JP2006116829A - ガスバリア性フィルム - Google Patents
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Abstract
フレキシブル性、透明性、耐熱性、耐溶剤性及び層間密着性に優れ、軽く、割れず、曲げられ、かつ水蒸気や酸素などに対して超高度にガスバリア性を有するガスバリア性フィルムを提供する。
【解決手段】
プラスチックフィルム基材11の少なくとも一方の面に、ゾルゲル層13、オーバーコート層15、及び無機化合物層17がこの順に積層し、好ましくは、上記ゾルゲル層が珪素、アルミニウム、若しくはチタンを主金属成分とした金属アルコキシドの加水分解生成物であり、上記オーバーコート層がアクリレート樹脂が主成分であり、上記無機化合物層が酸化珪素、窒化珪素、炭化珪素、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、或いはそれらの2以上の混合物であることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
また、「バリア性」は「遮断性」、「EL」は「エレクトロルミネッセンス」、「LCD」は「液晶ディスプレイ」、「パネル」は「素子」、「PET」は「ポリエチレンテレフタレート」、「PEN」は「ポリエチレンナフタレート」、「PC」は「ポリカーボネート」、「コポリマー」は「共重合体」、の略語、機能的表現、通称、又は業界用語である。
なお、シート又はフィルムのJIS−K6900での定義では、シートとは薄く一般にその厚さが長さと幅の割りには小さい平らな製品をいい、フィルムとは長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通例、ロールの形で供給されるものをいう。従って、シートの中でも厚さの特に薄いものがフィルムであるといえるが、シートとフィルムの境界は定かではなく、明確に区別しにくい。本明細書ではボード、シート、及びフィルムの形状を含めてフィルムと定義する。
このために、電子デバイス用基板やディスプレイ用基板としては、従来、Siウエハやガラスなどの無機材料の基板しか使用することができなかった。ところが、近年、製品の軽量化、基板のフレキシブル化、低コスト化、ハンドリング特性などを有し、軽くて、割れず、曲げられるようなプラスチック(高分子、合成樹脂ともいう)材料のプラスチックフィルム基板が望まれいた。従来のディスプレイを構成していたガラス基板に代わって、プラスチックフィルム(合成樹脂フィルム)を用いることが検討されている。特に、有機ELやフィルム液晶といったディスプレイ用途では、透明かつ耐熱性を有した高分子基板が望まれている。しかしながら、プラスチックフィルム基板は、ガラスなどの無機材料からなる基板と比較した場合、一般的にガスの透過性が著しく大きい。このため、プラスチック基板を用いた電子デバイスには、気体がプラスチック基板を透過して電子デバイス内に侵入、拡散した酸素によりデバイスが酸化して劣化してしまう等の問題があり、ディスプレイの寿命を伸ばす目的で、外界からの酸素や水蒸気の超ガスバリア性が求められている。
そこで、電子デバイス用基板やディスプレイ用基板の支持基板となるガスバリア性フィルムとしては、ガスバリア性に優れ、軽く、割れず、曲げられ、かつガラス基板に代替できるトータルな物性を有するプラスチック基板が求められ、かつフレキシブル性、透明性、耐熱性、耐溶剤性及び層間密着性や、特に、水蒸気や酸素などのガスバリア性など多くの過酷な物性が求められている。
また、これらの欠点を克服するため、透明性耐熱性基材上にスパッタ法を用いてガス遮断層を形成するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、その実施例に記載されているように酸素透過度が1cm3/m2 程度の低いガスバリア性しか得ることはできないという問題点がある。
さらにまた、樹脂フィルムとガス遮断層の密着性を改善するために、接着層を狭持させているものが知られている。しかしながら、樹脂フィルム表面に存在する突起に起因するガス遮断層におけるピンホ−ルの抑制については考慮されていない。そのため、該公報の実施例には水蒸気透過度が0.1g/m2 と未だ電子デバイス用途のガスバリア性フィルムには不十分なガスバリア性であるという欠点がある。
さらにまた、シラン化合物成分に加え、1種以上の重合性単量体を水中で乳化重合して得られた水分散重合体をガスバリア性層とするものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、酸素透過度の抑制については記載されているが、水蒸気透過度の具体的な数値については言及されていない。
請求項2の発明に係わるガスバリア性フィルムは、上記ゾルゲル層が、珪素、アルミニウム、若しくはチタンを主金属成分とした金属アルコキシドの加水分解生成物であるように、したものである。
請求項3の発明に係わるガスバリア性フィルムは、上記ゾルゲル層がアミノアルキルジアルコキシシラン、アミノアルキルトリアルコキシシラン、又はこれらの化合物を主成分とした複合体から選ばれた材料を、加水分解を主とする化学反応により得られた反応生成物であり、該ゾルゲル層がガスバリア性の層であるように、したものである。
請求項4の発明に係わるガスバリア性フィルムは、上記オーバーコート層がアクリレート樹脂を主成分とするように、したものである。
請求項5の発明に係わるガスバリア性フィルムは、上記無機化合物層が酸化珪素、窒化珪素、炭化珪素、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、或いはそれらの2以上の混合物であるように、したものである。
請求項6の発明に係わるガスバリア性フィルムは、上記ガスバリア性フィルムの全光線透過率が70%以上100%以下であるように、したものである。
プラスチックフィルム基材へ、直接セラミック薄膜などの無機化合物層を設けても、ガスバリア性が得られるが、一般的に炭素、酸素、水素元素からなるプラスチックフィルム基材と、ガスバリア性を有しかつ透明性を有するセラミック薄膜(無機化合物)とは、その構成元素の違いにより、真空薄膜形成時の粒子の成長阻害を与え、欠陥すなわちガスの透過孔を形成させてしまいガスバリア性が低下する。また、線膨張係数の大きい高分子フィルム上に、線膨張係数の小さいセラミック薄膜を形成した場合、基板の温度変化に伴う膨張収縮により、セラミック薄膜にクラックが発生し、それがガスの透過孔となり、ガスバリア性が低下する。
また、ゾルゲル層もガスバリア性を有するが、ゾルゲル層のみでは高度なガスバリア性は得られず、ガスバリア性を向上させるために、膜厚を増加させても逆に応力の増加によりガスバリア性の劣化を引き起こしてしまう。
そこで、本発明では、プラスチックフィルム基材へ、ゾルゲル層、オーバーコート層、及び無機化合物層がこの順に形成することにより、課題を解決し、微小なクラックを補修し、かつ平坦な面出しを行い、さらに無機化合物(セラミック薄膜)を形成することにより、緻密なガスバリア性層が形成される。ゾルゲル材料中に有機成分を多く含んでいることも関与し、プラスチック基材への膜の塗布仕上がりがよく、膜室の均一性に優れ、さらに積層される層との密着性も向上させることができた。
よって、本発明のガスバリア性フィルムは、ディスプレイにも利用可能な、ガラス基板に代替できるプラスチック基板の支持基材にも利用可能な、平坦で、フレキシブル性、透明性、耐熱性、耐溶剤性及び層間密着性に優れ、軽く、割れず、曲げられ、かつ水蒸気や酸素などに対して超高度にガスバリア性を有したガスバリア性フィルムを得ることができた。
例えば、先行技術として、特開平7−3206号公報や特開平7−18221号公報では、プラスチック基材上にゾルゲル剤を塗布しガスバリア層を形成しているが、それでは十分なガスバリア性はない。膜厚を増加させても高度がガスバリア性は得られず、逆に欠陥が発生し、ガスバリア性は低下する。
請求項2〜5の本発明によれば、請求項1の物性がより安定し、容易に製造できるガスバリア性フィルムが提供される。
請求項6の本発明によれば、有機EL素子などのディスプレイ分野のプラスチックフィルム基板に適用できるガスバリア性フィルムが提供される。
図1は、本発明の1実施例を示すガスバリア性フィルムの断面図である。
図2は、本発明の1実施例を示すガスバリア性フィルムの断面図である。
図3は、本発明のガスバリア性フィルムを用いたディスプレイ基板の断面図である。
材料としては、透明樹脂基材との親和性の高い材料、また透明性の高い材料が好まれるがそのゾルゲルの種類は問わない。ゾルゲルコート膜の材料としては、例えば、アミノアルキルジアルコキシシラン、もしくはアミノアルキルトリアルコキシシラン、およびこれらの化合物を主成分とした複合体から選ばれたもの等が好適に使用できる。これらの材料を用いるとその表面平坦性も向上される。これらの材料および架橋性化合物を原料とする塗料組成物を、透明樹脂基材面に塗工、乾燥することで、加水分解、縮合と、架橋性化合物による架橋とによるゾルゲル反応が進行し、ゾルゲルコート層は、上記材料の加水分解を主とする化学反応により得られた反応生成物であり、架橋構造を有するポリシロキサン系の塗膜が得られる。その厚さは、10〜5000nmが望ましい。10nm未満では、ディスプレイ用基板としてのガスバリア性が十分でなく、5000nmを超えると、それ自身の応力が大きくなり、フレキシビリティが損なわれる。
この、シランカップリング剤および架橋性化合物を原料とする塗料組成物を薄膜層4上に塗工、乾燥することで、シランカップリング剤の加水分解・縮合と、架橋性化合物による架橋とが進行し、架橋構造を有するポリシロキサンの塗膜が得られる。
測定値では、Ra(平均粗さ)が2nm以下、Rmax(最大粗さ)が120nm以下の範囲に平坦化され、得られる透明ガスバリア性フィルムにおいて高度なガスバリア性を発揮できる。ゾルゲル層13、及びオーバーコート15層は、機能的にみると平坦化機能を有したガスバリア性膜であり、特に両者の層構成とすることで、相互の親和性、濡れ性がよいため、孔、凹部、及びクラック(割れ)などの欠陥を埋め、覆い、塞ぐことができる。またレベリング性がよいために、欠陥を埋めて覆い、乾燥後の表面は平滑となる。この親和性とレベリング性の相乗効果で超平坦化機能を発揮する。これは真空無機薄膜とオーバーコート層15の積層よりも格段とよい。
中心線平均粗さRaの下限は特にないが、実用上、0.01nm以上である。このために得られたガスバリア性フィルム10は超高度なガスバリア性を発揮できるのである。
形成には、たとえば、乾式法(スパッタ法、イオンプレ−ティング法、CVD法等)、あるいは湿式法(スピンコート法、ロールコート法、キャスト法)等の公知の方法により形成することができる。
特に好ましくは、アクリレート系樹脂であり、具体的にはアクリレート系の官能基を有するもの、即ち、アクリル骨格を有するもの、エポキシ骨格を有するものが適当であり、塗膜の硬度や耐熱性、耐溶剤性、耐擦傷性を考慮すると、高い架橋密度の構造とすることが好ましく、2官能以上のアクリレートモノマー、たとえば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。なお上記においては、アクリレート、および/または、メタアクリレートは(メタ)アクリレートと記載した。
上記アクリレート系樹脂は、乾燥型、2液硬化型、又は電離放射線硬化型でもよい。樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するが、紫外線を照射して硬化させる場合には、光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイト、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル−N,N−ジメチルアミノベンゾエートなどや、光増感剤として、n−ブチルアミン、トリエチリルアミン、ポリ−n−ブチルホソフィンなどを単独ないし混合物として用いることができる。光重合開始剤や光増感剤の添加量は一般に、電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部程度である。
無機化合物層17としては、透明で、ガスバリア性を有するもの、例えば酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化インジウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム等の酸化物;窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化マグネシウム等の窒化物;炭化珪素等の炭化物、硫化物等が適用できる。また、それらから選ばれた二種以上の複合体である、酸化窒化物や、さらに炭素を含有してなる酸化炭化物層、無機窒化炭化物層、無機酸化窒化炭化物等も適用できる。
即ち、無機酸化物(MOx)、無機窒化物(MNy)、無機炭化物(MCz)、無機酸化炭化物(MOxCz)、無機窒化炭化物(MNyCz)、無機酸化窒化物(MOxNy)、無機酸化窒化炭化物(MOxNyCz)で、好ましいMは、Si、Al、Tiなどの金属元素である。
無機化合物層17は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の方法や、熱CVD法やプラズマCVD法を適用して形成される。これらの方法は、基材や下層の種類、成膜材料の種類、成膜のし易さ、工程効率等を考慮して選択される。
無機化合物17層は、その厚さは、10〜500nmが望ましい。10nm未満では、ディスプレイ用基板としてのガスバリア性が十分でなく、500nmを超えると、それ自身の応力が大きくなり、フレキシビリティが損なわれる。また異常粒成長から突起が形成されRaが増加する傾向があるので好ましくない。
さらにまた、同時に、ガスバリア性フィルム10の反対面から発生する脱ガスを防止することができるため、緻密、均一厚さな良質なガスバリア性フィルムを安定して形成することができる。反対側にもゾルゲル層の層を形成する際に、応力相殺或いは緩和のために、形成する層の厚み、使用する材料、層構成等を考慮することが、さらに好ましい。
透明無機化合物層を形成しないこと以外は、実施例1と同様にした。
オーバーコート層を形成しないこと以外は、実施例1と同様にした。
ゾルゲル層を形成しないこと以外は、実施例1と同様にした。
測定方法として、水蒸気透過率(WVTR)は、JIS−K7129に準拠し、水蒸気透過率測定装置パ−マトラン3/31(米国MOCON社製)を用い、40℃100%Rhの条件で測定した。なお、測定限界は0.01g/m2・24hである。
全光線透過率は、SMカラーコンピューター(スガ試験機社製)を用い測定した。
表面粗さRaは、原子間力顕微鏡(セイコ−社製)を用い、20μmのスキャニング範囲にて、平均粗さ(Ra)、最大高低差(P−V)を測定した。その結果を表1に示す。
実施例1〜7では、表面粗さRaがいずれも2nm以下、最大高低差(P−V)が50nm以下と平坦性に優れ、水蒸気透過率もいずれも測定限界の0.01g/m2・24h以下であり、ディスプレイ基板に適用できるレベルであった。
比較例2ではオーバーコート層がないので表面粗さが悪く、比較例1、3では表面粗さは合格範囲だが、2層だけでは水蒸気透過率が悪い。水蒸気透過率は、比較例1〜3のいずれも悪く、ディスプレイ基板に適用できるレベルではなかった。
11:プラスチックフィルム基材
13、13B、13C:ゾルゲル層
15、15B、15C:オーバオコート層
17、17B、17C:無機化合物層
Claims (6)
- プラスチックフィルム基材と、該プラスチックフィルム基材の少なくとも一方の面に、ゾルゲル層、オーバーコート層、及び無機化合物層がこの順に積層されてなることを特徴とするガスバリア性フィルム。
- 上記ゾルゲル層が、珪素、アルミニウム、若しくはチタンを主金属成分とした金属アルコキシドの加水分解生成物であることを特徴とする請求項1に記載ガスバリア性フィルム。
- 上記ゾルゲル層がアミノアルキルジアルコキシシラン、アミノアルキルトリアルコキシシラン、エポキシアルキルシラン化合物、又はこれらの化合物を主成分とした複合体から選ばれた材料を、加水分解を主とする化学反応により得られた反応生成物であり、該ゾルゲル層がガスバリア性の層であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
- 上記オーバーコート層がアクリレート樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載ガスバリア性フィルム。
- 上記無機化合物層が酸化珪素、窒化珪素、炭化珪素、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、或いはそれらの2以上の混合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
- 上記ガスバリア性フィルムの全光線透過率が70%以上100%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
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