図1は、本発明に係る第1実施形態の基板焼成装置を示す一部切欠き斜視図であり、図2は、そのA−A線断面図である。なお、図1および図2において、X−X方向を幅方向、Y−Y方向を前後方向といい、特に−X方向を左方、+X方向を右方、−Y方向を前方または下流方向、+Y方向を後方または上流方向という。
図1および図2に示すように、基板焼成装置10は、扁平でかつ細長い直方体状を呈した焼成装置本体20と、搬送路11に沿って焼成装置本体20内に導入された基板Bに対し焼成処理等の所定の処理を施すためにこの焼成装置本体20内に所定の気体を供給する気体供給部30と、この焼成装置本体20内の気体を排気する気体排出部40とを備えた基本構成を有している。
前記焼成装置本体20は、平面視で矩形状を呈した底板21と、この底板21の幅方向両側縁部から立設された一対の側板22と、底板21の後縁部から立設された後板23と底板21の前縁部から立設された前板24と、これら側板22、後板23および前板24に架設された天板25とを備えている。これら各板21,22,23,24,25に囲繞された空間に基板Bを処理する処理空間Vが形成されている。前記後板23には、搬送路11に沿って系外から処理空間Vに導入される基板Bを通過させるための入口231が開口されているとともに、前記前板24には、搬送路11に沿って基板Bを処理空間Vから導出させるための出口241が開口されている。
前記処理空間Vは、前後方向に所定の間隔で設けられた4枚の仕切り板26(上流側から第1仕切り板261、第2仕切り板262、第3仕切り板263および第4仕切り板264の4枚)によって5室に仕切られている。
そして、後板23と第1仕切り板261との間には、外部から入口231を通して導入される基板Bを所定の気体雰囲気で受入れる上流側置換室V1が形成され、第1仕切り板261と第4仕切り板264との間には、基板Bに対して実質的に所定の気体雰囲気で焼成のための複数の処理を施す処理室V2が形成され、第4仕切り板264と前板24との間に処理室V2から導出された基板Bを所定の気体雰囲気で受入れる下流側置換室V3が形成されている。
そして、前記処理室V2は、第1仕切り板261と第2仕切り板262との間に形成された、基板Bに対して前処理としてのUV硬化、いわゆるキュア処理(事前加熱処理)を行うためのキュア処理用気体が導入されるキュア室(前処理室)V21と、第2仕切り板262と第3仕切り板263との間に形成された、基板Bに対して低酸素気体が導入されることによる低酸素雰囲気で加熱処理を施す加熱室V22と、第3仕切り板263と第4仕切り板264との間に形成された、加熱処理後の基板Bに対して冷却処理を施すための冷却用気体が導入される冷却室V23とを備えている。そして、この実施形態の装置は、基板Bに対しキュア処理、加熱処理、冷却処理の3つの工程からなる焼成処理を施すものであり、かつ、これら全ての工程を所定の低酸素雰囲気で行うようになっている。したがって、キュア処理用気体および冷却処理用気体としては、加熱室V22に導入する低酸素気体と同種のもの、具体的には不活性ガス、例えば窒素ガスが用いられる。
前記第1仕切り板261には、上流側置換室V1内の基板Bを処理室V2に導入するための導入口265が開口されているとともに、前記第4仕切り板264には、処理室V2内の基板Bを下流側置換室V3に向けて導出するための導出口268が設けられている。また、第2仕切り板262には、キュア室V21内の基板Bを加熱室V22へ向けて送り込むための上流側通過口266が設けられているとともに、第3仕切り板263には、加熱室V22内の基板Bを冷却室V23へ向けて送り込むための下流側通過口267が設けられている。
前記搬送路11は、基板搬送方向に向けて並設された基板搬送方向に直交する基板幅方向に延びた複数本の搬送ローラ12によって形成されている。かかる搬送ローラ12は、焼成装置本体20の上流側、焼成装置本体20の処理空間V内および焼成装置本体20の下流側に亘って敷設されている。これらの搬送ローラ12は、無端チェーンあるいは無端ベルトを介して互いに供回り可能に連結され、いずれか1本の搬送ローラ12が図略の駆動モータの駆動で駆動回転することにより残りの搬送ローラ12が従動回転し、これによって搬送ローラ12上に載置された基板Bが入口231を介して処理空間V内へ導入され、処理空間V内で搬送されるようになっている。
前記気体供給部30は、窒素貯留タンク等の気体供給源31と、この気体供給源31から導出された気体供給本管32と、この気体供給本管32から分岐されて焼成装置本体20の処理空間Vに連通された複数本(本実施形態においては5本)の気体供給支管33と、各気体供給支管33にそれぞれ設けられた複数個(本実施形態においては5個)の制御弁34とを備えて構成されている。
そして、気体供給支管33の内の最上流側のものである第1供給支管331には第1制御弁341が設けられ、上流側から2番目の第2供給支管332には第2制御弁342が設けられ、同3番目の第3供給支管333には第3制御弁343が設けられ、同4番目の第4供給支管334には第4制御弁344が設けられ、同最後(5番目)の第5供給支管335には第5制御弁345が設けられ、これらの制御弁34の開度が制御されることにより、処理空間Vに供給される気体の量が調節されるようになっている。
また、第1供給支管331は下流端が天板25を介して上流側置換室V1に連通され、第2供給支管332は下流端が天板25を介して処理室V2のキュア室V21に連通され、第3供給支管333は下流端が天板25を介して処理室V2の加熱室V22に連通され、第4供給支管334は下流端が天板25を介して処理室V2の冷却室V23に連通され、第5供給支管335は下流端が天板25を介して下流側置換室V3に連通されている。
前記キュア室V21内には、紫外線ランプ35が設けられ、キュア室V21に搬入された基板Bは、低酸素雰囲気中でこの紫外線ランプ35からの紫外線の照射を受け、本格的な焼成処理が施される前の前処理としてのキュア処理が実行されるようになっている。また、加熱室V22内には、基板Bを挟むようにして搬送路11の上下に配設された通電発熱体からなるヒーター36が設けられ、加熱室V22内に搬入された基板Bは、これらヒーター36からの熱線を受けて焼成処理が施されるようになっている。
したがって、上流側置換室V1に導入された基板Bは、第1供給支管331を介して供給された常温の気体に曝されることになるのに対し、処理室V2のキュア室V21に導入された基板Bは、紫外線ランプ35によって加熱されたキュア処理用の温度の気体に曝されることになり、同加熱室V22に導入された基板Bは、ヒーター36によって加熱された温度の気体に曝されることになる。また、同冷却室V23に導入された基板Bは、第4供給支管334を介して供給された徐冷用の温度の気体に曝され冷却処理が施されることになる。最終段階の下流側置換室V3に導入された基板Bは、第5供給支管335を介して供給される常温の気体に曝された後、出口241を通って系外に排出される。
そして、本実施形態においては、第2供給支管332を介してキュア室V21に供給された気体は、紫外線ランプ35によって150℃〜200℃に加熱され、第3供給支管333を介して加熱室V22に供給される気体は、ヒーター36によって250℃〜350℃に加熱されるようになっている。したがって、キュア室V21に導入された基板Bは、150℃〜200℃の気体に曝されることによる事前加熱が行われることによって、つぎの加熱室V22での250℃〜350℃での適正な焼成処理に引き継がれ、これによって基板Bが当初から高温環境に曝されることによる急激な熱歪みに起因した破損が確実に防止されるようになっている。
また、本実施形態においては、冷却室V23に供給される気体の温度は、キュア室V21内の温度と同様の150℃〜200℃に設定されているため、加熱室V22で250℃〜350℃に加熱された基板Bの急に常温に曝されることによる熱応力に起因した破損が確実に防止されるようになっている。
前記気体排出部40は、底板21を貫通して焼成装置本体20の処理空間Vに連通された複数本(本実施形態においては5本)の気体排出支管41と、各気体排出支管41の下流端が接続される気体排出本管42と、前記各気体排出支管41に設けられた複数個(本実施形態においては5個)の排気弁43とを備えて構成されている。前記気体排出支管41は、上流側置換室V1に連通した第1排出支管411と、上記キュア室V21に連通した第2排出支管412と、上記加熱室V22に連通した第3排出支管413と、上記冷却室V23に連通した第4排出支管414と、前記下流側置換室V3に連通した第5排出支管415とを備えている。第1排出支管411には第1排気弁431が、第2排出支管412には第2排気弁432が、第3排出支管413には第3排気弁433が、第4排出支管414には第4排気弁434が、第5排出支管415には第5排気弁435がそれぞれ設けられている。
前記気体排出本管42は、本実施形態においては、工場内に敷設された各所の排気を集合させるために設けられたものが利用されている。かかる気体排出本管42の下流端には、所定の気体浄化装置が設けられ、気体排出本管42に集められた各所の排気は、この気体浄化装置により一括して浄化処理が施され、清浄な気体となって外気中に排出されるようになっている。
このように構成された基板焼成装置10において、前記焼成装置本体20の後板23、第2仕切り板262、第3仕切り板263および前板24には、それぞれに設けられた基板Bを通過させるための開口である入口231、上流側通過口266、下流側通過口267および出口241を開閉するためのシャッター装置(低密閉用開閉扉部)50が設けられているとともに、第1仕切り板261および第4仕切り板264には、それぞれに設けられた基板Bを処理空間Vに導入するための導入口265および基板Bを処理空間Vから導出するための導出口268を開閉操作するゲートバルブ装置(高密閉用開閉扉部)60が設けられている。
以下、図3を基に、シャッター装置50について後板23に装着されているものを例に挙げて説明する。図3は、シャッター装置50の一実施形態を示す一部切り欠き斜視図であり、(イ)は、シャッター装置50が開放された状態、(ロ)は、シャッター装置50が閉止された状態をそれぞれ示している。なお、図3におけるXおよびYによる方向表示は図1の場合と同様である。
図3に示すように、シャッター装置50は、板状のシャッター板51と、このシャッター板51を開閉するように駆動する開閉シリンダ装置(第1アクチュエータ)52とを備えて構成されている。前記シャッター板51は、平面寸法が入口231の平面寸法より大きめに設定され、これによって入口231を閉止し得るようになっている。
かかるシャッター板51には、基端側の左右の端縁から互いに離間する方向に向けて同心で突設された一対の突設軸(シャッター軸)511が設けられている一方、前記後板23には、入口231上方に突設された幅方向一対のブラケット53が設けられ、前記各突設軸511が対応したブラケット53の装着孔に嵌入されることにより、シャッター板51は、突設軸511回りに正逆回動して入口231を開放した開放姿勢と、入口231を閉止した閉止姿勢との間で姿勢変更可能になっている。
かかるシャッター板51の裏面側には、周縁に沿って環状のシール部材512が貼設され、シャッター板51が閉止姿勢に姿勢設定された状態で、このシール部材512が後板23に密着することによりシャッター板51による上流側置換室V1(図1)内のシール性が確保されるようになっている。
前記開閉シリンダ装置52は、シャッター板51を開閉させるべく一方(本実施形態では右方)の側板22の上下方向の略中央位置に前後方向に延びた状態で設けられている。かかる開閉シリンダ装置52は、油圧あるいは空気圧等の流体圧が供給されるシリンダ521と、このシリンダ521に摺接状態で内装されたピストン522と、このピストン522から後方に向けて突設されたピストンロッド523とを備えて構成されている。
一方、右方の突設軸511は、右方の側板22のさらに右方にまで延設され、その先端部に連結アーム54が固定されている。この連結アーム54と前記ピストンロッド523の先端部とが互いに連結されることにより、ピストンロッド523の進退が突設軸511を介してシャッター板51に伝達され、これによるシャッター板51の突設軸511回りの正逆一体回動によって入口231が開閉されるようになっている。
かかる構成のシャッター装置50によれば、ピストンロッド523がシリンダ521から突出された状態で、図3の(イ)に示すように、シャッター板51が閉止姿勢から突設軸511回りに時計方向に回動して開放姿勢に姿勢設定され、これによって入口231が開放された状態になっている。
この状態(シャッター板51が開放姿勢に姿勢設定された状態)で開閉シリンダ装置52の駆動によりピストンロッド523がシリンダ521内に引き戻されると、シャッター板51は、連結アーム54を介した突設軸511回りの反時計方向への回動によって、図3の(ロ)に示すように、開放姿勢から閉止姿勢に姿勢変更され、焼成装置本体20の入口231がシャッター板51によって閉止される。
そして、入口231がシャッター板51によって閉止された状態では、シャッター板51のシール部材512が入口231の周縁部外側の後板23に密着するため、入口231を介した気体の流出入が有効に抑制される。
なお、上記の説明では、シャッター装置50について焼成装置本体20の後板23に設けられるものについて説明したが、第2仕切り板262および第3仕切り板263に設けられるものに付いても同一に構成されているため、それらの説明は省略する。
つぎに、図4を基に、ゲートバルブ装置60について第1仕切り板261に設けられているものを例に挙げて説明する。図4は、ゲートバルブ装置60の一実施形態を示す一部切り欠き斜視図であり、図4の(イ)は、ゲートバルブ装置60が開放された状態、図4の(ロ)は、ゲートバルブ装置60が閉止された状態をそれぞれ示している。なお、図4におけるXおよびYによる方向表示は図1の場合と同様である。
これらの図に示すように、ゲートバルブ装置60は、第1仕切り板261に開口された基板Bを処理室V2内に導入するための導入口265を閉止し得る平面寸法を備えたバルブ板61と、このバルブ板61を昇降させて導入口265を開放する下位の開放位置(図4の(イ))と、導入口265を閉止する上位の閉止位置(図4の(ロ))との間で位置変更させる昇降シリンダ装置(第2アクチュエータ)62と、閉止位置に位置設定されたバルブ板61を第1仕切り板261へ向けて押圧する押圧シリンダ装置(第3アクチュエータ)63とを備えて構成されている。
前記バルブ板61はT字状に形成され、その下面の幅方向(左右方向)中央位置から下方に向けて突設された角柱状の突設柱611が設けられているとともに、その前面に前記導入口265の周縁部と対応する矩形環状のシール部材612が貼設されている一方、前記底板21には、導入口265の上流側の直下位置に突設柱611が嵌挿される角孔211が穿設され、突設柱611が上からこの角孔211に嵌挿された状態でバルブ板61の上面が導入口265の下縁部より下方に位置し、かつ、シール部材612が第1仕切り板261に摺接するようになされている。
前記角孔211の内周面には、ゴムや軟質の合成樹脂からなる図略の弾性部材が貼設され、突設柱611は、かかる弾性部材に圧接した状態で角孔211に嵌挿されている。したがって、突設柱611が角孔211内で前後左右に動いても、弾性部材の弾性変形によって両者間の隙間のシールが確保され、これによって上流側置換室V1と外部との間の角孔211を介した気体の流通が抑制されるようになっている。
前記昇降シリンダ装置62は、バルブ板61を導入口265の下方に位置させて導入口265を開放する開放位置と、導入口265を閉止する閉止位置との間で位置変更させるものであり、油圧あるいは空気圧等の流体圧が供給されるシリンダ本体621と、このシリンダ本体621に摺接状態で上下動可能に内装されたピストン622と、このピストン622の上面に固定され、シリンダ本体621から気密状態で上方に突出したピストンロッド623とを備えて構成されている。かかる昇降シリンダ装置62は、そのピストンロッド623の上端部が突設柱611の下面に固定されることにより、当該昇降シリンダ装置62の正逆駆動でバルブ板61を開放位置と閉止位置との間で昇降させるようになっている。
前記押圧シリンダ装置63は、閉止位置に位置設定されたバルブ板61を第1仕切り板261へ向けて押圧し、これによって閉止された導入口265の気密性を確保するためのものであり、上流側置換室V1内の幅方向の中央部において天板25の下面に前後方向に延びた状態で固定されている。
かかる押圧シリンダ装置63は、油圧あるいは空気圧等の流体圧が供給されるシリンダ本体631と、このシリンダ本体631に摺接状態で前後動可能に内装されたピストン632と、このピストン632の前面に固定され、シリンダ本体631から気密状態で前方に突出したピストンロッド633とを備えて構成されている。かかる押圧シリンダ装置63は、そのピストンロッド633の前端部が閉止位置に上昇されたバルブ板61の後面を押圧することにより、当該バルブ板61のシール部材612を第1仕切り板261に押圧当接させ、これによるシール部材612の圧縮弾性変形でバルブ板61と導入口265との間の気密性を確実に確保し得るようになっている。
このように構成されたゲートバルブ装置60は、第4仕切り板264の下流側置換室V3側にも設けられているが、その構造は図4に示す第1仕切り板261に設けられたものと同様であるため、説明を省略する。
そして、かかるゲートバルブ装置60を第1仕切り板261と第4仕切り板264とに設けることにより、第1仕切り板261と第4仕切り板264とによって仕切られた空間である処理室V2は、各バルブ板61で導入口265および導出口268が閉止された状態で各バルブ板61が押圧シリンダ装置63により第1仕切り板261および第4仕切り板264に向けて押圧され、これによって確実な密封状態を得ることができる。
したがって、処理室V2内でのキュア室V21における基板Bに対するキュア処理、加熱室V22内における基板Bに対する加熱処理および冷却室V23内における基板Bに対する冷却処理を、外部の環境に影響されることなく、清浄な環境下で確実に実行することができる。
以上詳述したように、第1実施形態に係る基板焼成装置10は、搬送路11に沿って搬送されつつある基板Bに対し、所定の焼成処理を施すものであり、搬送路11に沿い、かつ、該搬送路11を包囲した状態で配設された焼成装置本体20内に、所定の気体雰囲気で基板Bに対して焼成処理を行うため、内部を所定雰囲気に保った状態で基板Bに焼成処理を施す処理室V2と、この処理室V2の上流側および下流側に設けられてその内部を処理室V2と同じ気体雰囲気とされる上流側置換室V1および下流側置換室V3とに区画形成され、上流側置換室V1の入口231および下流側置換室V3の出口241には、気体の流通を抑止するシャッター装置50が設けられ、処理室V2の導入口265および導出口268には、気体の流通を遮断するゲートバルブ装置60が設けられてなるものである。
かかる構成によれば、搬送路11に沿って搬送されつつある基板Bは、焼成装置本体20の上流端のシャッター装置50が開放された入口231から上流側置換室V1に導入され、シャッター装置50が閉止された状態で内部の気体が置換されることにより置換気体の雰囲気中に一旦保持される。引き続き、処理室V2の上流側の導入口265に設けられたゲートバルブ装置60が開放され、基板Bが導入口265を介し処理室V2内に搬送されたのちゲートバルブ装置60が閉止され、これによって処理室V2内は、密閉状態になる。この状態で基板Bが処理室V2で搬送されることにより、基板Bに対して加熱処理とその前後のキュア処理および冷却処理を含めた焼成処理が施される。そして、焼成処理が完了した基板Bは、処理室V2の導出口268側のゲートバルブ装置60が開放された状態で下流側置換室V3へ導出され、ここでの気体の置換を伴った所定時間の滞留によって最終的な冷却処理が施され、その後、焼成装置本体20の下流端のシャッター装置50が開放された後、搬送路11に沿って外部に排出される。
そしてこのように、キュア処理、加熱処理、冷却処理からなる焼成処理の全てを低酸素雰囲気で行うことにより、例えば銅ペーストを基板Bに対して塗布し焼成処理して液晶ディスプレイ製造用基板の配線を形成する場合でも、焼成処理中の銅の酸化を防止することができ、良好な基板処理が実現する。
このように、上流側および下流側置換室V1,V3と外部との間には、外気の侵入を抑止し得る程度の気体の流通を抑止する簡単な構造のシャッター装置50が設けられている一方、処理室V2の導入口265および導出口268には気体の流通を遮断するゲートバルブ装置60が設けられているため、気体の流通をなくす部材のコストを抑えた上で、処理室V2内に外部の気体の流入による焼成雰囲気の変化により焼成処理に不具合を来したり、逆に低酸素気体が流出することにより焼成効率が低下するような不都合の発生が確実に防止される。
また、加熱室V22と上流側置換室V1との間には、基板Bにキュア処理を施すキュア室V21が介設されているとともに、加熱室V22と下流側置換室V3との間には、冷却用気体が導入される冷却室V23が介設され、ゲートバルブ装置60は、上流側置換室V1とキュア室V21との間、および下流側置換室V3と冷却室V23との間に設けられ、シャッター装置50は、加熱室V22とキュア室V21との間、および加熱室V22と冷却室V23との間に設けられているため、上流側置換室V1に導入された基板Bは、加熱室V22に搬送される前に一旦キュア室V21において紫外線ランプ35からの紫外線の照射を受けてキュア処理が施され、これによる養生で予め加熱室V22での焼成処理に馴染まされるため、総合的に見て焼成処理の効率化が達成される。また、加熱室V22における焼成処理が完了した基板Bは、下流側置換室V3の上流側に設けられた冷却室V23で冷却用気体が供給されることにより冷却された後に下流側置換室V3に導入されるため、冷却室V23が存在しない場合に比較し冷却処理の効率化が実現するとともに、基板Bが急冷されることによる破損を確実に防止することができる。
そして、キュア室V21における基板Bに対するキュア処理は、加熱室V22における加熱処理の前処理とみなされるとともに、冷却室V23における基板Bに対する冷却処理は、加熱室V22における加熱処理の後処理とみなされ、これらキュア室V21、加熱室V22および冷却室V23における一連の処理を焼成処理とみなすことができるため、キュア室V21の上流端およびに冷却室V23の下流端にゲートバルブ装置60が設けられることにより、一連の焼成処理に係わる重要部分の気密性が確保され、焼成処理を必要な雰囲気条件の下で円滑に実行する上で好都合である。
また、シャッター装置50は、水平方向に延びる突設軸511回りに回動自在に軸支されたシャッター板51と、このシャッター板51を突設軸511回りに回動操作する開閉シリンダ装置52とを備えて構成されているため、開閉シリンダ装置52の駆動でシャッター板51を突設軸511回りに正逆回動させることにより、入口231および出口241等を閉止したり開放したりすることができる。かかる開閉シリンダ装置52は、簡単な構造であるため装置コストを抑えた上でさほどの気密性が要求されない開口に対し好適に使用することができる。
そして、本実施形態においては、上流側置換室V1および下流側置換室V3は、いずれも外部に対して隣設される空間であり、シャッター装置50の開閉動作によって一旦は室内が外部と連通し、このとき外気が室内に侵入したり、逆に室内の気体が排出される等の外気との連通状態が生じてしまう空間であるから、かかる空間を対象として設けられるシャッター装置50として厳密な気密性を要求する必要性は乏しく、したがって、かかる上流側置換室V1および下流側置換室V3を対象としてシャッター板51を備えてなる廉価なシャッター装置50を採用することができる。
また、ゲートバルブ装置60は、平板状のバルブ板61と、開口を閉止した閉止位置と、開口を開放した開放位置との間でバルブ板61を位置変更させる昇降シリンダ装置62と、閉止位置に位置設定されたバルブ板61を開口に向けて押圧する押圧シリンダ装置63とを備えて構成されているため、昇降シリンダ装置62の駆動によりバルブ板61が開口を閉止した閉止位置に位置設定された状態で、当該バルブ板61は、押圧シリンダ装置63の駆動により開口に向かって押圧されるため、バルブ板61が開口の周縁部に密着し、これによって処理室V2内の空間の気密性を確実に確保することができる。
そして、本実施形態においては、焼成処理の心臓部分である加熱室V22は、極めて高度な気密性が要求されるため、導入口265および導出口268を対象としてバルブ板61、昇降シリンダ装置62および押圧シリンダ装置63とを備えてなる気密性に富んだゲートバルブ装置60を好適に使用することができる。
図5は、本発明に係る第2実施形態の基板焼成装置を示す分解斜視図であり、図6は、その組み立て斜視図である。また、図7は、図6のC−C線断面図である。なお、図5および図6において、XおよびYによる方向表示は、図1の場合と同様(Xは幅方向(−X:左方、+X:右方)、Yは前後方向(−Y:前方、+Y:後方))である。
図5に示すように、第2実施形態に係る基板焼成装置10′は、各部(前記上流側置換室V1に対応した上流側置換部、同キュア室V21に対応したキュア部、同加熱室V22に対応した加熱部、同冷却室V23に対応した冷却部および同下流側置換室V3に対応した下流側置換部)が互いに独立した単位装置(上流側置換装置101、キュア装置102、加熱装置103、冷却装置104および下流側置換装置105)として構成され、各単位装置101,102,103,104,105が直列で組み付けられることにより、図6および図7に示すような基板焼成装置10′が形成されるようになされている点が第1実施形態の基板焼成装置10と基本的に相違している。
各部を各単位装置101,102,103,104,105毎に分割して独立させることにより基板焼成装置10の製造現場から据え付け現場への運び込みや据え付け工事等が容易になる。
従って、基本的に各単位装置101,102,103,104,105の構成は、第1実施形態の処理空間Vにおける上流側置換室V1、処理室V2(キュア室V21、加熱室V22、冷却室V23)および下流側置換室V3と同様に構成されている。因みに、第2実施形態でも各単位装置101,102,103,104,105の内部について上流側置換室V1、キュア室V21、加熱室V22、冷却室V23および下流側置換室V3という用語を採用する。
前記上流側置換装置101は、基板Bが搬入される度に雰囲気の置換を行うためのものであり、箱形を呈した装置本体201と、この装置本体201内に前後方向に向かって並設された幅方向に延びる複数本の搬送ローラ12とを備えて構成されている。装置本体201の右側の側板22には基板Bを上流側置換室V1内に搬入するための入口221が開口されているとともに、この入口221を開閉するシャッター装置50が設けられている。また、装置本体201の前板24には基板Bを搬出するための出口241が開口されているとともに、この出口241を開閉するゲートバルブ装置60が設けられている。
シャッター装置50およびゲートバルブ装置60の構造については、第1実施形態で採用されたものと同様である。入口221を介した上流側置換室V1内への基板Bの搬入操作については、図略の移載用のロボットによって行われるようになされており、この点がローラ搬送によって上流側置換室V1内に搬入される第1実施形態の場合と相違している。
前記キュア装置102は、上流側置換装置101から搬入された基板Bに対して事前の前処理としての加熱処理(キュア処理)を施すためのものであり、箱形を呈した装置本体202と、この装置本体202内で前後方向に向けて並設された幅方向に延びる複数本の搬送ローラ12とを備えて構成されている。装置本体202の後板23には、上流側置換装置101の出口241に対向した入口231が設けられているとともに、同前板24には出口241が設けられている。かかるキュア装置102の前板24には、その内面側に出口241を開閉するための第1実施形態のものと同様のシャッター装置50が設けられている。
前記加熱装置103は、キュア装置102から搬入された基板Bに対して加熱処理を施すためのものであり、箱形を呈した装置本体203と、この装置本体203内で前後方向に向けて並設された幅方向にのびる複数本の搬送ローラ12とを備えて構成されている。装置本体203の後板23には、キュア装置102の出口241に対応した入口231が設けられ、キュア処理の完了した基板Bは、この入口231を介して加熱室V22内に導入され、ここで所定の加熱処理が施された後に前板24に設けられた出口241を通って冷却装置104へ向けて搬出されるようになっている。
かかる加熱装置103は、本実施形態においては、加熱室V22が後部加熱室V221と、前部加熱室V222とに二分割されている。後部加熱室V221と前部加熱室V222との間には仕切り板27が介設されているとともに、この仕切り板27には通過口271が設けられ、後部加熱室V221内の基板Bは、この通過口271を通って前部加熱室V222へ搬入されるようになっている。
前記仕切り板27には、通過口271を開閉する第1実施形態のものと同様のシャッター装置50が設けられ、このシャッター装置50が閉止されることにより後部加熱室V221と前部加熱室V222との加熱環境を異ならせることができるようになされている。
前記冷却装置104は、加熱装置103から搬入された基板Bに対して第1実施形態と同様の冷却処理を施すためのものであり、箱形を呈する装置本体204と、この装置本体204内で前後方向に向けて並設された幅方向にのびる複数本の搬送ローラ12とを備えて構成されている。装置本体204の後板23には、加熱装置103の出口241に対応した入口231が設けられ、加熱処理の完了した基板Bは、この入口231を介して冷却室V23内に導入され、ここで所定の冷却処理が施された後に前板24に設けられた出口241を通って下流側置換装置105へ向けて搬出されるようになっている。かかる冷却装置104の後板23の内面側には、入口231を開閉する第1実施形態のものと同様のシャッター装置50が設けられている。
なお、第2実施形態においては、搬送ローラ12の上方位置に冷却面を基板Bに対向させるように配設されたクーリングパネル28(図7)が設けられ、基板Bは、第1実施形態と同様の通風による冷却処理に加えてクーリングパネル28からの放射冷熱を受けることによっても冷却処理が施されるようになっている。
前記下流側置換装置105は、基板Bが搬出される度に雰囲気の置換を行うためのものであり、箱形を呈した装置本体205と、この装置本体205内に前後方向に向かって並設された幅方向に延びる複数本の搬送ローラ12とを備えて構成されている。装置本体205の後板23には、冷却装置104からの基板Bを下流側置換室V3内に搬入するための入口231が開口されているとともに、右側の側板22には基板Bを外部に排出するための出口222が開口されている。そして、下流側置換室V3の入口231には第1実施形態のものと同様のゲートバルブ装置60が設けられているとともに、同出口222にも第1実施形態のものと同様のシャッター装置50が設けられている。
このような各単位装置101,102,103,104,105が直列に連結されることによって、図6および図7に示すような第2実施形態に係る基板焼成装置10′が形成される。なお、図7に示すように、第2実施形態における気体供給源31から気体供給本管32および気体供給支管33を介して気体を各単位装置101,102,103,104,105内に導入する構造的な気体供給部30の構成、および各単位装置101,102,103,104,105内の気体を気体排出支管41を介して気体排出本管42へ排出する気体排出部40の構造的な構成については、図1および図2に示す第1実施形態のものと同様である。
そして、第2実施形態の基板焼成装置10′は、各単位装置101,102,103,104,105がそれぞれ気密状態で直列に連結される必要があることから、各単位装置101,102,103,104,105間に気密構造70が介設されているとともに、各単位装置101,102,103,104,105のメンテナンス作業を容易に行い得るようにするために各単位装置101,102,103,104,105の各天板25に蓋構造80が設けられている。
以下、気密構造70について図8を基にキュア装置102と加熱装置103との間に介設されるものを例に挙げて説明する。図8は、キュア装置102と加熱装置103との間に介設される気密構造70の一実施形態を示す図であり、(イ)は斜視図、(ロ)は(イ)のD−D線断面図である。図8に示すように、気密構造70は、キュア装置102の前板24および加熱装置103の後板23にそれぞれ固定されるフランジ71と、これら各フランジ71間に介設されるゴム等の弾性材料製のシール部材としてのパッキン72とを備えた基本構成を有している。
前記フランジ71は、例えばステンレススチール製の中実の金属板によって正面視で矩形状に形成され、中央位置にキュア室V21内の基板Bを加熱装置103へ向けて送り出すための出口241およびキュア装置102からの基板Bを加熱装置103内に受け入れるための入口231としての機能を果たす基板通過口711が開口されているとともに、周縁部には全周に亘って周方向に等ピッチで複数のボルト孔712が穿設されている。
かかるフランジ71は、キュア装置102および加熱装置103の筐体を構成する板金110の前板24および後板23に対応する部分にそれぞれ形成された装着開口200に嵌め込まれた状態で、周縁部が板金110に溶接止めされることによって前板24および後板23に固定されている。板金110によって囲繞された空間にはグラスウール等からなる断熱材111が装填され、これによってキュア室V21内および加熱室V22内は外部に対して断熱処理が施された状態になっている。
そして、フランジ71は、前板24および後板23の装着開口200にそれぞれ嵌め込まれて固定された状態で当該各フランジ71の対向面が前板24および後板23の表面からそれぞれ若干凹没した位置に位置するように厚み寸法および設置位置が設定され、これによってキュア装置102の前板24が加熱装置103の後板23と互いに当接された状態で、それぞれのフランジ71間にパッキン72が挟持され得るパッキン装着凹部73が形成されるようになっている。
前記パッキン72は、平面寸法がフランジ71のそれと同一に設定されているとともに、フランジ71の基板通過口711と同一寸法の基板通過口721が開口され、これによってキュア装置102と加熱装置103とが連結された状態でキュア装置102内の基板Bは、これら基板通過口711,721を通って加熱装置103内に搬入されるようになっている。また、パッキン72の周縁部におけるフランジ71のボルト孔712と対応した位置にはボルト孔722が穿設されている。
そして、キュア装置102の前板24のパッキン装着凹部73にパッキン72を嵌め込み、引き続き加熱装置103の後板23のパッキン装着凹部73をパッキン72に外嵌するようにして後板23を前板24に当接させた状態で、図8の(ロ)に示すように、互いに対向した一対のフランジ71のボルト孔712およびパッキン72のボルト孔722にボルト74を挿通した後、ナット75をボルト74の先端に螺着して締結することにより、キュア装置102と加熱装置103とは、内部が互いに気密状態で互いに連結されるようになっている。
ついで蓋構造80について図9〜図11を基にキュア装置102に装着されるものを例に挙げて説明する。図9および図10は、蓋構造80を説明するためのキュア装置102の上部を示す斜視図であり、図9は、メンテナンス用蓋体83が開放された状態、図10は、メンテナンス用蓋体83が閉止された状態をそれぞれ示している。また、図11は、図10のE−E線断面図である。
まず図9に示すように、蓋構造80は、キュア装置102の天板25に設けられた平面視で矩形状のメンテナンス開口89の下方位置に形成された装置側フランジ81と、メンテナンス開口89に嵌め込まれた状態で前記装置側フランジ81上に積層されるシール部材としてのパッキン82と、メンテナンス開口89に嵌め込まれた状態で前記パッキン82に積層されるメンテナンス用蓋体83とを備えて構成されている。前記メンテナンス用蓋体83は、内側蓋体84と、この内側蓋体84に積層される外側蓋体85とからなっている。
前記装置側フランジ81は、キュア装置102の天板25を構成する板金110のメンテナンス開口89に対応した内壁面に溶接止めで固定されている。かかる装置側フランジ81には、全周に亘って等ピッチで複数のボルト孔811が穿設されている。
前記パッキン82は、装置側フランジ81と内側蓋体84との間に介設されてキュア装置102内の気密性を確保するためのものであり、ゴム等の弾性材料によって形成されている。かかるパッキン82は、周縁がメンテナンス開口89の周壁に摺接し得るように寸法設定され、中央位置にキュア装置102のメンテナンス開口89に対応したメンテナンス開口821が設けられているとともに、全周に亘って前記装置側フランジ81のボルト孔811と対応するように穿設された複数のボルト孔822が設けられている。
前記内側蓋体84は、前記装置側フランジ81とでパッキン82を挟持するためのものであり、パッキン82の上部で装置側フランジ81と対向するように設けられる蓋側フランジ841と、この蓋側フランジ841の上部に積層されて溶接止め等により当該蓋側フランジ841に溶接等によって固定された板金材842とからなっている。蓋側フランジ841は、装置側フランジ81と同一形状に設定されているとともに、板金材842は、平面視の形状が蓋側フランジ841のそれと同一に設定されている。
かかる内側蓋体84には、全周に亘って前記パッキン82のボルト孔822に対応した位置に蓋側フランジ841および板金材842を貫通した複数のボルト孔843が穿設されている。そして、メンテナンス開口89内の装置側フランジ81上にパッキン82を装着し、引き続きこのパッキン82上に内側蓋体84を積層した状態で各ボルト孔843,822,811にボルト86を差し通し、装置側フランジ81の下面にボルト孔811と同心で溶接止めにより固定されたナット802(図11)に螺着して締結することにより、内側蓋体84がパッキン82を介して密着状態で装置側フランジ81に固定されるようになっている。かかる内側蓋体84の装置側フランジ81への装着によって、メンテナンス開口89は、気密状態で閉止されることになる。
また、内側蓋体84の上面四隅部には、当該内側蓋体84のメンテナンス開口89に対する着脱操作の手掛かりになる円形を呈した着脱操作リング844が固定され、これらの着脱操作リング844に作業用のロープ等を差し通して吊り上げたり吊り降ろしたりすることにより内側蓋体84をメンテナンス開口89に対し容易に着脱操作し得るようになっている。
前記外側蓋体85は、金属製の板材にプレス処理を施すことによって形成された角皿状の断熱材装填皿851と、この断熱材装填皿851の上面開口を閉止する外装板852とを備えて構成されている。断熱材装填皿851は、メンテナンス開口89に摺接状態で嵌め込まれ得るように平面寸法が設定されているのに対し、外装板852は、平面寸法が断熱材装填皿851のそれより若干大きめに設定されている。かかる外装板852は、断熱材装填皿851内に所定の断熱材111が充填された状態で断熱材装填皿851の上縁部に全周に亘って溶接止めで固定されている。
また、外装板852の周縁部は、断熱材装填皿851から外方に向かって突出した状態になっており、この外方に突出した部分の適所に所定個数のボルト孔853が穿設されている一方、キュア装置102の天板25には、ボルト孔853に対応した位置に螺子孔251が螺設され、メンテナンス用蓋体83がメンテナンス開口89に装着された状態で、ボルト86をボルト孔853を介して螺子孔251に螺着締結することにより、外側蓋体85が、図10および図11に示すように、キュア装置102の天板25に固定されるようになっている。
なお、断熱材装填皿851には、内側蓋体84に螺着されたボルト86および内側蓋体84に固定された着脱操作リング844にそれぞれ対応する位置に、これらを逃がすための逃がし凹部854が上方に向かって膨設され、外側蓋体85が内側蓋体84に重ねられた状態でボルト86および着脱操作リング844が逃がし凹部854に嵌り込むことで着脱操作リング844およびボルト86の外側蓋体85に対する干渉が回避されるようになされている。
このように構成された蓋構造80によれば、メンテナンス用蓋体83がキュア装置102の天板25に形成されたメンテナンス開口89に装着された状態では、図11に示すように、装置側フランジ81と蓋側フランジ841とがパッキン82を介しボルト86によって一体的に結合されているため、キュア装置102内は良好な状態で気密性が確保される。
また、メンテナンス用蓋体83は、内側蓋体84と、これに積層された外側蓋体85とによって構成され、しかも、外側蓋体85内には断熱材111が充填されているため、キュア装置102の天板25は、断熱性に富んだ状態になっており、これによってキュア装置102は良好な熱効率で基板Bに対し処理を施し得るようになっている。
そして、キュア装置102内の搬送ローラ12等の機器に対して各種のメンテナンス作業を施すときには、ボルト86を緩めて外し、外側蓋体85および内側蓋体84を順次開放することによりメンテナンス開口89が外部に向けて開放された状態になるため、従来のようにキュア装置102そのものを解体したり天板25に切断処理を施したりする等の面倒な作業を行うことなく、この外部に開放されたメンテナンス開口89を介して各種のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
さらに第2実施形態においては、各単位装置101,102,103,104,105間に形成された基板Bを通過させるための入口231および出口241の内のシャッター装置50またはゲートバルブ装置60が付設されていない側に、室内へ向かって突設された口角筒体29が設けられている。図12は、キュア装置102の入口231に設けられた口角筒体29の一実施形態を示す斜視図である。図12に示すように、口角筒体29は、開口面積が入口231のそれと同一に設定され、角筒状を呈して後板23からキュア装置102内に向けて突設されている。
かかる口角筒体29を設けることにより、上流側置換装置101とキュア装置102との間がゲートバルブ装置60(図5)の開放動作により入口231を介して流通可能になった状態で、一方側から他方側に向かおうとする気流は、口角筒体29内を通過するときの圧力損失が増大するため、口角筒体29が存在しない場合に比較し、一方側から他方側に流通し難くなっており、これによって一方側の気体が他方側の気体に混入することが有効に防止されるようになっている。口角筒体29の突出量は、異種の気体間の拡散係数と、口角筒体29の開口面積と、この開口面積を通過しようとする気体の流速とから公知の計算式を用いて算出することができる。因みに本実施形態においては口角筒体29の突出量は略50mmに設定されている。
加えて、第2実施形態においては、上流側置換装置101とキュア装置102との間、および冷却装置104と下流側置換装置105との間で各室内の圧力差を制御することにより、処理室V2(キュア室V21、加熱室V22および冷却室V23)内の雰囲気を酸素濃度が極めて低い極低酸素雰囲気にすることが行われている。以下、この差圧制御について図13を基に上流側置換装置101とキュア装置102との間におけるものを例に挙げて説明する。
図13は、差圧制御を説明するための説明図であり、スタンバイ期間T1、上流側置換室V1への基板B挿入期間T2、上流側置換室V1のパージ期間T3およびキュア室V21への基板移動期間T4のそれぞれにおける、第1制御弁341の開度の大小、第1排気弁431の開閉状態、シャッター装置50の開閉状態、第2制御弁342の開度の大小、第2排気弁432の開閉状態、およびゲートバルブ装置60の開閉状態をそれぞれ模式図およびタイムチャートで示している。
まず、スタンバイ期間T1では、シャッター装置50およびゲートバルブ装置60が閉止された状態で第1制御弁341の開度は「小」に設定され、かつ、第1排気弁431は閉止されている。これによって上流側置換室V1には少量の窒素ガスが常に押し込まれる状態になり、これによって上流側置換室V1内は大気圧より大きな圧力で窒素ガスが充満しているため、外気が上流側置換室V1内に侵入することはない。また、キュア室V21については、第2制御弁342の開度が「小」に設定された状態で第2排気弁432が開通されているため、キュア室V21内では常に窒素ガスが流通し、これによってキュア室V21内は窒素ガスで満たされた状態になっている。
ついで、上流側置換室V1内に基板Bを挿入する基板挿入期間T2では、第1排気弁431の閉止が継続された状態で第1制御弁341の開度が「大」に変更されるとともに、シャッター装置50が開放されるため、大量の窒素ガスが上流側置換室V1に供給されて入口221から外部に流出した状態になっている。この状態で基板Bが入口221から上流側置換室V1内に挿入されるため、このときの上流側置換室V1内への外気の侵入は有効に防止される。
ついで、基板Bの上流側置換室V1内への挿入が完了してシャッター装置50が閉止された後のパージ期間T3においては、第1制御弁341の開度の「大」が継続された状態で第1排気弁431が開通されるため、上流側置換室V1内は、大量の窒素ガスで置換されることになり、従って、たとえ基板挿入期間T2で外気が上流側置換室V1内に侵入していたとしても、この雰囲気は完全に新たに供給された窒素ガスと置換され、これによって上流側置換室V1内はほとんど空気が存在しない極めて残存酸素濃度が低い状態になる。
ついで、上流側置換室V1内の基板Bをキュア室V21へ移す基板移動期間T4においては、第1制御弁341の開度が「小」に変更されるとともに、シャッター装置50の閉止および第1排気弁431の開通が継続された状態で第2制御弁342の開度が「大」に変更され、さらに第2排気弁432が閉止された状態でゲートバルブ装置60が開通される。これによってキュア室V21内は上流側置換室V1内より高圧になり、キュア室V21内から大量の窒素ガスが出口241を通って上流側置換室V1へ流入するため、上流側置換室V1内の雰囲気がキュア室V21へ移ることはない。この状態で基板Bは、上流側置換室V1内からキュア室V21内へ搬送されるため、キュア室V21内が基板Bに同伴した上流側置換室V1内の雰囲気で汚染されることが確実に防止される。
このような弁類の開閉制御が行われることにより、基板Bが移動される下流側の雰囲気は、常に上流側の雰囲気より圧力が大きい、いわゆる差圧制御が実現し、これによってキュア室V21内を酸素濃度が極めて低い窒素雰囲気にすることができる。
なお、基板Bを冷却装置104から下流側置換装置105を介して基板焼成装置10′から外部に排出するに際しても同様の差圧制御が行われるが、この場合は、基板Bが移動される下流側の圧力を上流側の圧力より低くするように差圧制御される点が基板Bを基板焼成装置10′に導入する場合の制御と異なっている。
以上詳述したように、第2実施形態の基板焼成装置10′によれば、まず、基板焼成装置10′は、それぞれ独立した単位装置である上流側置換装置101、キュア装置102、加熱装置103、冷却装置104および下流側置換装置105を合体させることにより形成されるため、製造現場で製造された各単位装置101,102,103,104,105を据え付け場所へ運び込んで組み立てることにより基板焼成装置10′を容易に完成させることができ、装置の製造が容易であるという利点を有する。
また、各単位装置101,102,103,104,105間には、フランジ71およびパッキン72を備えた気密構造70が介設されるため、基板焼成装置10′内の確実な気密性を確保することができる。
また、各単位装置101,102,103,104,105には、それぞれの天板25に開閉可能なメンテナンス用蓋体83を備えた蓋構造80が採用されているため、メンテナンス用蓋体83を開放することで基板焼成装置10′内のメンテナンス作業を容易に行うことができる。しかも、この蓋構造80は、装置側フランジ81、パッキン82および蓋側フランジ841を備えて気密性を確保し得るように構成されているため、外気が蓋構造80を介して基板焼成装置10′内に侵入するような不都合の発生を確実に防止することができる。
さらに、各単位装置101,102,103,104,105において、基板Bを導入する入口231または出口241部分に口角筒体29が設けられているため、口角筒体29内を流通しようとする気流は、口角筒体29内を通過するときの圧力損失の増大により、口角筒体29が存在しない場合に比較し流通し難くなっており、これによって外気が上流側置換装置101内に侵入したり、一方の単位装置から他方の単位装置へ気体が混入したりすることを有効に防止することができる。
加えて、上流側置換装置101およびキュア装置102においては、移動される基板Bの下流側の圧力が上流側の圧力より大きくなるよう制御する差圧制御が採用されているとともに、冷却装置104および下流側置換装置105においては、移動される基板Bの下流側の圧力が上流側の圧力より小さくなるように制御する差圧制御が採用されているため、基板Bの基板焼成装置10′内への挿入時、基板焼成装置10′内での移動時、および基板焼成装置10′からの排出時に外気が基板焼成装置10′内に侵入することを確実に防止することが可能になり、基板焼成装置10′内を極めて低い酸素濃度の雰囲気にすることができる。
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下の内容をも包含するものである。
(1)上記の実施形態においては、焼成装置本体20内の処理空間Vを、上流側から順次、上流側置換室V1、キュア室V21、加熱室V22、冷却室V23および下流側置換室V3の5室に分割しているが、本発明は、処理空間Vを5室に分割することに限定されるものではなく、例えば、キュア室V21および冷却室V23を省略して上流側置換室V1と、加熱室V22と、下流側置換室V3との3室としてもよい。すなわち、処理室を加熱室のみとしてもよい。但しこの場合、上流側置換室V1にキュア室V21の機能を担わさせるとともに、下流側置換室V3に冷却室V23の機能を担わさせることが好ましい。
そして、特に第2実施形態においては、加熱室V22を複数室(後部加熱室V221および前部加熱室V222の2室)設けているため、処理に長時間を要する加熱を行うための加熱室V22を複数設けたことで各室における必要処理時間が短縮され、スループットを向上させることができる。さらにそれら各加熱室で加熱温度を異ならせる等の異なった加熱処理を基板Bに施すようにしてもよい。こうすることによって、より木目の細かい焼成処理が実現する。
(2)上記の実施形態においては、処理空間Vから導出された使用済みの気体は、工場内に配設された汎用の気体排出本管42へ導出されるようになされているが、本発明は、処理空間Vで使用済みの気体をこのような気体排出本管42に導出することに限定されるものではなく、各気体排出支管41から専用の気体清浄化装置に送り込み、この専用の気体清浄化装置でそれぞれ別個に処理を施すようにしてもよい。
(3)上記の実施形態においては、第1〜第3アクチュエータとして、開閉シリンダ装置52、昇降シリンダ装置62および押圧シリンダ装置63が採用されているが、本発明は、アクチュエータとしてシリンダ装置を採用することに限定されるものではなく、駆動モータやソレノイド装置等のシリンダ装置以外の駆動源を採用することができる。
(4)上記の実施形態においては、搬送路11を形成する部材として搬送ローラ12が採用されているが、こうする代わりに、搬送路11を形成するものとして搬送ベルトを採用してもよい。
(5)上記の実施形態においては、キュア室V21内の雰囲気温度は紫外線ランプ35からの紫外線の照射により150℃〜200℃に加熱されるとともに、加熱室V22内の雰囲気温度は、ヒーター36からの熱線の放射により250℃〜350℃に加熱されているが、これらキュア室V21および加熱室V22内の雰囲気温度を紫外線ランプ35およびヒーター36のみに頼るのではなく、キュア室V21および加熱室V22内に導入される気体供給源31からの低酸素気体そのものを予め外部の気体加熱装置により加熱し、その低酸素気体を気体加熱装置と循環させるようにしてもよい。こうすることによって、キュア室V21および加熱室V22内の温度制御をより高精度で行うことができる。
(6)上記の第2実施形態においては、基板焼成装置10′の天板25に蓋構造80が設けられているが、蓋構造80は、第2実施形態の基板焼成装置10′にのみ設けられることに限定されるものではなく、第1実施形態の基板焼成装置10に適用してもよい。
(7)上記の第2実施形態においては、各単位装置101,102,103,104,105間の接続位置における入口231または出口241および下流側置換装置105の出口241に口角筒体29を設けているが、口角筒体29は、第2実施形態の基板焼成装置10′にのみ設けられることに限定されるものではなく、第1実施形態の基板焼成装置10に適用してもよい。
また、上流側置換装置101の入口221と、下流側置換装置105の出口241にそれぞれ上流側および下流側へ向かって口角筒体29を設けてもよい。この場合、シャッター装置50のシャッター板51を口角筒体29の突設される端面に沿って配設するようにすればよい。
(8)基板Bを基板焼成装置内に挿入したり、基板焼成装置内で移動させたりするに際して行われる差圧制御については、第2実施形態の基板焼成装置10′に基づいて説明したが、本発明は、差圧制御を第2実施形態の基板焼成装置10′に適用することに限定されるものではなく、第1実施形態の基板焼成装置10に適用してもよい。