JP2006161716A - コモンレール式燃料噴射装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ディーゼル車両に搭載されるコモンレール式燃料噴射装置のインジェクタは、常時リークによってエンジン停止中にコモンレール圧が低下するため、アイドルストップを実現することができず、アイドルストップは常時リークのないインジェクタが流動するのを待たねばならない。
【解決手段】 インジェクタ3からリークした燃料を燃料タンク11へ戻すリターン配管14に切替弁55を設け、この切替弁55を、エンジン停止時に閉弁し、エンジン再始動時に開弁する。これによって、エンジンの停止中にインジェクタ3に生じるリーク燃料が切替弁55の上流で蓄圧され、エンジンの停止中であってもコモンレール圧を高圧に維持できる。この結果、再始動を素早くスムーズに行うことができ、常時リークの発生しないタイプのインジェクタ3の流動を待たずとも、アイドルストップを実現することができる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、インジェクタに供給された高圧燃料の一部を常時低圧側へリークするタイプのインジェクタを搭載したコモンレール式燃料噴射装置に関する。
近年、自動車の燃費の向上要求および排出ガス量の低減要求が高まり、ディーゼルエンジンを搭載した車両(以下、ディーゼル車両)のアイドルストップも実用されようとしている。それに従い、ディーゼル車両に搭載されるコモンレール式燃料噴射装置に対する機能要求も明らかになってきた。
ディーゼル車両のアイドルストップを実現するには、再始動をスムーズに行う必要があるが、再始動をスムーズに行うためにはエンジンの停止中にコモンレール圧が低下する現象を防止する必要がある。
しかし、現在流動しているコモンレール式燃料噴射装置のインジェクタは、インジェクタに供給される高圧燃料の一部を常時低圧側へリークする構造である。このため、エンジン停止中は、コモンレールに蓄えられた高圧燃料がインジェクタを介して低圧側に常時リークする。その結果、再始動時にはコモンレール圧が低下して、再始動をスムーズに行うことが困難になる。
そこで、常時リークの発生しないタイプのインジェクタが望まれる。しかし、常時リークの発生しないタイプのインジェクタは、現在開発中であり、実際の流動までには数年を要する。
即ち、ディーゼル車両におけるアイドルストップの要求は高まっているものの、現在流動しているインジェクタでは常時リークによってアイドルストップを実現することができないため、常時リークの発生しないタイプのインジェクタの流動を待たねばならないという不具合がある。
特開平8−121281号公報
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、常時リークが発生するインジェクタであっても、簡単な構造の追加によりエンジン停止後の再始動をスムーズに行うことが可能なコモンレール式燃料噴射装置の提供にある。
〔請求項1の手段〕
請求項1の手段を採用するコモンレール式燃料噴射装置は、インジェクタからリークされた燃料を燃料タンクへ戻すリターン配管に設けた切替弁を、エンジンの停止時に閉弁し、エンジンの始動時に開弁するものである。
このように設けられることにより、エンジンの停止中にインジェクタからリークされた燃料が切替弁の上流で蓄圧されることになり、エンジン停止中にコモンレール圧がインジェクタの常時リークにより低下する現象を防ぐことができ、エンジンの停止中のコモンレール圧を高圧に維持することが可能になる。これによって、再始動時のエンジン始動を素早くスムーズに行うことができる。
また、コモンレールから供給される高圧燃料の一部を常時低圧側へリークする構造のインジェクタを用いても、リターン配管に切替弁を設け、その切替弁を切替制御するという簡単な構成を追加するだけで、エンジン停止後の再始動をスムーズに行うことができる。これによって、常時リークの発生しないタイプのインジェクタの流動を待たずとも、アイドルストップを実現することが可能になる。
〔請求項2の手段〕
請求項2の手段を採用するコモンレール式燃料噴射装置は、インジェクタが複数搭載される場合、リターン配管の共通路に切替弁を設けるものである。
このように設けることにより、インジェクタが複数搭載されていても、切替弁が1つで済み、構造を簡素化できる。
〔請求項3の手段〕
既存のインジェクタは、切替リーク燃料が電動弁のバルブ室を通って外部へ排出される構造になっている。しかし、これまではバルブ室が高圧になることが無いため、インジェクタの電動弁は高圧のコモンレール圧に耐える仕様にはなっていない。
ところが、請求項1、2の手段を用いて切替弁を閉弁することで、切替弁の上流側が高圧になる。すると、切替リーク排出路を介してバルブ室まで高圧になる。すると、バルブ室内をシールする部材(Oリング等)から燃料が漏れたり、高圧により電動弁の一部(ネジ部等)が破損するなどの不具合が懸念される。
請求項3の手段のコモンレール式燃料噴射装置は、切替リーク排出路に逆止弁を設けて、電動弁のバルブ室へ燃料が逆流するのを阻止するものである。
これによって、切替弁が閉弁されて切替弁の上流側が高圧になっても、バルブ室が高圧にならない。
この結果、切替弁が閉弁されて切替弁の上流側が高圧になっても、バルブ室は高圧にならないため、電動弁のシール部分から燃料が漏れたり、破損が生じる等の懸念を解消することができる。
〔請求項4の手段〕
請求項4の手段を採用するコモンレール式燃料噴射装置は、制御装置が切替弁を閉弁するタイミングがアイドルストップのためにエンジンのストップ動作に入る直前であり、制御装置が切替弁を開弁するタイミングがアイドルストップの状態からエンジンを再始動する直前のものである。
このように設けることで、アイドルストップを実現することができる。
最良の形態のコモンレール式燃料噴射装置は、燃料タンクに蓄えられた燃料を高圧に加圧して圧送する高圧ポンプと、この高圧ポンプの圧送した高圧燃料を蓄圧するコモンレールと、このコモンレールに蓄えられた高圧燃料を噴射するとともに、コモンレールから供給される高圧燃料の一部を常時低圧側へリークする構造のインジェクタと、このインジェクタからリークされた燃料を燃料タンクへ戻すリターン配管と、このリターン配管を開閉可能な切替弁と、エンジンの停止時に切替弁を閉弁し、エンジンの始動時に切替弁を開弁する制御装置とを具備するものである。
(実施例1の構成)
本発明をコモンレール式燃料噴射装置に適用した実施例1を図1〜図4を参照して説明する。なお、図5は参考に示した従来技術である。
先ず、コモンレール式燃料噴射装置の構成を図1を参照して説明する。
コモンレール式燃料噴射装置は、例えばディーゼルエンジン(以下、エンジン:図示しない)に燃料噴射を行うシステムであり、サプライポンプ1、コモンレール2、複数のインジェクタ3、ECU4(エンジン・コントロール・ユニットの略:制御装置に相当する)等から構成される。
(サプライポンプ1の説明)
サプライポンプ1は、燃料タンク11に蓄えられた燃料を高圧に圧縮してコモンレール2へ圧送する燃料ポンプであり、燃料タンク11内の燃料を燃料フィルタ11aを介してサプライポンプ1へ吸引するフィードポンプと、このフィードポンプによって吸い上げられた燃料を高圧に圧縮してコモンレール2へ圧送する高圧ポンプとを搭載しており、フィードポンプおよび高圧ポンプは共通のカムシャフトによって駆動される。なお、このカムシャフトは、エンジンのクランク軸等によって回転駆動されるものである。
また、サプライポンプ1には、高圧ポンプに吸引される燃料の量を調整する流入調量弁(以下、SCV)12が搭載されており、このSCV12がECU4によって調整されることにより、コモンレール圧が調整されるようになっている。なお、SCV12は、通電が停止されると全開となるノーマリオープンタイプの電磁弁が用いられる。
(コモンレール2の説明)
コモンレール2は、サプライポンプ1から圧送された高圧燃料を蓄圧して、蓄圧した高圧燃料をインジェクタ3に供給する蓄圧容器であり、高圧に加圧されたコモンレール圧(インジェクタ3への燃料供給圧)が蓄圧されるように燃料配管(高圧燃料流路)13を介して高圧燃料を圧送するサプライポンプ1の吐出口と接続されている。
コモンレール2から燃料タンク11へ燃料を戻すリターン配管(燃料還流路)14には、プレッシャリミッタ16が取り付けられている。このプレッシャリミッタ16は圧力安全弁であり、コモンレール圧が限界設定圧を超えた際に開弁して、コモンレール圧を限界設定圧以下に抑える。
また、コモンレール2には、コモンレール2に蓄圧された燃料を溢流させる排出路(コモンレール2とリターン配管14を連通する通路)の開度を調節する減圧弁が取り付けられる場合がある(この減圧弁は設けられていない場合もある)。
この減圧弁は、リターン配管14を介してコンモンレール圧を急速に減圧するものであり、ECU4が減圧弁の開度を調整することによって、コモンレール圧を車両走行状態に応じた圧力へ素早く低減制御できる。なお、減圧弁は、通電が停止されると全閉となるノーマリクローズタイプの電磁弁が用いられる。
(インジェクタ3の説明)
インジェクタ3は、現在流動している既存のものが用いられる。このインジェクタ3は、エンジンの各気筒毎に搭載されて燃料を各気筒内に噴射供給するものであり、コモンレール2より分岐する複数の高圧燃料配管15の下流端に接続されて、コモンレール2に蓄圧された高圧燃料を各気筒に噴射供給する。
また、各インジェクタ3には、インジェクタ3からリークするリーク燃料(切替リーク燃料と常時リーク燃料)を燃料タンク11へ戻すリターン配管14が接続されている。
なお、このリターン配管14は、上述したプレッシャリミッタ16、減圧弁から流出する燃料を燃料タンク11へ戻すリターン配管14と合流する。
また、このリターン配管14は、各インジェクタ3からリークされた全燃料が通る1本の共通路を備えるものであり、この共通路には後述する切替弁55が設けられている。
(ECU4の説明)
ECU4は、制御処理、演算処理を行うCPU、各種プログラムおよびデータを保存する記憶装置(ROM、スタンバイRAMまたはEEPROM、RAM等のメモリ)、入力回路、出力回路、電源回路で構成されている周知構造のマイクロコンピュータである。
なお、図1では、ECU4のケース内にポンプ駆動回路(SCV用EDU)を搭載し、ECU4とは別にインジェクタ駆動回路(インジェクタ用EDU)21を搭載する例を示すが、インジェクタ駆動回路21もECU4のケース内に配置するものであっても良い。もちろん、ポンプ駆動回路をECU4とは別に搭載されるものであっても良い。
ECU4は、記憶装置に記憶する各種プログラムと、ECU4に接続されるセンサ類から読み込まれた各種データ(エンジン等の運転状態)に基づいて、インジェクタ3の噴射制御およびSCV12の開度制御を実施するものである。
ECU4には、エンジン等の運転状態を検出する手段として、少なくとも、インジェクタ3の制御に必要なセンサ類、SCV12の制御に必要なセンサ類、後述するアイドルストップの制御に必要なセンサ類など、種々のセンサ類が接続されている。具体的には、キースイッチのポジションを検出するキースイッチポジションセンサ、車速を検出する車速センサ、エンジン回転数を検出する回転数センサ、アクセル開度を検出するアクセルセンサ、ブレーキのペダルスイッチ、シフトポジションセンサ、コモンレール圧を検出するコモンレール圧センサ22、その他種々のセンサ類が接続されている。
(インジェクタ3の構造)
インジェクタ3の基本構造を図2を参照して説明する。
インジェクタ3は、コモンレール2から供給される高圧燃料をエンジンの気筒内に噴射するものであり、コモンレール圧が流入通路31(インオリフィスが設けられた燃料通路)を介して与えられるとともに、排出通路32(アウトオリフィスが設けられた燃料通路)を介して排圧される制御室33を具備し、排出通路32を電磁弁34(電動弁の一例)によって開閉して、制御室圧力(制御室33内の圧力)が開弁圧力に低下するとニードル35が上昇して燃料を噴射するノズル36を有する。
インジェクタ3のハウジング37(例えば、ノズルホルダ)には、コマンドピストン38を上下方向(ニードル35の開閉弁方向)に摺動自在に支持するシリンダ41、コモンレール2から供給された高圧燃料をノズル36側および流入通路31側へ導く高圧燃料通路42、および高圧燃料を低圧側へ排出する排圧燃料通路(切替リーク排出路39、常時リーク排出路40)等が形成されている。
コマンドピストン38は、シリンダ41内に挿入され、プレッシャピン44を介してニードル35に連接されている。
プレッシャピン44は、コマンドピストン38とニードル35との間に介在され、プレッシャピン44の周囲には、ニードル35を下方(閉弁方向)へ付勢するスプリング45が配置されている。
制御室33は、シリンダ41の上側(電磁弁34側)に形成され、コマンドピストン38の上下移動に応じて容積が変化する。
流入通路31は、高圧燃料通路42から供給される高圧燃料を減圧する入口側の燃料絞りであり、高圧燃料通路42と制御室33は流入通路31を介して連通する。
排出通路32は、制御室33の上側に形成され、制御室33から切替リーク排出路39(低圧側)に排出される燃料を絞る出口側の燃料絞りであり、制御室33と切替リーク排出路39は排出通路32を介して連通する。
電磁弁34は、通電(ON)されると電磁力を発生するソレノイド46と、このソレノイド46の発生する電磁力によって上方(開弁方向)へ吸引されるバルブ47と、バルブ47を下方(閉弁方向)へ付勢するリターンスプリング48とを備える。
ソレノイド46がOFFの状態では、バルブ47がリターンスプリング48の付勢力によって下方へ押し付けられ、バルブ47(例えば、バルブ47の先端に設けられた図示しないボール弁)が排出通路32を塞ぐ。ソレノイド46がONの状態では、ソレノイド46の発生する電磁力によってバルブ47はリターンスプリング48の付勢力に抗して上方に移動して排出通路32が開かれる。
このバルブ47が配置されるバルブ室47a内は、排出通路32から排出されるリーク燃料で満たされる。即ち、バルブ47は、リーク圧力の影響を受ける構造になっている。
インジェクタ3のハウジング37(例えば、ノズルボディ)には、ニードル35を上下方向(開閉方向)へ摺動自在に支持する摺動孔51と、高圧燃料通路42に連通しており、ニードル35の外周に環状に設けられたノズル室52と、ニードル35が閉弁時に着座する円錐状の弁座53と、高圧燃料を噴射するための複数の噴孔54とが形成されている。この噴孔54は、ニードル35と弁座53とが着座時に当接する着座シートより内側に穿設され、ニードル35が弁座53に着座した際に閉塞される。
ニードル35は、摺動孔51に保持される摺動軸部35aと、この摺動軸部35aの下部に形成される受圧面35bと、この受圧面35bより下方へ伸びる小径軸状のシャフト35cと、弁座53に着座および離座して噴孔54を開閉する円錐弁35dとから構成され、摺動軸部35aがノズル室52と低圧側(プレッシャピン44の周囲)との間をシールしながら軸方向へ往復動可能に設けられている。
(インジェクタ3の作動)
ECU4がインジェクタ3に噴射パルスを与えると、インジェクタ駆動回路21が電磁弁34の通電を開始する。すると、ソレノイド46がバルブ47を吸引し、そのバルブ47がリフトアップを開始すると、排出通路32が開いて、流入通路31で減圧された制御室33の圧力が低下を開始する。
制御室33の圧力が開弁圧力以下に低下すると、ニードル35が上昇を開始する。ニードル35が弁座53から離座すると、ノズル室52と噴孔54とが連通し、ノズル室52に供給された高圧燃料が噴孔54から噴射する。
ニードル35の上昇に従い、噴射率が上昇する。なお、上昇噴射率が最大噴射率に到達すると、それ以上噴射率は上昇しない。
ECU4がインジェクタ3に与えていた噴射パルスを停止すると、インジェクタ駆動回路21が電磁弁34の通電を停止する。すると、ソレノイド46がバルブ47の吸引を停止して、そのバルブ47がリフトダウンを開始する。そして、電磁弁34のバルブ47が排出通路32を閉じると、制御室33の圧力が上昇を開始する。制御室33の圧力が閉弁圧力以上まで上昇すると、ニードル35が下降を開始する。
ニードル35が下降して弁座53に着座すると、ノズル室52と噴孔54の連通が遮断されて、噴孔54からの燃料噴射が停止する。
(実施例1の背景)
上述したインジェクタ3は、コモンレール2から供給される高圧燃料の一部を低圧側へリークする。
インジェクタ3のリークには、「切替リーク(動リーク)」と「常時リーク(静リーク)」がある。
「切替リーク」は、電磁弁34の作動時(ON中)のみに生じるリークであり、電磁弁34の作動によりバルブ47が排出通路32を開くことで、排出通路32→バルブ47の配置されたバルブ室47a→切替リーク排出路39を通ってインジェクタ3の外部へ排出される。
「常時リーク」は、インジェクタ3内の摺動部を通って常時生じるリークであり、電磁弁34のバルブ47が排出通路32を閉じた状態であっても、インジェクタ3内の摺動部(コマンドピストン38とシリンダ41の間の隙間部、ニードル35の摺動軸部35aと摺動孔51の間の隙間部)→常時リーク排出路40を通ってインジェクタ3の外部へ排出される。
なお、切替リーク排出路39と常時リーク排出路40は、インジェクタ3の内部で合流してリターン配管14の接続口に連通するものであり、その合流部とバルブ室47aの間の通路のみを切替リーク排出路39とするものである。
一方、上記のコモンレール式燃料噴射装置を搭載するディーゼル車両には、アイドルストップ機能が設けられている。
アイドルストップ機能は周知なものであり、例えば、(1)イグニッションスイッチがON状態で、車速が0kmで、ブレーキペダルが踏まれている状態では、インジェクタ3の作動を停止させて、エンジンを停止させるストップ機能と、(2)イグニッションスイッチがON状態で、車速が0kmで、ブレーキペダルの踏み込み状態が解除されると(あるいはアクセルペダルが踏み込まれると)、スタータを作動させるとともに、インジェクタ3を作動させてエンジンを再始動する再始動機能とからなる。
このアイドルストップ機能のために、上述したECU4は、上述したインジェクタ3およびSCV12の他に、スタータの運転を行わせるスタータリレーを運転状態に応じて制御するように設けられている。
しかし、上述したように、インジェクタ3には常時リークが生じるため、アイドルストップによるエンジン停止中であっても、図3(a)に示すように、コモンレール2に蓄えられた高圧燃料がインジェクタ3内の摺動部→常時リーク排出路40→リターン配管14→燃料タンク11へ流れてしまう。すると、再始動時にはコモンレール圧が低下して、再始動をスムーズに行うことが困難になってしまう。
(実施例1の特徴)
上記の不具合を解決するために、この実施例1のコモンレール式燃料噴射装置は、図3(b)に示すように、インジェクタ3からリークされた燃料を燃料タンク11へ戻すリターン配管14に切替弁55を設けるとともに、ECU4に切替弁55を制御するための切替弁制御機能を設けている。
この切替弁55は、リターン配管14のうち、複数のインジェクタ3からリークされた全リーク燃料が通る1本の共通路に設けられるものであり、ECU4によってONされるとリターン配管14の共通路を閉じ、OFFされるとリターン配管14の共通路を開くノーマリクローズタイプの電磁弁(電動弁の一例)が用いられている。
ECU4の切替弁制御機能は、切替弁55を開閉(ON−OFF)制御するためのプログラムであり、エンジン停止時(アイドルストップ時)に切替弁55を閉弁(ON)させ、エンジンの再始動時(アイドルストップからの再始動時)に切替弁55を開弁(OFF)させるように設けられている。
具体的に、ECU4の切替弁制御機能が切替弁55を閉弁(ON)するタイミングは、アイドルストップのためにエンジンのストップ動作に入る直前であり、ECU4の切替弁制御機能が切替弁55を開弁(OFF)するタイミングは、アイドルストップの状態からエンジンを再始動する直前である。
上記のように、リターン配管14に切替弁55を設け、この切替弁55をアイドルストップ時に閉弁し、エンジンの再始動時に開弁することにより、アイドルストップのエンジンの停止中にインジェクタ3からリークされた燃料が切替弁55の上流で蓄圧されることになり、エンジン停止中にコモンレール圧が低下する現象が防がれる。
このように、エンジンの停止中にコモンレール圧が高圧に維持されることにより、再始動時のエンジン始動を素早くスムーズに行うことが可能になる。
しかし、上記の構成では、切替弁55が閉弁状態(エンジン停止中)の時に、次の2つの不具合が懸念される。
(1)切替弁55の上流に残る圧力、即ちエンジン停止中のコモンレール圧を十分高圧に維持できるか。
(2)切替弁55の上流が高圧になることにより、何らかの不具合が生じないか。
上記(1)に対して説明する。
切替弁55の上流の容積は、コモンレール2を含む高圧部容積と、インジェクタ3の低圧側から切替弁55までの低圧部容積との和になる。高圧部容積が低圧部容積の2倍以上あるため、切替弁55の上流に残る圧力(エンジン停止中のコモンレール圧)は、少なくともアイドリング時のコモンレール圧の2/3以上となる。この圧力はエンジンの再始動に十分な圧力であり、エンジンの再始動をスムーズに行うことができる。
なお、切替弁55の上流に残る圧力(エンジン停止中のコモンレール圧)が、エンジンの再始動に適したコモンレール圧(例えば、アイドリング時のコモンレール圧)となるように、エンジンの停止時(切替弁55を閉弁する前)にECU4によって減圧弁(あるいは、減圧弁が搭載されておらずにプレッシャリミッタ16が通電制御で開弁する場合はプレッシャリミッタ16)を制御しても良い。
上記(2)に対して説明する。
インジェクタ3の電磁弁34の具体的な構造を図4に示す。インジェクタ3は、上述したように、電磁弁34の開弁によって切替リークが生じるものであり、電磁弁34の開弁により生じる切替リークは、電磁弁34のバルブ室47a→切替リーク排出路39→リターン配管14へ排出される構造になっている。しかし、従来のコモンレール式燃料噴射装置では、バルブ室47aが高圧になることが無いため、電磁弁34の構造が高圧のコモンレール圧に耐える仕様にはなっていない。
しかし、切替弁55を閉弁することで、切替弁55の上流側が高圧になると、切替リーク排出路39を介してバルブ室47aまで高圧になる。すると、バルブ室47a内をシールする部材(Oリング等)から燃料が漏れたり、高圧により電磁弁34の一部(ネジ部等)が破損するなどの不具合が懸念される。
この懸念を解消するために、この実施例1のインジェクタ3は、図2、図3(b)、図4に示すように、切替リーク排出路39に逆止弁56を設けている。この逆止弁56は、常時リーク排出路40〜切替弁55の区間が高圧になっても、バルブ室47aへ燃料が逆流するのを阻止する一方向弁であり、バルブ室47aと反対側に開放する。
このように、切替リーク排出路39に逆止弁56を設けることにより、切替弁55が閉弁されて切替弁55の上流側が高圧になっても、逆止弁56が切替リーク排出路39の逆流を阻止するため、バルブ室47aが高圧にならない。この結果、電磁弁34のシール部分から燃料が漏れたり、破損が生じる等の懸念を解消できる。
(本発明の構成に似て非なる従来技術の説明)
ここで、本発明の構成に似た技術を紹介する。
インジェクタ3の低圧側の圧力(リーク圧力)は、インジェクタ3の作動に影響を与えることが知られている。
具体的には、制御室33の内圧を電磁弁34で制御することで噴射制御を実施するインジェクタ3においては、電磁弁34のバルブ47が低圧側のバルブ室47a内に配置されるため、バルブ47の動きがリーク圧力の影響を受ける。リーク圧力が上昇すると、バルブ47が制御室33の排出通路32を閉じる際のバルブ47の閉弁速度が遅くなるため、実質的な開弁期間(噴射期間)が延び、インジェクタ3から噴射される実噴射量が目標噴射量に対して増加してしまう。実噴射量が目標噴射量より増加すると、排気ガスの悪化、エンジン出力の増加等の不具合が生じてしまう。
そこで、図5に示すように、インジェクタ3のリーク燃料を燃料タンク11へ戻すリターン配管14の途中にチェックバルブ(逆止弁)J1を配置して、インジェクタ3の低圧側の圧力を安定させて、噴射量への影響を安定させる技術が知られている。
しかし、図5に示すチェックバルブJ1は、インジェクタ3の低圧側を高圧に保つものではなく、インジェクタ3の低圧側の圧力を安定した低圧に保つ目的で設けられたものであって、インジェクタ3の低圧側を高圧に保つことはできない。即ち、アイドルストップの再始動時には、コモンレール圧を高圧に保つことができないものであり、再始動が困難なものである。
また、再始動が可能なほどにチェックバルブJ1の開弁圧を設定すると、エンジンの運転中にリーク燃料を排出できなくなり、エンジンの運転が困難になる。
即ち、図5に示すように、リターン配管14にチェックバルブJ1を設けたものでは、アイドルストップを実現することはできない。
(実施例1の特徴のまとめ)
この実施例1のコモンレール式燃料噴射装置は、次の効果を奏する。
(1)インジェクタ3からリークされた燃料を燃料タンク11へ戻すリターン配管14に切替弁55を設け、この切替弁55を、エンジンの停止時に閉弁し、エンジンの始動時に開弁することにより、エンジンの停止中にインジェクタ3からリークされた常時リーク燃料が切替弁55の上流で蓄圧されることになり、エンジンの停止中であってもコモンレール圧が高圧に維持される。これによって、再始動時のエンジン始動を素早くスムーズに行うことが可能になる。
(2)リターン配管14に切替弁55を設け、その切替弁55を切替制御するだけで、エンジン停止後の再始動をスムーズに行うことができる。
これによって、常時リークの発生しないタイプのインジェクタ3の流動を待たずとも、既存のコモンレール式燃料噴射装置に簡単な構成を追加するのみで、アイドルストップを実現することができる。
(3)リターン配管14の共通路に切替弁55を設けることにより、インジェクタ3が複数搭載される場合であっても切替弁55を1つにできる。
(4)既存のインジェクタ3は、バルブ室47aが高圧のコモンレール圧に耐える仕様には設けられていないが、切替リーク排出路39に逆止弁56を設けて、電磁弁34のバルブ室47aへ燃料が逆流するのを阻止するため、エンジンの停止中に切替弁55の上流側が高圧になっても、バルブ室47aが高圧にならない。
このように、バルブ室47aが高圧にならないため、電磁弁34のシール部分から燃料が漏れたり、破損が生じる等の懸念は解消できる。
(5)切替リーク排出路39に逆止弁56を設けたことにより、バルブ室47a内のリーク圧力をほぼ所定の圧力に安定させることができる。これによって、バルブ室47aのリーク圧力の変動により実噴射量が変化する不具合を解消することができる。
[変形例]
上記の実施例では、電磁力によってバルブの開閉を行う電磁弁により切替弁55を設ける例を示したが、駆動源は限定されるものではなく、例えばピエゾ素子をスタックしたピエゾスタックを駆動源にした切替弁など、ECU4によってバルブを開閉可能な切替弁であれば、他の駆動源による切替弁であっても良い。
上記の実施例では、常時リークが生じるインジェクタ3の一例として2ウェイバルブタイプのインジェクタ3を例に示したが、3ウェイバルブなど、常時リークが生じる全てのタイプのインジェクタ3を搭載するコモンレール式燃料噴射装置に本発明を適用することができる。
コモンレール式燃料噴射装置の概略図である(実施例1)。 インジェクタの概略断面図である(実施例1)。 コモンレールから燃料タンクへ至る燃料の流れ系図である(実施例1)。 インジェクタにおける電磁弁周辺の断面図である(実施例1)。 コモンレール式燃料噴射装置の概略図である(従来例)。
符号の説明
1 サプライポンプ(高圧ポンプを内蔵する燃料ポンプ)
2 コモンレール
3 インジェクタ
4 ECU(制御装置)
11 燃料タンク
14 リターン配管
31 流入通路
32 排出通路
33 制御室
34 電磁弁(電動弁)
35 ニードル
38 コマンドピストン
39 切替リーク排出路
40 常時リーク排出路
47a バルブ室
55 切替弁
56 切替リーク排出路に設けられた逆止弁

Claims (4)

  1. (a)燃料タンクに蓄えられた燃料を高圧に加圧して圧送する高圧ポンプと、
    (b)この高圧ポンプの圧送した高圧燃料を蓄圧するコモンレールと、
    (c)このコモンレールに蓄えられた高圧燃料を噴射するとともに、前記コモンレールから供給される高圧燃料の一部を常時低圧側へリークする構造のインジェクタと、
    (d)このインジェクタからリークされた燃料を前記燃料タンクへ戻すリターン配管と、(e)このリターン配管を開閉可能な切替弁と、
    (f)エンジンの停止時に前記切替弁を閉弁し、前記エンジンの始動時に前記切替弁を開弁する制御装置と、
    を具備するコモンレール式燃料噴射装置。
  2. 請求項1に記載のコモンレール式燃料噴射装置において、
    前記インジェクタは、複数搭載され、
    前記リターン配管は、前記複数のインジェクタからリークされた全燃料が通る1本の共通路を備え、
    前記切替弁は、前記リターン配管の共通路に設けられることを特徴とするコモンレール式燃料噴射装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載のコモンレール式燃料噴射装置において、
    前記インジェクタは、高圧燃料が流入通路を介して与えられる制御室、この制御室の圧力を低圧側に排出する排出通路を開閉する電動弁、前記制御室の圧力変化によって前記インジェクタ内で摺動するニードルの摺動部を含む隙間部を通って低圧側へ排出された常時リーク燃料を前記リターン配管の接続口の上流部分へ導く常時リーク排出路、前記排出通路から前記電動弁のバルブ室を介して低圧側へ排出された切替リーク燃料を前記リターン配管の接続口の上流部分へ導く切替リーク排出路を備えるものであり、
    この切替リーク排出路には、前記電動弁のバルブ室へ燃料が逆流するのを阻止する逆止弁が設けられたことを特徴とするコモンレール式燃料噴射装置。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかに記載のコモンレール式燃料噴射装置において、
    前記制御装置が前記切替弁を閉弁するタイミングは、アイドルストップのために前記エンジンのストップ動作に入る直前であり、
    前記制御装置が前記切替弁を開弁するタイミングは、アイドルストップの状態から前記エンジンを再始動する直前であることを特徴とするコモンレール式燃料噴射装置。
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