以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(一実施形態)
図1〜図5に、本発明の一実施形態に係る燃料圧送装置とそれを含む燃料供給システムの概略構成を示している。
図1に概略図で示すように、本実施形態の燃料供給システム1は、車両に搭載される内燃機関、例えば筒内噴射式あるいはデュアル噴射式の多気筒のガソリンエンジン(以下、単にエンジンという)2に装備され、そのエンジン2の燃料を高圧に加圧して吐出するプランジャポンプ型の燃料圧送装置10を備えている。
同図に示すように、本実施形態の燃料圧送装置10は、配管3を介してフィードポンプである低圧燃料ポンプ4に接続されており、低圧燃料ポンプ4から比較的低圧のフィード圧に加圧された燃料を導入するようになっている。低圧燃料ポンプ4は、車両に搭載された燃料タンクTの内部に配置されており、その燃料タンクT内に貯留された燃料、例えばガソリンを汲み上げることができる。また、低圧燃料ポンプ4は、例えば図示しないポンプインペラを駆動モータで回転駆動する電動式のウェスコポンプ等で構成されており、同一の入力(例えば端子電圧と負荷電流の積に相当)に対しそのポンプ駆動モータの回転速度を負荷トルクに応じて変化させたり、入力変化により同一負荷に対する駆動モータの回転速度を変化させたりすることで、その単位時間当りの吐出量や吐出圧を変化させることができるようになっている。なお、低圧燃料ポンプ4は、その吐出口付近に図示しない逆止弁からなる低圧吐出弁を有していてもよい。
詳細を図示しないが、エンジン2には、複数の筒内噴射用のインジェクタ6(燃料噴射弁)が装備されている。そして、燃料圧送装置10は、複数のインジェクタ6が接続されたデリバリーパイプ7に配管接続されており、このデリバリーパイプ7に対して高圧の燃料を圧送するようになっている。デリバリーパイプ7は、燃料圧送装置10から吐出される高圧の燃料を貯留し蓄圧するもので、エンジン2の各気筒(図示していない)に装着された筒内噴射用のインジェクタ6の開弁時にそのインジェクタ6に高圧の燃料を分配・供給するようになっている。
図1〜図5に示すように、燃料圧送装置10は、ポンプボデー11と、ポンプボデー11に対し軸方向に往復変位可能に設けられた略円柱状のプランジャ12(加圧部材)と、を有している。そして、ポンプボデー11には、低圧燃料ポンプ4からの燃料を吸入する吸入通路11a(低圧側燃料通路)と、内部で加圧された燃料をデリバリーパイプ7側に吐出する吐出通路11b(高圧側燃料通路)とが形成されている。
ポンプボデー11の吸入通路11aの一部は、低圧燃料ポンプ4からの燃料を貯留可能な所定容積の吸入ギャラリ室13(燃料貯留室)となっており、吸入通路11aに導入される燃料は、この吸入ギャラリ室13の内部に貯留されるようになっている。
具体的には、図5に示すように、ポンプボデー11は、その外方に突き出たパイプ状の燃料導入管部14を有している。この燃料導入管部14は、吸入通路11aの上流端側に位置して燃料圧送装置10の内部に燃料を導入する燃料導入口10aを形成するとともに、その内部に例えばメッシュ状の燃料フィルタ28を収納している。
また、吸入ギャラリ室13の上流側となる燃料導入口10aの近傍、すなわち、燃料導入口10aより下流側であって吸入弁16より上流側には、導入逆止弁30が、例えば燃料フィルタ28と吸入ギャラリ室13の間に位置するように配設されている。
この導入逆止弁30は、機能的には、図1に回路記号で示すように、吸入通路11aへの燃料の導入を許容する一方で吸入通路11aに導入された燃料の逆流を規制する逆止弁体30aと、その逆止弁体30aを常時閉弁方向に付勢することで導入逆止弁30の開弁圧を規定するばね要素30bと、逆止弁体30aの係合(着座による閉弁)および離脱が可能な弁座30cとによって構成される。
本実施形態では、図5に示すように、導入逆止弁30は、例えば逆止弁体30aおよびばね要素30bの機能を併有する弾性板からなるリード弁体30rと、この弁体30rが着座する弁座30sとによって構成されている。
そして、低圧燃料ポンプ4からのフィード圧力が吸入ギャラリ室13内の燃料圧力より所定の開弁圧P1(例えば、数十kPaの差圧)だけ大きくなると、リード弁体30rが図5中に実線で示すように撓んで、吸入ギャラリ室13を含む吸入通路11a内に低圧燃料ポンプ4からの燃料が導入されるようになっている。勿論、導入逆止弁30は、リード弁でなく、球状やポペット状その他の公知の弁体形状を有するものであってもよい。
図1に示すように、吸入ギャラリ室13は、プランジャ12の外端部12b(図1中の下側の一端部)とポンプボデー11の間に画成される副室29(内室)に対し、内部連通路29aを介して連通しており、プランジャ12の往復変位に伴う吸入ギャラリ室13と副室29との間の燃料移動を許容し得るようになっている。一方、副室29は、加圧部材としてのプランジャ12によって燃料加圧室15からは区画されるとともに、ポンプボデー11の外部の空間からは気密的に遮断されたポンプボデー11の内室となっている。
プランジャ12は、その内端部12a(図1中の上側端部)でポンプボデー11の内部に摺動可能に挿入されている。そして、ポンプボデー11の内部であってプランジャ12とポンプボデー11との間には、吸入通路11aおよび吐出通路11bに接続する燃料加圧室15が形成されている。この燃料加圧室15は、プランジャ12の往復変位に応じてその容積を変化(増減、減少)させることで、燃料を吸入および吐出可能となっている。
また、プランジャ12は、その外端部12bで、プランジャ12を駆動する図示しない駆動カムに係合している。駆動カムは、少なくとも周方向の一箇所でその半径が他の箇所の半径より大きくなるカムプロフィール(例えば、卵形、楕円形または角が丸められた多角形のカムプロフィール)を有している公知のものである。この駆動カムは、エンジン2の動力により駆動されるが、電動モータにより回転駆動されてもよい。
図2に示すように、プランジャ12の外端部12bの近傍にはばね受け部12cが設けられており、このばね受け部12cとポンプボデー11の間には、圧縮コイルばね45が圧縮状態で組み込まれている。すなわち、プランジャ12は、圧縮コイルばね45によって、燃料加圧室15の容積を増加させる方向(図1中の下方向)であって、かつ、プランジャ12の外端部12bを前記駆動カム側に押し付ける方向に、常時付勢されている。したがって、前記駆動カムがエンジン2の動力により(あるいは電力により)回転駆動されるとき、プランジャ12がその駆動カムの回転に応じて往復駆動されるようになっている。駆動カムに係合するカムフォロワローラ等がプランジャ12の外端部12bに装着され得ることは勿論である。
燃料加圧室15の前後、すなわち、燃料加圧室15の吸入側および吐出側には、複数のバルブ要素として、吸入弁16と吐出弁17とが設けられている。ここで、吸入弁16は、吸入ギャラリ室13より下流側で燃料加圧室15への燃料吸入を許容するとともに逆流阻止機能を発揮する逆止弁によって構成されている。この吸入弁16は、燃料加圧室15内の燃料の圧力が吸入ギャラリ室13内の燃料の圧力に対して所定の吸入弁開弁差圧P2(導入弁開弁差圧に略等しい、例えば数十kPaの差圧)だけ小さくなったときに開弁し得る。すなわち、プランジャ12が燃料加圧室15の容積を増加させるよう図1および図2中の下方向に変位するとき、燃料加圧室15内の燃料が減圧されてその圧力が低下し、吐出弁17の閉弁状態下で吸入弁16が開弁し得るようになっている。
より具体的には、吸入弁16は、その前後に前記吸入弁開弁差圧が生じるときに開弁し得るが、後述する操作部材37によって常時開弁位置に付勢される構成となっている(詳細は後述する)。
吐出弁17は、燃料加圧室15からの燃料の吐出を許容するとともに逆流阻止機能を発揮する逆止弁によって構成されている。この吐出弁17は、燃料加圧室15内の燃料の圧力が吐出弁17より下流側の燃料の圧力(デリバリー圧)に対して予め設定された吐出弁開弁差圧P3(吸入弁開弁差圧に略等しい、例えば数十kPaの差圧)だけ高圧となったときに開弁し得る。すなわち、プランジャ12が燃料加圧室15の容積を減少させるよう図1および図2中の上方向に変位するとき、燃料加圧室15内の燃料が加圧されてその圧力が上昇し、吐出弁17の前後に吐出弁開弁差圧P3が生じることで、吸入弁16の閉弁状態下で吐出弁17が開弁し得るようになっている。
前述したポンプボデー11、プランジャ12、燃料加圧室15、吸入弁16、吐出弁17および前記駆動カムは、これら全体として、ポンプボデー11の内部で吸入通路11aおよび吐出通路11bの間に燃料加圧室15を形成するとともにその燃料加圧室15内の燃料を加圧するよう駆動されるプランジャ12を有する加圧ポンプ機構20を構成している。
さらに、ポンプボデー11の内部であって燃料加圧室15の吐出側には、吐出弁17をバイパスするバイパス通路18wが形成されるとともに、そのバイパス通路18wを開閉可能なリリーフ弁19が複数のバルブ要素のうちの1つとして設けられている。
このリリーフ弁19は、吐出弁17より下流側の吐出通路11b中の燃料の圧力が燃料加圧室15内の燃料の圧力に対し所定の吐出弁開弁差圧P3より十分に大きい所定のリリーフ弁開弁差圧P4(例えば、最大吐出圧より数MPa大きい差圧)分だけ上回ったときに、開弁するようになっている。ここにいう吐出弁開弁差圧より十分に大きいとは、デリバリーパイプ7内の燃料圧力の脈動程度ではリリーフ弁19が開弁しない程度に大きいことを意味しており、所定のリリーフ弁開弁差圧P4は、デリバリーパイプ7以降の各部品の配管限界圧力を保障し得る範囲内で設定されている。
図2および図3に示すように、吸入弁16は、吸入通路11aを開閉する板状の弁体16aおよび環状の弁座16bと、所定の吸入圧(フィード圧より所定の吸入弁開弁差圧P2分だけ低い圧力)に達するまで弁体16aを弁座16bに当接させる閉弁状態を保持する予圧ばね16c(弾性部材、第1付勢機構)とによって構成されている。また、吐出弁17は、吐出通路11bを開閉する板状の弁体17aおよび環状の弁座17bと、所定の吐出圧(デリバリーパイプ内の燃料の圧力より所定の吐出弁開弁差圧P3分だけ高い圧力)に達するまで弁体17aを弁座17bに当接させる閉弁状態を保持する予圧ばね17c(弾性部材)とによって構成されている。さらに、リリーフ弁19は、バイパス通路18wを開閉する板状の弁体19aおよび環状の弁座19bと、吐出通路11b内の燃料圧力が上昇するか燃料加圧室15内の燃料の圧力が低下することで板状の弁体19aの前後差圧が所定のリリーフ弁開弁差圧P4分に達するまで、弁体19aを弁座19bに当接させる閉弁状態を保持する予圧ばね19c(弾性部材)とによって構成されている。なお、板状の弁体17a,19aは、例えばそれぞれ外周部に通路形成用の切欠きを有する略円板形状をなしている。
一方、本実施形態においては、ポンプボデー11は、筒状のバルブ保持部材21と、筒状のシリンダ部材22と、これらバルブ保持部材21およびシリンダ部材22が貫通する内壁面23aを有する外殻部材23と、を含んで構成されている。
これらバルブ保持部材21、シリンダ部材22および外殻部材23は、少なくともそれぞれの内壁面側における縦断面形状が中心軸線に対して対称となるような略軸対称形状を有しており、いわゆる軸物またはそれに近い形状となっている。
筒状のバルブ保持部材21は、その中心部に軸線方向に延びるとともに図2および図3中の右端側ほどそれぞれ大径となる段付状の円形断面のバルブ収納穴21hおよび段付状の外周面21fを有している(図3〜図5参照)。このバルブ保持部材21は、バルブ収納穴21hの内方に複数のバルブ要素である吸入弁16、吐出弁17およびリリーフ弁19を収納して、これらを同一軸線上に位置させる直列配置状態で保持している。
具体的には、バルブ保持部材21の図3中における左端部には、吐出通路11bの燃料吐出口11cが形成されており、この燃料吐出口11cが段付状のバルブ収納穴21hの最内奥に位置している。また、図2に示すように、バルブ保持部材21のバルブ収納穴21hの内方には、第1〜第3のバルブストッパ31,32および33と、吐出弁17、リリーフ弁19および吸入弁16と、が収納されている。
図2〜図5に示すように、第1のバルブストッパ31は、例えばバルブ保持部材21のバルブ収納穴21hの内奥部に嵌め付けられたスリット付の環状体であり、吐出弁17の弁体17aの開弁方向の最大変位を規定し得るようになっている。
第2のバルブストッパ32は、吐出通路11bの一部およびバイパス通路18wを形成する2つの屈曲通路付の通路形成部材である。すなわち、この第2のバルブストッパ32には、一対の外周側の縦溝32a,32bと軸方向両端側の中心部で開口する一対の所定深さの縦孔32c,32dとが形成されるとともに、これらを相互に連通させる一対の横孔(径方向孔)32e,32fが形成されている。
この第2のバルブストッパ32の一端側には吐出弁17の弁座17bが軸方向に環状に突出しており、他端側にはリリーフ弁19の弁座19bが軸方向に環状に突出している。そして、吐出弁17の弁体17aとリリーフ弁19の弁体19aとが、第2のバルブストッパ32の両端側の弁座17b,19bに対向している。また、バルブ収納穴21hの内奥側のバルブ保持部材21の段付部21dと吐出弁17の弁体17aとの間に、吐出弁17の予圧ばね17cが予め設定された吐出弁開弁差圧相当の組付け荷重で組み込まれている。
第3のバルブストッパ33は、リリーフ弁19および吸入弁16に対応するストッパ部33a,33bおよびばね受け部33c,33dをそれぞれ異なる半径位置に逆向きに配置して一体化した略T字形断面の部材となっており、弁体16a,19aの可動範囲を規定するストッパの機能とばね受けの機能とを併有している。また、リリーフ弁19の弁体19aと第3のバルブストッパ33のばね受け部33cとの間には、リリーフ弁19の予圧ばね19cが予め設定されたリリーフ弁開弁差圧相当の組付け荷重で組み込まれており、吸入弁16の弁体16aと第3のバルブストッパ33のばね受け部33dとの間には、吸入弁16の予圧ばね16cが予め設定された吸入弁開弁差圧相当の組付け荷重で組み込まれている。
第3のバルブストッパ33は、図3中の右端側のばね受け部33cの外周部で、吸入弁16の環状の弁座16bを構成する通路形成部材35に対向しており、このばね受け部33cの外周部は部分的に切りかかれて、燃料加圧室15を吸入弁16の弁座16bの近傍にまで連通させるようになっている。この通路形成部材35は、バルブ保持部材21内に吸入ギャラリ室13から燃料加圧室15に延びる連通路35pwを吸入通路11aの一部として形成している。また、通路形成部材35の一端部により構成される吸入弁16の弁座16bが、連通路35pwの下流端を取り囲みつつ燃料加圧室15側に向かって軸方向に環状に突出している。
通路形成部材35は、また、操作部材37が装着されたプラグ部材36により第3のバルブストッパ33のストッパ部33bと共にバルブ保持部材21の段付部21eに押し付けられた状態で保持されており、プラグ部材36は、例えばバルブ保持部材21の図3中の右端部にねじ結合されている。さらに、通路形成部材35およびプラグ部材36とバルブ保持部材21の段付部21eの近傍部分との間には、吸入ギャラリ室13に複数箇所で連通する環状連通路部分35rが連通路35pwの一部として形成されている。これにより、連通路35pwは、吸入弁16の弁座16b側ではバルブ保持部材21の中心部で軸方向に延在して弁座16bの内方に開口し、吸入ギャラリ室13側では通路形成部材35の径方向および周方向に延在して吸入ギャラリ室13内のバルブ保持部材21の外周面21f上に開口している。
操作部材37は、吸入弁16の弁体16aに対して開弁方向(図2、図3中で左向き)に押圧操作力を加え、弁体16aを閉弁方向に付勢する予圧ばね16cの付勢力に抗して吸入弁16を開弁させることができるようになっている。
この操作部材37は、図2中の右端側で電磁コイル38内に挿入された操作用プランジャ(可動コア)となっており、電磁コイル38が通電により励磁されるときには、操作部材37が電磁コイル38内に吸引される。したがって、電磁コイル38が通電により励磁されるとき(ON状態のとき)には、吸入弁16の弁体16aが予圧ばね16cの付勢力により閉弁方向に復帰するようになっている。これら操作部材37および電磁コイル38は、吸入弁16を強制的に開弁させる期間を制御することにより、プランジャ12による燃料加圧室15内の燃料の加圧期間を可変制御することができる電磁操作ユニット39を構成している。
より具体的には、操作部材37の基端側には電磁コイル38の内径に近いプランジャ部37pが設けられており、電磁コイル38を収納する電磁操作ユニット39の本体39M側には、プランジャ部37pに対向するステータコア39cが設けられている。そして、操作部材37の基端部とステータコア39cとの間には、操作部材37を吸入弁16の開弁方向に付勢する圧縮コイルばね37k(弾性部材)が圧縮状態で設けられている。この圧縮コイルばね37kの組付け荷重は、吸入弁16の弁体16a(逆止弁体)に作用する前後差圧に基づく開弁方向の付勢力に更に同方向の付勢力を加えることで、弁体16aを閉弁方向に付勢する予圧ばね16cの付勢力に抗して、吸入弁16を開弁させることができるように予圧ばね16cの付勢力より大きく設定されている。また、操作部材37のプランジャ部37pを吸引する電磁コイル38の吸引力は、指令信号としての電気信号の入力時に、圧縮コイルばね37kの付勢力と相殺する方向および大きさの操作力を発生するように設定されている。
すなわち、吸入弁16の予圧ばね16cは、弁体16aを閉弁位置に付勢する第1付勢力を発生するとともに弁体16aの開弁圧を規定する第1付勢機構となっている。また、電磁操作ユニット39は、弁体16aを予圧ばね16cの第1付勢力より大きい付勢力で開弁方向に付勢する圧縮コイルばね37kと、その圧縮コイルばね37kの付勢力を低下させる操作力を発生して弁体16aを第1付勢力により閉弁位置に復帰させる電磁コイル38(閉弁アクチュエータ)とを含んで構成されている。この電磁操作ユニット39は、圧縮コイルばね37kの付勢力を選択的に操作部材37に作用させることで、吸入弁16の予圧ばね16cの付勢力に抗して弁体16aを開弁位置に変位させるとともに弁体16aを開弁位置に保持することができる第2付勢力を選択的に発生する第2付勢機構となっている。
図3および図4に示すように、ポンプボデー11の軸心付近でその軸方向に延びる筒状のシリンダ部材22は、バルブ保持部材21に連結および支持されている。このシリンダ部材22は、筒状のバルブ保持部材21の軸方向中間部21cに挿入された内端部22aと、この内端部22aに隣接して拡径したフランジ部22bと、プランジャ12の先端部を摺動可能に収納する筒状部22cとを有している。なお、シリンダ部材22の内端部22aのバルブ保持部材21への固定支持の方法は、従来の任意の固定方法(圧入、かしめ、ろう付け、溶接、ねじ結合、拡散接合等のいずれかまたは組合せ)を採用できる。
また、ポンプボデー11の外殻部材23は、略円筒状の筒状部24aの一端側を略円板形の蓋部24bによって閉塞したカップ状部材24と、シリンダ部材22に圧接しつつカップ状部材24の開口端部24c側を閉塞するようカップ状部材24に固定された中心穴付きのオイルシールホルダ25と、によって構成されている。さらに、カップ状部材24には、取付け基準面24dおよび取付け穴24hを有するフランジ部24fが一体に設けられている。また、オイルシールホルダ25には、プランジャ12に係合する複数のオイルシール41,42を複列に保持するオイルシール保持部25cと、圧縮コイルばね45の一端部を取り囲むプランジャ12と同軸な略円筒状の取付けボス部25eと、が設けられている。
バルブ保持部材21、シリンダ部材22、カップ状部材24およびオイルシールホルダ25は、それぞれ例えば金属材料を成型して予め最終形状に近い素材形状にされ、他部材との嵌合部分や摺動部分、取付け面等に機械加工が施されている。勿論、金属素材を汎用旋盤で加工しただけの軸物であってもよい。
外殻部材23には、その内壁面23aを貫通するように、バルブ保持部材21およびシリンダ部材22が互いの軸線を直交させるように挿入され、気密的に結合されている。そして、外殻部材23は、その略円柱状の内部空間に挿入されたバルブ保持部材21の挿入部分21aおよびシリンダ部材22のフランジ部22b(挿入部分)との間に、吸入弁16より上流側の吸入通路11aに連通する吸入ギャラリ室13を、内室として画成している。なお、外殻部材23に対するバルブ保持部材21の固定や外殻部材23に対するオイルシールホルダ25の固定には、従来の任意の固定方法(圧入、かしめ、ろう付け、溶接、ねじ結合等のいずれかまたは組合せ)を採用することができる。
より具体的には、図3〜図5に示すように、外殻部材23には、内壁面23aを同一方向に貫通する一対の第1挿入穴23b,23cとそれらの軸線C1に対し例えば直角に交差する軸線C2を有する第2挿入穴23dとが形成されている。そして、それら第1挿入穴23b,23cおよび第2挿入穴23dのうち一方の第1挿入穴23b,23cにバルブ保持部材21が挿入されるとともに、第1挿入穴23b,23cおよび第2挿入穴23dのうち他方の第2挿入穴23dにシリンダ部材22が挿入されている。
すなわち、外殻部材23は、第1挿入穴23b,23cが形成されたカップ状部材24の略円筒状の筒状部24a(周壁部)と、その筒状部24aの軸方向の一端側を閉塞する蓋部24b(第1閉塞部)と、その筒状部24aの軸方向の他端側を閉塞するとともに第2挿入穴23dが形成されたオイルシールホルダ25(第2閉塞部)とによって構成されている。
外殻部材23には、さらに、吸入ギャラリ室13中に貯留される燃料の圧力を受圧する弾性膜部材26が、蓋部24bに所定の空隙13gを隔てて近接するように装着されている。この弾性膜部材26は、吸入ギャラリ室13の内壁の一部に弾性を持たせることで、いわゆるパルセーションダンパ27(図1参照)を構成し、吸入通路11aにおける燃料圧力の脈動を吸収したり吸入ギャラリ室13への燃料吸入をアシストしたりできるようになっている。このパルセーションダンパ27は、低圧燃料ポンプ4の吐出圧の可変範囲における最大吐出圧程度でも所要のダンパ性能を発揮し得る設定となっている。
燃料加圧室15は、バルブ保持部材21およびシリンダ部材22のうち少なくとも一方とプランジャ12とによって形成されている。具体的には、バルブ保持部材21が外殻部材23を完全に貫通する筒状体として構成されるとともに、シリンダ部材22の内端部22aが外殻部材23の内部でバルブ保持部材21に連結され、支持されている。そして、バルブ保持部材21およびシリンダ部材22とプランジャ12とによって、燃料加圧室15が形成されている。
図2〜図5に示すように、吸入ギャラリ室13は、外殻部材23の内部であって、プランジャ12と共に燃料加圧室15を画成する形成するバルブ保持部材21およびシリンダ部材22の挿入部分21a等の周囲に形成されている。したがって、吸入ギャラリ室13は、その容積が外殻部材23の内部のうち軸方向両端側で相対的に大きくなっており、その上端側(一端側)に弾性膜部材26が配置され、その下端側(他端側)にパイプ状の燃料導入管部14が設置されている。また、燃料導入管部14は、吸入ギャラリ室13に入る燃料が外殻部材23の内壁面23aに沿って円周方向に流れ得るように方向付けられている。
前述の電磁操作ユニット39は、エンジン2の運転中にその動力により燃料圧送装置10の前記駆動カムが駆動されてプランジャ12のリフト量が周期的に変化するとき、ECU51により通電を制御されるようになっている。
ECU51は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、および、RAM(Random Access Memory)を備えるとともに、不揮発性メモリ等からなるバックアップメモリを備えている。さらに、ECU51は、入力インターフェース回路および出力インターフェース回路等を含んで構成されている。このECU51には図示しないイグニッションスイッチのON/OFF信号が取り込まれるとともに、図外のバッテリからの電源供給がなされるようになっている。さらに、ECU51の入力インターフェース回路には、各種センサ群が接続されており、これらセンサ群からのセンサ情報がA/D変換器等を含む入力インターフェース回路を通してECU51に取り込まれるようになっている。また、ECU51の出力インターフェース回路には、インジェクタ6や低圧燃料ポンプ4等のアクチュエータ類を制御したりするためのスイッチング回路や駆動回路が接続されている。
また、ECU51は、ROM内に格納された制御プログラムを実行することで、公知の電子スロットル制御、燃料噴射量制御、点火時期制御、燃料カット制御等を実行することができる。例えば、ECU51は、エアフローメータにより検出される吸入空気量とクランク角センサにより検出されるエンジン回転数とに基づいて燃焼毎に必要な基本噴射量を算出し、さらにエンジン2の運転状態に応じた各種補正や空燃比フィードバック補正等を施した燃料噴射量を算出し、その燃料噴射量に対応する燃料噴射時間だけ対応するインジェクタ6を開弁駆動する。ここでの燃料噴射時間は、インジェクタ6に供給される燃圧の設定値に応じて理論空燃比を保つよう設定される。
本実施形態においては、ECU51は、さらに、デリバリーパイプ7に装着された燃圧センサ8の検出情報に基づいて、デリバリーパイプ7内の実燃料圧力が予め設定されたデリバリー圧に達しているか否かを一定周期で繰返し判定する。そして、インジェクタ6からの燃料噴射が実行されることによってデリバリーパイプ7内の実燃料圧力が設定されたデリバリー圧より低下すると、ECU51は、燃圧センサ8に検出値が設定値に達するように、プランジャ12のリフト量が増加する期間(燃料の加圧が可能な所定のクランク角度期間)中に電磁操作ユニット39の電磁コイル38に通電し、燃料加圧室15からデリバリーパイプ7内に高圧燃料を圧送させるようになっている。
この電磁操作ユニット39の電磁コイル38への通電時には、操作部材37が吸入弁16の開弁方向に作用する圧縮コイルばね37kからの付勢力に抗して電磁コイル38に吸引され、開弁方向の押圧荷重が除去されることで、吸入弁16が閉弁操作される。
図6に示すように、吸入弁16が閉弁されている期間中は、プランジャ12のリフト量が増加し燃料加圧室15の容積が縮小するのに伴って、燃料加圧室15内の燃料がフィード圧程度の燃料圧力レベルから十分に高圧となる燃料圧力レベル、例えば4〜20MPaにまで加圧され、吐出弁17を押し開けてデリバリーパイプに圧送されるようになっている。なお、図6中のTDCはプランジャ12の上死点位置(最大リフト位置)であり、BDCはプランジャ12の下死点位置(最小リフト位置)である。
一方、吸入弁16の閉弁期間以外の期間においては、ECUによって電磁コイル38の通電が遮断され(同図中の通電状態OFF)、電磁操作ユニット39の操作部材37に圧縮コイルばね37kからの開弁方向の付勢力が作用して、操作部材37からの押圧力により吸入弁16が開弁操作される。
図6に示すように、吸入弁16は、燃料加圧室15内の圧力が低下したときに開弁し、それより先の燃料加圧室15内の圧力低下中に吐出弁17が閉弁することになる。また、吸入弁16が開弁している期間中は、駆動カムの回転に伴ってプランジャ12のリフト量が減少し、燃料加圧室15の容積が増加するときには、燃料加圧室15内に燃料が吸入される。しかし、駆動カムの回転に伴ってプランジャ12のリフト量が増加し、燃料加圧室15の容積が縮小するときには、それに伴って燃料加圧室15内の燃料が吸入通路11a側に洩れ出るため、燃料加圧室15内の燃料が高圧の燃料圧力レベルにまで加圧されない状態(非加圧状態)となる。
リリーフ弁19は、デリバリーパイプ側の燃料圧力が通常の加圧された燃料圧力レベルを超える過大な燃料圧力レベルに達して、その前後差圧が前記リリーフ弁開弁差圧に達したときに、開弁する。
吸入ギャラリ室13と副室29の間の内部連通路29aは、例えばシリンダ部材22とオイルシールホルダ25との間にそのいずれか一方を部分的に切り欠いて形成することもできるし、副室29内におけるプランジャ12の占有体積の変化が殆どなければ両者間の隙間によって内部連通路29aが形成されてもよい。
上述のように、本実施形態の燃料供給システムは、燃料圧送装置10と、その燃料導入口10aに配管接続された供給圧可変の低圧燃料ポンプ4と、燃料吐出口11cに配管接続されるとともに複数のインジェクタ6が接続され、吐出通路11bからの高圧燃料を複数のインジェクタ6に供給可能に貯留するデリバリーパイプ7とを備えている。
そして、ECU51は、インジェクタ6の開弁により燃料噴射を実行させるとともに、その燃料噴射によりデリバリーパイプ7内の実燃料圧力が設定されたデリバリー圧より低下すると、その低下を補うように、プランジャ12のリフト量が増加する期間中に必要な燃料量に対応する加圧期間だけ電磁操作ユニット39の電磁コイル38に通電する。
一方、ECU51は、次に述べる高温状態発生判定装置の機能および切替え制御装置の機能を有しており、これらの機能を発揮するための制御プログラムや設定値、判定条件等がECU51の内蔵ROMに予め格納されている。さらに、ECU51は、それらの制御プログラムの実行に必要な作業メモリ領域を確保できるRAM等を装備している。
すなわち、ECU51は、燃料圧送装置10の設置環境が特定の高温状態となるか否かの判定条件を予めROM内に記憶保持しており、少なくとも燃料圧送装置10の燃料加圧室15から吐出通路11bへの燃料の吐出が停止される特定の高温状態が予測されることを判定する高温状態発生判定部の機能を有している。ここで、特定の高温状態とは、例えばエンジン2が高温で停止した直後の冷却(水冷および空冷)の停止によりエンジン2が高温となるいわゆる状態、あるいは、エンジン2の燃料カットもしくは高圧燃料噴射の停止により燃料圧送装置10内に燃料が停滞した状態でその燃料圧送装置10の周囲温度が高温となるような状態である。
また、低圧燃料ポンプ4は、燃料圧送装置10側に燃料を吐出するように、エンジン2のクランク軸回転に応動する駆動カムによってエンジン2の運転中に常時駆動されるが、ECU51は、その低圧燃料ポンプ4の回転速度を変化させることで、低圧燃料ポンプ4から燃料圧送装置10への燃料のフィード圧力を切替え制御する切替え制御装置の機能を併有している。
このECU51は、高温状態発生判定部の機能によって特定の高温状態の発生が予測されることを条件に、その予測時点から特定の高温状態の発生が予測される時点までの期間をフィード圧力の昇圧可能期間として把握し、その昇圧可能期間中に低圧燃料ポンプ4から燃料圧送装置10への燃料供給圧力を通常の第1の供給圧(例えば、300〜400kPa)からその供給圧より高圧となる第2の供給圧(例えば、500〜600kPa)に切り替える切替え制御を実行するようになっている。
また、この切替え制御装置としてのECU51は、燃料加圧室15から吐出通路11bへの燃料の吐出が停止される場合に限らず、低圧燃料ポンプ4から燃料圧送装置10への燃料供給の停止が予測される場合にも、その予測時点から燃料供給の停止時点までの間の一定期間内(燃料供給の停止前の一定期間内)に、低圧燃料ポンプ4からのフィード圧力(燃料供給圧力)を第1の供給圧から第2の供給圧に切り替えるようになっている。
さらに、ECU51は、低圧燃料ポンプ4からのフィード圧力(燃料供給圧力)を第1の供給圧から第2の供給圧に切り替えるのに要する時間を、例えば一定の昇圧待機時間としてROMに記憶している。もっとも、一定の昇圧待機時間を設定するのでなく、配管3または吸入ギャラリ室13内の燃料圧力を検出するセンサ情報によって第2の供給圧に達したことを直接的に判定することができる。また、エンジン2の運転状態(エンジン回転数、冷却水温、吸入空気温度等)に応じた第2の供給圧を設定するためのマップ、あるいは、エンジン2の運転状態や低圧燃料ポンプ4の作動状態に応じて有効な昇圧待機時間を設定するためのマップを用いて、第1の供給圧から第2の供給圧に切り替える昇圧待機時間をより的確に制御することも考えられる。
なお、低圧燃料ポンプから燃料圧送装置への燃料供給が停止されることが予測される場合とそれ以外の場合とで、第2の供給圧が異なる圧力値に設定されてもよい。すなわち、特定の高温状態のうち高温環境となる時間や温度上昇の程度の予測値によって第2の供給圧を変更することができるし、昇圧可能期間中に第2の供給圧で低圧燃料ポンプを運転させる時間の長短を変更することもできる。
次に、作用について説明する。
上述のように構成される本実施形態の燃料供給システムでは、通常のエンジン2の運転中、インジェクタ6の開弁によりエンジン2における燃料噴射が実行される。そして、これに対し、燃圧センサ8で検出されるデリバリーパイプ7内の燃料圧力を設定デリバリー圧に維持するよう、プランジャ12のリフト量が増加する期間中に電磁操作ユニット39により吸入弁16が閉弁操作され、高圧燃料がデリバリーパイプ7に供給される。また、エンジン2の通常の運転状態においては、低圧燃料ポンプ4から燃料圧送装置10への燃料のフィード圧力が第1の供給圧レベルになるように、低圧燃料ポンプ4の回転速度がECU51によって第1の供給圧レベルに対応する速度に制御される。
一方、車両の一時停止に伴うエンジン2の停止時(アイドリングストップ時)、車両走行中におけるエンジン2の停止時(例えば、ハイブリッド車両におけるEV(電気自動車)モード走行時)、車両停止に伴うエンジン2の停止直後(いわゆる高温ソーク時)等においては、エンジン2の冷却が停止されたり冷却手段の一部しか作動しない状態となる。したがって、このような状態が高温環境下で一定時間以上続くと、エンジン2が高温となったりエンジンルーム内が非常に高温となったりする特定の高温状態となり得る。
また、エンジン2の燃料カット時(例えば、減速燃料カット時)や上述のエンジン2の停止時のように、エンジン2への燃料供給が停止されると、あるいは、デュアル噴射式のエンジンで筒内噴射が実行されないポート噴射のみの運転状態が続くと、燃料圧送装置10内に燃料が滞留することから、燃料圧送装置10内の燃料の温度が上昇し易くなる。
そして、特定の高温状態下で燃料圧送装置10内の燃料の温度が上昇し易くなると、燃料圧送装置10内の燃料の圧力が飽和蒸気圧に達してしまい、燃料ベーパが発生してしまう可能性が高くなる。
そこで、本実施形態では、少なくとも低圧燃料ポンプ4から燃料圧送装置10の燃料導入口10aへの燃料供給圧が低下して燃料ベーパが発生し易くなると、導入逆止弁30の逆流阻止機能が発揮されて導入逆止弁30より下流側の燃料が高圧に密閉保持される。したがって、高温環境下で加圧ポンプ機構20が停止して燃料圧送装置10内に燃料が停滞するような状態となっても、導入逆止弁30より上流側の燃料の圧力が燃料ベーパの発生し難い程度に高い燃料圧力に維持され、燃料ベーパの発生が有効に抑制される。
特に、本実施形態では、ECU51が、その高温状態発生判定部としての機能によって特定の高温状態が発生するか否かを予測し、特定の高温状態の発生が予測される条件が成立すると、その特定の高温状態の発生予測時点までの比較的短時間の昇圧可能期間内に、低圧燃料ポンプ4への供給電力を増大させることで、低圧燃料ポンプ4から燃料圧送装置10への燃料供給圧力を第1の供給圧から第2の供給圧に昇圧させる切替え制御を実行する。
昇圧可能期間が経過すると、少なくとも電磁操作ユニット39の電磁コイル38が非励磁状態とされて、燃料加圧室15から吐出通路11bへの燃料の吐出が停止される。そして、燃料加圧室15からデリバリーパイプ7側への高圧燃料の吐出が、プランジャ12の往復周期より非常に長い停止期間に亘って停止されることになる。
この間、燃料加圧室15から吐出通路11bへの燃料の吐出が停止される際には、吸入ギャラリ室13内の燃料圧力が第2の供給圧程度に高められた状態で、吸入ギャラリ室13や吸入弁16より上流側、すなわち、燃料導入口10a側に位置する導入逆止弁30が閉弁することになる。すなわち、低圧燃料ポンプ4から燃料導入口10aへの燃料供給圧が低下すると、導入逆止弁30の逆流阻止機能が発揮される段階から、吸入ギャラリ室13内の燃料圧力の低下が防止される。
したがって、燃料加圧室15からの高圧燃料の吐出が停止された状態で特定の高温状態が発生し、燃料圧送装置10内の燃料の温度が一時的に上昇しても、吸入ギャラリ室13内の圧力が予め第2の供給圧程度に高められていることから、その飽和蒸気圧に達し難く、吸入ギャラリ室13内における燃料ベーパの発生が有効に抑制されることになる。また、この吸入ギャラリ室13内の燃料圧力の昇圧により、副室29を通して吸入ギャラリ室13側にリーク燃料が排出される燃料加圧室15内の燃料圧力の低下も抑制され、特定の高温状態が生じ続ける時間程度の間、燃料圧送装置10内の全域において燃料ベーパの発生が有効に抑制されることになる。
燃料加圧室15からデリバリーパイプ7側への高圧燃料の吐出が再開される際には、吸入ギャラリ室13内の燃料が燃料加圧室15内に吸入され、低圧燃料ポンプ4からの燃料が燃料圧送装置10内に再び導入される。
このとき、燃料圧送装置10内には燃料ベーパが滞留しておらず、インジェクタ6からの燃料噴射に応じて、燃料圧送装置10からデリバリーパイプ7に所定のデリバリー圧に加圧された燃料が供給される。また、燃料圧送装置10に低圧燃料ポンプ4からの所定フィード圧力の燃料が導入される。したがって、エンジン2の良好な再始動が可能となる。
なお、吸入ギャラリ室13内の燃料圧力が高く、パルセーションダンパ27も存在するため、燃料加圧室15からの燃料圧送の再開直後には導入逆止弁30が即座に開弁しないことが生じ得る。しかし、燃料加圧室15からの燃料吐出が数回繰り返される間に、吸入ギャラリ室13内の燃料圧力が第1の供給圧程度に低下し、導入逆止弁30が開弁し得る状態となる。
より具体的には、ECU51は、エンジン2の運転中に、例えば図7に示すようなフィード圧切替え制御を実行する。
同図において、まず、エンジン2の停止を要求するエンジン停止信号が発生し、停止処理が開始されると(ステップS11)、これをトリガーとして、フィード圧切替え制御が開始される。ここにいうエンジン停止信号は、例えばイグニッションキーがOFF位置に操作されてイグニッションOFFの要求が発生するとき、公知のアイドリングストップを実行する車両でエンジン2を一時停止させるとき、あるいは、ハイブリッド方式のパワーユニットを搭載する車両でそのパワーユニットの効率を高めるためにエンジン2を一時停止させるためにイグニッションOFFの要求が発生したときである。
次いで、エンジン2への燃料供給を停止させる燃料カット状態か否かが判断される(ステップS12)。そして、燃料カット状態であれば(ステップS12でYESの場合)、次いで、電磁操作ユニット39の電磁コイル38が非励磁状態となるよう電磁操作ユニット39の制御が停止される(ステップS13)。したがって、吸入弁16の開弁状態が保持される状態に移行する。
次いで、ECU51により、低圧燃料ポンプ4の吐出圧力を増加させる制御信号(圧力増加指示信号)が出力され(ステップS14)、低圧燃料ポンプ4からのフィード圧力が第1の供給圧から昇圧され始める。
そして、第2の供給圧に達する時点か、第2の供給圧に達することが十分に期待できる時点までの昇圧待機時間が経過するまで、待機する(ステップS15)。
次いで、低圧燃料ポンプ4の供給圧力を第2の供給圧から第1の供給圧程度まで低下させる制御信号(圧力低下指示信号)が出力され(ステップS16)、燃料圧送装置10から燃料タンクT側に延びる配管3等に掛かる圧力を軽減するとともに導入逆止弁30を確実に閉弁させた後、低圧燃料ポンプ4が停止される(ステップS17)。
本実施形態では、エンジン2の運転中に常時運転される低圧燃料ポンプ4の通常の負荷は、エンジン2の通常運転中の第1の供給圧に対応する軽負荷となる。したがって、エンジン2の通常運転中における低圧燃料ポンプ4の消費電力が十分に抑えられ、エンジン2の燃費が抑えられることになる。
また、低圧燃料ポンプ4から燃料圧送装置10への燃料供給圧力を第1の供給圧から第2の供給圧に昇圧させる切替え制御が実行される時間は、短時間で済む。したがって、低圧燃料ポンプ4や配管3等を従来に比べて高性能のものにしたりする必要は無く、燃料供給システムの製造コストの上昇も回避できる。
さらに、本実施形態では、燃料加圧室15からの高圧燃料の吐出が停止されることが予測される場合だけでなく、低圧燃料ポンプ4から燃料圧送装置10への燃料供給が停止されることが予測される場合には、常に、その停止前に低圧燃料ポンプ4からの燃料供給圧力が第2の供給圧に切り替えられて、燃料加圧室15内の燃料圧力の低下も抑えられる状態となるから、例えばエンジン2の停止直後の冷却停止によって特定の高温状態となっても、燃料ベーパの発生がより有効に抑制できることになる。
加えて、本実施形態の燃料圧送装置10においては、加圧ポンプ機構20のポンプボデー11を構成するバルブ保持部材21、シリンダ部材22および外殻部材23が、それぞれ筒状や有底筒状程度のいわゆる軸物形状に簡素化できることになり、ポンプボデー11の駄肉を大幅に減少させてポンプボデー11の小型・軽量化を図ることができるとともに、吸入通路11a、吐出通路11bおよび燃料加圧室15等の加工を格段に容易化することができる。しかも、バルブ保持部材21と外殻部材23の間に、吸入弁16より上流側で燃料を貯留可能な比較的容積の大きい吸入ギャラリ室13が形成されることから、吸入ギャラリ室13に導入される燃料の圧力変動や温度上昇をより有効に抑制可能となる。
また、燃料圧送装置10においては、ポンプボデー11の内部に、副室29を吸入ギャラリ室13に連通させる内部連通路29aが形成されているので、燃料加圧室15内の燃料の圧力は、導入逆止弁30により所望圧力に保持可能な吸入ギャラリ室13内の圧力を下回ることがなく、燃料加圧室15内の燃料における燃料ベーパの発生を有効に抑制できることとなる。
さらに、内部連通路29aは、少なくとも加圧ポンプ機構20の燃料加圧室15から副室29側に漏れ出る燃料を吸入ギャラリ室13に排出させることができるリーク燃料排出通路となっている。したがって、燃料加圧室15から漏れる燃料が副室29から吸入ギャラリ室13に排出され、ポンプボデー11の外部に漏れることがない。
また、吸入弁16は、閉弁時に逆止弁として機能する弁体16aと、その弁体16aを閉弁位置に付勢する第1付勢機構としての予圧ばね16cと、その予圧ばね16cの付勢力に抗し弁体16aを開弁位置に保持することができる電磁操作ユニット39とを有しているので、燃料の非加圧時に電磁操作ユニット39によって吸入弁16を開弁させるだけでよく、加圧ポンプ機構20の加圧期間を任意の期間に設定できる。
しかも、電磁操作ユニット39は、吸入弁16の閉弁を指示する信号の入力時にのみ第2付勢力の発生を停止し、指令信号が入力されない通常状態では常に第2付勢力を発生するので、吸入弁16が常開型の弁となり、吸入弁16の閉弁指令が入力されない状態では弁体16aを閉弁位置に付勢してその逆止弁機能を発揮させることができ、消費電力を抑えることができる。また、電磁操作ユニット39の電磁コイル38は、信号入力時に圧縮コイルばね37kの付勢力と相殺する方向および大きさの操作力を発生するので、エネルギ消費を抑えることができる。
このように、本実施形態の燃料供給システムにおいては、燃料圧送装置10の燃料導入口10aへの燃料供給圧が低下すると、燃料導入口10a近傍の導入逆止弁30が逆流阻止機能を発揮することで、吸入ギャラリ室13内の燃料圧力の低下を防止するようになっているので、高温環境下で加圧ポンプ機構20が停止して燃料圧送装置10内に燃料が停滞するような状態となっても、燃料圧送装置10内の燃料の圧力を燃料ベーパが発生し難い程度に高い燃料圧力に維持して、燃料ベーパの発生を有効に抑制することができる。したがって、燃料ベーパの発生を確実に防止することができる燃料圧送装置および燃料供給システムを提供することができ、さらに、その加圧ポンプ機構20の吸入側の吸入ギャラリ室13に低温の燃料を十分に貯留可能な燃料圧送装置および燃料供給システムを提供することができる。
加えて、ポンプボデー11における駄肉部や体格の増加を抑え、小型化および軽量化を図った生産性の良い低コストの燃料圧送装置を提供することができる。
なお、上述の一実施形態では、ECU51はエンジン2の運転中にフィード圧切替え制御を実行するものとしたが、エンジン2が回転が停止し、燃料加圧室15から吐出通路11bへの燃料吐出が停止される時点またはその後に、低圧燃料ポンプ4の供給圧力を第1の供給圧から第2の供給圧に昇圧させるフィード圧切替え制御を実行することも可能である。また、吸入弁16は、燃料加圧室15からデリバリーパイプ7内に高圧燃料を圧送させる期間にだけ電磁操作ユニット39の電磁コイル38に通電して閉弁させ、他の期間は電磁コイル38を非励磁状態として常時開弁するように構成されていたが、燃料加圧室15からデリバリーパイプ7内に高圧燃料を圧送させる期間にだけ電磁操作ユニット39の電磁コイル38を非励磁状態にして閉弁させ、他の期間は電磁コイル38を通電励磁状態として常時開弁させる構成も考えられる。
また、上述の一実施形態では、吸入弁16、吐出弁17およびリリーフ弁19は、それぞれの弁体16a,17a,19aを板状にした構成であったが、球状弁体その他の公知の弁体形状を有するものにできることはいうまでもない。
さらに、上述の一実施形態では、副室29がオイルシールホルダ25および複数のオイルシール41,42によって外部から遮断されていたが、ベローズ式のシール装置等によって外部から遮断されるようにすることも考えられる。
以上説明したように、本発明に係る燃料圧送装置および燃料供給システムは、燃料導入口への燃料供給圧が低下すると、導入逆止弁が逆流阻止機能を発揮することで、それより下流側の燃料圧力の低下を防止するようにしている。したがって、高温環境下で加圧ポンプ機構が停止して装置内に燃料が停滞するような状態で燃料導入口への燃料供給圧が低下しても、燃料圧送装置内の燃料の圧力を燃料ベーパが発生し難い程度に高燃料圧力に維持して、燃料ベーパの発生を有効に抑制することができる。その結果、燃料ベーパの発生を確実に防止することができる燃料圧送装置および燃料供給システムを提供することができるものであり、本発明は、内燃機関の燃料を加圧ポンプ機構によって高圧に加圧して吐出する燃料圧送装置およびそれを備えた燃料供給システム全般に有用である。