JP2006167782A - 缶用素材鋼板の冷間圧延方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 圧延ロールの磨耗が進行してもロールと鋼板間の摩擦係数を適切な範囲に維持することのできる圧延ロール、また、タンダム式冷間圧延機のすべてのスタンドに適用できる圧延ロールを提供し、さらには、当該圧延ロールを使用して、表面性状の良好な缶用素材鋼板を安定して製造することのできる冷間圧延方法を提供すること。
【解決手段】 ロール表面に円形の穴を複数有し、当該穴縁の総長密度が0.6〜3.1mm/mm2、穴の周囲の盛り上がり部の高さが5μm以下である冷間圧延用ロールを用いて、トータル圧下率が80〜94%の冷間圧延を行うことを特徴とする缶用素材鋼板の冷間圧延方法。
【選択図】 図2
Description
加えて、近年においては薄手化軽量化による輸送コストや輸送エネルギーの削減のため、また、飲料缶の場合には軽量化による携帯性やハンドリング性の向上を望む消費者ニーズに応えるべく、鋼板の薄手化・硬質化が指向されており、いまや標準的なもので200μm、薄いものでは100μm程度の板厚が求められている。
このため、圧延ロールにより、美麗な表面性状を付与するとともに所定の圧下率で板厚を圧下減少する工程を担う冷間圧延方法の改善が産業界において強く望まれている。
すなわち、缶用素材鋼板の冷間圧延においては、その薄さゆえに圧下率が極めて高いという特徴を有し、これが缶用素材鋼板の冷間圧延プロセスに内在する種々の技術的課題の最大の原因となる。
例えば、必要な摩擦係数を下回るとロールスリップによるスリップ疵が生じ、一方、摩擦係数が過大になるとロールや鋼板からの金属粉が発生しやすく、これが巻き込み疵の原因となる。これらの傷の発生は、美麗な表面性状が要求される缶用素材鋼板にとっては致命的な問題である。
また、当該傷の発生を未然に防ぐべくロール交換を実施するが、寿命の短い圧延ロールおよびこれに伴う頻繁なロール交換作業は、コスト削減を阻害するのみならず、生産性を阻害する要因となる。
しかも、この適正な摩擦係数の範囲は、圧下率が高くなるほど狭小する傾向にあるため、圧下率の高い缶用素材鋼板の冷間圧延においては、ますます適正な摩擦係数を確保すること、およびこれを維持することが重要となる。
また、レーザーパルスでロール表面に多数の穴を開けて、その周囲の盛り上がり(リム)により鋼板との摩擦係数を調整する方法もある(例えば、特許文献1参照)。これは、ロールの耐磨耗性の向上を図るためにロール表面にレーザー照射して、外径D:50〜200μm、深さd:5〜20μm程度の穴をピッチP:1.5〜2.5Dの間隔で規則的に加工したダルロールを用いる方法であり、リムの高さが大きいと圧延油の流入挙動にも影響を与えて摩擦係数を増加させるというものである。
しかし、この摩擦係数を確保する役割を担うリムは、最も圧延荷重を受ける部分であるため圧延の進行とともにすぐに磨耗してしまい、これによりロールと鋼板間の摩擦係数が変化して、安定して冷間圧延を実施することができなかった。
また、当該リムが鋼板に転写されて生じる痕跡は、美麗性の要求される缶用素材鋼板の表面性状に影響を与えるおそれがあるため、このダルロールはタンデム式圧延機の最終スタンド以外の前段スタンドにのみ適用され、鋼板の表面性状に最も影響を与える最終段スタンドに適用することはできなかった。
また、タンダム式冷間圧延機のすべてのスタンドに適用できる圧延ロール、すなわち、スタンド間でのロール互換性に優れ、生産設備の効率化ひいてはコスト削減に資する圧延ロールを提供することである。
さらには、当該圧延ロールを使用して、表面性状の良好な缶用素材鋼板を安定して製造することのできる冷間圧延方法を提供することである。
なお、缶用素材鋼板とは、容器材料に用いられる鋼板であり、代表的なものとしては、ぶりきやティンフリースチール(TFS)、その他、Ni系めっき鋼板等がある。
(A)ロール表面に所定の深さを有する穴を複数設け、当該穴縁の総長密度を調整することにより摩擦係数を最適な範囲に設定できること。これは、穴縁の総長密度が摩擦係数に比例するという知見に基づくものである。そして、当該穴縁の総長密度を0.6〜3.1mm/mm2にするのが望ましいこと。
また、前記穴の形状を、深さ方向に均一な断面積を有する形状に加工することが困難である場合には、ロール表面から所定の深さにいたるまでの穴の直径の変化量が少なければ、摩擦係数の変化も抑制できることから、ロールと鋼板間の摩擦係数の変化を抑制できること。そして、ロール表面から10μm以上の深さにわたって穴の直径が30μm以上の部分を有すれば、ロールと鋼板間の摩擦係数の変化を抑制できること。
さらに、穴の加工方法によっては穴の周囲に盛り上がり(リム)が形成される場合があるが、リムが存在するとリムが磨耗することによって摩擦係数が変化してしまうので、リムを形成しないように穴を加工することが望ましいこと。ただし、リム高さが5μm以下ならば許容される範囲であること。
(D)前記穴の直径を30〜160μm、穴のピッチを300〜600μmとすれば、鋼板の表面性状を確保でき、タンダム式冷間圧延機のすべてのスタンドに適用可能なこと。
また、前記リムが形成されると、リムが鋼板に転写されて生じる痕跡が鋼板の表面性状に影響を与えるおそれがあるので、リムを形成しないように穴を加工することが望ましいこと。ただし、リム高さが5μm以下ならば許容される範囲であること。
(1)ロール表面に円形の穴を複数有し、当該穴縁の総長密度が0.6〜3.1mm/mm2、穴の周囲の盛り上がり部の高さが5μm以下である冷間圧延用ロールを用いて、トータル圧下率が80〜94%の冷間圧延を行うことを特徴とする缶用素材鋼板の冷間圧延方法。
(2)前記冷間圧延用ロールの穴の直径が30〜160μm、穴のピッチが300〜600μmであることを特徴とする前記(1)に記載の缶用素材鋼板の冷間圧延方法。
(4)前記(3)に記載の冷間圧延用ロールの穴の直径が30〜160μm、穴のピッチが300〜600μmであることを特徴とする前記(3)に記載の冷間圧延方法。
(6)穴の直径が30〜160μm、穴のピッチが300〜600μmであることを特徴とする前記(5)に記載の冷間圧延用ロール。
(7)鋼板表面に表面が平滑な凸状円形の突起を有し、前記突起の円形の直径が30〜160μm、突起のピッチが300〜600μm、突起の周囲長の総長密度が0.6〜3.1mm/mm2、突起の高さが1μm以下で、鋼板の板厚が500μm以下で有ることを特徴とする冷延鋼板。
(B)また、本発明の圧延ロールの表面が鋼板に転写されても、美麗性を要求される缶用素材鋼板の表面性状に影響を与えるような痕跡が残らないので、従来方法では実現できなかったタンダム式冷間圧延機のすべてのスタンドに当該圧延ロールを適用することができる。すなわち、スタンド間でのロール互換性を図ることが可能となるから、ロールの加工条件が一定になりロールの加工効率が向上し、また、ロール保持本数を低減することができる。これは、生産設備の効率化ひいてはコスト削減に資するものであり、冷間圧延プロセス全体に与える経済的効果は極めて大きい。
(C)さらには、当該圧延ロールを使用した本発明方法によれば、表面性状の良好な缶用素材鋼板を極めて安定して製造することができる。これは、製缶メーカのみならず、エンドユーザを含む社会的ニーズに適合するものであり、その社会的影響は極めて大きい。
最適な摩擦係数については、ぶりきやTFSなどの缶用素材鋼板の冷延圧下時の摩擦係数は圧延油の性状などでも変化するが、安定した冷間圧延を行うためには、その振れ幅は0.1程度の範囲に調整するのが適正である。これは、缶用素材鋼板の冷間圧延でのトータル圧下率が80〜94%と高いので板の圧延条件で変化するが、各スタンド内の圧下率が20〜40%程度である場合が多いことに起因するものである。
そして、最適な摩擦係数を確保するためには、ロール表面に所定の深さを有する穴を複数設け、当該穴縁の総長密度を調整することによって実現することができる。これは、本発明者が、ロール表面に開けた穴がどのように摩擦係数に影響を与えるのかについて解析したところ、冷間圧延中に鋼板表面が穴の中に食い込むので、主に穴開口部の円周部、すなわち穴縁において鋼板との摩擦を生じること、そして、当該穴縁の総長密度と摩擦係数は比例する関係になることを知見した結果に基づくものである。例えば、トータル圧下率が80〜94%の場合には、当該穴縁の総長密度を0.6〜3.1mm/mm2にするのが望ましい。なお、ここで穴縁の総長密度とは、単位面積あたりの穴縁の長さの和を意味する。
そのためには、前記穴の形状をなるべく円筒形にするのが望ましい。深さ方向に均一な断面積を有する形状にすれば、ロールが磨耗しても摩擦係数が変化しないことから最適範囲に設定した摩擦係数を維持し続けることができる。
また、前記穴の形状を、深さ方向に均一な断面積を有する形状に加工することが困難である場合には、ロール表面から所定の深さにいたるまでの穴の直径の変化量が少なければ摩擦係数の変化も抑制できることから、最適範囲に設定した摩擦係数を維持し続けることができる。例えば、ロール表面の穴の直径を基準とした場合、この直径が穴の底部にいたるまで変化しないことが最も望ましいが、ロール表面から10μm以上の深さにわたって穴の直径が30μm以上の部分を有すれば、ロールと鋼板間の摩擦係数の変化を抑制することができる。
さらに、穴の加工方法によっては、図2(a)に示すように穴の周囲に盛り上がり(リム)が形成される場合があるが、リムが存在するとリムが磨耗することによって摩擦係数が変化するので、リムを形成しないように穴を加工することが望ましい。ただし、リム高さが5μm以下ならば摩擦係数の変化による影響が少ないので許容される範囲である。
パルスレーザー法は、ロール表面から10μm以上の深さにわたって穴の直径が30μm以上の部分を有するように加工することができ、ロール磨耗による摩擦係数の変化を抑制することができるので、穴の形が半球状に近いフォトエッチング法に比べて有利である。
しかし、レーザー強度が高く、かつ単発照射により穴を開けようとすると図2(a)に示すように穴はクレータ状になり、穴の周囲の盛り上がり部の高さ(リム高さ)が5μmを超えてしまうので、レーザー強度や照射時間を適度に設定して穴を形成するのが望ましい。例えば、パルスレーザーの単発照射に必要な1パルス分のパルス幅を複数個に分割すれば、単発照射を複数回の照射にすることができるので、図2(b)に示すようにリムの形成ないしは穴の周囲の盛り上がり部の高さを低減することができる。なお、電子ビーム法や放電ダル加工法を使用する場合についても同様である。
なお、フォトエッチング法は、前記リムの形成ないしはリム高さを低減することができるので、この点においてはパルスレーザー法に比べて有利である。
なお、ロール寿命を延長すべくロール表面にクロムめっき等のめっき処理を施すロールもあるが、本発明においては、めっきを施さなくても十分にロール寿命を延長することができるので、めっきは不要である。
そのためには、前記穴の直径を30〜160μm、穴のピッチを300〜600μmにするのが望ましい。穴の直径が160μmを超える場合や穴のピッチが300μm未満では、圧延後の鋼板に痕跡が目立ち、すべてのスタンドに当該圧延ロールを適用することはできない。一方、穴の直径が30μm未満では、圧延中に異物が穴に入って穴を潰すおそれがある。
また、さらに好ましくは、前記穴の直径を150μm以下、穴のピッチを400μm以上にするのが望ましい。これにより、本発明の圧延ロールの表面が鋼板に転写されても、美麗性を要求される缶用素材鋼板の表面性状に影響を与えるような痕跡が残らないので、タンダム式冷間圧延機のすべてのスタンドに当該圧延ロールを適用することが可能となり、生産設備の効率化ひいてはコスト削減に資することができる。
さらには、前記リムが形成されると、リムが鋼板に転写されて生じる痕跡が鋼板の表面性状に影響を与えるおそれがあるので、リムを形成しないように穴を加工することが望ましい。ただし、リム高さが5μm以下ならば許容される範囲である。
C : Cは、多くなると硬くなりすぎるので、その上限を0.1%に限定した。
Si: Siは、JISG 3303のMR型のぶりきについては0.01%以下と規定されているが、連続焼鈍で軟質のぶりき及びTFS用原板を製造する際にはSiの多い方が好ましいので、その上限を0.05%とした。
Mn: Mnは、不可避的不純物のSが誘発する熱間脆性を防止する有効な成分であるから0.05%以上含有させる。また、過剰の含有は硬質化の原因となるので、その上限を0.4%にした。
solAl: solAlは、連続焼鈍低炭素アルミキルド鋼の硬さを低下させ、表面処理後の硬質化も低減する有効な成分であり0.01%以上含有させることが必要である。しかし、あまり多量に添加すると硬くなりすぎるので、その上限を0.1%とする。
N : Nは、熱延条件に関連して適当量のAlNとして析出し、これがC析出の核となり、固溶Cの低減を促進し鋼を軟質化する有効な成分である。しかし、Nが0.002%未満では熱延後析出するAlNが少なく、その効果を消失し、また、0.01%を超える過剰の含有は多量のAlNを析出し、かえって硬質化の原因となるので、その上限を0.01%とした。なお、低炭素リムドおよびキャップド鋼では、軟質化と調質圧延後の硬質化を軽減するために0.003%以下に抑えるのが望ましい。
実施例の条件を表1と表2に示す。表1は本実施例で使用した鋼成分を示すものであり、全5種類の低炭素アルミキルド鋼(板厚2〜3mm、板幅1058mm)を使用した。
また、表2は使用したロールの表面性状およびトータル圧下率の条件を示すものであり、表2に示す冷間圧延用ロールをタンデム式冷間圧延機(5スタンド)のすべてのスタンドに適用して缶用素材鋼板の冷間圧延を実施した。なお、潤滑剤はパーム油ベースの潤滑剤を使用している。
また、比較例は、穴の直径3、穴のピッチ、穴縁4の総長密度、穴の深さ5、穴の周囲の盛り上がり部の高さ6、トータル圧下率が本発明範囲から外れ、それ以外は前記した本発明例と同一条件である。
また、穴の直径3が本発明範囲より上方に外れる比較例2についても、鋼板表面への圧延痕が目立ち、これも缶用素材鋼板に要求される美麗性を満たさなかった。
また、圧下率が本発明範囲より下方に外れる比較例4については、圧延中にロールスリップが生じ、スリップ疵が発生した。
また、穴縁4の総長密度が本発明範囲より下方に外れる比較例6については、ロールと鋼板間のグリップ力の変化を低減できる摩擦係数を確保できず圧延中にロールスリップが生じ、スリップ疵が発生した。
穴の深さ5が本発明範囲より下方に外れる比較例5については、ロール交換頻度が大であった。
また、その凸状円形突起の周囲長11の総長密度を凸状円形突起の円形の直径10の計測値から計算すると、表2に記載した穴縁の総長密度に相当する値を確認できた。例えば、発明例1で得られた鋼板8における凸状円形突起9の周囲長11の総長密度は2.4mm/mm2、発明例2で得られた鋼板8における凸状円形突起9の周囲長11の総長密度は0.6mm/mm2であった。
さらに、これらの凸状円形突起の高さ12はいずれも1μm以下であり、鋼板の厚さはいずれも500μm以下である。
すなわち、鋼板表面に、表面が平滑な凸状円形の突起9を有し、その凸状円形突起の円形の直径10が30〜160μm、突起のピッチが300〜600μm、凸状円形突起の周囲長11の総長密度が0.6〜3.1mm/mm2、凸状円形突起の高さ12が1μm以下で有る鋼板の板厚が500μm以下である缶用素材鋼板8を得ることができた。
2 穴
3 穴の直径
4 穴の縁
5 穴の深さ
6 穴の周囲の盛り上がり部の高さ(リム高さ)
8 缶用素材鋼板
9 表面が平滑な凸状円形突起
10 凸状円形突起の直径
11 凸状円形突起の周囲長
12 凸状円形突起の高さ
Pl 穴のピッチ(周方向)
Pc 穴のピッチ(幅方向)
Claims (7)
- ロール表面に円形の穴を複数有し、当該穴縁の総長密度が0.6〜3.1mm/mm2、穴の周囲の盛り上がり部の高さが5μm以下である冷間圧延用ロールを用いて、トータル圧下率が80〜94%の冷間圧延を行うことを特徴とする缶用素材鋼板の冷間圧延方法。
- 前記冷間圧延用ロールの穴の直径が30〜160μm、穴のピッチが300〜600μmであることを特徴とする請求項1に記載の缶用素材鋼板の冷間圧延方法。
- ロール表面に円形の穴を複数有し、当該穴縁の総長密度が0.6〜3.1mm/mm2、穴の周囲の盛り上がり部の高さが5μm以下である冷間圧延用ロールを、タンデム式冷間圧延機のすべてのスタンドに適用して冷間圧延を行うことを特徴とする冷間圧延方法。
- 請求項3に記載の冷間圧延用ロールの穴の直径が30〜160μm、穴のピッチが300〜600μmであることを特徴とする請求項3に記載の冷間圧延方法。
- ロール表面に円形の穴を複数有し、当該穴縁の総長密度が0.6〜3.1mm/mm2、穴の周囲の盛り上がり部の高さが5μm以下、穴の直径が30μm以上の部分をロール表面から10μm以上有することを特徴とする冷間圧延用ロール。
- 穴の直径が30〜160μm、穴のピッチが300〜600μmであることを特徴とする請求項5に記載の冷間圧延用ロール。
- 鋼板表面に表面が平滑な凸状円形の突起を有し、前記突起の円形の直径が30〜160μm、突起のピッチが300〜600μm、突起の周囲長の総長密度が0.6〜3.1mm/mm2、突起の高さが1μm以下で、鋼板の板厚が500μm以下で有ることを特徴とする冷延鋼板。
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