JP2006120688A - 絶縁膜及びその製造方法、並びに絶縁膜を備えた電子デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】 他の部分にダメージを与えることなく優れた絶縁性が得られる絶縁膜及びその製造方法、並びに絶縁膜を備えた電子デバイスを提供する。
【解決手段】 基板1上に、蒸着法により、Al、Hf、Zr及びSiからなる群から選択された少なくとも1種の元素を含む酸化物又は窒化物からなる蒸着絶縁膜2を形成する。そして、この蒸着絶縁膜2に対して、600℃以下の温度条件下で、大気中で熱処理、窒素中で熱処理、酸素中で熱処理、真空中で熱処理、水素プラズマ処理及び酸素プラズマ処理からなる群から選択された少なくとも1種の処理を施す。
【選択図】 図1

Description

本発明は、蒸着法により形成された絶縁膜及びその製造方法、並びにこの絶縁膜を備えた電子デバイスに関し、特に、電子デバイスのゲート絶縁膜及び表面保護膜等として好適な絶縁膜及びその製造方法、並びにこの絶縁膜を備えた電子デバイスに関する。
電子デバイスには、ゲート絶縁膜及び表面保護膜として金属酸化物等からなる絶縁膜が形成されている。このような絶縁膜は、従来、電子ビーム又は抵抗加熱を利用した蒸着法、スパッタ等の物理気相堆積法(Physical Vapor Deposition:PVD)、有機金属と酸素源との反応を利用した化学気相堆積法(Chemical Vapor Deposition:CVD)、及び金属膜を形成した後プラズマ、熱又は液中で電流印加等を行って金属膜を酸化又は窒化する方法等により形成されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1にも記載されているように、従来の方法で良質な絶縁膜を形成することは困難であり、特に、従来の方法で形成された蒸着絶縁膜は、密度が低く、絶縁性が低いという問題点がある。例えば、蒸着法により形成された従来のアルミナ膜は、リーク電流が50μA/cmを超える電界を絶縁性の指針とした場合の絶縁破壊電界が2MV/cmよりも小さかった。
そこで、従来、蒸着絶縁膜の特性を向上させるために、成膜後に熱処理を施したり(特許文献2及び非特許文献1参照)、他の元素を添加したり(特許文献3参照)することが提案されている。例えば、特許文献2に記載の半導体装置の製造方法においては、金属酸膜成膜後に、He、Ne及びAr等の希ガスを含む雰囲気中で、650℃を超える温度条件下で熱処理を行っている。また、特許文献3には、MgO、LaO及びYから選ばれる少なくとも1種の酸化物を添加することにより、絶縁性の向上を図ったアルミナ膜の製造方法が開示されている。
特開2003−297822号公報 特開2003−101014号公報 特開2001−11604号公報 Chia Ching Yeo、外7名,「Improvement of Electrical Properties of MOCVD HfO2 by Multistep Deposition」,Electrochemical and Solid-State Letters,2003年,第6巻,第11号,p.F42−F44
しかしながら、前述の従来の技術には以下に示す問題点がある。特許文献2の段落0004に記載されているように、従来、蒸着絶縁膜の熱処理は950乃至1000℃で行われており、特許文献2に記載の方法でも650℃以上の温度条件下で熱処理を行っているが、基板の熱膨張率と蒸着絶縁膜の熱膨張率とが異なる場合、高温下で熱処理を行うと、蒸着絶縁膜に亀裂及び剥離が生じるという問題点がある。また、蒸着絶縁膜以外に別の材料からなる膜が成膜されていたり、貼り合わされていたりする場合は、その膜にも同様に亀裂及び剥離が生じることもある。更に、低融点金属膜が成膜されている場合は、高温下で熱処理を行うと、凝集を生じるという問題点もある。更にまた、ダイヤモンド基板を使用した場合は、熱処理雰囲気にもよるが650℃程度以上の高温になると、基板表面から相転移が生じてダイヤモンド基板がグラファイト化し始めるという問題点がある。更にまた、ダイヤモンド基板の表面終端原子が脱着し、表面の性質が変わりやすいという問題点もある。この問題は、一般に熱処理温度が高くなる程顕著になるため、ダイヤモンド基板を使用する際は、できるだけ高温の工程は避けることが望ましい。
特許文献3に記載されているアルミナ膜のように、他の元素を添加する方法は、製造コストが増加するという問題点がある。また、特許文献3に記載の方法では、膜の特性を一定に保つために、添加元素の量を精密に制御しなければならないという問題点もある。更に、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)膜のような導電膜の場合は、酸化スズにインジウムを数%添加することにより導電性を付与しているが、絶縁膜の場合は、元素添加が逆効果になる場合があり、例えば、特許文献3に記載のアルミナ膜は元素添加により抵抗率が上昇しているが、その反面、欠陥が発生しやすくなり、この欠陥が高周波特性に影響を及ぼすという問題点がある。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、他の部分にダメージを与えることなく優れた絶縁性が得られる絶縁膜及びその製造方法、並びに絶縁膜を備えた電子デバイスを提供することを目的とする。
本願第1発明に係る絶縁膜の製造方法は、基板上に第1の絶縁膜を蒸着する工程と、この第1の絶縁膜に対して、600℃以下の温度条件下で、大気中で熱処理、窒素中で熱処理、酸素中で熱処理、真空中で熱処理、水素プラズマ処理及び酸素プラズマ処理からなる群から選択された少なくとも1種の処理を施す工程と、を有することを特徴とする。
本発明においては、基板上に蒸着された絶縁膜を、従来よりも低い温度で熱処理/又はプラズマ処理しているため、他の部分にダメージを与えることなく、蒸着絶縁膜の絶縁性を向上させることができる。これにより、他の部分にダメージを与えることなく、絶縁破壊電界が高く、絶縁性が優れた高品質な絶縁膜を形成することができる。
前記第1の絶縁膜を大気中、窒素中又は酸素中で熱処理する場合は、雰囲気温度又は基板温度を500乃至600℃にすることが好ましい。また、前記第1の絶縁膜を真空中で熱処理する場合は、雰囲気温度又は基板温度を400乃至500℃にすることが好ましい。更に、前記第1の絶縁膜を水素プラズマ処理又は酸素プラズマ処理を施す場合は、基板温度を300乃至500℃にすることが好ましい。これにより、蒸着絶縁膜の絶縁破壊電界をより高めることができる。なお、前記基板は、シリコン、炭化珪素、酸化チタン、炭化窒素、窒化炭化ホウ素、酸化スズ、酸化珪素、窒化珪素及び3族元素と5族元素との化合物からなる群から選択された1種の材料により形成することができる。
又は、前記基板は、ダイヤモンドにより形成されていてもよい。その場合、前記第1の絶縁膜を大気中又は酸素中で熱処理する際は、雰囲気温度又は基板温度を500℃未満にすることが好ましい。また、前記第1の絶縁膜に対して酸素プラズマ処理を施す際は、基板温度を350℃未満にすることが好ましい。これにより、ダイヤモンド基板表面にダメージを与えることなく、蒸着絶縁膜の絶縁破壊電界を向上させることができる。
また、前記第1の絶縁膜に対して大気中で熱処理、窒素中で熱処理、酸素中で熱処理、真空中で熱処理、水素プラズマ処理及び酸素プラズマ処理からなる群から選択された少なくとも1種の処理を施した後、この第1の絶縁膜上にスパッタ法又は蒸着法により第2の絶縁膜を形成してもよい。これにより、絶縁性が更に向上する。
本願第2発明に係る絶縁膜の製造方法は、基板上に第1の絶縁膜を蒸着する工程と、この第1の絶縁膜上にスパッタ法により第2の絶縁膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
本発明においては、基板等にダメージを与えずに成膜できるが密度が低い蒸着絶縁膜上に、密度が高いスパッタ絶縁膜を形成しているため、基板にダメージを与えずに絶縁膜全体の密度を向上させることができる。これにより、絶縁破壊電界が高く、絶縁性が優れた高品質な蒸着絶縁膜を形成することができる。
なお、前記第1及び第2の絶縁膜は、Al、Hf、Zr及びSiからなる群から選択された少なくとも1種の元素を含む酸化物又は窒化物により形成することができる。
本願第3発明に係る絶縁膜は、前述の方法により製造され、絶縁破壊電界が2MV/cm以上であることを特徴とする。
本発明においては、基板上に蒸着した絶縁膜に対して、600℃以下の温度条件下で、大気中で熱処理、窒素中で熱処理、酸素中で熱処理、真空中で熱処理、水素プラズマ処理及び酸素プラズマ処理からなる群から選択された少なくとも1種の処理を施すか、又は、基板上に蒸着した絶縁膜上にスパッタ絶縁膜を形成しているため、従来の蒸着絶縁膜に比べて、絶縁性を向上させることができる。
本願第4発明に係る電子デバイスは、前述の絶縁膜を有することを特徴とする。
本発明においては、前述の絶縁膜を備えているため、絶縁性が向上し、リーク電流を少なくすることができる。
本発明によれば、基板上に形成した蒸着絶縁膜に対して、600℃以下の温度条件下で、大気中で熱処理、窒素中で熱処理、酸素中で熱処理、真空中で熱処理、水素プラズマ処理及び酸素プラズマ処理からなる群から選択された少なくとも1種の処理を施すか、又は、蒸着絶縁膜上にスパッタ絶縁膜を形成しているため、他の部分にダメージを与えることなく、絶縁性が優れた絶縁膜を形成することができる。
以下、本発明の実施の形態に係る絶縁膜の製造方法について、添付の図面を参照して具体的に説明する。先ず、本発明の第1の実施形態に係る絶縁膜の製造方法について説明する。図1(a)及び(b)は本実施形態の絶縁膜の製造方法をその工程順に示す断面図である。本実施形態の絶縁膜の製造方法においては、先ず、図1(a)に示すように、例えば、GaN、GaAs、InAs、InGaAs、AlGaAs、AlN、InN、InGaN、AlGaN、BN、AlBN及びInBN等の3族元素と5族元素との化合物、炭化珪素、酸化チタン、炭化窒素、窒化炭化ホウ素、酸化スズ、酸化珪素、窒化珪素若しくはこれらの類似化合物、ダイヤモンド又はシリコン等からなる基板1上に、蒸着法により、Al、Hf、Zr及びSiからなる群から選択された少なくとも1種の元素を含む酸化物又は窒化物からなり、厚さが例えば250乃至1000Åの蒸着絶縁膜2を形成する。
次に、図1(b)に示すように、この蒸着絶縁膜2に対して、600℃以下の温度条件下で、大気中で熱処理、窒素中で熱処理、酸素中で熱処理、真空中で熱処理、水素プラズマ処理及び酸素プラズマ処理からなる群から選択された少なくとも1種の処理を施す。これにより、蒸着絶縁膜2の絶縁破壊電界を2MV/cm以上にすることができる。ここで、各種雰囲気中で熱処理する場合の処理温度は、雰囲気温度及び基板温度のいずれでもよい。その際、雰囲気温度は、例えば基板1の近くに熱電対を配置することにより測定することができ、また基板1の温度は、例えば放射温度計により測定することができる。一方、プラズマ処理においては、雰囲気温度を測定することが困難であるため、放射線温度計等により測定した基板温度とする。
また、前述の熱処理及びプラズマ処理においては、処理雰囲気により最大限の効果が得られる処理温度が異なるため、用途及び他の部分の材質等を考慮し、適切な処理雰囲気及び処理温度を選択することが望ましい。具体的には、基板1が、シリコン、炭化珪素、酸化チタン、炭化窒素、窒化炭化ホウ素、酸化スズ、酸化珪素、窒化珪素又は3族元素と5族元素との化合物等により形成されており、蒸着絶縁膜2を大気中、窒素中又は酸素中で熱処理する場合は、処理温度(雰囲気温度又は基板温度)を500乃至600℃にすることが好ましい。また、蒸着絶縁膜2を真空中で熱処理する場合は、処理温度を400乃至500℃にすることが好ましい。更に、蒸着絶縁膜2に対して水素プラズマ処理又は酸素プラズマ処理を施す場合は、基板温度を300乃至500℃にすることが好ましい。これにより、蒸着絶縁膜2の絶縁性をより向上することができる。なお、これらの処理は、他の部分へのダメージを最小限に抑えるために、できるだけ低い温度で行うことが望ましい。
一方、基板1として、ダイヤモンド基板を使用する場合は、蒸着絶縁膜2に対して、大気中又は酸素中で500℃以上の温度条件下で熱処理を行ったり、350℃以上の温度条件下で酸素プラズマ処理を行ったりすると、ダイヤモンド基板の表面が強く酸化されて、エッチングに至ることがある。このため、ダイヤモンド基板上に形成された蒸着絶縁膜を大気中又は酸素中で熱処理する場合は、雰囲気温度又は基板温度を500℃未満にすることが好ましく、また、ダイヤモンド基板上に形成された蒸着絶縁膜に対して酸素プラズマ処理を施す場合は、基板温度を350℃未満にすることが好ましい。これにより、ダイヤモンド基板にダメージを与えることなく、その上に形成された蒸着絶縁膜の絶縁性を向上させることができる。なお、水素プラズマ処理は、ダイヤモンド基板表面を酸化せずに蒸着絶縁膜の絶縁性を向上させることができる。但し、水素プラズマに曝されたダイヤモンド表面には導電性が付与されるため、これを防止したい場合は、ダイヤモンド基板が露出している部分を保護膜で覆って、ダイヤモンド表面に水素プラズマが照射されないようにするか、又は、水素プラズマ処理を施した後でダイヤモンド基板表面を酸化して絶縁性にすることが望ましい。
更に、各種雰囲気中で熱処理する際の圧力は、大気中又は窒素中で行う場合は例えば大気圧(約100kPa)、酸素中で行う場合は例えば1.3kPa、真空中で行う場合は例えば0.2mPa以下であり、その処理時間は例えば0.5乃至1時間である。一方、プラズマ処理する際の処理時間は、例えば5分間である。
上述の如く、本実施形態の絶縁膜の製造方法においては、基板1上に形成された蒸着絶縁膜2に対して、600℃以下の温度条件下で、大気中で熱処理、窒素中で熱処理、酸素中で熱処理、真空中で熱処理、水素プラズマ処理及び酸素プラズマ処理からなる群から選択された少なくとも1種の処理を施しているため、基板1等の蒸着絶縁膜2以外の部分にダメージを与えることなく、蒸着絶縁膜2の絶縁性を向上させることができる。
なお、本実施形態の絶縁膜の製造方法においては、蒸着絶縁膜2に対して、前述の大気中で熱処理、窒素中で熱処理、酸素中で熱処理、真空中で熱処理、水素プラズマ処理及び酸素プラズマ処理のうち、2種類以上の処理を行うこともできる。また、本実施形態の絶縁膜の製造方法においては、基板1上に所定の厚さの蒸着絶縁膜2を形成した後、各種雰囲気中で熱処理及び/又はプラズマ処理する場合について述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく、蒸着絶縁膜を積層構造にしてもよい。その場合、先ず、基板上に所定の厚さよりも薄い第1の絶縁膜を蒸着し、各種雰囲気中で熱処理及び/又はプラズマ処理を行った後、この第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜を蒸着して、同様に熱処理及び/又はプラズマ処理を行う。これにより、より高い効果を得ることができる。但し、その場合は工程数が増えるため、製造コストが増加する。
次に、本発明の第2の実施形態に係る絶縁膜の製造方法について説明する図2(a)及び(b)は本実施形態の絶縁膜の製造方法をその工程順に示す断面図である。本実施形態の絶縁膜の製造方法においては、先ず、図2(a)に示すように、例えば、GaN、GaAs、InAs、InGaAs、AlGaAs、AlN、InN、InGaN、AlGaN、BN、AlBN及びInBN等の3族元素と5族元素との化合物、炭化珪素、酸化チタン、炭化窒素、窒化炭化ホウ素、酸化スズ、酸化珪素、窒化珪素若しくはこれらの類似化合物、ダイヤモンド又はシリコン等からなる基板11上に、蒸着法により、Al、Hf、Zr及びSiからなる群から選択された少なくとも1種の元素を含む酸化物又は窒化物からなり、厚さが例えば50乃至250Åの蒸着絶縁膜12を形成する。
次に、図2(b)に示すように、この蒸着絶縁膜12上に、スパッタ法により、Al、Hf、Zr及びSiからなる群から選択された少なくとも1種の元素を含む酸化物又は窒化物からなり、厚さが例えば50乃至500Åのスパッタ絶縁膜13を形成する。このとき、例えばスパッタ絶縁膜13がアルミナ膜である場合は、マグネトロンスパッタ装置により、純アルミナターゲットを使用し、アルゴンと酸素との比が1:1である混合ガス中で、圧力を4.3Pa、高周波入力を350Wにして成膜する。このように、先ず基板11の表面を保護できる蒸着法で成膜し、次に、室温で後処理無しで絶縁性が高い膜が得られるスパッタ法で成膜することにより、蒸着法及びスパッタ法の両方の長所のみを取り入れた絶縁膜を形成することができる。また、蒸着膜は引張応力を内部応力として持ち、スパッタ膜は圧縮応力を持つため、両者を積層することにより内部応力が相殺されるため、剥離及び亀裂が発生しにくい膜を形成することができる。なお、スパッタ法により形成された膜は、成膜時に放電用ガスとして使用されるアルゴンを4乃至5%程度含んでおり、これによりスパッタ法により形成された膜であることが見分けられる。
本実施形態の絶縁膜の製造方法においては、基板11にダメージを与えずに成膜できるが密度が低い蒸着絶縁膜12上に、密度が高いスパッタ絶縁膜13を形成しているため、基板11にダメージを与えずに絶縁膜全体の密度を向上させることができる。その結果、絶縁破壊電界が高く、絶縁性が優れた高品質な絶縁膜を形成することができる。
なお、本実施形態の絶縁膜の製造方法においては、未処理の蒸着絶縁膜上に、スパッタ絶縁膜を形成しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、前述の第1実施形態の絶縁膜の製造方法で形成した絶縁膜、即ち、各種雰囲気中で熱処理及び/又はプラズマ処理した蒸着絶縁膜上に、スパッタ絶縁膜を形成してもよい。これにより、更に絶縁性を向上させることができる。
前述の第1及び第2の実施形態の絶縁膜の製造方法は、例えば、トランジスタのゲート絶縁膜及びトンネル磁気抵抗素子のバリア膜等を形成する際に適用することができる。次に、本発明の第3の実施形態に係るトランジスタについて説明する。図3は本実施形態のトランジスタを示す断面図である。図3に示すように、本実施形態のトランジスタ20は、ダイヤモンド基板21の表面に夫々ソース及びドレインとなるp型半導体領域22及び23が夫々形成されており、p型半導体領域22上にはソース電極26が形成され、p型半導体領域23上にはドレイン電極27が形成されている。また、p型半導体領域22及びp型半導体領域23の間のチャネル領域上には、前述の第1の実施形態の絶縁膜の製造方法によりゲート絶縁膜24が形成されており、このゲート絶縁膜24を介してゲート電極25が形成されている。
本実施形態のトランジスタ20においては、前述の第1の実施形態の絶縁膜の製造方法によりゲート絶縁膜24を形成しているため、基板21等にダメージを与えることなく、絶縁性に優れ、高品質なゲート絶縁膜を形成することができる。なお、本実施形態のトランジスタ20においては、ゲート絶縁膜24を前述の第1の実施形態の絶縁膜の製造方法により形成しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、前述の第2の実施形態の絶縁膜の製造方法によりゲート絶縁膜24を形成することもでき、その場合も同様の効果が得られる。
以下、本発明の実施例の効果について、本発明の範囲から外れる比較例と比較して説明する。本実施例においては、電子ビーム蒸着法により、抵抗率が0.02Ω・cm以下のp型シリコンウエハ上に、酸素が0.4Paの雰囲気中で、蒸着源に顆粒状の高純度単結晶サファイヤを使用してアルミナ膜を蒸着し、このアルミナ蒸着膜に対して下記表1に示す処理を行い、その効果を確認した。
Figure 2006120688
上記表1に示すように、実施例1乃至9においては、上述の方法で所定の膜厚のアルミナ蒸着膜を形成し、このアルミナ蒸着膜に対して、処理雰囲気及び処理温度を変えて、熱処理を行った。その際の圧力は、真空中の場合は0.2mPa以下、酸素中の場合は1.3kPa、窒素中の場合は100kPa、大気中の場合は約100kPaとした。また、実施例10乃至13においては、上述の方法で所定の膜厚のアルミナ蒸着膜を形成し、このアルミナ蒸着膜に対して、マイクロ波プラズマ装置により、基板温度を変えて、酸素プラズマ処理又は水素プラズマ処理を行った。その際、基板温度はプラズマからの距離を変化させることにより調節した。
更に、実施例14においては、先ず基板上に厚さが250Åのアルミナ膜を蒸着し、このアルミナ膜蒸着に対して上記表1に示す条件で熱処理を行った。その後、アルミナ蒸着膜上に再度アルミナ膜を蒸着し、この2層目のアルミナ蒸着膜に対して1層目のアルミナ蒸着膜と同じ条件で熱処理を行った。更にまた、実施例15においては、基板上に厚さが250Åのアルミナ膜を蒸着した後、その上にスパッタ法によりアルミナスパッタ膜を形成した。更にまた、実施例16は、先ず厚さが250Åのアルミナ膜を蒸着し、このアルミナ蒸着膜に対して上記表1に示す条件で熱処理を行った。その後、アルミナ蒸着膜上にスパッタ法によりアルミナスパッタ膜を形成した。なお、実施例14乃至16においては、1層目及び2層目のアルミナ膜の総厚が所定の厚さになるように、2層目のアルミナ膜の厚さを調節した。また、アルミナ蒸着膜上にアルミナスパッタ膜を形成する際は、マグネトロンスパッタ装置により、純アルミナターゲットを使用し、アルゴン及び酸素が1:1の混合ガス中で行った。
次に、実施例1乃至16の処理を行ったアルミナ膜上に、電子ビーム蒸着法により、真空中で厚さが200nmのアルミニウム膜を蒸着した後、このアルミニウム膜をフォトリソグラフィにより直径が200μmの電極に成形した。そして、基板裏面側がオーミック接触になっていることを確認した後接地し、更にアルミニウム電極側にタングステンプローブを接触させて、基板裏面とアルミニウム電極との間に正のバイアス電圧を印加した。その後、バイアス電圧を0Vから徐々に増加させ、リーク電流を測定した。その結果、リーク電流が15.7nA、即ち、50μA/cmを超えたときの電圧を絶縁破壊電界とした。
一方、本発明の比較例として、蒸着後に処理を行っていない比較例1のアルミナ膜、及び蒸着後に真空中で700℃の温度条件下で1時間熱処理を行った比較例2のアルミナ膜を作製したところ、600℃よりも高い温度で熱処理を行った比較例2のアルミナ膜は、膜に亀裂が生じ、絶縁膜として使用不可能であった。そこで、比較例1のアルミナ膜についてのみ前述の実施例と同様の測定を行い、その絶縁破壊電界を求めた。
図4は横軸にアルミナ膜の膜厚をとり、縦軸に絶縁破壊電界をとって、実施例及び比較例のアルミナ膜の絶縁破壊電界を示すグラフ図である。なお、図4に示す膜厚は、最終処理後に、エリプソメトリ装置を使用して測定した値である。図4に示すように、本実施例のアルミナ膜は、成膜後に処理を行っていない比較例1のアルミナ膜に比べて、絶縁破壊電界が向上しており、膜厚によって若干の変動はみられるが、全ての試料で2MV/cmを超えていた。また、従来、絶縁膜が還元され絶縁性に悪影響を及ぼすと考えられていた水素プラズマ処理(実施例11乃至13)を施した試料においても優れた絶縁性が得られ、特に、実施例11の処理を施した試料では、絶縁破壊電界が5.8MV/cmのものもあった。
本発明の蒸着絶縁膜の製造方法は、トランジスタのゲート絶縁膜及びトンネル磁気抵抗素子のバリア膜等を高品質化するために最適な方法であり、これらの他に、電極間の絶縁性を確保するため等に設けられる一般的な絶縁膜及び表面保護膜にも適用することができる。
(a)及び(b)は本発明の第1の実施形態に係る絶縁膜の製造方法をその工程順に示す断面図である。 (a)及び(b)は本発明の第2の実施形態に係る絶縁膜の製造方法をその工程順に示す断面図である。 本発明の第3の実施形態に係るトランジスタを示す断面図である。 横軸にアルミナ膜の膜厚をとり、縦軸に絶縁破壊電界をとって、実施例及び比較例のアルミナ膜の絶縁破壊電界を示すグラフ図である。
符号の説明
1、11、21;基板
2、12;蒸着絶縁膜
13;スパッタ絶縁膜
20;トランジスタ
22、23;p型半導体領域
24;ゲート絶縁膜
25;ゲート電極
26;ソース電極
27;ドレイン電極

Claims (14)

  1. 基板上に第1の絶縁膜を蒸着する工程と、この第1の絶縁膜に対して、600℃以下の温度条件下で、大気中で熱処理、窒素中で熱処理、酸素中で熱処理、真空中で熱処理、水素プラズマ処理及び酸素プラズマ処理からなる群から選択された少なくとも1種の処理を施す工程と、を有することを特徴とする絶縁膜の製造方法。
  2. 前記第1の絶縁膜を大気中、窒素中又は酸素中で熱処理する場合、雰囲気温度又は基板温度を500乃至600℃にすることを特徴とする請求項1に記載の絶縁膜の製造方法。
  3. 前記第1の絶縁膜を真空中で熱処理する場合、雰囲気温度又は基板温度を400乃至500℃にすることを特徴とする請求項1に記載の絶縁膜の製造方法。
  4. 前記第1の絶縁膜に対して水素プラズマ処理又は酸素プラズマ処理を施す場合、基板温度を300乃至500℃にすることを特徴とする請求項1に記載の絶縁膜の製造方法。
  5. 前記基板は、シリコン、炭化珪素、酸化チタン、炭化窒素、窒化炭化ホウ素、酸化スズ、酸化珪素、窒化珪素及び3族元素と5族元素との化合物からなる群から選択された1種の材料により形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の絶縁膜の製造方法。
  6. 前記基板は、ダイヤモンドにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の絶縁膜の製造方法。
  7. 前記第1の絶縁膜を大気中又は酸素中で熱処理する場合、雰囲気温度又は基板温度を500℃未満にすることを特徴とする請求項6に記載の絶縁膜の製造方法。
  8. 前記第1の絶縁膜に対して酸素プラズマ処理を施す場合、基板温度を350℃未満にすることを特徴とする請求項6に記載の絶縁膜の製造方法。
  9. 前記第1の絶縁膜に対して大気中で熱処理、窒素中で熱処理、酸素中で熱処理、真空中で熱処理、水素プラズマ処理及び酸素プラズマ処理からなる群から選択された少なくとも1種の処理を施した後、この第1の絶縁膜上にスパッタ法又は蒸着法により第2の絶縁膜を形成することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の絶縁膜の製造方法。
  10. 基板上に第1の絶縁膜を蒸着する工程と、この第1の絶縁膜上にスパッタ法により第2の絶縁膜を形成する工程と、を有することを特徴とする絶縁膜の製造方法。
  11. 前記第1及び第2の絶縁膜は、Al、Hf、Zr及びSiからなる群から選択された少なくとも1種の元素を含む酸化物により形成されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の絶縁膜の製造方法。
  12. 前記第1及び第2の絶縁膜は、Al、Hf、Zr及びSiからなる群から選択された少なくとも1種の元素を含む窒化物により形成されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の絶縁膜の製造方法。
  13. 請求項1乃至12のいずれか1項に記載の絶縁膜の製造方法により製造され、絶縁破壊電界が2MV/cm以上であることを特徴とする絶縁膜。
  14. 請求項13に記載の絶縁膜を有することを特徴とする電子デバイス。
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