JP2006117709A - ポリエステル系フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 インフレーションフィルム成形が可能であり、高い引張強度、引裂き強度、および衝撃強度を有し、これらフィルムの物性の経時変化が少なく、かつ低温ヒートシール性のある包装用途に適したポリエステル系フィルムを提供すること。
【解決手段】 ポリエステル樹脂(A)50〜90重量%、密度が0.850〜0.910(g/cm3)のエチレン系重合体(B)5〜50重量%、カルボン酸変性またはエポキシ変性したエチレン系共重合体(C)1〜20重量%とから構成された樹脂組成物をインフレーション成形したフィルムである。

Description

本発明は、非相溶系樹脂組成物をインフレーション成形して得られるフィルムであって、機械的強度に優れたフィルムに関する。更に本発明は、ポリエステル/ポリエチレン系のインフレーションフィルムに関し、インフレーション成形後のフィルム物性の経時的な低下が少ないフィルムに関する。
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート樹脂(以降、PET樹脂と言う)は様々な分野で広く使われていることから、再生PET樹脂の活用策が求められている。PET樹脂はその溶融粘度が低いため、一般的なインフレーション成形法によってフィルム成形することは難しく、フィルム用途への適用は困難であった。
そこで、PET樹脂とポリエチレン樹脂からなる樹脂組成物をインフレーション成形する為に、酸無水物やカルボン酸グラフト共重合体、エポキシ基等で変性したポリエチレン等を相溶化剤として配合し、溶融粘度を増大した樹脂組成物およびフィルムが提案されている。
ポリエステルとポリエチレン、例えばPET樹脂とポリエチレン樹脂は基本的に非相溶であるため、本発明に示した樹脂組成物の場合、PET樹脂がマトリックス層となり、ポリエチレンが分散層の、いわゆる海島構造をとる。
ここで、海島構造をとる樹脂組成物からなるフィルムの衝撃性能、引裂き強度、引張り物性等の緒物性を良好な状態に保つには、マトリックス層と分散層界面の接着強度を高く保つことが重要である。その対策として一般的に相溶化剤を採用し、非相溶系の樹脂との界面部にて接着し強度を高く保っている。
ポリエチレン樹脂は、マトリックス層のPET樹脂中に島状に微分散した状態で存在し、その界面でポリエステル樹脂と接触するが、相溶化剤を使用した場合でも添加量が少なすぎる、或いは最適な相溶化剤を選定しなかった場合等には、界面の接着強度が低下し、フィルムの諸物性は低くなる。
ところが適切な相溶化剤を使用した場合であっても、フィルム成形後、常温での保管状態にて必ずしも安定した構造を保ち続けることが出来ず、時間の経過とともに相構造が変化し、成形直後の物性を長期的に保てず、経時的な物性変化の原因となることがある。
特公昭63−4566号公報
本発明は上記課題に鑑み、非相溶系樹脂組成物を成形して得られるフィルム、特にポリエステル/ポリエチレン系のインフレーションフィルムであって、インフレーション成形後のフィルム物性の低下が少ないフィルムの提供を目的にする。
本発明者らは鋭意検討の結果、
(1)非相溶性の樹脂成分2種類以上からなる樹脂組成物をインフレーション成形して得られるフィルムであって、マトリックス層を形成する樹脂成分のガラス転移温度が50℃以上であり、分散層を形成する樹脂成分のガラス転移温度が0℃以下であることを特徴とするフィルムに関し上記課題を解決することを見出した。
(2)ここで、前記マトリックス層を形成する樹脂成分としてはポリエステル樹脂(A)が好ましく、前記分散層を形成する樹脂成分としては密度が0.850〜0.910(g/cm3)の範囲にあるエチレン系重合体(B)が好ましい。相溶化剤(C)には、エチレンの繰返し単位を有し、カルボン酸変性またはエポキシ基変性したエチレン系共重合体が好ましい。
(3)本発明のフィルムを得るにあたっては、
ポリエステル樹脂(A)50〜90重量%、密度が0.850〜0.910(g/cm3)の範囲にあるエチレン系重合体(B)5〜50重量%、相溶化剤(C)1〜20重量%(ここで、A、B、Cの合計量が100重量%である。)からなる樹脂組成物をインフレーション成形することが好ましい。
以下の理由により経時的な物性劣化が抑制されるものと推測される。
(4)一般にポリエチレン単体のフィルムは常温で長期間保管しても安定した物性を保つことが知られている。一方、本特許記載樹脂組成物の様な海島構造をとり、分散層のポリエチレンのガラス転移温度以上、かつマトリックス層のポリエステルのガラス転移温度以下の温度で保管する場合、ポリエチレンはガラス転移温度以下のポリエステルに拘束された状態で分散しているので、成形後のフィルムの結晶化はポリエチレン単体に比較して長時間を要すと推察される。
(5)分散層を形成するポリエチレンは成形時は非晶状態で密度が低いが、成形後徐々に結晶化が進行する。この場合、常温での保管中にも、ポリエチレンの分子運動により僅かながら結晶化が進行し、密度が上昇して分散層のポリエチレンが収縮し、結果として界面接着強度が低下し、フィルム物性に悪影響を与えると考えられる。
この場合、ポリエチレンの密度が大きいものほど結晶化度が高く、即ち成形時の非晶状態から結晶化した状態の密度差が大きいと考えられる。即ち、ポリエチレンの密度の違いにより界面接着強度に違いが出てくると考えられる。そのため、より低密度のポリエチレンほど、成形後の密度変化は低く、界面の接着強度を高く保ち、フィルム物性を長期間安定的に維持できると考えられる。
本発明に係わるポリエステル系フィルムは、ポリエステル樹脂、エチレン系重合体、およびカルボン酸変性またはエポキシ変性したエチレン系共重合体を均一に混合した樹脂組成物を用いているので、一般的なインフレーション成形機を使用し、かつ通常の押出条件下で、外観良好なインフレーションフィルムを容易に成形することができる。しかも、このフィルムの成形に際して、未使用のポリエステル樹脂やポリエチレン樹脂だけでなく、再生ポリエステル樹脂や再生ポリエチレン樹脂も同様にして使用することができる。
本発明はマトリックス層を形成する樹脂成分のガラス転移温度が50℃以上であり、分散層を形成する樹脂成分のガラス転移温度が0℃以下であるインフレーション成形フィルムであれば、非相溶性の樹脂組成物は特に限定されないが、マトリックス層がポリエステルであり分散層がエチレン系重合体であることが望ましい。
本発明に係わるポリエステル系フィルムは、基本的にはポリエステル樹脂、ポリエチレン、及び相溶化剤とからなる樹脂組成物から構成されており、次にそれら各成分、樹脂組成物、フィルムの成形方法および得られたフィルムについて詳細に説明する。
ポリエステル樹脂(A)
本発明に使用可能なポリエステル樹脂は、基本的には芳香族または脂肪族のジカルボン酸とジオールとの重縮合体であって、製造に際してジカルボン酸およびジオールは、各々1種類を選び、あるいは2種類以上を適宜組み合わせて選び、触媒の存在下に通常の重縮合条件下で製造される。
ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ジフニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸等を例示することができる。
ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等を例示することができる。重縮合に際して、p−ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸を共存させてもよい。
前記のジカルボン酸およびジオールとから製造したポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレートを一例として挙げることができる。またポリエステル樹脂は、それらの成形品を一旦使用した後の再生品であってもよく、さらに未使用品と再生品との混合物であってもよい。
それらポリエステル樹脂は、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)混合溶媒中、25℃で測定した極限粘度(IV)が、0.60〜1.4(dl/g)の範囲にある重合体がインフレーションフィルム成形に適している。
エチレン系重合体(B)
本発明に使用できるエチレン系重合体は、一般のエチレン系重合体の中でもより低密度の範囲に属する。具体的には、その密度が0.850〜0.910(g/cm3)の範囲にあることが望ましい。このような密度範囲にある重合体をフィルム構成樹脂の一成分として使用すると、ポリエステル樹脂に対する十分な機械的強度の改良効果が得られると共に、フィルムの衝撃強度を高めることができる。かつ、本発明の目的であるフィルム物性の経時的な物性低下を抑えることができる。
そのエチレン系重合体は、エチレン単独重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレンとビニルモノマーとの共重合体等、エチレン単位を主な繰り返し単位として有する重合体であればいずれをも使用することができる。
その内のエチレン・α−オレフィン共重合体は、前述したカルボン酸変性エチレン・α−オレフィン共重合体を製造する際に使用した低結晶性ないし非晶性のエチレン・α−オレフィン共重合体であってもよいし、結晶性を有しかつエチレン単独重合体に近い物性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体であってもよい。従って、このエチレン・α−オレフィン共重合体を構成するモノマー組成は、エチレン単位が70モル%以上、α−オレフィン単位が30モル%以下と広範囲に亘っている。ここで、α−オレフィンは、前述した炭素数3〜20のオレフィンの中から適宜選択して使用することができ、特にプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。
このような結晶性から非晶性の範囲にあるエチレン・α−オレフィン共重合体は、バナジウム化合物またはチタン化合物と有機アルミニウム化合物との組み合わせを一例としたチーグラー系触媒、シクロペンタジエニル環を有するジルコニウム化合物とオキシアルミニウム化合物との組み合わせを一例としたメタロセン系触媒のようなオレフィン立体規則性重合触媒を用いることによって製造することができる。
エチレンとビニルモノマーとの共重合体としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体等を挙げることができる。
好ましいエチレン系重合体としては、エチレン単独重合体またはエチレン・α−オレフィン共重合体であって、特に低密度ポリエチレン、結晶性のエチレン・1−ヘキセン共重合体、非晶性のエチレン・プロピレン共重合体、非晶性のエチレン・1−ブテン共重合体、非晶性のエチレン・1−オクテン共重合体が好適である。なお、エチレン系重合体をフィルム形成樹脂組成物の一成分として使用すると、その種類によっては樹脂組成物が白色不透明化することもあるので、透明なフィルムが必要な場合にはエチレン系重合体の種類と配合量を適宜選択することが必要である。
そのメルトフローレート(MFR)は、ASTM D−1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重下に測定した値が、0.1〜20、好ましくは0.1〜10、より好ましくは0.1〜5(g/10分)である。MFRの値がこの範囲内にあると、インフレーションフィルムの成形性を良好にし、フィルムの機械的強度を高め、低温ヒートシール性を付与することができる。
実際の使用に好適なエチレン系重合体としては、線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)を含む中低圧法低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレンを挙げることができ、それらは未使用の重合体であっても、再生品であってもよい。
相溶化剤(C)
本発明に使用できる相溶化剤には、エチレンの繰返し単位を有し、カルボン酸変性またはエポキシ基変性したエチレン系共重合体が挙げられる。
カルボン酸変性エチレン系共重合体は、カルボン酸基を含むエチレン・α−オレフィン共重合体であって、具体的にはエチレン・α−オレフィン共重合体へα,β−不飽和カルボン酸化合物をグラフト共重合して得た重合体(グラフト変性共重合体)、あるいはエチレン・α−オレフィン共重合体を酸化処理してその共重合体分子中にカルボン酸基を生成させた重合体等を例示することができる。
このカルボン酸変性エチレン・α−オレフィン共重合体は、ポリエステル樹脂とエチレン系重合体との均一混合の促進に寄与すると共に、フィルムへのヒートシール性付与にも効果がある。本発明においては、特にグラフト変性共重合体がフィルム成形用樹脂組成物の形成に好適であるので、次にグラフト変性共重合体について詳述する。
ここで幹ポリマーとなるエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレン含量60〜95、好ましくは70〜90(モル%)、α−オレフィン含量5〜40、好ましくは10〜30(モル%)のランダム共重合体である。α−オレフィンとしては、直鎖または分岐鎖状の炭素数3〜20のオレフィンが好ましく、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンを挙げることができ、またそれらを2種類以上組み合わせてもよい。これら共重合体の中でも、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体が好ましい。さらに、この共重合体中には、少量のジエン成分含まれていてもよい。
また、このエチレン・α−オレフィン共重合体は、その密度が0.85〜0.90(g/cm3)、ASTM D−1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が0.05〜40(g/10分)であって、またX線回折法で測定した結晶化度が25%以下の低結晶性ないし非晶性の重合体であることが望ましい。このようなエチレン・α−オレフィン共重合体は、例えば、チーグラー系触媒またはメタロセン系触媒の存在下に、エチレンとα−オレフィンとの共重合を液相ないし気相状態で行うことによって製造することができる。
グラフトモノマーになるα,β−不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、ソルビン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水ハイミック酸を例として挙げることができ、特にアクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましい。
エチレン・α−オレフィン共重合体へのα,β−不飽和カルボン酸のグラフト共重合体は、エチレン・α−オレフィン共重合体の溶液状態ないし溶融状態の下で、前記したα,β−不飽和カルボン酸をグラフト共重合反応させることによって製造することができる。この際、過酸化物のようなラジカル発生剤を共存させると、効率よくグラフト化反応を進めることができる。
カルボン酸変性エチレン・α−オレフィン共重合体は、前記したグラフト変性共重合体のみから構成されていてもよく、またグラフト変性共重合体と未変成のエチレン・α−オレフィン共重合体あるいは他のポリエチレンとの混合体であってもよい。グラフト変性共重合体またはその混合体中のα,β−不飽和カルボン酸単位の含量は、0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%が望ましい。カルボン酸単位含量が前記の範囲内にあると、ポリエステル樹脂とプロピレン系またはエチレン系樹脂との相溶性を高め、また樹脂組成物のヒートシール性を高める効果がある。
前記のカルボン酸変性エチレン・α−オレフィン共重合体に変えてエポキシ変性エチレン系重合体を使うこともできる。この場合、エチレン・エチレン系不飽和エステル化合物・エポキシ基含有モノマーで構成される共重合体が挙げられ、エチレン単位及びエポキシ基含有モノマーを必須成分とし、エチレン系不飽和エステル化合物を任意成分とするものである。本発明では、エチレン・エチレン系不飽和エステル化合物・エポキシ基含有モノマーの3元系で構成されるエポキシ変性エチレン系重合体を採用した。
ここで、エチレン系不飽和エステル化合物は、酢酸ビニル、フ゜ロピオン酸ビニル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等を挙げることができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル等を例示することができる。中でもアルキルエステルを使用するアクリル酸メチル、アクリル酸ブチルが好ましい。
エポキシ基含有モノマーとしては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル等が挙げられ、中でもメタクリル酸グリシジルが好ましい。
エチレン・エチレン系不飽和エステル化合物・エポキシ基含有モノマーの3元共重合他で構成される相溶化剤の構成は、エチレン系不飽和エステル化合物が5〜40重量%、エポキシ基含有モノマーが2〜10重量%の範囲にあると好ましい。
樹脂組成物
マトリックス層を形成する樹脂成分のガラス転移温度が50℃以上であり、分散層を形成する樹脂成分のガラス転移温度が0℃以下であることを特徴とするフィルムで、マトリックス層を形成する樹脂成分がポリエステル樹脂(A)であり、分散層を形成する樹脂成分がエチレン系重合体(B)でありその密度が0.850〜0.910(g/cm3)の範囲にあり、相溶化剤(C)でマトリックス層と分散層の界面接着強度を高めた構造をとる。
樹脂組成物を構成する各成分の混合割合(重量%)は、ポリエステル樹脂(A)、エチレン系重合体(B)、相溶化剤(C)が各々表1に記載の範囲にある。ここで、前記3成分の合計量が100重量%になっている。各成分が、この組成範囲内にあると、インフレーションフィルムの成形を容易にし、成形後の経時的な機械的強度の低下を抑え、物性の保持率が高く保つことが可能なフィルムを得ることができる。
Figure 2006117709
この樹脂組成物には、本発明の目的から逸脱しない範囲内で、各種の添加剤を適宜加えることができる。添加剤の例としては、酸化防止剤、耐候安定剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、核剤、滑剤、顔料等を挙げることができる。
フィルム製造に先立ち、まずヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等を用いて前記の各成分を所定の混合割合にドライブレンドして均一組成に調製し、それをインフレーションフィルム成形用樹脂組成物とする。またその後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ミキシングロール等を用いて溶融混練りを加えることによって、ペレット状のインフレーションフィルム成形用樹脂組成物としてもよい。
前記したペレット状の樹脂組成物を製造する場合、ポリエステル樹脂が加水分解されることを避けるために、ポリエステル樹脂の溶融混練り前に十分に乾燥しておくことが必要である。また、それに代わって押出機のベント口から減圧操作を加え、物性低下を招かない程度の吸水量まで水分を除去する方法をとることもできる。
この様にして水分が除去された樹脂組成物は、次いでインフレーションフィルム成形機へと供給される。この場合にも、ペレット状樹脂組成物を製造する時と同様にして、インフレーションフィルム成形機の押出機部分に設けられたベント口から減圧操作を加えることによってさらに残存する水分を除去することもできる。押出機部分のシリンダー中で樹脂組成物を溶融し、押出機先端に設けたサーキュラーダイから溶融樹脂を押出し、次いで空気量を調整して円筒状に膨らませつつ冷却し、その後二つ折りにして、あるいは1枚ないし2枚に分離して巻き取ることによってインフレーションフィルムを製造することができる。インフレーションフィルム成形機の押出機部分に使われるスクリューは、特に制限されるものではなく、冷却は、通常の空気冷却が好ましい。必要に応じて、その後一軸または二軸方向への延伸配向を行うことができる。
ポリエステル系フィルム前述した樹脂組成物から成形されたフィルムは、膜厚が通常10〜200μmであって、それは引張強度、引裂き強度、および衝撃強度等の機械的強度に優れている。
次に本発明を実施例を通して説明するが、本発明はそれら実施例によって何ら限定されるものではない。
まず実施例および比較例で使用した材料は、次の通りである。
(1)ポリエステル樹脂:ポリエチレンテレフタレート樹脂(表2ではPETと記す)
極限粘度(IV)=0.73(dl/g)
(2)エチレン系重合体:直鎖状低密度ポリエチレン(表2では、aと記す)
密度=0.903(g/cm3)、MFR=1.2(g/10分)
(3)エチレン系重合体:直鎖状低密度ポリエチレン(表2では、bと記す)
密度=0.921(g/cm3)、MFR=1.5(g/10分)
(4)エチレン系重合体:直鎖状低密度ポリエチレン:(表2では、cと記す)
密度=0.924(g/cm3)、MFR=0.9(g/10分)
(5)カルボン酸変性エチレン・α−オレフィン共重合体:マレイン酸グラフト変性エチレン・プロピレン共重合体(表2では、dと記す)
(6)エチレン・プロピレン共重合体(エチレン含量=80モル%、X線回折による結晶化度=5%、MFR=0.2g/10分;230℃)へ無水マレイン酸をグラフト共重合した変性体(マレイン酸含量=1.0重量%)
(7)エポキシ変性エチレン系共重合体:エチレン・アクリル酸メチル・メタクリル酸グリシジル系共重合体(表2ではeと記す)
(8)アクリル酸メチル8重量%、メタクリル酸グリシジル6.5〜9重量%
なお、フィルムの衝撃性能を示すフィルムインパクトの試験方法は、次に記す。
縦横共に長さが100mmのフィルムを固定し、そこへ1.0インチの衝撃頭を備えた振り子式ハンマーでフィルム下面より打ち破り、その時の破壊エネルギーをフィルムインパクトテスターで測定した。
(実施例1)
ポリエステル樹脂、密度0.903(g/m3)のポリエチレン(a)、カルボン酸変性エチレン・α−オレフィン共重合体(d)を表2に記載の割合でドライブレンドし、これをインフレーション成形機(フ゜ラコー株式会社製)に直接供給した。シリンダー温度265℃、ダイ温度258℃、リップ開度1mm、引取り速度20(m/分)の条件で、インフレーションフィルムを成形した。フィルム成形は、容易に行うことができ、厚さ34μmで外観良好なフィルムを得ることができた。このフィルムから試験片を切り取り、引張試験、引裂き試験、衝撃試験およびヒートシール試験を行い、その内フィルムインパクト法による衝撃試験結果を表2に記載した。また、本フィルムを常温・暗所にて1年以上保管した後の衝撃強度も表2に記載し、成形直後のフィルムインパクト値に対する1年以上経過品のフィルムインパクト値を保持率と表現し表2に記載した。以下の実施例及び比較例とも同様な方法で物性を測定し、保持率を求めた。
(実施例2)
ポリエステル樹脂、密度0.903(g/m3)のポリエチレン(a)、カルボン酸変性エチレン・α−オレフィン共重合体(d)を表2に記載の割合でドライブレンドし、これをインフレーション成形機(トミー機械製:以下の実施例も本成形機を使用した)に直接供給した。成形温度条件も実施例1と同一条件にて運転し、厚み20μmのフィルムを成形した。フィルムの成形は実施例1と同様に何ら問題なく運転できた。フィルムの評価結果を表2に示した。
(実施例3)
実施例2と同一の材料・同一配合割合でフィルム厚みを31μmに上げて成形した。この場合も何ら問題なく成形できた。フィルムの評価結果を表2に示した。
(実施例4)
ポリエステル樹脂、密度0.903(g/m3)のポリエチレン(a)、エポキシ変性エチレン系共重合体(e)を、表2に記載の割合でドライブレンドし、これをインフレーション成形機に直接供給し成形した。この場合厚み33μmのフィルムを何ら問題なく成形できた。フィルムの評価結果を表2に示した。
以下に比較例を示すが、比較例の成形は、実施例2に示した同一の成形機でフィルムを成形した。比較例の場合、何れのフィルムも成形性は実施例と同様に何ら問題なく成形できたが、実施例1に示したフィルムインパクトの保持率の結果が、実施例に比較し劣る点が異なっている。以下、比較例の状況を示す。
(比較例1)
ポリエステル樹脂、密度0.924(g/m3)のポリエチレン(c)、カルボン酸変性エチレン・α−オレフィン共重合体(d)を表2に記載の割合でドライブレンドし、これをインフレーション成形機(トミー機械製:以下の比較例も本成形機を使用した)に直接供給した。成形温度条件は実施例1と同一条件にて運転し、厚み20μmのフィルムを成形した。この場合も、実施例と同様にフィルムインパクトの成形直後及び常温・暗所にて1年以上保管後の測定を行い、保持率で評価し結果を表2に記載した。
(比較例2)
比較例1と同一の材料・同一配合割合でフィルム厚みを33μmに上げて成形した。フィルムインパクトの評価結果を表2に示した。
(比較例3)
ポリエステル樹脂、密度0.921(g/m3)のポリエチレン(b)、カルボン酸変性エチレン・α−オレフィン共重合体(d)を表2に記載の割合でドライブレンドし、これをインフレーション成形機に直接供給し、インフレフィルムを成形し、厚み31μmのフィルムを得た。フィルムインパクトの評価結果を表2に記載した。
(比較例4)
比較例3と同一の材料・同一配合割合でフィルム厚みを20μmに落して成形した。フィルムインパクトの評価結果を表2に示した。
(比較例5)
ポリエステル樹脂、密度0.924(g/m3)のポリエチレン(c)、エポキシ変性エチレン系共重合体(e)を表2に記載の割合でドライブレンドし、これをインフレーション成形機に直接供給し、インフレフィルムを成形し、厚み25μmのフィルムを得た。フィルムインパクトの評価結果を表2に記載した。
Figure 2006117709
表2に、実施例、比較例で得られたインフレーションフィルムのフィルムインパクトを示した。ここで、ポリエステルフィルムの成形直後と、1年以上常温・暗所で保管したフィルムの物性を再度測定して比較した。実施例、比較例に使用したポリエチレンは、何れも直鎖状低密度ポリエチレンを採用した、その中でも、実施例に示したより低密度のポリエチレンほどフィルムインパクトの保持率を高く保つことができる。
表2に示したフィルムインパクトはフィルムの代表物性である衝撃強度をあらわしているが、フィルムインパクトが低い場合には、他のフィルム物性である、引裂き強度、引張り強度も同時な物性低下を認めている。
また、ここで得られたフィルムは、高い引張強度、引裂き強度および衝撃強度を有しており、その破断の際に大きな伸びを有し、しかも低温でのヒートシール性がある。従って、このフィルムは、包装袋や買い物バッグ等を製造する一般包装用フィルムとして好適に使用することができる。
さらに、本発明の範囲のポリエチレン樹脂を採用すれば、フィルム成形後の保管期間が長い場合でも、フィルム緒物性の低下を低く抑えることできるので、長期間安定して好適に使用することができる。
なお、このフィルムの主成分になっているポリエステル樹脂は、その発熱量がポリエチレン樹脂の約1/2と低いので、使用後の包装袋等を焼却処分する際にも焼却炉に及ぼす影響が小さい。従って、衛生医療用具等の廃棄物を焼却前に一時的に保存するための包装袋や一般のごみ袋等としても好適に使用できる。また、本発明記載の配合割合のフィルムはポリエステル樹脂の配合割合が高いので、ポリエステル樹脂の持つ保香性に優れた特性も有しており、臭気の強い内容物を入れる包装材として好適に使用することができる。

Claims (5)

  1. 非相溶性の樹脂成分2種類以上からなる樹脂組成物をインフレーション成形して得られるフィルムであって、マトリックス層を形成する樹脂成分のガラス転移温度が50℃以上であり、分散層を形成する樹脂成分のガラス転移温度が0℃以下であることを特徴とするフィルム。
  2. 前記マトリックス層を形成する樹脂成分がポリエステル樹脂(A)であり、前記分散層を形成する樹脂成分がエチレン系重合体(B)でありその密度が0.850〜0.910(g/cm3)の範囲にあることを特徴とする請求項1記載のフィルム。
  3. ポリエステル樹脂(A)50〜90重量%、エチレン系重合体(B)5〜50重量%、および相溶化剤(C)1〜20重量%、(ここでA、B、Cの合計量が100重量%である。)からなる樹脂組成物をインフレーション成形して得られる請求項1記載のフィルム。
  4. ポリエステル樹脂(A)50〜90重量%、密度が0.850〜0.910(g/cm3)の範囲にあるエチレン系重合体(B)5〜50重量%、相溶化剤(C)1〜20重量%、(ここでA、B、Cの合計量が100重量%である。)からなる樹脂組成物をインフレーション成形して得られる請求項1記載のフィルム。
  5. 前記相溶化剤(C)は、カルボン酸変性またはエポキシ変性したエチレン系共重合体である請求項3ないし4記載のフィルム。
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