JP2006142431A - クランクシャフトのフィレットローリング加工装置 - Google Patents

クランクシャフトのフィレットローリング加工装置 Download PDF

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Abstract

【課題】クランクピン部でのフィレット溝部に付与すべき加圧力をその円周方向において積極的に可変制御し、トップ部側で小さく、ボトム部側で大きくすることができる加工装置を提供する。
【解決手段】加圧シリンダ14の加圧力をもってクランクピン部P1を加圧挟持する上下のアーム11,12の先端に、リンクアーム33,34を介してウエイト35を取り付ける。クランクピン部P1のトップ部側がフィレットローラ25a,25bに向かって回転するときには、ウエイト35の慣性のためにトップ部に加わる加圧力が減少する。逆にクランクピン部P1のボトム部側がフィレットローラ25a,25bに向かって回転するときには、ウエイト35の慣性のためにボトム部に加わる加圧力が増加する。
【選択図】 図6

Description

本発明は、クランクシャフトの疲労強度の向上を目的としたフィレットローリング加工(フィレットロール加工またはフィレットロール掛け加工)装置に関し、特に内燃機関用クランクシャフトのクランクピン部のフィレット溝部(内隅アール部)に圧縮残留応力を付与するべくフィレットローリング加工を施すにあたり、フィレット溝部に付与すべき加圧力をそのフィレット溝部の円周方向で変化させることができるように考慮されたフィレットローリング加工装置に関するものである。
クランクシャフトのフィレットローリング加工装置においては、周知のようにジャーナル部やクランクピン部のフィレット溝部に超硬合金やハイス材からなるフィレットローラを数kN以上の加圧力にて押し付けながら回転させることによりロール加工(塑性加工)を施し、もって圧縮残留応力を与えることで該当する部位の疲労強度を向上させることを基本としている。
この場合、付与すべき加圧力とクランクシャフトの疲労強度との間には大きな相関があり、高加圧力を与えるほど疲労強度に優れたクランクシャフトを製作することが可能となる。
そして、例えば特許文献1に代表されるような従来の一般的なフィレットローリング加工装置では、加工対象となるフィレット溝部の全周にわたり同じ加圧力を与えることを基本としているものであるが、例えば図11に示すように、クランクシャフトSが実際にエンジンに組み込まれた状態では、クランクピン部Pのボトム部側に大きな荷重が加わる一方で、ボトム部側と反対側のトップ部側ではボトム部側ほど大きな荷重が加わらないので、ボトム部側のフィレット溝部Fほど大きな加圧力で加工を施し、トップ部側のフィレット溝部Fについては相対的に小さい加圧力でロール加工を施しても製品機能の上では問題はない。
なお、クランクピン部Pにおけるボトム部側とは、同図に示すようにクランクピン部Pをその軸心と平行で且つそれを通る平面をもって紙面上で上下に二分したと仮定した場合に、カウンタウエイトCw側にあって且つそれらのカウンタウエイトCw,Cw間に挟まれた領域の頂部(図8の0°の位置)を言い、トップ部側とはボトム部側と正反対の位置(図8の180°の位置)を言う。
そこで、フィレット溝部Fに加えるべき加圧力をそのフィレット溝部Fの円周方向で積極的に変化させて、上記のようにボトム部側のフィレット溝部Fほど大きな加圧力でロール加工を施すようにすれば、ローラの長寿命化を期待できるようになるとともに、クランクシャフトSの形状精度の向上の上でも好ましいものとなる。
より具体的には、フィレット溝部Fに加えるべき加圧力(荷重)とローラ寿命との間には下記(1)式のような相関があり、フィレット溝部Fに加えるべき加圧力を常時高くしたままでロール加工を行うと、フィレットローラの寿命が極端に短くなる。
寿命L∝(1/動荷重)3‥‥(1)
つまり、荷重を2倍にすると、ローラ寿命は1/8になるので、必要な部位以外は荷重たる加圧力をなるべく小さくしてロール加工を行うようにすれば、フィレットローラの長寿命化が可能となって経済的なものとなる。
また、上記のようなフィレットローリング加工では、数kN以上の高い荷重のもとでの塑性加工故に、加工後のクランクシャフトに曲がりや全長の伸びが生じたりすることがあるが、特にクランクシャフトそのものの形状よりしてクランクピン部のトップ部では剛性が小さくために曲がりや伸びが生じやすく、逆にボトム部では相対的に剛性が高いために比較的大きな加圧力を与えても曲がりや伸びが生じにくい傾向にある。このような曲がり量や伸び量は、ロール加工時の加圧力にほぼ比例することになるので、フィレット溝全周を高い加圧力で加工することはクランクシャフトの形状精度を損なう一因となっている。
このようなことから、上記のようにフィレット溝部Fに加えるべき加圧力をフィレット溝部Fの円周方向で積極的に変化させるべく、フィレット溝部Fの回転位相に応じてフィレットローラの加圧力発生手段である油圧シリンダの圧力を積極的に可変制御するようにした技術が特許文献2で提案されている。
特開2003−25221号公報(図5) 特公昭60−17663号公報(図2)
しかしながら、特許文献2に記載のような技術では、フィレットローリング加工中において、例えばフィレット溝部の回転位相位置に応じて加圧力の変更指令を出力したとしても、油圧回路の特殊性である応答遅れのために指令側と実際の加圧力付与位置との間に位相ずれが発生しやすいばかりでなく、高加圧力と低加圧力との差を十分に大きく確保できないなどの制約がある。したがって、複雑な制御機器を必要とするために設備全体が複雑且つ高価なものとなるばかりでなく、加工品質の向上が望めず、なおも改善の余地を残している。
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、特にクランクシャフトのクランクピン部でのフィレット溝部に付与すべき加圧力をそのフィレット溝部の円周方向において積極的に且つ純機械的に、しかも正確に可変制御できるようにしたフィレットローリング加工装置を提供するものである。
本発明は、クランクシャフトのうちそれ自体の回転中心であるジャーナル部から所定量だけオフセットしているクランクピン部のフレット溝部にフィレットローリング加工を施す装置であることを前提としている。すなわち、開閉可能にピン結合した一対のアームの先端部にて上記クランクピン部を挟持するとともにそれら一対のアームの後端部間に加圧力を発生させて、上記ジャーナル部を回転中心とするクランクシャフトの回転運動に加圧挟持状態にある一対のアームを追従動作させながら、いずれか一方のアームの先端部に装着してあるフィレットローラを連れ回りさせて、上記クランクピン部のフレット溝部にローリング加工を施すようにした装置において、上記クランクピン部のトップ部側を加工する際にはそのトップ部側のフィレット溝部に加わる加圧力を相対的に小さくする一方で、クランクピン部のボトム部側を加工する際にはそのボトム部側のフィレット溝部に加わる加圧力を相対的に大きくする質量体を、上記一対のアームに跨るように付帯させたことを特徴とする。
より具体的には、上記一対のアームの先端部にそれぞれにリンクアームを回転可能に連結するとともに、それら一対のリンクアームの先端部同士を回転可能に連結し、リンクアームの先端部同士の連結部にウエイトを取り付けたことを特徴とする。または、上記一対のアームの後端部にそれぞれにリンクアームを回転可能に連結するとともに、それら一対のリンクアームの後端部同士を回転可能に連結し、リンクアームの後端部同士の連結部に質量体としてウエイトを取り付けたことを特徴とする。
この場合において、上記一対のアームが横向きであって、その一対のアームの開閉中心とクランクシャフトのジャーナル部の軸心とを結んだ線がほぼ水平となるように設定してあるものとする。
また、上記のように一対のアームの先端部側にリンクアームを介してウエイトを取り付けた場合には、加工対象となるクランクシャフトのローディング,アンローディングに備えて、上記一対のアームの先端部の前方領域からウエイトがリンクアームとともに退避可能となっていたり、あるいは、上記ウエイトとともに一対のリンクアームが退避する際にそのリンクアーム同士が折り畳まれるようになっていることが望ましく、さらには、上記一対のアームの先端部の前方領域からウエイトがリンクアームとともに上方に退避可能となっているのと併せて、それらを上方に退避させる退避駆動手段を備えていることが望ましい。
したがって、この発明では、例えば図6に示すように、一対のアームにて加圧挟持されているクランクピン部を、ジャーナル部を回転中心として例えば反時計回り方向(矢印Q方向)に回転させることでフィレットローリング加工を施すことを前提とした場合に、今仮に一対のアーム同士の開閉中心とジャーナル部の軸心とを結ぶ線上にジャーナル部の軸心と加工対象となるクランクピン部の軸心とを結ぶ線が重なっている状態をクランクピン部の基準位相位置とし、その位置に対して180度位相が異なる位置を逆位相位置とする。
そして、先に述べたようにクランクシャフトは反時計回り方向に回転する故に、基準位相位置から逆位相位置へと加工対象となるクランクピン部のトップ部側がジャーナル部の軸心の上方を通って移動する過程、すなわちトップ部側がフィレットローラに向かって移動する過程では、一対のアームによって前方に押し出されながらもその場に留まろうとするウエイトのイナーシャが一対のアームの先端部同士をいわゆる口開きさせる(一対のアームの先端部同士を互いに離間させる)方向に作用し、その結果としてトップ部側のフィレット溝部に対してフィレットローラが及ぼす加圧力を相対的に小さくする働きをすることになる。
この時には、クランクピン部のトップ部の加工中の中間位置にて一対のアームの水平方向の移動速度が大きくなり、上記トップ部での加圧力を最も小さくすることができることになる。
一方、逆位相位置から基準位相位置へと加工対象となるクランクピン部のトップ部側がジャーナル部の軸心下方を通って移動する過程、すなわちボトム部側がフィレットローラに向かって移動する過程では、一対のアームによって引き戻されながらもその場に留まろうとするウエイトのイナーシャが一対のアームの先端部同士を互いに接近させる方向に作用し、その結果としてボトム部のフィレット溝部に対してフィレットローラが及ぼす加圧力を相対的に大きくする働きをすることになる。
この時には、クランクピン部のボトム部の加工中の中間位置にて一対のアームの水平方向の移動速度が大きくなり、上記ボトム部での加圧力を最も大きくすることができることになる。
本発明によれば、クランクピン部のボトム部側ではそのフィレット溝部に及ぼす加圧力を積極的に大きくする一方、クランクピン部のトップ部側では逆にそのフィレット溝部に及ぼす加圧力を積極的に小さくして、クランクピン部での疲労強度向上のためにそのクランクピン部に付与される加圧力の最適化が図れることから、簡単な構造でありながらもロール加工品質の向上と併せてフレットローラの長寿命化を図ることができる効果がある。
図1〜5は本発明に係るクランクシャフト用のフィレットローリング加工装置のより具体的な実施の形態として例えば直列4気筒エンジンのクランクシャフトSのフィレットローリング加工を司る装置の基本構造を示している。
図1,2のほか図3に示すように、このフィレットローリング加工装置では、後述するフィレットローラ25a,25bを主体とするロールカセット1のほかレストローラ3を備えたワークレストカセット2を併用することで、各ジャーナル部Jの両端のフィレット溝部Fおよび同じく各クランクピン部P1,P2の両端のフィレット溝部Fにそれぞれ並行してフィレットローリング加工が施される。
ここで、クランクシャフトSは、周知のように5箇所のジャーナル部Jのほか、互いに同位相の二つのクランクピン部P1,P1と、これらに対して180度位相がずれたいわゆる逆位相の二つのクランクピン部P2,P2とを備えている。さらに、各クランクピン部P1,P2の逆位相側にはカウンタウエイトCwが付帯している。そして、クランクシャフトSは所定のチャック4およびセンタ5により両持ち支持された状態で、ジャーナル部Jを回転中心として回転駆動される。
図2ではクランクピン部P1での加工状態を示しており、同図に示すように、ベース6に固定された支持ブラケット7には加工部位であるクランクピン部P1ごとに独立した中間アーム8がヒンジピン9を介して揺動可能に支持されているとともに、中間アーム9の上端には、ヒンジピン10を介して互いに揺動可能もしくは開閉可能に連結された上下一対のアーム11,12のうち下側のアーム12の一部がヒンジピン13を介して揺動可能に支持されている。そして、これら上下一対のアーム11,12はその後端部間に架橋的に連結された加圧シリンダ(油圧シリンダ)14の伸縮作動に応じて開閉し、かつ加圧シリンダ14の加圧力をもってフィレットローリング加工時の加圧力が付与されるようになっている。
なお、図2では、クランクシャフトSの形状、特にジャーナル部Jやクランクピン部P1,P2の直径等を誇張,拡大して描いてある。また、同図から明らかなように上下一対のアーム11,12は横向きの配置であって、上下のアーム11,12同士を連結している開閉中心としてのヒンジピン10の中心とジャーナル部Jの軸心とを結んだ線が水平もしくはほぼ水平となるように設定してある。
上側のアーム11の先端部には後述するフィレットローラ25a,25bを内蔵するロールカセット1が着脱可能に装着されている一方、下側のアーム12の先端部には前後一対の回転可能なレストローラ3を備えたワークレストカセット2が同様に着脱可能に装着されていて、図3にも示すようにフィレットローラ25a,25bがクランクピン部P1の両端のフィレット溝部Fに、レストローラ3がクランクピン部P1の一般面にそれぞれ圧接した状態でフィレットローリング加工が施されることになる。
図4,5は上記ロールカセット1の詳細を示しており、ロールカセット1は図示しないクランプブロックと取付ボルトとをもってアーム11の先端に着脱可能に且つ堅固に位置決め固定される。
図4,5に示すように、略偏平矩形状のケース本体17とビス18にて固定された円板状のカバープレート19とからなるケース20内には(ただし、図4では、内部構造を見えるようにするためにカバープレート19を一部破断した状態を描いている)、軸21aとニードルベアリング21bとを介して短円筒状もしくは偏平円筒状の大径のバックアップローラ22が回転可能に収容配置されていて、そのバックアップローラ22の外周面の両端コーナー部には後述するフィレットローラ25a,25bを相対回転可能に受容してこれを支えつつ案内する円弧状のガイド溝24が個別に形成されている。
そして、バックアップローラ22の真下には前後一対の駒状のリテーナ23a,23bに保持された小径のフィレットローラ25a,25b、すなわちバックアップローラ22に比べて極小径の略算盤玉状の左右一対のフィレットローラ25a,25bが断面略ハの字状の形態となるようにそれぞれに傾斜して配置されており、リテーナ23a,23bはケース本体17に対し取付ボルト36にて固定されるフロントケージ26およびリアケージ27をもって位置決め支持されている。
すなわち、前後一対のリテーナ23a,23bは、先に述べたようにケース20の下面に装着されるフロントケージ26およびリアケージ27によって支持されていて、フロントケージ26およびリアケージ27は取付ボルト36と長穴30のほかアジャストボルト31,32をもってケース本体17に位置調整可能に固定されている。
先に述べたバックアップローラ22は、ケース20に回転可能に軸受支持された状態で左右一対のフィレットローラ25a,25bに当接しつつ転動して、これらのフィレットローラ25a,25bを案内しながら加工反力を負担するものであることから、図5に示すように、その外周面の全周には一対のフィレットローラ23a,23bを受容するための断面略円弧状の二条のガイド溝24が形成されている。
なお、このようなロールカセット1の構造は、他のクランクピン部P2およびジャーナル部Jの加工を司るロールカセットについても基本的に同様である。また、図2に示したレストローラ3もロールカセット1と同様にワークレストカセット2としてカセットされた上で下側のアーム12の先端部に着脱可能に装着されている。
このようなフィレットローリング加工装置では、図2のほか図4,5に示すように、ワークレストカセット2側の一対のレストローラ3をクランクピン部P1のうちフィレット溝部F以外の部分に押し付けるとともに、ロールカセット1側の一対のフィレットローラ25a,25bをクランクピン部Pにおける両端のフィレット溝部Fに押し付け、加圧シリンダの14の加圧力に基づきワークレストカセット2とロールカセット1とでクランクピン部P1を挟み込んだ状態でそのクランクピン部P1ひいてはクランクシャフトS全体を回転駆動させる。このクランクシャフトSの回転に伴いレストローラ3が同期回転するとともに、左右一対のフィレットローラ25a,25bがバックアップローラ22にてバックアップされながらそのバックアップローラ22とともに連れ回りするように同期回転して、各フィレット溝部Fにフィレットローリング加工を施すことになる。すなわち、各フィレットローラ25a,25bはフィレット溝部Fに冷間圧延加工を施して内部圧縮応力を付加することにより、フィレット溝部Fの疲労限界応力の向上に寄与することになる。
以上がクランクピン部P1にフィレットローリング加工を施す装置の基本的な構造および機能であるが、本実施の形態では、図6に示すように上下のアーム11,12の前方側に一対のリンクアーム33,34を介して質量体として短円筒状のウエイト35を付帯させてある。なお、図6は図2と同じ状態を描いているが、錯綜化を避けるために図2に比べてクランクシャフトSの形状を簡略化してある。すなわち、図2では図6における一対のリンクアーム33,34とウエイト35とを図示省略してあるものと理解することができる。
より詳しくは、上下のアーム11,12の先端にブラケット37およびピン38を介して長さの等しいリンクアーム33,34をそれぞれに回転可能に連結する一方、それらのリンクアーム33,34の先端部同士もピン39を介して相互に連結し、その連結部に質量体としての短円筒状のウエイト35を支持させてある。つまり、各リンクアーム33,34と上下のアーム11,12とを連結しているピン38,38同士のなすスパンを1節としてこれに一対のリンクアーム33,34を加えて固定連鎖となる3節リンク機構を形成し、その3節リンク機構の頂部にウエイト35を装着してある。この場合、先に述べたように上下のアーム11,12同士を連結しているヒンジピン10の中心とジャーナル部Jの軸心とを結んだ線が水平であれば、その線の延長線上にリンクアーム33,34同士を連結しているピン39が位置していることになる。
そして、各リンクアーム33,34は上下のアーム11,12に対してピン38による脱着が可能となっている一方、図7に示すようにアーム11,12の上方側には退避駆動手段として巻き上げ装置40が配置されていて、その巻き上げ装置40から引き出されたワイヤ41がリンクアーム33,34同士の結合部のピン39に連結されている。つまり、同図から明らかなように、例えば下側のアーム12に対するリンクアーム34の連結状態を解除した上で巻き上げ装置40にて巻き上げることにより、ウエイト35とともに一対のリンクアーム33,34を折り畳みながら上下のアーム11,12の前方領域からその上方空間へと退避させることができるようになっている。
したがって、図2,6に示すように上下のアーム11,12にウエイト35が付帯しているフィレットローリング加工装置において、矢印Qで示すようにジャーナル部Jを回転中心としてクランクシャフトSを反時計回り方向に連続回転させながら加工を行うものとし、同時に一対のアーム11,12同士の開閉中心であるヒンジピン10の軸心とジャーナル部Jの軸心とを結ぶ線上に、ジャーナル部Jの軸心と加工対象となるクランクピン部P1の軸心とを結ぶ線が重なっている状態を仮にクランクピン部P1の基準位相位置とし、その位置に対して180度位相が異なる位置を逆位相位置とする。この状態では、図2,6に関するかぎりクランクピン部P1のトップ部がヒンジピン10側と正対していて、同様にクランクピン部P1のボトム部がジャーナル部Jの軸心側と正対していることになる。
図2,6に示すように、クランクシャフトSが矢印Q方向に回転して、加工対象となるクランクピン部P1が基準位相位置から逆位相位置へとジャーナル部Jの軸心の上方側を通って移動する過程、すなわちクランクピン部P1のトップ部側がフィレットローラ25a,25bに向かって移動する過程では、そのフィレットローラ25a,25bによってクランクピン部P1のうちトップ部のフィレット溝部Fに対するフィレットローリング加工が施されることになる。この場合には、一対のリンクアーム33,34によって支えられているウエイト35の慣性(イナーシャ)のために、加圧シリンダ14の加圧力に対向するように上下のアーム11,12同士を離間させるような力、すなわちピン38,38同士のなすスパンを拡げるような力が働き、その結果としてフィレットローラ25a,25bが加工部位に対して及ぼす加圧力が相対的に小さくなる。ただし、ここでは上下のアーム11,12そのものの慣性は問題としていない。
より詳しくは、クランクシャフトSの回転に同期して揺動運動を繰り返している上下のアーム11,12がクランクピン部P1とともに基準位相位置に達すると、その位置にて上下のアーム11,12の水平方向(横方向)での動きの向きが反転し、アーム11,12の水平方向での動きの向きが反転するにもかかわらずウエイト35はなおも従前の位置に留まろうとするために、クランクピン部P1が基準位相位置から逆位相位置へとジャーナル部Jの軸心の上方側を通って移動する過程では、ウエイト35の慣性のために上下のアーム11,12の先端部同士を相互に離間させるような力が働き、その結果としてフィレットローラ25a,25bが加工部位に対して及ぼす加圧力、つまりはクランクピン部P1のトップ部側のフィレット溝Fに加わる加圧力が低減される。
その上、クランクピン部P1が基準位相位置から逆位相位置へ移動するまでの中間位置にて上下のアーム11,12の水平方向での移動速度が最も大きくなり、それによってクランクピン部P1のうちトップ部におけるフィレット溝部Fでの加圧力を最も小さいものとすることができる。
その一方、図2,6に示すように、クランクシャフトSの矢印Q方向の回転に伴い、加工対象となるクランクピン部P1が逆位相位置から基準位相位置へとジャーナル部Jの軸心の下方側を通って移動する過程、すなわちクランクピン部P1のボトム部側がフィレットローラ25a,25bに向かって移動する過程では、そのフィレットローラ25a,25bによってクランクピン部P1のうちボトム部側のフィレット溝部Fに対するフィレットローリング加工が施されることになる。この場合には、一対のリンクアーム33,34によって支えられているウエイト35の慣性(イナーシャ)のために、加圧シリンダ14の加圧力に上乗せするようなかたちで上下のアーム11,12同士を接近させるような力、すなわちピン38,38同士のなすスパンを縮小するような力が働き、その結果としてフィレットローラ25a,25bが加工部位に対して及ぼす加圧力が相対的に大きくなる。
より詳しくは、クランクシャフトSの回転に同期して揺動運動を繰り返している上下のアーム11,12がクランクピン部P1とともに逆位相位置に達すると、その位置にて上下のアーム11,12の水平方向(横方向)での動きの向きが反転し、アーム11,12の水平方向での動きの向きが反転するにもかかわらずウエイト35はなおも従前の位置に留まろうとするために、クランクピン部P1が逆位相位置から基準位相位置へとジャーナル部Jの軸心の下方側を通って移動する過程、すなわちクランクピン部P1のボトム部側がフィレットローラ25a,25bに向かって移動する過程では、ウエイト35の慣性のために上下のアーム11,12の先端部同士を相互に接近させるような力が働き、その結果としてフィレットローラ25a,25bが加工部位に対して及ぼす加圧力、つまりはクランクピン部P1のボトム部側のフィレット溝部Fに加わる加圧力が増加することになる。
その上、クランクピン部P1が逆位相位置から基準位相位置へ移動するまでの中間位置にて上下のアーム11,12の水平方向での移動速度が最も大きくなり、それによってクランクピン部P1のうちボトム部におけるフィレット溝部F側での加圧力を最も大きいものとすることができる。
ここで、上下のアーム11,12にウエイト35を付加せずに、従来のように加圧シリンダ14による加圧力が常時一定となるように制御した場合、本来であれば位相位置にかかわらず加圧力が一定となるべきところ、実際には上下のアーム11,12自体のイナーシャ(慣性)の影響でクランクピン部P1に加わる加圧力は図8のような特性となる。そして、図8の特性における加圧力の変化量M(最大加圧力と最小加圧力との差)は、上下のアームの質量をm、加速度をαとした場合に、M=m×αとなる。ただし、加速度αは、α=Sω2sinθ(θ=0°がクランクピン部P1でのボトム部加工状態)の関係にある。
このことは、図8から明らかなように、クランクピン部P1が基準位相位置から逆位相位置に向かってジャーナル部Jの軸心上側を通って移動する場合には、靜的な状態(クランクシャフトSを回転せずに停止した状態)で設定した加圧力よりも上下のアーム11,12の質量mに加速度αを乗じた分だけ加圧力が増大し、逆にクランクピン部P1が逆位相位置から基準位相位置に向かってジャーナル部Jの軸心の下側を通って移動する場合には、靜的な状態で設定した加圧力よりも上下のアーム11,12の質量mに加速度αを乗じた分だけ加圧力が目減りすることにほかならない。
そして、所期の目的からすれば、クランクピン部P1のボトム部側で加圧力が増大し、トップ部側で目減りすることが理想であるが、図8ではボトム部において加圧力がマイナスからプラスに、トップ部においてプラスからマイナスにそれぞれ転じるかたちとなり、加圧力特性としては好ましくない。
これに対して、先に述べたように上下のアーム11,12にウエイト35を付加した場合の加圧力特性は図9のようになり、本実施の形態での最終的な加圧力特性は図8と図9とを合成したものとなって、結果的に図10のようになる。同図から明らかなように、図9と図10とを合成した結果として、必ずしもクランクピン部P1のボトム部で最高加圧力とならないだけでなく同様にトップ部でも最低加圧力とならず、最大加圧力部位と最小加圧力部位とがわずかながらそれらのボトム部およびトップ部から位相のずれを生じている。
しかしながら、図8と図9とを比較すると明らかなように、上記実施の形態のウエイト35の質量を大きくすればするほど最大加圧力と最小加圧力との差を大きくすることができ、また上記位相のずれも小さくなることから、クランクピン部P1にフィレットローリング加工を施す際に、そのボトム部での加圧力を相対的に大きく、トップ部での加圧力を相対的に小さくするという所期の目的は十分に達成することができる。
また、図6のように上下のアーム11,12の前方側にリンクアーム33,34を介してウエイト35が付帯していると、加工前のクランシャフトSのアーム11,12側へのローディングおよび加工済みのクランシャフトSのアンローディングに際してそれらのウエイト35等が障害となる可能性がある。
そこで、図7に示すように、クランシャフトSのローディングおよびアンローディングに際しては、下側のアーム12に対する一方のリンクアーム34の連結を解除し、巻き上げ装置40にてウエイト35を上方に引き上げながら各リンクアーム33,34も折り畳んで、それらのウエイト35および各リンクアーム33,34を上下のアーム11,12の前方領域から上方空間へと退避させる。こうすることにより、上下のアーム11,12にウエイト35等が付帯していながらも、既存のローダおよびアンローダ等を使用してクランシャフトSのローディングおよびアンローディングをスムーズに行うことができる。
ここで、下側のアーム12に対するリンクアーム34の脱着を容易に行うために、ピン38によるリンクアーム34の脱着はワンタッチで行える構造のものとし、同時に一旦連結したならば確実にロックできるようになっている構造のものを採用するものとする。
また、上記の実施の形態では、上下のアーム11,12に装着されるフィレットローラ25a,25bおよびレストローラ3としてカセット化されたものが採用されているが、フィレットローリング加工という所期の目的を達成することができれば必ずしも図示の構造およびカセット化されたものに限定されるものではない。
図12は本発明に係るフィレットローリング加工装置の第2の実施の形態を示し、先に説明した図6の第1の実施の形態と共通する部分には同一符号を付してある。
この第2の実施の形態では、上下のアーム11,12の後端にブラケット37およびピン38を介して長さの等しいリンクアーム53,54をそれぞれに回転可能に連結する一方、それらのリンクアーム53,54の後端部同士もピン39を介して相互に連結し、その連結部に質量体としての短円筒状のウエイト55を支持させてある。つまり、先の第1の実施の形態と同様に、各リンクアーム53,54と上下のアーム11,12とを連結しているピン38,38同士のなすスパンを1節としてこれに一対のリンクアーム53,54を加えて固定連鎖となる3節リンク機構を形成し、その3節リンク機構の頂部にウエイト55を装着してある。この場合、先に述べたように上下のアーム11,12同士を連結しているヒンジピン10の中心とジャーナル部Jの軸心とを結んだ線が水平であれば、その線の延長線上にリンクアーム53,54同士を連結しているピン39が位置していることになる。
この第2の実施の形態においても第1の実施の形態と全く同様の作用効果が得られるほか、第1の実施の形態と異なり、加工対象となるクランクシャフトSのローディング,アンローディングに際してウエイト55等が障害とならないので、図6,7では必須とされた巻き上げ装置40等を廃止して設備の簡素化を図ることができる利点がある。
フィレットローリング加工装置全体の概略構造を示す説明図。 図1におけるクランクピン部P1のフィレットローリング加工を司る上下のアームの側面説明図。 加工対象となるフィレット溝部とフィレットローラとの相互関係を示す要部拡大断面図。 図2におけるロールカセットの拡大説明図。 図4のA−A線に沿う断面説明図。 本発明に係るフィレットローリング加工装置の側面説明図。 図6に示すフィレットローリング加工装置の作動説明図。 加圧力一定制御を前提とした場合のクランクピン部のフィレット溝部における回転位相と加圧力との関係を示す特性曲線図。 図6の構成のもとで理想とされるフィレット溝部の回転位相と加圧力との関係を示す特性曲線図。 図8と図9とを合成した場合の特性曲線図。 クランクシャフトにおけるクランクピン部の要部拡大図。 本発明に係るフィレットローリング加工装置の第2の実施の形態を示す側面説明図。
符号の説明
1…ロールカセット
8…中間アーム
10…ヒンジピン(開閉中心)
11,12…アーム
13…ヒンジピン
14…加圧シリンダ
25a,25b…フィレットローラ
38,39…ピン
40…巻き上げ装置(退避駆動手段)
53,54…リンクアーム
55…ウエイト(質量体)
F…フィレット溝部
J…ジャーナル部
S…クランクシャフト
P1,P2…クランクピン部

Claims (12)

  1. クランクシャフトのうちそれ自体の回転中心であるジャーナル部から所定量だけオフセットしているクランクピン部のフレット溝部にフィレットローリング加工を施す装置にして、
    開閉可能にピン結合した一対のアームの先端部にて上記クランクピン部を挟持するとともにそれら一対のアームの後端部間に加圧力を発生させて、
    上記ジャーナル部を回転中心とするクランクシャフトの回転運動に加圧挟持状態にある一対のアームを追従動作させながら、いずれか一方のアームの先端部に装着してあるフィレットローラを連れ回りさせて、上記クランクピン部のフレット溝部にローリング加工を施すようにした装置であって、
    上記クランクピン部のトップ部側を加工する際にはそのトップ部側のフィレット溝部に加わる加圧力を相対的に小さくする一方で、クランクピン部のボトム部側を加工する際にはそのボトム部側のフィレット溝部に加わる加圧力を相対的に大きくする質量体を、上記一対のアームに跨るように付帯させたことを特徴とするクランクシャフトのフィレットローリング加工装置。
  2. 上記一対のアームの先端部にそれぞれにリンクアームを回転可能に連結するとともに、それら一対のリンクアームの先端部同士を回転可能に連結し、
    リンクアームの先端部同士の連結部に質量体としてウエイトを取り付けたことを特徴とする請求項1に記載のクランクシャフトのフィレットローリング加工装置。
  3. 上記一対のアームが横向きであって、その一対のアームの開閉中心とクランクシャフトのジャーナル部の軸心とを結んだ線がほぼ水平となるように設定してあることを特徴とする請求項2に記載のクランクシャフトのフィレットローリング加工装置。
  4. 上記一対のアームの先端部の前方領域からウエイトがリンクアームとともに退避可能となっていることを特徴とする請求項3に記載のクランクシャフトのフィレットローリング加工装置。
  5. 上記ウエイトとともに一対のリンクアームが退避する際にそのリンクアーム同士が折り畳まれるようになっていることを特徴とする請求項4に記載のクランクシャフトのフィレットローリング加工装置。
  6. 上記一対のアームの先端部の前方領域からウエイトがリンクアームとともに上方に退避可能となっているとともに、それらを上方に退避させる退避駆動手段を備えていることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のクランクシャフトのフィレットローリング加工装置。
  7. 上記一対のアームの後端部間に直動型の加圧シリンダを架橋的に配置して、その加圧シリンダが発生する加圧力をもって一対のアームの先端部にてクランクピン部を加圧挟持するものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のクランクシャフトのフィレットローリング加工装置。
  8. 加圧挟持状態にある一対のアームがクランクシャフトの回転運動に追従できるように揺動可能に支持されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のクランクシャフトのフィレットローリング加工装置。
  9. 上記一対のアームの後端部にそれぞれにリンクアームを回転可能に連結するとともに、それら一対のリンクアームの後端部同士を回転可能に連結し、
    リンクアームの後端部同士の連結部に質量体としてウエイトを取り付けたことを特徴とする請求項1に記載のクランクシャフトのフィレットローリング加工装置。
  10. 上記一対のアームが横向きであって、その一対のアームの開閉中心とクランクシャフトのジャーナル部の軸心とを結んだ線がほぼ水平となるように設定してあることを特徴とする請求項9に記載のクランクシャフトのフィレットローリング加工装置。
  11. 上記一対のアームの後端部間に直動型の加圧シリンダを架橋的に配置して、その加圧シリンダが発生する加圧力をもって一対のアームの先端部にてクランクピン部を加圧挟持するものであることを特徴とする請求項9または10に記載のクランクシャフトのフィレットローリング加工装置。
  12. 加圧挟持状態にある一対のアームがクランクシャフトの回転運動に追従できるように揺動可能に支持されていることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載のクランクシャフトのフィレットローリング加工装置。
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