JP2006152971A - 内燃機関の失火判定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 エンジンの失火と、悪路走行時または失火後の揺り戻し現象とを明確に判別することができ、失火判定の信頼性の高い内燃機関の失火判定装置を提供する。
【解決手段】 エンジンの回転変動量ΔNEが所定の閾値N1を越えた際、失火が生じた可能性があると判断する。その失火の可能性のある気筒の点火タイミングから2回後の点火タイミングで膨張行程を迎える気筒のその膨張行程時の回転変動量と、3回後の点火タイミングで膨張行程を迎える気筒のその膨張行程時の回転変動量とを比較し、その差が所定量を超えているときに上記失火が生じていたと判定する。
【選択図】 図4
【解決手段】 エンジンの回転変動量ΔNEが所定の閾値N1を越えた際、失火が生じた可能性があると判断する。その失火の可能性のある気筒の点火タイミングから2回後の点火タイミングで膨張行程を迎える気筒のその膨張行程時の回転変動量と、3回後の点火タイミングで膨張行程を迎える気筒のその膨張行程時の回転変動量とを比較し、その差が所定量を超えているときに上記失火が生じていたと判定する。
【選択図】 図4
Description
本発明は内燃機関の失火判定装置に係る。特に、本発明は、内燃機関の回転変動に基づいて失火発生の有無を認識する失火判定装置における判定動作の信頼性の向上を図るための対策に関する。
従来より、例えば自動車用内燃機関において混合気への着火がなされない現象、いわゆる「失火」が発生すると、未燃混合気が排気通路に排出され、排気エミッションの悪化や、排気浄化触媒への悪影響が懸念される。
そこで、上記失火の発生時には機関回転速度の変動(以下、単に回転変動と呼ぶ)が大きくなることに着目し、この回転変動に基づいて失火の発生を判定する失火判定装置が提案されている。この種の装置における失火判定の基本原理は以下のとおりである。先ず、ある一つの気筒に失火が発生した場合、その気筒の膨張行程(実際には失火しており爆発していない行程)における機関回転速度が次第に低下していく。その結果、この失火を生じた気筒の膨張行程中においてクランクシャフトが一定クランク角度を回転するのに要する時間が、自他気筒の膨張行程時におけるその時間よりも長くなる。このため、これら時間を計測して比較することにより失火発生の有無を判定することが可能になる。
具体的には、ある気筒(例えば第3番気筒)が膨張行程にあるときに、この膨張行程中においてクランクシャフトが一定クランク角度を回転するのに要する時間と、この膨張行程よりも所定クランク角度前(例えば360°前)に膨張行程を迎えていた気筒(例えば第2番気筒)の膨張行程中においてクランクシャフトが一定クランク角度を回転するのに要する時間との差を演算(前者の時間から後者の時間を減算)する。そして、この演算値が所定の閾値を越えている場合には、内燃機関の回転変動が大きくなったと判断して失火(第3番気筒に失火)が発生したと判定している。
ところで、上記失火が発生した場合、その後に「揺り戻し」と呼ばれる現象が生じることがあり、この揺り戻しが原因で回転変動が大きくなった際に失火を誤検出してしまうおそれがある。この揺り戻しの発生原因について以下に説明する。先ず、失火の発生により機関回転速度が低下した場合に、その後、車両の慣性力(パワートレーンの慣性力)やクラッチのダンパースプリング等により内燃機関が強制的に回転され、その結果、機関回転速度が低下した反動でその回転速度が急上昇するといった現象が生じる。この反動は、例えばクラッチディスクに備えられたトーションスプリングの伸縮の影響などによって生じたりする。そして、この機関回転速度の上昇の後には、上昇しすぎた回転速度の反動により再び回転速度が低下する(例えばパワートレーン側が回転抵抗となって回転が落ち込む)といった現象が生じる。このような回転速度の上昇と降下とが繰り返される一種のハンチング現象として上記「揺り戻し」が発生することになる。この回転変動はやがて減衰し、再度の失火が生じない限り、内燃機関は一定回転に落ち着くことになるが、この揺り戻しの発生初期には、上記演算値が閾値を越えてしまう可能性があり、その結果、失火が発生していないにも拘わらず失火が発生したと誤判定されてしまうことになる。
尚、この揺り戻しは、失火の発生後ばかりでなく、車両が悪路を走行する場合にも生じることがある。つまり、路面の凹凸などの影響によって機関回転速度が急激に変動して上記と同様の現象が生じてしまうのである。この場合にも、路面の影響によって機関回転速度の変動が大きくなっただけであるにも拘わらず、上記演算値が閾値を越えてしまって失火の誤判定がなされてしまう可能性がある。
特に、マニュアルトランスミッション車や無段変速機を備える車両のように、内燃機関と車両駆動軸(トランスミッション)とが直結されているタイプの車両にあっては揺り戻しの影響が顕著に現われる。また、オートマティックトランスミッション車のロックアップ(トルクコンバータの直結)時にも同様の現象が発生する可能性がある。
OBD対応国向けの自動車では、制御回路中に失火カウンタが備えられており、失火発生の判定を行う度に失火カウンタがインクリメントされ、所定の機関回転回数(例えば1000回転)当たりの失火カウンタのカウント値が所定値(例えば30)を越えるとMIL(警告灯)が点灯することになる。従って、上記のような失火の誤判定が頻繁に行われてしまうと、実際の失火発生回数が上記所定値よりも小さくても早期にMILが点灯することになってしまい、ユーザに違和感を与えてしまう。
そこで、このような失火の誤判定を解消するべく、回転変動の経時変化パターンが、予め定められた失火パターンとなったときに失火が生じたと判定するようにしたものが知られている(例えば、下記の特許文献1)。
この特許文献1に開示されているものは、各気筒の膨張行程時においてクランクシャフトが一定クランク角度を回転するのに要する経過時間Tを検出し、膨張行程が一つ間隔を隔てて行われる気筒間(4気筒エンジンの場合のクランク角度360°の角度間隔で膨張行程が行われる気筒同士)の上記経過時間Tの偏差ΔTn(=Tn−Tn-2)を求め、この
偏差ΔTnが閾値K1を越え且つ経過時間Tにおける偏差の変化パターンが失火時特有の
偏差ΔTnが増大から減少に転じるパターンとなったときに失火が生じたと判定するよう
にしている。
特開平6−307284号公報
偏差ΔTnが閾値K1を越え且つ経過時間Tにおける偏差の変化パターンが失火時特有の
偏差ΔTnが増大から減少に転じるパターンとなったときに失火が生じたと判定するよう
にしている。
ところが、特に、上述した失火の発生後におけるこの失火に起因する揺り戻しが生じている場合、失火発生時の経過時間Tにおける偏差ΔTnの変化パターンと、この揺り戻し
に伴う経過時間Tにおける偏差ΔTnの変化パターンとは極めて近似したものとなってい
る。
に伴う経過時間Tにおける偏差ΔTnの変化パターンとは極めて近似したものとなってい
る。
このため、上記特許文献1に開示されている技術にあっては、これらの識別(失火発生と、失火に起因する揺り戻しとの識別)を明確に行うことができない可能性があり、失火判定の信頼性をよりいっそう高めるためには更なる改良が必要であった。
また、上記悪路走行時においてもその際の上記偏差ΔTnの変化パターンが失火発生時
の変化パターンに近似している場合があり、このような状況で両者を識別するためにも失火判定の信頼性をよりいっそう高める改良が必要であった。
の変化パターンに近似している場合があり、このような状況で両者を識別するためにも失火判定の信頼性をよりいっそう高める改良が必要であった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記失火発生と揺り戻しとを明確に判別することができ、失火判定の信頼性の高い失火判定装置を提供することにある。
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決手段は、内燃機関の回転変動量が所定の閾値を超えたときに失火が生じている可能性があると判断し、この判断がなされたときに、予め記憶されている失火時特有の回転変動の経時変化パターンに沿って回転変動が変化している場合に失火が発生していると判定する内燃機関の失火判定装置を前提とす
る。この失火判定装置に対し、失火発生の有無を判定するための回転変動の経時変化パターンの1サイクルを、失火発生の可能性があったタイミング以降に回転変動傾向が「負」から「正」へ変化するタイミングを含む期間に設定し、この回転変動傾向が「負」から「正」に変化するタイミングを含む期間における回転変動の経時変化パターンが、予め記憶されている失火時特有の回転変動の経時変化パターンに沿っているか否かによって失火発生の有無を判定する失火判定手段を備えさせている。
る。この失火判定装置に対し、失火発生の有無を判定するための回転変動の経時変化パターンの1サイクルを、失火発生の可能性があったタイミング以降に回転変動傾向が「負」から「正」へ変化するタイミングを含む期間に設定し、この回転変動傾向が「負」から「正」に変化するタイミングを含む期間における回転変動の経時変化パターンが、予め記憶されている失火時特有の回転変動の経時変化パターンに沿っているか否かによって失火発生の有無を判定する失火判定手段を備えさせている。
この特定事項により、内燃機関の駆動中にその回転変動量が所定の閾値を超えたときには、失火が生じている可能性があると判断する。その後、回転変動量の変動傾向は一旦「正」から「負」に変化することになるが、その後、この回転変動傾向が「負」から「正」へ変化するタイミングにおいて、上記回転変動量が所定の閾値を超えた原因が、失火発生によるものであるか、或いは揺り戻し現象によるものであるかを判定する。つまり、失火発生の可能性あるタイミング以降に回転変動傾向が例えば最初に「負」から「正」へ変化するタイミングを含む期間を、失火発生の有無を判定するための回転変動の経時変化パターンの1サイクルとして設定している。これは、回転変動量が所定の閾値を超えた原因が失火発生によるものであった場合には、上記回転変動傾向が「負」から「正」へ変化するタイミングでの変化量は極めて大きく、一方、回転変動量が所定の閾値を超えた原因が揺り戻し現象によるものであった場合には、上記回転変動傾向が「負」から「正」へ変化するタイミングでの変化量は小さいことを本願発明の発明者らが見出し、この現象を失火判定に利用するものである。このようにして、これまでの回転変動経時変化パターンの認識では十分な信頼性が得られていなかった「失火発生と揺り戻し現象との判別」の信頼性を大幅に高めることができ、失火誤判定の発生を回避することができる。
また、他の解決手段として以下の構成が掲げられる。先ず、内燃機関の回転変動量が所定の閾値を超えたときに失火が生じている可能性があると判断し、この判断がなされたときに、予め記憶されている失火時特有の回転変動の経時変化パターンに沿って回転変動が変化している場合に失火が発生していると判定する内燃機関の失火判定装置を前提とする。この失火判定装置に対し、失火発生の有無を判定するための回転変動の経時変化パターンの1サイクルを、失火発生の可能性があった気筒の点火タイミングに対して1回前の点火タイミングを迎えていた気筒の燃焼行程時から、上記失火発生の可能性があった気筒の点火タイミングに対して3回後の点火タイミングを迎える気筒の燃焼行程時までの期間に設定し、この期間における回転変動の経時変化パターンが、予め記憶されている失火時特有の回転変動の経時変化パターンに沿っているか否かによって失火発生の有無を判定する失火判定手段を備えさせている。
この特定事項により、一般的な自動車用エンジンにあっては、失火が発生した気筒の点火タイミングに対して3回後の点火タイミングを迎える気筒の燃焼行程時において、上記回転変動傾向が負から正に変化するといった特性を有している場合が多い、従って、このタイミングにおいて、上記回転変動量が所定の閾値を超えた原因が、失火発生によるものであるか、或いは揺り戻し現象によるものであるかを判定することが可能である。この解決手段によっても「失火発生と揺り戻し現象との判別」の信頼性を大幅に高めることができ、失火誤判定の発生を回避することができる。
上述した失火発生と揺り戻し現象とを判別するためのより具体的な構成としては以下のものが掲げられる。先ず、内燃機関の回転変動量が所定の閾値を超えた原因が失火の発生によるものである場合と揺り戻し現象によるものである場合とを判別可能となるように、それぞれの回転変動の経時変化パターンを記憶手段に記憶されている。そして、失火判定手段が、この記憶手段に記憶されている経時変化パターンに基づいて失火発生の有無を判定する構成としている。
また、上記記憶手段に記憶されている回転変動の経時変化パターンに係る条件としては以下のものが掲げられる。つまり、失火判定開始タイミングに膨張行程を迎えている気筒の膨張行程時における回転変動量をΔNE0、その1点火前の回転変動量をΔNE1、2点火前の回転変動量をΔNE2、3点火前の回転変動量をΔNE3、4点火前の回転変動量をΔNE4として以下の条件式が記憶手段に記憶されている。
(I) ΔNE3≧0
(II) ΔNE3×H<|ΔNE1|
(III)ΔNE3×I≧ΔNE4
(IV) ΔNE3×J≧ΔNE2
(V)|ΔNE1|×K≧|ΔNE0|
(H、I、J、Kは定数)
そして、失火判定手段が、上記各条件のうち条件(I)〜条件(IV)のみの論理積を満たしている場合には、失火発生後の揺り戻しが発生していると判定する一方、条件(I)〜条件(V)の全ての論理積を満たしている場合には、上記3点火前の気筒に失火が発生していると判定する構成となっている。
(II) ΔNE3×H<|ΔNE1|
(III)ΔNE3×I≧ΔNE4
(IV) ΔNE3×J≧ΔNE2
(V)|ΔNE1|×K≧|ΔNE0|
(H、I、J、Kは定数)
そして、失火判定手段が、上記各条件のうち条件(I)〜条件(IV)のみの論理積を満たしている場合には、失火発生後の揺り戻しが発生していると判定する一方、条件(I)〜条件(V)の全ての論理積を満たしている場合には、上記3点火前の気筒に失火が発生していると判定する構成となっている。
これら特定事項により、失火発生と揺り戻し現象とを判別するための構成の具体化を図ることができる。
また、上記揺り戻し現象の起因の一例としては、例えば内燃機関の出力軸に車両駆動系が直結されていることが掲げられる。尚、上述した如く揺り戻し現象の起因はこれに限られるものではない。
以上説明したように、本発明では、失火発生の可能性あるタイミング以降に回転変動傾向が「負」から「正」へ変化する状況を把握し、回転変動量が所定の閾値を超えた原因が失火発生によるものであるのか揺り戻し現象によるものであるのかを高精度で判別することが可能になる。このため、失火カウンタによって失火頻度を認識するシステムにあっては、失火の誤判定が頻繁に行われてしまって正確な失火発生回数が把握できなくなるといった状況を回避することができ、システムの信頼性を大幅に向上することができる。
以下、本発明実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、本発明を自動車用4気筒エンジンに適用した場合について説明する。
−エンジンの構成説明−
先ず、図1を参照して、本実施形態に係る失火判定装置が適用されるエンジン(内燃機関)、並びにその周辺装置の概略構成について説明する。図1に示すように、本実施形態に係るエンジン1は、4気筒分(図1では1気筒分のみを示す)のシリンダボア2を有するシリンダブロック1aと、シリンダヘッド1bとを備えている。各シリンダボア2内には上下動可能に設けられたピストン3が備えられ、このピストン3が、コンロッド(コネクティングロッド)3aを介してエンジン1の出力軸であるクランクシャフト10に連結されている。そして、シリンダボア2の内部において、ピストン3とシリンダヘッド1bとにより囲まれた空間によって燃焼室4が区画形成されている。
先ず、図1を参照して、本実施形態に係る失火判定装置が適用されるエンジン(内燃機関)、並びにその周辺装置の概略構成について説明する。図1に示すように、本実施形態に係るエンジン1は、4気筒分(図1では1気筒分のみを示す)のシリンダボア2を有するシリンダブロック1aと、シリンダヘッド1bとを備えている。各シリンダボア2内には上下動可能に設けられたピストン3が備えられ、このピストン3が、コンロッド(コネクティングロッド)3aを介してエンジン1の出力軸であるクランクシャフト10に連結されている。そして、シリンダボア2の内部において、ピストン3とシリンダヘッド1bとにより囲まれた空間によって燃焼室4が区画形成されている。
シリンダヘッド1bには、各燃焼室4に対応して点火プラグ11が取り付けられている。また、シリンダヘッド1bには、各燃焼室4に通じる吸気ポート5a及び排気ポート6aがそれぞれ設けられ、これら吸気ポート5a及び排気ポート6aには、吸気通路5及び排気通路6がそれぞれ接続されている。吸気ポート5a及び排気ポート6aの燃焼室4に
通じる各開口端には、吸気バルブ7及び排気バルブ8がそれぞれ設けられている。吸気バルブ7及び排気バルブ8は、クランクシャフト10の動力によってそれぞれ回転する吸気カムシャフト31及び排気カムシャフト32によって開閉される。クランクシャフト10の動力は、タイミングベルト35及び各タイミングプーリー33,34を介して、上記吸気カムシャフト31及び排気カムシャフト32に伝達されている。
通じる各開口端には、吸気バルブ7及び排気バルブ8がそれぞれ設けられている。吸気バルブ7及び排気バルブ8は、クランクシャフト10の動力によってそれぞれ回転する吸気カムシャフト31及び排気カムシャフト32によって開閉される。クランクシャフト10の動力は、タイミングベルト35及び各タイミングプーリー33,34を介して、上記吸気カムシャフト31及び排気カムシャフト32に伝達されている。
また、上記吸気ポート5aの近傍には、各気筒に対応して燃料噴射弁(インジェクタ)9がそれぞれ備えられている。各燃料噴射弁9には図示しない燃料供給系を介して所定圧力の燃料が供給されている。
一方、吸気通路5にはサージタンク16が設けられ、このサージタンク16の上流側には、アクセルペダル18の操作に応じて開閉駆動されるスロットルバルブ19が設けられている。このスロットルバルブ19の開度に応じて吸気通路5へ導入される吸入空気量が調整される。
エンジン1の運転が開始されると、吸気通路5内への吸入空気の導入とともに燃料噴射弁9から燃料が噴射されることにより、それら吸入空気と燃料とが混合されて混合気となる。そして、エンジン1の吸入行程において、吸気バルブ7により吸気ポート5aが開かれることにより混合気が吸気ポート5aを通じて燃焼室4に取り込まれる。この燃焼室4に取り込まれた混合気は、圧縮行程において圧縮された後、点火プラグ11によって着火され、その混合気が爆発・燃焼してクランクシャフト10に駆動力が付与される(膨張行程)。燃焼後の排気ガスは、排気バルブ8により排気ポート6aが開かれることによって排気通路6に排出され(排気行程)、更に触媒12を経て浄化された後、外部に放出される。なお、上記点火プラグ11は、イグナイタ13から出力される高電圧の印加タイミングに応じて混合気への点火動作を実行している。
エンジン1には、その運転状態を検出するための以下に述べるような各種のセンサが設けられている。
上記クランクシャフト10の近傍には、その回転角(クランク角CA)及び回転速度(エンジン回転速度NE)を検出するためのクランク角センサ21が配設されている。このクランク角センサ21は、所定のクランク角(例えば30°)毎にパルス信号を出力する。このクランク角センサ21によるクランク角の検出手法の一例としては、クランクシャフト10と回転一体の図示しないロータ(NEロータ)の外周面の30°おきに外歯を形成しておき、この外歯と対面して電磁ピックアップで成る上記クランク角センサ21を配置する。そして、クランクシャフト10の回転に伴って外歯が電磁ピックアップ21の近傍を通過した際に、この電磁ピックアップ21が出力パルスを発生するようになっている。尚、このロータとしては、外周面に形成される外歯が10°おきに形成されたものが適用される場合もある。この場合、ECU内で分周して30°CA毎の出力パルスを発生する。
上記吸気カムシャフト31の近傍には、カム角センサ22が配設されている。このカム角センサ22は、通常、気筒判別センサとして用いられ、例えば第1気筒#1の圧縮上死点(TDC)に対応してパルス信号を出力する。つまり、このカム角センサ22は、吸気カムシャフト31の1回転毎にパルス信号を出力する。このカム角センサ22によるカム角の検出手法の一例としては、吸気カムシャフト31と回転一体のロータの外周面の1箇所に外歯を形成しておき、この外歯と対面して電磁ピックアップで成る上記カム角センサ22を配置し、吸気カムシャフト31の回転に伴って外歯が電磁ピックアップ22の近傍を通過した際に、この電磁ピックアップ22が出力パルスを発生するようになっている。このロータはクランクシャフト10の1/2の回転速度で回転するため、クランクシャフ
ト10が720°回転する毎に出力パルスを発生する。言い換えると、ある特定の気筒が同一行程(例えば第1気筒♯1が上死点に達した時点)となる度に出力パルスを発生する構成である。
ト10が720°回転する毎に出力パルスを発生する。言い換えると、ある特定の気筒が同一行程(例えば第1気筒♯1が上死点に達した時点)となる度に出力パルスを発生する構成である。
上記サージタンク16には、吸気通路5内の圧力(吸気管内圧力PM)を検出するための圧力センサ23が設けられている。この圧力センサ23は、サージタンク16内の圧力に応じた信号を出力する。
以上が、本形態に係る失火判定装置が適用されるエンジンの概略構成である。
−失火判定のための構成及び動作−
次に、本形態の特徴部分であるエンジン失火判定のための構成(失火判定装置の構成)及びその動作について説明する。
次に、本形態の特徴部分であるエンジン失火判定のための構成(失火判定装置の構成)及びその動作について説明する。
本実施形態に係る失火判定装置は、例えばマイクロコンピュータを有して構成される電子制御装置40を備えている。この電子制御装置40には、上記各センサ21〜23の出力信号がそれぞれ取り込まれている。そして、電子制御装置40には、これら各信号に基づいてクランク角CAや、エンジン回転速度NE、現在の運転気筒(例えば現在膨張行程を迎えている気筒)、吸気管内圧力PM等を演算するとともに、それら演算結果に基づいて、後述する失火判定動作を実行する失火判定手段41が備えられている。
次に、失火判定装置の失火判定動作について説明する。本失火判定装置は、各気筒の上死点を基準として、360°クランク角(CA)前から遅角側に0°〜30°CA回転するのに要する時間をT1、また同じく遅角側に90°〜120°CA回転するのに要する時間をT2として算出する。この時間T1及びT2はそれぞれ、各点火毎にクランクシャフト10が30°CA回転するのに要する時間が極大になると推定される角度及び極小になると推定される角度に対応した30°CAの所要時間である。
また、現在の、すなわち上記時間T1及びT2の算出対象であった気筒のピストン3が上死点に達した位置から360°CA後の同じく遅角側に0°〜30°CA回転するのに要する時間をT3、遅角側に90°〜120°CA回転するのに要する時間をT4として算出する。これら時間T3及びT4も、各点火毎にクランクシャフト10が30°CA回転するのに要する時間が極大になると推定される角度及び極小になると推定される角度にそれぞれ対応した30°CAの所要時間である。
そして、これら各時間T1,T2,T3,T4に基づき、回転変動量ΔNE0を次式
ΔNE0=(T4−T3)−(T2−T1) …(1)
から算出する。
ΔNE0=(T4−T3)−(T2−T1) …(1)
から算出する。
これにより、現在膨張行程中の気筒の回転速度における、360°進角側で膨張行程を迎えていた気筒(点火タイミングが2点火前の気筒)の回転速度に対する差を反映した回転変動量を求めることができる。
いずれかの気筒において失火が生じてエンジン回転速度が低下すると、クランクシャフト10が一定クランク角度を回転するのに要する経過時間が長くなる。つまり、上記(1)式における(T4−T3)の値が(T2−T1)の値に対して大きくなる。そこで、各気筒の膨張行程時においてクランクシャフト10が一定クランク角度を回転するのに要する経過時間を検出し、この経過時間の長さを上記(1)式に当てはめ、算出された回転変動量ΔNE0に基づいて失火が生じている可能性があるか否かを認識して、後述する失火判定出動作に役立てるようにしている。
また、本失火判定装置は、上記(1)式によって算出される回転変動量について、現時点(失火発生の有無の判定開始時点)での算出量をΔNE0、その1点火前の算出量(点火タイミングが1点火前の気筒の膨張行程時に求められた回転変動量)をΔNE1、2点火前の算出量をΔNE2、3点火前の算出量をΔNE3、4点火前の算出量をΔNE4とし、これら回転変動量に基づいて、「失火の発生」、「悪路走行による回転変動の増大や揺り戻しの発生」、「失火発生後の揺り戻しの発生」の判別を行うようになっている。具体的な判別動作については後述する。
尚、本形態では、上述したように、クランク角度の位相が360°離れた気筒における経過時間の偏差(回転変動量)ΔNE0を求めるようにしているので、NEロータに製造誤差があったとしても、同一の外歯の認識に基づいて上記演算が実行され、回転変動量ΔNE0がNEロータの製造誤差の影響を受けることがなく、この回転変動量ΔNE0を正確に算出できる。
本形態に係る失火判定装置の動作の特徴は、エンジン1の回転変動量が大きくなった場合に、その原因が、失火発生によるものであるのか、悪路走行によるものであるのか、失火発生後の揺り戻しによるものであるのかを判別する点にある。この判別によって、失火の誤判定による失火カウンタのインクリメントを回避できるようにしている。特に本実施形態の特徴とする判定動作は、上記失火の発生と失火発生後の揺り戻し現象の発生との識別動作にある。
以下の説明では、理解を容易にするために、先ず、失火発生の可能性がある状況と、悪路走行による揺り戻しが発生している状況とを判別するための手法について説明し、その後、失火発生と、失火発生後の揺り戻しとを判別するための手法について説明する。実際には、後述するフローチャートを用いて説明するように、これら判別動作は連続して行われることになる。
また、以下の説明では、失火判定対象とする気筒から点火タイミングで2点火後の気筒の膨張行程時に「失火発生の可能性がある状況と悪路走行との判別」を行い、失火判定対象とする気筒から点火タイミングで3点火後の気筒の膨張行程時に「失火発生と失火発生後の揺り戻しとの判別」を行う場合について説明する。これは、失火判定対象とする気筒から点火タイミングで3点火後の気筒の膨張行程時に回転変動量ΔNEの変動傾向が「負」から「正」に変化するといった特性を有する車両であるからであり、この変動傾向が「負」から「正」に変化するタイミングが、失火判定対象とする気筒から点火タイミングで2点火後の気筒の膨張行程時であった場合にはこのタイミングで「失火発生と失火発生後の揺り戻しとの判別」を行うことになる。
−失火発生の可能性がある状況と悪路走行との判別−
この判別動作では、上記各回転変動量ΔNE0〜ΔNE3(本判別動作における経時変化パターンの1サイクル)のうち、特に2点火前(判定動作開始タイミングである回転変動量ΔNE0の算出時に膨張行程を迎えている気筒よりも点火タイミングで2点火前の気筒が膨張行程を迎えていた際)の算出量ΔNE2が所定値(閾値)N1以上になったときに、各回転変動量ΔNE0〜ΔNE3の関係に基づき、これが失火異常による可能性があるものか、悪路走行によるものかを判別する。
この判別動作では、上記各回転変動量ΔNE0〜ΔNE3(本判別動作における経時変化パターンの1サイクル)のうち、特に2点火前(判定動作開始タイミングである回転変動量ΔNE0の算出時に膨張行程を迎えている気筒よりも点火タイミングで2点火前の気筒が膨張行程を迎えていた際)の算出量ΔNE2が所定値(閾値)N1以上になったときに、各回転変動量ΔNE0〜ΔNE3の関係に基づき、これが失火異常による可能性があるものか、悪路走行によるものかを判別する。
なお、上記所定値N1は、エンジン回転速度NEが速いほど小さな値として例えばマップ演算される。これは、次の理由による。通常、エンジン回転速度NEが速くなると、それに伴って上記各所要時間T1〜T4がそれぞれ短い時間として算出される。このため、上記(1)式に基づき算出される回転変動量ΔNEも小さな値として算出されるようにな
る。そこで、所定値N1をエンジン回転速度NEが速くなるほど小さな値として算出することで、エンジン回転速度NEの変化による影響を極力排除した上で判断することができるようにしている。
る。そこで、所定値N1をエンジン回転速度NEが速くなるほど小さな値として算出することで、エンジン回転速度NEの変化による影響を極力排除した上で判断することができるようにしている。
また、上記所定値N1は、吸気管内圧力PMが高いほど大きな値として、同様に、例えばマップ演算される。これは、次の理由による。エンジン1の制御では通常、吸気管内圧力が高くなるほど燃料噴射弁9から多くの燃料が噴射される。このため、吸気管内圧力PMが高くなるほど、燃焼室4内における混合気の燃焼圧力も高くなって、エンジン1のクランクシャフト10には大きな駆動力が付与されるようになる。これにより、吸気管内圧力PMが高いときには、同圧力PMが低いときと比較して上記極小側の各所要時間T2,T4がそれぞれ更に短い時間として算出されるようになり、上記(1)式に基づき算出される回転変動量ΔNEは大きな値として算出されるようになる。そこで、所定値N1を吸気管内圧力PMが高くなるほど大きな値として算出することで、吸気管内圧力PMの変化による影響を極力排除した上で判断することができるようにしている。
図2は、失火が発生した場合における各回転変動量ΔNE0〜ΔNE3の関係の一例を示している。同図2に示されるように、本実施の形態では、第1番気筒を#1、同様に第2番〜第4番気筒をそれぞれ#2〜#4とすると、#1→#3→#4→#2の順で各気筒における混合気への点火が実行されるようになっている。そして、上記回転変動量ΔNE0〜ΔNE3の変化パターン(経時変化パターン)は、失火発生時において以下のような傾向を示す。
すなわち、例えば2点火前の第3番気筒#3で失火が発生する場合には、この第3番気筒#3の膨張行程時に算出された回転変動量ΔNE2が、その直前の第1番気筒#1の膨張行程時に算出された回転変動量ΔNE3及び直後の第4番気筒#4の膨張行程時に算出された回転変動量ΔNE1に比べて特に大きくなる。また、これに加えて、今回の第2番気筒#2の膨張行程時に算出された回転変動量ΔNE0が、上記回転変動量ΔNE2と、ほぼその絶対値が同じであって、且つ正負が逆の値をとるようになる。
一方、悪路走行時には、回転変動量の大きい状態が比較的長く続く。すなわち、図3に悪路走行時における各回転変動量ΔNE0〜ΔNE3の関係の一例を示すように、悪路走行時には、2点火前の第3番気筒#3の膨張行程時に算出された回転変動量ΔNE2が、その直前の第1番気筒#1の膨張行程時に算出されたΔNE3及び直後の第4番気筒#4の膨張行程時に算出された回転変動量ΔNE1と比べて、値の大きい側に大きく突出した値をとることはない。また、今回の第2番気筒#2の膨張行程時に算出された回転変動量ΔNE0が、失火発生時のように回転変動量ΔNE2と高い相関をもつこともない。
本実施形態の失火判定装置では、このように回転変動量ΔNE0〜ΔNE3の変化パターンが失火発生時と悪路走行時とで異なることに着目し、それらを判別すべく、以下の各条件が電子制御装置40内の適宜のメモリ(記憶手段42)に予め記憶されている。
すなわち、回転変動量ΔNE0〜ΔNE3の変化パターンが失火発生の可能性がある時における変化パターンとなっていることを判断するための条件(失火パターン)として、以下の条件
(a)ΔNE2×A<|ΔNE0|、且つ
(b)ΔNE2×B≧ΔNE3、且つ
(c)ΔNE2×C≧ΔNE1
が予め定められている。これら(a)〜(c)の論理積が満たされることを条件として、回転変動量ΔNE2が特に大きくなったことの判断が可能になる。
(a)ΔNE2×A<|ΔNE0|、且つ
(b)ΔNE2×B≧ΔNE3、且つ
(c)ΔNE2×C≧ΔNE1
が予め定められている。これら(a)〜(c)の論理積が満たされることを条件として、回転変動量ΔNE2が特に大きくなったことの判断が可能になる。
また、回転変動量ΔNE0〜ΔNE3の変化パターンが悪路走行時における変化パターンとなっていることを判断するための条件(悪路パターン)として、以下の条件
(d)−(ΔNE2×D)>ΔNE0、または
(e)ΔNE2×E≦ΔNE3、または
(f)ΔNE2×F≦ΔNE1
も予め定められている。これら(d)〜(f)の論理和が満たされることを条件として、回転変動量の多い状態が比較的長く続いていることの判断が可能になる。
(d)−(ΔNE2×D)>ΔNE0、または
(e)ΔNE2×E≦ΔNE3、または
(f)ΔNE2×F≦ΔNE1
も予め定められている。これら(d)〜(f)の論理和が満たされることを条件として、回転変動量の多い状態が比較的長く続いていることの判断が可能になる。
ここで、上記各値A,B,C,D,E,Fは、それぞれ「1」未満の正の定数として設定され、それらの関係がそれぞれ、A>D、B<E、C<Fとなるように定められている。
また、これら定数A〜Fは、エンジン回転速度NEに基づき算出される。具体的には、上記各所定値A〜Fは、エンジン回転速度NEが速くなるほど小さな値として算出される。これは、次の理由による。
上述したように、エンジン回転速度NEが速くなると、それに伴って各回転変動量ΔNE0〜ΔNE3は小さな値として算出されるようになる。そこで、上記各所定値A〜Fをエンジン回転速度NEが速いときほど小さな値として算出することで、これら回転変動量ΔNE0〜ΔNE3の変化パターンと、上記失火パターン及び悪路パターンとを、エンジン回転速度NEの変化による影響を極力排除した上で比較することができるようにしている。
そして、上記(a)〜(c)の論理積条件が満たされているときには、回転変動量ΔNE0〜ΔNE3の変化パターンが失火パターンになっており、回転変動量ΔNE2が大きくなった原因は失火発生の可能性があるとして「失火可能性有り」と判定される。
一方、上記(d)〜(f)の論理和条件が満たされているときには、回転変動量ΔNE0〜ΔNE3の変化パターンが悪路パターンとなっており、回転変動量ΔNE2が大きくなったのは悪路走行が原因であるとして「悪路走行」が判定される。
−失火発生と失火発生後の揺り戻しとの判別−
この判別動作では、上記各回転変動量ΔNE0〜ΔNE4(本判別動作における経時変化パターンの1サイクル)のうち、特に3点火前(判定動作開始タイミングである回転変動量ΔNE0の算出時に膨張行程を迎えている気筒よりも点火タイミングで3点火前の気筒が膨張行程を迎えていた際)の算出量ΔNE3が所定値(閾値)N1以上になったときに、各回転変動量ΔNE0〜ΔNE4の関係に基づき、これが失火異常によるものか、失火発生後の揺り戻しによるものかを判別する。従って、ここで失火判定対象とする気筒が、上述した「失火発生の可能性がある状況と悪路走行との判別」の動作において失火判定対象としていた気筒と同一気筒である場合には、クランク角度で180°遅角したタイミングで本「失火発生と失火発生後の揺り戻しとの判別」が行われることになる。
この判別動作では、上記各回転変動量ΔNE0〜ΔNE4(本判別動作における経時変化パターンの1サイクル)のうち、特に3点火前(判定動作開始タイミングである回転変動量ΔNE0の算出時に膨張行程を迎えている気筒よりも点火タイミングで3点火前の気筒が膨張行程を迎えていた際)の算出量ΔNE3が所定値(閾値)N1以上になったときに、各回転変動量ΔNE0〜ΔNE4の関係に基づき、これが失火異常によるものか、失火発生後の揺り戻しによるものかを判別する。従って、ここで失火判定対象とする気筒が、上述した「失火発生の可能性がある状況と悪路走行との判別」の動作において失火判定対象としていた気筒と同一気筒である場合には、クランク角度で180°遅角したタイミングで本「失火発生と失火発生後の揺り戻しとの判別」が行われることになる。
つまり、上述した「失火発生の可能性がある状況と悪路走行との判別」動作では、失火判定対象である気筒(上記の場合は第3番気筒♯3)から点火タイミングの2気筒後(遅角側に360°の位相差をもった気筒)の膨張行程時に判定動作を行っていたために、この2気筒後の膨張行程時に得られた回転変動量をΔNE0としていた。これに対し、この「失火発生と失火発生後の揺り戻しとの判別」動作では、失火判定対象である気筒(以下の説明でも上記の場合と同様に第3番気筒♯3とする)から点火タイミングの3気筒後(遅角側に540°の位相差をもった気筒)の膨張行程時に判定動作を行うため、この3気筒後の膨張行程時に得られた回転変動量をΔNE0とすることになる。
なお、ここでも、上記所定値N1は、エンジン回転速度NEが速いほど小さな値として例えばマップ演算される。この理由は上述した判別動作(失火発生の可能性がある状況と悪路走行との判別動作)での説明と同じである。また、上記所定値N1は、吸気管内圧力PMが高いほど大きな値として、同様に、例えばマップ演算される。この理由も上述した判別動作での説明と同じである。
図4は、失火が発生し、その後、その失火に伴う揺り戻しが生じた場合における各回転変動量ΔNE0〜ΔNE4の関係の一例を示している。同図4においても上述と同様に、第1番気筒を#1、同様に第2番〜第4番気筒をそれぞれ#2〜#4とすると、#1→#3→#4→#2の順で各気筒における混合気への点火が実行されるようになっている。そして、上記回転変動量ΔNE0〜ΔNE4の変化パターンとして、失火発生時におけるパターンと、その失火発生後に揺り戻しが生じた場合におけるパターンとは、以下のような傾向になる。
先ず、例えば3点火前の第3番気筒#3で失火が発生する場合には、この第3番気筒#3の膨張行程時に算出された回転変動量ΔNE3が、その直前の第1番気筒#1の膨張行程時に算出された回転変動量ΔNE4及び直後の第4番気筒#4の膨張行程時に算出された回転変動量ΔNE2に比べて特に大きくなる。また、これに加えて、第2番気筒#2の膨張行程時に算出された回転変動量ΔNE1が、上記回転変動量ΔNE3と、ほぼその絶対値が同じであって、且つ正負が逆の値をとるようになる。
一方、失火発生後の揺り戻しが生じた場合には、算出量ΔNEが所定値(閾値)N1以上になった第4番気筒#4の膨張行程時に算出された回転変動量ΔNE3’が、その直前の第3番気筒#3の膨張行程時に算出された回転変動量ΔNE4’及び直後の第2番気筒#2の膨張行程時に算出された回転変動量ΔNE2’に比べて特に大きくなる。また、これに加えて、第1番気筒#1の膨張行程時に算出された回転変動量ΔNE1’が、上記回転変動量ΔNE3’と、ほぼその絶対値が同じであって、且つ正負が逆の値をとるようになる。この点では、失火発生時におけるパターンと、その失火後に揺り戻しが生じた場合におけるパターンとは近似しており、これだけでは判別ができない。
そこで、本失火判定装置では、今回の気筒(図4に示すものでは第3番気筒♯3)の膨張行程時に算出された回転変動量ΔNE0’と、その直前の第1番気筒♯1の膨張行程時に算出された回転変動量ΔNE1’との差を上記失火発生時のパターンと比較することによって、失火の発生と、その失火後の揺り戻しの発生とを判別できるようにしている。
具体的には、今回の気筒の膨張行程時に算出された回転変動量ΔNE0’の値は、その直前の気筒の膨張行程時に算出された回転変動量ΔNE1’の値よりも大きくなる。つまり、回転変動量の増減の傾きが負から正に変化するタイミングである。このタイミングにおいて、今回の気筒の膨張行程時に算出された回転変動量ΔNE0が、その直前の気筒の膨張行程時に算出された回転変動量ΔNE1に対して大幅に増加している場合には、失火の発生であると判定する(図4におけるタイミングA参照)。一方、今回の気筒の膨張行程時に算出された回転変動量ΔNE0’が、その直前の気筒の膨張行程時に算出された回転変動量ΔNE1’に対して増加量が僅かである場合には、失火発生後の揺り戻しの発生であると判定するようにしている(図4におけるタイミングB参照)。
本実施形態の失火判定装置では、このように回転変動量ΔNE0〜ΔNE4の変化パターンが失火発生時と失火発生後の揺り戻し発生時とで異なることに着目し、それらを判別するべく、以下の各条件が電子制御装置40内の適宜のメモリに予め記憶されている。
すなわち、回転変動量ΔNE0〜ΔNE4の変化パターンが以下の条件のうち条件(g)〜条件(j)のみの論理積を満たしている(条件(k)は満たしていない)場合には、失火発生後の揺り戻しであると判定する一方、回転変動量ΔNE0〜ΔNE4の変化パターンが以下の条件(g)〜条件(k)の全ての論理積を満たしている場合には、失火の発生であると判定する。
(g)ΔNE3≧0、且つ
(h)ΔNE3×H<|ΔNE1|、且つ
(i)ΔNE3×I≧ΔNE4、且つ
(j)ΔNE3×J≧ΔNE2
(k)|ΔNE1|×K≧|ΔNE0|
このような条件が予め定められている。
(h)ΔNE3×H<|ΔNE1|、且つ
(i)ΔNE3×I≧ΔNE4、且つ
(j)ΔNE3×J≧ΔNE2
(k)|ΔNE1|×K≧|ΔNE0|
このような条件が予め定められている。
ここで、上記各値H,I,J,Kは、それぞれ「1」未満の正の定数として設定される。特に、本形態では、上記の値「K」は「1/2」に定められている。この「K」の具体的な数値はこれに限るものではなく、エンジン1の形式、気筒数、その他、パワートレーンの構造や重量等の種々の要素によって適宜設定されることになる。上記条件(k)について、失火発生時の左辺は図4では「a」の値となる。つまり、ΔNE0よりも絶対値は大きくなる。これに対し、失火発生後の揺り戻しでは左辺は図4では「b」の値となる。つまり、ΔNE0’よりも絶対値は小さくなる。この差を認識することによって、失火発生と失火発生後の揺り戻しとを判別している。
更に、これら定数H〜Kは、エンジン回転速度NEに基づき算出される。具体的には、上記各所定値H〜Kは、エンジン回転速度NEが速くなるほど小さな値として算出される。この理由は、上述した如く、定数A〜Fを算出した場合と同じである。
以上のようにして、上記(g)〜(j)のみの論理積条件が満たされているときには、回転変動量ΔNE0〜ΔNE4の変化パターンが失火発生後の揺り戻しパターンになっており、回転変動量ΔNEが大きくなったのは失火が原因で揺り戻しが発生しているためであると認識され、このときには失火判定を行わず、従って後述する失火カウンタのインクリメントもなされない。
図5は、実際のエンジン運転状態において失火が発生した際の回転変動量の変化状態を示している。この図5は、クランクシャフト10が30°CA回転する毎に、その間に要した時間を算出し、この所要時間をプロットしたグラフとなっている。この図5に示す状況においても、失火発生時には、回転変動量が閾値を越えており、その後の揺り戻し現象によって再び回転変動量が閾値を越える状況が生じている。このような状況で、従来では、図中一点鎖線で示す失火カウンタのカウント動作の如く、回転変動量が閾値を越える度に失火カウンタがインクリメントされ、図5の場合には1度しか失火が発生していないにも拘わらず、カウント値は「2」となっている。本実施形態の判定動作によれば、2回目に回転変動量が閾値を越えた際には、これを失火後の揺り戻し現象によるものであると判別することができ、図中実線で示す失火カウンタのカウント動作の如く、カウント値は「1」となる。このようにして、実際に失火が発生した場合に限り失火カウンタがインクリメントされることになる。
更に、本実施形態に係る失火判定装置では、失火発生の検出頻度に基づいて、排気エミッションの悪化や触媒12の劣化を招く頻度で失火が発生しているか否かの判定が行われる。具体的には、失火発生の検出頻度が高い場合には、排気エミッションの悪化や触媒12の劣化等を招くおそれのある頻度で失火が発生しているとして、失火異常と判定される。
こうした失火判定処理によれば、予め記憶されている失火発生パターン、悪路走行パターン、失火後揺り戻しパターンに基づくパターン判定を通じて、エンジン1の回転変動が大きくなった原因が失火発生によるものか、悪路走行によるものか、失火後の揺り戻し現象によるものかが精度よく判別されるようになる。そして、回転変動量ΔNEが所定値N1を超えた原因がエンジン1の失火によるものであると判定された場合に限り、後述する失火カウンタがインクリメントされることになる。
以下、本失火判定装置の判定処理の手順について、図6のフローチャートを参照して説明する。この図6に示すように、この処理では先ず、失火を判定(失火検出)するための前提条件が成立しているか否かが判断される(ステップST1)。この判断では、上記前提条件に基づく判断を通じて、失火発生、悪路走行、失火後の揺り戻し現象以外の要因でエンジン回転速度NEが大きく変動するおそれがなく、これら失火発生、悪路走行、失火後の揺り戻し現象に伴うエンジン回転速度NEの変動を精度よく検出することができる条件下であるか否かが判断される。なお、上記前提条件としては例えば、エアーコンディショナの作動/非作動が切り換えられてから所定時間が経過していることや、シフトレバーが操作されてから所定時間が経過していること等がある。
そして、上記前提条件が成立していないと判断(ステップST1でNO判定)された場合には、エンジン1が現在、失火発生や、悪路走行や、失火後の揺り戻し現象に伴うエンジン回転速度NEの変動を精度よく判定することのできない条件下にあるとして、本処理が一旦終了される。
一方、上記前提条件が成立していると判断(ステップST1でYES判定)された場合には、検出カウンタ(1000revカウンタ)のカウント値がインクリメントされる(ステップST2)。このカウント値は、後述する失火異常の判定に際し失火発生の検出頻度の算出基準となる総判定回数として用いられる。
その後、エンジン回転速度NE及び吸気管内圧力PMに基づいて上記閾値N1がマップ演算され、上述した態様で算出される回転変動量ΔNEがこの閾値N1よりも大きいか否かが判断される(ステップST3)。なお、上記マップ演算に用いられるマップは、エンジン回転速度NE及び吸気管内圧力PMから所定値N1を算出するためのマップであり、これらエンジン回転速度NE、吸気管内圧力PM及び所定値N1の関係が実験等によって求められた上で設定されている。また、このマップも予め電子制御装置40内の適宜のメモリに記憶されている。
そして、回転変動量ΔNEが所定値N1よりも大きいと判断(ステップST3でYES判定)された場合には、以下の処理(ステップST4やステップST5)を通じて、その原因が失火発生によるものか、悪路走行によるものか、失火後の揺り戻し現象によるものかが判別される。
この判別処理では先ず、上記「失火発生の可能性がある状況と悪路走行との判別動作」で説明したように、各回転変動量ΔNE0〜ΔNE3の変化パターンが上記失火パターンとなっているか否かが、すなわち各回転変動量ΔNE0〜ΔNE3が上記(a)〜(c)の論理積条件を満たしているか否かが判断される。そして、同論理積条件を満たしていると判断された場合には、回転変動量ΔNEが大きくなったのは失火発生が原因である可能性があるとして、ステップST5に移る。
一方、上記論理積条件を満たしていない場合には、各回転変動量ΔNE0〜ΔNE3が上記(d)〜(f)の論理和条件を満たしているか否かが判断される。すなわち、この判
断では、回転変動量ΔNE0〜ΔNE3の変化パターンが上記悪路パターンとなっているか否かが判断される。そして、同論理和条件を満たしていると判断(ステップST4でNO判定)された場合には、回転変動量ΔNEが大きくなったのは悪路走行が原因であるとして、ステップST7に移る。つまり、失火カウンタのカウント値をインクリメントすることなしにステップST7に移る。
断では、回転変動量ΔNE0〜ΔNE3の変化パターンが上記悪路パターンとなっているか否かが判断される。そして、同論理和条件を満たしていると判断(ステップST4でNO判定)された場合には、回転変動量ΔNEが大きくなったのは悪路走行が原因であるとして、ステップST7に移る。つまり、失火カウンタのカウント値をインクリメントすることなしにステップST7に移る。
上記ステップST4でYES判定された場合、つまり、各回転変動量ΔNE0〜ΔNE3の変化パターンが上記失火パターンとなっており、回転変動量ΔNEが大きくなったのは失火発生が原因である可能性があると判断した場合には、ステップST5に移って、回転変動量ΔNEが所定値N1よりも大きくなった原因が失火発生によるものか、失火後の揺り戻し現象によるものかの判別動作を実行する。この判別動作は、上記「失火発生と失火発生後の揺り戻しとの判別動作」で説明したように、上記各回転変動量ΔNE0〜ΔNE4の変化パターンが上記失火パターンとなっているか否か、すなわち各回転変動量ΔNE0〜ΔNE4が上記(g)〜(k)のうち(g)〜(j)のみの論理積条件を満たしているか否か、または上記(g)〜(k)の全ての論理積条件を満たしているかが判断される。そして、後者の場合には、YES判定されてステップST6に移り、失火検出回数をカウントする失火カウンタのカウント値をインクリメントする。
一方、後者の場合には、NO判定されて失火カウンタのカウント値をインクリメントすることなしにステップST7に移る。
このように各回転変動量ΔNE0〜ΔNE3の変化パターンが悪路パターンとなっている場合(図3参照)や、各回転変動量ΔNE0〜ΔNE4の変化パターンが失火発生後の揺り戻しパターンとなっている場合(図4における右側の波形参照)には、失火カウンタのカウント値をインクリメントすることなしにステップST7に移り、各回転変動量ΔNE0〜ΔNE3の変化パターンが失火パターンとなっており、且つ各回転変動量ΔNE0〜ΔNE4の変化パターンも失火パターンとなっている場合には、ステップST6において失火カウンタのカウント値をインクリメントし、その後にステップST7に移ることになる。また、回転変動量ΔNEが閾値N1以下であると判断(ステップST3でNO判定)された場合、あるいは回転変動量ΔNEが閾値N1を超えていても上記の何れのパターンにも属さないと判断(ステップST4でNO判定)された場合には、上記失火カウンタのカウント操作を行うことなく、ステップST7以降の処理にジャンプする。
そして、このステップST7以降の処理では、先ず、検出カウンタ(1000revカウンタ)のカウント値が所定の条件成立カウント値(例えば2000)以上であるか否かが判断される(ステップST7)。この判断では、総検出回数が失火発生の検出頻度を判定する基準回数(例えばクランクシャフト10の1000回転相当)に達したか否かが判断される。
そして、総検出回数が基準回数に達したと判断(ステップST7でYES判定)された場合には、次に失火カウンタのカウント値が所定の異常回数(例えば30)以上であるか否かが判断される(ステップST8)。すなわちこの判断では、総検出回数中に所定回数以上の頻度で失火発生が検出されたか否かが判断される。
そして、失火カウンタのカウント値が所定値(異常回数値)以上であると判断(ステップST8でYES判定)された場合には、排気エミッションの悪化や触媒12の劣化等を招くおそれのある頻度で失火が発生しているとして、失火異常と判定される(ステップST9)。この場合には、例えば、この異常判定を異常履歴として記憶したり、異常ランプ(MIL)を点灯させたりする。そして、その後、上記各カウンタのカウント値を「0」にリセットした後(ステップST10)、リターンされる。
一方、検出カウンタのカウント値が所定値未満であると判断(ステップST7でNO判定)された場合には、総検出回数が上記基準回数に達していないとして、リターンされる。
また、検出カウンタ(1000revカウンタ)のカウント値が所定値に達した際の失火カウンタのカウント値が所定値(異常回数値)未満であると判断(ステップST8でNO判定)された場合には、失火発生の検出頻度がさほど高くないとして、この場合にも各カウント値が「0」にリセットされた後(ステップST10)、リターンされる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
回転変動量ΔNE0〜ΔNE3の変化パターンとして、失火パターン及び悪路パターンをそれぞれ予め記憶し、また、回転変動量ΔNE0〜ΔNE4の変化パターンとして、失火パターン及び失火後揺り戻しパターンをそれぞれ予め記憶し、実際の回転変動量パターンとそれぞれ比較するようにしている。これにより、回転変動量ΔNEが大きくなった原因が失火発生によるものか、悪路走行によるものか、あるいは失火後揺り戻し現象によるものかを精度よく判別することができるようになる。従って、回転変動量ΔNEが所定値N1を超えた原因が失火によるものである場合にのみが失火カウンタがインクリメントされ、失火の発生回数が精度よくカウントすることができる。
−その他の実施形態−
上記実施の形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記実施の形態では、本発明を自動車用4気筒エンジンに適用した場合について説明したが、本発明は、これに限るものではなく、種々のエンジンに対して適用できる。
・上記実施の形態では、失火発生の可能性があったタイミング以降に回転変動傾向が「負」から「正」へ変化するタイミングにおいて、「失火発生と失火発生後の揺り戻しとの判別」を実行するようにしたが、上記「失火発生の可能性がある状況と悪路走行との判別」もこのタイミングで実行するようにしてもよい。
・上記実施の形態では、所定値N1をエンジン回転速度NE及び吸気管内圧力PMに基づき算出するようにしたが、これに限られない。例えば、この所定値N1を、エンジン回転速度NE及び吸気管内圧力PMの何れか一方に基づき算出したり、あるいは他のパラメータに基づき算出してもよい。また、吸気管内圧力PMに代えて吸入空気量を検出するシステムにあっては、この吸入空気量を代用しても勿論よい。他方、所定値N1を一定の値として設定するようにしてもよい。要は、失火の発生に伴う回転変動量ΔNEの変化を好適に監視できるのであれば、所定値N1をどのように算出、若しくは設定してもよい。
・上記実施の形態では、各定数A〜Kをエンジン回転速度NEに基づき算出するようにしたが、これに限らず、例えば各定数A〜Kを吸気管内圧力PMや吸入空気量に基づいて算出したり、あるいは他のパラメータに基づき算出したりするようにしてもよい。また、各定数A〜Kを一定の値として設定するようにしてもよい。要は、失火パターン、悪路パターン、失火後揺り戻しパターンを好適なパターンとして設定できるのであれば、定数A〜Kをどのように算出、若しくは設定するようにしてもよい。
・上記実施の形態では、検出カウンタ(1000revカウンタ)によって総検出回数を、失火カウンタによって失火発生の検出回数をそれぞれカウントすることで、失火発生の検出頻度を求めるようにしたが、これら頻度の求め方も任意である。
・上記実施の形態では、回転変動量を前記(1)式から算出するようにしたが、これに限られない。要は、失火発生に伴うエンジン回転速度の変動を把握することが可能な態様であれば、回転変動量の算出態様を適宜変更してもよい。この場合であれ、回転変動量の算出態様に対応したかたちで失火パターンや悪路パターンや失火発生後の揺り戻しパターンを変更することで、上記実施の形態に準じた効果を得ることができる。
・上記実施の形態では、クランク角度の位相が360°離れた気筒における経過時間の偏差ΔNEを求めるようにしていたが、この偏差ΔNEを求めるために対比される気筒はこれに限るものではない。また、上記偏差ΔNEの演算に用いる経過時間T1〜T4を求めるためのクランクシャフト10の回転角度も30°に限らず任意の角度が設定可能である。
上記実施の形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記実施の形態では、本発明を自動車用4気筒エンジンに適用した場合について説明したが、本発明は、これに限るものではなく、種々のエンジンに対して適用できる。
・上記実施の形態では、失火発生の可能性があったタイミング以降に回転変動傾向が「負」から「正」へ変化するタイミングにおいて、「失火発生と失火発生後の揺り戻しとの判別」を実行するようにしたが、上記「失火発生の可能性がある状況と悪路走行との判別」もこのタイミングで実行するようにしてもよい。
・上記実施の形態では、所定値N1をエンジン回転速度NE及び吸気管内圧力PMに基づき算出するようにしたが、これに限られない。例えば、この所定値N1を、エンジン回転速度NE及び吸気管内圧力PMの何れか一方に基づき算出したり、あるいは他のパラメータに基づき算出してもよい。また、吸気管内圧力PMに代えて吸入空気量を検出するシステムにあっては、この吸入空気量を代用しても勿論よい。他方、所定値N1を一定の値として設定するようにしてもよい。要は、失火の発生に伴う回転変動量ΔNEの変化を好適に監視できるのであれば、所定値N1をどのように算出、若しくは設定してもよい。
・上記実施の形態では、各定数A〜Kをエンジン回転速度NEに基づき算出するようにしたが、これに限らず、例えば各定数A〜Kを吸気管内圧力PMや吸入空気量に基づいて算出したり、あるいは他のパラメータに基づき算出したりするようにしてもよい。また、各定数A〜Kを一定の値として設定するようにしてもよい。要は、失火パターン、悪路パターン、失火後揺り戻しパターンを好適なパターンとして設定できるのであれば、定数A〜Kをどのように算出、若しくは設定するようにしてもよい。
・上記実施の形態では、検出カウンタ(1000revカウンタ)によって総検出回数を、失火カウンタによって失火発生の検出回数をそれぞれカウントすることで、失火発生の検出頻度を求めるようにしたが、これら頻度の求め方も任意である。
・上記実施の形態では、回転変動量を前記(1)式から算出するようにしたが、これに限られない。要は、失火発生に伴うエンジン回転速度の変動を把握することが可能な態様であれば、回転変動量の算出態様を適宜変更してもよい。この場合であれ、回転変動量の算出態様に対応したかたちで失火パターンや悪路パターンや失火発生後の揺り戻しパターンを変更することで、上記実施の形態に準じた効果を得ることができる。
・上記実施の形態では、クランク角度の位相が360°離れた気筒における経過時間の偏差ΔNEを求めるようにしていたが、この偏差ΔNEを求めるために対比される気筒はこれに限るものではない。また、上記偏差ΔNEの演算に用いる経過時間T1〜T4を求めるためのクランクシャフト10の回転角度も30°に限らず任意の角度が設定可能である。
1 エンジン(内燃機関)
10 クランクシャフト(出力軸)
41 失火判定手段
42 記憶手段
10 クランクシャフト(出力軸)
41 失火判定手段
42 記憶手段
Claims (5)
- 内燃機関の回転変動量が所定の閾値を超えたときに失火が生じている可能性があると判断し、この判断がなされたときに、予め記憶されている失火時特有の回転変動の経時変化パターンに沿って回転変動が変化している場合に失火が発生していると判定する内燃機関の失火判定装置であって、
失火発生の有無を判定するための回転変動の経時変化パターンの1サイクルを、失火発生の可能性があったタイミング以降に回転変動傾向が「負」から「正」へ変化するタイミングを含む期間に設定し、この回転変動傾向が「負」から「正」に変化するタイミングを含む期間における回転変動の経時変化パターンが、予め記憶されている失火時特有の回転変動の経時変化パターンに沿っているか否かによって失火発生の有無を判定する失火判定手段を備えていることを特徴とする内燃機関の失火判定装置。 - 内燃機関の回転変動量が所定の閾値を超えたときに失火が生じている可能性があると判断し、この判断がなされたときに、予め記憶されている失火時特有の回転変動の経時変化パターンに沿って回転変動が変化している場合に失火が発生していると判定する内燃機関の失火判定装置であって、
失火発生の有無を判定するための回転変動の経時変化パターンの1サイクルを、失火発生の可能性があった気筒の点火タイミングに対して1回前の点火タイミングを迎えていた気筒の燃焼行程時から、上記失火発生の可能性があった気筒の点火タイミングに対して3回後の点火タイミングを迎える気筒の燃焼行程時までの期間に設定し、この期間における回転変動の経時変化パターンが、予め記憶されている失火時特有の回転変動の経時変化パターンに沿っているか否かによって失火発生の有無を判定する失火判定手段を備えていることを特徴とする内燃機関の失火判定装置。 - 上記請求項1または2記載の失火判定装置において、
内燃機関の回転変動量が所定の閾値を超えた原因が失火の発生によるものである場合と揺り戻し現象によるものである場合とを判別可能となるように、それぞれの回転変動の経時変化パターンが記憶手段に記憶されており、
失火判定手段は、この記憶手段に記憶されている経時変化パターンに基づいて失火発生の有無を判定する構成となっていることを特徴とする内燃機関の失火判定装置。 - 上記請求項2記載の内燃機関の失火判定装置において、
失火判定開始タイミングに膨張行程を迎えている気筒の膨張行程時における回転変動量をΔNE0、その1点火前の回転変動量をΔNE1、2点火前の回転変動量をΔNE2、3点火前の回転変動量をΔNE3、4点火前の回転変動量をΔNE4として以下の条件式を記憶する記憶手段を備えており、
(I) ΔNE3≧0
(II) ΔNE3×H<|ΔNE1|
(III)ΔNE3×I≧ΔNE4
(IV) ΔNE3×J≧ΔNE2
(V)|ΔNE1|×K≧|ΔNE0|
(H、I、J、Kは定数)
失火判定手段は、上記各条件のうち条件(I)〜条件(IV)のみの論理積を満たしている場合には、失火発生後の揺り戻しが発生していると判定する一方、条件(I)〜条件(V)の全ての論理積を満たしている場合には、上記3点火前の気筒に失火が発生していると判定するよう構成されていることを特徴とする内燃機関の失火判定装置。 - 上記請求項2または4記載の失火判定装置において、
揺り戻し現象は、内燃機関の出力軸に車両駆動系が直結されていることに起因して発生
するものであることを特徴とする内燃機関の失火判定装置。
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