以下、本発明の第1の実施形態に係る調光装置について、図1乃至図8を参照して説明する。調光装置1は、照明負荷8を調光制御してシーンを再生させるための装置であり、表示部2、操作入力部3、中央演算処理部4、データ記憶部5、及び出力部6を備えている。
表示部2は、各操作ボタン等を表示させる液晶ディスプレイやLED表示器等により構成され、調光装置1の操作、設定に必要な各画面を表示するマン・マシンインターフェースとして機能する。また、操作入力部3は、図2に示されるような各種のフェーダ、スイッチを備えた調光卓30や、図3に示されるような液晶ディスプレイ上のタッチパネル50等により構成され、マン・マシンインターフェースとして機能する。
中央演算処理部4は、調光装置1全般の信号処理を行い、各種信号の入出力制御や、調光制御データ(後述する最終出力レベル等)の演算等を実施する。また、中央演算処理部4は、後述する複数シーンクロスチェンジ処理を実行することによりクロスチェンジ手段として機能する。データ記憶部5は、操作入力部3によって設定された各シーンの各回路の出力レベルを中央演算処理部4の制御の下で記憶する。出力部6は、中央演算処理部4で演算された調光制御データに基づいて調光器7へ調光制御信号(例えば、ラィティングコントロールとして規格化されたDMX512形式の制御信号)を出力する。なお、調光器7は調光制御信号によって照明負荷8を所定の光出力レベルとなるように調光制御する。
このような構成は汎用コンピュータを用いて実現できるもので、この場合、汎用コンピュータの外部記憶装置を通じて、記憶媒体に記録されている本発明の調光方法を実現するためのプログラムを主記憶装置にロードして実行することにより調光装置1が実現できる。
図2に示されるように、調光卓30は、各シーンに使用される各回路の出力レベルをデータ記憶部5に記憶する際に操作するシーン記憶用スイッチ31と、データ記憶部5に記憶されている各シーンの各回路の出力レベルを修正する際に操作するシーン修正用スイッチ32と、データ記憶部5に記憶されている各シーンの各回路の出力レベルを消去する際に操作するシーン削除用スイッチ33と、これらスイッチ31,32,33の操作対象を選択する際に操作するシーン選択スイッチ34とを備えている。
また、調光卓30は、シーンレベルフェーダ35a〜35jと、シーンレベル表示部36と、メインレベルフェーダ37と、レベル表示部38と、クロススイッチ39と、セットスイッチ40とを備えている。
シーンレベルフェーダ35a〜35jは、シーン番号”1”からシーン番号”10”に対応して設けられ、図において上方又は下方へ操作することで、各シーンのシーンレベルをアップ/ダウンさせることができるようになっている(以下、シーンレベルフェーダ35a〜35jにより設定された、シーン番号jに対するシーンレベルをLs[j]とする)。シーンレベルLs[j]は、各シーンレベルフェーダ35a〜35jの上方に設けてある2桁の7セグメント表示器からなるシーンレベル表示部36で表示される。ユーザは、シーンレベル表示部36の表示内容を見ることで現在の操作によるシーンレベルLs[j]を知ることができる。
メインレベルフェーダ37は、シーン編集の際にシーン内の各回路のレベル調節に用いられる他、後述するクロスチェンジモードにおいて、クロスチェンジのレベルを調整する際に用いられる(以下、メインレベルフェーダ37により設定されたレベルをLvとする)。メインレベルフェーダ37により設定されたレベルLvは、メインレベルフェーダ37の上方に設けてある2桁の7セグメント表示器からなるレベル表示部38で表示される。
クロススイッチ39は、クロスチェンジモードに移行する際に操作される。セットスイッチ40は、シーン編集の際にシーン内の回路の出力レベルを確定する際に操作される他、クロスチェンジモードにおいて、クロスチェンジ先のシーン再生状態の設定を確定する際に操作される。
図3に示されるタッチパネル50は、舞台等における照明負荷からなる制御単位を回路表示51で示しており、ユーザは、この回路表示51をタッチ操作することでシーン編集の対象となる回路を指定する。
次に、上記調光卓30及びタッチパネル50を操作して、各シーン毎に各回路の出力レベルを設定してシーン編集し、編集されたシーンの各回路の出力レベルをデータ記憶部5に記憶する際の手順を説明する。
ユーザは、まず、調光卓30のシーン記憶用スイッチ31を押下すると共に、シーン編集を行うシーンをシーン選択スイッチ34で選択する。そして、タッチパネル50に表示された回路表示51からシーンに使用する回路(制御単位)を指定し、調光卓30のメインレベルフェーダ37を操作して、その出力レベルを設定する。そして、セットスイッチ40を押下することで、この回路の出力レベルを確定させ、そのデータをデータ記憶部5に記憶する。このような回路の指定、及び指定した回路に対する出力レベルの設定を繰り返すことにより、シーン選択スイッチ34で選択したシーンを編集する。
次に、照明負荷8を調光制御してシーンを再生させる際の調光装置1の動作について説明する。調光装置1は、図4のフローチャート及び図5の演算モデルで示されるハイエスト演算処理を実行して調光器7に出力する最終出力レベルを決定することにより、各シーンを単独で、又は複数シーンを合成してシーン再生する。
ハイエスト演算処理が開始されると、中央演算処理部4は、回路番号iの値を”1”に設定する共に(#1)、最終出力レベルZ[1]の値を”0”(0%)に初期化する(#2)。そして、シーン番号jの値を”1”に設定し(#4)、シーン番号”1”の回路番号”1”の出力レベルA[1][1]をデータ記憶部5から読み出して、これにシーンレベルフェーダ35aによって設定されているシーンレベルLs[1]を積算する。そして、この積算値が、既に記憶されている最終出力レベルZ[1]の値より大きいか否か判断する(#6)。積算値が、既に記憶されている最終出力レベルZ[1]の値より大きければ(#6でYES)、Z[1]に積算値を代入し(#7)、シーン番号jの値をインクリメントして(#8)、ステップ#5からの処理を繰り返す。一方、積算値が既に記憶されているZ[1]の値以下であれば(#6でNO)、Z[1]の値を変更せず、シーン番号jの値をインクリメントして(#8)、ステップ#5からの処理を繰り返す。シーン番号”1”からシーン番号”n”(”n”は設定可能なシーン数を示し、例えば、本実施形態では”10”)まで、ステップ#5からステップ#8までの処理が繰り返されることにより、全てのシーンのうちで、最大となる出力レベル(A[j][1]とLs[j]の積算値)が最終出力レベルZ[1]として決定する。回路番号”1”について最終出力レベルZ[1]が決定すると(#5でYES)、回路番号iの値をインクリメントして(#9)、ステップ#2からの処理を繰り返し、以下、同様に回路番号”2”から回路番号”m”(”m”は設定可能な回路数を示し、例えば、本実施形態では”17”(図3の回路表示51参照))について、最終出力レベルZ[i]を決定する。以上のような処理により、各回路番号”1”〜”m”について、シーン番号”1”〜”j”のうちで最も大きな出力レベルが最終出力レベルZ[i]として設定され、各シーンが合成される。
次に、本発明の特徴である複数シーンクロスチェンジ処理について、図6及び図7のフローチャートを参照して説明する。調光装置1は、上記ハイエスト演算処理により調光制御が行われている状態で、クロススイッチ39が押下されると、クロスチェンジモードに移行する。なお、以下においては、クロスチェンジモード以外の制御状態を通常モードとし、クロスチェンジモードと通常モードを区別する。
クロスチェンジモードに移行すると、中央演算処理部4は、クロススイッチ39押下時の各シーンレベルフェーダ35a〜35jのシーンレベルLs[j]をクロスチェンジ元のシーンレベルLx[j]として記憶する(#21)。そして、シーンレベルフェーダ35a〜35jのシーンレベルLs[j]を最終出力レベルZ[i]の演算から切り離すと共に(すなわち、シーンレベルフェーダ35a〜35jを操作しても実際のシーン再生状態には反映されないようにする)、シーンレベル表示部36のシーンレベルLs[j]の表示を”0”にして、クロスチェンジ先のシーンレベルの設定を受け付け、セットスイッチ40が押下されたか否か判断する(第1の手段,第1の手順)(#22,#23)。ユーザはこの状態でシーンレベルフェーダ35a〜35jを操作してクロスチェンジ先のシーンレベルを設定し、設定が終了するとセットスイッチ40を押下する。
なお、この際、シーンレベルフェーダ35a〜35jを操作する代わりにシーン選択スイッチ34を操作してクロスチェンジ先のシーンレベルを設定するようにしてもよい。この場合、シーン選択スイッチ34が奇数回だけ押下されたときには、シーンレベルLs[j]を”1”(100%)とし、シーン選択スイッチ34が0回又は偶数回だけ押下されたときには、シーンレベルLs[j]を”0”(0%)とする。
ユーザによりセットスイッチ40が押下されると(#23でYES)、セットスイッチ40押下時のシーンレベルLs[j]をクロスチェンジ先のシーンレベルLy[j]として記憶する(#24)。次いで、ステップ#25からステップ#29までの処理を実行することにより、クロスチェンジ元のシーン再生状態からクロスチェンジ先のシーン再生状態にクロスチェンジする(第2の手段,第2の手順)。このクロスチェンジ動作は、まず、メインレベルフェーダ37のレベルLvを”0”に設定して(#25)、クロスチェンジモード時の最終出力レベル演算処理を実行する(#27)ことにより成される。なお、ステップ#23においてセットスイッチ40が押下されると(#23でYES)、シーンレベルフェーダ35a〜35jのシーンレベルLs[j]の表示をクロスチェンジする前の状態にする。
図7に示されるように、クロスチェンジモード時の最終出力レベル演算処理においては、まず、シーン番号jの値に”1”を設定し(#41)、クロスチェンジ中のシーンレベルLz[1]の値を”0”に初期化する(#42)。次に、以下の式(1)によりクロスチェンジ中のシーンレベルLz[1]を算出する(#44)。そして、シーン番号jの値をインクリメントして(#45)、ステップ#42からの処理を繰り返すことにより全てのシーンのシーンレベルLz[j]を決定する。
(数1)
Lz[j]=Ly[j]×Lv+Lx[j]×(1−Lv) (1)
そして、全てのシーンのシーンレベルLz[j]が決定すると(#43でYES)、このシーンレベルLz[j]を用いてハイエスト演算処理を実施し(すなわち、図4のハイエスト演算処理において、Ls[j]の代わりにLz[j]を用いる)、クロスチェンジモード時の最終出力レベルZ[i]を算出する(#46)。
上記演算処理が終了すると、中央演算処理部4は、最終出力レベルZ[i]を調光器7に出力すると共に(図6の#28)、メインレベルフェーダ37からのレベルLvの入力を受け付け(#29)、以下、レベルLvの値が”1”(100%)になるまで(#26でNO)、ステップ#26からステップ#29までの処理を繰り返し、レベルLvに応じた最終出力レベルZ[i]を調光器7に出力する。そして、レベルLvの値が”1”になると(すなわち、クロスチェンジ先のシーン再生状態になると)(#26でNO)、通常モードへ移行する。
なお、クロスチェンジモードから通常モードへの移行は、上記レベルLvが”1”になった場合(#26でNO)のみならず、例えば、クロスチェンジモード中に、再度、クロススイッチ39が押下された場合についてもクロスチェンジモードを中断して通常モードへ移行できるようにしてもよい。この場合、上記クロスチェンジモード時の最終出力レベル演算処理により算出されたシーンレベルLz[j]を通常モード時のシーンレベルLs[j]として設定することによって、クロスチェンジの途中でクロスチェンジモードを中断しても、明りが急激に変化しないようにすることができる。
図8は上記複数シーンクロスチェンジ処理により、複数シーンを同時にクロスチェンジする場合の説明図である。同図は、”回路1”(回路番号”1”)、”回路2”、及び”回路3”により”シーン1”(シーン番号”1”)が構成され、”回路4”、”回路5”、及び”回路6”により”シーン2”が構成され、”回路7”、”回路8”及び”回路9”により”シーン3”が構成される例を示している。通常モード時のシーン再生状態61として、”シーン1”のシーンレベルを100%(Ls[1]=1)、”シーン2”のシーンレベルを80%(Ls[2]=0.8)、及び”シーン3”のシーンレベルを0%(Ls[3]=0)に設定した状態において、クロススイッチ39が押下されると、調光装置1は、クロスチェンジ先のシーンレベルを受け付けるモードに移行する。ここで、ユーザがシーンレベルフェーダ35a〜35jを操作して、クロスチェンジ先のシーンレベルとして、”シーン1”のシーンレベルを100%(Ls[1]=1)、”シーン2”のシーンレベルを0%(Ls[2]=0)、及び”シーン3”のシーンレベルを100%(Ls[3]=1)に設定し、セットスイッチ40を押下すると、クロスチェンジ元のシーン再生状態からクロスチェンジ先のシーン再生状態にクロスチェンジするモードに移行する。そして、メインレベルフェーダ37のレベルLvが”0”(0%)から”1”(100%)に向けて操作されるにしたがって、クロスチェンジ元のシーン再生状態61からクロスチェンジ先のシーン再生状態62に徐々に移行し、最終的にレベルLvが”1”となった時点でクロスチェンジ先のシーン再生状態62となり、クロスチェンジモードから通常モードに移行する。
本実施形態の調光装置1によれば、クロスチェンジ元の複数シーン再生状態からクロスチェンジ先の複数シーン再生状態にクロスチェンジさせることができるので、照明演出の幅が広くなる。
また、クロスチェンジ元のシーンレベルLx[j]及びクロスチェンジ先のシーンレベルLy[j]を”0”(0%)〜”1”(100%)の間で任意に設定できるので、クロスチェンジ元のシーン及び/又はクロスチェンジ先のシーンを様々な条件で合成して、クロスチェンジさせることができる。
また、従来の調光装置においては、基本的なシーンが2シーン(シーンA、シーンB)ある場合、双方のシーンに、ある回路(X回路)を追加したシーンを演出しようとすると、シーンA、シーンB、シーンAにX回路を追加したシーンC、及びシーンBにX回路を追加したシーンDの4シーンを用意することが必要となるが、本実施形態の調光装置によれば、複数シーンを同時にクロスチェンジすることができるので、シーンA、シーンB、及びX回路だけで構成されたシーンXの3シーンを用意するだけでよい。すなわち、基本シーン数をN、追加する回路(複数回路の組み合わせでもよい)数をMとすると、従来の調光装置ではN×M個のシーンを要するが、本実施形態によれば、N+M個のシーンだけ用意すればよい。このため、本実施形態の調光装置1は、例えば、設定できるシーン数に限りがある小型の簡易型調光装置に適用した場合においても、照明演出の幅を広げることができる。
また、本実施形態によれば、クロススイッチ39が押下されてクロスチェンジモードに移行したときに、メインレベルフェーダ37を用いてクロスチェンジさせることができるので、複数シーンのクロスチェンジ用に新たなフェーダを用意する必要がない。
次に、本発明の第2の実施形態に係る調光装置について、図9乃至図18を参照して説明する。本実施形態の調光装置1は、シーンAからシーンBにクロスチェンジ(1シーン対1シーンのクロスチェンジ)するクロスAB処理、及び特定の回路について上記ハイエスト演算処理から切り離して優先制御する優先制御処理が、通常モードにおいて実行可能な点で第1の実施形態と異なる。
図9に示されるように、本実施形態に使用される調光卓30は、クロスAB処理を実行する際に操作されるクロスフェーダ部41を備えている。クロスフェーダ部41は、任意の1シーン(シーンA)のクロスチェンジレベルLaを設定するクロスフェーダ41aと、他の任意の1シーン(シーンB)のクロスチェンジレベルLbを設定するクロスフェーダ41bとを有している。クロスAB処理は、例えば、クロスフェーダ部41が操作されることにより実行される。
図10のフローチャート及び図11の演算モデルを参照して、クロスAB処理時の出力レベル演算処理(以下、クロスAB演算処理という)について説明する。クロスAB演算処理が開始されると、中央演算処理部4は、回路番号iの値を”1”に設定する共に(#61)、出力レベルQ[1]の値を”0”に初期化する(#62)。そして、シーンAとして選択されたシーンの出力レベルA[a][1](”a”はシーンAのシーン番号)及びシーンBとして選択されたシーンの出力レベルA[b][1](”b”はシーンBのシーン番号)をデータ記憶部5から読み出して、以下の式(2)を用いて出力レベルQ[1]を算出する(#64)。
(数2)
Q[i]=A[a][i]×La+A[b][i]×Lb (2)
そして、回路番号iの値をインクリメントして(#65)、ステップ#62からの処理を繰り返すことにより全ての回路番号iについて出力レベルQ[i]を決定する。全ての回路番号iについて出力レベルQ[i]が決定すると(#63でYES)、クロスAB演算処理を終了する。このようなクロスAB演算処理を、クロスフェーダ41a,41bが操作される毎に繰り返すことにより、クロスAB処理の際の出力レベルQ[i]が決定する。
次に、優先制御処理について説明する。優先制御処理は、例えば、図12に示される優先回路設定処理、及び図13に示される優先制御処理時の最終出力レベル演算処理により構成される。優先回路設定処理は、例えば、シーン再生中、タッチパネル50の回路表示51により優先制御する回路が指定され、メインレベルフェーダ37によりこの回路の出力レベルが設定され、セットスイッチ40により出力レベルが確定することにより実行される。
優先回路設定処理において、中央演算処理部4は、回路番号iのレベルLvが確定すると(#81でYES)、レベルLvの値を優先出力レベルS[i]として記憶と共に(#82)、回路番号iの優先フラグF[i]をONにし(#83)、優先制御処理時の最終出力レベルZ[i]を決定する演算処理を実行する。
優先制御処理時の最終出力レベル演算処理において、中央演算処理部4は、回路番号iの値を”1”に設定する共に(#101)、最終出力レベルZ[1]の値を”0”に初期化する(#102)。そして、優先フラグF[1]がONか否か判断し(#104)、優先フラグF[1]がONであれば(#104でYES)、優先出力レベルS[1]の値を最終出力レベルZ[1]に代入する(#105)。一方、優先フラグF[1]がOFFであれば(#104でNO)、ハイエスト演算処理を実行して最終出力レベルZ[1]を決定する(#106)。そして、回路番号iの値をインクリメントして(#107)、ステップ#102からの処理を繰り返すことにより、全ての回路番号iについて最終出力レベルZ[i]を決定する。
。
上記のような優先制御処理を実行し、優先出力レベルS[i]が設定された回路に対してはハイエスト演算処理から切り離して、優先出力レベルS[i]による調光制御を行うことにより、優先回路に属する照明負荷8の光出力レベルを上昇させたり、下降させることが瞬時的に行えることになる。
図14は、本実施形態における通常モード時の演算モデルを示す図であり、上記図4のハイエスト演算処理、図10のクロスAB演算処理、及び図13の優先制御処理時の最終出力レベル演算処理の関係を示す図である。同図においては、まず、図4に示されるハイエスト演算処理により出力レベルP[i]を決定し、図10に示されるクロスAB演算処理により出力レベルQ[i]を決定する。更に、ハイエスト演算処理により、これら出力レベルP[i],Q[i]のうちで、より出力レベルが高くなるほうの出力レベルを出力レベルR[i]として決定する。そして、この出力レベルR[i]と、優先出力レベルS[i]に基づいて、優先制御処理時の最終出力レベル演算処理により最終出力レベルZ[i]を決定する(すなわち優先フラグF[i]がONのときは、S[i]に基づいて最終出力レベルZ[i]が決定され、優先フラグF[i]がOFFのときは、出力レベルR[i]に基づいて最終出力レベルZ[i]が決定される)。
次に、本実施形態の複数シーンクロスチェンジ処理について、図15及び図16のフローチャート、並びに図17の演算モデルを参照して説明する。調光装置1は、通常モードで調光制御が行われている状態で、クロススイッチ39が押下されると、クロスチェンジモードに移行する。
クロスチェンジモードに移行すると、中央演算処理部4は、クロススイッチ39の押下時の最終出力レベルZ[i]をクロスチェンジ元の出力レベルX[i]として記憶する(#121)。そして、シーンレベルフェーダ35a〜35jのシーンレベルLs[j]を最終出力レベルZ[i]の演算から切り離すと共に、シーンレベル表示部36のシーンレベルの表示を”0”にして、クロスチェンジ先のシーンレベルの設定を受け付け、セットスイッチ40が押下されたか否か判断する(第1の手段,第1の手順)(#122,#123)。ユーザはこの状態でシーンレベルフェーダ35a〜35jを操作してクロスチェンジ先のシーンレベルを設定し、設定が終了するとセットスイッチ40を押下する。
ユーザによりセットスイッチ40が押下されると(#123でYES)、セットスイッチ40の押下時のシーンレベルLs[j]をクロスチェンジ先のシーンレベルLy[j]として記憶する(#124)。次いで、ステップ#125からステップ#129までの処理を実行することにより、クロスチェンジ元のシーン再生状態からクロスチェンジ先のシーン再生状態にクロスチェンジする(第2の手段,第2の手順)。このクロスチェンジ動作は、まず、メインレベルフェーダ37のレベルLvを”0”に設定し(#125)、クロスチェンジモード時の最終出力レベル演算処理を実行する(#127)ことにより成される。
図16に示されるように、クロスチェンジモード時の最終出力レベル演算処理においては、クロスチェンジ先のシーンレベルLy[i]を用いてハイエスト演算処理を実施し、クロスチェンジ先の出力レベルY[i]を算出する(#141)。そして、回路番号iの値を”1”に設定すると共に(#142)、最終出力レベルZ[1]の値を”0”に初期化する(#143)。そして、以下の式(3)により最終出力レベルZ[1]を算出する(#145)。
(数3)
Z[i]=Y[i]×Lv+X[i]×(1−Lv) (3)
そして、最終出力レベルZ[1]が決定すると、シーン番号jの値をインクリメントして(#146)、ステップ#143からの処理を繰り返し、以下同様にして全てのZ[i]を決定する。なお、式(3)から分かるように、セットスイッチ40押下時は、Lv=0となるためZ[i]=X[i]となりクロスチェンジ元のシーン状態が再生される一方、Lv=1では、Z[i]=Y[i]となりクロスチェンジ先のシーン状態が再生される。
上記演算処理が終了すると、中央演算処理部4は、最終出力レベルZ[i]を調光器7に出力すると共に(図15の#128)、メインレベルフェーダ37からのレベルLvの入力を受け付け(#129)、以下、レベルLvの値が”1”(100%)になるまで(#126でNO)、ステップ#126からステップ#129までの処理を繰り返し、レベルLvに応じた最終出力レベルZ[i]を調光器7に出力する。そして、レベルLvの値が”1”になると(#126でNO)、通常モードへ移行する。
次に、図18を参照して、複数シーンクロスチェンジ処理を途中で中断する際に行われるクロスチェンジモード中断処理について説明する。クロスチェンジモード中断処理は、複数シーンクロスチェンジ処理中に、例えば、クロススイッチ39が押下された場合に実施され、クロスチェンジモードを中断して通常モードに移行する際に、明かりが急激に変化しないようにするために実施される。
クロスチェンジモード中断処理が開始されると、中央演算処理部4は、クロススイッチ39が押下された時点のクロスチェンジモード時の最終出力レベルZ[i]を、出力レベルU[i]として記憶する(#161)。そして、クロスAB処理を解除すると共に(#162)、優先制御処理を解除する(全ての優先フラグF[i]をOFFにする)(#163)。そして、クロスAB処理及び優先制御処理を解除した状態で、通常モード時の最終出力レベルを算出し(図14における出力レベルP[i]に相当)、出力レベルV[i]として記憶する(#164)。そして、回路番号iの値を”1”に設定し(#165)、出力レベルU[1]と出力レベルV[1]の値が一致するか否か判断する(#167)。出力レベルU[1]と出力レベルV[1]の値が一致しない場合には(#167でYES)、出力レベルU[1]の値を優先出力レベルS[1]に代入すると共に(#168)、優先フラグ[1]をONにし(#169)、回路番号iの値をインクリメントして(#170)、ステップ#166からの処理を繰り返す。一方、出力レベルU[1]と出力レベルV[1]の値が一致する場合には(#167でNO)、優先出力レベルS[1]及び優先フラグF[1]を設定せずに、回路番号iの値をインクリメントして(#170)、ステップ#166からの処理を繰り返す。そして、全ての回路番号iについてステップ#166からステップ#170までの処理が終了すると(#166でYES)、優先制御処理へ移行する。
すなわち、クロススイッチ39が押下された時点のクロスチェンジモード時の最終出力レベルU[i](Z[i])と、通常モード時の出力レベルV[i]とが異なる場合(#167でYES)、クロスチェンジモードを中断して通常モードに移行すると最終出力レベルZ[i]が急激に変化する虞があるため優先制御とする(優先フラグF[i]=ON)一方、クロススイッチ39が押下された時点のクロスチェンジモード時の最終出力レベルU[i]と、通常モード時の出力レベルV[i]が一致する場合には(#167でNO)、優先制御にしなくても最終出力レベルZ[i]は変化しないため、優先制御しない(優先フラグF[i]=OFF)ようにする。
本実施形態の調光装置1によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる他、クロスAB処理や、優先制御処理が実施可能な調光装置においても複数シーンを同時にクロスチェンジすることができる。
次に、本発明の第3の実施形態に係る調光装置1について説明する。本実施形態の調光装置1は、第2の実施形態と比較して複数シーンクロスチェンジ処理及びクロスチェンジモード時の最終出力レベル演算処理が異なり、他の構成は、第2の実施形態と同様である。
本実施形態の複数シーンクロスチェンジ処理について、図19及び図20のフローチャート、並びに図21の演算モデルを参照して説明する。調光装置1は、通常モードで調光制御が行われている状態で、クロススイッチ39が押下されると、クロスチェンジモードに移行する。
クロスチェンジモードに移行すると、中央演算処理部4は、シーンレベルフェーダ35a〜35jのシーンレベルLs[j]を最終出力レベルZ[i]の演算から切り離すと共に、シーンレベル表示部36のシーンレベルの表示を”0”にして、クロスチェンジ先のシーンレベルの設定を受け付け、セットスイッチ40が押下されたか否か判断する(第1の手段,第1の手順)(#181,#182)。ユーザはこの状態でシーンレベルフェーダ35a〜35jを操作してクロスチェンジ先のシーンレベルを設定し、設定が終了するとセットスイッチ40を押下する。
ユーザによりセットスイッチ40が押下されると(#182でYES)、セットスイッチ40の押下時のシーンレベルLs[j]をクロスチェンジ先のシーンレベルLy[j]として記憶する(#183)。次いで、ステップ#184からステップ#188までの処理を実行することにより、クロスチェンジ元のシーン再生状態からクロスチェンジ先のシーン再生状態にクロスチェンジする(第2の手段,第2の手順)。このクロスチェンジ動作は、まず、メインレベルフェーダ37のレベルLvを”0”に設定して(#184)、クロスチェンジモード時の最終出力レベル演算処理を実行する(#186)ことによりなされる。
図20に示されるように、クロスチェンジモード時の最終出力レベル演算処理においては、まず、通常モード時の最終出力レベル(通常モードとして演算した場合の出力レベル)を算出して、算出した値をクロスチェンジ元の出力レベルX[i]とすると共に(#201)、クロスチェンジ先のシーンレベルLy[i]を用いてハイエスト演算処理を実施し、クロスチェンジ先の出力レベルY[i]を算出する(#202)。そして、回路番号iの値を”1”に設定すると共に(#203)、最終出力レベルZ[1]の値を”0”に初期化する(#204)。そして、上記式(3)によりZ[1]を算出し(#206)、シーン番号jの値をインクリメントして(#207)、ステップ#204からの処理を繰り返すことにより全てのZ[i]を決定する。
上記演算処理が終了すると、中央演算処理部4は、最終出力レベルZ[i]を調光器7に出力すると共に(図19の#187)、メインレベルフェーダ37からのレベルLvの入力を受け付け(#188)、以下、レベルLvの値が”1”(100%)になるまで(#185でNO)、ステップ#185からステップ#188までの処理を繰り返し、レベルLvに応じた最終出力レベルZ[i]を調光器7に出力する。そして、レベルLvの値が”1”になると(#185でNO)、通常モードへ移行する。
本実施形態によれば、上記第2の実施形態と同様の効果が得られる他、クロスチェンジモード時に、通常モード時の最終出力レベルを算出し、その値をクロスチェンジ元の出力レベルX[i]として、クロスチェンジモード時の最終出力レベルZ[i]を演算するので、クロスチェンジ時にシーンレベルフェーダ35a〜35jを操作することによりクロスチェンジ元のシーンレベルを調整することが可能になる(すなわち、クロススイッチ39の押下時に、クロスチェンジ元のシーン再生状態が固定されない)。
次に、本発明の第4の実施形態に係る調光装置、及びこの調光装置を遠隔制御する遠隔制御装置を備えた調光装置システムについて説明する。図22に示されるように、本実施形態の調光装置システム10は、遠隔制御装置20と通信を行う通信部9を備えた調光装置1と、この通信部9を介して調光装置1を遠隔制御して、データ記憶部5に記憶された出力レベルに基づいて照明負荷8を調光制御し、シーンを再生させる遠隔制御装置20とを備えている。
図23に示されるにように、遠隔制御装置20は、シーン選択スイッチ21及び、メインレベルフェーダ22、及びクロススイッチ23とを備えており、上記第1乃至第3の実施形態と同様に、クロススイッチ23を押下することによりクロスチェンジモードに移行する。
ユーザは、シーン選択スイッチ21を操作することによりクロスチェンジ先のシーンレベルを設定する。この場合、シーン選択スイッチ34が奇数回だけ押下されたときには、シーンレベルLs[j]を”1”(100%)とし、シーン選択スイッチ34が0回又は偶数回だけ押下されたときには、シーンレベルLs[j]を”0”(0%)とする。
そして、ユーザにより再度、クロススイッチ23が押下された場合には(この場合、クロススイッチ23は上記第1乃至第3の実施形態のセットスイッチ40に相当)、シーンレベルLs[j]をクロスチェンジ先のシーンレベルLy[j]として設定し、第1乃至第3の実施形態と同様の手順により、メインレベルフェーダ23のレベルLvに応じてクロスチェンジモード時の最終出力レベルZ[i]を演算する。
本実施形態における調光装置システム10によれば、上記第1乃至第3の実施形態と同様の効果が得られる他、遠隔制御装置20による調光制御が可能となるので、調光装置1が設置された場所に制限されず、任意の場所で調光制御することが可能となり、調光装置システム10の使い勝手を向上させることができる。
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、各回路に接続される照明負荷8は1つでなくてもよく、各回路に複数の照明負荷8を接続するようにしてもよい。