JP2006127795A - 燃料電池システムの停止保管方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料電池のカーボン酸化劣化を効率良く抑制する燃料電池システムの停止保管方法を提供する。
【解決手段】電解質膜の両側に燃料極及び酸化剤極を配置し、燃料極及び酸化剤極に隣接してガス拡散層をそれぞれ設けてなる膜電極複合体を含む単位燃料電池と、単位燃料電池の起電力を測定する手段とを有する燃料電池システムの停止保管方法であって、燃料電池システムを停止する際、単位燃料電池の起電力を測定し、単位燃料電池の起電力が酸化剤極が酸化する範囲に含まれるか否かを判断し(S02)、単位燃料電池の起電力が酸化剤極が酸化する範囲に含まれる場合に、単位燃料電池から電流を取り出し(S03)、単位燃料電池の起電力が酸化剤極が酸化する範囲を下回った後に、単位燃料電池からの電流の取り出しを停止する(S05)。
【選択図】図2

Description

本発明は燃料電池システムの停止保管方法に関し、特に、燃料電池のカーボン酸化劣化を抑制する燃料電池システムの停止保管方法に関する。
燃料電池システムは、天然ガス等の燃料を改質して得られる水素と空気中の酸素とを電気化学的に反応させて直接発電する発電システムであり、燃料の持つ化学エネルギーを有効に利用することが出来、環境にもやさしい特性を有しているため、実用化に向けて技術開発が本格化している。
燃料電池の運転停止直後には燃料極に水素ガスが残留することが知られている。この状態のまま放置すると、外部から空気が混入して水素ガスと酸素ガスとが混在する。水素ガスと酸素ガスとが混在すると、空気極側の触媒が劣化してしまう。
従来から、システムの停止保管中における燃料電池内のガス濃度を制御する技術が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。特許文献1では、燃料極のガス排出口からガスを吸引するガス吸引装置を備える燃料電池システムが開示され、燃料電池内のガス濃度を検知して、このガス濃度に基づいて発電のタイミングやガス排出を制御することにより、水素ガスと酸素ガスとの混在を防ぎ、触媒の劣化を防止している。また、特許文献2では、燃料電池システムの停止保管中には、4%以下の水素ガスを入れたままの状態で保持する技術が開示されている。
特開2003−109630号公報 米国特許出願公開第2002/0182456号明細書
しかし、特許文献1に記載された燃料電池システムでは、所定の濃度に達したら次のステートに移行するというだけで、その濃度を選択した理由が空気極側の触媒の劣化に起因する旨は記されていない。
また、特許文献2に記載された燃料電池システムでは、安全面から水素ガスを4%以下に定義してあるだけで、空気極側の触媒の劣化に影響を及ぼす濃度まで言及されていない。
本発明の第1の特徴は、電解質膜の両側に燃料極及び酸化剤極を配置し、燃料極及び酸化剤極に隣接してガス拡散層をそれぞれ設けてなる膜電極複合体を含む単位燃料電池と、単位燃料電池の起電力を測定する手段とを有する燃料電池システムの停止保管方法であって、燃料電池システムを停止する際、単位燃料電池の起電力を測定し、単位燃料電池の起電力が酸化剤極が酸化する範囲に含まれるか否かを判断し、単位燃料電池の起電力が酸化剤極が酸化する範囲に含まれる場合に、単位燃料電池から電流を取り出し、単位燃料電池の起電力が酸化剤極が酸化する範囲を下回った後に、単位燃料電池からの電流の取り出しを停止することを要旨とする。
本発明の第2の特徴は、第1の特徴に係わる単位燃料電池と、単位燃料電池の起電力を測定する手段とを有する燃料電池システムの停止保管方法であって、燃料電池システムを停止する際、単位燃料電池の起電力を測定し、単位燃料電池の起電力が酸化剤極が酸化する範囲よりも高いか否かを判断し、単位燃料電池の起電力が酸化剤極が酸化する範囲よりも高い場合に、単位燃料電池は再発電を待機することを要旨とする。
本発明の第3の特徴は、第1の特徴に係わる単位燃料電池と、燃料極内のガス濃度を検出する手段とを有する燃料電池システムの停止保管方法であって、燃料電池システムを停止する際、燃料極内における酸素に対する水素の濃度比を測定し、酸素に対する水素の濃度比が酸化剤極が酸化する範囲に含まれるか否かを判断し、酸素に対する水素の濃度比が酸化剤極が酸化する範囲に含まれる場合に、単位燃料電池から電流を取り出し、酸素に対する水素の濃度比が酸化剤極が酸化する範囲を下回った後に、単位燃料電池からの電流の取り出しを停止することを要旨とする。
本発明の第4の特徴は、第1の特徴に係わる単位燃料電池と、燃料極内のガス濃度を検出する手段とを有する燃料電池システムの停止保管方法であって、燃料電池システムを停止する際、燃料極内における酸素に対する水素の濃度比を測定し、酸素に対する水素の濃度比が酸化剤極が酸化する範囲よりも高いか否かを判断し、酸素に対する水素の濃度比が酸化剤極が酸化する範囲よりも高い場合に、単位燃料電池は再発電を待機することを要旨とする。
本発明の第5の特徴は、上記1から4の特徴に係わる燃料電池システムの停止保管方法であって、燃料電池システムを停止する際、酸化する範囲か否かの判定を行うための起電力測定またはガス濃度測定を、単位燃料電池から電流は取り出されていない状況において実施することを要旨とする。
本発明によれば、燃料極内に酸素と水素が混在する時の起電力又は酸素に対する水素の濃度比に基づいて、単位燃料電池から電流を取り出し、又は単位燃料電池が再発電を待機することにより、燃料電池システムの停止保管中における、燃料電池とりわけ酸化剤極のカーボン酸化劣化を効率良く抑制する燃料電池システムの停止保管方法を提供することが出来る。
以下図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図面の記載において同一あるいは類似の部分には同一あるいは類似な符号を付している。
(第1の実施の形態)
[構成]
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係わる燃料電池システムは、燃料ガスとしての水素ガスと酸化剤ガスとしての空気を電気化学的に反応させて発電を行う燃料電池1と、燃料電池1へ供給される水素ガスを貯蔵する水素ボンベ9と、水素ボンベ9と燃料電池1の水素導入口とを繋ぐ水素供給ライン4と、燃料電池1の水素排出口に接続された水素排出ライン5と、水素排出ライン5と水素供給ライン4とを接続する水素循環ライン10と、水素循環ライン10が水素供給ライン4と交わる箇所に配置されたイジェクタ30と、空気を圧縮して燃料電池1の空気導入口へ供給するコンプレッサ8と、コンプレッサ8と燃料電池1の空気導入口とを繋ぐ空気供給ライン6と、燃料電池1の空気排出口に接続された空気排出ライン7と、水素ボンベ9の近傍の水素供給ライン4上に配置された第1のバルブ3aと、水素循環ライン10との接続点より下流の水素排出ライン5上に配置された第2のバルブ3bと、燃料電池1の両端に接続された電圧センサ31と、燃料電池1の両端に直列に接続されたスイッチ24及び固定抵抗34と、コンプレッサ8、第1及び第2のバルブ3a、3b及びスイッチ24の動作を制御する制御ユニット12とを有する。
燃料電池1は、単位燃料電池(以後、「単位セル」という)の並設積層構造を有する。単位セルは、電解質膜の両側に燃料極(水素極)及び酸化剤極(空気極)を配置し、水素極及び空気極に隣接してガス拡散層をそれぞれ設けてなる膜電極複合体を含む。
水素ボンベ9から導出される水素ガスは、水素供給ライン4を介して燃料電池1へ供給される。このときの水素ガスの圧力は第1のバルブ3aにより調整され、イジェクタ30を介して水素循環ライン10からの排水素ガスと混合される。燃料電池1から排出された水素ガスは、水素循環ライン10を介して水素供給ライン4に戻されるか、又は水素排出ライン5を介して排出される。イジェクタ30は、燃料電池1の水素排出口から排出された水素ガスを水素循環ライン10を介して水素供給ライン4へ循環させる。
燃料電池システムの通常発電時や停止時、第2のバルブ3bは閉じている。水素供給ライン4や水素循環ライン10に残留する水素や空気極側からクロスオーバーしてきた窒素を排出する時に第2のバルブ3bを開く。一方、コンプレッサ8から供給される空気は、空気供給ライン6を介して燃料電池1の空気極系に供給され、空気排出ライン7より排出される。制御ユニット12は、電圧センサ31からの燃料電池1の電圧測定値(E2−E1)信号を受信し、第1のバルブ3a及び第2のバルブ3bの開閉、コンプレッサ8の回転数及びスイッチ24のオン/オフを制御する。
なお、図1には、燃料電池1の両端にスイッチ24と直列に、固定抵抗34を接続した場合について示すが、本発明はこれに限定されない。固定抵抗34の代わりに、例えば、コンデンサ(キャパシタ)、二次電池、電子制御負荷装置、熱発生装置(ヒータ)、他の燃料電池(キャパシタとして作用)など、如何なる形態の電力を消費する手段を用いても構わない。
[制御方法]
図2を参照して、図1の燃料電池システムを停止保管する際の制御方法を説明する。
なお、第1の実施の形態に関わらず、本発明のおいての停止保管とは、アイドル停止時などのような一時的な停止をも含んでいる。すなわち本発明のおいての停止保管方法は、一時停止方法をも含んだものである。
図2に示す停止保管方法は、とりわけ、燃料電池自動車でコンビニエンスストアなどにおいて短時間の停車をする際に、一時的な停止をする場合に有効である。
(イ)先ず、S01段階において、燃料電池1へ水素及び空気の供給を停止する。具体的には、制御ユニット12が、コンプレッサ8の運転を停止し、第2のバルブ3aを閉じる。
(ロ)S02段階において、電圧センサ31を用いて燃料電池1全体の発電電圧(E2−E1)を検知し、合計単位セル数で割った単位セルの平均発電電圧を推定し、平均単位セル電圧が0.3V/cell以上0.9V/cell以下となることを監視する。平均単位セル電圧が0.3V/cell以上0.9V/cell以下の範囲に入る場合(S02段階においてYES)S03段階に進む。このように、燃料電池システムを停止する際、水素極側に水素と酸素が混在する状況において、燃料電池1の起電力を測定し、起電力が空気極が酸化する範囲(0.3V/cell以上0.9V/cell以下の範囲)に含まれるか否かを判断する。平均単位セル電圧が0.3V/cell以上0.9V/cell以下の範囲に入る場合、燃料電池1の水素極には水素と空気の混合状態(クロスオーバー現象を含む)となっている。
(ハ)S03段階において、制御ユニット12は、スイッチ24を接続してつまりオン状態とし、燃料電池1から電流を取り出す。固定抵抗34に電流が流れ、水素極側の水素及び微量の酸素、並びに空気極側の酸素が消費され、燃料電池1の電圧は低下する。
(ニ)所定の時間後、S04段階において、電圧センサ31を用いて燃料電池1の一部における単位セルの発電電圧が、1単位セルあたり0.3V未満となることを監視する。1単位セルあたり0.3V未満である場合(S04段階においてYES)S05段階に進む。
(ホ)S05段階において、制御ユニット12は、スイッチ24を非接続としてつまりオフ状態として、固定抵抗34による燃料電池1からの電流の取り出しを停止する。固定抵抗34に電流が流れなくなり、燃料電池1内に水素が一部残存する。なお、スイッチ24を非接続とした後に、燃料電池1の起電力が再び上昇する可能性があるが、この場合、S01段階に戻り、S01〜S05段階を繰り返し実施しても構わない。
[実験例]
次に、図2の制御方法において、燃料電池1の起電力及び酸素に対する水素の濃度比の範囲を定量化するに当たり、発明者らが行った実験のうちの一例を示す。
図3に示すように、実験例に係わる燃料電池システムは、燃料電池1と、燃料電池1へ空気を供給する空気供給ライン6と、燃料電池1から空気が排出される空気排出ライン7と、燃料電池1へ水素ガス及び空気の混合気を供給する水素供給ライン4と、燃料電池1から水素ガスが排出される水素排出ライン5と、空気供給ライン6を流れる空気の流量を制御する空気マスフローコントローラ15aと、水素供給ライン4を流れる水素ガスの流量を制御する水素マスフローコントローラ16と、水素供給ライン4を流れる空気の流量を制御する空気マスフローコントローラ15bと、水素ガスと空気を混合して水素供給ライン4へ供給する混合器19と、空気供給ライン6上に配置された空気側加湿器17と、水素供給ライン4上に配置された水素側加湿器18と、燃料電池1の水素導入口近傍の水素供給ライン4に分析ポート23aを介して接続された水素側質量分析器21と、燃料電池1の空気排出口近傍の空気排出ライン7に分析ポート23bを介して接続された空気側質量分析器20と、燃料電池1の空気極側の温度を測定する熱電対22とを備える。
燃料電池1は、電解質膜25及び電解質膜25の両側に配置された水素極28及び空気極26を備える膜電極複合体と、膜電極複合体を挟持する水素側セパレータ29並びに空気側セパレータ27とを備える。水素供給ライン4及び水素排出ライン5は水素側セパレータ29に接続され、空気供給ライン6及び空気排出ライン7は空気側セパレータ27に接続されている。
燃料ガス系において、水素ガス及び空気は、それぞれマスフローコントローラ16、15bを介して混合器19で混合された後、水素供給ライン4に供給され、水素側加湿器18を通って燃料電池1の水素側セパレータ29に供給される。水素側質量分析器21は、燃料電池1の水素導入口におけるガス組成を測定することができる。一方、酸化剤ガス系において、空気は、空気マスフローコントローラ15aを介して空気供給ライン6に供給され、空気側加湿器17を通って燃料電池1の空気側セパレータ27に供給される。空気側質量分析器20は、燃料電池1の空気排出口におけるガス組成を測定することができる。
図3に示す実験装置を用いて、水素極側並びに空気極側に一定の空気を導入しながら、水素極側に水素マスフローコントローラ16で流量が制御された水素ガスを徐々に加えていき、その時の燃料電池1の発電電圧の変化並びに燃料電池1の空気排出口から排出される二酸化炭素の量を空気側質量分析器20を用いて測定した。水素側セパレータ29に供給される燃料ガスにおける水素と酸素の混合比は、水素マスフローコントローラ16及び空気マスフローコントローラ15bに表示された流量比に加え、水素側質量分析器21による分析結果を合わせて確認した。なお、空気側セパレータ27の中に挿入された熱電対22を用いて燃料電池1の温度を任意に制御する。
図4は、図3の熱電対22による燃料電池1の制御温度を70℃に設定した場合の代表的な実験結果を示す。時間経過に対し、水素濃度を零から徐々に増していったところ、酸素に対する水素の濃度比(H2/O2)が約9.5%となってから後に、単位セルの発電電圧が200mV程度まで上昇した。その後、酸素に対する水素の濃度比(H2/O2)が70%未満の段階までは、単位セルの発電電圧は200mVから緩やかに上昇するが、空気極からの二酸化炭素(CO2)排出は検出されなかった。ところが、濃度比(H2/O2)が70%以上となったところで、発電電圧は300mVから急激に上昇し750mV付近まで到達した。同時に、濃度比(H2/O2)が70%以上となったところで空気極から急激に二酸化炭素(CO2)が排出され始め、そのまま排出され続けた。濃度比(H2/O2)が増すにつれて発電電圧は緩やかに上昇し、濃度比(H2/O2)が400%に到達した時点で、発電電圧は約900mVであった。また、濃度比(H2/O2)が400%に到達した時点で、二酸化炭素の排出割合は急激に低減して検出限界付近にまで下がった。この後、水素極側の空気の供給を停止して(O2濃度=0%)、濃度比(H2/O2)を∞(無限大)としたところ、二酸化炭素の検出割合はほぼ検出限界付近に落ち着いた。
図4に示す実験結果は、酸素に対する水素の濃度比(H2/O2)を低い方から高い方に推移させた時の結果であるが、逆に低い方から高い方に推移させた時にも上記の濃度比(H2/O2)範囲及び発電電圧範囲にほぼ収まることを発明者らは実験的に確認している。また、燃料電池1の温度等が何れの条件においても、図4の実験結果は再現性を有することも確認している。
更に、単位セルの発電電圧が酸素に対する水素の濃度比(H2/O2)に応じておよそ2段階に変化することは、実験のみならずシミュレーションによっても確認されており、発明者らは図4に示す実験結果と近いシミュレーション結果を得ている。単位セルの発電電圧は、主に水素並びに酸素の分圧、温度等のパラメータにより、Butler-Volmerの式により決定される。
また、二酸化炭素が空気極の空気排出口から排出される理論は、米国特許出願公開2002/0076582号公報に示されている通りであり、水素と酸素の共存による電解質電位の変化に起因する酸化剤電位の上昇である。
発明者らは図4に示す実験例を燃料電池の温度を40℃から90℃まで10℃間隔でそれぞれ複数回実施した。図5は、このときの空気極からの二酸化炭素排出割合に関する温度依存性の結果を示す。縦軸は二酸化炭素排出割合の対数値を示し、縦軸は空気側セパレータ27の温度(絶対温度)の逆数を示す。二酸化炭素排出量の対数値は、燃料電池1に設けた熱電対22の温度の逆数に対して一次関数となることがわかった。これは、一般に知られる反応速度と温度に関連するアレニウスの理論式に一致する傾向にある。従って、温度が上昇するに従い、二酸化炭素排出量は指数関数的に上昇するといえる。
実験例では、触媒担持体として使用したカーボンの腐食に着目して測定を行ったが、他の担持体(黒鉛化カーボン、金属、シリコンカーバイト等)や金属触媒(白金、コバルト、イリジウム、ニッケル、ルテニウム、およびそれらの合金等)そのものに関しても、一般に電位が上昇すると酸化劣化する傾向にあることが知られている。実験例で用いたカーボンは、上記の他の担持体や金属触媒に比べて比較的低い電位で酸化されやすいため、実験例の実験結果で得られた所定範囲を制御に反映させれば、空気極としての酸化劣化は大抵抑制することができる。
[作用]
以上の実験結果に基づく図2に示す燃料電池システムの停止保管方法が奏する作用について説明する。燃料電池1の運転停止直後には、燃料電池1の水素極28側水素極に水素ガスが残留することが知られている。この状態のまま放置すると、水素極28と空気極26のガスが電解質膜25を介して混ざるといったクロスリーク現象も含め、外部から空気が混入して水素ガスと酸素ガスとが混在する。
空気中の酸素に対する水素の濃度比(H2/O2)が「所定の濃度比範囲」に入る場合、水素極側において水素リッチな領域における電解質電位に対して酸素リッチな領域における電解質電位が低くなるため、酸素リッチな領域の方が水素リッチな領域に比べて電解質電位に対する酸化剤極の電位が高くなる。そのため、酸素リッチな領域における空気極(カーボン担体や白金など)は酸化腐食する。上記の実験例では、質量分析器によりカーボン担体の腐食に関して測定したが、高電位になることからカーボン担体に限らず白金など金属触媒の酸化劣化も発生する。
そこで、新たに「所定の濃度範囲」を避ける制御を行うことにより、上記のような空気極の酸化腐食を抑制することができる。また、実験結果が示す通り、酸素に対する水素の濃度比(H2/O2)が70%以上400%以下のとき、空気極の酸化劣化が加速される。したがって、「所定の濃度範囲」として酸素に対する水素の濃度比(H2/O2)が70%以上400%以下の範囲を避ける制御を行うことで空気極の酸化劣化を抑制することができる。
図2に示す燃料電池システムの停止保管方法では、空気中の酸素に対する水素の濃度比(H2/O2)が「所定の濃度比範囲」に入る場合、水素と酸素の濃度比により燃料電池1の起電力が変化するので、その起電力を判断手段とすることにより、ガス濃度検出手段を必要とせず、簡素なシステムでガス置換等の制御をすることができる。
また、図4の実験結果が示す通り、単位セルあたりの起電力が0.3V以上0.9V以下の場合、水素極近傍において水素と酸素が混在し、空気極側の電位差が発生している可能性が考えられ、空気極の酸化劣化が加速されるので、スイッチ24をオン状態として固定抵抗34へ電流を流すことにより、該酸化劣化を抑制することができる。
また、単位セルあたりの起電力が0.3V未満となった場合にスイッチをオフ状態として電流を停止することにより、空気極の酸化劣化を抑制した上で水素極の残存水素の消費を停止できるので、停止時に固定抵抗34をつなげるといった従来の制御方法とは異なり、余分な水素消費を抑制することができる。
[効果]
本発明の第1の実施の形態によれば、燃料電池1本体の起電力に基づいて制御を行うので、省力化や簡素化が図られ、且つ耐久性に優れる燃料電池システムを得ることができる。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係わる燃料電池システムは、図1に示した燃料電池システムと同じであるため、図示及び説明を省略する。
図6を参照して、第2の実施の形態に係わる燃料電池システムを停止保管する際の制御方法を説明する。図6に示す制御方法は、とりわけ、長時間の停止保管時ではなく極短期の一時停止時であるアイドル停止時に有効である。
(イ)先ず、S11段階において、燃料電池1を搭載した車両をアイドル停止状態とする。
(ロ)S12段階において、電圧センサ31を用いて燃料電池1全体の発電電圧(E2−E1)を検知し、合計単位セル数で割った単位セルの平均発電電圧を推定し、平均単位セル電圧が0.9V/cellより高いか否かを判断する。平均単位セル電圧が0.9V/cellより高い場合(S12段階においてYES)S13段階に進む。
(ハ)S13段階において、常に燃料電池システムは再発電に向けてそのまま待機する。発電が再開される場合(S13段階においてYES)S14段階に進み、燃料電池1へ水素ガスと空気が供給されて発電が再開される。一方、発電が再開されない場合(S13段階においてNO)S12段階に戻る。
(ニ)一方、S12段階において平均単位セル電圧が0.9V/cell以下である場合(S12段階においてNO)、図2に示したS02段階に進み、S02〜S05段階を実施する。即ち、平均単位セル電圧が0.3V/cell以上0.9V/cell以下である場合、固定抵抗34により電流を取り出すことにより燃料電池1の電圧を低下させ、平均単位セル電圧が0.3V/cell未満となったときに固定抵抗34による電流の取り出しを停止する。
燃料電池の平均単位セル電圧が0.9V/cellより高い場合、図4の実験結果より空気極の酸化腐食の程度が小さいために、固定抵抗34等の電力消費手段による電流の取り出しを行わないことにより、燃料電池1内部における燃料極近傍の残存水素の消費を停止できるので、余分な水素消費を抑制することができる。したがって、第2の実施の形態によれば、耐久性に優れ、燃費が向上し経済性にも優れた燃料電池システムを得ることができる。
(第3の実施の形態)
[構成]
図7に示すように、本発明の第3の実施の形態に係わる燃料電池システムは、図1に示す燃料電池システムに比べて、以下の点が異なる。即ち、図7に示す燃料電池システムは、図1のイジェクタ30の代わりに、水素循環ライン10上に配置された水素循環ポンプ11を備える。図7に示す燃料電池システムは、図1の固定抵抗34の代わりに、二次電池35を備える。図7に示す燃料電池システムは、空気排出ライン7の燃料電池1直後に配置された温度センサ32aを更に有する。
水素循環ポンプ11は、燃料電池1から水素排出ライン5へ排出された排水素の一部を水素供給ライン4へ循環さる。温度センサ32aは、燃料電池1直後の空気の温度を検知または推定する。温度センサ32aは、熱電対、サーミスタなどその種類は問わない。制御ユニット12は、電圧センサ31からの燃料電池1内の電位差(E2−E1)の信号及び温度センサ32aからの温度信号を受けて、第1及び第2のバルブ3a、3bの開度、コンプレッサ8の回転数、スイッチ24の開閉(オン/オフ)を制御する。
その他の構成は、図1に示した燃料電池システムと同じであり、説明を省略する。
なお、図7では、燃料電池1の両端に二次電池35に接続したが、燃料電池1の両端ではなく少なくとも一部の単位セルユニットの間でも構わない。また、図7には、燃料電池1の両端にスイッチ24と直列に、二次電池35を接続した場合について示すが、本発明はこれに限定されない。二次電池35の代わりに、例えば、コンデンサ(キャパシタ)、固定抵抗、電子制御負荷装置、熱発生装置(ヒータ)、他の燃料電池(キャパシタとして作用)など、如何なる形態の電力を消費する手段を用いても構わない。また、温度センサ32aは空気排出ライン7の燃料電池1直後に配置したが、空気極における酸化腐食反応に直接効く空気極の温度を測るのが好ましい。それが困難である場合、その周辺の温度測定あるいは推定を行うことで代用しても構わない。つまり、例えば燃料電池1内部または表面の温度、水素極側の温度、供給ライン/排出ラインの測定などで代用可能である。また、温度センサ32aは複数設けても構わない。
[制御方法]
図8を参照して、図7の燃料電池システムを停止保管する際の制御方法を説明する。図8の制御方法は、とりわけ、燃料電池自動車でコンビニエンスストアなどで短時間の停車をする際に有効である。
(イ)先ず、S21段階において、燃料電池1へ水素及び空気の供給を停止する。具体的には、制御ユニット12が、コンプレッサ8の運転を停止し、第1のバルブ3aを閉じる。
(ロ)S22段階において、電圧センサ31を用いて燃料電池1全体の発電電圧(E2−E1)を検知し、合計単位セル数で割った単位セルの平均発電電圧を推定し、平均単位セル電圧が0.3V/cell以上0.9V/cell以下となることを監視する。平均単位セル電圧が0.3V/cell以上0.9V/cell以下の範囲に入る場合(S22段階においてYES)S23段階に進む。このように、燃料電池システムを停止する際、水素極側に水素と酸素が混在する状況において、燃料電池1の起電力を測定し、起電力が空気極が酸化する範囲(0.3V/cell以上0.9V/cell以下の範囲)に含まれるか否かを判断する。
(ハ)S23段階において、温度センサ32aを用いて燃料電池1直後の空気の温度を測定して、当該温度が50℃以上であるか否かを判断する。当該温度が50℃以上である場合(S23段階においてYES)S24段階に進み、当該温度が50℃以上でない場合(S23段階においてNO)S22段階に戻る。
(ニ)S24段階において、制御ユニット12は、スイッチ24を接続してつまりオン状態とする。二次電池35に電流が流れて燃料電池1から電流が取り出される。これにより、二次電池35は充電される。水素極側の水素及び微量の酸素、並びに空気極側の酸素が消費され、燃料電池1の電圧は低下する。
(ホ)所定の時間後、S25段階において、電圧センサ31を用いて燃料電池1の一部における単位セルの発電電圧が、1単位セルあたり0.3V未満となることを監視する。1単位セルあたり0.3V未満である場合(S25段階においてYES)S26段階に進む。
(へ)S26段階において、制御ユニット12は、スイッチ24を非接続としてつまりオフ状態として、二次電池35による燃料電池1からの電流の取り出しを停止する。二次電池35に電流が流れなくなり、燃料電池1内に水素が一部残存する。なお、スイッチ24を非接続とした後に、燃料電池1の起電力が再び上昇する可能性があるが、この場合、S21段階に戻り、S21〜S26段階を繰り返し実施しても構わない。また、S23段階において、50℃は例示であり、基準温度を50℃以外の温度にしても構わない。
[作用]
図8に示す燃料電池システムの停止保管方法が奏する作用について説明する。燃料電池1の運転停止直後には、燃料電池1の水素極28側水素極に水素ガスが残留することが知られている。この状態のまま放置すると、水素極28と空気極26のガスが電解質膜25を介して混ざるといったクロスリーク現象も含め、外部から空気が混入して水素ガスと酸素ガスとが混在する。
空気中の酸素に対する水素の濃度比(H2/O2)が「所定の濃度比範囲」に入る場合、水素極側において水素リッチな領域における電解質電位に対して酸素リッチな領域における電解質電位が低くなるため、酸素リッチな領域の方が水素リッチな領域に比べて電解質電位に対する酸化剤極の電位が高くなる。そのため、酸素リッチな領域における空気極(カーボン担体や白金など)は酸化腐食する。上記の実験例では、質量分析器によりカーボン担体の腐食に関して測定したが、高電位になることからカーボン担体に限らず白金など金属触媒の酸化劣化も発生する。
図8に示す燃料電池システムの停止保管方法では、空気中の酸素に対する水素の濃度比(H2/O2)が「所定の濃度比範囲」に入る場合、水素と酸素の濃度比により燃料電池1の起電力が変化するので、その起電力を判断手段とすることにより、ガス濃度検出手段を必要とせず、簡素なシステムでガス置換等の制御をすることができる。
また、図4の実験結果が示す通り、単位セルあたりの起電力が0.3V以上0.9V以下の場合、水素極近傍において水素と酸素が混在し、空気極側の電位差が発生している可能性が考えられる。更に、図5に示す通り燃料電池1又は燃料電池1内の空気の温度が上昇するにつれて指数関数的に空気極の酸化劣化が加速される。燃料電池1又は燃料電池1内の空気の温度が所定温度(50℃以上)の範囲でスイッチ24をオン状態として固定抵抗34へ電流を流すことにより、該酸化劣化を抑制することができる。
また、単位セルあたりの起電力が0.3V未満となった場合にスイッチをオフ状態として電流を停止することにより、空気極の酸化劣化を抑制した上で水素極の残存水素の消費を停止できるので、停止時に固定抵抗34をつなげるといった従来の制御方法とは異なり、余分な水素消費を抑制することができる。よって、二次電池35への充電時におけるエネルギー変換ロスの発生を抑制することができる。
[効果]
本発明の第3の実施の形態によれば、燃料電池1本体の起電力に基づいて制御を行うので、燃費が向上して経済性が優れ、且つ耐久性も優れる燃料電池システムを得ることができる。
(第4の実施の形態)
[構成]
図9に示すように、本発明の第4の実施の形態に係わる燃料電池システムは、図1に示す燃料電池システムに比べて、以下の点が異なる。即ち、図9に示す燃料電池システムは、図1のイジェクタ30の代わりに、水素循環ライン10上に配置された水素循環ポンプ11を備える。また、図7に示す燃料電池システムは、図1の電圧センサ31の代わりに、水素供給ライン4上の燃料電池1直前に配置された第1のガス濃度センサ2a及び水素排出ライン5上の燃料電池1直後に配置された第2のガス濃度センサ2bを備え、図1の固定抵抗34の代わりにコンデンサ36を備える。図7に示す燃料電池システムは、燃料電池1のガス供給側の端部に配置された温度センサ32bを更に有する。
温度センサ32bは燃料電池1の温度を検知または推定する。温度センサ32bは、熱電対、サーミスタなどその種類は問わない。また、第1及び第2のガス濃度センサ2a、2bにおいて水素に対する酸素の濃度を推定した濃度信号、並びに温度センサ32bにより検出または推定した温度信号を制御ユニット12が受けることにより、制御ユニット12がスイッチ24のオン/オフ(接続/非接続)を制御する。
その他の構成は、図1に示した燃料電池システムと同じであり、説明を省略する。
なお、図9では、燃料電池1の両端にコンデンサ36に接続したが、燃料電池1の両端ではなく少なくとも一部の単位セルユニットの間でも構わない。また、図9には、燃料電池1の両端にスイッチ24と直列に、コンデンサ36を接続した場合について示すが、本発明はこれに限定されない。コンデンサ36の代わりに、例えば、二次電池、固定抵抗、電子制御負荷装置、熱発生装置(ヒータ)、他の燃料電池(キャパシタとして作用)など、如何なる形態の電力を消費する手段を用いても構わない。また、温度センサ32bは燃料電池1のガス供給側の端部に配置したが、空気極における酸化腐食反応に直接効く空気極の温度を測るのが好ましい。それが困難である場合、その周辺の温度測定あるいは推定を行うことで代用しても構わない。つまり、例えば燃料電池1内部または表面の温度、水素極側の温度、供給ライン/排出ラインの測定などで代用可能である。また、温度センサ32bは複数設けても構わない。
[制御方法]
図10を参照して、図9の燃料電池システムを停止保管する際の制御方法を説明する。
(イ)先ず、S31段階において、燃料電池1へ水素及び空気の供給を停止する。具体的には、制御ユニット12が、コンプレッサ8の運転を停止し、第1のバルブ3aを閉じる。
(ロ)S32段階において、第1のガス濃度センサ2a及び第2のガス濃度センサ2bの少なくとも一方が、水素極内における酸素に対する水素の濃度比が70%以上400%以下であることを検知することを監視する。70〜400%の範囲に入る場合(S32段階においてYES)S33段階に進む。このように、燃料電池システムを停止する際、水素極内における酸素に対する水素の濃度比を測定し、酸素に対する水素の濃度比が空気極が酸化する範囲(70〜400%の範囲)に含まれるか否かを判断する。
(ハ)S33段階において、温度センサ32bを用いて燃料電池1のガス供給側の端部の温度を測定して、当該温度が30℃以上であるか否かを判断する。当該温度が30℃以上である場合(S33段階においてYES)S34段階に進み、当該温度が30℃以上でない場合(S33段階においてNO)S32段階に戻る。
(ニ)S34段階において、制御ユニット12は、スイッチ24を接続してつまりオン状態とする。コンデンサ36に電流が流れて燃料電池1から電流が取り出される。これにより、コンデンサ36は充電される。水素極側の水素及び微量の酸素、並びに空気極側の酸素が消費され、燃料電池1の電圧は低下する。
(ホ)S35段階において、第1及び第2のガス濃度センサ2a、2bの双方が、酸素に対する水素の濃度比が70%未満であることを検知することを監視する。70%未満である場合(S35段階においてYES)S36段階に進む。
(へ)S36段階において、制御ユニット12は、スイッチ24を非接続としてつまりオフ状態として、コンデンサ36による燃料電池1からの電流の取り出しを停止する。コンデンサ36に電流が流れなくなり、燃料電池1内に水素が一部残存する。なお、スイッチ24を非接続とした後に、燃料電池1の起電力が再び上昇する可能性があるが、この場合、S31段階に戻り、S31〜S36段階を繰り返し実施しても構わない。また、S33段階において、30℃は例示であり、基準温度を30℃以外の温度にしても構わない。
[作用]
図10に示す燃料電池システムの停止保管方法が奏する作用について説明する。燃料電池1の運転停止直後には水素極に水素ガスが残留することが知られている。この状態のまま放置すると、外部から空気が混入して水素ガスと酸素ガスとが混在する。空気中の酸素に対する水素の濃度比(H2/O2)が「所定の濃度比範囲」に入る場合、水素極側において水素リッチな領域における電解質電位に対して酸素リッチな領域における電解質電位が低くなるため、酸素リッチな領域の方が水素リッチな領域に比べて電解質電位に対する酸化剤極の電位が高くなる。そのため、酸素リッチな領域における空気極(カーボン担体や白金など)は酸化腐食する。上記の実験例では、質量分析器によりカーボン担体の腐食に関して測定したが、高電位になることからカーボン担体に限らず白金など金属触媒の酸化劣化も発生する。
それに対して図10に示す燃料電池システムの停止保管方法では、新たに「所定の濃度範囲」を避ける制御を行うことにより、上記のような空気極の酸化腐食を抑制することができる。また、図4の実験結果が示す通り、酸素に対する水素の濃度比(H2/O2)が70%以上400%以下のとき、空気極の酸化劣化が加速される。したがって、酸素に対する水素の濃度比(H2/O2)が70%以上400%以下の範囲に入るときに、コンデンサ36に電流を流すことで空気極の酸化劣化を抑制することができる。
また、図5の実験結果が示す通り、空気極(この場合はカーボン担体)の酸化腐食には温度依存性があり、高い温度ほど酸化が加速されるので、燃料電池1の温度が30℃など所定の温度以上になった場合にコンデンサ36に電流を流すことで、効果的かつ経済的に劣化を抑制することができる。
また、酸素に対する水素の濃度比が70%未満となった場合にスイッチ24をオフ状態として電流を停止することにより、空気極の酸化劣化を抑制した上で水素極の残存水素の消費を停止できるので、停止時に固定抵抗をつなげるといった従来の制御方法とは異なり、余分な水素消費を抑制することができる。よって、コンデンサ36への充電時におけるエネルギー変換ロスの発生を抑制することができる。
[効果]
第4の実施の形態によれば、耐久性に優れ、燃費が向上して経済性にも優れた燃料電池システムを得ることができる。
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態に係わる燃料電池システムは、図9に示した燃料電池システムと同じであるため、図示及び説明を省略する。
図11を参照して、第5の実施の形態に係わる燃料電池システムを停止保管する際の制御方法を説明する。図11に示す制御方法は、とりわけ、長時間の停止保管時ではなく極短期の一時停止時であるアイドル停止時に有効である。
(イ)先ず、S41段階において、燃料電池1を搭載した車両をアイドル停止状態とする。
(ロ)S42段階において、第1のガス濃度センサ2a及び第2のガス濃度センサ2bの少なくとも一方が、水素極内における酸素に対する水素の濃度比が400%を超えていることを検知したか否かを判断する。400%を超えている場合(S42段階においてYES)S43段階に進む。
(ハ)S43段階において、常に燃料電池システムは再発電に向けてそのまま待機する。発電が再開される場合(S43段階においてYES)S44段階に進み、燃料電池1へ水素ガスと空気が供給されて発電が再開される。一方、発電が再開されない場合(S43段階においてNO)S42段階に戻る。
(ニ)一方、S42段階において400%を超えていない場合(S42段階においてNO)、図10に示したS32段階に進み、S32〜S36段階を実施する。即ち、水素極内における酸素に対する水素の濃度比が70%以上400%以下である場合、コンデンサ36により電流を取り出すことにより燃料電池1の電圧を低下させ、水素極内における酸素に対する水素の濃度比が70%未満となったときにコンデンサ36による電流の取り出しを停止する。
酸素に対する水素の濃度比が400%を超えている場合、図4の実験結果より空気極の酸化腐食の程度が小さいために、コンデンサ36等の電力消費手段による電流の取り出しを行わないことにより、燃料電池1内部における燃料極近傍の残存水素の消費を停止できるので、余分な水素消費を抑制することができる。したがって、第5の実施の形態によれば、耐久性に優れ、燃費が向上し経済性にも優れた燃料電池システムを得ることができる。
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は、第1乃至第5の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。即ち、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ限定されるものである。
本発明の第1の実施の形態に係わる燃料電池システムを示すブロック図である。 図1の燃料電池システムを停止する際の制御方法を示すフローチャートである。 実験例に係わる燃料電池システムを示すブロック図である。 図3の熱電対による燃料電池の制御温度を70℃に設定した場合の酸素に対する水素の濃度比(H2/O2)、単位セルの発電電圧、及び空気極からの二酸化炭素(CO2)排出割合の時間変化を示すグラフである。 図4の実験を燃料電池の温度を40℃から90℃まで10℃間隔でそれぞれ複数回実施したときの空気極からの二酸化炭素排出量に関する温度依存性の結果を示すグラフである。 本発明の第2の実施の形態に係わる燃料電池システムの停止保管方法を示すフローチャートである。 本発明の第3の実施の形態に係わる燃料電池システムを示すブロック図である。 図7の燃料電池システムを停止する際の制御方法を示すフローチャートである。 本発明の第4の実施の形態に係わる燃料電池システムを示すブロック図である。 図9の燃料電池システムを停止する際の制御方法を示すフローチャートである。 本発明の第5の実施の形態に係わる燃料電池システムの停止保管方法方法を示すフローチャートである。
符号の説明
1…燃料電池
2a…第1のガス濃度センサ
2b…第2のガス濃度センサ
3a…第1のバルブ
3b…第2のバルブ
4…水素供給ライン
5…水素排出ライン
6…空気供給ライン
7…空気排出ライン
8…コンプレッサ
9…水素ボンベ
10…水素循環ライン
11…水素循環ポンプ
12…制御ユニット
15a、15b…空気マスフローコントローラ
16…水素マスフローコントローラ
17…空気側加湿器
18…水素側加湿器
19…混合器
20…空気側質量分析器
21…水素側質量分析器
22…熱電対
23a、23b…分析ポート
24…スイッチ
25…電解質膜
26…空気極
27…空気側セパレータ
28…水素極
29…水素側セパレータ
30…イジェクタ
31…電圧センサ
32a、32b…温度センサ
34…固定抵抗
35…二次電池
36…コンデンサ

Claims (9)

  1. 電解質膜の両側に燃料極及び酸化剤極を配置し、前記燃料極及び前記酸化剤極に隣接してガス拡散層をそれぞれ設けてなる膜電極複合体を含む単位燃料電池と、前記単位燃料電池の起電力を測定する手段とを有する燃料電池システムの停止保管方法であって、
    前記燃料電池システムを停止する際、前記起電力を測定し、
    前記起電力が前記酸化剤極が酸化する範囲に含まれるか否かを判断し、
    前記起電力が前記範囲に含まれる場合に、前記単位燃料電池から電流を取り出し、
    前記起電力が前記範囲を下回った後に、前記単位燃料電池からの電流の取り出しを停止する
    ことを特徴とする燃料電池システムの停止保管方法。
  2. 電解質膜の両側に燃料極及び酸化剤極を配置し、前記燃料極及び前記酸化剤極に隣接してガス拡散層をそれぞれ設けてなる膜電極複合体を含む単位燃料電池と、前記単位燃料電池の起電力を測定する手段とを有する燃料電池システムの停止保管方法であって、
    前記燃料電池システムを停止する際、前記起電力を測定し、
    前記起電力が前記酸化剤極が酸化する範囲よりも高いか否かを判断し、
    前記起電力が前記範囲よりも高い場合に、前記単位燃料電池は再発電を待機する
    ことを特徴とする燃料電池システムの停止保管方法。
  3. 前記起電力の測定は、前記単位燃料電池から電流が取り出されていない状態で行うことを特徴とする請求項1又は2記載の燃料電池システムの停止保管方法。
  4. 前記酸化剤極が酸化する範囲とは、前記起電力が1単位燃料電池あたり0.3V以上0.9V以下である範囲であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の燃料電池システムの停止保管方法。
  5. 電解質膜の両側に燃料極及び酸化剤極を配置し、前記燃料極及び前記酸化剤極に隣接してガス拡散層をそれぞれ設けてなる膜電極複合体を含む単位燃料電池と、前記燃料極内のガス濃度を検出する手段とを有する燃料電池システムの停止保管方法であって、
    前記燃料電池システムを停止保管方法する際、前記燃料極内における酸素に対する水素の濃度比を測定し、
    前記濃度比が前記酸化剤極が酸化する範囲に含まれるか否かを判断し、
    前記濃度比が前記範囲に含まれる場合に、前記単位燃料電池から電流を取り出し、
    前記濃度比が前記範囲を下回った後に、前記単位燃料電池からの電流の取り出しを停止する
    ことを特徴とする燃料電池システムの停止保管方法。
  6. 電解質膜の両側に燃料極及び酸化剤極を配置し、前記燃料極及び前記酸化剤極に隣接してガス拡散層をそれぞれ設けてなる膜電極複合体を含む単位燃料電池と、前記燃料極内のガス濃度を検出する手段とを有する燃料電池システムの停止保管方法であって、
    前記燃料電池システムを停止する際、前記燃料極内における酸素に対する水素の濃度比を測定し、
    前記濃度比が前記酸化剤極が酸化する範囲よりも高いか否かを判断し、
    前記濃度比が前記範囲よりも高い場合に、前記単位燃料電池は再発電を待機する
    ことを特徴とする燃料電池システムの停止保管方法。
  7. 前記燃料極内における酸素に対する水素濃度比の測定は、前記単位燃料電池から電流が取り出されていない状態で行うことを特徴とする請求項5又は6記載の燃料電池システムの停止保管方法。
  8. 前記酸化剤極が酸化する範囲とは、前記酸素に対する水素の濃度比が70%以上400%以下である範囲であることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか一つに記載の燃料電池システムの停止保管方法。
  9. 前記単位燃料電池から電流を取り出すか否かは、単位燃料電池の温度又は単位燃料電池中のガス温度の少なくとも何れかを含む関数により決定されることを特徴とする請求項1又は5記載の燃料電池システムの停止保管方法。
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