JP2006122992A - 半溶融鋳造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 加熱により半溶融状態となる物性を有するビレットを用いて鋳造を行うときに、ビレットの均一な加熱と装置の簡素化および操作の容易性を同時に満足することのできる半溶融鋳造装置を提供する。
【解決手段】 成形型10と、成形型に向けて半溶融状態のビレット1を送り出すビレット送り出し手段20と、ビレットを加熱するための電磁誘導コイルCとを備える。ビレット送り出し手段20は、上下方向に進退可能なビレット台座23と、ビレット台座23を進退方向に直交する方向に回転させる回転手段(モータ)を備え、電磁誘導コイルCはその中心軸をビレット台座23の回転軸と一致させた状態で、後退位置にあるビレット台座23と成形型10との間に位置している。
【選択図】 図1
【解決手段】 成形型10と、成形型に向けて半溶融状態のビレット1を送り出すビレット送り出し手段20と、ビレットを加熱するための電磁誘導コイルCとを備える。ビレット送り出し手段20は、上下方向に進退可能なビレット台座23と、ビレット台座23を進退方向に直交する方向に回転させる回転手段(モータ)を備え、電磁誘導コイルCはその中心軸をビレット台座23の回転軸と一致させた状態で、後退位置にあるビレット台座23と成形型10との間に位置している。
【選択図】 図1
Description
本発明は、アルミニウム合金等のビレットを半溶融状態で成形型内に送り込んで鋳造する半溶融鋳造法に用いる鋳造装置に関する。
半溶融鋳造法とは、凝固時に電磁攪拌して特定のチクソトロピック状に結晶構造を分布させたビレットを、固相と液相とが共存する半溶融状態にまで加熱し、半溶融状態のビレットを成形型に送り込んで製品を鋳造する方法であり、良質の成形品が得られることから、広く用いられている。半溶融鋳造に使用するビレットを半溶融状態にまで加熱するための装置およびそれを用いる半溶融鋳造装置もすでに提案されている。
特許文献1にはビレットの加熱装置が記載されており、そこにおいて、横向きに置かれた回転する断熱筒を囲うようにして電磁誘導コイルが配置され、押し込み手段により断熱筒の中を入口から出口に向けて移動するビレットを、誘導加熱により加熱するようにしている。断熱筒の出口には受け取りトレイが配置されていて、そこに約580℃に加熱されて半溶融状態となったビレットが排出される。受け取りトレイ上の半溶融状態のビレットはマニュピレータで成形型に運ばれ、成形型内に送り込まれる。この加熱装置では、断熱筒が回転することによりビレット自体も回転しながら加熱されるので、ビレット全体が均一に加熱される利点がある。
特許文献2には半溶融鋳造装置が記載されている。この半溶融鋳造装置は、成形型と、成形型に向けて半溶融状態のビレットを送り出すビレット送り出し手段と、ビレットを加熱するための電磁誘導コイルとを備えており、ビレット送り出し手段は、セラミックスリーブ内を上下方向に進退可能なビレット台座を備え、電磁誘導コイルは、後退位置にあるビレット台座と成形型との間において、セラミックスリーブの外側を覆うようにしてかつ断熱壁を介して配置されている。セラミックスリーブは側面に開口を有しており、後退位置にあるビレット台座上に該開口からビレットが置かれ、ビレット台座が上昇する過程でビレットは誘導加熱により半溶融状態に加熱される。さらにビレット台座が上昇することにより、半溶融状態のビレットは成形型内に送り込まれる。
特許文献1に記載のビレットの加熱装置は、ビレットを回転させながら誘導加熱を行うことができるので、ビレットの均一加熱が可能となる。しかし、断熱壁の存在により加熱効率が低下すること、および横置きされた断熱筒内をビレットが移動する形態であることから、断熱壁の内面とビレットの焼き付き、かじり、さらには断熱壁内面の磨耗が生じるのを避けることができない。また、成形型と分離した加熱装置であり、別途、マニュピレータのような半溶融状態のビレットを搬送する手段を必要とする。
特許文献2に記載の鋳造装置は、半溶融状態のビレットを直接成形型内に送り出すことができ、装置の簡素化が図られる。しかし、セラミックスリーブの外側に断熱壁を介して電磁誘導コイルが配置されている構成であり、ビレット加熱効率が低下する。また、ビレット台座は上下方向に進退するのみであり、回転しないので、誘導加熱によりビレットが均一に加熱され難い。特に、セラミックスリーブの周壁に形成した開口からビレットを挿入してビレット台座に乗せる形態であり、十分注意を払わないと、電磁誘導コイルの中心軸とビレットの中心軸とを一致させるのができず、中心軸がずれてビレット台座上に置かれた場合に、ビレットの加熱は不均一となり、成形型のキャビティ内に半溶融状態の溶湯が均一に注湯されない恐れがある。
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、加熱により半溶融状態(固液共存状態)となる物性を有するビレットを用いて鋳造を行うときに、ビレットの均一な加熱と装置の簡素化および操作の容易性を同時に満足することのできる半溶融鋳造装置を提供することを目的とする。
本発明による半溶融鋳造装置は、成形型と、成形型に向けて半溶融状態のビレットを送り出すビレット送り出し手段と、ビレットを加熱するための電磁誘導コイルとを少なくとも備える半溶融鋳造装置であって、ビレット送り出し手段は、上下方向に進退可能なビレット台座と、ビレット台座を進退方向に直交する方向に回転させる回転手段とを備えており、電磁誘導コイルはその中心軸をビレット台座の回転軸と一致させた状態で後退位置にあるビレット台座と成形型との間に配置されていることを特徴とする。
上記の半溶融鋳造装置は、ビレット送り出し手段に収容した半溶融状態となったビレットが、直接、成形型に送り込まれる形態であり、装置全体の簡素化と操作の容易性が確保される。また、ビレットと電磁誘導コイルとの間にスリーブや断熱壁を設けないので、高い加熱効率が得られる。
さらに、ビレット台座は回転するようになっており、かつその中心軸は電磁誘導コイルの中心軸と一致しているので、ビレット台座の中心軸とビレットの中心軸とが一致しない状態でビレットがビレット台座上に乗っている場合でも、ビレットの加熱は均一に進行する。そのために、ビレット台座上にビレットを置く作業に多くの注意を払う必要がなく、作業性は大きく向上する。また、ビレットが回転することで、融けた部分(液相部分)が遠心力で攪拌され、加熱時間を短縮することができる。さらに、ビレットの真円度が悪くても、ビレット表面と電磁誘導コイルとの距離が時間とともに平均化され、均一な加熱が進行するようになる。
好ましい態様において、ビレット送り出し手段は、半溶融状態のビレットを成形型に向けて送り出す第1の位置と、第1の位置から傾斜した姿勢であってビレットをビレット台座上に取り込むことのできる第2の位置とを選択的に取りうるようになっている。このようにすることにより、加熱前のビレットをビレット送り出し手段内に取り込むことが容易となり、操作性はさらに向上する。
好ましい態様において、成形型とビレット送り出し手段のビレット送り出し先端側との間には、ビレット先端を抑えることのできるビレット抑え手段が備えられ、さらに好ましくは、ビレット抑え手段のビレット先端との当接面にはボールベアリングが配される。ビレット抑え手段でビレットの先端を抑えておくことにより、ビレット台座が回転(例えば、60〜200rpm程度)するときに、ビレット台座上でのビレットの姿勢を安定して保持しておくことができる。ボールベアリングを配する場合には、ビレット抑え手段とビレット表面との間の抵抗を小さくすることができ、ビレットの保持は一層安定する。ビレット保持手段をビレット先端を保持している第1の姿勢と保持から開放された第2の姿勢とを選択的に取りうるようにしておくことも可能であり、それにより、鋳造装置全体の操作性は向上するとともに、半溶融状態となったビレットをビレット台座を上昇させて成形型内に送り出す操作も円滑に行うことができる。
本発明によれば、加熱により半溶融状態となる物性を有するビレットを用いて鋳造を行うときに、ビレットの均一な加熱と装置の簡素化および操作の容易性を同時に満足することのできる半溶融鋳造装置が得られる。
以下、本発明による半溶融鋳造装置の一実施の形態を、図面を参照しながら、その操作手順とともに説明する。図1は半溶融鋳造装置にビレットを取り込むまでの状態を説明しており、図1aはビレット取り込み前の状態を、図1bは取り込んだ後の状態を示している。図2はビレットを加熱してから成形型に送り出すまでの状態を説明しており、図2aは加熱している状態を、図2bは成形型に送り出す状態を示している。図3はビレット台座を回転させる機構の一例を説明するための図であり、図4はビレット抑え手段を説明するための図である。
図示の例において、半溶融鋳造装置Aは、成形型10と、成形型10に向けて半溶融状態のビレット1を送り出すビレット送り出し手段20と、ビレット1を加熱するための電磁誘導コイルCとを備える。成形型10は、従来から半溶融鋳造において用いられている成形型であってよく、この例では、左右に分離する2つの型11、12からなり、図1aに示す開いた状態と、図1bに示す閉じた状態とを選択的に取りうるようになっている。閉じることにより、成形型10内にはキャビティ13が形成される。さらに、キャビティ13の溶湯導入側には、半溶融状態となったビレット1を案内するための案内領域14が設けられるとともに、2つの型11、12の裏面側(ビレット送り出し手段20側)には、後記するように誘導加熱時にビレット1の先端側を抑えて支持するためのビレット抑え手段50が配置される。
ビレット送り出し手段20は、セラミックのような材料で作られる円筒部材21とその下方に位置するアクチュエータ30等を備える。円筒部材21は所要長さの断面円形の中空部22を有し、該中空部22の上方領域には内壁面に沿うようにして電磁誘導コイルCが取り付けられている。中空部22の内部には、電磁誘導コイルCの内部を通過できる大きさの円盤状のビレット台座23が配置されており、ビレット台座23の裏面には、中空部22の中心軸Lと同じ中心軸を持つようにして支柱24が固定されている。図3に示すように、支柱24の下端にはベアリング25を介して基台26が取り付けてあり、基台26の内部空間27にはモータ28が固定してある。そして、モータ28の駆動軸29が支柱24に連接している。なお、基台26の外形寸法は中空部22の内径とほぼ同じであり、かつ、ビレット台座23と基台26との距離は、基台26が中空部22の底部に位置するときに、ビレット台座23が電磁誘導コイルCのやや下方に位置できるように、支柱24の長さが設定されている。
円筒部材21の下方には、同じ中心軸Lを持つようにして、プランジャ31とシリンダ32とからなる前記アクチュエータ30が位置している。円筒部材21とシリンダ32とは複数本のねじ部材33を介して接続されており、図示しない内臓モータによりねじ部材33が回転することにより、円筒部材21は、中心軸Lを維持した状態で、シリンダ32との距離を変更できるようになっている。図3に示すように、プランジャ31の周面には軸線方向にスプライン34が形成されており、シリンダ32の上端壁35におけるプランジャ31の通過口にはスプライン34と係合する凹凸溝が形成されている。また、図3に示すように、プランジャ31の上端は適宜の手段により前記した基台26の裏面に固着されている。
アクチュエータ30の下端は中心軸Lを通過する枢支点2により回動自在に支持されるとともに、シリンダ32の上端側は、機枠3に枢支点4に回動自在に支持されたピストンシリンダ装置36のピストン37の先端と枢支点38で接続している。従って、ピストンシリンダ装置36を操作してピストン37を出し入れすることにより、ビレット送り出し手段20は、図1bに示す中心軸Lを成形型10の中心線L1と一致させた位置(第1の位置)と、図1aに示す中心軸Lが傾斜した位置(第2の位置)との2つの位置を選択的に取ることができる。後記するように、第1の位置は半溶融状態のビレット1を成形型10に向けて送り出す位置であり、第2の位置はビレット1をビレット台座23上に取り込むことのできる位置である。第2の位置においてビレット送り出し手段20の傾斜角度をどの程度とするかは、上方に位置する成形型10との関係で、成形型10によりビレット1の取り込みが邪魔されない位置となるまでの傾斜角度とされる。
また、空圧あるいは油圧によりアクチュエータ30を操作してプランジャ31を上下動させると、ビレット台座23は、基台26および支柱24を介して、円筒部材21の中空部22内を上下方向に移動する。さらに、基台26に固定したモータ28を駆動すると、ビレット台座23の位置に関係なく、ビレット台座23は、支柱24を介して、中空部22の中心軸Lと同じ中心軸を維持した状態で中空部22内で回転する。
次に、図4も参照して、好ましくは配置されるビレット抑え手段50を説明する。ビレット抑え手段50は、成形型10とビレット送り出し手段20のビレット送り出し先端側との間に配置される。図4に示すように、この例において、ビレット抑え手段50は図示しない適宜のアクチュエータにより開閉自在とされた対向する2つの部材51、51で構成され、対向するようにして、それぞれに切り欠き52、52が設けてある。閉じた状態で切り欠き52、52により形成される孔の大きさと形状は、ビレット送り出し手段20で使用するビレット1の水平方向の断面の寸法および形状とほぼ同じとなるようにしてある。また、切り欠き52、52の側周面には適数のボールベアリング53が取り付けてあり、接触抵抗を低減している。
鋳造を行うに当っては、成形型10を開き、また、ビレット抑え手段50も開いた状態としておく。ビレット送り出し手段20に配置したねじ部材33を操作して、円筒部材21をシリンダ32に近接した位置とするとともに、ピストンシリンダ装置36を操作してビレット送り出し手段20を、図1aに示す傾斜した位置(第2の位置)とする。それにより、円筒部材21の中空部22は成形型10から外れた位置となるので、作業者は、中空部22の上方開口からビレット1を投入する。その際に、アクチュエータ30を操作して、ビレット台座23は最も下位の位置、すなわち電磁誘導コイルCのやや下方の位置としておく。それにより、取り込まれたビレット1は、中空部22の内壁面に沿うようにして取り付けた電磁誘導コイルC内に全体が位置するようになる。
次に、ピストンシリンダ装置36を操作して、ビレット送り出し手段20を図1bに示す第1の位置に戻すとともに、2つの型11、12を閉じる。その状態で、図2aに示すように、ねじ部材33を操作して円筒部材21を上昇させ、円筒部材21の先端を成形型10の底面に当接させるとともに、アクチュエータ30を操作して取り込んだビレット1の上端を中空部22からわずかに飛び出させる。そして、ビレット抑え手段50を閉じた姿勢とする。それにより、ビレット1の先端はビレット抑え手段50に形成した切り欠き部52により抑えられた状態となる。
電磁誘導コイルCに通電し、同時に、モータ28を駆動してビレット台座23を回転させビレット1に回転を与える。誘導加熱によりビレット1は次第に加熱されていく。加熱の過程でビレット1は回転しており、前記したように、ビレット台座23の中心軸Lとビレット1の中心軸とが一致しない状態でビレット1がビレット台座23上に乗っている場合でも、ビレット1の加熱は均一に進行する。また、ビレット1が回転することで、融けた部分(液相部分)が遠心力で攪拌され、加熱時間を短縮する。さらに、ビレット1の真円度が悪くても、ビレット1の表面と電磁誘導コイルCとの距離が時間とともに平均化され、均一な加熱が進行する。加熱は、ビレット1が半溶融状態となるまで、すなわち例えばほぼ584℃となるまで継続して行う。この例では、ビレット1の上端側はビレット抑え手段50により支持されており、ビレット1の回転は安定する。
所要にビレット1が加熱された時点でビレット抑え手段50を開き、アクチュエータ30を操作してビレット台座23を上昇させる。それにより、図2bに示すように、半溶融状態となったビレット1は成形型10の案内領域14内に送り出され、そこから、キャビティ13内に充填される。その過程でも、モータ28は回転駆動しており、ビレット1は回転しながら、型内充填が進行する。1つのビレットの型内充填が終わった後、ビレット送り出し手段20は、図1aに示した状態に戻され、次のビレットの取り込みと加熱に備える。以下、それが反復される。
A…半溶融鋳造装置、C…電磁誘導コイル、L…中心軸、L1…成形型の中心線、1…ビレット、2…枢支点、3…機枠、4…枢支点、10…成形型、11、12…2つの型、13…キャビティ、14…半溶融状態となったビレットを案内するための案内領域、20…ビレット送り出し手段、21…円筒部材、22…中空部、23…ビレット台座、24…支柱、25…ベアリング、26…基台、27…基台の内部空間、28…モータ、29…モータの駆動軸、30…アクチュエータ、31…プランジャ、32…シリンダ、33…ねじ部材、34…プランジャ周面のスプライン、36…ピストンシリンダ装置、37…ピストン、38…枢支点、50…ビレット抑え手段、52、52…ビレット抑え手段に形成される切り欠き、53…ボールベアリング
Claims (4)
- 成形型と、成形型に向けて半溶融状態のビレットを送り出すビレット送り出し手段と、ビレットを加熱するための電磁誘導コイルとを少なくとも備える半溶融鋳造装置であって、ビレット送り出し手段は、上下方向に進退可能なビレット台座と、ビレット台座を進退方向に直交する方向に回転させる回転手段とを備えており、電磁誘導コイルはその中心軸をビレット台座の回転軸と一致させた状態で後退位置にあるビレット台座と成形型との間に配置されていることを特徴とする半溶融鋳造装置。
- ビレット送り出し手段は、半溶融状態のビレットを成形型に向けて送り出す第1の位置と、第1の位置から傾斜した姿勢であってビレットをビレット台座上に取り込むことのできる第2の位置とを選択的に取りうるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の半溶融鋳造装置。
- 成形型とビレット送り出し手段のビレット送り出し先端側との間には、ビレット先端を抑えることのできるビレット抑え手段が備えられていることを特徴とする請求項1または2に記載の半溶融鋳造装置。
- ビレット抑え手段のビレット先端との当接面にはボールベアリングが配されていることを特徴とする請求項3に記載の半溶融鋳造装置。
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