JP3570713B2 - ビール濾過用積層フィルター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビール中に含まれる微小粒子及び乳酸菌等の雑菌を除去するビール濾過用フィルターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ビール、ワイン、酒等の食品については、好ましくない物質を分離するために、液状で濾過する工程が設けられていることが多く、例えば、貯蔵タンクからビールを取り出す際に、酵母や懸濁物質、雑菌などを濾過することにより、良好な品質と清澄さを得ている。
【0003】
従来、ビールの濾過工程では、珪藻土を利用して濾過する方法が採用されていたが、この方法では、多量の珪藻土を必要とする上、珪藻土の再生ができないため、環境破壊の問題が生じている。また、濾過方法の改良として、特公平6−97984号にビール原料の麦什をβ−グルカナーゼやキシラナーゼによる酵素処理して濾過助剤による濾過性能の改良技術が開示されている。
【0004】
一方、近年では、プラスチックやセラミック物質からなる所定の孔径を有する薄い多孔質の精密濾過膜、例えば、セルロースーエステル混合物、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリ弗化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ナイロン66等から成る精密濾過膜を利用した濾過技術が提案されている。
【0005】
前記精密濾過膜の孔径と孔径分布は、製造工程で制御され、目的とする微粒子の大きさに適合させる。勿論、最大の孔径は、分離する微粒子の大きさを越えないように制御する。膜は孔径の差異だけでなく、その断面構造においても分類され、膜の厚み方向に等しい孔径の孔が貫通した等方性膜と、膜の一方の面から他方の面へと孔径が広がる孔を有する異方性膜とに区分される。
【0006】
異方性膜は膜の厚み方向に孔径が連続的に変化する構造であるが、その異方性の変化具合は膜のバブルポイントと平均水流速の値で制御できる。平均水流速は単位時間当たりに膜の単位面積を通過する純水の容積である。同じバブルポイントであっても膜の厚み方向の孔径の変化が少ないと水流速が小さくなり、等方性膜の構造に似てくる。
【0007】
前記精密濾過膜をビール用に用いた技術として、特公平5−5532号にビールの濾過寿命を長くするための親水性ポリエーテルスルホン膜が、また、特開平3−117475号には、膜素材の表面にポリアクリル酸誘導体又はポリメタクリル酸誘導体からなる表面被覆を有する膜が、また、濾過膜を積層して用いる技術としては、特開平7−124450号には乳酸菌除去率LRVが0.6〜3の精密濾過膜を積層する技術が、また、特開平7−222917号には等方性膜と異方性膜を積層する技術が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
近年、ビール濾過では、食品安全面より対数減少比:LRV=log(濾過前菌数/濾過後菌数)で表される乳酸菌の除去率(LRV)が、6程度の高い除去率が求められており、また高い除去能と合わせて、コストダウンとして長い濾過寿命の両面を兼ね備えた精密濾過膜が求められている。
【0009】
従来の単層の精密濾過膜による濾過の場合、除去性能は膜の孔径を小さくすることによって高められるが、孔径が小さくなると反対に濾過寿命は短くなる。更にビールの最終の除菌濾過の場合、液中に存在する細菌・真菌・酵母の如き微生物よりも小さな粒子が膜の孔壁に付着堆積し、孔を徐々に閉塞するため、微生物の捕捉性能と長い濾過寿命を両立させることは非常に難しい。
【0010】
ビール濾過工程での濾過膜に対する目詰まりの物質は、調査の結果、主に乳酸菌より小さい糖類の捕捉による目詰まりが主原因であった。具体的には、市販のビールにて濾過した膜を1規定の水酸化ナトリウム水溶液に24時間浸漬し、その溶出物を分析した。タンパク質を検出するため、ニンヒドリン反応にて評価したところ、陰性であり、タンパク質の吸着は認められなかった。ところが、単糖類や多糖類を検出するフェノール硫酸反応による評価を行ったところ陽性となり、糖類の目詰まりが主原因であることが確認された。よって、乳酸菌除菌性能を維持し、且つ、ビール中の糖類の吸着をいかに抑制するか、或いは膜に均一に捕集するかが濾過寿命を長くするポイントである。
【0011】
そこで精密濾過膜をビール用に用いた技術として、特公平5−5532号や特開平3−117475号が開示されているが、前記技術は単層膜を用いているものであるため長い濾過寿命を得ることが出来ないものであった。また、濾過膜を積層して用いる技術としては、前掲のように特開平7−124450号や特開平7−222917号が開示されているが、乳酸菌除去率LRVが0.6〜3の乳酸菌除去率が低い膜同士を積層する場合、所望の除去率を得るためには3層以上が必要となり、加工上や経済的に不利であり、またフィルターカートリッジにアッセンブリーした場合、濾材が厚くなることから濾過面積が減少し、所望の濾過流量や濾過寿命を得ることが出来ない。また、等方性膜と異方性膜を積層した場合においてもさして長い濾過寿命を得ることが出来ないものであった。
【0012】
従って、本発明の目的は、ビール用濾過フィルターとして、従来にない高い除去性能と長い濾過寿命とを兼ね備えた精密濾過膜を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のビール濾過用積層フィルターは、親水性ポリマーを含有するポリエーテルスルホンあるいはポリスルホンよりなる異方性精密濾過膜を積層して成るフィルターであって、乳酸菌除去率LRVが4〜5.5で、且つ平均水流速が125〜155ml/min・cm2 at52±1cmHgの膜を二次側に、乳酸菌除去率LRVが二次側膜より低い2〜4で、且つ平均水流速が160〜210ml/min・cm2 at52±1cmHgである膜を一次側に積層して成るものである。
【0014】
そして前記二次側の膜厚が90〜135μm、特に100〜125μmであり、一次側の膜厚が70〜110μm、特に80〜100μmとすることがより好ましい。
【0015】
また、前記二次側膜のイソプロピルアルコールによるバブルポイントが0.05〜0.07MPa、一次側膜のイソプロピルアルコールによるバブルポイントが0.035〜0.05MPaとすることがより好ましい。
【0016】
また、親水性ポリマーとしては、ヒドロキシプロピルセルロース、或いは、ポリビニルピロリドン、またはそれらの組み合わせが好適に用いられ、特に、分子量111,000〜150,000のヒドロキシプロピルセルロース、または分子量が40,000〜1,200,000のポリビニルピロリドンが好適に用いられる。
【0017】
更に、前記親水性ポリマーの含有量は、ポリエーテルスルホンあるいはポリスルホンの重量に対して0.5〜6.0重量%、好ましくは1.0〜3.0重量%を含有させることが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の要素であるポリエーテルスルホンあるいはポリスルホン異方性膜は、公知の技術で製造され、例えば特開昭60−41503等に開示されているように、膜は適当な製膜溶液から相分離法により作ることができる。前記製膜溶液は、ポリエーテルスルホンあるいはポリスルホン樹脂の良溶媒と非溶媒の混合溶媒、或いは溶解性が異なる複数種の溶媒を混合させたものであり、前記樹脂を前記混合溶液に溶解し、ポリエステルフィルム等の支持体上に流延し、流延した液膜の表面に温湿度や送風条件を調節した雰囲気に曝露した後、凝固液に浸漬し膜を形成する。膜の異方性及び孔径は、製膜溶液組成、曝露条件、凝固液等の製膜条件により制御することができる。
【0019】
凝固液にて膜形成後、膜洗浄を行う。洗浄は、膜中の溶媒をできるだけ取り除くために、50〜60℃の温水にて洗浄することが好ましい。洗浄後、熱板ドライヤー等で乾燥する。乾燥後、膜に親水性ポリマーが0.3〜0.5重量%溶解したアルコール液を含浸し、熱板ドライヤー等にて乾燥し不溶化する。乾燥後、再度、温水等にて洗浄し、過剰に付着した親水性ポリマーを取り除き、再度、熱板ドライヤー等にて乾燥する。
【0020】
本発明の膜材質は、ビール製造工程中のCIPでの熱水処理や、酸、アルカリ洗浄による再生処理に耐える優れた耐熱性及び耐薬品性を有することが必要であり、また、比較的容易に異方性膜を製膜できるポリエーテルスルホンあるいはポリスルホンが用いられる。
【0021】
前記良溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等であり、前記非溶媒としては、メタノール、エタノール、エチルグリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラヒドロフラン等を用いることができる。非溶媒の良溶媒に対する割合は、混合液が均一状態に保てればいかなる範囲でも良いが、特に、5〜70重量%が好ましい。
【0022】
また、膜の多孔質構造を制御するために、膨張剤と称される無機電解質、有機電解質、高分子電解質等を加えることもできる。使用できる電解質としては、食塩、硝酸ナトリウム、塩化亜鉛、臭化マグネシウム等の無機酸の金属塩、酢酸ナトリウム、酪酸カリウム、ギ酸ナトリウム等の有機酸塩類、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム等の高分子電解液、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルメチルタウリン酸ナトリウム等のイオン系界面活性剤等が挙げられる。前記電解質は、通常、水溶液として製膜溶液に添加され、その添加量は、製膜溶液の均一性が保てればいかなる範囲でも良いが、特に、0.5〜20重量%が通常、添加される。
【0023】
製膜溶液中のポリエーテルスルホンあるいはポリスルホン濃度は5〜35重量%、好ましくは、10〜20重量%である。前記濃度が35重量%を超えると得られる精密濾過膜の密度が高くなりすぎてしまい、また、前記濃度が5重量%未満となると十分な強度を持った精密濾過膜が得られない。
【0024】
本発明として好ましい膜の性能は、乳酸菌除去率LRV4〜5.5を有する二次側膜の場合、イソプロピルアルコールによるバブルポイントは0.05〜0.07MPa、ASTM−316−80の方法により測定した平均孔径(最小孔径層の孔径)は0.6〜0.9μm、平均水流量は125〜155ml/min・cm2 at52±1cmHgの範囲である。
【0025】
また、乳酸菌除去率LRV2〜4を有する一次側膜の場合、イソプロピルアルコールによるバブルポイントは0.035〜0.05MPa、ASTM−316−80の方法により測定した平均孔径(最小孔径層の孔径)は0.8〜1.2μm、平均水流量は160〜210ml/min・cm2 at52±1cmHgの範囲である。
【0026】
前記各範囲を外れると、除菌性能が低下したり、濾過寿命が短くなり好ましくない。また、本発明に用いる精密濾過膜は異方性、つまり一方の表面の孔径が大きく、他方表面の孔径は小さい膜であるため、膜をセットする際は、一次側つまり濾過原液と接する膜表面の孔が大きい孔径となり、二次側つまり濾過液出口側の膜表面の孔が小さい孔径となるように配する。
【0027】
本発明の膜は、通常、プリーツ加工したフィルターカートリッジとして組み立てられ用いられる。前記プリーツ加工の際に膜の厚みが厚いと膜割れが発生し、また、膜の厚みが薄いと、膜強度が弱く加工性に問題が生じる。この為、膜の厚みは、膜単体で90〜135μmが好ましく、2枚を積層した場合でも225μm以下が好ましい。
【0028】
凝固液としては水が一般的に用いられるが、ポリエーテルスルホンあるいはポリスルホンを溶解しない有機溶媒を用いてもよい。
【0029】
膜の親水化は、親水性ポリマーを膜に付与することにより達成できる。親水性ポリマーとして、ヒドロキシプロピルセルロースあるいは、ポリビニルピロリドン及びその組み合わせが特に好ましい。また、親水性ポリマーは過剰に高い分子量を有するべきでなく、ヒドロキシプロピルセルロースの場合、110,000以上、150,000以下の分子量が好ましく、ポリビニルピロリドンの場合、40,000以上、1,200,000以下の分子量が好ましい。
【0030】
また、親水性ポリマーはポリエーテルスルホンあるいはポリスルホンの重量に対して0.5〜6.0重量%、特に1.0〜3.0重量%の付与が好ましく、前記配合量とすることにより、本発明の膜は、水によって自発的に、且つ完全に湿潤する為、前記以外の付加湿潤剤を必要としない。親水性ポリマーの添加量は、前記範囲以外とすることも可能であるが、6重量%以上を付与した場合、膜の親水性は向上せず、却って親水性ポリマー層が膜の孔を塞ぎ、透水性を阻害する為、好ましくない。また、逆に親水性ポリマーの添加量を0.5重量%以下とした場合、膜の親水性が少なく、ビール中の蛋白質、糖類の疎水膜への吸着により、急激な目詰まりが起こり、濾過寿命が極めて短くなり好ましくない。
【0031】
以下に試験膜の1乃至5の作製、及び前記試験膜のうち1と3を用いた実施例をあげ、本発明を説明する。尚、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0032】
【試験膜1】
ポリエーテルスルホン樹脂(住友化学工業製4800P)15重量%、N−メチル−2−ピロリドン51重量%、ポリビニルピロリドンK−30 15重量%、エチレングリコール18重量%、テトラヒドロフラン1重量%をタンクに入れ、攪拌し均一な製膜溶液とした。その後、温度を25℃、湿度を62%に調節した風を風速1.0m/secで約4秒間当て、製膜溶液を支持体であるフィルム上に流延し、凝固液中に浸漬させた後、膜の洗浄を行った。洗浄後、親水化処理工程としてヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製HPC・SL)0.5重量%アルコール溶液中に浸漬し、乾燥後、再度洗浄、乾燥して得た以下の膜を試験膜1とした。膜性能等の詳細は表1に記す。
膜の断面構造:異方性
・膜厚:125μm
・平均水流速:125ml/min・cm2 at52±1cmHg
・乳酸菌除去率LRV=5.5
【0033】
【試験膜2】
製膜時の曝露雰囲気を、温度25℃、湿度62%に調節した風を風速1.0m/secで約5秒間当てた以外は試験膜1と同じ条件で製膜して得た性能の異なる以下の膜を試験膜2とした。膜性能等の詳細は表1に記す。
膜の断面構造:異方性
・膜厚:180μm
・平均水流速:155ml/min・cm2 at52±1cmHg
・乳酸菌除去率LRV=4.5
【0034】
【試験膜3】
ポリエーテルスルホン樹脂11%、N−メチル−2−ピロリドン57%、ポリビニルピロリドンK−30 11%、エチレングリコール20%、テトラヒドロフラン1%の組成にて製膜溶液を作製し、温度を25℃、湿度を62%に調節した風を風速0.5m/secで約1秒間当てて製膜し、試験膜1同様、製膜後の親水化処理等を施して得た性能の異なる以下の膜を試験膜3とした。膜性能等の詳細は表1に記す。
膜の断面構造:異方性
乳酸菌除去率LRV=2.0
平均水流速:185ml/min・cm2 at52±1cmHg
膜厚:90μm
【0035】
【試験膜4】
ポリエーテルスルホン樹脂11%、N−メチル−2−ピロリドン57%、ポリビニルピロリドンK−30 11%、エチレングリコール20%、テトラヒドロフラン1%の組成にて製膜溶液を作製し、温度25℃、湿度62%に調節した風を風速0.5m/secで約0.8秒間当てて製膜し、試験膜1と同様に製膜後の親水化処理等を施して得た性能の異なる以下の膜を試験膜4とした。膜性能等の詳細は表1に記す。
膜の断面構造:異方性
乳酸菌除去率LRV=3.5
平均水流速:151ml/min・cm2 at52±1cmHg
膜厚:90μm
【0036】
【試験膜5】
ポリエーテルスルホン樹脂(住友化学工業製4800P)13重量%、N−メチル−2−ピロリドン48重量%、ポリビニルピロリドンK−30 17重量%、エチレングリコール17重量%、テトラヒドロフラン5重量%をタンクに入れ、攪拌し均一な製膜溶液とした。その後、温度を25℃、湿度を62%に調節した風を風速0.4m/secで約4秒間当て、製膜溶液を支持体であるフィルム上に流延して製膜し、試験膜1と同様に洗浄、親水化処理、洗浄、乾燥を施して得た性能の異なる以下の膜を試験膜5とした。膜性能等の詳細は表1に記す。
膜の断面構造:異方性
膜厚:130μm
平均水流速:76ml/min・cm2 at52±1cmHg
乳酸菌除去率LRV=11.0
【0037】
【比較例1】
SARTORIUS社にて販売しているビール用フィルターカートリッジ/Sartocool PSで使用されている以下の性能のポリエーテルスルホン膜を比較例1とした。膜性能等の詳細は表1に記す。
・膜の断面構造:等方性構造
・膜厚:163μm
・平均水流速:81ml/min・cm2 at52±1cmHg
・乳酸菌除去率LRV=8
【0038】
【比較例2】
更に、ミリポア社製ビール用フィルターカートリッジの以下の性能のPVDF(ポリ弗化ビニリデン)膜を比較例2とした。膜性能等の詳細は表1に記す。
・膜の断面構造:等方性構造
膜厚:113μm
平均水流速:57ml/min・cm2 at52±1cmHg
乳酸菌除去率LRV=5.6
【0039】
【表1】
【0040】
【実施例1】
試験膜1(乳酸菌除去率LRVが5.5の異方性膜)を二次側、試験膜3(乳酸菌除去率LRVが2.0の異方性膜)を一次側として積層した本発明の積層フィルターを実施例とした。
【0041】
【比較例3】
比較例2(乳酸菌除去率LRVが5.6のミリポア社製等方性膜)を二次側、試験膜3(乳酸菌除去率LRVが2.0の異方性膜)を一次側とした積層フィルターを比較例3とした。
【0042】
【比較例4】
試験膜3(乳酸菌除去率LRV2.0の異方性膜)を二次側、試験膜1(乳酸菌除去率LRV5.5の異方性膜)を一次側とした積層フィルターを比較例4とした。
【0043】
【比較例5】
試験膜3(乳酸菌除去率LRV2.0の異方性膜)を三枚重ねた積層フィルターを比較例5とした。
【0044】
【比較例6】
試験膜4(乳酸菌除去率LRV3.5の異方性膜)を2枚積層したフィルターを比較例6とした。
【0045】
【濾過寿命試験】
試験膜1,2,5、実施例1及び比較例1〜6の膜をφ47mmに打ち抜き、有効濾過面積12.5cm2のフィルターホルダーにセットし、市販されている同一ロットのビールを試験液として、ビールの液温:4±1℃、濾過圧力0.10MPaの条件で定圧濾過を行い、30秒毎に濾過量を記録し、20分後に濾過を終了した。濾過終了後、横軸に時間、縦軸に時間/濾過量をプロットして、前記実験式の傾きの逆数を求め、前記値を最大濾過量(以下、Vmaxと記す。)とし、前記値にて膜の濾過寿命を比較した。試験結果を表2に記す。
【0046】
【表2】
【0047】
【試験膜1,2,3及び比較例1,2の性能比較】
試験膜1,2,3及び比較例1,2の単層でのビールの濾過寿命、及び目詰まりの状態について試験した結果、異方性の試験膜1,2のVmaxは共に13.1であり、また、膜内部の目詰まりの状態は、両者とも特に膜の最小孔径層にて発生し、最大孔径層に近づく程目詰まり度が減少し、最大孔径層付近では殆ど目詰まりは発生していなかった。
一方、等方性膜である比較例1のVmaxは8.1、比較例2のVmaxは7.8であり、異方性膜である試験膜1,2の約61%の濾過量であった。また、膜内部の目詰まりの状態は、両者とも膜の一次側表面で目詰まりが形成され、膜の孔が閉塞していた。
また、試験膜1,2はLRVや最小孔径層の孔径がほぼ同等で膜厚だけが異なっているが、Vmaxも差がない結果であった。これは膜厚が厚い試験膜2であっても、一次側の膜厚容積が充分に内部捕捉に活かされていない状態となり、膜の厚みが濾過寿命に寄与しないためと考えられる。つまり、異方性膜内部の最小孔径層にて目詰まりが発生したため、膜の厚みが濾過寿命に有効に働かなかった。一般に異方性膜の場合、膜厚が厚ければ濾過寿命は長くなると考えられるが、本試験により、異方性膜でも膜厚を厚くすれば必ずしも濾過寿命が長くなるわけではなく適正な膜厚があることが分かった。
更に、等方性膜は、膜の一次側表面にて目詰まりしているため、全く膜の厚みを活かせず、濾過寿命が短い結果であった。
また、試験膜5は異方性膜ではあるが、膜のバブルポイントが高すぎたため、膜表面付近で目詰まりが発生し、濾過寿命が短い結果であった。
【0048】
【発明の効果】
上記濾過寿命試験より、本発明のビール濾過用積層フィルターは、以下に記載する効果を奏する。
【0049】
本発明の実施例1の積層フィルターは試験膜1〜5の単層の場合や、比較例1,2と比較して、濾過寿命は飛躍的に伸び、特に市販されている比較例1のSartocool PSの約2.4倍の寿命を得た。また、前記積層濾過膜での乳酸菌除去率は比較膜1とほぼ同等のLRV7.5であった。つまり、試験膜1,2の試験より、単層膜の膜厚を厚くしても濾過寿命は延びなかったが、僅かに異なった最小孔径層を有する異方性膜を2層積層する構造とすることにより、飛躍的に濾過寿命を延ばすことができた。
【0050】
また、一次側を等方性膜にした比較例3と比較した場合、比較例3は一次側である等方性膜の表面で目詰まりが発生したため、濾過寿命が異方性膜同士の積層である本発明の実施例1の積層フィルターより短い結果であった。
【0051】
また、比較例4と比較した場合、本発明の実施例1の濾過寿命は比較例4のより約1.5倍長かった。つまり、膜を2枚積層する場合、一次側に乳酸菌除去率LRVの低い膜を、二次側にLRVの高い膜を配した方が濾過寿命は長く、これは乳酸菌除去率LRVの高い膜の方が孔径が小さいため、二次側膜が目詰まる前に、一次側膜の目詰まりが生じたためである。
【0052】
また、比較例5と比較した場合、比較例5(乳酸菌除去率LRV2.0の三枚重ね積層フィルター)の濾過寿命は実施例1とほぼ同等であるが、乳酸菌除菌性能はやや劣っており、また、濾過後の膜を調査したところ、一次側よりの2層の膜の目詰まりのみで、3層目の膜は殆ど目詰まっていない状態であった。よって3層目の膜が濾過寿命に機能せず、結果として、濾過寿命が2層積層品と同等であった。また、ビール用除菌濾過としてフィルターカートリッジとして組み立てる際には、3層重ねでは膜厚が厚く、プリーツ加工時に膜割れ等の不具合が発生する虞れがあるうえ、コスト面でも2層積層品より不経済となる。
【0053】
また、比較例6と比較した場合、乳酸菌除去率は同等であるが、濾過寿命に差がみられ、乳酸菌除去率LRVが二次側膜よりも低い膜を一次側とした本発明の実施例1の方が約1.2倍濾過寿命が長かった。
【0054】
以上の結果から、本発明のビール濾過用積層フィルターは、僅かに異なった最小孔径層を有する異方性膜を2層積層する構造とすることにより、1層の膜や等方性膜を積層するといった構造では達成することが困難であった、高い乳酸菌除去性能を有すると共に、膜全体の比表面積を有効に使い、目詰まりの主原因であるビール中の多糖類を膜の厚み方向に均一に捕捉させることができるから、高い除菌性能と同時に長い濾過寿命が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の膜の、膜厚さ方向における孔構造の概念を示す図。
【図2】従来の等方性膜の、膜厚さ方向における孔構造の概念を示す図。
【図3】従来の異方性膜の、膜厚さ方向における孔構造の概念を示す図。
Claims (7)
- 親水性ポリマーを含有するポリエーテルスルホンあるいはポリスルホンよりなる異方性精密濾過膜を積層して成るフィルターであって、乳酸菌除去率LRVが4〜5.5で、且つ平均水流速が125〜155ml/min・cm2 at52±1cmHgの膜を二次側に、乳酸菌除去率LRVが二次側膜より低い2〜4で、且つ平均水流速が160〜210ml/min・cm2 at52±1cmHgである膜を一次側に積層して成ることを特徴とするビール濾過用積層フィルター。
- 二次側の膜厚が90〜135μm、一次側の膜厚が70〜110μmである請求項1記載のビール濾過用積層フィルター。
- 二次側膜のイソプロピルアルコールによるバブルポイントが0.05〜0.07MPa、一次側膜のイソプロピルアルコールによるバブルポイントが0.035〜0.05MPaである請求項1又は2記載のビール濾過用積層フィルター。
- 親水性ポリマーがヒドロキシプロピルセルロース、或いは、ポリビニルピロリドン、またはそれらの組み合わせより成る請求項1乃至3のうちいずれか一項記載のビール濾過用積層フィルター。
- 親水性ポリマーが、分子量110,000〜150,000のヒドロキシプロピルセルロースから成る請求項1乃至4のうちいずれか一項記載のビール濾過用積層フィルター。
- 親水性ポリマーが、分子量40,000〜1,200,000のポリビニルピロリドンから成る請求項1乃至4のうちいずれか一項記載のビール濾過用積層フィルター。
- 親水性ポリマーが、ポリエーテルスルホンあるいはポリスルホンの重量に対して0.5〜6.0重量%を含有して成る請求項1乃至6のうちいずれか一項記載のビール濾過用積層フィルター。
Priority Applications (1)
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