JP2006127862A - 被覆電線引取機 - Google Patents

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Abstract

【課題】 冷却水との接触による被覆電線にかかるストレスが小さくてすむようにした状態で被覆電線に対する高い冷却能力を有することができて、ストレスによる被覆電線の伸びによって樹脂被覆と芯線との密着力低下を招くことなく、被覆電線を所定温度にまで冷却することができる被覆電線引取機を提供すること。
【解決手段】 樹脂被覆されて冷却水槽に導入された後に該冷却水槽を出て巻取機に向かう途中の被覆電線1を、前後に複数回往復させて巻き付けるための前後キャプスタン4,5と、これら前後キャプスタン4,5の間に配置されて該前後キャプスタン4,5間の下側被覆電線走行路に沿って延び、冷却用の水膜流を形成するための水膜流形成用溝状体6とを備え、前後キャプスタン4,5間において被覆電線1を前記水膜流の中を走行させるように構成した被覆電線引取機。
【選択図】 図2

Description

本発明は、被覆電線製造ラインにおける冷却水槽と巻取機との間に設けられて、冷却水槽からの被覆電線を引っ張って走行させる被覆電線引取機であって、特に被覆電線の冷却機能を有する被覆電線引取機に関するものである。
図9は被覆電線製造ラインの一般的な構成を示しており、この製造ラインでは、上流側に、芯線(導体)51の供給リールを有する送出機52、伸線機53及び連続軟化機54が設けられ、この連続軟化機54の下流側に、芯線51に樹脂被覆(絶縁体)を被覆する押出機55が設けられている。そして、押出機55のさらに下流側には、樹脂被覆されて走行する高温の被覆電線56を冷却して硬化させるための冷却水槽57と、冷却水槽57からの被覆電線56を引っ張って走行させるための被覆電線引取機58が設けられ、この被覆電線引取機58を出た被覆電線56は、図示しないダンサローラを介して巻取機63のボビン64に巻き取られるようになっている。
ここで、前記の被覆電線引取機58は、冷却水槽57からの被覆電線56を引っ張って走行させるとともに、生産性向上のために被覆電線56の線速をアップした場合に冷却水槽57の冷却能力を補完して被覆電線56を所定の温度にまで冷却できるようにすべく、被覆電線56の冷却を行うように構成されている。
図10は図9における従来の被覆電線引取機の一例を示す概略構成図である。図10に示すように、この従来の被覆電線引取機58は、被覆電線56の走行ラインが内部を通過するように配置されたケーシング59内に、被覆電線56を同ケーシング59内で前後に複数回往復して巻き付けるための前後キャプスタン60,61と、前後キャプスタン60,61間を走行する被覆電線56に向けて冷却水をシャワー状態で噴射する複数個のシャワーノズル62とを備えている。なお、本明細書では、被覆電線製造ラインにおける被覆電線の走行方向下流側(図1や図10における右側)を前側、同方向上流側(図1や図10おける左側)を後側と定めている。
一方、特開平6−338231号公報には、冷却水槽において冷却された被覆電線の樹脂被覆層をアキュームレータに巻き付けた状態で冷却するようにした電線冷却装置が開示されている。図11は従来技術に係る電線冷却装置の構成を示す概略構成図である。
この電線冷却装置は、図11に示すように、冷却水槽と巻取機との間に配置され(詳しくは冷却水槽下流の引取機と巻取機との間に配置され)、被覆電線71の引取り速度と巻取機の巻取り速度との速度差を吸収する前後ターンシーブ72A,72Bからなるアキュームレータ72と、冷却水を貯留してアキュームレータ72の下側に配置され、アキュームレータ72に蓄線された被覆電線71を冷却水中を走行させることで冷却する冷却トレイ73と、前ターンシーブ72Aを矢印74方向へ移動させて被覆電線71の速度変動を吸収するようにした図示しない張力付加機構とを備えている。
このように、アキュームレータ72の下側に冷却トレイ73を配置し、この上側が開放した箱状をなす冷却トレイ73内の冷却水中に、前後ターンシーブ72A,72Bの一部が沈むとともに、前後ターンシーブ72A,72B間における下側被覆電線走行路を走行する被覆電線71が深く沈むようにして、アキュームレータ72に蓄線された被覆電線71の冷却を行うようにしている。
特開平10−87164号公報(段落[0027]、図1) 特開平6−338231号公報(段落[0011]、図1)
しかし前述した、シャワーノズル62を備えた被覆電線引取機58では、前後キャプスタン60,61間を走行する被覆電線56に向けて冷却水をシャワー状態で噴射するようにしたものであるから、冷却水中を走行させるものに比べて冷却能力が低く、線速をアップした場合、被覆電線56を所定の温度にまで十分冷却できずに、下流の巻取機による巻取りの際にその樹脂被覆の一部がつぶれて形状変形が生じることがある。
そこで、被覆電線引取機において被覆電線を冷却するために、シャワーノズル62に代えて前述した電線冷却装置における冷却トレイ73を、被覆電線引取機に適用することが考えられる。
ところが、前記冷却トレイを備えた被覆電線引取機の場合は、上側が開放した箱状をなす冷却トレイ内の冷却水中に、前後の各ターンシーブ72A,72B(以後、キャプスタンという)の一部が沈むとともに、これらの前後キャプスタン間における下側被覆電線走行路を走行する被覆電線が冷却水中をある深さをもって走行することとなる。このため、冷却水との接触によって被覆電線にかかる抵抗に抗して被覆電線を引っ張って走行させる際の被覆電線にかかるストレス(引張りストレス)、すなわち、冷却水との接触に起因して被覆電線にかかるストレス(引張りストレス)が大きなものとなる。また、冷却水中に前後の各キャプスタンの一部が沈む状態となることから、冷却水がキャプスタンの回転を妨げ、これに抗して被覆電線を引っ張って走行させようとするため、被覆電線にかかるストレスがますます増大することとなる。
このため、被覆電線引取機において、シャワーノズルに代えて冷却トレイを備えるようにしたものの場合、シャワーノズルを備えたものに比べて高い冷却能力が得られるものの、冷却水との接触に起因して生じる被覆電線にかかるストレスが大きいため、このストレスによる被覆電線の伸びによって樹脂被覆と芯線との密着力が低下することが考えられる。
そこで本発明の課題は、被覆電線製造ラインにおける冷却水槽と巻取機との間に設けられて、冷却水槽からの被覆電線を引っ張って走行させるとともに、冷却水による被覆電線の冷却をも行う被覆電線引取機において、冷却水との接触に起因して被覆電線にかかるストレスが小さくてすむようにした状態で被覆電線に対する高い冷却能力を有することができて、ストレスによる被覆電線の伸びによって樹脂被覆と芯線との密着力低下を招くことなく、被覆電線を所定温度にまで冷却することができる被覆電線引取機を提供することにある。
前記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
請求項1の発明は、樹脂被覆されて冷却水槽に導入された後に該冷却水槽を出て巻取機に向かう途中の被覆電線を、前後に複数回往復させて巻き付けるための前後キャプスタンと、これら前後キャプスタンの間に配置されて該前後キャプスタン間の下側被覆電線走行路に沿って延び、冷却用の水膜流を形成するための水膜流形成用溝状体とを備え、前記前後キャプスタン間において前記被覆電線を前記水膜流の中を走行させるように構成したことを特徴とする被覆電線引取機である。
請求項2の発明は、請求項1記載の被覆電線引取機において、前記水膜流形成用溝状体における被覆電線入側から該水膜流形成用溝状体に冷却水を流入させる給水管を備えていることを特徴とするものである。
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の被覆電線引取機において、被覆電線製造開始時に一時的に前記水膜流形成用溝状体を被覆電線冷却時通常位置より下降させるための溝状体昇降装置を備えていることを特徴とするものである。
請求項1の被覆電線引取機は、前キャプスタン4と後キャプスタン5からなる前後キャプスタン5の間に配置されて該前後キャプスタン5間の下側被覆電線走行路に沿って延び、冷却用の水膜流を形成するための水膜流形成用溝状体を備え、前後キャプスタン5間において被覆電線を前記水膜流の中を走行させるように構成されている。したがって、被覆電線を水膜流という低水位の冷却水流の中を走行させることにより、冷却水との接触に起因して被覆電線にかかるストレスが小さくてすむようにした状態で被覆電線に対する高い冷却能力を有することができて、ストレスによる被覆電線の伸びによって樹脂被覆と芯線との密着力低下を招くことなく、被覆電線を所定温度にまで冷却することができる。
請求項2の被覆電線引取機は、給水管により、水膜流形成用溝状体における被覆電線入側から該水膜流形成用溝状体に冷却水を流入させるように構成されている。したがって、走行する被覆電線によって冷却水が運ばれていくようになるので、下側被覆電線走行路の被覆電線全体にわたって冷却水がまわり易くて、被覆電線に対する高い冷却能力を発揮でき、また、被覆電線走行方向と同一方向に水膜流が流れることで、被覆電線にかかるストレスがより小さくてすむ。
請求項3の被覆電線引取機は、被覆電線製造開始時に一時的に水膜流形成用溝状体を被覆電線冷却時通常位置より下降させるための溝状体昇降装置を備えている。したがって、被覆電線製造開始時に、前後キャプスタン5間に芯線のみの部分と樹脂被覆された被覆電線部分とが同時に存在することで線径の違いによる走行速度差を生じて、前後キャプスタン5間において線たるみが発生しても、溝状体昇降装置によって水膜流形成用溝状体を冷却時通常位置より下方へ下げておくことにより、前後キャプスタン5間を走行している線と水膜流形成用溝状体の表側面との干渉を回避でき、その結果、前後キャプスタン5からの線はずれを防止することができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の一実施形態による被覆電線引取機の概略図であって、その(a)は平面図、その(b)は側面断面図である。図2は図1に示す被覆電線引取機の要部斜視図である。
図1及び図2に示すように、本実施形態の被覆電線引取機は、冷却水槽を出て巻取機に向かう途中の被覆電線1の走行路が内部を通過するように配置されたケーシング3を備え、このケーシング3内に、前後一対のキャプスタン4,5と、被覆電線1を水膜流の中を走行させて冷却するための水膜流形成用溝状体6と、この水膜流形成用溝状体6に冷却水を流入させるための給水管10と、水膜流形成用溝状体6を支持するとともに、水膜流形成用溝状体6の昇降を行う溝状体昇降装置11とが設けられている。
ケーシング3は、被覆電線1の走行方向(図1の左右方向)に長尺で、上方が開口した箱状に形成されており、蓋部材が開閉可能に取り付けられるようになっている。前後キャプスタン4,5は、被覆電線1の走行方向に直交する横軸の回りに回転自在でかつ片持ち状に支持されており、両キャプスタン4,5のうち、前キャプスタン4(図1の右側)は、ケーシング3の外側のモータ(図示省略)によって回転駆動される駆動輪として機能し、後キャプスタン5(図1の左側)は回転駆動されない従動輪として機能する。これにより、冷却水槽からのケーシング3内に入った被覆電線1は、まず、前キャプスタン4に上から巻き付いて後方へ戻り、その後、後キャプスタン5に下から巻き付いて再度前方へ送られることで前後キャプスタン4,5間を往復するようになっていて、この往復を何回か繰り返したあとケーシング3の被覆電線走行方向で下流側へ送り出されるようになっている。
水膜流形成用溝状体6は、前後キャプスタン4,5の間に配置されており、前後キャプスタン4,5間の下側被覆電線走行路に沿って延びるこの実施形態では断面矩形形状溝6aを有している。より詳しくは、水膜流形成用溝状体6は、下側被覆電線走行路に沿って延びる底面と、この底面の下側被覆電線走行路に沿う両側にそれぞれ設けられた左側面,右側面とからなり(図3参照)、幅方向(被覆電線1の走行方向に直交する方向)には水膜流の流出を阻止する壁面がある一方、被覆電線入側端と出側端とは完全に開放されている。
この水膜流形成用溝状体6の被覆電線入側位置の直上方には、間隔をあけて設けられた複数個の噴射ノズル10aを有して水膜流形成用溝状体6の幅方向に延びる給水管10が設けられている。給水管10の噴射ノズル10aによって冷却水がシャワー状に噴射されて、水膜流形成用溝状体6の被覆電線入側から被覆電線出側にわたって低水位の水膜流が形成されるようになっている。なお、ケーシング3の底部外側には、水膜流形成用溝状体6から落下した冷却水を返送し循環させるための図示しないドレン容器やドレン配管などが設けられている。
このように、本実施形態の被覆電線引取機は、従来とは違って水膜流形成用溝状体6を備えているので、図4に示すように、前後キャプスタン4,5間の下側被覆電線走行路を走行する被覆電線1を水膜流2という低水位(被覆電線1の外径の1〜2倍程度の深さ水位)の冷却水流の中を走行させることにより、冷却水との接触に起因して被覆電線1にかかるストレスが小さくてすみ、また、従来のシャワー冷却水によるものに比べて被覆電線1と冷却水との接触面積や時間が増加することで被覆電線1に対する高い冷却能力を有することができる。よって、ストレスによる被覆電線の伸びによって樹脂被覆と芯線との密着力低下を招くことなく、被覆電線1を所定温度にまで冷却することができる。
また、この実施形態の被覆電線引取機は、水膜流形成用溝状体6に冷却水を流入させる給水管10を、水膜流形成用溝状体6における被覆電線入側に設けている。したがって、走行する被覆電線1によって冷却水が運ばれていくようになるので、下側被覆電線走行路の被覆電線1全体にわたって冷却水がまわり易くて、被覆電線1に対する高い冷却能力を発揮でき、また、被覆電線走行方向と同一方向に水膜流2が流れることで、被覆電線1にかかるストレスがより小さくてすむ。
次に、水膜流形成用溝状体6の昇降を行う溝状体昇降装置11について説明する。図5は本発明に係る溝状体昇降装置を説明するための図である。
被覆電線引取機においては、被覆電線の製造にあたり、最初に芯線(銅線)が前後キャプスタン4,5に巻きつけられている。そして、押出機によって樹脂被覆が開始されると、前後キャプスタン4,5間に芯線のみの部分と樹脂被覆された被覆電線部分とが同時に存在することとなる。このとき、芯線と被覆された電線との線径の違いによる走行速度差を生じて、被覆電線製造開始時に、図5に実線で示すように、前後キャプスタン4,5間において線たるみが発生することがある。
本実施形態による被覆電線引取機では、被覆電線製造開始時に、溝状体昇降装置11によって水膜流形成用溝状体6を冷却時通常位置(図5に想像線で示す)より下方へ下げておくようにしている。これにより、被覆電線製造開始時に、前後キャプスタン4,5間において線たるみが発生しても、前後キャプスタン4,5間を走行している線と水膜流形成用溝状体6の表側面との干渉を回避して、干渉によって線たるみが前後キャプスタン4,5に伝達することを回避でき、その結果、前後キャプスタン4,5からの線はずれを防止することができる。開始から所定時間経過して、前述の同時存在状態が解消されると、溝状体昇降装置11によって水膜流形成用溝状体6が冷却時通常位置にまで戻されるようになっている。なお、溝状体昇降装置11は、例えばエアシリンダなどによって構成することができる。
図6は本発明に係る水膜流形成用溝状体の別の例を示す斜視図、図7は本発明に係る水膜流形成用溝状体の別の例を示す断面図、図8は本発明に係る水膜流形成用溝状体の別の例を示す断面図である。
図6に示す水膜流形成用溝状体7は、図3に示す水膜流形成用溝状体6との相違点として、被覆電線入側端と出側端の各壁面を下方へ折り曲げた構造としており、これにより強度アップを図るようにしている。図7に示す水膜流形成用溝状体8は、同図に示すように、下側被覆電線走行路の各被覆電線走行路それぞれに沿って延びる本例では3本の断面半円形形状溝8aを有している。また、図8に示す水膜流形成用溝状体9は、同図に示すように、下側被覆電線走行路の各被覆電線走行路それぞれに沿って延びる本例では3本の断面矩形形状溝9aを有している。このように、水膜流を形成するための水膜流形成用溝状体として、図7及び図8に示すように、下側被覆電線走行路の各被覆電線走行路それぞれに沿って延びる溝8a,9aを有する構造の水膜流形成用溝状体8,9としてもよい。
本発明の一実施形態による被覆電線引取機の概略図であって、その(a)は平面図、その(b)は側面断面図である。 図1に示す被覆電線引取機の要部斜視図である。 図1における水膜流形成用溝状体を示す斜視図である。 図1における水膜流形成用溝状体を説明するための断面図である。 本発明に係る溝状体昇降装置を説明するための図である。 本発明に係る水膜流形成用溝状体の別の例を示す斜視図である。 本発明に係る水膜流形成用溝状体の別の例を示す断面図である。 本発明に係る水膜流形成用溝状体の別の例を示す断面図である。 被覆電線製造ラインの一般的な構成を示す図である。 図9における従来の被覆電線引取機の一例を示す概略構成図である。 従来技術に係る電線冷却装置の構成を示す概略構成図である。
符号の説明
1…被覆電線
2…水膜流
3…ケーシング
4…前キャプスタン4
5…後キャプスタン5
6…水膜流形成用溝状体
6a…断面矩形形状溝
7…水膜流形成用溝状体
8…水膜流形成用溝状体
8a…断面半円形形状溝
9…水膜流形成用溝状体
9a…断面矩形形状溝
10…給水管
10a…噴射ノズル
11…溝状体昇降装置

Claims (3)

  1. 樹脂被覆されて冷却水槽に導入された後に該冷却水槽を出て巻取機に向かう途中の被覆電線を、前後に複数回往復させて巻き付けるための前後キャプスタンと、これら前後キャプスタンの間に配置されて該前後キャプスタン間の下側被覆電線走行路に沿って延び、冷却用の水膜流を形成するための水膜流形成用溝状体とを備え、前記前後キャプスタン間において前記被覆電線を前記水膜流の中を走行させるように構成したことを特徴とする被覆電線引取機。
  2. 前記水膜流形成用溝状体における被覆電線入側から該水膜流形成用溝状体に冷却水を流入させる給水管を備えていることを特徴とする請求項1記載の被覆電線引取機。
  3. 被覆電線製造開始時に一時的に前記水膜流形成用溝状体を被覆電線冷却時通常位置より下降させるための溝状体昇降装置を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の被覆電線引取機。
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