JP2006111677A - 耐白化性難燃性樹脂組成物、その押出成形品、及びそれを押出成形して得られた被覆層を有する電線・ケーブル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】樹脂又はゴム、並びに脂肪酸、脂肪酸金属塩及びシランカップリング剤からなる群から選ばれた1種以上の表面処理剤で処理された表面処理水酸化マグネシウムを含む樹脂組成物において、更に、脂肪族アミンを特定量配合してなることを特徴とする耐白化性難燃性樹脂組成物、その押出成形品及びそれを押出成形して得られた被覆層を有する電線・ケーブル等を提供した。
【選択図】なし
Description
この白く変質する現象は、外観の目視で認められると共に、炭酸マグネシウム等の生成による樹脂組成物の質量増加として評価することができる。しかし、質量増加が認められなければ、白化もほとんど認められないが、外観の白化の程度と質量増加とは一次的な関係はなく、外観に激しい白化が認められても、質量増加は少ない場合も、大きい場合もある。そして、この白化がおこり、これが押出成形品として電線・ケーブルの被覆層等として使用されると、特に外観白化は、拭取ることができず、商品価値の著しい低下を招くという問題があった。
また、特許文献2、3には、水酸化マグネシウムとして水酸化マグネシウムを主成分とする天然鉱物を使用して、これを、脂肪酸、脂肪酸金属塩、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤より選ばれた少なくとも1種を主成分とする表面処理剤を0.5〜5重量%程度添加して表面処理を施したものを、プラスチック又はゴムに添加して、難燃性と共に、耐酸性や吸湿性を抑えた組成物が記載されている。
さらに、特許文献4には、オレフィン系樹脂と、特定の粒径パラメーターを持つ水酸化マグネシウムを主成分とする天然鉱物からなる難燃性オレフィン系樹脂組成物が記載され、耐酸性を確保し、表面平滑性のある押出成形品が得られると記載されている。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、脂肪族アミンは、ステアリルアミン又はオレイルアミンの少なくとも一種であることを特徴とする耐白化性難燃性樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、樹脂又はゴムは、エチレン系樹脂であることを特徴とする耐白化性難燃性樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明に係る耐白化性難燃性樹脂組成物を押出成形して得られた被覆層を有する電線・ケーブルが提供される。
なお、この脂肪族アミンの耐白化性に対する作用機構は、明確には解明されていないが、脂肪族アミンが、表面処理水酸化マグネシウムの表面処理の不完全な部分を覆う作用により、もたらされることにもよると、本発明者らは考察している。
本発明で使用される樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、メタクリル系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
これらの中では、無極性あるいは弱い極性しか持たないオレフィン系樹脂を、好適に使用することができる。
エチレン系樹脂としては、高圧法ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン(炭素数2〜12)共重合体、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体、エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体が挙げられ、具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体等を挙げることができる。
なお、樹脂又はゴムは、1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において使用される表面処理水酸化マグネシウムの表面処理剤として使用される脂肪酸、脂肪酸金属塩及びシランカップリング剤からなる群から選ばれた1種以上の表面処理剤の脂肪酸としては、炭素数が15以上の飽和脂肪酸、及び不飽和脂肪酸が挙げられ、具体的には、飽和脂肪酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等が例示でき、また、不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、エルカ酸、リシルイン酸、リノレイン酸、リノール酸等が例示できる。これらのなかでは、ステアリン酸を好適に使用することができる。
表面処理量が0.5質量%未満であると、水酸化マグネシウムの表面全体を覆うことが困難となり、表面処理水酸化マグネシウムを配合した樹脂組成物の機械特性、耐白化性のいずれも低下し、一方、表面処理量が5.0質量%を超えると、水酸化マグネシウムの難燃剤として効果が低下し、また、機械特性も劣り始める。
例えば、海水から製造する合成水酸化マグネシウムの場合、水溶液中で水酸化マグネシウムの結晶析出が行われるので、この水溶液中に所望量の表面処理剤を、必要ならばアルコール等の溶媒に希釈して配合し、析出後乾燥させて、表面処理水酸化マグネシウムを製造することができる。
また、合成水酸化マグネシウム及び天然産水酸化マグネシウムとも、例えば表面処理剤の水溶液や有機溶媒液を加え混合するスラリー法を採用して製造することができる。
すでに、使用目的に応じた平均粒径を持つ合成水酸化マグネシウム又は天然産水酸化マグネシウムに、所望量の表面処理剤を加え、これが溶融する温度以上、例えば100〜120℃に加熱しながら攪拌混合することにより製造することができる。この場合は、コンティニュアスミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、スーパーミキサー、ボールミル等公知の混合機を用いればよい。
また、天然産水酸化マグネシウムの場合は、粉砕して使用するので、粗粉砕の天然産水酸化マグネシウムと所望量の表面処理剤をボールミル等粉砕機に入れ、必要ならば外部から表面処理剤が溶解する温度に加熱しながら粉砕と同時に表面処理を行ってもよい。
本発明において使用される脂肪族アミンとしては、炭素数が15以上の飽和脂肪族アミン、及び不飽和脂肪族アミン等が挙げられる。
飽和脂肪族アミンとしては、例えば、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ベヘニルアミン等が挙げられ、不飽和脂肪族アミンとしては、例えば、オレイルアミン、エルカニルアミン、リシルイルアミン、リノレイルアミン、リノレルアミン等が挙げられる。
本発明においては、飽和脂肪族アミンとしてステアリルアミン、及び不飽和脂肪族アミンとしてオレイルアミンが好適に使用できる。
配合量が0.05質量部未満では、耐白化性の増強効果が不十分となり、一方、3質量部を超えると、耐白化性の効果はあるが、樹脂組成物の耐熱性が低下し、更に、脂肪族アミンのブルーミング(脂肪族アミンが表面ににじみでてきて、粉を吹いた状態になる現象)がおこるので、望ましくない。
なお、脂肪族アミンは、1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の耐白化性難燃性樹脂組成物は、それぞれ所定量の樹脂又はゴム、表面処理水酸化マグネシウム、脂肪族アミン、及び必要に応じて適当量のその他の配合物(安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、核剤、滑剤、加工性改良剤、充填剤、分散剤、銅害防止剤、中和剤、発泡剤、気泡防止剤、着色剤、カーボンブラック、カーボンブラックマスターバッチ、その他の難燃剤)を配合して、一般的な方法、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、コンティニュアスミキサー、ロールミルあるいは押出機を用いて均一に溶融混練することによって製造することができる。
製造した本発明の耐白化性難燃性樹脂組成物は、次いで粒径2〜7mm程度のペレットに造粒し、これを成形に用いることが望ましい。
配合量が50質量部未満では、難燃性が不十分となり、一方、250質量部を超えると、機械特性、押出加工性が落ちるので望ましくない。
本発明の押出成形品は、上記の耐白化性難燃性樹脂組成物を、公知の方法で押出成形機を用い、これに投入し加熱溶融させた後、金型から押出成形して製造することができる。
押出成形品が電線・ケーブルの被覆層である場合は、公知の方法で電線・ケーブルの芯線上に絶縁層やシース層として同様に押出成形して被覆することにより製造することができる。
各々所定量の樹脂又はゴム、表面処理水酸化マグネシウム、脂肪族アミン、及び必要に応じて適当量のその他の配合物を、バンバリーミキサーに投入し、200℃で10分間溶融混練して樹脂組成物を得て、これから平均粒径約4mmのペレットを得て、これを160℃予熱5分間、150kgf加圧3分間、最後に圧力を保ったまま23℃になるまで冷却する圧縮成形により1mm厚のシートを得て、試料として使用した。
I.耐白化性
得られた試料(シート)を、3cm×5cmの矩形にダンベルで打ち抜き、短辺側一辺中央部に直径約5mmの穴をあけ吊り下げられるようにした試験片を調製した。
得られた試験片を用いて、以下に説明する炭酸ガス暴露試験を行い、耐白化性を評価した。
試験片を室温(25℃)で相対湿度90%、及び所定の炭酸ガス濃度の雰囲気中に、吊り下げ放置し、所定時間毎に試験片を取出し、評価した。
耐外観白化性は、上記炭酸ガス暴露試験を行い、所定時間経過後の試験片の表面を目視で、以下の8段階で基準で評価した。
基準0:全く表面白化が認められない。
基準1:かすかに表面白化が認められる。
基準2:やや少し表面白化が認められる。
基準3:少し表面白化が認められる。
基準4:やや多く表面白化が認められる。
基準5:多く表面白化が認められる。
基準6:かなり多く表面白化が認められる。
基準7:全面に著しく表面白化が認められる。
試験開始前に試験片の質量を測定し、上記炭酸ガス暴露試験を行い、所定時間経過後の試験片を取出し、1.3kPa以下の減圧下で、80℃で12時間乾燥し、冷却後、質量を測定し、当初の質量で割り、その百分率で表した。この数値が大きくなるほど、耐炭酸ガス白化性が劣ることになる。
なお、上述したように耐外観白化性と耐炭酸ガス白化性は、必ずしも一致するものではない。
II−1.引張破壊応力
試料をJIS K6251の4.1に規定する3号ダンベルで打ち抜いた試験片につき、JIS C3005に準拠して引張破壊応力試験を行った。3試験片を測定し平均値で評価した。
引張破壊応力試験と同様の試験片を用いて、JIS C3005に準拠して引張破壊歪試験を行った。3試験片を測定し平均値で評価した。
カーボンブラック(バルカン9A−32、キャボット社製)とエチレン−ブテン−1共重合体(メルトマスフローレート1g/10分、密度0.918g/cm3、GMM−1810、日本ユニカー製)を用いて、200℃で10分溶融混練して、平均粒径4mmに造粒し、カーボンブラック36質量%を含むカーボンブラックマスターバッチを調製した。
上記エチレン−ブテン−1共重合体、及び上記で調製したカーボンブラックマスターバッチを、樹脂(エチレン−ブテン−1共重合体)100質量部あたりカーボンブラックが4.6質量部配合されるように、混合した。
上記樹脂100質量部あたり、表面処理水酸化マグネシウム(天然産水酸化マグネシウム、ステアリン酸2.8質量%処理、マグシーズW−H4、神島化学製)100質量部、及び酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを1質量部となるように配合し、比較例1の樹脂組成物を得て、これから試料を調製した。
各々の樹脂組成物の組成は、表1に示した。
得られた試料につき、耐白化性と機械特性を評価し、結果を表1に示した。
機械特性については、比較例1、2、及び実施例1〜3のいずれの樹脂組成物も同等で好適であった。
耐白化性試験においては、炭酸ガス暴露試験において暴露炭酸ガス濃度100%の7日後、及び14日後のいずれの場合においても、目視で評価した耐外観白化性において、実施例1〜3のものは、比較例1より明らかに優れていた。また、質量増加率で評価した耐炭酸ガス白化性についても、実施例1〜3のものは、比較例1より優れていて、明らかな相違が認められた。
比較例2は、炭酸マグネシウムの生成(この場合は、拭くことにより除去できない。)によるものと、明らかに異なる粉吹き、即ち拭くことにより除去可能なブルーミングが認められた。質量増加率は、これを拭取ってから評価し、比較例1と比較すると良好であったが、耐外観白化性では、比較例1と同様に悪かった。
比較例1、及び実施例2について炭酸ガス暴露試験は、暴露炭酸ガス濃度を40%、及び10%についても行い、初めて白化が目視で基準1と認められた白化開始時間を測定した。
図1に、比較例1と実施例2の両対数グラフを示したが、比較例1、及び実施例2の白化開始時間は、それぞれ210時間、及び1163時間となり、実施例2では比較例1の5.5倍の白化開始時間が得られ、本発明の耐白化性難燃性樹脂組成物は、総合的に優れた耐白化性を持ち、なかでも耐外観白化性が強められていることが認められた。
ステアリルアミンをオレイルアミン(アミンOB、日本油脂製)とした以外は、実施例2と同様にして、実施例7の樹脂組成物を得て、試料を調製した。
得られた樹脂組成物の組成及びその評価結果を表2に示したが、機械特性については、実施例4の樹脂組成物は比較例1と同等で好適であったが、目視で評価した耐外観白化性において、実施例4のものは、比較例1より明らかに優れていた。また、質量増加率で評価した耐炭酸ガス白化性についても、実施例4のものは、比較例1より優れていて、総合的に優れた耐白化性を持ち、なかでも耐外観白化性が強められていることが認められた。
表面処理水酸化マグネシウムの配合量を150質量部とした以外は比較例1、及び実施例2と同様にして、それぞれ比較例3、及び実施例5の樹脂組成物を得て、試料を調製した。
得られた樹脂組成物の組成及びその評価結果を表3に示したが、機械特性については、実施例5の樹脂組成物は、比較例3と同等で好適であった。しかし、目視で評価した耐外観白化性において、実施例5のものは、比較例3より明らかに優れていた。また、質量増加率で評価した耐炭酸ガス白化性についても、より優れていて、明らかな相違が認められ、総合的に優れた耐白化性を持ち、なかでも耐外観白化性が強められていることが認められた。
表面処理水酸化マグネシウムを(天然産水酸化マグネシウム、ステアリン酸カルシウム2質量%処理、マグラックスCAF、鋼管工業製)とした以外は、比較例1、実施例2、及び実施例3と同様にして、比較例4、実施例6、及び実施例7の樹脂組成物を得て、試料を調製した。
得られた樹脂組成物の組成及びその評価結果を表4に示したが、機械特性については、実施例6、7の樹脂組成物は、比較例4と同等で好適であったが、目視で評価した耐外観白化性において、実施例6、7のものは、比較例4より明らかに優れていた。また、質量増加率で評価した耐炭酸ガス白化性についても、実施例6、7のものは、比較例4より優れていて、総合的に優れた耐白化性を持ち、なかでも耐外観白化性が強められていることが認められた。
カーボンブラック(バルカン9A−32、キャボット社製)とエチレン−アクリル酸エチル共重合体(メルトマスフローレート0.5g/10分、アクリル酸エチル含有量23質量%、NUC−831、日本ユニカー製)を用いて、200℃で10分溶融混練して、造粒し、カーボンブラック36質量%を含むカーボンブラックマスターバッチを調製した。
得られたカーボンマスターバッチ、上記エチレン−アクリル酸エチル共重合体、実施例1で用いた表面処理水酸化マグネシウム100質量部、及び酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを用いて、実施例8では更にステアリルアミンを用いて、それぞれ比較例5、実施例8の樹脂組成物を得て、試料を調製した。
各々の樹脂組成物の組成は、表5に示した。
得られた試料につき、耐白化性と機械特性を評価し、結果を表5に示した。
機械特性については、比較例5及び実施例8のいずれの樹脂組成物も、同等で好適であった。
耐白化性試験においては、炭酸ガス暴露試験において暴露炭酸ガス濃度100%の7日後、14日後のいずれの場合においても、目視で評価した耐外観白化性において、実施例8のものは、比較例5より優れていた。また、質量増加率で評価した耐炭酸ガス白化性についても、より優れていて、総合的に優れた耐白化性を持ち、なかでも耐外観白化性が強められていることが認められた。
Claims (6)
- 樹脂又はゴム、並びに脂肪酸、脂肪酸金属塩及びシランカップリング剤からなる群から選ばれた1種以上の表面処理剤で処理された表面処理水酸化マグネシウムを含む樹脂組成物において、
更に、脂肪族アミンを配合してなり、樹脂組成物の配合割合は、樹脂又はゴム100質量部に対して、表面処理水酸化マグネシウム50〜250質量部及び脂肪族アミン0.05〜3質量部であることを特徴とする耐白化性難燃性樹脂組成物。 - 脂肪族アミンは、ステアリルアミン又はオレイルアミンの少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の耐白化性難燃性樹脂組成物。
- 脂肪酸、脂肪酸金属塩及びシランカップリング剤からなる群から選ばれた1種以上の表面処理剤で処理された表面処理水酸化マグネシウムの表面処理量は、0.5〜5質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐白化性難燃性樹脂組成物。
- 樹脂又はゴムは、エチレン系樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐白化性難燃性樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の耐白化性難燃性樹脂組成物を押出成形して得られることを特徴とする押出成形品。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の耐白化性難燃性樹脂組成物を押出成形して得られた被覆層を有する電線・ケーブル。
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