JP2006116383A5 - - Google Patents
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Description
本発明は、ビールやワイン、清酒、ジュース等の飲料食品の除菌、注射液や輸液等の医薬品の除菌、電子工業用洗浄水の除粒子等の高い精度の濾過を行うための精密濾過用カートリッジフィルターに関するものであり、10μm以下、特に1μm以下のサブミクロンオーダーの微粒子や微生物を効率良く濾過するための精密濾過用カートリッジフィルター及びその製造方法に関するものである。
精密濾過膜の素材としては、一般的にセルロースアセテート、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン等が用いられているが、そのうちポリエーテルスルホン及びポリスルホンは、機械的強度、耐熱性、耐薬品性等に優れ、蒸気滅菌も可能であることから、医療用、食品用の濾過膜の素材として、大変有用である。
また、精密濾過膜としては、その断面構造において、膜の厚み方向の孔径が変化せず、膜の両表面の孔径が同じである等方性膜と、膜の一方の面から他方の面へと孔径が変化し、膜の両表面が異なった孔径を有する異方性膜とに区分することができる。
これらのうち、前記等方性膜は、粒子捕捉性は良好であるが、濾過にあたって膜全体が流体の流れに対して大きな抵抗を示し、小さな流速しか得られないうえ、1次側表面だけで粒子を捕捉するため、濾過寿命が短い。
一方、異方性膜は緻密層と呼ばれる孔径の小さい層を膜の片方の表面もしくは内側に有し、反対表面へ向かうに従って孔のサイズが次第に増加する構造を持っていることから、粒子がその大きさによって段階的に捕捉され、膜の厚みを有効に濾材として活用することが出来るので、同じ濾過効率の等方性膜と比較すると大きな流速が得られるうえ、濾過寿命も長い。更に濾過性能をより向上させるために、異方性膜の表裏の孔径比を大きくして、異方性をより高度にした構造とする手段がとられている。このように膜構造の異方性を高度にすることは、濾過寿命を長くできることから、濾過性能を向上させるのに大変有用である。
これらの精密濾過膜は、実用上においては、体積当たりの濾過膜の組み込み面積(有効濾過面積)を大きくすることができるため、膜をひだ折り加工して組み立てたカートリッジフィルターとして使用される場合が多い。
しかしながら、膜の表裏の孔径比を大きくし、異方性を高度にするほど、濾過性能は向上するが、必然的に膜の強度を律速する緻密層の厚さが薄くなり、膜の強度が弱くなる。その結果、膜をひだ折りしてカートリッジフィルターとした場合、膜の折り目表面に亀裂が発生し易くなり、特に、高度な異方性を有する精密濾過膜の場合、機械的な折り曲げにより亀裂が発生しなくても、カートリッジフィルターの完全性試験や洗浄するための通水、乾燥等により、折り目表面に亀裂が発生し易くなる。
このような問題により、カートリッジフィルターに採用できる異方性膜の表裏の孔径比は制約され、それとともに得られる濾過性能も限られたものとなっている。
上記問題を解決するため、特許文献1においては、緻密層が膜表面ではなく、膜の内部に存在する構造の濾過膜が、また、特許文献2においては、二枚の異方性精密濾過膜の緻密層同士が向かい合うように積層させた濾過膜が提案されている。
しかしながら、特許文献1のように膜の内部に緻密層を有する濾過膜であっても、膜の折り目表面における亀裂は、内部の緻密層にまで達することもあり不完全である。
また、特許文献2のように二枚の異方性濾過膜を積層した場合、保護膜分のコストが増加し、更に、ひだ折り加工を行いカートリッジ化する場合には、膜の厚さが増すため、カートリッジに入れることができる膜面積が少なくなり、コストが高いにも拘わらず、低流量、短濾過寿命となってしまい、極めて不経済である。
そこで、本発明は、異方性の精密濾過膜がひだ折り加工されているカートリッジフィルターにおいて、通液、乾燥等の作業に曝されても濾過膜の折り目表面に亀裂が発生せず、濾過性能に優れた精密濾過用カートリッジフィルター及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、ポリエーテルスルホンと親水性ポリマーを含有する異方性の精密濾過膜がひだ折り加工されて成型されている精密濾過用カートリッジフィルターにおいて、前記ポリエーテルスルホンの40%以上が、重量平均分子量5万〜10万であり、さらに、精密濾過膜がひだ折りされて成型された後に、純水を通水することによる湿潤状態において、110℃〜135℃の高圧蒸気処理が施されていることを特徴とする。
また、本発明は、ポリエーテルスルホンと親水性ポリマーを含有する異方性の精密濾過膜がひだ折り加工されて成型されている精密濾過用カートリッジフィルターの製造方法において、前記ポリエーテルスルホンの40%以上が、重量平均分子量5万〜10万であり、さらに、精密濾過膜をひだ折りして成型した後に、純水を通水することによる湿潤状態において、110℃〜135℃の高圧蒸気処理を施す工程を含むことを特徴とする精密濾過用カートリッジフィルターの製造方法である。
以上のように、本発明に係わる精密濾過用カートリッジフィルター及びその製造方法は、ポリエーテルスルホンの40%以上を重量平均分子量5万〜10万とし、さらに前記精密濾過膜をひだ折りして、カートリッジフィルターを成型した後に、純水を通水することによる湿潤状態において、110℃〜135℃の高圧蒸気処理を施すといった安価で簡便な方法により、通液、乾燥等の作業に曝されても濾過膜の折り目表面に亀裂が発生しない精密濾過用カートリッジフィルター及びその製造法を提供することができる。
また、本発明に係わるカートリッジフィルターは、十分な強度を有するため、保護膜を必要としないことから経済的であり、十分な濾過面積の濾過膜をカートリッジ内に納めることができる。また更に、濾過性能に優れた高度な異方性膜を用いても亀裂が発生しないことから、優れた濾過流量及び濾過寿命を得ることができる。
高度に異方性の膜は、膜の緻密層の厚さが薄く、等方性の膜や低度に異方性の膜に比べ、強度が弱くなる。時には機械的な折り曲げに対する強度も得られなくなり、ひだ折り加工さえも難しくなる。しかし、原料であるポリエーテルスルホン樹脂中に重量平均分子量5万〜10万のポリエーテルスルホン樹脂を40%以上含有させることにより、強度を向上させることができ、50%以上含有させることがより好ましい。
膜構造の異方性の度合いは、膜の厚み、バブルポイント及び平均水流速の値より判断できる。平均水流速は、単位時間当たりに膜の単位面積を通過する水の容積である。膜厚とバブルポイントが同じである場合、膜の厚み方向の孔径変化が大きい高度な異方性膜の場合、低度の異方性膜に比べ平均水流速が大きいが、逆に膜の強度は低下する。
本発明の精密濾過用カートリッジフィルターには、膜の厚みが80〜140μmであり、平均孔径10μm以下の精密濾過膜に有用であり、特に、イソプロピルアルコールによるバブルポイントが0.09〜0.12MPaで且つ平均水流速が62〜125ml/min/cm2at52±1cmHg、もしくはイソプロピルアルコールによるバブルポイントが0.18〜0.22MPaで、且つ平均水流速が30〜45ml/min/cm2at52±1cmHgの膜に有用である。
前記精密濾過膜をカートリッジフィルターに加工後、純水で湿潤状態として、高圧蒸気処理を行うが、カートリッジを湿潤させるために使用する水は、純水を用いることが好ましく、更に湿潤水には、超純水を使用することがより好ましい。純度の低い水や乾燥した状態で高圧蒸気処理を行っても所望の効果を得ることは出来ない。
また、高圧蒸気処理する際の温度と時間は、110℃〜135℃にて10〜60分処理することが好ましく、特に温度は、121〜126℃であることが好ましく、時間は15〜40分処理することが好ましい。それら以下の場合、亀裂発生を十分に防止することができず、逆にそれら以上の場合、膜強度が低下する場合もある。本発明において、高圧蒸気処理は、100℃以上の水の飽和蒸気圧下における水蒸気を用いて加熱処理することをいい、例えばオートクレーブによって高圧蒸気処理が施される。
親水性ポリマーとしては、10万〜16万の重量平均分子量を10%〜60%含むヒドロキシプロピルセルロースか、重量平均分子量4万〜6万のポリビニルピロリドン、若しくはこれらを併用することが好ましい。また、親水性ポリマーは、膜の重量に対して0.5〜6.0重量%含有されていることが好ましく、1.0〜3.0重量%含有させることが特に好ましい。0.5重量%以下であると親水性が不十分となり、6.0重量%以上となると平均水流速の低下を引き起こす。
以下、本発明の内容を具体的に実施例によって説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
重量平均分子量が約4万のポリエーテルスルホン樹脂(住友化学工業製4800P)6.25部、重量平均分子量が約7万のポリエーテルスルホン樹脂(住友化学工業製7600P)6.25部、N−メチル−2−ピロリドン47.5部、ポリビニルピロリドン(K−30)15部、エチレングリコール15部、アセトン10部を均一に溶解することによって、製膜溶液を得た。この製膜溶液を支持体であるフィルム上に流延し、温度を25℃、湿度を60%に調節した風を風速0.3m/secで約26秒間当てた後、水からなる凝固浴中に浸漬させ精密濾過膜を得た。得られた精密濾過膜を水で洗浄した後、親水化を行う為、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製HPC・MグレードとHPC・SLグレードの各50%の混合)0.5重量%アルコール溶液中に浸漬した後、熱ドライヤーにて乾燥して試験膜1を得た。得られた膜の構造は高度な異方性であり、物性値は0.45μmに相当する値を示した。膜性能等の詳細は表1に示す。
次に試験膜1をひだ折り加工して、濾過面積0.37m2のカートリッジフィルターを組み立てた。このカートリッジフィルターに超純水を2L通水し湿潤状態として、121℃で30分間オートクレーブ処理を行った後、カートリッジフィルターに超純水を200L通水し、温度60℃の空気中にて乾燥することによって、実施例1に係る精密濾過用カートリッジフィルターを得た。
この実施例1に係る精密濾過用カートリッジフィルターを分解し、試験膜1を取り出し、目視にて膜表面における亀裂発生を確認したところ、亀裂発生は見られなかった。また、この実施例1に係る精密濾過用カートリッジフィルターは、0.37m2という少ない濾過面積にも係らず、異方性のポリスルホン微孔性濾過膜が組み込まれている市販品のカートリッジフィルター(ポール社製、AXVR450、濾過面積0.57m2)と濾過効率は同等であるが、1.2倍の濾過寿命を示した。この結果は、高度な異方性を有する精密濾過膜の亀裂発生防止を達成したことにより、カートリッジフィルターの濾過面積が少なくても、濾過寿命の長い安価なカートリッジフィルターが得られたことを表している。
次に、重量平均分子量が約4万のポリエーテルスルホン樹脂(住友化学工業製4800P)5部、重量平均分子量が約5万のポリエーテルスルホン樹脂(BASF製E6020P)10部、ジメチルアセトアミド46部、ポリビニルピロリドン(K−30)17部、グリセリン12部、アセトン10部を均一に溶解することによって、製膜溶液を得た。この製膜溶液を支持体であるフィルム上に流延し、温度を25℃、湿度を60%に調節した風を風速0.3m/secで約7秒間当て、水からなる凝固浴中に浸漬させ精密濾過膜を得た。得られた精密濾過膜を水で洗浄した後、親水化する為、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製HPC・MグレードとHPC・SLグレードの各50%の混合)0.5重量%アルコール溶液中に浸漬した後、熱ドライヤーにて乾燥して試験膜2を得た。得られた膜の構造は高度な異方性であり、物性値は0.2μmに相当する値を示した。膜性能等の詳細は表1に示す。
試験膜2をひだ折り加工して濾過面積0.41m2カートリッジフィルターとして組み立てた。カートリッジフィルターに超純水を2L通水し湿潤状態として、126℃で15分間オートクレーブ処理を行った後、カートリッジフィルターに超純水を200L通水し、温度60℃の空気中にて乾燥することによって、実施例2に係る精密濾過用カートリッジフィルターを得た。
この実施例2に係る精密濾過用カートリッジフィルターを分解し、試験膜2を取り出し、目視にて膜表面における亀裂発生を確認したところ、亀裂発生は無かった。また、この実施例2に係る精密濾過用カートリッジフィルターは、0.41m2という少ない濾過面積にも係らず、異方性のポリスルホン微孔性濾過膜が組み込まれている市販品のポール製カートリッジフィルターAXVR200(濾過面積0.57m2)と濾過効率は同等であるが、1.4倍の濾過寿命を示した。
上記試験膜1を実施例1と同様にひだ折り加工してカートリッジフィルターとして組み立て、オートクレーブ処理せずに超純水を200L通水し、60℃の空気中にて乾燥することによって、比較例1に係る精密濾過用カートリッジフィルターを得た。この比較例1に係る精密濾過用カートリッジフィルターを分解し、試験膜1を取り出し、目視にて膜表面における亀裂発生を確認したところ、プリーツ折り目で数多くの亀裂が生じ実用に耐えうるものではなかった。
上記試験膜1を実施例1と同様にひだ折り加工してカートリッジフィルターとして組み立て、超純水を通水せずに、乾燥状態で121℃、30分間のオートクレーブ処理を行った後、カートリッジフィルターに超純水を200L通水し、温度60℃の空気中にて乾燥することによって、比較例2に係る精密濾過用カートリッジフィルターを得た。この比較例2に係る精密濾過用カートリッジフィルターを分解し、試験膜1を取り出し、目視にて膜表面における亀裂発生を確認したところ、プリーツ折り目で数多くの亀裂が生じ実用に耐えうるものではなかった。
上記試験膜1を実施例1と同様にひだ折り加工してカートリッジフィルターとして組み立て、85℃の温純水を200L通水し、60℃の空気中で乾燥することによって、比較例3に係る精密濾過用カートリッジフィルターを得た。この比較例3に係る精密濾過用カートリッジフィルターを分解し、試験膜1を取り出し、目視にて膜表面における亀裂発生を確認したところ、プリーツ折り目で数多くの亀裂が生じ実用に耐えうるものではなかった。
重量平均分子量が約4万のポリエーテルスルホン樹脂(住友化学工業製4800P)13部、N−メチル−2−ピロリドン46部、ポリビニルピロリドン(K−30)15部、エチレングリコール16部、アセトン10部を均一に溶解し、製膜溶液を得た。これを実施例1と同様の方法で製膜、親水化し試験膜3を得た。得られた膜の構造は高度な異方性であり、物性値は0.45μmに相当する値を示した。膜性能等の詳細は表1に示す。
次いで、試験膜3を実施例1と同様にカートリッジフィルターとして組み立て、オートクレーブ処理を行った後、超純水を200L通水し、温度60℃の空気中にて乾燥することによって、比較例4に係る精密濾過用カートリッジフィルターを得た。この比較例4に係る精密濾過用カートリッジフィルターを分解し、試験膜3を取り出し、目視にて膜表面における亀裂発生を確認したところ、プリーツ折り目に亀裂が生じていた。
重量平均分子量が約4万のポリエーテルスルホン樹脂(住友化学工業製4800P)13部、N−メチル−2−ピロリドン57部、エチレングリコール30部を均一に溶解し、製膜溶液を得た。これを、支持体であるフィルム上に流延し、温度を25℃、湿度を60%に調節した風を風速0.3m/secで約5秒間当てた後、水からなる凝固浴中に浸漬させ精密濾過膜を得た。得られた精密濾過膜を実施例1と同様に洗浄、親水化を行い試験膜4を得た。得られた膜の構造は低度な異方性であり、物性値は0.45μmに相当する値を示した。膜性能等の詳細は表1に示す。
次いで試験膜4をひだ折り加工してカートリッジフィルターとして組み立てた。このカートリッジフィルターをオートクレーブ処理せずに超純水を200L通水し、60℃の空気中にて乾燥することによって、比較例5に係る精密濾過用カートリッジフィルターを得た。この比較例5に係る精密濾過用カートリッジフィルターを分解し、試験膜4を取り出し、目視にて膜表面における亀裂発生を確認したところ、異方性の度合いが低度の膜であったため、プリーツ折り目に亀裂は生じていなかった。しかし、試験膜4を用いて作製したカートリッジフィルター(濾過面積0.37m2)は、試験膜1から作製したカートリッジフィルター(濾過面積0.37m2)と濾過効率は同等であるものの、濾過寿命は約0.55倍であった。
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