JP2006128047A - 燃料電池及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】シール箇所が少ないため信頼性が高く、電極に供給される燃料及び空気等の原料の流路が簡易な構成で形成された燃料電池及びその製造方法を提供する。
【解決手段】電解質膜の表裏面それぞれに複数の燃料極と空気極とが形成された燃料電池であって、燃料極及び空気極が電解質膜を挟んで対向するように配置されてセルが形成され、電解質膜の同一面内にある燃料極及び空気極は、それぞれ電解質膜の一定の方向に同じ極が隣り合うようにして並列に配置され、燃料極は同一面内の空気極と導電性材料により電気的に接続され、電解質膜は、燃料極または空気極に供給される原料の流路が形成されるように、燃料極及び空気極が並んだ一定の方向に直交する方向に沿って折り曲げられている燃料電池である。
【選択図】図1
【解決手段】電解質膜の表裏面それぞれに複数の燃料極と空気極とが形成された燃料電池であって、燃料極及び空気極が電解質膜を挟んで対向するように配置されてセルが形成され、電解質膜の同一面内にある燃料極及び空気極は、それぞれ電解質膜の一定の方向に同じ極が隣り合うようにして並列に配置され、燃料極は同一面内の空気極と導電性材料により電気的に接続され、電解質膜は、燃料極または空気極に供給される原料の流路が形成されるように、燃料極及び空気極が並んだ一定の方向に直交する方向に沿って折り曲げられている燃料電池である。
【選択図】図1
Description
本発明は、空気等の酸化性ガスと水素等の還元性ガス(燃料ガス)等とを原料として発電する燃料電池及びその製造方法に関する。
環境問題や資源問題への対策の一つとして、酸素や空気等の酸化性ガスと、水素やメタン等の還元性ガス(燃料ガス)あるいはメタノール等の液体燃料等とを原料として電気化学反応により化学エネルギーを電気エネルギーに変換して発電する燃料電池が注目されている。
この燃料電池は、発電に使用される原料のガスや液体燃料が豊富に存在すること、また、その発電原理より排出される物質が水であること等により、クリーンなエネルギー源として様々な検討がされている。
燃料電池としてこれまで様々な構成のものが提案されているが、省スペース等の観点から平面型燃料電池が知られている。例えば、特許文献1には、電解質膜を挟んで空気極と燃料極を対峙させた複数個の単セルを、同じ極が同じ面に並ぶように平面に並べ、互いに隣接する一方の単セルの燃料極の背面と他方の単セルの空気極の背面とを導電性のZ字状接続板で電気的に接続することにより各単セルを直列接続すると共に、Z字状接続板の燃料極および空気極に対峙する部分にそれぞれ貫通孔を設け、各極の背面からZ字状接続板の貫通孔を介してそれぞれ燃料および空気を供給するように構成した平面型燃料電池が記載されている。
また、特許文献2には、電解質膜(プロトン導電体膜)の両面の各々に燃料極と空気極とを交互に設け、同一面上の燃料極と空気極とを1個ずつ接続部で電気的に直列に接続して構成した燃料電池が記載されている。
さらに、特許文献3には、燃料電池セル部を燃料極と、それに接して形成された電解質膜と、さらに電解質膜上に接して形成された空気極とからなる三層構造のシートで構成し、放熱面積を小さくして燃料電池セル部の温度を高温に保つために、その三層構造のシートを二つ折りにしてセルとする燃料電池及びその製造方法が記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載された平面型燃料電池は、各セルを接続するZ字状接続板が電解質膜を分断するように設けられているので、気密性を確保するために、直列に接続されたすべてのセルについて各セルの全周をシール材にて個別にシールする必要があり、作業効率が悪い。また、シール箇所が多いため、信頼性に欠ける。
また、特許文献2に記載された燃料電池は、電解質膜のプロトン伝導性を残す部分にマスクをして絶縁性の合成樹脂等を含浸させて絶縁部を形成する必要がある。さらに、燃料流路及び空気流路を形成するために、波板状のセパレータを使用する必要があり、工程数が増えることによるコストの増大等につながる。
さらに、特許文献3に記載された燃料電池は、直接メタノール型燃料電池であり、三層構造のシートを折り畳んだ構造の内側に形成された燃料極に液体燃料(メタノール)が毛細管現象を用いて供給されるが、燃料流路が確保されていないため、燃料がガスの場合には燃料極に安定して燃料を供給することが困難である。
本発明は、シール箇所が少ないため信頼性が高く、電極に供給される燃料及び空気等の原料の流路が簡易な構成で形成された燃料電池及びその製造方法である。
本発明は、電解質膜の表裏面それぞれに複数の燃料極と空気極とが形成された燃料電池であって、前記燃料極及び空気極が前記電解質膜を挟んで対向するように配置されてセルが形成され、前記電解質膜の同一面内にある燃料極及び空気極は、それぞれ前記電解質膜の一定の方向に同じ極が隣り合うようにして並列に配置され、前記燃料極は同一面内の空気極と導電性材料により電気的に接続され、前記電解質膜は、前記燃料極及び前記空気極に供給される原料の少なくともいずれかの流路が形成されるように、前記燃料極及び空気極が並んだ一定の方向に直交する方向に沿って折り曲げられている。
また、前記燃料電池において、前記電解質膜の両端が互いに相反する方向に折り曲げられていることが好ましい。
また、前記燃料電池において、前記電解質膜が折り曲げられることにより、前記空気極が前記燃料極よりも外側に配置されることが好ましい。
また、前記燃料電池において、前記原料の流路内に、原料供給入り口の上流から下流に対して原料の供給量が均一になるように原料導入管が設けられていることが好ましい。
また、前記燃料電池において、前記折り曲げられた部分に多孔質スペーサが挿入されて前記原料の流路が形成されていることが好ましい。
また、前記燃料電池において、前記燃料電池は、多孔質絶縁体を対峙するセル間に挿入してロール状にされていることが好ましい。
さらに、本発明は、電解質膜の表裏面それぞれに複数の燃料極と空気極とが形成された燃料電池の製造方法であって、前記燃料極及び空気極をそれぞれ前記電解質膜の同一面内で前記電解質膜の一定の方向に同じ極が隣り合うようにして並列に、かつ、前記電解質膜を挟んで対向するように配置してセルを形成する工程と、前記燃料極を同一面内の空気極と導電性材料により電気的に接続する工程と、前記電解質膜を、前記燃料極及び空気極が並んだ一定の方向に直交する方向に沿って、前記燃料極及び空気極の少なくともいずれかに供給される原料ガスの流路が形成されるように折り曲げる工程と、を含む。
本発明において、電解質膜の表裏面それぞれに燃料極及び空気極が電解質膜を挟んで対向するように配置してセルを形成し、同一面内にある燃料極及び空気極を電解質膜の一定の方向に同じ極が隣り合うようにして並列に配置し、それらを面内で電気的に接続するように導電性膜を設け、さらに原料の流路が形成されるように電解質膜を折り曲げることにより、シール箇所が少ないため信頼性が高く、電極に供給される燃料及び空気等の原料の流路が簡易な構成で形成された燃料電池及びその製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態に係る燃料電池1の構成及び製造方法を図面を参照して説明する。
図1に本発明の実施形態に係る燃料電池1の構成の一例を示す。燃料電池1は、電解質膜10、燃料極(−触媒層)12、空気極(+触媒層)14、導電性膜18、原料流路20、シール部22等により構成される。また、燃料電池1を構成する前の前駆体3の形状を図2に示す。また図2のAの方向から見た図を図3(a)及びBの方向から見た図を図3(b)に示す。
まず、燃料電池1を構成する前の前駆体3の構成について説明する。図2、図3(a)及び図3(b)に示すように、電解質膜10の表面には燃料極12x1〜12xnと空気極14y1〜14ynとが形成されている。また、電解質膜10の裏面には空気極14x1〜14xnが表面の燃料極12x1〜12xnと電解質膜10を挟んでそれぞれ対向するように配置され、セル16x1〜16xnが形成されている。また、同様に電解質膜10の裏面には燃料極12y1〜12ynが表面の空気極14y1〜14ynと電解質膜10を挟んでそれぞれ対向するように配置されセル16y1〜16ynが形成されている。なお、ここでnは自然数を表す。また、電解質膜10を挟んで対向する燃料極12及び空気極14の位置は完全に重なっていなくてもよく、セルを形成することが可能であれば多少ずれていてもよい。
また、電解質膜10の表面にある燃料極12x1〜12xnは、電解質膜10の長手方向に同じ極が隣り合うようにして一定の間隔を置いて配置され、空気極14y1〜14ynは、電解質膜10の長手方向に同じ極が隣り合うようにして一定の間隔を置いて、燃料極12x1〜12xnと一定の間隔を置いて並列に配置されている。これに伴い、電解質膜10の裏面にある燃料極12y1〜12ynは、電解質膜10の長手方向に同じ極が隣り合うようにして一定の間隔を置いて配置され、空気極14x1〜14xnは、電解質膜10の長手方向に同じ極が隣り合うようにして一定の間隔を置いて、燃料極12y1〜12ynと一定の間隔を置いて並列に配置されている。つまり、セル16x1〜16xnと、セル16y1〜16ynとは、電解質膜10の長手方向に並列に配置されている。
なお、電解質膜10の面内でのセル16の配置方法としては特に制限はないが、セル16の設置数を多くするために、セル16x1〜16xnとセル16y1〜16ynとは、図2のように電解質膜10の長手方向に一定間隔ずつずらして、好ましくは燃料極12及び空気極14の電解質膜10長手方向の長さLの1/2以下程度ずつずらして配置されることが好ましい。
また、電解質膜10の燃料極12は同一面内に並列に配置されている空気極14のうち近接する1つと導電性材料により電気的に接続されている。図2において、電解質膜10の表面では燃料極12x1と空気極14y1とが、燃料極12x2と空気極14y2とが、燃料極12x3と空気極14y3とが、燃料極12xnと空気極14ynとが、導電性膜18をそれらの上方に形成することにより電気的に接続されている。また、電解質膜10の裏面では燃料極12y2と空気極14x1とが、燃料極12y3と空気極14x2とが、燃料極12y4と空気極14x3とが、燃料極12ynと空気極14y(n−1)とが、導電性膜18をそれらの上方に形成することにより電気的に接続されている。つまり、セル16y1とセル16x1とが、さらにセル16x1とセル16y2とが順に直列に接続され、セル16y1〜セル16xnが電解質膜10を分断することなく直列に電気的に接続されていることになる。このようにして、前駆体3が形成される。
ここで、電解質膜10としては、プロトン(H+)や酸素イオン(O2-)等のイオン伝導性の高い材料であれば特に制限はなく、例えば、固体高分子電解質膜、安定化ジルコニア膜等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロスルホン酸系等の固体高分子電解質膜が用いられる。具体的には、ジャパンゴアテックス(株)のゴアセレクト(Goreselect、登録商標)、デュポン社(Du Pont社)のナフィオン(Nafion、登録商標)、旭化成(株)のアシプレックス(Aciplex、登録商標)、旭硝子(株)のフレミオン(Flemion、登録商標)等のパーフルオロスルホン酸系固体高分子電解質膜を使用することができる。電解質膜10の膜厚は例えば、10μm〜200μm、好ましくは30μm〜50μmの範囲である。
燃料極12としては、例えば、白金(Pt)等をルテニウム(Ru)等の他の金属と共に担持したカーボン等の触媒が用いられる。燃料極12の膜厚は例えば、1μm〜100μm、好ましくは1μm〜20μmの範囲である。
空気極14としては、例えば、白金(Pt)等を担持したカーボン等の触媒が用いられる。空気極14の膜厚は例えば、1μm〜100μm、好ましくは1μm〜20μmの範囲である。
燃料極12及び空気極14は、例えば、超音波分散法、沈降法、スプレー法、印刷法、転写法等により電解質膜10上に形成することができる。また必要に応じて、燃料極12及び空気極14を電解質膜10上に形成した後、加熱、圧着して、燃料極12及び空気極14と電解質膜10との接合面を強固にしてもよい。
導電性膜18としては、導電性の高い材料であれば特に制限はないが、燃料及び空気等の原料が透過し易いように多孔質導電体材料であることが好ましい。導電性の高い材料としては、例えば、金属板、金属フィルム、導電性高分子、カーボン材料等が挙げられ、カーボンクロス、ガラス状カーボン等のカーボン材料が好ましく、カーボンクロス等の多孔質カーボン材料であることがより好ましい。導電性膜18の膜厚は例えば、100μm〜1000μm、好ましくは200μm〜600μmの範囲である。
また、本実施形態に係る燃料電池1においては、電流は導電性膜18の面方向に流れていくため、導電性膜18の抵抗値が低い方が好ましい。そのため、導電性膜18を構成する導電性材料として、カーボンナノチューブを含有することが好ましい。導電性膜18として、例えば、カーボンナノチューブを混合したカーボンクロスを使用することができる。
次に、前駆体3から燃料電池1を形成する方法について説明する。図4に示すように、電解質膜10を、燃料極12及び空気極14が並んだ一定の方向(ここでは電解質膜10の長手方向)に直交する方向(ここでは電解質膜10の短手方向)に沿って折り曲げる。このとき、燃料極12に供給される燃料及び空気極14に供給される空気の少なくともいずれかの原料流路20が袋状に形成されるように電解質膜10を折り曲げるが、電解質膜10は、図4のように電解質膜10の短手方向の両端が互いに相反する方向に折り曲げられることが好ましい。図4では、電解質膜10は、燃料極12を内側に、空気極14を外側にして、電解質膜10の短手方向の両端が互いに相反する方向にS字型(または逆S字型)に折り曲げられて、燃料極12に供給される燃料の流路20が袋状に2つ形成されている。なお、空気極14を内側に、燃料極12を外側にして、電解質膜10の短手方向の両端が互いに相反する方向にS字型(または逆S字型)に折り曲げられ、空気極14に供給される空気等の流路20が袋状に形成されてもよい。空気極14は大気中で使用されることが多いこと、原料として水素ガス及び空気を使用する場合に空気より水素の拡散性が高いこと、空気極14において水が生成するため排水する必要があること等を考慮すると、燃料極12を内側に、空気極14を外側にして電解質膜10が折り曲げられることが好ましい。
電解質膜10を折り曲げた後、電解質膜10の短手方向の両端を、電解質膜10の長手方向に沿ってシール材等によりシールし、シール部22を形成する。本実施形態に係る燃料電池1は、図4に示すようにシール材等により電解質膜10の長手方向に沿って2ヶ所をシールすれば、十分に気密性を保つことができる。また、導電性膜18として、カーボンクロス等の多孔質導電体を使用する場合は、図8に示すように、導電性膜18のシール部22を横切る部分を、シール材等によりシール部23を形成することで、気密性をより確保することができる。
シール材としては、絶縁性及び気密性が高い材料であれば特に制限はないが、例えば、シリコン系ゴム、フッ素系ゴム、及び各種樹脂系接着剤等を使用することができる。
このように、前駆体3を本実施形態のように折り曲げるだけで、原料流路20を袋状に形成した、図5のようなシート状の燃料電池とすることができる。ここで、図5は図4においてCの方向から見た図である。そして、原料通路20の一方の開口部を原料導入口24とし、原料通路20に原料を供給することができる。また、反対側の一方の開口部に原料排出口26を設けることができる。
燃料極12側に供給する原料としては、水素やメタン等の還元性ガス(燃料ガス)あるいはメタノール等の液体燃料等が挙げられる。空気極14側に供給する原料としては、酸素や空気等の酸化性ガス等が挙げられる。図4のように、燃料極12が内側に空気極14が外側になるように燃料電池1を構成した場合は、原料導入口24から水素ガス等を導入し、原料通路20を通して各燃料極12に水素ガス等を供給すればよい。逆に、燃料極12が外側に空気極14が内側になるように燃料電池1を構成した場合は、原料導入口24から空気等を導入し、原料通路20を通して各空気極14に空気等を供給すればよい。
直列に接続したセル16の一端の燃料極12または空気極14(図1及び図2では、燃料極12y1)、及びもう一端の空気極14または燃料極12(図1及び図2では、空気極14xn)より外部負荷に接続する外部端子32を設ける。これにより、燃料電池1に例えば、水素ガス等の燃料を供給して空気中で運転すれば、外部端子32より電気を取り出すことができる。
例えば、燃料極12の供給する原料を水素ガス、空気極14に供給する原料を空気とした場合、燃料極12において、
2H2 → 4H++4e-
で示される反応式を経て、水素ガス(H2)から水素イオン(H+)と電子(e-)とが発生する。電子(e-)は外部端子32から外部回路を通じて空気極14に到達する。空気極14において、供給される空気中の酸素(O2)と、電解質膜10を通過した水素イオン(H+)と、外部回路を通じて空気極14に到達した電子(e-)により、
4H++O2+4e- → 2H2O
で示される反応式を経て、水が生成する。このように燃料極12及び空気極14において化学反応が起こり、電荷が発生して電池として機能することになる。そして、一連の反応において排出される成分は水であるので、クリーンな電池が構成されることになる。
2H2 → 4H++4e-
で示される反応式を経て、水素ガス(H2)から水素イオン(H+)と電子(e-)とが発生する。電子(e-)は外部端子32から外部回路を通じて空気極14に到達する。空気極14において、供給される空気中の酸素(O2)と、電解質膜10を通過した水素イオン(H+)と、外部回路を通じて空気極14に到達した電子(e-)により、
4H++O2+4e- → 2H2O
で示される反応式を経て、水が生成する。このように燃料極12及び空気極14において化学反応が起こり、電荷が発生して電池として機能することになる。そして、一連の反応において排出される成分は水であるので、クリーンな電池が構成されることになる。
なお、本実施形態において、セル16x1〜16xnと、セル16y1〜16ynとを、電解質膜10の長手方向に並列に各1列、合計2列配置した例について説明したが、図6のように、電解質膜10の長手方向に並列に各1列配置し、必要に応じて間隔を置いて、さらに並列にもう各1列、合計4列配置し、図7のようにS字状(または逆S字状)に2回折り曲げてもよい。この場合、S字状(または、逆S字状)に折り曲げた後、燃料極12及び空気極14の形成されていない部分で折り返して、さらに逆S字状(または、S字状)に折り曲げる。また、電解質膜10の長手方向に並列に各1列、合計2列配置した構造を繰り返して、S字状(または逆S字状)に3回以上折り曲げてもよい。
燃料電池1の長手方向が長いために原料通路20が長いときに原料を供給する場合、原料導入口24付近の原料濃度に比べて原料排出口26付近の原料濃度が低くなり、各電極の発電量に差が生じないようにするために、図8のように原料流路20内に原料導入管28を設けることが好ましい。例えば、原料導入管28の側面に原料噴出し口を多数設け、原料噴出し口の数を原料導入口24の上流から下流にかけて多くしたり、原料噴出し口の大きさを原料導入口24の上流から下流にかけて大きくする、原料噴出し口をオリフィスとして形状を原料導入口24の上流から下流にかけて変える等により、原料導入口24の上流から下流に対して水素ガス、空気等の原料の供給量を均一にして、各電極の発電量の差を小さくすることができる。
原料導入管28としては、水素ガス、空気等の原料に侵されないように耐食性があればよく特に制限されないが、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリウレタン、ポリプロピレン等の樹脂等の管を使用することができる。また、原料導入管28としては、燃料電池1の柔軟性を損なわないように軟質樹脂の管を使用することが好ましい。原料導入管28は、原料導入口24から原料流路20に沿って適当な長さが挿入されていればよい。原料導入管28の設置方法としては、前駆体3を折り曲げて原料通路20を形成した後に原料導入管28を挿入してもよいし、前駆体3を折り曲げて原料通路20を形成するときに原料導入管28をいっしょに巻き込んで設置してもよい。
また、原料通路20内に確実に燃料が通る空間を確保するために、図8のように原料通路20内に多孔質スペーサ30を挿入することが好ましい。多孔質スペーサ30としては、水素ガス、空気等の原料に侵されないように耐食性があればよく特に制限されないが、例えば、PTFE、ポリウレタン、ポリプロピレン等の樹脂製等の網等を用いることができる。また、多孔質スペーサ30としては、燃料電池1の柔軟性を損なわないように軟質樹脂の網を使用することが好ましい。多孔質スペーサ30の設置方法としては、前駆体3を折り曲げて原料通路20を形成した後に多孔質スペーサ30を挿入してもよいし、前駆体3を折り曲げて原料通路20を形成するときに多孔質スペーサ30をいっしょに巻き込んで設置してもよい。また、前駆体3を折り曲げて原料通路20を形成するときに原料導入管28と多孔質スペーサ30とをいっしょに巻き込んで設置してもよい。
原料導入管28及び多孔質スペーサ30は、前駆体3を折り曲げて原料通路20を形成するときに、電解質膜10上の燃料極12、空気極14及び導電性膜18が形成されていない部分に接着剤等により固定することができる。
具体的な燃料電池1の製造例は、以下の通りである。短手方向の長さが500mm〜600mmで厚さ30μm〜50μmのパーフルオロスルホン酸系固体高分子の電解質膜10の表裏面に、燃料極12及び空気極14を大きさ200mm×200mm、膜厚5μmで電解質膜10を挟んで対向するように、電解質膜10の長手方向に燃料極12同士、空気極14同士が隣り合うように各1列を並列に配置してセル16を形成する。燃料極12には、PtをRuとともにカーボンブラックに担持した触媒、空気極14には、Ptをカーボンブラックに担持した触媒をそれぞれ使用する。形成するセル16の数(上記n)は取り出す所望の電力に応じて決めればよい。また、形成するセル16の数に応じて、電解質膜10の長手方向の長さを決めればよい。次に、各セル16が電気的に直列に接続されるように、膜厚0.5mmのカーボンクロスを使用して導電性膜18を形成して、各燃料極12及び空気極14を接続し、前駆体3を作製する。次に、前駆体3を、燃料極12を内側に、空気極14を外側にして、外径4mm〜6mmのポリウレタン製の原料導入管28(複数の原料噴出し口が管側面に設けられている)、ポリウレタン製の多孔質スペーサ30を巻き込みながら、電解質膜10の短手方向の両端が互いに相反する方向にS字型に折り曲げて、シール材によりシールをして流路20を2つ形成する。直列に接続した一端の燃料極12及びもう一端の空気極14に、外部端子32を設け、燃料電池1とする。
本実施形態に係る燃料電池は、そのまま薄型のシート状の燃料電池として使用してもよいが、柔軟性があるのでその薄型シートを2回以上折り畳んだシート状の燃料電池としてもよい。また、図9に示すように、その薄型シートを巻いてロール状の燃料電池としてもよい。ロール状の燃料電池は円筒形等のカセットケース36に収納してもよい。そのカセットをさらに直列または並列に接続して使用してもよい。カセット状のケースに収納することにより取り扱いが便利になる。また、図7のようなS字状に2回以上折り畳んだシート状の燃料電池をロール状にした場合には、S字状に1回折り畳んだシート状の燃料電池をロール状にした場合に比べてロールの巻き数を少なくすることができる。
シート状の燃料電池を折り畳んで使用する場合、またはシート状の燃料電池をロール状として使用する場合には、図9のように、多孔質絶縁材34を対峙するセル16間に挿入することが好ましい。これにより、水素ガス、空気等の原料ガス等の通過スペースを確保し対峙するセル16間の短絡を防止することができる。多孔質絶縁材34は、電解質膜10の一面を覆うように設けてもよいし、導電性膜18による各接続部を覆うように設けてもよい。また、多孔質絶縁材34は、電解質膜10上の燃料極12、空気極14及び導電性膜18が形成されていない部分に接着剤等により固定してもよい。
多孔質絶縁材34としては、水素ガス、空気等の原料に侵されないように耐食性があればよく特に制限されないが、例えば、PTFE、ポリウレタン、ポリプロピレン等の樹脂製等の網等を用いることができる。また、多孔質絶縁材34としては、燃料電池1の柔軟性を損なわないように軟質樹脂の網を使用することが好ましい。
本実施形態に係る燃料電池は、構造がシンプルで小型化、軽量化、薄型化が可能なため、携帯電話、携帯用パソコン等のモバイル機器用小型電源;自動車用電源等として用いることができる。また、本実施形態に係る燃料電池を自動車用電源として用いる場合、例えば、自動車の屋根部分や床下部分等のスペースが限られている場所に設置することができる。
このように、本実施形態において、電解質膜の表裏面それぞれに燃料極及び空気極が電解質膜を挟んで対向するように配置してセルを形成し、同一面内にある燃料極及び空気極を電解質膜の一定の方向に同じ極が隣り合うようにして並列に配置し、それらを面内で電気的に接続するように導電性膜を設け、さらに原料の流路が形成されるように電解質膜を折り曲げることにより、シール箇所が少ないため信頼性が高く、電極に供給される燃料及び空気等の原料の流路が簡易な構成で形成され、小型化、軽量化、薄型化が可能な燃料電池及びその製造方法を提供することができる。
1 燃料電池、10 電解質膜、12 燃料極(−触媒層)、14 空気極(+触媒層)、16 セル、18 導電性膜、20 原料流路、22,23 シール部、24 原料導入口、26 原料排出口、28 原料導入管、30 多孔質スペーサ、32 外部端子、34 多孔質絶縁材、36 カセットケース。
Claims (7)
- 電解質膜の表裏面それぞれに複数の燃料極と空気極とが形成された燃料電池であって、
前記燃料極及び空気極が前記電解質膜を挟んで対向するように配置されてセルが形成され、
前記電解質膜の同一面内にある燃料極及び空気極は、それぞれ前記電解質膜の一定の方向に同じ極が隣り合うようにして並列に配置され、
前記燃料極は同一面内の空気極と導電性材料により電気的に接続され、
前記電解質膜は、前記燃料極及び前記空気極に供給される原料の少なくともいずれかの流路が形成されるように、前記燃料極及び空気極が並んだ一定の方向に直交する方向に沿って折り曲げられていることを特徴とする燃料電池。 - 請求項1に記載の燃料電池であって、
前記電解質膜の両端が互いに相反する方向に折り曲げられていることを特徴とする燃料電池。 - 請求項1または2に記載の燃料電池であって、
前記電解質膜が折り曲げられることにより、前記空気極が前記燃料極よりも外側に配置されることを特徴とする燃料電池。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池であって、
前記原料の流路内に、原料供給入り口の上流から下流に対して原料の供給量が均一になるように原料導入管が設けられていることを特徴とする燃料電池。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池であって、
前記折り曲げられた部分に多孔質スペーサが挿入されて前記原料の流路が形成されていることを特徴とする燃料電池。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池であって、
前記燃料電池は、多孔質絶縁体を対峙するセル間に挿入してロール状にされていることを特徴とする燃料電池。 - 電解質膜の表裏面それぞれに複数の燃料極と空気極とが形成された燃料電池の製造方法であって、
前記燃料極及び空気極をそれぞれ前記電解質膜の同一面内で前記電解質膜の一定の方向に同じ極が隣り合うようにして並列に、かつ、前記電解質膜を挟んで対向するように配置してセルを形成する工程と、
前記燃料極を同一面内の空気極と導電性材料により電気的に接続する工程と、
前記電解質膜を、前記燃料極及び空気極が並んだ一定の方向に直交する方向に沿って、前記燃料極及び空気極の少なくともいずれかに供給される原料ガスの流路が形成されるように折り曲げる工程と、
を含むことを特徴とする燃料電池の製造方法。
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2004
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