。このようにマイクロレンズがある場合、実効開口率を上げようとすると、液晶表示パネルの寿命が短くなる。
ここで、図4(A)〜図4(C)から分かるように、光強度の最大値と焦点距離fとの間には一定の関係があり、図示した例では、焦点距離fが小さく焦点位置が画素開口面に近いほど分布における最大強度が大きくなり(たとえばf=50μm)、焦点距離fが大きく焦点位置が支持基板内になるほど分布における最大強度が小さくなり(たとえばf=65μm)、たとえば焦点距離fが80μmになると、概ねマイクロレンズなしの表示パネル(図3(B))と同等に、光強度分布は略均一になる。
つまり、焦点距離fが長くなれば、TFT開口部の光強度分布が略均一に近づいているので寿命を延ばすことができると考えられる。なお、焦点距離fを短くしても最大強度が小さくなると考えられるが、この場合には、合焦後の拡散角が大きくなり、蹴られが生じ、スクリーン上での輝度むらや色むらの問題や製作難易度やコストの問題があるので都合が悪い。
たとえば、図5において、横軸の焦点距離fはマイクロレンズ133の主点位置Hからビーム輝度が最大(MAX)になるところまでの距離であり、縦軸の寿命係数は、図6に示すような式で求めた数値である。ここで、マイクロレンズ(ML)133による有機材料の寿命係数(以下ML寿命係数という)は、スクリーン輝度一定条件においてのマイクロレンズなし/ありの寿命を比較した指標値である。
マイクロレンズなし/ありで、開口部(画素電極114)における集光度合いつまり光強度が異なり、その光強度(集光度合い)が強いほど寿命が短くなると考えてよい。よって、マイクロレンズなし/ありでの光強度(集光度合い)の比を取ることでML寿命係数を表わすことができる。具体的には、マイクロレンズ133なし品の平均光強度をA、マイクロレンズ133なし品の平均光強度以上の領域におけるマイクロレンズ133あり品の光強度平均値をBとすると、ML寿命係数は、下記式(3)のように、A/Bで定義することができる。
ここで、図5のシミュレーション結果から分かるように、焦点距離fを長くすることでML寿命係数が延びる傾向になる。ML寿命係数=1は、マイクロレンズ133なし寿命と同等であり、“1”に近い方が好ましい。特に画素ピッチが14μm以下の狭ピッチになると、マイクロレンズ133で集光(短焦点)し、寿命的にも悪くなる傾向になるので、焦点距離を長く設定する手法は特に有効であるといえる。本例では、ML寿命係数の観点では、焦点距離f=80μm程度以上にすることが好ましいといえる。
図7および図8は、図5でのシミュレーションにおけるものと同等の光学系において、マイクロレンズ133の焦点距離f(空気換算値)および光学距離Ts(空気換算値)と、ML寿命係数やマイクロレンズ133の集光効率(以下ML効率という)の関係を示したシミュレーション図である。
ここで、図7(A)は、ML効率分布を示す図、図7(B)は、ML寿命係数分布を示す図、図8は、図7の結果を受けて合成したML効率とML寿命係数との関係を示す図である。焦点距離fは、マイクロレンズ133の焦点距離であって、ここではマイクロレンズ133の主点位置Hからビーム輝度MAXになるところまでの光学距離である。
ここで、横軸のML効率は、マイクロレンズを搭載してない場合に対するマイクロレンズを搭載した場合の被測定点における輝度比で定義することができる。具体的には、同一な開口液晶表示パネルを用いて対向基板にマイクロレンズを搭載してない場合の光学系投影スクリーン上輝度に対する、対向基板にマイクロレンズを搭載した場合の同一光学系でのスクリーンの輝度の比である。
図8のシミュレーション結果から分かるように、ML効率を高くすることのできる焦点距離fと光学距離Tsの組合せの他に、ML効率が若干低下するものの、ML寿命係数を大きくしてより“1”に近くすることのできる焦点距離fと光学距離Tsの組合せも存在する。つまり、液晶パネル110の開口部分(画素電極114)に集光点を設定した場合のマイクロレンズの集光効率(ML効率MAX値)に対して、ML効率を犠牲にして若干落すことで、ML寿命係数を大幅に改善できるマイクロレンズの設計値があることが分かる。
たとえば、図中に一点鎖線で示す範囲Sok1は、シミュレーションのサンプル点S1〜S16のうち、ML効率最大値のものS0(ML寿命係数≒0.6,ML効率≒1.37)に対して、ML寿命係数を1.3倍程度以上、たとえばML寿命係数≒0.8以上を確保でき、かつML効率低下が10%程度以内、たとえばML効率≒1.23以上となるものの範囲を示している。ML効率の低下が10%程度であれば、実効開口率を向上させて、レンズアレイによる明るさ増大の効果を十分に発揮させることができる。点S14は、範囲Sok1において、ML寿命係数が最大(≒1)でかつML効率が最少のものである。
同様に、範囲Sok1の範囲内において、さらに図中に二点鎖線で示す範囲Sok2は、ML効率最大値のものS0に対して、ML寿命係数を1.4倍程度以上、たとえばML寿命係数≒0.85以上を確保でき、かつML効率低下が10%程度以内、たとえばML効率≒1.23以上となるものの範囲を示している。ML寿命係数を1.4倍程度以上とするので、たとえば範囲Sok1内の点S10が除外され、点S6,S13が概ね境界に位置する。
同様に、範囲Sok1を含み、さらに図中に点線で示す範囲Sok3は、ML効率最大値のものS0に対して、ML寿命係数を1.2倍程度以上、たとえばML寿命係数≒0.7以上を確保でき、かつML効率低下が10%程度以内、たとえばML効率≒1.23以上となるものの範囲を示している。ML寿命係数を1.2倍程度以上とするので、たとえば範囲Sok1外の点S4,S7が境界点となる。
図9は、図5でのシミュレーションにおけるものと同等の光学系において、シミュレーションにより求めた、マイクロレンズ133の焦点距離f(空気換算値)と、マイクロレンズ133の主点位置Hからカバーガラス120の液晶パネル110側表面までの光学距離Ts(空気換算値)の適正範囲を示す図である。
ここでは、焦点距離fおよび光学距離Tsをそれぞれマイクロレンズ133のピッチPで規格化し、Ts/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面において、各光学定数の適正範囲を示している。
なお、光学距離Tsub (実効距離)はマイクロレンズ133の主点位置Hから液晶パネル110表面(つまり表示層119表面)までの厚み、焦点距離fは、マイクロレンズ133の主点位置Hからビーム輝度MAXになるところまでの光学距離とする。
また、マイクロレンズ133のピッチPは、レンズ配列の仕方によって以下ように定義している。X方向のレンズ配列ピッチPx、Y方向のレンズ配列ピッチPyとしたときの、六方配列の場合のレンズピッチPは下記式(4−1)で定義され、四方配列の場合のレンズピッチPは下記式(4−2)で定義される。
また、先にも述べたように、マイクロレンズ133の主点位置Hから液晶パネル110表面までの媒体の屈折率をnsub としたとき、光学距離(空気換算値)Tsは式(1)で定義される。また、マイクロレンズ133の主点位置Hから液晶パネル110表面までが、厚みts1,ts2,…,tsk(それぞれ空気換算値)、厚みt1,t2,…,tk(それぞれ実効距離)のk個の層が存在し、それぞれの層の屈折率がn1,n2,…,nkである多層構造からなる場合には、光学距離(空気換算値)Tsは式(2)で定義される。
図9において、●印のG1(0.513,3.846),G2(0.513,4.487),G3(0.513,5.128),G4(0.513,5.769),G5(0.513,6.41),G6(0.962,6.41),G7(1.068,6.41),G8(1.282,6.41),G9(1.282,5.769),G10(1.282,5.128),G11(0.962,3.846)の各点で囲まれた範囲Gok1は、図8中に一点鎖線で示した範囲Sok1に対応して画定される範囲である。
たとえば、点S2からG1(0.513,3.846),点S5からG2(0.513,4.487),点S8からG3(0.513,5.128),点S11からG4(0.513,5.769),点S14からG5(0.513,6.41),点S6からG6(0.962,6.41),点S12からG7(1.068,6.41),点S16からG8(1.282,6.41),点S13からG9(1.282,5.769),点S10からG10(1.282,5.128),G11(0.962,3.846)をそれぞれ特定することができる。
G1〜G11の各点で示された折線の近傍内は、ML効率最大設計にしたときのML寿命よりも1.3倍程度以上長寿命を確保できる光学定数(光学パラメータ)の領域である。ただし、ML効率が若干(最大で約10%程度)落ちてしまう。
点G10,G11を結ぶ線分L1.3よりもTs/Pが小さくかつf/Pが大きい範囲(図中の⇒a側)が、ML効率最大設計にしたときのML寿命よりも1.3倍程度以上長寿命を確保できる範囲である。
先にも述べたように、図8中の点S14は、範囲Sok1においてML寿命係数が最大(≒1)でかつML効率が最少のものであるので、ML効率低下を10%程度以内に抑えるには、実際には、線分L1.3よりも⇒a側でかつ、点S14で特定可能な線分L0よりもTs/Pが大きくかつf/Pが小さい範囲(図中の⇒b側)内に光学定数(光学パラメータ)を設定することとなる。
ここで、線分L1.3よりも⇒a側でかつ線分L0よりも⇒b側の範囲内である限り、ML寿命係数を1.3倍程度以上かつML効率低下を10%程度以内に確保することができるが、実際には、設計のし易さやコストなどの観点から、Ts/Pやf/Pの取り得る範囲を規定する。
たとえば本実施形態では、焦点位置が略画素開口部面となるような距離(=40μm)よりも焦点距離fを長くすることで、ある程度の効率低下を犠牲にしつつ長寿命化を図ることを目的としているので、こういった点では、図7(A)のML効率分布を参照すれば、たとえば焦点距離fの下限は60ないし70μm程度にするのがよい。よって、f/Pの下限値は、ピッチP=15.6μmであるから3.846となる。
また、マイクロレンズ133の主点位置Hからカバーガラス120の液晶パネル110側表面までの光学距離Ts(空気換算値)を極端に短くすると、焦点距離f(空気換算値)も短くする必要が生じ、結果的には短焦点距離の光学系になるので都合が悪い。
また、図7(A)のML効率分布から分かるように、光学距離Tsの値に関わらずML効率低下を10%以内に留めようとする場合、焦点距離fの上限は100μm程度にするのがよい。よって、f/Pの上限値は、ピッチP=15.6μmであるから6.41となる。
また、光学距離Ts(空気換算値)を極端に短くする、すなわち薄くすることは、強度や製造上の問題もあり、ある程度の限界がある。こういった点では、現状では、光学距離Tsは8μm程度が限界である。よって、Ts/Pの下限値は、ピッチP=15.6μmであるから0.513となる。
また、マイクロレンズ133の主点位置Hからカバーガラス120の液晶パネル110側表面までの光学距離Ts(空気換算値)を極端に長くすると、焦点距離f(空気換算値)も長くする必要が生じ、光学系が大きくなりコストアップにもなるので、やはり都合が悪い。
また、図7(B)のML寿命係数分布から分かるように、光学距離Tsが大きくなると、ML寿命係数が焦点距離fの影響を大きく受け、ML寿命係数を、焦点距離fの値に関わらずある程度の値を維持するという点では、光学距離Tsをある程度の波にに留めておくことが望ましい。一例としては、焦点距離fの値に関わらずML寿命係数が0.78以上となるようにするには、20μm以下にするのがよい。よって、Ts/Pの上限値は、ピッチP=15.6μmであるから1.282となる。
このような観点から、図9中ではTs/Pの取り得る範囲を0.513〜1.282、f/Pの取り得る範囲を3.846〜6.41に設定している。
なお、Ts/P=0.513は焦点距離fに左右されない範囲で線分L0よりも⇒b側(ML効率低下10%程度以内)を規定するものであり、f/P=6.41は光学距離Tsに左右されない範囲で線分L0よりも⇒b側(ML効率低下10%程度以内)を規定するものである。
範囲Gok1の規定に際して、上記では点G1〜G11の各点を使用して、Ts/Pが0.513,1.282上の中間点、およびf/Pが3.846,6.41上の中間点をも範囲規定に使用しているが、直線で結ばれた範囲Gok1を規定しているので、中間点を範囲規定に使用する必要はなく、G1(0.513,3.846),G5(0.513,6.41),G8(1.282,6.41),G10(1.282,5.128),G11(0.962,3.846)の点をそれぞれ直線で結んで範囲Gok1を規定すればよい。
また、図8における二点鎖線で示した範囲Sok2に対応して、境界点S6,S13を利用して、たとえば点S6から点G12(1.068,4.98),点S13からG13(0.962,4.32),G14(0.854,3.846)を特定したとき、点G9,点G12,点G13,点G14をほぼ結ぶ直線L1.4よりもTs/Pが小さくかつf/Pが大きい範囲(図中の⇒c側)が、ML効率最大設計にしたときのML寿命よりも1.4倍程度以上長寿命を確保できる範囲である。
実際には、ML効率低下を10%程度以内に抑えつつ1.4倍程度以上長寿命を確保するとともに、設計のし易さやコストなどの観点も考慮して、範囲Gok1のうち、線分L1.4より⇒c側となる範囲Gok2内に光学定数(光学パラメータ)を設定する。
範囲Gok2の規定に際して、上記では点G1〜G9,G12〜G14の各点を使用して、Ts/Pが0.513,1.282上の中間点、およびf/Pが3.846,6.41上の中間点などをも範囲規定に使用しているが、直線で結ばれた範囲Gok2を規定しているので、中間点を範囲規定に使用する必要はなく、G1(0.513,3.846),G5(0.513,6.41),G8(1.282,6.41),G9(1.282,5.769),G14(0.854,3.846)の点をそれぞれ直線で結んで範囲Gok2を規定すればよい。
同様に、図8における点線で示した範囲Sok3に対応して、境界点S4,S7を利用して、点S7からG15(1.282,4.487),点S4から点G16(1.282,3.846),点S7からG17(1.10,3.846)を特定したとき、点S4で特定可能な線分L1.2よりもTs/Pが小さくかつf/Pが大きい範囲(図中の⇒d側)が、ML効率最大設計にしたときのML寿命よりも1.2倍程度以上長寿命を確保できる範囲である。
実際には、ML効率低下を10%程度以内に抑えつつ1.2倍程度以上長寿命を確保するとともに、設計のし易さやコストなどの観点も考慮して、範囲Gok1の延長線となるように、Ts/Pの取り得る範囲を0.513〜1.282、f/Pの取り得る範囲を3.846〜6.41に設定するので、点G10,点G15,点G16を結ぶ線分L1.2aよりもTs/Pが小さくかつG11,点G17,点G16を結ぶ線分L1.2bよりもf/Pが大きい範囲Gok3(図中の⇒e側)内に光学定数(光学パラメータ)を設定する。
範囲Gok3の規定に際して、上記では点G1〜G10,G15〜G17の各点を使用して、Ts/Pが0.513,1.282上の中間点、およびf/Pが3.846,6.41上の中間点をも範囲規定に使用しているが、直線で結ばれた範囲Gok3を規定しているので、中間点を範囲規定に使用する必要はなく、G1(0.513,3.846),G5(0.513,6.41),G8(1.282,6.41),G16(1.282,3.846)の点をそれぞれ直線で結んで範囲Gok3を規定すればよい。
以上説明したように、集光効率だけでなくパネル寿命をも考慮して、マイクロレンズ133のピッチPで規格化した焦点距離fと、マイクロレンズ133のピッチPで規格化した光学距離Ts(空気換算値)、つまりカバーガラス120の液晶パネル110側表面までの光学距離Tsub (実効距離)およびその屈折率nsub の関係を規定することで、画素開口部に集光して有効に利用して高い実効開口率を実現するとともに、液晶パネル110が使用している有機材料の耐光性寿命を確実に長くすることができる。
今後の高画質化の流れの中で、ポリシリコンを用いたTFTを前提として画素ピッチを20μm以下程度まで高精細化しようとする場合には、マイクロレンズで集光(短焦点)する度合いが強くなるので、従来の仕組みでは、寿命的にも益々悪くなる傾向になる。
これに対して、本実施形態の定数設定手法は、実効開口率の向上と有機材料の耐光性寿命を確実に長くすることができる長寿命平板状光学装置を実現でき、このような問題点を解決し得る点で極めて有効なものであり、今後一層厳しくなるであろう高精細化の要求にも十分対応可能である。
<特許文献3に記載の設定範囲との差について>
図10は、本実施形態の光学定数の設定範囲と特許文献3に記載の光学定数の設定範囲とを比較した図である。
特許文献3でも、本実施形態の光学系3の構成と同様に、光学定数の範囲を限定している。しかしながら、その設定範囲は、対向基板側にマイクロレンズを搭載し明るさが最大値(Max)になるように、平板レンズアレイそのものを液晶表示素子の対向電極基板として用い、マイクロレンズの主平面とブラックマトリクスあるいは画素電極部分が存在する平面との間の距離とマイクロレンズの焦点距離とを最適化することで、実効開口率を向上させて、レンズアレイによる明るさ増大の効果を最大限に発揮させようとするものである。
つまり、この特許文献3に記載の仕組みでは、実効開口率の向上に際して明るさしか考慮されておらず、その規定範囲では、画素上に焦点を結ばない長焦点距離側の定数範囲および短焦点距離側の定数範囲を含んでいるとはいうものの、(Tsub /nsub )/Ppとf/pとが同じ値を結ぶ線分Lmax 近傍をも含んでいるので、マイクロレンズアレイ形成面から表示層表面までの距離がマイクロレンズの焦点距離に略等しくなり、この線Lmax 近傍の光学定数を有するものは画素開口部での集光効率が最大となるものも含まれてしまう。よって、カラーフィルタや液晶層などの有機材料部分内で集光され得る範囲を含んでおり、有機材料の耐光性寿命を確実に長くするということを保証できない。
これに対して、図10から分かるように、本実施形態の定数設定の範囲は特許文献3に記載の設定範囲と異なり、マイクロレンズアレイ形成面から表示層表面までの距離がマイクロレンズの焦点距離に略等しくなる定数を含まず、かつ、長焦点距離側に範囲を設定している。この違いは、入射光発散角の違い(本実施形態では±10°程度,特許文献3では±4°)の影響もあるが、それよりも、本実施形態がML効率とML寿命係数との双方から光学定数を規定していることによるものが大きい。入射光発散角の影響による光学定数の範囲の違いがあっても、本実施形態の定数設定の範囲とすることで、効率と寿命の双方を確実に満足させることができる。
すなわち、本実施形態の定数設定の範囲では、ML効率とML寿命係数とを用いて、実効開口率と有機材料の耐光性寿命の両面から光学定数(焦点距離fと光学距離Ts)の範囲を規定しているので、実効開口率を向上させて、レンズアレイによる明るさ増大の効果をできるだけ発揮させつつ、有機材料の耐光性寿命を確実に長くすることができる。
<平板レンズアレイの他の構造例>
図11は、上記実施形態を適用した長寿命平板状光学装置における、マイクロレンズ形状の変形例を説明する図である。
上記実施形態では、平板レンズアレイ134のマイクロレンズ133を形成するに当たり、略球面で接する屈折率の異なる2つの材料を用いて、図11(A)に示すように、球面レンズとしていが、これに限らず、たとえば、図11(A)に示すような回転楕円体および回転双曲面の非球面、または図11(A)に示すようなフレネルレンズなど、様々な形態を採用することができる。
球面レンズは、加工の面で有利である。また、焦点距離最短となる曲率半径がドット寸法に規制されてしまうため、レンズ界面での屈折率差が充分に確保されてなければ、短焦点は難しいが、長寿命マイクロレンズは長焦点側に長寿命の傾向があるため、球面レンズでも効果を出すことができる。
一方、非球面(回転楕円体および回転双曲面)、フレネルレンズは形状を任意に設定できるので、球面レンズと同等以上の効果を出すことができる。
また、図11(B)および図11(C)に示した変形例に限らず、たとえば、表面に1次元または2次元に配列した複数の屈折率分布型マイクロレンズを有するベース基板に透明カバー基板としての集光側基板を貼り合わせてマイクロレンズを屈折率分布型マイクロレンズとする構造を採用することもできる。また、表面に1次元または2次元に配列した略球面状の複数の凹部を配列した複数の高屈折率材料充填型マイクロレンズを有するガラス製(たとえば石英ガラス)のベース基板に、このベース基板の屈折率より屈折率が高い透明材料を凹部に充填し、ガラス製(たとえば石英ガラス)の透明カバー基板としての集光側基板を透明材料を挟み込むように貼り合わせてマイクロレンズを高屈折率材料充填型マイクロレンズとする構造を採用することもできる。
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
また、上記の実施形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の発明を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
たとえば、上記実施形態では、液晶層と、開口部および液晶層の開口部における光透過性の光透過性を制御する光スイッチング素子としてのTFTが形成された光スイッチング層とを有する液晶パネルを被照射体の一例として説明したが、これに限らず、所定形状の開口部とこの開口部の光透過性を制御する光スイッチング素子とを有するものであればどのようなものであってもよい。もちろん光スイッチング素子もTFTに限らず、その他の光学変調素子を使用できる。
3…光学系、5…光源、7…投写レンズ、9…光学部材群、72…入射部、74…フィールドレンズ、76…液晶表示部、77,78…偏光板、79…クロスプリズム、79a…出射端、110…液晶パネル、112…TFT基板、113…支持基板、114…画素電極、115…ブラックマトリクス、116…光スイッチング層、117…液晶層、118…対向電極、119…表示層、120…カバーガラス、130…対向基板、132…ベース基板、133…マイクロレンズ、134…平板レンズアレイ、136…集光側基板、212,214,216,218…ミラー、220…光学部材群、222…マイクロレンズアレイ、232…ダイクロイックミラー,242,244…リレーレンズ、L0…照明光、L1…可視光成分、LB…青色成分光、LG…緑色成分光、LR…赤色成分光