JP2006131592A - 有機化合物多孔体複合材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】 有機合成反応等に対する優れた触媒作用とガス成分等に対する優れた吸着作用を有しており、しかも耐久性に優れていて安定的に性能を持続させることが可能な有機化合物多孔体複合材料を提供すること。
【解決手段】 中心細孔直径が1〜30nmである複数の細孔を有するメソポーラス有機シリカの前記細孔の内壁面に、ポルフィリン、ポルフィリン誘導体、ポルフィリン骨格異性体、フタロシアニン、フタロシアニン誘導体、鉄−硫黄クラスター及び鉄−モリブデンクラスターからなる群から選択される少なくとも一つがアミノ酸を介して化学的に結合していることを特徴とする有機化合物多孔体複合材料。
【選択図】 なし
【解決手段】 中心細孔直径が1〜30nmである複数の細孔を有するメソポーラス有機シリカの前記細孔の内壁面に、ポルフィリン、ポルフィリン誘導体、ポルフィリン骨格異性体、フタロシアニン、フタロシアニン誘導体、鉄−硫黄クラスター及び鉄−モリブデンクラスターからなる群から選択される少なくとも一つがアミノ酸を介して化学的に結合していることを特徴とする有機化合物多孔体複合材料。
【選択図】 なし
Description
本発明は、メソポーラス有機シリカと有機化合物との複合材料に関する。
近年、様々な物質を吸着、貯蔵等するための材料として、孔径1〜30nm程度のメソサイズの細孔(メソ孔)が非常に規則的に配列したシリカ系メソ多孔体が注目されており、このようなシリカ系メソ多孔体に種々の有機化合物を複合化せしめて機能を付与する研究が積極的に行われてきた。
例えば、特開2004−51991号公報(特許文献1)には、シリカ系メソ多孔体の細孔内部にマグネシウムポルフィリンを備えるマグネシウムポルフィリン複合体が開示されている。また、特開2000−256251号公報(特許文献2)には、無機ホスト化合物に、希土類イオン及び希土類金属錯体からなる群より選択される少なくとも1種を担持した平均粒子径がナノサイズの複合体が開示されている。更に、特開2003−246615号公報(特許文献3)には、ナノメートルサイズの直径の細孔を有する多孔性シリカの内部にアミノ酸関連残基を含有する界面活性物質が含有されている複合構造体が開示されている。
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載されているような従来のシリカ系メソ多孔体に有機化合物を複合化せしめた複合材料においては、細孔内で発現することが期待される触媒作用や吸着作用が未だ十分なものではなく、また、使用中に有機化合物が溶出して耐久性に欠けるという問題があった。
特開2004−51991号公報
特開2000−256251号公報
特開2003−246615号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、有機合成反応等に対する優れた触媒作用とガス成分等に対する優れた吸着作用を有しており、しかも耐久性に優れていて安定的に性能を持続させることが可能な有機化合物多孔体複合材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、担体として有機基とシリカの複合骨格を有するメソポーラス有機シリカを用い、その細孔の内壁面にアミノ酸を介してポルフィリン等を化学的に結合せしめるか、或いは、その細孔の内壁面にシッフ塩基配位子を形成せしめて金属錯体とすることにより、有機合成反応等に対する優れた触媒作用とガス成分等に対する優れた吸着作用が発現され、しかも耐久性が十分に高くなることによって前記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第一の有機化合物多孔体複合材料は、中心細孔直径が1〜30nmである複数の細孔を有するメソポーラス有機シリカの前記細孔の内壁面にアミノ酸が化学的に結合していることを特徴とするものである。
本発明の第一の有機化合物多孔体複合材料においては、ポルフィリン、ポルフィリン誘導体、ポルフィリン骨格異性体、フタロシアニン、フタロシアニン誘導体、鉄−硫黄クラスター及び鉄−モリブデンクラスターからなる群から選択される少なくとも一つが前記アミノ酸を介して前記細孔の内壁面に化学的に結合していることが好ましい。
また、本発明の第一の有機化合物多孔体複合材料においては、前記メソポーラス有機シリカが、炭素原子を1以上有する2価以上の有機基と、前記有機基中の同一若しくは異なる炭素原子に結合した2以上のケイ素原子と、前記ケイ素原子に結合した1以上の酸素原子とからなる骨格を有するものであり、前記メソポーラス有機シリカの細孔の内壁面に存在する前記有機基に置換基として導入されたアミノ基を介して前記アミノ酸が前記細孔の内壁面に化学的に結合していることがより好ましい。
本発明の第二の有機化合物多孔体複合材料は、中心細孔直径が1〜30nmである複数の細孔を有するメソポーラス有機シリカの前記細孔の内壁面にシッフ塩基配位子が形成されていることを特徴とするとするものである。
本発明の第二の有機化合物多孔体複合材料においては、前記シッフ塩基配位子が金属錯体を形成していることが好ましい。
また、本発明の第二の有機化合物多孔体複合材料においては、前記メソポーラス有機シリカが、炭素原子を1以上有する2価以上の有機基と、前記有機基中の同一若しくは異なる炭素原子に結合した2以上のケイ素原子と、前記ケイ素原子に結合した1以上の酸素原子とからなる骨格を有するものであり、前記メソポーラス有機シリカの細孔の内壁面に存在する前記有機基に置換基として導入されたアミノ基を介して前記シッフ塩基配位子が前記細孔の内壁面に形成されていることがより好ましい。
なお、本発明の有機化合物多孔体複合材料において有機合成反応等に対する優れた触媒作用とガス成分等に対する優れた吸着作用が発現され、しかも耐久性が十分に高くなる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明において用いたメソポーラス有機シリカは有機基とシリカの複合骨格を有するため、細孔内には疎水性と親水性の表面が混在した特異的な環境が形成されており、その特異的な環境が細孔内の有機化合物(ポルフィリン、金属錯体等)の機能と相まって優れた触媒作用及び吸着作用が発現されるものと本発明者らは推察する。さらに、用いたメソポーラス有機シリカが細孔壁内に分子オーダーの規則構造を有する場合は、細孔の内壁面に結合した有機化合物が規則的に配列し、上記の触媒作用及び吸着作用が更に向上することとなる。また、本発明の有機化合物多孔体複合材料においては有機化合物が細孔の内壁面に共有結合により化学的に安定して結合しているため、長時間使用しても有機化合物が溶出することなく安定的に性能を持続させることができるものと本発明者らは推察する。
本発明によれば、有機合成反応等に対する優れた触媒作用とガス成分等に対する優れた吸着作用を有しており、しかも耐久性に優れていて安定的に性能を持続させることが可能な有機化合物多孔体複合材料を提供することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
先ず、本発明の第一及び第二の有機化合物多孔体複合材料において用いるメソポーラス有機シリカについて説明する。すなわち、本発明において用いられるメソポーラス有機シリカは、有機基とシリカの複合骨格を有し、メソポーラスシリカを構成するケイ素原子の少なくとも一部に、有機基が、炭素−ケイ素結合を形成することによって結合しているものである。このような有機基としては、アルカン、アルケン、アルキン、ベンゼン、シクロアルカン等の炭化水素から1以上の水素原子が脱離して生じる炭化水素基や、アミノ基、アミド基、ニトロ基、イミノ基、メルカプト基、スルホン基、カルボキシル基、エーテル基、アシル基、ビニル基等が挙げられる。なお、本発明にかかるメソポーラス有機シリカは、上記有機基を1種のみ含むものであっても、2種以上含むものであってもよい。
本発明にかかるメソポーラス有機シリカの具体的な構成は特に制限されないが、炭素原子を1以上有する2価以上の有機基と、前記有機基中の同一若しくは異なる炭素原子に結合した2以上のケイ素原子と、前記ケイ素原子に結合した1以上の酸素原子とからなる骨格を有するものが好ましく、中でも、その骨格が下記一般式(1)で表される構成単位の少なくとも1種からなるものであることが特に好ましい。
ここで、上記一般式(1)中、R1は炭素原子を1以上有する2価以上の有機基を示し、このような有機基としては、適度な架橋度を有する結晶性の高いメソポーラス有機シリカが得られる傾向にあるという観点から、メチレン基(−CH2−)、エチレン基(−CH2CH2−)、トリメチレン基(−CH2CH2CH2−)、テトラメチレン基(−CH2CH2CH2CH2−)、1,2−ブチレン基(−CH(C2H5)CH−)、1,3−ブチレン基(−CH(CH3)CH2CH2−)、フェニレン基(−C6H4−)、ビフェニレン基(−C6H4−C6H4−)、ジエチルフェニレン基(−C2H4−C6H4−C2H4−)、ビニレン基(−CH=CH−)、プロペニレン基(−CH2−CH=CH2−)、ブテニレン基(−CH2−CH=CH−CH2−)、アミド基(−CO−NH−)、ジメチルアミノ基(−CH2−NH−CH2−)、トリメチルアミン基(−CH2−N(CH3)−CH2−)等が挙げられる。これらの中でも、より結晶性の高いメソポーラス有機シリカ粒子が得られる傾向にあるという観点からメチレン基、エチレン基、フェニレン基、ビフェニレン基が好ましく、中でも、フェニレン基を用いると細孔壁内でフェニレン基が規則的に配列した特異な結晶状の周期構造が形成される傾向にある。
このような前記一般式(1)中のR1は置換基を有していてもよく、かかる置換基としてはアミノ基、アミド基、ニトロ基、スルホン基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基等が挙げられるが、中でも、種々の官能基への変換や化学修飾が可能となるという観点からアミノ基が特に好ましい。そして、本発明にかかるメソポーラス有機シリカにおいては、少なくともその細孔の内壁面に置換基としてアミノ基が導入されていることが好ましい。
また、上記一般式(1)中のR2は、水素、水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基(好ましくは、メチル基、エチル基等の炭素数1〜10の低級アルキル基)、置換基を有していてもよいアルケニル基(好ましくは、ビニル基等の炭素数1〜10の低級アルケニル基)、置換基を有していてもよいアリール基(好ましくは、フェニル基、ビフェニル基等)、置換基を有していてもよいアルコキシ基(好ましくは、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜10の低級アルコキシ基)、置換基を有していてもよいアシルオキシ基(好ましくは、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等の炭素数1〜10の低級アルコキシ基)、及び、下記一般式(2):
で表される基からなる群から選択される少なくとも一つの基を示す。なお、上記一般式(2)中におけるR3は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよいアシルオキシ基を示す。また、上記一般式(2)中におけるpは0〜3の整数を示し、R3が複数存在する場合はR3は同一でも異なっていてもよい。
さらに、上記一般式(1)中のnは1〜3の整数、mは2以上の整数をそれぞれ示す。ただし、ケイ素原子が結合するR1中の炭素は同一でも異なっていてもよく、構成単位中にR2が複数存在する場合はR2は同一でも異なっていてもよい。また、前記一般式(1)(前記一般式(2)を含む)における「−O1/2−」とは、これらが2つ結合することにより「−O−」となる基を表す。
また、このような前記一般式(1)中のR2(前記一般式(2)中におけるR3を含む)が置換基を有している場合、かかる置換基としてはアミノ基、アミド基、ニトロ基、スルホン基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基等が挙げられる。さらに、本発明にかかるメソポーラス有機シリカにおいては、少なくともその細孔の内壁面に置換基が導入されていることが好ましい。このような置換基を有しているR2(前記一般式(2)中におけるR3を含む)としては、前記置換基が炭素原子を介してケイ素原子に結合するものであることが好ましい。
以上説明した本発明にかかるメソポーラス有機シリカは、中心細孔直径が1〜30nm、好ましくは1〜10nm、より好ましくは1〜5nm、である複数の細孔を有している。中心細孔直径が1nm未満である場合は、細孔の平均の大きさが分解や吸着の対象となる物質の大きさよりも小さくなることが多くなるため、触媒性能や吸着性能が低下する。他方、中心細孔直径が30nmを超える場合は、比表面積が低下して、触媒性能や吸着性能が低下する。
ここで、本発明における「中心細孔直径」とは、細孔容積(V)を細孔直径(D)で微分した値(dV/dD)を細孔直径(D)に対してプロットした曲線(以下、「細孔径分布曲線」という)の最大ピークにおける細孔直径である。また、細孔径分布曲線は、次に述べる方法により求めることができる。すなわち、メソポーラス有機シリカを液体窒素温度(−196℃)に冷却して窒素ガスを導入し、定容量法あるいは重量法によりその吸着量を求め、次いで、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットし、吸着等温線を得る。この吸着等温線を用い、Cranston-Inklay法、Pollimore-Heal法、BJH法等の計算法により細孔径分布曲線を求めることができる。
また、本発明にかかるメソポーラス有機シリカは、細孔径分布曲線における中心細孔直径の±40%の範囲に全細孔容積の60%以上が含まれることが好ましい。ここで、「細孔径分布曲線における最大ピークを示す細孔直径の±40%の範囲に全細孔容積の60%以上が含まれる」とは、例えば、中心細孔直径が3.00nmである場合、この3.00nmの±40%、すなわち1.80〜4.20nmの範囲にある細孔の容積の合計が、全細孔容積の60%以上を占めていることを意味する。この条件を満たすメソポーラス有機シリカは、細孔の直径が非常に均一であることを意味する。
さらに、本発明にかかるメソポーラス有機シリカの比表面積は、特に制限されないが、700m2/g以上であることが好ましい。このような比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
また、本発明にかかるメソポーラス有機シリカは、そのX線回折パターンにおいて、1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークを有することが好ましい。X線回折ピークはそのピーク角度に相当するd値の周期構造が試料中にあることを意味する。したがって、1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークがあることは、細孔が1nm以上の間隔で規則的に配列していることを意味する。
さらに、このようなメソポーラス有機シリカが有する細孔は、多孔体の表面のみならず内部にも形成される。かかるメソポーラス有機シリカにおける細孔の配列状態(細孔配列構造又は構造)は特に制限されないが、2d−ヘキサゴナル構造、3d−ヘキサゴナル構造又はキュービック構造であることが好ましい。また、このような細孔配列構造は、ディスオーダの細孔配列構造を有するものであってもよい。
ここで、メソポーラス有機シリカがヘキサゴナルの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が六方構造であることを意味する(S.Inagaki et al., J.Chem.Soc.,Chem.Commun., p.680(1993)、S.Inagaki et al., Bull.Chem.Soc.Jpn., 69,p.1449(1996)、Q.Huo et al., Science, 268,p.1324(1995)参照)。また、メソポーラス有機シリカがキュービックの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が立方構造であることを意味する(J.C.Vartuli et al., Chem.Mater., 6,p.2317(1994)、Q.Huo et al., Nature, 368,p.317(1994)参照)。また、メソポーラス有機シリカがディスオーダの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が不規則であることを意味する(P.T.Tanev et al., Science, 267,p.865(1995)、S.A.Bagshaw et al., Science, 269,p.1242(1995)、R.Ryoo et al., J.Phys.Chem., 100,p.17718(1996)参照)。また、前記キュービック構造は、Pm−3n、Ia−3d、Im−3m又はFm−3m対称性であることが好ましい。前記対称性とは、空間群の表記法に基づいて決定されるものである。
以上説明した本発明にかかるメソポーラス有機シリカの製造方法は特に限定されず、例えば、S.Inagaki et al., Nature, 416,p.304(2002)、特開2001−114790号公報、特開2000−219770号公報、特開2000−17102号公報に記載されている方法が好適に採用される。
また、本発明にかかるメソポーラス有機シリカとして、例えば架橋フェニレン部分にアミノ基が導入されたものを用いる場合、例えば以下の方法によって得ることができる。すなわち、先ずメソポーラス有機シリカを硝酸と硫酸との混合液に懸濁せしめ、所定時間撹拌を行って架橋フェニレン部分にニトロ基が導入されたものを得る。次いで、ニトロ基を導入したメソポーラス有機シリカを塩化スズと塩酸との混合液に懸濁せしめ、所定時間撹拌を行って架橋フェニレン部分にアミノ基が導入されたメソポーラス有機シリカを得ることができる。
次に、本発明の第一の有機化合物多孔体複合材料について説明する。すなわち、本発明の第一の有機化合物多孔体複合材料は、前記メソポーラス有機シリカの細孔の内壁面にアミノ酸が化学的に結合していることを特徴とするものである。
このように前記メソポーラス有機シリカの細孔の内壁面に化学修飾することのできるアミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、システイン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、アルギニン、及びこれらのアミノ酸の誘導体が挙げられる。中でも、ポルフィリン、ポルフィリン誘導体、ポルフィリン骨格異性体、フタロシアニン、フタロシアニン誘導体、鉄−硫黄クラスター及び鉄−モリブデンクラスターと相互作用させるという観点から、電荷もしくは窒素、硫黄、酸素原子を側鎖にもつアミノ酸である、メチオニン、プロリン、セリン、トレオニン、システイン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、トリプトファン、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、アルギニンがより好ましい。
本発明の第一の有機化合物多孔体複合材料において担持されているアミノ酸の量は特に制限されないが、得られる有機化合物多孔体複合材料においてより十分な触媒活性及び吸着作用が奏されるようになるという観点から、メソポーラス有機シリカ100重量部に対してアミノ酸の担持量が10〜40重量部程度であることが好ましい。
また、メソポーラス有機シリカの細孔の内壁面にアミノ酸を化学的に結合せしめる方法は特に限定されないが、例えば以下のようにペプチドの固相合成法を応用した方法によって得ることができる。すなわち、アミノ酸を活性化せしめた溶液中にメソポーラス有機シリカを懸濁せしめ、所定時間撹拌を行って細孔内にアミノ酸が化学的に結合したメソポーラス有機シリカを得ることができる。なお、アミノ酸を活性化せしめた溶液を得る際の溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、クロロホルム、ジクロロメタン、トリフルオロエタノール、水、及びこれらの混合溶液等が好ましく、かかる溶液には更に、アミノ酸のカルボキシル基を縮合させるための縮合剤(触媒)として、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、t−ブチルエチルカルボジイミド、ヘキサフルオロリン酸ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム、ヒドロキシベンゾトリアゾール、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’−カルボニルジイミダゾール、N−シクロヘキシル−N’−(2−モルフォリノエチル)カルボジイミドメチル−p−トルエンスルホン酸、3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン、N,N’−ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルアミノピリジン、ジフェニルホスホニルアジド、N−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボロン酸、ブロモトリスピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−ジカルボイミド、N−ヒドロキシフタルアミド、N−メチルモルフォリン、ペンタフルオロフェノール等が含有されていることが好ましい。また、アミノ酸を細孔内に結合させる際にはFmoc基、Trt基等の保護基で保護しておき、アミノ酸が細孔内に結合した後に保護基を除去することが好ましい。
本発明の第一の有機化合物多孔体複合材料においては、前述のアミノ酸を介して、ポルフィリン、ポルフィリン誘導体、ポルフィリン骨格異性体、フタロシアニン、フタロシアニン誘導体、鉄−硫黄クラスター及び鉄−モリブデンクラスターからなる群から選択される少なくとも一つのポルフィリン錯体が前記細孔の内壁面に化学的に結合していることがより好ましい。
このようなポルフィリン、ポルフィリン誘導体、ポルフィリン骨格異性体、フタロシアニン及びフタロシアニン誘導体における中心元素(M)は、周期表の第3、4、5、6周期の元素であり、中でもマグネシウム、アルミニウム、シリコン、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、アンチモン、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金、鉛が好ましい。
また、本発明にかかるポルフィリン誘導体としては下記一般式(3):
で表されるものがそれぞれ好ましい。なお、前記一般式(3)〜(5)における、1、2、3、4、5、6、7、8及び1’、2’、3’、4’で示される置換基はそれぞれ、水素(−H)、ハロゲン(−F、−Cl、−Br、−I)、アルコール(−OH)、エーテル(−O−)、アミノ(−NH2)、ニトリル(−CN)、イミン(−C=N−)、ニトロ(−NO2)、スルフィド(−S−)、スルホキシド(−SO)、スルホン(−SO3H)、チオール(−SH)、アルデヒド(−CHO)、ケトン(−CO−)、カルボン酸(−COOH)、エステル(−COO−)、アミド(−CONH−)、カルボン酸ハロゲン化物(−COX)、カルボン酸無水物(−COOCO−)、アルカン、アルケン、アルキン、シクロアルカン、シクロアルケン、シクロアルキン及び芳香族炭化水素からなる群から選択されるいずれかである。また、前記一般式(4)における、R1、R2、R3、R4はそれぞれ、炭素数が0〜5のアルカン、アルケン及びアルキンからなる群から選択されるいずれかである。さらに、前記一般式(3)〜(5)におけるXはそれぞれ、ハロゲン、負の電荷を有する分子、配位性有機溶媒(アルコール、ピリジン等)等からなる群から選択されるいずれかである。また、前記一般式(3)〜(4)におけるα、β、γ、δはそれぞれ、水素(−H)、ハロゲン(−F、−Cl、−Br、−I)、アルコール(−OH)、エーテル(−O−)、アミノ(−NH2)、ニトリル(−CN)、イミン(−C=N−)、ニトロ(−NO2)、スルフィド(−S−)、スルホキシド(−SO)、スルホン(−SO3H)、チオール(−SH)、アルデヒド(−CHO)、ケトン(−CO−)、カルボン酸(−COOH)、エステル(−COO−)、アミド(−CONH−)、カルボン酸ハロゲン化物(−COX)、カルボン酸無水物(−COOCO−)、ベンゼン、ベンゼンスルホン酸、アニリン、ニトロベンゼン、ベンズアルデヒド、トルエン等のベンゼン誘導体、ピリジン、アルカン、アルケン、アルキン、シクロアルカン、シクロアルケン、シクロアルキン及び芳香族炭化水素からなる群から選択されるいずれかである。
本発明の第一の有機化合物多孔体複合材料において担持されているポルフィリン錯体の量は特に制限されないが、得られる有機化合物多孔体複合材料においてより十分な触媒活性及び吸着作用が奏されるようになるという観点から、メソポーラス有機シリカ100重量部に対してポルフィリン錯体の担持量が20〜90重量部程度であることが好ましい。
また、メソポーラス有機シリカの細孔の内壁面に前記アミノ酸を介してポルフィリン錯体を化学的に結合せしめる方法は特に限定されないが、例えば以下のような含浸法によって得ることができる。すなわち、細孔内にアミノ酸が化学的に結合したメソポーラス有機シリカを前記ポルフィリン錯体を含有する溶液中に懸濁せしめ、所定時間撹拌を行って細孔内にアミノ酸を介してポルフィリン錯体が化学的に結合したメソポーラス有機シリカを得ることができる。なお、ポルフィリン錯体の溶液を得る際の溶媒としては、アルコール(エタノール、メタノール、フェノール等)、ハロゲン溶媒(クロロホルム、ジクロロメタン等)、エーテル溶媒(ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、フラン、THF等)、ニトリル溶媒(アセトニトリル、ベンゾニトリル等)、芳香族炭化水素溶媒(ベンゼン、トルエン等)、炭化水素溶媒(ヘキサン、シクロヘキサン等)、ピリジン、酢酸、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が好ましい。
以上説明した本発明の第一の有機化合物多孔体複合材料において優れた触媒作用と吸着作用が発現する理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、例えば、ヘムタンパク質は鉄ポルフィリン錯体を活性中心として機能する金属タンパク質であり、一般的に鉄ポルフィリン錯体はタンパク質の作り出す疎水的な空間にアミノ酸の配位を介して固定されている。このため天然の鉄ポルフィリン錯体は会合による二量化が抑制され、高い反応性を保持している。さらに、配位したアミノ酸が鉄ポルフィリン錯体の電子状態を制御することで、ヘムタンパク質として様々な機能を発現している。それに対して、本発明の第一の有機化合物多孔体複合材料においても、疎水的なメソ細孔内部に配置したアミノ酸がポルフィリン錯体を固定し、会合による二量化を抑制している。さらにアミノ酸の配位により、ポルフィリン錯体の電子状態が制御され、ポルフィリン錯体の持つ潜在的な機能(触媒、ガス吸着、センサー、電子伝達、光応答、エネルギー変換等の機能)が高水準で発現されるものと本発明者らは推察する。
次に、本発明の第二の有機化合物多孔体複合材料について説明する。すなわち、本発明の第二の有機化合物多孔体複合材料は、前記メソポーラス有機シリカの細孔の内壁面にシッフ塩基配位子が形成されていることを特徴とするものである。
このように前記メソポーラス有機シリカの細孔の内壁面に化学修飾してシッフ塩基配位子を形成することのできる有機配位子としては、特に限定されないが、末端にアルデヒド基を有している有機配位子が好ましく、例えば、サリチルアルデヒド、2−ヒドロキシイソフタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、ジフェニルホスフィノベンズアルデヒド、及びこれらの誘導体が挙げられる。さらに、上記の有機配位子に加えて、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、シクロヘキサンジアミン、ベンゼンジアミン、及びこれらの誘導体等の架橋成分を有機配位子と共に用いてシッフ塩基配位子を形成するようにしてもよい。
また、本発明の第二の有機化合物多孔体複合材料においては、前記シッフ塩基配位子が金属錯体を形成していることが好ましく、このような金属錯体としては、Pt、Pd、Ru、Os、Ir、Rh、Au、Fe、Ni、Cr、Mn、Co、Cu、Ti、Zn及びVからなる群から選択される少なくとも一つの金属を中心金属としかつ前記シッフ塩基配位子を有する金属錯体が好ましいものとして挙げられる。
本発明の第二の有機化合物多孔体複合材料において担持されているシッフ塩基配位子(金属錯体を形成している場合は金属錯体)の量は特に制限されないが、得られる有機化合物多孔体複合材料においてより十分な触媒活性及び吸着作用が奏されるようになるという観点から、メソポーラス有機シリカ100重量部に対してシッフ塩基配位子(又は金属錯体)の担持量が20〜90重量部程度であることが好ましい。
また、メソポーラス有機シリカの細孔の内壁面にシッフ塩基配位子を形成せしめる方法は特に限定されないが、例えば以下のような含浸法によって得ることができる。すなわち、メソポーラス有機シリカを前記有機配位子又はその溶液中に懸濁せしめ、所定時間撹拌を行って細孔の内壁面にシッフ塩基配位子が形成されたメソポーラス有機シリカを得ることができる。なお、前記有機配位子の溶液を得る際の溶媒としては、アルコール(エタノール、メタノール、フェノール等)、ハロゲン溶媒(クロロホルム、ジクロロメタン等)、エーテル溶媒(ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、フラン、THF等)、ニトリル溶媒(アセトニトリル、ベンゾニトリル等)、芳香族炭化水素溶媒(ベンゼン、トルエン等)、炭化水素溶媒(ヘキサン、シクロヘキサン等)、ピリジン、酢酸、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が好ましい。また、前記シッフ塩基配位子を金属錯体とする方法も特に限定されないが、例えば、メソポーラス有機シリカを前記有機配位子又はその溶液中に懸濁せしめる際に金属塩を共存させることによって細孔の内壁面に形成されたシッフ塩基配位子が金属錯体を形成しているメソポーラス有機シリカを得ることができる。
以上説明した本発明の第一及び第二の有機化合物多孔体複合材料の形状は、特に限定されないが、触媒や吸着剤として使用する際の利便性の観点から、粒子状或いは膜状であることが好ましい。例えば、粒子状の場合には、球状、六角柱状又は十八面体状の形状を有することが好ましい。また、本発明の第一及び第二の有機化合物多孔体複合材料は、粉末のまま使用してもよいが、必要に応じて成形して使用してもよい。成形する手段はどのようなものでも良いが、押出成形、打錠成形、転動造粒、圧縮成形、CIP等が好ましい。その形状は使用箇所、方法に応じて決めることができ、たとえば円柱状、破砕状、球状、ハニカム状、凹凸状、波板状等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
(合成例1〜2)1,4-Ph-HMM及び1,3-Ph-HMMの合成
架橋有機基としてフェニレン基を導入した2種類のメソポーラスベンゼンシリカ(1,4-Ph-HMM及び1,3-Ph-HMM)をそれぞれ、S.Inagaki et al., Nature, 416,p.304(2002)に記載の方法に準拠して合成した。なお、合成に用いた試薬は、アズマックス、和光純薬、東京化成、アルドリッチから購入した特級試薬を用いた。
架橋有機基としてフェニレン基を導入した2種類のメソポーラスベンゼンシリカ(1,4-Ph-HMM及び1,3-Ph-HMM)をそれぞれ、S.Inagaki et al., Nature, 416,p.304(2002)に記載の方法に準拠して合成した。なお、合成に用いた試薬は、アズマックス、和光純薬、東京化成、アルドリッチから購入した特級試薬を用いた。
(合成例3〜4)NH2-1,4-Ph-HMM及びNH2-1,3-Ph-HMMの合成
合成例1〜2で得られた1,4-Ph-HMM及び1,3-Ph-HMMに対して以下のような2段階の反応でそれぞれアミノ基を導入し、架橋フェニレン基にアミノ基が導入された2種類のメソポーラスベンゼンシリカ(NH2-1,4-Ph-HMM及びNH2-1,3-Ph-HMM)を得た。
合成例1〜2で得られた1,4-Ph-HMM及び1,3-Ph-HMMに対して以下のような2段階の反応でそれぞれアミノ基を導入し、架橋フェニレン基にアミノ基が導入された2種類のメソポーラスベンゼンシリカ(NH2-1,4-Ph-HMM及びNH2-1,3-Ph-HMM)を得た。
すなわち、先ず、1,4-Ph-HMM又は1,3-Ph-HMM(0.524 g)を硝酸(3.47g)と硫酸(15.17g)との混合液に懸濁し、室温で3日間撹拌を行った。次いで、反応溶液に蒸留水を300ml加え、沈殿を濾別した。得られた淡黄色固体(NO2-1,4-Ph-HMM又はNO2-1,3-Ph-HMM)を1000mlの蒸留水で3回に分けて浄したのち、真空乾燥した(0.480g)。
次に、得られた淡黄色固体(0.480g)と塩化スズ(1.591g)とを塩酸(18.25g)に懸濁し、室温で3日間撹拌を行った。次いで、生成物を濾別し、蒸留水(1000ml)、イソプロピルアミン(10ml)及びエタノール(100ml)で洗浄した後、真空乾燥することで淡桃色固体(NH2-1,4-Ph-HMM又はNH2-1,3-Ph-HMM)を得た(0.445 g)。
(実施例1)His-1,4-Ph-HMMの合成及び構造解析
合成例3で得られたNH2-1,4-Ph-HMMを用いて、以下のようにして下記構造式で表されるヒスチジン−メソポーラスベンゼンシリカ(His-1,4-Ph-HMM)を得た。
合成例3で得られたNH2-1,4-Ph-HMMを用いて、以下のようにして下記構造式で表されるヒスチジン−メソポーラスベンゼンシリカ(His-1,4-Ph-HMM)を得た。
先ず、0.3072gの1-Hydroxybenzotriazole hydrate(HOBT・H2O)を4.55mlのジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、0.5M HOBT/DMF溶液とした。次に、5mlのサンプル瓶に1.8mlの0.5M HOBT/DMF溶液、0.509gのFmoc-His(Fmoc)-OH、4.5mlのDMF、125μlのN,N'-Diisopropylcarbodiimide(DIPCI)を加え、室温で24時間撹拌した。これを活性化ヒスチジン溶液とした。次いで、50mlの3口フラスコに0.205gのNH2-1,4-Ph-HMMを入れ、90℃で1時間真空乾燥を行った。乾燥後アルゴンガスでフラスコ内を常温常圧に戻し、3mlの活性化ヒスチジン溶液を加えた。この懸濁液を室温で24時間撹拌し、1.5mlのエッペンドルフチューブに0.5mlづつ小分けした。これを12000rpmで5分間遠心分離し、上清を取り除き沈殿を回収した。沈殿に1mlのDMFを加えボルテクスミキサーで1分間撹拌し、12000rpmで5分間遠心分離し、上清を取り除いた。同様の方法で50%piperidine/DMF溶液(1ml)で5回、DMF(1ml)で3回、エタノール(1ml)で3回沈殿を洗浄し、Fmoc保護基を取り除いた。洗浄後の沈殿を室温で真空乾燥することで、0.200 gのHis-1,4-Ph-HMMを得た。
得られたHis-1,4-Ph-HMMの粉末X線回折パターンを図1に示す。同図に示すように、d=4.55nmの強いピークが見られた。さらにd=0.760,0.379,0.253nmにも回折ピークが現れた。これらの回折パターンから、His-1,4-Ph-HMMはメソ構造と、細孔壁内の周期構造を保持していることが確認された。
また、得られたHis-1,4-Ph-HMMの窒素吸着等温線を図2に、BJH法で求めた細孔径分布曲線を図3に、さらに反応前後の細孔径、窒素吸着等温線から求めたBET比表面積、及び細孔容量を表1に示す。反応後、細孔径は0.56nm、細孔容量は0.210cc/g減少していたことから、細孔内部が化学修飾されたことが確認された。
さらに、得られたHis-1,4-Ph-HMMの赤外吸収スペクトルを図4に示す。1660cm-1のブロードな吸収と1355cm-1にヒスチジンに由来する吸収が観測された。さらにHis-1,4-Ph-HMMの細孔壁内の構造を13C-MAS NMRで調べた。測定結果と各炭素の帰属を図5に示す。帰属はヒスチジンの13C NMR実測結果と構造計算により予測されたHis-1,4-Ph-HMMのケミカルシフトを参考に行った。赤外吸収スペクトルと13C-MAS NMRの測定結果から、細孔壁上の架橋フェニレン基のアミノ基にヒスチジンが化学結合したHis-1,4-Ph-HMMが形成されていることが確認された。
(実施例2)His-1,3-Ph-HMMの合成及び構造解析
0.205 gのNH2-1,4-Ph-HMMに代えて、合成例4で得られた0.205gのNH2-1,3-Ph-HMMを用いた他は実施例1と同様にして、下記構造式で表されるヒスチジン−メソポーラスベンゼンシリカ(His-1,3-Ph-HMM )を得た。
0.205 gのNH2-1,4-Ph-HMMに代えて、合成例4で得られた0.205gのNH2-1,3-Ph-HMMを用いた他は実施例1と同様にして、下記構造式で表されるヒスチジン−メソポーラスベンゼンシリカ(His-1,3-Ph-HMM )を得た。
得られたHis-1,3-Ph-HMMの粉末X線回折パターンを図6に示す。同図に示すように、d=4.53nmの強いピークとその高角側に弱ショルダーピークが見られた。さらに、d=0.759,0.380,0.253nmにも回折ピークが見られた。これらの回折パターンから、His-1,3-Ph-HMMはメソ構造と、細孔壁内の周期構造を保持していることが確認された。
また、得られたHis-1,3-Ph-HMMの窒素吸着等温線を図7に、BJH法で求めた細孔径分布曲線を図8に、さらに反応前後の細孔径、窒素吸着等温線から求めたBET比表面積、及び細孔容量を表2に示す。反応後、細孔径は0.23nm、細孔容量は0.186cc/g減少していたことから、細孔内部が化学修飾されたことが確認された。
さらに、得られたHis-1,3-Ph-HMMのATR法による赤外吸収スペクトルを図9に示す。1650cm-1のブロードな吸収と1350 cm-1にヒスチジンに由来する吸収が観測された。さらにHis-1,3-Ph-HMMの細孔壁内の構造を13C-MAS NMRで調べた。測定結果と各炭素の帰属を図10に示す。帰属はヒスチジンの13C NMR実測結果と構造計算により予測されたHis-1,3-Ph-HMMのケミカルシフトを参考に行った。赤外吸収スペクトルと13C-MAS NMRの測定結果から、細孔壁上の架橋フェニレン基のアミノ基にヒスチジンが化学結合したHis-1,3-Ph-HMMが形成されていることが確認された。
(実施例3)Cys-1,4-Ph-HMMの合成及び構造解析
合成例3で得られたNH2-1,4-Ph-HMMを用いて、以下のようにして下記構造式で表されるシステイン−メソポーラスベンゼンシリカ(Cys-1,4-Ph-HMM)を得た。
合成例3で得られたNH2-1,4-Ph-HMMを用いて、以下のようにして下記構造式で表されるシステイン−メソポーラスベンゼンシリカ(Cys-1,4-Ph-HMM)を得た。
先ず、0.3430gのHOBT・H2Oを5.00mlのDMFに溶解し、0.5M HOBT/DMF溶液とした。次に、0.5220gのN,N'-Dicyclohexylcarbodiimide(DCC)を5.00mlのDMFに溶解し、0.5M DCC/DMF溶液とした。次いで、5mlのサンプル瓶に1.6mlの0.5M HOBT/DMF溶液、0.464 gのFmoc-Cys(Trt)-OH、1.6 mlの0.5M DCC/DMF溶液を加え、室温で4.5時間撹拌した。得られた沈殿を濾別し、濾液を活性化システイン溶液とした。次いで、50mlの3口フラスコに0.150gのNH2-1,4-Ph-HMMを入れ、90℃で1時間真空乾燥を行った。乾燥後アルゴンガスでフラスコ内を常温常圧に戻し、1.3mlの活性化システイン溶液を加えた。この懸濁液を室温で6日間撹拌し、1.5mlのエッペンドルフチューブ2本に小分けした。これを12000rpmで5分間遠心分離し、上清を取り除くことで沈殿を回収した。沈殿に1mlのDMFを加えボルテクスミキサーで1分間撹拌し、12000rpmで5分間遠心分離し、上清を取り除いた。同様の方法で50%piperidine/DMF溶液(1ml)で5回、DMF/CH2Cl2(1:1混合溶液)(1ml)で3回、エタノール(1ml)で3回沈殿を洗浄することでFmoc基とTrt基を取り除いた。洗浄後の沈殿を室温で真空乾燥することで、0.150gのCys-1,4-Ph-HMMを得た。
得られたCys-1,4-Ph-HMMの粉末X線回折パターンを図11に示す。同図に示すように、d=4.57nmの強いピークが見られた。さらにd=0.759,0.379,0.252 nmにも回折ピークが見られた。これらの回折パターンから、Cys-1,4-Ph-HMMはメソ構造と、細孔壁内の周期構造を保持していることが確認された。
また、得られたCys-1,4-Ph-HMMの窒素吸着等温線を図12に、BJH法で求めた細孔径分布曲線を図13に、さらに反応前後の細孔径、窒素吸着等温線から求めたBET比表面積、及び細孔容量を表3に示す。反応後、細孔径は0.91nm、細孔容量は0.260cc/g減少していたことから、細孔内部が化学修飾されたことが確認された。
さらに、得られたCys-1,4-Ph-HMMの赤外吸収スペクトルを図14に示す。1650cm-1のブロードな吸収と2650cm-1にシステインに由来する吸収が観測された。さらにCys-1,4-Ph-HMMの細孔壁内の構造を13C-MAS NMRで調べた。測定結果と各炭素の帰属を図15に示す。帰属はシステインの13C NMR実測結果と構造計算により予測されたCys-1,4-Ph-HMMのケミカルシフトを参考に行った。赤外吸収スペクトルと13C-MAS NMRの測定結果から、細孔壁上の架橋フェニレン基のアミノ基にシステインが化学結合したCys-1,4-Ph-HMMが形成されていることが確認された。
(実施例4)Fe(OEP)-His-1,4-Ph-HMMの合成
実施例1で得られたHis-1,4-Ph-HMMを用いて、以下のようにしてオクタエチルポルフィリン鉄錯体−ヒスチジン−メソポーラスベンゼンシリカ(Fe(OEP)-His-1,4-Ph-HMM)を得た。
実施例1で得られたHis-1,4-Ph-HMMを用いて、以下のようにしてオクタエチルポルフィリン鉄錯体−ヒスチジン−メソポーラスベンゼンシリカ(Fe(OEP)-His-1,4-Ph-HMM)を得た。
すなわち、実施例1で合成した0.082gのHis-1,4-Ph-HMMを1.5mlのエッペンドルフチューブに入れ、そこへオクタエチルポルフィリン鉄クロリド(Fe(OEP)Cl)のクロロホルム溶液(8.13mM)を2 ml加えた。超音波攪拌したのち、室温で24時間攪拌した。これを12000rpmで5分間遠心分離し、上清を取り除くことで沈殿を回収した。得られた沈殿に1mlのクロロホルムを加え、ボルテックスミキサーで1分間撹拌し、12000rpmで5分間遠心分離し、上清を取り除くことで遊離のFe(OEP)Clを取り除いた。同様の洗浄作業を遊離のFe(OEP)Clがなくなるまで繰り返した。洗浄後の沈殿を室温で真空乾燥することで、0.082gのFe(OEP)-His-1,4-Ph-HMMを得た。濾液及び洗浄液に含まれる未吸着のFe(OEP)Clを定量し、Fe(OEP)の吸着量を算出した。
(実施例5)Fe(OEP)-Cys-1,4-Ph-HMMの合成
0.082gのHis-1,4-Ph-HMMに代えて、実施例3で得られた0.078gのCys-1,4-Ph-HMMを用いた他は実施例4と同様にして、オクタエチルポルフィリン鉄錯体−システイン−メソポーラスベンゼンシリカ(Fe(OEP)-Cys-1,4-Ph-HMM)を得た。
0.082gのHis-1,4-Ph-HMMに代えて、実施例3で得られた0.078gのCys-1,4-Ph-HMMを用いた他は実施例4と同様にして、オクタエチルポルフィリン鉄錯体−システイン−メソポーラスベンゼンシリカ(Fe(OEP)-Cys-1,4-Ph-HMM)を得た。
(比較例1)1,4-Ph-HMMへのFe(OEP)Clの担持
0.082gのHis-1,4-Ph-HMMに代えて、0.085 gの1,4-Ph-HMMを用いた他は実施例4と同様にして、オクタエチルポルフィリン鉄錯体を1,4-Ph-HMMに担持せしめた。
0.082gのHis-1,4-Ph-HMMに代えて、0.085 gの1,4-Ph-HMMを用いた他は実施例4と同様にして、オクタエチルポルフィリン鉄錯体を1,4-Ph-HMMに担持せしめた。
実施例4〜5及び比較例1で得られた試料のFe(OEP)Clの吸着量と粉体の色を表4に示す。同表に示したように、細孔内にアミノ酸を化学修飾したHis-1,4-Ph-HMM及びCys-1,4-Ph-HMMを用いて得た試料に対しては着色が見られた。これはFe(OEP)Clが細孔内に固定されたことを示している。一方、未修飾の1,4-Ph-HMMを用いて得た試料に対しては試料への着色がほとんど見られなかった。これらの結果から、Fe(OEP)Clはアミノ酸の配位を介して細孔内部に固定されていることが確認された。
(実施例6)Fe(OEP)-His-1,4-Ph-HMMへの一酸化炭素の結合の評価
実施例4で合成した0.0038gのFe(OEP)-His-1,4-Ph-HMMと3.0mlの蒸留水を光路長1cmの石英セルに入れ懸濁させた。マグネティックスターラーで撹拌しながら紫外可視分光光度計により紫外可視吸収スペクトルを測定した。次に、この石英セルにセプタムを付け、窒素ガスで5分間脱気をした。このセルにごく少量のジチオナイト(Na2S2O4)を加えて直ちに、先ほどと同様の方法で紫外可視吸収スペクトルを測定した。さらにここに一酸化炭素ガスを極微量加えて直ちに、先ほどと同様の方法で紫外可視吸収スペクトルを測定した。
実施例4で合成した0.0038gのFe(OEP)-His-1,4-Ph-HMMと3.0mlの蒸留水を光路長1cmの石英セルに入れ懸濁させた。マグネティックスターラーで撹拌しながら紫外可視分光光度計により紫外可視吸収スペクトルを測定した。次に、この石英セルにセプタムを付け、窒素ガスで5分間脱気をした。このセルにごく少量のジチオナイト(Na2S2O4)を加えて直ちに、先ほどと同様の方法で紫外可視吸収スペクトルを測定した。さらにここに一酸化炭素ガスを極微量加えて直ちに、先ほどと同様の方法で紫外可視吸収スペクトルを測定した。
(実施例7)Fe(OEP)-Cys-1,4-Ph-HMMへの一酸化炭素の結合の評価
0.0038gのFe(OEP)-His-1,4-Ph-HMMに代えて、実施例5で合成した0.0031gのFe(OEP)-Cys-1,4-Ph-HMMを用いた他は実施例7と同様にしてFe(OEP)-Cys-1,4-Ph-HMMへの一酸化炭素結合における紫外可視吸収スペクト測定を行った。
0.0038gのFe(OEP)-His-1,4-Ph-HMMに代えて、実施例5で合成した0.0031gのFe(OEP)-Cys-1,4-Ph-HMMを用いた他は実施例7と同様にしてFe(OEP)-Cys-1,4-Ph-HMMへの一酸化炭素結合における紫外可視吸収スペクト測定を行った。
Fe(OEP)-His-1,4-Ph-HMM及びFe(OEP)-Cys-1,4-Ph-HMMへの一酸化炭素結合による紫外可視吸収スペクトルの変化を図16、図17にそれぞれ示す。どちらの試料も一酸化炭素ガスの添加により、530,560nm付近にFe(OEP)に一酸化炭素が軸配位したCO体に特徴的な吸収を示した。この変化は天然のヘムタンパク質におけるCO体形成時の挙動と類似している。Fe(OEP)-His-1,4-Ph-HMMとFe(OEP)-Cys-1,4-Ph-HMMの吸収スペクトルの強度の違いは、Fe(OEP)とアミノ酸の結合の違いに起因すると推察される。したがって、これらの結果から、Ph-HMM細孔内部にヘムタンパク質の活性中心を模倣した反応場を構築できたことが確認された。
(実施例8)Schiff base-1,4-Ph-HMMの合成及び構造解析
合成例3で得られたNH2-1,4-Ph-HMMを用いて、以下のようにして下記構造式で表されるシッフ塩基配位子−メソポーラスベンゼンシリカ(Schiff base-1,4-Ph-HMM)を得た。
合成例3で得られたNH2-1,4-Ph-HMMを用いて、以下のようにして下記構造式で表されるシッフ塩基配位子−メソポーラスベンゼンシリカ(Schiff base-1,4-Ph-HMM)を得た。
先ず、50 mlの3口フラスコに0.208gのNH2-1,4-Ph-HMMを入れ、90℃で1時間真空乾燥を行った。乾燥後アルゴンガスでフラスコ内を常圧に戻し、サリチルアルデヒドを4mlを加えた。この懸濁液を室温で24時間撹拌した後、さらに60℃で20時間撹拌し、内容物を濾過した。沈殿は200mlのエタノールで2回洗い、黄色粉体を得た。これを100mlのエタノールに懸濁し、60℃で6時間撹拌洗浄し、濾過した。沈殿を200mlのエタノールで2回洗い、室温で真空乾燥することで、0.217gのSchiff base-1,4-Ph-HMMを得た。
得られたSchiff base-1,4-Ph-HMMの低角域のX線回折パターンを図18に示す。同図に示すように、d=4.70 nmの強いピークとその高角側に弱ショルダーピークが見られた。さらにd=0.759,0.379,0.252nmにも回折ピークが見られた。これらの回折パターンから、Schiff base-1,4-Ph-HMMはメソ構造と、細孔壁内の周期構造を保持していることが確認された。
また、得られたSchiff base-1,4-Ph-HMMの窒素吸着等温線を図19に、BJH法で求めた細孔径分布曲線を図20に、さらに反応前後の細孔径、窒素吸着等温線から求めたBET比表面積、及び細孔容量を表5に示す。反応後、細孔径は0.5nmに減少し、細孔容量も0.090cc/gに減少していたことから、細孔内部がサリチルアルデヒドにより化学修飾されたことが確認された。
さらに、得られたSchiff base-1,4-Ph-HMMの赤外吸収スペクトルを図21に示す。1580cm-1に炭素と窒素の二重結合の伸縮振動に由来する吸収が観測された。また、1280,1610,1660cm-1にシッフ塩基配位子に由来する吸収が観測された。これらの結果から、細孔壁上のアミノ基がサリチルアルデヒドと反応し、シッフ塩基を形成していることが確認された。
また、得られたSchiff base-1,4-Ph-HMMの細孔壁内の構造を13C-MAS NMRで調べた。測定結果と各炭素の帰属を図22に示す。帰属はサリチルアルデヒドの13C NMR実測結果と構造計算により予測されたSchiff base-1,4-Ph-HMMのケミカルシフトを参考に行った。この結果から、細孔壁上にシッフ塩基配位子が形成していることが確認された。
(実施例9)Schiff base-1,3-Ph-HMMの合成及び構造解析
合成例4で得られたNH2-1,3-Ph-HMMを用いて、以下のようにして下記構造式で表されるシッフ塩基配位子−メソポーラスベンゼンシリカ(Schiff base-1,3-Ph-HMM)を得た。
合成例4で得られたNH2-1,3-Ph-HMMを用いて、以下のようにして下記構造式で表されるシッフ塩基配位子−メソポーラスベンゼンシリカ(Schiff base-1,3-Ph-HMM)を得た。
先ず、50 mlの3口フラスコに0.100gのNH2-1,3-Ph-HMMを入れ、90℃で1時間真空乾燥を行った。乾燥後アルゴンガスでフラスコ内を常圧に戻し、サリチルアルデヒドを2mlを加えた。この懸濁液を室温で24時間撹拌したのち60℃で8時間撹拌し、さらに室温で2日間撹拌した。内容物を濾過した後、沈殿は200mlのエタノールで2回洗い、黄色粉体を得た。これを100mlのエタノールに懸濁し、60℃で4時間撹拌洗浄したのち濾過した。沈殿を200mlのエタノールで2回洗い、室温で真空乾燥することで、0.100gのSchiff base-1,3-Ph-HMMを得た。
得られたSchiff base-1,3-Ph-HMMの低角域のX線回折パターンを図23に示す。同図に示すように、d=4.55nmの強いピークとその高角側に弱ショルダーピークが見られた。さらに、d=0.758,0.379,0.253
nmにも回折ピークが見られた。これらの回折パターンから、Schiff base-1,3-Ph-HMMはメソ構造と、細孔壁内の周期構造を保持していることが確認された。
nmにも回折ピークが見られた。これらの回折パターンから、Schiff base-1,3-Ph-HMMはメソ構造と、細孔壁内の周期構造を保持していることが確認された。
また、得られたSchiff base-1,3-Ph-HMMの窒素吸着等温線を図24に、BJH法で求めた細孔径分布曲線を図25に、さらに反応前後の細孔径、窒素吸着等温線から求めたBET比表面積、及び細孔容量を表6に示す。反応後、細孔径は0.84nmに減少し、細孔容量も0.240cc/gに減少していたことから、細孔内部がサリチルアルデヒドにより化学修飾されたことが確認された。
さらに、得られたSchiff base-1,3-Ph-HMMの赤外吸収スペクトルを図26に示す。1580cm-1に炭素と窒素の二重結合の伸縮振動に由来する吸収が観測された。また、1280,1610,1660 cm-1にシッフ塩基配位子に由来する吸収が観測された。これらの結果から、細孔壁上のアミノ基がサリチルアルデヒドと反応し、シッフ塩基を形成していることが確認された。
また、得られたSchiff base-1,3-Ph-HMMの細孔壁内の構造を13C-MAS NMRで調べた。測定結果と各炭素の帰属を図27に示す。帰属はサリチルアルデヒドの13C NMR実測結果と構造計算により予測されたSchiff base-1,3-Ph-HMMのケミカルシフトを参考に行った。この結果から、細孔壁上にシッフ塩基配位子が形成していることが確認された。
(実施例10)salen-1,3-Ph-HMMの合成及び構造解析
合成例4で得られたNH2-1,3-Ph-HMMを用いて、以下のようにして下記構造式で表されるサレン−メソポーラスベンゼンシリカ(salen-1,3-Ph-HMM)を得た。
合成例4で得られたNH2-1,3-Ph-HMMを用いて、以下のようにして下記構造式で表されるサレン−メソポーラスベンゼンシリカ(salen-1,3-Ph-HMM)を得た。
先ず、50mlのサンプル瓶に0.101gの2-Hydroxyisophthalaldehydeと10mlのメタノールを加え室温で撹拌した。ここへ0.0189gのethylenediamineを滴下しながら室温で30分撹拌した。これをサレン(3,3’-CHO-salen)のメタノール溶液として用いた。次に、50 mlの3口フラスコに0.106gのNH2-1,3-Ph-HMMを入れ、90℃で1時間真空乾燥を行った。乾燥後アルゴンガスでフラスコ内を常圧に戻し、サレンのメタノール溶液を7.5ml加えた。この懸濁液を減圧下でソニケーターにより超音波を照射することで固体試料を分散させた。さらに室温で3日間撹拌し、内容物を濾過した。沈殿は200mlのエタノールで2回洗い、室温で真空乾燥することで、0.117 gのsalen-1,3-Ph-HMMを得た。
得られたsalen-1,3-Ph-HMMの低角域のX線回折パターンを図28に示す。同図に示すように、d=4.55nmの強いピークが観測された。さらに、d=0.759,0.379,0.253nmにも回折ピークが見られた。これらの回折パターンから、salen-1,3-Ph-HMMはメソ構造と、細孔壁内の周期構造を保持していることが確認された。
また、得られたsalen-1,3-Ph-HMMの赤外吸収スペクトルを図29に示す。1580cm-1に炭素と窒素の二重結合の伸縮振動に由来する吸収が観測された。また、salen配位子に由来する吸収として1350cm-1と1660cm-1を中心とするブロードな吸収が観測された。これらの結果から、細孔壁上に炭素と窒素の二重結合を介してsalen配位子が固定されたことが確認された。
さらに、得られたsalen-1,3-Ph-HMMの細孔壁内の構造を13C-MAS NMRで調べた。測定結果と各炭素の帰属を図30に示す。帰属はsalen配位子の13C NMR実測結果と構造計算により予測されたsalen-1,3-Ph-HMMのケミカルシフトを参考に行った。この結果から、細孔壁上にsalen型のシッフ塩基配位子が形成していることが確認された。
(実施例11)Mn(salen)-1,3-Ph-HMMの合成及び構造解析
合成例4で得られたNH2-1,3-Ph-HMMを用いて、以下のようにして下記構造式で表されるマンガンサレン錯体−メソポーラスベンゼンシリカ(Mn(salen)-1,3-Ph-HMM)を得た。
合成例4で得られたNH2-1,3-Ph-HMMを用いて、以下のようにして下記構造式で表されるマンガンサレン錯体−メソポーラスベンゼンシリカ(Mn(salen)-1,3-Ph-HMM)を得た。
先ず、50mlのサンプル瓶に0.101gの2-Hydroxyisophthalaldehydeと10mlのメタノールを加え室温で撹拌した。ここへ0.0189gのethylenediamineを滴下しながら室温で30分撹拌した。この溶液7.5mlに0.035gの塩化マンガン・4水和物(MnCl2・4H2O)を加え室温で10分撹拌した。これをマンガンサレン錯体のメタノール溶液として用いた。次に、50 mlの3口フラスコに0.110gのNH2-1,3-Ph-HMMを入れ、90℃で1時間真空乾燥を行った。乾燥後アルゴンガスでフラスコ内を常圧に戻し、マンガンサレン錯体のメタノール溶液を7.5mlを加えた。この懸濁液を減圧下でソニケーターにより超音波を照射することで固体試料を分散させた。さらに室温で3日間撹拌し、内容物を濾過した。沈殿は200mlのエタノールで2回洗い、室温で真空乾燥することで、0.109gのMn(salen)-1,3-Ph-HMMを得た。
得られたMn(salen)-1,3-Ph-HMMの低角域のX線回折パターンを図31に示す。同図に示すように、d=4.50nmの強いピークとその高角側に弱ショルダーピークが見られた。さらに、d=0.759,0.379,0.252nmにも回折ピークが見られた。これらの回折パターンから、Mn(salen)-1,3-Ph-HMMはメソ構造と、細孔壁内の周期構造を保持していることが確認された。
また、得られたMn(salen)-1,3-Ph-HMMの赤外吸収スペクトルを図32に示す。実施例10と同様に、1580cm-1に炭素と窒素の二重結合の伸縮振動に由来する吸収が観測された。また、1350cm-1にsalen配位子に由来する吸収が観測された。さらに、1640cm-1を中心とするブロードな吸収が観測された。これは、実施例10で観測されたサレン配位子の1660cm-1を中心とするブロードな吸収がマンガンの配位により低波数側へとシフトしたものであると推察される。これらの結果から、細孔壁上にマンガンサレン錯体が炭素と窒素の二重結合を介して固定されたことが確認された。
さらに、得られたMn(salen)-1,3-Ph-HMMの細孔壁内の構造を13C-MAS NMRで調べた。測定結果と各炭素の帰属を図33に示す。帰属は、実施例10の13C-MNS NMR実測結果と構造計算により予測されたMn(salen)-1,3-Ph-HMMのケミカルシフトを参考に行った。窒素、酸素に隣接した炭素に由来するシグナルがシフトした。これは、マンガンが配位したことにより窒素、酸素に隣接した炭素の電子密度が変化したためと推察される。この結果から、細孔壁上にsalen型のシッフ塩基配位子が形成していることが確認された。
(実施例12)Mn(salen)-1,3-Ph-HMMの酸化反応触媒能の評価
0.0109gのMn(salen)-1,3-Ph-HMMを1.5mlのエッペンドルフチューブに入れ、489μlの蒸留水、5μlの100 mMチオアニソールのメタノール溶液、5μlの100mM過酸化水素水溶液、1μlの100mMアセトフェノンのメタノール溶液を加え、室温で10分間攪拌した。ここに0.5mlのジクロロメタンを加え、室温で30秒間攪拌し静置した。次いで、ジクロロメタン層を1.6mlのサンプル瓶に分取し、ジクロロメタンを蒸発させた。ここに0.3mlのイソプロピルアルコール・ヘキサン(1:9v/v)混合溶液を加えた。この溶液を高速液体クロマトグラフで分析することで、Mn(salen)-1,3-Ph-HMMの酸化反応触媒としての活性評価を行った。
0.0109gのMn(salen)-1,3-Ph-HMMを1.5mlのエッペンドルフチューブに入れ、489μlの蒸留水、5μlの100 mMチオアニソールのメタノール溶液、5μlの100mM過酸化水素水溶液、1μlの100mMアセトフェノンのメタノール溶液を加え、室温で10分間攪拌した。ここに0.5mlのジクロロメタンを加え、室温で30秒間攪拌し静置した。次いで、ジクロロメタン層を1.6mlのサンプル瓶に分取し、ジクロロメタンを蒸発させた。ここに0.3mlのイソプロピルアルコール・ヘキサン(1:9v/v)混合溶液を加えた。この溶液を高速液体クロマトグラフで分析することで、Mn(salen)-1,3-Ph-HMMの酸化反応触媒としての活性評価を行った。
(実施例13)salen-1,3-Ph-HMMの酸化反応触媒能の評価
0.0109gのMn(salen)-1,3-Ph-HMMに代えて、0.0108 gのsalen-1,3-Ph-HMMを用いた他は実施例12と同様にして、salen-1,3-Ph-HMMの酸化反応触媒としての活性評価を行った。
0.0109gのMn(salen)-1,3-Ph-HMMに代えて、0.0108 gのsalen-1,3-Ph-HMMを用いた他は実施例12と同様にして、salen-1,3-Ph-HMMの酸化反応触媒としての活性評価を行った。
実施例12〜13で得られたチオアニソールの酸化反応の結果を表7に示す。細孔内にマンガンシッフ塩基錯体を形成させたMn(salen)-1,3-Ph-HMMは、チオアニソールの酸化反応を触媒し、生成物の収率は約11%(室温、10分、水溶液中)であった。一方、未修飾の1,3-Ph-HMM及び錯体形成前のsalen-1,3-Ph-HMMは、チオアニソールの酸化反応を触媒しなかった。これらの結果から、シッフ塩基配位子がマンガン錯体を形成したことで触媒としての機能が発現したことが確認された。また、活性点であるマンガンシッフ塩基錯体は細孔内に固定されているため、チオアニソールが疎水的な細孔内部の空間に取り込まれ、水溶液中においても触媒反応が進行したと推察される。
以上説明したように、本発明によれば、有機合成反応等に対する優れた触媒作用とガス成分等に対する優れた吸着作用を有しており、しかも耐久性に優れていて安定的に性能を持続させることが可能な有機化合物多孔体複合材料を提供することが可能となる。
したがって、このような本発明の有機化合物多孔体複合材料は、各種の触媒、ガス吸着、センサー、電子伝達、光応答、エネルギー変換等として非常に有用である。
Claims (6)
- 中心細孔直径が1〜30nmである複数の細孔を有するメソポーラス有機シリカの前記細孔の内壁面にアミノ酸が化学的に結合していることを特徴とする有機化合物多孔体複合材料。
- ポルフィリン、ポルフィリン誘導体、ポルフィリン骨格異性体、フタロシアニン、フタロシアニン誘導体、鉄−硫黄クラスター及び鉄−モリブデンクラスターからなる群から選択される少なくとも一つが前記アミノ酸を介して前記細孔の内壁面に化学的に結合していることを特徴とする請求項1に記載の有機化合物多孔体複合材料。
- 前記メソポーラス有機シリカが、炭素原子を1以上有する2価以上の有機基と、前記有機基中の同一若しくは異なる炭素原子に結合した2以上のケイ素原子と、前記ケイ素原子に結合した1以上の酸素原子とからなる骨格を有するものであり、前記メソポーラス有機シリカの細孔の内壁面に存在する前記有機基に置換基として導入されたアミノ基を介して前記アミノ酸が前記細孔の内壁面に化学的に結合していることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機化合物多孔体複合材料。
- 中心細孔直径が1〜30nmである複数の細孔を有するメソポーラス有機シリカの前記細孔の内壁面にシッフ塩基配位子が形成されていることを特徴とする有機化合物多孔体複合材料。
- 前記シッフ塩基配位子が金属錯体を形成していることを特徴とする請求項4に記載の有機化合物多孔体複合材料。
- 前記メソポーラス有機シリカが、炭素原子を1以上有する2価以上の有機基と、前記有機基中の同一若しくは異なる炭素原子に結合した2以上のケイ素原子と、前記ケイ素原子に結合した1以上の酸素原子とからなる骨格を有するものであり、前記メソポーラス有機シリカの細孔の内壁面に存在する前記有機基に置換基として導入されたアミノ基を介して前記シッフ塩基配位子が前記細孔の内壁面に形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の有機化合物多孔体複合材料。
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