JP2006124537A - 鉛含有金属材料に好適な潤滑油組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ジチオリン酸亜鉛を低減し、又は含有しない、鉛含有摺動材料等の鉛含有金属の腐食が著しい潤滑油組成物において、長期使用時の塩基価が残存している状況においても発生する鉛腐食を抑制しうる潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】潤滑油基油に、ジチオリン酸亜鉛をリン量として0.08質量%以下又は含有せず、鉛含有金属材料と接触する場合に好適な潤滑油組成物であって、(A)ホウ酸エステル及び/又はその誘導体をホウ素元素量として0.001〜0.1質量%含有することを特徴とする潤滑油組成物とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、鉛含有金属材料と接触する場合に好適な潤滑油組成物に関し、詳しくはジチオリン酸亜鉛の含有量が少ない場合であっても鉛含有摺動材料の腐食又は腐食摩耗を抑制しうる潤滑油組成物に関する。
エンジン等の摺動材料は、鉄系やアルミニウム系の金属材料が主として使用されている。しかし、摺動材料の中でも、メインベアリングやコンロッドベアリングなどの摺動部、例えば軸受けメタルには、アルミニウム、銅、すず等の金属材料のほか、鉛含有金属材料が使用されることがある。これら鉛含有金属材料は、疲労現象が少ないという優れた特徴を有しているが、一方では腐食摩耗が大きいという欠点がある。
腐食摩耗の原因としては、オイルの劣化によって蓄積された過酸化物の蓄積(例えば、非特許文献1)や、空気中の分子状の酸素による直接酸化(例えば、非特許文献2〜4)が挙げられる。また、キノン、ジアセチル、酸化窒素、ニトロ化合物のような酸化生成物が、酸と共存することによって腐食を促進させる(例えば、非特許文献5)ことも知られている。実際の腐食は、多くの因子によって支配されているため複雑であるが、腐食の防止のためには、一般的には、
・ 潤滑油の酸化防止
・ 酸化性物質の破壊
・ 腐食性酸化生成物の生成抑制
・ 酸化物質の不活性化
・ 金属表面における防食被膜の形成
が重要である。より具体的には、
・ ジチオリン酸亜鉛や硫化物のような過酸化物分解剤兼防食被膜形成剤
・ アミン系やフェノール系の連鎖防止型酸化防止剤
・ ベンゾトリアゾールのような防食被膜形成剤
・ 清浄分散剤のような酸中和剤
の添加による腐食防止効果が知られており、一般的にはこれら成分のほとんどが併用される。
特に、鉛含有摺動材料の腐食摩耗防止に対しては、ジチオリン酸亜鉛等の硫黄含有摩耗防止剤が極めて有効である。例えば、ジチオリン酸亜鉛がリン換算量で0.1%程度(硫黄量で0.2質量%程度)以上配合された従来のエンジン油では、過酸化物分解効果と共に鉛表面の不活性化により、優れた鉛腐食摩耗防止効果が発揮されるが、ジチオリン酸亜鉛の含有量を低減した場合には、鉛の腐食摩耗防止効果は指数関数的に悪化することが知られている(例えば非特許文献6参照)。一方で、ジチオリン酸亜鉛等の硫黄含有化合物は、鉛以外の非鉄卑金属含有摺動材(例えば銅、すず、銀等)に対し硫化腐食を起こし易く、また、ベンゾトリアゾール等の腐食防止剤は銅の腐食防止には有効であるが、鉛の腐食防止には十分な効果を示さないこともわかってきた。
ところで、昨今の環境負荷低減要求の高まりを背景に、エンジン油の長寿命化とともに低リン化又は低硫黄化要望が高まっており、エンジン油の長寿命化は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン機関における燃料の硫黄分低減、ガス燃料エンジン機関の普及など燃料起因によるエンジン油劣化の抑制、エンジン油自身の高性能化(酸化防止剤増量、摩耗防止剤、金属系清浄剤及びその他添加剤の最適配合など)により、塩基価維持性という観点では、長寿命化が達成されている(例えば、特許文献1参照)。
Ind.Eng.Chem.,36(1944),477 Ind.Eng.Chem.,37(1945),90 Ind.Eng.Chem.,49(1957),1703 J.Inst.Petrol.,37(1951),225 Ind.Eng.Chem.,37(1945),917 桜井俊男編、石油製品添加剤、第二版第271頁図-8(昭和54年6月15日発行、幸書房) 特開2002−294271号公報
本発明者らは、ジチオリン酸亜鉛の低減あるいはこれを使用しない低リン化及び/又は低硫黄化されたエンジン油について、従来以上に長期使用した場合の各種摺動材料(鉄系、アルミニウム系、銅系、鉛系等)に対する摩耗防止性能を検討した。すると、潤滑油の全塩基価が十分残存し、寿命に達していない状態であるにもかかわらず、鉛含有摺動材料の腐食摩耗が著しく発生する場合があることが判明した。特に酸化性ガス雰囲気下において鉛腐食が著しいことから、ジチオリン酸亜鉛の低減、非使用、あるいは、長期使用によるジチオリン酸亜鉛の消失によって、過酸化物分解効果及び鉛の防食被膜形成効果の低下又は消失とともに、潤滑油の劣化生成物が鉛表面に作用し、鉛腐食を加速すると考えられる。この鉛腐食現象は、清浄剤が十分残存し、酸中和能力や酸化防止性能を有しているにもかかわらず発生するため、従来一般的に使用されてきたジチオリン酸亜鉛を低減又は含有させないことにより顕在化した新たなる課題と言える。
すなわち、本発明の課題は、ジチオリン酸亜鉛を低減し、又は含有しない、鉛含有摺動材料等の鉛含有金属の腐食が著しい潤滑油組成物において、長期使用時の塩基価が残存している状況においても発生する鉛腐食を抑制しうる、鉛含有金属材料と接触する場合に好適な潤滑油組成物を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ジチオリン酸亜鉛を低減し、又が含有しない場合でも、ホウ酸エステル及び/又はその誘導体を所定量配合させることにより、鉛含有金属材料の腐食又は腐食摩耗を効果的に抑制しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、潤滑油基油に、ジチオリン酸亜鉛をリン量として0.08質量%以下又は含有せず、鉛含有金属材料と接触する潤滑油組成物であって、(A)ホウ酸エステル及び/又はその誘導体をB量として0.001〜0.1質量%含有することを特徴とする潤滑油組成物である。
また、本発明は、潤滑油基油に、組成物全量基準で、ジチオリン酸亜鉛をリン量として0.08質量%以下又は含有せず、(A)ホウ酸エステル及び/又はその誘導体をB量として0.001〜0.1質量%、(B)有機モリブデン化合物をMo量として0.001〜0.1質量%含有する潤滑油組成物である。
本発明の潤滑油組成物は、特に鉛の腐食又は腐食摩耗防止に極めて有効なジチオリン酸亜鉛を低減した場合あるいはこれを含有しない場合に、鉛の腐食又は腐食摩耗を抑制しうる、鉛含有金属材料と接触する場合に好適な潤滑油組成物であり、低硫黄化、さらには低リン化、低灰化を図ることができ、ロングドレイン性にも優れたものである。従って鉛含有金属材料と接触する内燃機関用潤滑油、特に鉛系摺動材料を備えたディーゼルエンジン油、ガスエンジン油としてだけでなく、鉛含有金属材料と潤滑油が接触する潤滑システムを有する装置用潤滑油、例えば、自動変速機、手動変速機、無段変速機、ギヤ等の駆動系用潤滑油、グリース、湿式ブレーキ油、油圧作動油、タービン油、圧縮機油、軸受け油、冷凍機油等の潤滑油としても好適に使用することができる。
本発明の潤滑油組成物は、ジチオリン酸亜鉛の含有量がリン量として0.08質量%以下又はこれを含有しないものであり、その場合に顕著となる鉛含有金属材料の腐食又は腐食摩耗を防止するために好適な潤滑油組成物である。
また、本発明の潤滑油組成物は、ジチオリン酸亜鉛の含有量がリン量として0.08質量%以下又はこれを含有せず、ホウ酸エステル及び/又はその誘導体、および必要に応じて、硫黄を含有しない有機モリブデン化合物を含有する、金属材料の腐食又は腐食摩耗を防止するために好適な潤滑油組成物である。以下、本発明の鉛含有金属材料と接触する場合に好適な潤滑油組成物(単に潤滑油組成物ともいう。)について詳述する。
本発明において、鉛含有金属材料としては、本発明の潤滑油と接触する金属表面に鉛が存在する限りにおいて何ら制限はなく、鉛だけでなく、鉛合金、あるいは、鉛又は鉛合金を各種金属基材表面に被覆した金属材料が挙げられる。また、鉛含有金属材料には、その表面に非鉛含有金属材料が被覆されていても、使用過程においてその被覆面が摩耗して当該鉛含有金属材料が露出し、本発明の潤滑油と接触する可能性がある場合も含まれる。
鉛合金としては、例えば、鉛−スズ合金、鉛−銅合金、鉛−スズ−銅合金、鉛−アルミニウム合金、鉛−アルミニウム−珪素合金、鉛−アルミニウム−スズ合金、鉛−アルミニウム−銅合金、鉛−アルミニウム−珪素−スズ合金、鉛−アルミニウム−珪素−銅合金、鉛−アルミニウム−スズ−銅合金、鉛−アルミニウム−珪素−スズ−銅合金等が挙げられ、これら鉛含有金属材料としては、鉛含有量が、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上含まれる金属材料であることが好ましい。具体的には、鉛を50〜95質量%、好ましくは60〜90質量%含有する鉛−スズ含有合金、鉛を5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%含有する鉛−銅含有合金、鉛を1〜10質量%、好ましくは2〜5質量%含有する鉛−アルミニウム含有合金等が挙げられる。
金属表面の鉛含有量が多いほど、鉛腐食又は腐食摩耗が発生しやすいため、本発明の潤滑油組成物は有用である。
本発明における潤滑油基油は、特に制限はなく、通常の潤滑油に使用される鉱油系基油、合成系基油が使用できる。鉱油系基油としては、具体的には、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製等の処理を1つ以上行って精製したもの、あるいはワックス異性化鉱油、GTL WAX(ガストゥリキッドワックス)を異性化する手法で製造される基油等が例示できる。
鉱油系基油中の硫黄分は、特に制限はないが、通常0〜1.5質量%であるが、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下であり、さらに好ましくは0.005質量%以下であり、潤滑油基油の硫黄分を低減することで、よりロングドレイン性に優れ、内燃機関用潤滑油として使用する場合には、排ガス後処理装置への悪影響を極力回避可能な低硫黄の潤滑油組成物を得ることができる。
また、鉱油系基油の飽和分は、特に制限はないが、通常50〜100質量%であり、酸化安定性、ロングドレイン性に優れる点で、好ましくは60質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
なお、上記飽和分とは、ASTM D2549に準拠して測定した飽和分を意味する。
合成系基油としては、具体的には、ポリブテン又はその水素化物;1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリ−α−オレフィン又はその水素化物;ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、及びジ−2−エチルヘキシルセバケート等のジエステル;ネオペンチルグリコールエステル、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、及びペンタエリスリトールペラルゴネート等のポリオールエステル;アルキルナフタレン、アルキルベンゼン、及び芳香族エステル等の芳香族系合成油又はこれらの混合物等が例示できる。
本発明における潤滑油基油としては、上記鉱油系基油、上記合成系基油又はこれらの中から選ばれる2種以上の任意混合物等が使用できる。例えば、1種以上の鉱油系基油、1種以上の合成系基油、1種以上の鉱油系基油と1種以上の合成系基油との混合油等を挙げることができる。
本発明において用いる潤滑油基油の動粘度は特に制限はないが、その100℃での動粘度は、20mm/s以下であることが好ましく、より好ましくは16mm/s以下である。一方、その動粘度は、3mm/s以上であることが好ましく、より好ましくは5mm/s以上である。潤滑油基油の100℃での動粘度が20mm/sを越える場合は、低温粘度特性が悪化し、一方、その動粘度が3mm/s未満の場合は、潤滑箇所での油膜形成が不十分であるため潤滑性に劣り、また潤滑油基油の蒸発損失が大きくなるため、それぞれ好ましくない。
潤滑油基油の蒸発損失量としては、NOACK蒸発量で、20質量%以下であることが好ましく、16質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、6質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。潤滑油基油のNOACK蒸発量が20質量%を超える場合、潤滑油の蒸発損失が大きく、ロングドレイン性に劣るだけでなく、内燃機関用潤滑油として使用した場合、組成物中の硫黄化合物やリン化合物、あるいは金属分が潤滑油基油とともに排ガス浄化装置へ堆積する恐れがあり、排ガス浄化性能への悪影響が懸念されるため好ましくない。なお、ここでいうNOACK蒸発量とは、ASTM D5800に準拠して測定されたものである。
潤滑油基油の粘度指数は特に制限はないが、低温から高温まで優れた粘度特性が得られるようにその値は、80以上であることが好ましく、さらに好ましくは100以上であり、さらに好ましくは120以上である。粘度指数の上限については特に制限はなく、ノルマルパラフィン、スラックワックスやGTLワックス等、あるいはこれらを異性化したイソパラフィン系鉱油のような135〜180程度のものやコンプレックスエステル系基油やHVI−PAO系基油のような150〜250程度のものも使用することができる。潤滑油基油の粘度指数が80未満では、低温粘度特性が悪化するため好ましくない。
本発明におけるジチオリン酸亜鉛としては、下記の一般式(1)で表されるもの等が例示できる。
Figure 2006124537
式中R、R、R及びRはそれぞれ個別に、炭素数1〜24の炭化水素基を示すが、これら炭素数1〜24の炭化水素基としては、炭素数1〜24の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数3〜24の直鎖状又は分枝状のアルケニル基、炭素数5〜13のシクロアルキル基又は直鎖状若しくは分枝状アルキルシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基又は直鎖状若しくは分枝状アルキルアリール基、炭素数7〜19のアリールアルキル基等のいずれかであることが好ましい。またアルキル基やアルケニル基としては第1級でも、第2級でも、第3級であってもよい。
、R、R及びRがとり得る前記炭化水素基の中でも、その炭化水素基が、直鎖状又は分枝状の炭素数1〜18のアルキル基である場合若しくは炭素数6〜18のアリール基又は直鎖状若しくは分枝状アルキルアリール基である場合が特に好ましい。
ジチオリン酸亜鉛の製造方法としては任意の従来方法が採用可能であって、特に制限されないが、具体的には例えば、前記R、R、R及びRに対応する炭化水素基を持つアルコール又はフェノールを五硫化二りんと反応させてジチオリン酸をつくり、これを酸化亜鉛で中和させることにより合成することができる。ジチオリン酸亜鉛の構造は、使用する原料アルコールによって異なるものである。
本発明の潤滑油組成物におけるジチオリン酸亜鉛の含有量の上限は、リン量として0.08質量%以下、好ましくは0.05質量%以下、さらに好ましくは0.04質量%以下であり、その下限値は、特に制限はなく、塩基価維持性の観点からこれを含有しないことが望ましく、後述する(A)成分、あるいは(A)成分と(B)成分とを併用することで、鉛含有金属材料の腐食を抑制することができるが、必要に応じて鉛含有金属材料の腐食又は腐食摩耗防止性能を改善するために、その含有量をリン量として好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上としても良い。
ジチオリン酸亜鉛の含有量がリン量として0.08質量%を超える場合、例えば、リン量として0.10質量%以上の場合は、本発明の課題が顕著となる条件から外れる従来の潤滑油であり、鉛含有金属材料の腐食又は腐食摩耗防止性能に優れるものの、低硫黄化や低リン化、あるいは長寿命化の観点から好ましくない。
本発明の潤滑油組成物は、(A)成分としてホウ酸エステル及び/又はその誘導体を含有する。ホウ酸エステルは通常、軸受け腐食防止剤として硫黄及び/またはリン含有化合物と併用されることが一般的(例えば特開昭63−304095号公報、特開昭63−304096号公報、特開2000−63865号公報、特開2000−63871号公報)であるが、最近になって、金属間摩擦係数を高める作用があることがわかってきた(特開2002−226882号公報)。
本発明におけるホウ酸エステルとしては、例えば下記一般式(2)あるいは一般式(3)で表わされる化合物及びこれらの誘導体等が挙げられる。
Figure 2006124537
Figure 2006124537
一般式(2)及び(3)において、R〜R10はそれぞれ炭素数1〜30の炭化水素基を示し、これらは同一でも異なっていても良い。
上記炭素数1〜30の炭化水素基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、及びオクタデシル基等の炭素数1〜30のアルキル基(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基等の炭素数2〜30のアルケニル基(アルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよく、また二重結合の位置も任意である);シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基;メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、メチルエチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基等炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基(アルキル基のシクロアルキル基への置換位置も任意である);フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜18のアリール基;トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基、ジエチルフェニル基、ジブチルフェニル基、及びジオクチルフェニル基等の炭素数7〜26のアルキルアリール基(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよく、またアリール基への置換位置も任意である);ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等の炭素数7〜12のアリールアルキル基(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)等を挙げることができる。
上記炭素数1〜30の炭化水素基は、好ましくは、炭素数2〜24の炭化水素基であることが好ましく、更に好ましくは、炭素数3〜20の炭化水素基であり、更に具体的には、炭素数1〜30のアルキル基または炭素数6〜24のアリール基であることが好ましく、更に好ましくは炭素数3〜18、更に好ましくは炭素数4〜12のアルキル基である。
一般式(2)で表わされるホウ酸エステルは、通常、上記炭素数1〜30のアルコール3モルに対しオルトホウ酸(HBO)1モルとを反応させることにより得られる。
一般式(3)で表わされるホウ酸エステルは、通常、上記炭素数1〜30のアルコール1モルに対しオルトホウ酸(HBO)1モルとを反応させることにより得られる。
これらの反応条件は特に制限はないが、通常100℃以上で行うことにより、生成する水分を同時に除去しうるので特に好ましい。
また、ホウ酸エステルの誘導体としては、例えば、特開2002−226882号公報に記載される有機ボレートのうち、リンや硫黄を含有しない化合物、例えば、有機ボレート・ポリアミン縮合物(上記ホウ酸エステルのポリアミン縮合物)、有機ボレート・ポリオール縮合物(上記ホウ酸エステルのポリオール縮合物)等が挙げられる。
(A)成分の好ましい例としては、具体的には、トリエチルボレート、トリ−n−プロピルボレート、トリイソプロピルボレート、トリn−ブチルボレート、トリsec−ブチルボレート、トリtert−ブチルボレート、トリヘキシルボレート、トリオクチルボレート、トリデシルボレート、トリドデシルボレート、トリヘキサデシルボレート、トリオクタデシルボレート、トリフェニルボレート、トリベンジルボレート、トリフェネチルボレート、トリトリルボレート、トリエチルフェニルボレート、トリプロピルフェニルボレート、トリブチルフェニルボレート、及びトリノニルフェニルボレート等が挙げられる。これらの中でも、トリn−ブチルボレート、トリオクチルボレート、トリドデシルボレート等が特に好ましい。
本発明の潤滑油組成物において(A)成分の含有量の下限値は、鉛含有金属材料の腐食又は腐食摩耗を防止する観点から、組成物全量基準で、ホウ素元素換算量で、0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上である。また、(A)成分の含有量の上限値としては、組成物全量基準で、ホウ素元素換算量で0.1質量%以下であり、好ましくは0.08質量%以下である。(A)成分の含有量が、上記上限値を超える場合は、含有量に見合うだけの摩耗防止効果が得にくいため好ましくない。なお、本発明の潤滑油組成物においては、後述する(B)成分を併用する場合には、鉛含有金属材料の腐食又は腐食摩耗をさらに防止できる点で、その含有量を好ましくは0.04質量%以下、より好ましくは0.02質量%以下としても良い。また、本発明においては、ジチオリン酸亜鉛を含有しない場合、あるいは、実質的にその他のリン化合物をも含有しない場合(無リンの場合)、その摩耗防止性能を向上させる目的で、(A)成分を好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.06質量%以上含有させることが望ましい。
本発明の潤滑油組成物は、(B)成分として有機モリブデン化合物を含有することが好ましい。有機モリブデン化合物としては、例えば、硫化モリブデンジチオカーバメート又は硫化オキシモリブデンジチオカーバメート、硫化モリブデンジチオホスフェート又は硫化オキシモリブデンジチオホスフェート、モリブデンのアミン錯体、モリブデンのコハク酸イミド錯体、有機酸のモリブデン塩、アルコールのモリブデン塩等を例示することができる。本発明においては、鉛含有金属材料の腐食又は腐食摩耗防止性能により優れる点及び低硫黄化の観点から、硫黄を含有しない有機モリブデン化合物であるモリブデンのアミン錯体、モリブデンのコハク酸イミド錯体、有機酸のモリブデン塩、アルコールのモリブデン塩が好ましく、モリブデンのアミン錯体、リン含有酸のモリブデン塩、アルコールのモリブデン塩がより好ましく、特に、モリブデンのアミン錯体が好ましい。
上記モリブデン−アミン錯体を構成するモリブデン化合物としては、三酸化モリブデン又はその水和物(MoO・nHO)、モリブデン酸(HMoO)、モリブデン酸アルカリ金属塩(MMoO;Mはアルカリ金属塩を示す)、モリブデン酸アンモニウム((NHMoO又は(NH[Mo24]・4HO)、MoCl、MoOCl、MoOCl、MoOBr、MoCl等の硫黄を含まないモリブデン化合物が挙げられる。これらのモリブデン化合物の中でも、目的化合物の収率の点から、4〜6価、特に6価のモリブデン化合物が好ましい。更に、入手性の点から、6価のモリブデン化合物の中でも、三酸化モリブデン又はその水和物、モリブデン酸、モリブデン酸のアルカリ金属塩、及びモリブデン酸アンモニウムが好ましい。
また、モリブデン−アミン錯体を構成するアミン化合物としては、特に制限されないが、アンモニア、モノアミン、ジアミン、ポリアミン、アルカノールアミンが挙げられる。より具体的には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジペンタデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジヘプタデシルアミン、ジオクタデシルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、及びプロピルブチルアミン等の炭素数1〜30のアルキル基(これらのアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい)を有するアルキルアミン;エテニルアミン、プロペニルアミン、ブテニルアミン、オクテニルアミン、及びオレイルアミン等の炭素数2〜30のアルケニル基(これらのアルケニル基は直鎖状でも分岐状でもよい);メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、及びブチレンジアミン等の炭素数1〜30のアルキレン基を有するアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミン;メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、ペンタノールアミン、ヘキサノールアミン、ヘプタノールアミン、オクタノールアミン、ノナノールアミン、メタノールエタノールアミン、メタノールプロパノールアミン、メタノールブタノールアミン、エタノールプロパノールアミン、エタノールブタノールアミン、及びプロパノールアミン、ウンデシルジエタノールアミン、ドデシルジプロパノールアミン、オレイルジエタノールアミン等の炭素数1〜30のアルカノール基(これらのアルカノール基は直鎖状でも分岐状でもよい)を有するアルカノールアミン;ウンデシルジエチルアミン、オレイルプロピレンジアミン、ステアリルテトラエチレンペンタミン等の上記モノアミン、ジアミン、ポリアミンに炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基を有する化合物やN−ヒドロキシエチルオレイルイミダゾリン等の複素環化合物;これらの化合物のアルキレンオキシド付加物;及びこれらの混合物等が例示できる。これらアミンの中でも、 第1級アミン、第2級アミン、アルカノールアミンが好ましい。
モリブデン−アミン錯体を構成するアミン化合物が有する炭化水素基の炭素数は、好ましくは4以上であり、より好ましくは4〜30であり、特に好ましくは8〜18である。アミン化合物の炭化水素基の炭素数が4未満であると、溶解性が悪化する傾向にある。また、アミン化合物の炭素数を30以下とすることにより、有機モリブデン化合物中におけるモリブデン含量を相対的に高めることができ、少量の配合で本発明の効果をより高めることができる。
また、モリブデン−コハク酸イミド錯体としては、上記モリブデン−アミン錯体の説明において例示されたような硫黄を含まないモリブデン化合物と、炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を有するコハク酸イミドとの錯体が挙げられる。コハク酸イミドとしては、炭素数4〜30、好ましくは炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するコハク酸イミド等が挙げられる。コハク酸イミドにおけるアルキル基又はアルケニル基の炭素数が4未満であると溶解性が悪化する傾向にある。また、炭素数が30を越え400以下のアルキル基又はアルケニル基を有するコハク酸イミドを使用することもできるが、当該アルキル基又はアルケニル基の炭素数を30以下とすることにより、モリブデン−コハク酸イミド錯体におけるモリブデン含有量を相対的に高めることができ、少量の配合で本発明の効果をより高めることができる。
また、有機酸のモリブデン塩としては、上記モリブデン−アミン錯体の説明において例示されたモリブデン酸化物あるいはモリブデン水酸化物、モリブデン炭酸塩又はモリブデン塩化物等のモリブデン塩基と、有機酸との塩が挙げられる。有機酸としては、リン含有酸およびカルボン酸が挙げられ、特に下記一般式(4)又は(5)で表されるリン含有酸が好ましい。
Figure 2006124537
(式(4)中、nは1又は0を示し、R11は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、R12及びR13は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を示し、少なくとも1つは水素原子である。)
Figure 2006124537
(式(5)中、nは1又は0を示し、R14は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、R15及びR16は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を示し、少なくとも1つは水素原子である。)
上記一般式(4)、(5)中、R11〜R16で表される炭素数1〜30の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキル置換シクロアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基、及びアリールアルキル基を挙げることができ、具体的には一般式(2)及び(3)において、R〜R10の置換基として例示したものと同じ炭化水素基が挙げられる。
上記R11〜R16で表される炭素数1〜30の炭化水素基は、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜24のアリール基であることが好ましく、更に好ましくは炭素数3〜18、更に好ましくは炭素数4〜12のアルキル基である。
一般式(4)で表されるリン含有酸としては、例えば、上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有する亜リン酸モノエステル、(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸、上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有する亜リン酸ジエステル、(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸モノエステル、及びこれらの混合物などが挙げられる。
一般式(5)で表されるリン含有酸としては、例えば、上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有するリン酸モノエステル、(ヒドロカルビル)ホスホン酸、上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有するリン酸ジエステル、(ヒドロカルビル)ホスホン酸モノエステル、及びこれらの混合物などが挙げられる。
また、カルボン酸のモリブデン塩を構成するカルボン酸としては、一塩基酸又は多塩基酸のいずれであってもよい。
一塩基酸としては、炭素数が通常2〜30、好ましくは4〜24の脂肪酸が用いられ、その脂肪酸は直鎖のものでも分岐のものでもよく、また飽和のものでも不飽和のものでもよい。具体的には、例えば、酢酸、プロピオン酸、直鎖状又は分岐状のブタン酸、直鎖状又は分岐状のペンタン酸、直鎖状又は分岐状のヘキサン酸、直鎖状又は分岐状のヘプタン酸、直鎖状又は分岐状のオクタン酸、直鎖状又は分岐状のノナン酸、直鎖状又は分岐状のデカン酸、直鎖状又は分岐状のウンデカン酸、直鎖状又は分岐状のドデカン酸、直鎖状又は分岐状のトリデカン酸、直鎖状又は分岐状のテトラデカン酸、直鎖状又は分岐状のペンタデカン酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデカン酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデカン酸、直鎖状又は分岐状のオクタデカン酸、直鎖状又は分岐状のヒドロキシオクタデカン酸、直鎖状又は分岐状のノナデカン酸、直鎖状又は分岐状のイコサン酸、直鎖状又は分岐状のヘンイコサン酸、直鎖状又は分岐状のドコサン酸、直鎖状又は分岐状のトリコサン酸、直鎖状又は分岐状のテトラコサン酸等の飽和脂肪酸、アクリル酸、直鎖状又は分岐状のブテン酸、直鎖状又は分岐状のペンテン酸、直鎖状又は分岐状のヘキセン酸、直鎖状又は分岐状のヘプテン酸、直鎖状又は分岐状のオクテン酸、直鎖状又は分岐状のノネン酸、直鎖状又は分岐状のデセン酸、直鎖状又は分岐状のウンデセン酸、直鎖状又は分岐状のドデセン酸、直鎖状又は分岐状のトリデセン酸、直鎖状又は分岐状のテトラデセン酸、直鎖状又は分岐状のペンタデセン酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデセン酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデセン酸、直鎖状又は分岐状のオクタデセン酸、直鎖状又は分岐状のヒドロキシオクタデセン酸、直鎖状又は分岐状のノナデセン酸、直鎖状又は分岐状のイコセン酸、直鎖状又は分岐状のヘンイコセン酸、直鎖状又は分岐状のドコセン酸、直鎖状又は分岐状のトリコセン酸、直鎖状又は分岐状のテトラコセン酸等の不飽和脂肪酸、及びこれらの混合物等が挙げられる。
また、一塩基酸としては、上記脂肪酸の他に、単環又は多環カルボン酸(水酸基を有していてもよい)を用いてもよく、その炭素数は、好ましくは1〜30、より好ましくは7〜30である。単環又は多環カルボン酸としては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基を0〜3個、好ましくは1〜2個有する芳香族カルボン酸又はシクロアルキルカルボン酸等が挙げられ、より具体的には、(アルキル)ベンゼンカルボン酸、(アルキル)ナフタレンカルボン酸、(アルキル)シクロアルキルカルボン酸等が例示できる。単環又は多環カルボン酸の好ましい例としては、安息香酸、サリチル酸、アルキル安息香酸、アルキルサリチル酸、シクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。
また、多塩基酸としては、二塩基酸、三塩基酸、四塩基酸等が挙げられる。多塩基酸は鎖状多塩基酸、環状多塩基酸のいずれであってもよい。また、鎖状多塩基酸の場合、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、また、飽和、不飽和のいずれであってもよい。鎖状多塩基酸としては、炭素数2〜16の鎖状二塩基酸が好ましく、具体的には例えば、エタン二酸、プロパン二酸、直鎖状又は分岐状のブタン二酸、直鎖状又は分岐状のペンタン二酸、直鎖状又は分岐状のヘキサン二酸、直鎖状又は分岐状のヘプタン二酸、直鎖状又は分岐状のオクタン二酸、直鎖状又は分岐状のノナン二酸、直鎖状又は分岐状のデカン二酸、直鎖状又は分岐状のウンデカン二酸、直鎖状又は分岐状のドデカン二酸、直鎖状又は分岐状のトリデカン二酸、直鎖状又は分岐状のテトラデカン二酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデカン二酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデカン二酸、直鎖状又は分岐状のヘキセン二酸、直鎖状又は分岐状のヘプテン二酸、直鎖状又は分岐状のオクテン二酸、直鎖状又は分岐状のノネン二酸、直鎖状又は分岐状のデセン二酸、直鎖状又は分岐状のウンデセン二酸、直鎖状又は分岐状のドデセン二酸、直鎖状又は分岐状のトリデセン二酸、直鎖状又は分岐状のテトラデセン二酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデセン二酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデセン二酸、アルケニルコハク酸及びこれらの混合物等が挙げられる。また、環状多塩基酸としては、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の脂環式ジカルボン酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族トリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族テトラカルボン酸等が挙げられる。
また、上記アルコールのモリブデン塩としては、上記モリブデン−アミン錯体の説明において例示されたような硫黄を含まないモリブデン化合物と、アルコールとの塩が挙げられる。アルコールは1価アルコール、多価アルコール、多価アルコールの部分エステルもしくは部分エーテル化合物、水酸基を有する窒素化合物(アルカノールアミド等)などのいずれであってもよい。なお、モリブデン酸は強酸であり、アルコールとの反応によりエステルを形成するが、当該モリブデン酸とアルコールとのエステルも本発明でいうアルコールのモリブデン塩に包含される。
一価アルコールとしては、通常炭素数1〜24、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜8のものが用いられ、このようなアルコールとしては直鎖のものでも分岐のものでもよく、また飽和のものであっても不飽和のものであってもよい。炭素数1〜24のアルコールとしては、具体的には例えば、メタノール、エタノール、直鎖状又は分岐状のプロパノール、直鎖状又は分岐状のブタノール、直鎖状又は分岐状のペンタノール、直鎖状又は分岐状のヘキサノール、直鎖状又は分岐状のヘプタノール、直鎖状又は分岐状のオクタノール、直鎖状又は分岐状のノナノール、直鎖状又は分岐状のデカノール、直鎖状又は分岐状のウンデカノール、直鎖状又は分岐状のドデカノール、直鎖状又は分岐状のトリデカノール、直鎖状又は分岐状のテトラデカノール、直鎖状又は分岐状のペンタデカノール、直鎖状又は分岐状のヘキサデカノール、直鎖状又は分岐状のヘプタデカノール、直鎖状又は分岐状のオクタデカノール、直鎖状又は分岐状のノナデカノール、直鎖状又は分岐状のイコサノール、直鎖状又は分岐状のヘンイコサノール、直鎖状又は分岐状のトリコサノール、直鎖状又は分岐状のテトラコサノール及びこれらの混合物等が挙げられる。
また、多価アルコールとしては、通常2〜10価、好ましくは2〜6価のものが用いられる。2〜10価の多価アルコールとしては、具体的には例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、(エチレングリコールの3〜15量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(ポリプロピレングリコール3〜15量体)、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール;グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜8量体、例えばジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等)、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)及びこれらの2〜8量体、ペンタエリスリトール及びこれらの2〜4量体、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール;キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、スクロース等の糖類、及びこれらの混合物等が挙げられる。
また、多価アルコールの部分エステルとしては、上記多価アルコールの説明において例示された多価アルコールが有する水酸基の一部がヒドロカルビルエステル化された化合物等が挙げられ、中でもグリセリンモノオレート、グリセリンジオレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンジオレートが好ましい。
また、多価アルコールの部分エーテルとしては、上記多価アルコールの説明において例示された多価アルコールが有する水酸基の一部がヒドロカルビルエーテル化された化合物、多価アルコール同士の縮合によりエーテル結合が形成された化合物(ソルビタン縮合物等)などが挙げられる。
また、アルコール性水酸基を有する窒素化合物としては、アミン化合物の例示として既に上述したアルカノールアミンの他、アルカノールアミンのアミノ基がアミド化されたアルカノールアミド等が挙げられ、ラウリルジエタノールアミド、ミリスチルジエタノールアミド、パルミチルジエタノールアミド、ステアリルジエタノールアミド、オレイルジエタノールアミド等が例示できる。
本発明の潤滑油組成物においては、上記の(B)成分である有機モリブデン化合物を、1種用いてもよいし、2種以上を組み合せて用いてもよく、その量は、潤滑油組成物全量を基準として、モリブデン元素換算で、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.003質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上であり、また、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.06質量%以下、更に好ましくは0.04質量%以下である。モリブデン元素換算で0.001質量%であると腐食防止性能が十分に発揮されず、また0.1質量%を越えても含有量の増加に見合う効果が得られない傾向にある。
本発明の潤滑油組成物には、上記(A)成分および(B)成分の他に、金属系清浄剤を含有することが好ましい。金属系清浄剤としては、スルホネート系清浄剤、フィネート系清浄剤、サリシレート系清浄剤、カルボキシレート系清浄剤等が挙げられる。
スルホネート系清浄剤としては、より具体的には、例えば分子量100〜1500、好ましくは200〜700のアルキル芳香族化合物をスルフォン化することによって得られるアルキル芳香族スルフォン酸の金属塩、好ましくはアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩が好ましく用いられ、アルキル芳香族スルフォン酸としては、具体的にはいわゆる石油スルフォン酸や合成スルフォン酸等が挙げられる。
石油スルフォン酸としては、一般に鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルフォン化したものやホワイトオイル製造時に副生する、いわゆるマホガニー酸等が用いられる。また合成スルフォン酸としては、例えば洗剤の原料となるアルキルベンゼン製造プラントから副生したり、ポリオレフィンをベンゼンにアルキル化したりすることにより得られる、直鎖状や分枝状のアルキル基を有するアルキルベンゼンを原料とし、これをスルフォン化したもの、あるいはジノニルナフタレンをスルフォン化したもの等が用いられる。
またこれらアルキル芳香族化合物をスルフォン化する際のスルフォン化剤としては特に制限はないが、通常、発煙硫酸や硫酸が用いられる。
アルカリ土類金属スルホネートとしては、例えば、下記一般式(6)又は(7)で表されるものを挙げることができる。
Figure 2006124537
式中、R17、R18は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数4〜30、好ましくは8〜25の直鎖または分枝アルキル基を示し、Mは、アルカリ土類金属、好ましくはカルシウム及び/又はマグネシウムを示す。
フィネート系清浄剤としては、より具体的には、炭素数4〜30、好ましくは6〜18の直鎖状又は分枝状のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルフェノール、このアルキルフェノールと元素硫黄を反応させて得られるアルキルフェノールサルファイド又はこのアルキルフェノールとホルムアルデヒドを反応させて得られるアルキルフェノールのマンニッヒ反応生成物の金属塩、好ましくはアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩等が好ましく用いられる。
アルカリ土類金属フィネートとしては、例えば下記の一般式(8)〜(10)で表されるものを挙げることができる。
Figure 2006124537
式中、R19、R20、R21、R22、R23及びR24は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数4〜30、好ましくは6〜18の直鎖または分枝アルキル基を示し、M、M及びMは、それぞれアルカリ土類金属、好ましくはカルシウム及び/又はマグネシウムを、xは1〜2の整数を示す。
サリシレート系清浄剤としては、より具体的には、炭素数4〜32、好ましくは6〜19又は炭素数20〜30の直鎖状又は分枝状のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルサリチル酸の金属塩、好ましくはアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩等が好ましく用いられる。
アルカリ土類金属サリシレートとしては、例えば、下記の一般式(11)で表されるものを挙げることができる。
Figure 2006124537
式中、R25、R26は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素又は炭素数1〜32の直鎖または分枝アルキル基を示し、少なくともどちらか一方が炭素数8〜32、好ましくは14〜32の直鎖または分枝アルキル基であり、Mはアルカリ土類金属、好ましくはカルシウム及び/又はマグネシウムを示す。アルカリ土類金属サリシレートとしては、R25、R26の一方が水素、他方が炭素数14〜32、好ましくは炭素数14〜19又は炭素数20〜30の直鎖αオレフィンから誘導される第2級アルキル基であるアルカリ土類金属サリシレートが好ましい。
また、アルカリ土類金属スルホネート系清浄剤、アルカリ土類金属フィネート系清浄剤及びアルカリ土類金属サリシレート系清浄剤には、アルキル芳香族スルホン酸、アルキルフェノール、アルキルフェノールサルファイド、アルキルフェノールのマンニッヒ反応生成物、アルキルサリチル酸等を、直接、マグネシウム及び/又はカルシウムのアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物等のアルカリ土類金属塩基と反応させたり、又は一度ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩としてからアルカリ土類金属塩と置換させたりすること等により得られる中性塩(正塩)だけでなく、さらにこれら中性塩(正塩)と過剰のアルカリ土類金属塩やアルカリ土類金属塩基(アルカリ土類金属の水酸化物や酸化物)を水の存在下で加熱することにより得られる塩基性塩や、炭酸ガス又はホウ酸若しくはホウ酸塩の存在下で中性塩(正塩)をアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等の塩基と反応させることにより得られる過塩基性塩(超塩基性塩)も含まれる。
なお、これらの反応は、通常、溶媒(ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶剤、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、軽質潤滑油基油等)中で行われる。また、金属系清浄剤は通常、軽質潤滑油基油等で希釈された状態で市販されており、また、入手可能であるが、一般的に、その金属含有量が1.0〜20質量%、好ましくは2.0〜16質量%のものを用いるのが望ましい。
これらの金属系清浄剤の金属比は特に制限はなく、通常1〜40であるが、本発明においては、鉛の腐食又は腐食摩耗を抑制しやすい点で、好ましくは2以上、より好ましくは2.6以上のものを少なくとも1種配合することが好ましい。また、安定性の点から、その金属比は好ましくは20以下、より好ましくは15以下である。
本発明における金属系清浄剤としては、塩基価維持性に優れる点で、アルカリ土類金属サリシレートを使用することが好ましく、鉛の腐食又は腐食摩耗に悪影響を及ぼす炭素数14〜19の直鎖αオレフィンから誘導される第2級アルキル基を1つ有するアルカリ土類金属サリシレート(モノアルキルタイプ)を85モル%以上、好ましくは90モル%以上含むアルカリ土類金属サリシレートを使用する場合に、有機モリブデン化合物(B)を併用することで著しく鉛の腐食又は腐食摩耗が改善され、塩基価維持性と鉛の腐食又は腐食摩耗抑制を両立しうる。この場合のアルカリ土類金属サリシレートの金属比は好ましくは1.5〜15、より好ましくは2〜8であり、金属比が2〜4.5未満のアルカリ土類金属サリシレート及び/又は金属比が4.5〜10のアルカリ土類金属サリシレートであることが特に好ましい。
また、本発明における金属系清浄剤としては、鉛の腐食又は腐食摩耗をより抑制できる点で、金属比が1〜20、好ましくは5〜15のアルカリ土類金属スルホネートを使用することが好ましく、塩基価維持性をさらに高めるために必要に応じて金属比が1.5以下、好ましくは1.3以下の上記アルカリ土類金属サリシレートを併用することが好ましい。この場合、金属比2以下、好ましくは1.5以下のアルカリ土類金属サリシレートを使用することで、貯蔵安定性にも優れた組成物を得ることができる。
なお、ここでいう金属比とは、金属系清浄剤における金属元素の価数×金属元素含有量(モル%)/せっけん基含有量(モル%)で表され、せっけん基とは、サリチル酸基、スルホン酸基、フェノール基、カルボン酸基等を示す。
本発明の潤滑油組成物において、金属系清浄剤を含有させる場合、その含有量は特に限定されないが、通常、潤滑油組成物全量基準で、金属量として0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.15質量%以上であり、組成物の硫酸灰分を低減する観点から、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、さらに好ましくは0.24質量%以下である。
本発明の潤滑油組成物には、その性能をさらに向上させるために、又は、その他の目的に応じて潤滑油に一般的に使用されている任意の添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、無灰分散剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、ジチオリン酸亜鉛以外の摩耗防止剤、粘度指数向上剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤、及び着色剤等の添加剤等を挙げることができる。
無灰分散剤としては、潤滑油に用いられる任意の無灰分散剤を用いることができるが、例えば、炭素数40〜400の直鎖若しくは分枝状のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する含窒素化合物又はその誘導体が挙げられる。ここでいう含窒素化合物としては、例えばコハク酸イミド、ベンジルアミン、ポリアミン、マンニッヒ塩基等が挙げられ、その誘導体としては、これら含窒素化合物にホウ酸、ホウ酸塩等のホウ素化合物、(チオ)リン酸、(チオ)リン酸塩等のリン化合物、有機酸、ヒドロキシ(ポリ)オキシアルキレンカーボネート等を作用させた誘導体等が挙げられる。本発明においては、これらの中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上を配合することができる。このアルキル基又はアルケニル基の炭素数は40〜400、好ましくは60〜350である。アルキル基又はアルケニル基の炭素数が40未満の場合は化合物の潤滑油基油に対する溶解性が低下し、一方、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が400を越える場合は、潤滑油組成物の低温流動性が悪化するため、それぞれ好ましくない。このアルキル基又はアルケニル基は、直鎖状でも分枝状でもよいが、好ましいものとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーやエチレンとプロピレンのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基や分枝状アルケニル基等が挙げられる。本発明においては、これら無灰分散剤の中でも、数平均分子量が700〜3500、好ましくは1000〜2000、さらに好ましくは1200〜1500の分枝状アルキル基又はアルケニル基、特にポリ(イソ)ブテニル基を有するコハク酸イミド及び/又はそのホウ素化合物誘導体であることが望ましい。未変性のコハク酸イミドを使用した場合であっても(A)成分又は(A)成分及び(B)成分を併用した場合に十分な鉛腐食防止効果が得られることから、本発明の構成は有用である。
本発明において、無灰分散剤を配合する場合の含有量は、特に制限はないが、通常組成物全量基準で0.1〜20質量%、好ましくは3〜15質量%である。また、無灰分散剤としてコハク酸イミドのホウ素化合物誘導体を含有させる場合、そのホウ素量に特に制限はないが、組成物全量基準で、ホウ素量として0.005質量%以上となるように含有させることが好ましく、より好ましくは0.01質量%以上、特に好ましくは0.02質量%以上であり、当該ホウ素化合物誘導体の含有量が多くなると、シール材への影響や硫酸灰分の増加が懸念されるため、その含有量は、ホウ素量として好ましくは0.2質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.08質量%以下、さらに好ましくは0.06質量%以下、さらに好ましくは0.04質量%以下、特に好ましくは0.03質量%以下あるいはそれ未満である。
本発明における酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤等の無灰系酸化防止剤や有機金属系酸化防止剤等、潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。酸化防止剤の添加により、潤滑油組成物の酸化防止性をより高められ、本発明の組成物の、鉛含有金属の腐食又は腐食摩耗防止性能を高めるだけでなく、塩基価維持性をより高めることができる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、2,2’−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル置換脂肪酸エステル類等を好ましい例として挙げることができる。これらは二種以上を混合して使用してもよい。
アミン系酸化防止剤としては、例えば、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、及びジアルキルジフェニルアミンを挙げることができる。これらは二種以上を混合して使用してもよい。
上記フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、有機金属酸化防止剤は組み合せて配合してもよい。
本発明の潤滑油組成物において酸化防止剤を含有させる場合、その含有量は、通常潤滑油組成物全量基準で20質量%以下であり、好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。その含有量が20質量%を超える場合は、配合量に見合った十分な性能が得られないため好ましくない。一方、その含有量は、鉛含有金属材料の腐食又は腐食摩耗防止性能をより長期間維持することが可能となる点で、潤滑油組成物全量基準で好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは1質量%以上、特に好ましくは1.5質量%以上である。本発明においては、(A)成分、(B)成分を併用することによって、酸化防止剤の含有量を1.5質量%以下に抑制し、コスト的に有利な組成物を得ることもできる。
摩擦調整剤としては、潤滑油用の摩擦調整剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、硫化モリブデンジチオカーバメート又は硫化オキシモリブデンジチオカーバメート、硫化モリブデンジチオホスフェート又は硫化オキシモリブデンジチオホスフェート、二硫化モリブデン等のモリブデン系摩擦調整剤、炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基、特に炭素数6〜30の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、アミン化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル、ヒドラジド(オレイルヒドラジド等)、セミカルバジド、ウレア、ウレイド、ビウレット等の無灰摩擦調整剤等が挙げられ、通常0.1〜5質量%の範囲で含有させることが可能である。
ジチオリン酸亜鉛以外の摩耗防止剤としては、上記ジチオリン酸亜鉛以外のリン含有摩耗防止剤、硫黄含有摩耗防止剤等、潤滑油に一般に使用される任意の摩耗防止剤を使用することができる。
リン含有摩耗防止剤としては、リンを分子中に含有する摩耗防止剤であれば特に制限はない。
本発明におけるリン含有摩耗防止剤としては、一般式(12)で表されるリン化合物、一般式(13)で表されるリン化合物、及びそれらの金属塩、それらのアミン塩あるいはこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
Figure 2006124537
(一般式(12)において、X、X及びXは、それぞれ個別に酸素原子又は硫黄原子を示し、R27、R28及びR29は、それぞれ個別に水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す。)
Figure 2006124537
(一般式(13)において、X、X、X及びXは、それぞれ個別に酸素原子又は硫黄原子(X、X及びXの1つ又は2つが単結合又は(ポリ)オキシアルキレン基でもよい。)を示し、R30、R31及びR32は、それぞれ個別に水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す。)
上記R27〜R32で表される炭素数1〜30の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキル置換シクロアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基、及びアリールアルキル基を挙げることができ、具体的には上述の一般式(2)、(3)のR〜R10で挙げた置換基と同じものを例示することができる。
上記R27〜R32で表される炭素数1〜30の炭化水素基は、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜24のアリール基であることが好ましく、更に好ましくは炭素数3〜18、更に好ましくは炭素数4〜12のアルキル基である。
一般式(12)で表されるリン化合物としては、例えば、以下のリン化合物を挙げることができる。
亜リン酸、モノチオ亜リン酸、ジチオ亜リン酸、トリチオ亜リン酸;上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有する亜リン酸モノエステル、モノチオ亜リン酸モノエステル、ジチオ亜リン酸モノエステル、トリチオ亜リン酸モノエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有する亜リン酸ジエステル、モノチオ亜リン酸ジエステル、ジチオ亜リン酸ジエステル、トリチオ亜リン酸ジエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を3つ有する亜リン酸トリエステル、モノチオ亜リン酸トリエステル、ジチオ亜リン酸トリエステル、トリチオ亜リン酸トリエステル;及びこれらの混合物。
本発明においては、銅の腐食又は腐食摩耗防止性を向上させ、高温清浄性や酸化安定性、塩基価維持性などのロングドレイン性能をより高めるために、一般式(12)のX〜Xは、2つ以上が酸素原子であることが好ましく、それらの全てが酸素原子であることが特に好ましい。
一般式(13)で表されるリン化合物としては、例えば、以下のリン化合物を挙げることができる。
リン酸、モノチオリン酸、ジチオリン酸、トリチオリン酸、テトラチオリン酸;上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有するリン酸モノエステル、モノチオリン酸モノエステル、ジチオリン酸モノエステル、トリチオリン酸モノエステル、テトラチオリン酸モノエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有するリン酸ジエステル、モノチオリン酸ジエステル、ジチオリン酸ジエステル、トリチオリン酸ジエステル、テトラチオリン酸ジエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を3つ有するリン酸トリエステル、モノチオリン酸トリエステル、ジチオリン酸トリエステル、トリチオリン酸トリエステル、テトラチオリン酸トリエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を1〜3つ有するホスホン酸、ホスホン酸モノエステル、ホスホン酸ジエステル;炭素数1〜4の(ポリ)オキシアルキレン基を有する上記リン化合物;β−ジチオホスホリル化プロピオン酸やジチオリン酸とオレフィンシクロペンタジエン又は(メチル)メタクリル酸との反応物等の上記リン化合物の誘導体;及びこれらの混合物。
本発明においては、銅の腐食又は腐食摩耗防止性を向上させ、高温清浄性や酸化安定性、塩基価維持性などのロングドレイン性能をより高めるために、一般式(13)のX〜Xは、2つ以上が酸素原子であることが好ましく、3つ以上が酸素原子であることがさらに好ましく、それらの全てが酸素原子であることが特に好ましい。なお、これらX、X及びXの1つ又は2つが単結合又は(ポリ)オキシアルキレン基でもよい。
一般式(12)又は(13)で表されるリン化合物の塩としては、リン化合物に金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属塩化物等の金属塩基、アンモニア、炭素数1〜30の炭化水素基又はヒドロキシル基含有炭化水素基のみを分子中に有するアミン化合物等の窒素化合物を作用させて、残存する酸性水素の一部又は全部を中和した塩を挙げることができる。
上記金属塩基における金属としては、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、銅、鉄、鉛、ニッケル、銀、マンガン等の重金属等が挙げられる。
これらの中ではカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属及び亜鉛が好ましい。
上記リン化合物の金属塩は、金属の価数やリン化合物のOH基あるいはSH基の数に応じその構造が異なり、従ってその構造については何ら限定されない。例えば、酸化亜鉛1モルとリン酸ジエステル(OH基が1つ)2モルを反応させた場合、下記一般式(14)で表わされる構造の化合物が主成分として得られると考えられるが、ポリマー化した分子も存在していると考えられる。
Figure 2006124537
また、例えば、酸化亜鉛1モルとリン酸モノエステル(OH基が2つ)1モルとを反応させた場合、下記一般式(15)で表わされる構造の化合物が主成分として得られると考えられるが、ポリマー化した分子も存在していると考えられる。
Figure 2006124537
上記窒素化合物としては、アンモニア、モノアミン、ジアミン、ポリアミン、アルカノールアミン等が挙げられ、具体的には、(B)成分で上述したモリブデン−アミン錯体を構成するアミン化合物と同じ物が例示できる。
これら窒素化合物の中でもデシルアミン、ドデシルアミン、ジメチルドデシルアミン、トリデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン及びステアリルアミン等の炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪族アミン(これらは直鎖状でも分枝状でもよい。)が好ましい例として挙げることができる。
リン含有摩耗防止剤としては、一般式(12)におけるX、X及びXが全て酸素原子であるリン化合物の金属塩及び一般式(13)におけるX、X、X及びXが全て酸素原子(X、X及びXの1つ又は2つが単結合又は(ポリ)オキシアルキレン基でもよい。)であるリン化合物の金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが、酸化安定性、高温清浄性等のロングドレイン性、低摩擦性等に優れる点で好ましい。
また、リン含有摩耗防止剤が、一般式(13)におけるX、X、X及びXの全てが酸素原子(X、X及びXの1つ又は2つが単結合又は(ポリ)オキシアルキレン基でもよい。)であり、R30、R31及びR32がそれぞれ個別に炭素数1〜30の炭化水素基であるリン化合物であることが、酸化安定性、高温清浄性等のロングドレイン性に優れ、さらなる低摩擦性、さらなる低灰化が可能となる点で好ましい。
これらの成分の中では、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基を2個有する亜リン酸ジエステルと亜鉛又はカルシウムとの塩、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基、好ましくは炭素数6〜12のアルキル基を3個有する亜リン酸トリエステル、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基を1個有するリン酸のモノエステルと亜鉛又はカルシウムとの塩、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基を2個有するリン酸のジエステルと亜鉛又はカルシウムとの塩、炭素数1〜18のアルキル基又はアリール基を2つ有するホスホン酸モノエステルと亜鉛又はカルシウムとの塩、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基、好ましくは炭素数6〜12のアルキル基を3個有するリン酸トリエステル、炭素数1〜18のアルキル基又はアリール基を3つ有するホスホン酸ジエステルであることが好ましい。これらの成分は、1種類あるいは2種類以上を任意に配合することができる。
本発明の潤滑油組成物において上記リン含有摩耗防止剤の含有量は、特に制限はないが、組成物全量基準でリン元素換算量として0.005質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、特に好ましくは0.02質量%以上であり、一方、その含有量は、好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.08質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以下である。リン含有摩耗防止剤の含有量が、リン元素として0.005質量%未満の場合は、摩耗防止性に対して効果がなく好ましくなく、一方、その含有量が、リン元素として0.1質量%を超える場合では、排ガス後処理装置への悪影響が懸念されるため好ましくない。なお、リン含有摩耗防止剤としてジチオリン酸亜鉛等の硫黄及びリン含有摩耗防止剤を含有させる場合、銅の腐食又は腐食摩耗を抑制できる点で、これらの含有量を組成物全量基準で、リン元素換算量として0.06質量%以下、好ましくは0.05質量%以下、さらに好ましくは0.04質量%以下、あるいはこれらを配合しない、低硫黄化及びロングドレイン化された潤滑油組成物とすることができる。
硫黄含有摩耗防止剤としては、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類、ジチオカーバメート、ジチオカルバミン酸亜鉛等の硫黄含有化合物等が挙げられる。これら硫黄含有化合物は、銅の腐食又は腐食摩耗を抑制するため適宜添加することができるが、これらの含有量を0.15質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、特に0.05質量%以下、あるいはこれらを配合しないことで、低硫黄化及びロングドレイン化された潤滑油組成物とすることができる。
粘度指数向上剤としては、具体的には、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの重合体又は共重合体若しくはその水添物などのいわゆる非分散型粘度指数向上剤、又はさらに窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンとしてはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等が例示できる。)若しくはその水素化物、ポリイソブチレン若しくはその水添物、スチレン−ジエン共重合体の水素化物、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体及びポリアルキルスチレン等が挙げられる。
これら粘度指数向上剤の分子量は、せん断安定性を考慮して選定することが必要である。具体的には、粘度指数向上剤の数平均分子量は、例えば分散型及び非分散型ポリメタクリレートの場合では、通常5,000〜1,000,000、好ましくは100,000〜900,000のものが、ポリイソブチレン又はその水素化物の場合は通常800〜5,000、好ましくは1,000〜4,000のものが、エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物の場合は通常800〜500,000、好ましくは3,000〜200,000のものが用いられる。
またこれらの粘度指数向上剤の中でもエチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物を用いた場合には、特にせん断安定性に優れた潤滑油組成物を得ることができる。上記粘度指数向上剤の中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができる。粘度指数向上剤の含有量は、通常潤滑油組成物基準で0.1〜20質量%である。
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、及びイミダゾール系化合物等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、及び多価アルコールエステル等が挙げられる。
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、及びβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン、フルオロシリコール、及びフルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
これらの添加剤を本発明の潤滑油組成物に含有させる場合には、その含有量は潤滑油組成物全量基準で、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤ではそれぞれ0.005〜5質量%、金属不活性化剤では0.005〜1質量%、消泡剤では0.0005〜1質量%の範囲で通常選ばれる。
なお、本発明の潤滑油組成物は、ジチオリン酸亜鉛の含有量が、リン量として0.08質量%以下であっても、鉛含有金属材料の腐食又は腐食摩耗を抑制しうる組成物であり、必要に応じて全硫黄含有量が0.3質量%以下の低硫黄潤滑油組成物とすることができ、潤滑油基油や各種添加剤の選択によって、組成物の全硫黄含有量が0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、特に0.05質量%以下あるいは0.01質量%以下、実質的に硫黄を含有しない潤滑油組成物を得ることも可能である。
また、本発明の潤滑油組成物は、金属を含有する添加剤の含有量を調整することで、組成物の硫酸灰分を1.0質量%以下とすることも可能であり、排ガス浄化装置や燃焼室への堆積を抑制する観点から、好ましくは0.8質量%、さらに好ましくは0.6質量%以下、特に0.5質量%以下とすることが望ましい。
本発明の潤滑油組成物は、低硫黄であり、鉛含有金属材料の腐食又は腐食摩耗防止性に優れるだけでなく、低摩擦性、ロングドレイン性(酸化安定性、塩基価維持性等)及び高温清浄性にも優れ、内燃機関用潤滑油として好ましく使用することができ、低硫黄、さらには低リンあるいは無リン、低灰分の潤滑油とすることで、特に排ガス後処理装置を装着した内燃機関に好適である。また、低硫黄燃料、例えば、硫黄分が50質量ppm以下、さらに好ましくは30質量ppm以下、特に好ましくは10質量ppm以下の燃料(例えばガソリン、軽油、灯油、アルコール、ジメチルエーテル、LPG、天然ガス等)を用いる内燃機関用潤滑油に好適である。特に鉛含有摺動材料を有するディーゼルエンジン用やガスエンジン用潤滑油として特に好ましく使用することができる。中でも、ガスエンジン用潤滑油として特に好ましく使用することができる。
また、本発明の鉛含有金属材料に好適な潤滑油組成物は、自動又は手動変速機等の駆動系用潤滑油、グリース、湿式ブレーキ油、油圧作動油、タービン油、圧縮機油、軸受け油、冷凍機油等の潤滑油としても好適に使用することができる。
以下に本発明の内容を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
(実施例1〜8、比較例1〜2)
表1に示されるように本発明の潤滑油組成物(実施例1〜8)、比較用の潤滑油組成物(比較例1〜2)をそれぞれ調製した。
Figure 2006124537
得られた各組成物に対して、下記の評価試験を行った。
(NOx吸収試験による鉛溶出量の経時変化)
日本トライボロジー会議予稿集1992、10、465に準拠した条件(140℃、NOx:1185ppm)にて鉛片を入れた試験油にNOxガスを吹き込み、強制劣化させたときの鉛溶出量の経時変化を測定した。鉛溶出量が少ないほど、鉛腐食を抑制しうることを示す。なお、NOx吸収試験による強制劣化により、潤滑油の劣化、特に内燃機関用潤滑油の劣化に伴う劣化生成物が鉛腐食に与える影響を短時間で確認することができる。
(比較例1〜2)
表1の比較例1の組成物は、(A)成分であるホウ酸エステルと、(B)成分である有機モリブデン化合物の両方を含有しない組成物であり、比較例2の組成物は、(B)成分である有機モリブデンのみ含有する組成物である。どちらにおいても140℃における鉛溶出量は非常に多い。この結果から(A)成分を含有しない組成物では、鉛腐食の防止が不十分であることがわかる。
(実施例1〜8)
表1の実施例1、2の組成物は、(A)成分であるホウ酸エステルを含有した組成物であり、実施例3〜8の組成物は(A)成分であるホウ酸エステルと(B)成分である有機モリブデン化合物の両方を含有する組成物である。全ての実施例において、比較例と比べてその鉛溶出量が抑制されていることがわかる。中でも、70時間後の鉛溶出量は、(A)成分と(B)成分の両方を含有している実施例3〜8で著しく抑制されていることが分かる。

Claims (2)

  1. 潤滑油基油に、組成物全量基準で、ジチオリン酸亜鉛をリン量として0.08質量%以下又は含有せず、鉛含有金属材料と接触する潤滑油組成物であって、(A)ホウ酸エステル及び/又はその誘導体をB量として0.001〜0.1質量%含有することを特徴とする潤滑油組成物。
  2. 潤滑油基油に、組成物全量基準で、ジチオリン酸亜鉛をリン量として0.08質量%以下又は含有せず、(A)ホウ酸エステルをB量として0.001〜0.1質量%、(B)有機モリブデン化合物をMo量として0.001〜0.1質量%含有することを特徴とする潤滑油組成物。
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