JP2006152062A - 耐衝撃性熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

耐衝撃性熱可塑性樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 −40℃での低温耐衝撃特性に優れた成形品を得ることができる耐衝撃性熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 下記(A)、(B)、(C)の構成成分を含み、式〔1〕、式〔2〕を満たすことを特徴とする耐衝撃性熱可塑性樹脂組成物である。
(A)還元粘度が0.9〜1.6dl/gであるポリブチレンナフタレート樹脂90〜50質量部、
(B)繊維状充填剤10〜50質量部、
(C)動的粘弾性測定の損失正接(tanδ)が最高値となる温度(Tmax)が−30℃以下および/又は動的粘弾性測定の損失正接(tanδ)が0.100以上である耐衝撃性付与剤2〜9質量部、
式〔1〕 (A)+(C)=70質量部、
式〔2〕 (A)+(B)+(C)=105質量部 。
【選択図】 なし

Description

本発明は、耐衝撃性熱可塑性樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、低温耐衝撃特性に優れた熱可塑性樹脂組成物および該熱可塑性樹脂組成物を射出成形してなる低温耐衝撃特性に優れた成形品に関するものである。
ポリブチレンテレフタレート(以下PBTともいう)樹脂などに代表される芳香族ポリエステル樹脂組成物は、一般的に機械的強度、電気絶縁性、耐薬品性等が優れていることから、電気、電子部品、家電照明部品、自動車用部品、機構部品等として幅広く利用されており、特にポリブチレンナフタレート(以下、PBNともポリブチレンナフタンジカルボキシレートともいう)樹脂は、他のポリエステル樹脂と同様、機械的強度、耐酸化性、耐溶剤性などにおいて優れた特性を有し、さらに、PBTと比較し、耐湿熱性、寸法安定性に優れるなどの利点を持っている。
しかしながら、PBNは他の芳香族ポリエステル樹脂と同様に衝撃強度の不足が指摘されており、部品の小型化、軽量化に伴う薄肉化の進行と相俟って、その改良要求が高まっており、PBNに耐衝撃性付与剤を配合することが検討されている(例えば、特許文献1〜7)。しかしながら、衝撃強度の改良効果は充分ではなく、特に自動車用部品の分野では、北米での要求もあり、−40℃での耐衝撃性改良が必要とされている。
このような状況から本発明者らは、PBNの靭性、特に−40℃での耐衝撃性の向上を図るべく鋭意研究した結果、本発明に至った。
特開平9−104807号公報 特開平6−240119号公報 特開平6−172626号公報 特開平6−157882号公報 特開平6−145484号公報 特開平5−339478号公報 特開2001−181489号公報
本発明は従来技術の課題を背景になされたものであり、低温耐衝撃特性、特に−40℃での耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物、および該熱可塑性樹脂組成物を射出成形してなる、低温耐衝撃特性に優れた成形品を提供することを課題とするものである。
本発明者らは上記課題を解決するために、鋭意研究した結果、本発明を完成するに至った。即ち本発明は、以下の構成を採用するものである。
1.下記(A)、(B)、(C)の構成成分を含み、式〔1〕、式〔2〕を満たすことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
(A)還元粘度が0.9〜1.6dl/gであるポリブチレンナフタレンート樹脂90〜50質量部、
(B)繊維状充填剤10〜50質量部、
(C)動的粘弾性測定の損失正接(tanδ)が最高値となる温度(Tmax)が−30℃以下および/又は動的粘弾性測定の損失正接(tanδ)が0.100以上である耐衝撃性付与剤2〜9質量部、
〔式1〕 (A)+(C)=70質量部、
〔式2〕 (A)+(B)+(C)=105質量部 。
2.メルトフローインデックス(ASTM D1238、荷重:2160gf、温度:260℃)が0.1〜10g/10分である前記第1の発明の耐衝撃性熱可塑性樹脂組成物。
3.前記第1又は2の発明の耐衝撃性熱可塑性樹脂組成物を射出成形してなる成形品。
本発明によれば、ポリブチレンナフタレート樹脂を主体とした、低温耐衝撃特性、特に−40℃での耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物をコンパウンド性が良好に安定に提供することができ、該熱可塑性樹脂組成物を射出成形してなる成形品は、−40℃でも高い耐衝撃特性を発揮することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるポリブチレンナフタレート樹脂(以下PBNともいう)とは、ナフタレンジカルボン酸、好ましくはナフタレン−2,6−ジカルボン酸を主たる酸成分とし、1,4−ブタンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステル、即ち、繰返し単位の全部又は大部分(通常90モル%以上、好ましくは95モル%以上)がブチレンナフタレートであるポリエステルである。
また、このPBNには物性を損なわない範囲で、次の成分の共重合が可能である。即ち、酸成分としては、ナフタレンジカルボン酸以外の芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、ジフェニルスルフィドジカルボン酸、ジフェニルスルフォンジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、脂環族ジカルボン酸、例えばシクロヘキサンジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸等が例示される。
グリコール成分としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ビスフェノールA、カテコール、レゾルシンノール、ハイドロキノン、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ハイドロキノン、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシジフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルケトン、ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ジヒドロキシジフェニルスルフォン等が例示される。
オキシカルボン酸成分としては、オキシ安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸、ヒドロキシジフェニルカルボン酸、ω−ヒドロキシカプロン酸等が例示される。
また、PBNが実質的に成形性能を失わない範囲で三官能以上の化合物、例えばグリセリン、トリメチルプロパン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、ピロメリット酸等を共重合して良い。
かかるPBNは、ナフタレンジカルボン酸および/又はその機能的誘導体とブチレングリコールおよび/又はその機能的誘導体とを、従来公知の芳香族ポリエステル製造法を用いて重縮合させて得られる。
また、本発明においてPBNは、還元粘度が0.9〜1.6dl/gであることが必要であり、好ましくは1.0〜1.6dl/gである。還元粘度が0.9dl/g未満であると耐衝撃特性が劣り、1.6を越えると流動性が悪いため成形性に劣り、成形材料としての使用範囲が限られてくる。
本発明のPBNの製造には、公知の任意の方法が適用できる。例えば、溶融重合法、溶液重合法、固相重合法などいずれも適宜用いられる。溶融重合法の場合、エステル交換法でも直接重合法であってもよい。樹脂の粘度を向上させるため、溶融重合後に固相重合を行うことはもちろん望ましいことである。また、ポリエステルの重合後、エポキシ化合物等で鎖延長させてもよい。
反応に用いる触媒としては、アンチモン触媒、ゲルマニウム触媒、チタン触媒が良好である。特にチタン触媒、詳しくはテトラブチルチタネート、テトラメチルチタネートなどのテトラアルキルチタネート、シュウ酸チタンカリなどのシュウ酸金属塩などが好ましい。またその他の触媒としては公知の触媒であれば特に限定はしないが、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジラウリレートなどのスズ化合物、酢酸鉛などの鉛化合物が挙げられる。
本発明において用いられる(B)繊維状充填材とは、主として機械的強度、剛性、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性、電気的性質などの性能に優れた成形品を得る目的で配合される。
繊維状充填材としては、ガラス繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、ホウ素繊維、窒化ホウ素繊維、チタン酸カリウム繊維、さらにステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属からなる繊維状物などの繊維状物質が挙げられる。特に代表的な繊維状充填材は、ガラス繊維又はカーボン繊維である。
これらの繊維状充填材は、1種又は2種以上併用することができる。また、これらの繊維状充填剤に、カーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイトの如き珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナの如き金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸バリウムの如き金属の硫酸塩、その他炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素、各種金属粉末といった粉粒状充填材を併用することもできる。さらにマイカ、ガラスフレーク、各種の金属箔など板状充填材を併用することもできる。
繊維状充填材、特にガラス繊維と粒状および/又は板状充填材の併用は特に機械的強度と寸法精度、電気的性質などを兼備する上で好ましい組み合わせである。
これらの充填材の使用に当たっては、必要ならば集束剤又は表面処理剤を使用することが望ましい。この例を示せば、エポキシ化合物、シラン化合物、イソシアネート化合物、シラン化合物、チタネート化合物等の官能性化合物である。これらの化合物はあらかじめ表面処理又は集束処理を施して用いるか、又は材料調整の際同時に添加しても良い。
本発明において繊維状充填材は中でも、耐衝撃性、剛性、価格の面からガラス繊維が好ましい。
繊維状充填材の添加量は(A)90〜50質量部に対して10〜50質量部である。その量が10質量部より少ない場合は、耐衝撃性、剛性等の向上がみられず、50質量部より多い場合は分散が悪く、押出、成形加工が困難であり、成形品の外観も劣る。また(C)耐衝撃性付与剤の添加による衝撃強度の向上がみられなくなる。
次に、本発明で用いられる(C)耐衝撃性付与剤は、溶融混合が可能なもので、成形時(少なくとも150℃以上)において急速に分解、熱架橋しないものであり、−40℃での耐衝撃性を高めるためには、動的粘弾性測定のtanδが最高値となる温度が−30℃以下および/又は動的粘弾性測定の損失正接(tanδ)が0.100以上であるものである。さらに−40℃でより良好な耐衝撃特性を得るためには、前記温度が−30℃以下で、かつ、tanδが0.100以上であるものが好ましい。
かかる特性を有する(C)耐衝撃性付与剤としては、例えば、熱可塑性エラストマー又はコアシェルポリマー等が挙げられる。これら高分子物質は、常温ではゴム状弾性をもつ固体であるが、加熱すると粘度が低下し、PBNと溶融混合可能な高分子物質である。
熱可塑性エラストマーの種類としては、例えば、オレフィン系、スチレン系、ポリエステル系、ポリアミド系およびポリウレタン系等が挙げられる。
オレフィン系エラストマーとして好ましいものは、エチレンおよび/又はプロピレンを主成分とする共重合体であり、具体的にはエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに好ましくは、グリシジルメタクリレート等によってPBNとの相溶性に優れたエポキシ基を導入したポリオレフィン系エラストマーが良い。
スチレン系エラストマーとしては、スチレン等のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと未水素化および/又は水素化した共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体が挙げられる。かかるブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第三級ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、p−メチルスチレン、1,1−ジフェニルスチレン等のうちから一種又は二種以上が選択でき、中でもスチレンが好ましい。また、共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ピレリレン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、フェニル−1,3−ブタジエン等のうちから一種又は二種以上が選ばれ、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組み合わせが好ましい。さらに好ましくは、PBNとの相溶性に優れたイミド基等を導入したスチレン系エラストマーが良い。
ポリエステル系エラストマーの例としては、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートといった芳香族ポリエステルをハードセグメントとし、ポリエチレングリコールやポリテトラメチレングリコールといったポリエーテル、又はポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリカプロラクトンといった脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするブロック共重合体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
ポリアミド系エラストマーの例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などをハードセグメントとし、ポリエーテル又は脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするブロック共重合体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
ポリウレタン系エラストマーの例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネートとエチレングリコール、テトラメチレングリコール等のグリコールとを反応させることによって得られるポリウレタンをハードセグメントとし、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルもしくはポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするブロック共重合体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
一方、コアシェルポリマーとは、多層構造からなり、好ましくは平均粒径1.0μm以下のゴム層をガラス状の樹脂が包含したコアシェル型グラフト共重合体である。コアシェル型共重合体のゴム層は、平均粒径1.0μm以下のものが使用でき、好ましい範囲は 0.2〜0.6μmである。ゴム層の平均粒径が1.0μmを越えると、耐衝撃特性の改善効果が不十分な場合がある。かかるコアシェル型共重合体のゴム層としては珪素系、ジエン系、アクリル系エラストマー単独又はこの中から選ばれる2種以上のエラストマー成分系を共重合/グラフト共重合させたものを用いることができる。
珪素系エラストマーとしては、オルガノシロキサン単量体を重合させて製造されるもので、オルガノシロキサンとしては、例えばヘキサメチルトリシクロシロキサン、オクタメチルシクロシロキサン、デカメチルペンタシクロシロキサン、ドデカメチルヘキサシクロシロキサン、トリメチルトリフェニルシロキサン、テトラメチルフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン等が用いられる。アクリル系ゴムとしては、ブチルアクリレートの様なアクリル酸エステルと少量のブチレンジアクリレートの様な架橋性モノマーを重合させて得られる。
上記アクリル酸エステルとしては、ブチルアクリレートの他に、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。また、架橋性モノマーとしては、ブチレンジアクリレートの他に、ブチレンジメタクリレート、トリメチロールプロパンの様なポリオールとアクリル酸のエステル類、ジビニルベンゼン、ビニルアクリレート、ビニルメタクリレートのようなビニル化合物、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルイタニレート、モノアリルマレート、モノアリルフマレート、トリアリルシアヌレートのようなアリル化合物が挙げられる。ジエン系ゴムとは、例としてブタジエン単量体を重合して得られるポリブタジエンが挙げられる。
更に、コアシェル型共重合体のガラス状の樹脂で形成されるシェル層は、ビニル系重合体が用いられる。ビニル系重合体は、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体、メタクリル酸エステル系単量体、およびアクリル酸エステル単量体の中から選ばれた少なくとも一種の単量体を重合あるいは共重合させて得られる。かかるコアシェル型共重合体のゴム層とシェル層は、通常グラフト共重合によって結合されている。このグラフト共重合化は、必要な場合には、ゴム層の重合時にシェル層と反応するグラフト交差剤を添加し、ゴム層に反応基を与えた後、シェル層を形成させることによって得られる。グラフト交差剤としては、シリコーン系ゴムでは、ビニル結合を有したオルガノシロキサンあるいはチオールを有したオルガノシロキサンが用いられ、好ましくはアクロキシシロキサン、メタクリロキシシロキサン、ビニルシロキサンが使用される。
上記したようなコアシェルポリマーとしては、例えば鐘淵化学製カネエースFM、三菱レイヨン製メタブレンW−300、W−530、S−2001、ロームアンドハース社製アクリロイドKM−323、KM−330、呉羽化学製パラロイドEXL−2311、−2602、−3211、武田薬品製スタフィロイドP−3267等が挙げられる。
本発明における(C)耐衝撃性付与剤の配合量は、(A)+(C)=70質量部に対して、2〜9質量部、好ましくは3〜7質量部である。(C)成分が少なすぎると本発明の目的とする高い耐衝撃特性が得られず、多すぎると剛性等の機械的性質を阻害するため好ましくない。耐衝撃性付与剤は、一種又は二種以上併用することができる。
本発明の耐衝撃性熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、その目的に応じた所望の特性を付与するために、一般に熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂に添加される公知の物質、即ち酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、帯電防止剤、染料や顔料等の着色剤、潤滑剤、離型剤および結晶化促進剤、結晶核剤等を配合することが可能である。
本発明の耐衝撃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、一般の製造装置で製造することができる。例えば、上述の(B)繊維状充填剤、(C)耐衝撃性付与剤、さらに必要に応じて他の添加剤等を配合した混合物を溶融・混練する方法を挙げることができる。溶融・混練装置としては、単軸押出機、二軸押出機、加圧ニーダー等が例示されるが、モルホロジー構造の点から好ましくは二軸押出機である。二軸押出機のうちでも(C)成分の微分散化の点から、L/D(L;コンプレッション部の長さ、D;スクリュー径)が大きく(好ましくは20以上)、しかも、練りを良くするスクリューディメンジョン構成を有すること、例えばニーディングディスクを多く用いることが好ましい。さらに、(C)繊維状充填剤は、繊維長を長く保った方が補強効果も高いため、サイドフィードすることが好ましい。
本発明の耐衝撃性熱可塑性樹脂組成物は、各成分を溶融混合した後のASTM D1238によるメルトフローインデックス(MI、荷重:2160gf、温度:260℃)が0.1〜10g/10分であることが望ましい。MIが0.1以下であると流動性が悪いため成形性が劣り、10を越えると耐衝撃特性、耐燃料バリア性等の特性が劣るためである。
本発明の耐衝撃性熱可塑性樹脂組成物を射出成形してなる成形品は、特に−40℃での耐衝撃性に優れる。ASTM D256(ノッチ付きIzod衝撃強度)に準じて測定した場合、23℃では、少なくとも130J/mであり、−40℃では、90J/m以上である。
次に実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<評価方法>
1.動的粘弾性測定
(C)耐衝撃性付与剤の試料を下記条件で動的粘弾性測定し、損失正接(tanδ)が最高値となる温度(Tmax:℃)を求めた。
装置名:Rheogel−E4000 (株)ユービーエム製
試料片:厚さ100μ×幅4mm
測定温度:−100〜100℃
昇温速度:2℃/分
周波数:110Hz
2.PBNの還元粘度(dl/g)
フェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)混合溶液を溶媒として、0.2g/dlに調整した溶液を、オストワルド粘度計により30℃で測定した。
3.引張破断強度(MPa)、引張破断伸度(%)
ASTM D638に準じて測定した。
4.曲げ弾性率(GPa)、曲げたわみ率(%)
ASTM D790に準じて測定した。
5.Izod衝撃強度(ノッチ付き)(J/m)
ノッチ付きIzod衝撃強度(J/m)は、幅約12.6mmの試料を用いて、ASTM D256に準じて測定した。測定雰囲気温度は、23℃と−40℃とした。
6.メルトフローインデックス(g/10分)
ASTM D1238に準じて、荷重2160gf、温度260℃で測定した。
<原材料樹脂>
使用した原材料樹脂は以下のものである。
(A)PBN:
(A1)PBN(還元粘度 1.40dl/g)
(A2)PBN(還元粘度 1.01dl/g)
(A3)PBN(還元粘度 0.75dl/g)
(B)繊維状充填剤:
(B)ガラス繊維[CS03JAFT792](旭ファイバーグラス(株))
(C)耐衝撃性付与剤:
表1に示す高分子物質を耐衝撃性付与剤として用いた。
Figure 2006152062
(実施例1〜8および比較例1〜7)
(A)ポリブチレンナフタレート樹脂(PBN)、(C)耐衝撃性付与剤をそれぞれ表2および表3に示す割合で均一に混合した。得られた混合物を35mm径の二軸押出機で溶融混練し、成形用ペレットを得た。なお、(B)繊維状充填剤は、サイドフィードにより練り込んだ。このときのコンパウンド性についてそれぞれ表2および表3中に示した。
得られたペレットを水分率0.05%以下に充分に乾燥後、射出成形機にて物性測定用テストピースを成形し、得られたテストピースの引張強さ、伸び、曲げ弾性率、曲げたわみ率、Izod衝撃強さ(23℃および−40℃)および組成物のメルトフローインデックス(MI)を表2および表3に示す。
Figure 2006152062
Figure 2006152062
表2から、Tgが−30℃以下および/又は損失正接(tanδ)が0.100以上である耐衝撃性付与剤の配合により、伸びや曲げたわみ率などの靭性の向上、特に−40℃での耐衝撃性の向上が認められる。
また表3から、同種の配合でも、PBNの還元粘度が0.9〜1.6dl/gより低くなるとコンパウンド性が不安定になり、さらにメルトフローインデックス(MI:260℃)が10g/10分以上となると、特に−40℃での耐衝撃性の向上が少ないことがわかる。さらにまた、耐衝撃性付与剤の配合量が多くなりすぎると、コンパウンド性が著しく不良になり、工業上の実施が困難である。
本発明の耐衝撃性熱可塑性樹脂組成物は、−40℃での耐衝撃性に優れた成形品を得ることができ、特に自動車用部品の分野において、北米での要求を満足する自動車用部品を提供することができ、産業上寄与すること大である。

Claims (3)

  1. 下記(A)、(B)、(C)の構成成分を含み、式〔1〕、式〔2〕を満たすことを特徴とする耐衝撃性熱可塑性樹脂組成物。
    (A)還元粘度が0.9〜1.6dl/gであるポリブチレンナフタレート樹脂90〜50質量部、
    (B)繊維状充填剤10〜50質量部、
    (C)動的粘弾性測定の損失正接(tanδ)が最高値となる温度(Tmax)が−30℃以下および/又は動的粘弾性測定の損失正接(tanδ)が0.100以上である耐衝撃性付与剤2〜9質量部、
    式〔1〕 (A)+(C)=70質量部、
    式〔2〕 (A)+(B)+(C)=105質量部 。
  2. メルトフローインデックス(ASTM D1238、荷重:2160gf、温度:260℃)が0.1〜10g/10分である請求項1記載の耐衝撃性熱可塑性樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2記載の耐衝撃性熱可塑性樹脂組成物を射出成形してなる成形品。
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