この発明は、車両の動力伝達装置の動作部材や、各種の産業機械の動作部材の動作を制御する場合に用いる油圧制御装置に関するものである。
一般に、車両の動力伝達装置においては、動作部材の動作を制御することにより、駆動力源と車輪との間で伝達される動力が制御されるように構成されており、その動作部材の動作を制御する場合に、油圧制御装置を用いることが知られている。この油圧制御装置の一例が、特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載されている油圧制御装置は、複数のオイル吐出口を有するオイルポンプと、複数のオイル吐出口のうち、第1のオイル吐出口から吐出された圧油が供給され、かつ、プライマリレギュレータバルブの第1の入力ポートに接続された第1の油路と、複数のオイル吐出口のうち、第2のオイル吐出口から吐出された圧油が供給され、かつ、プライマリレギュレータバルブの第2の入力ポートに接続された第2の油路とを有している。
また、第1の油路と第2の油路との間には逆止弁が設けられており、この逆止弁は、第2の油路から第1の油路に圧油が流れることを許容し、かつ、第1の油路から第2の油路に圧油が流れることを防止する構成を有している。前記プライマリレギュレータバルブは、軸線方向に動作するスプールを有しており、このスプールの動作により、第1の入力ポートから第3の油路に排出される圧油の流量を制御するとともに、第2の入力ポートから第4の油路に排出される圧油の流量を制御するように構成されている。
具体的には、第1の油路における圧油の必要量が増加して、第1の油路の油圧が低下した場合は、スプールがスプリングにより付勢されて、第1の入力ポートが狭められて、第1の入力ポートから第3の油路に排出される圧油の流量が減少する。また、このスプールの動作により、第2の入力ポートが狭められて、第2の入力ポートから第4の油路に排出されるオイルの流量が減少する。そして、第2の油路の油圧が第1の油路の油圧よりも上昇した場合に逆止弁が開放されて、第2のオイル吐出口から吐出された圧油が、逆止弁を経由して第1の油路に供給される。このようにして、第1の油路に供給される圧油の流量が増加して、第1の油路における圧油の流量不足が解消される。なお、複数のオイル吐出口を有する油圧制御装置は、特許文献2にも記載されている。
特開2004−76817号公報
特開平5−26334号公報
しかしながら、上記の特許文献1に記載されている油圧制御装置においては、第1の油路の油圧が低下して、プライマリレギュレータバルブのスプールが、第2の入力ポートを閉じる方向に動作するとともに、第2の入力ポートから第4の油路に排出されるオイルの流量が減少して、第2の油路の油圧が所定圧まで上昇した段階で、逆止弁が開放される構成となっている。つまり、第2のオイル吐出口から吐出される圧油を第1の油路に供給する場合、その圧油の供給状態がプライマリレギュレータバルブのスプールの動作に依存しており、逆止弁が開放されるまでは、第2のオイル吐出口から吐出された圧油を第1の油路に供給することができず、第1の油路に対する圧油の供給遅れが生じる可能性があった。
この発明は上記事情を背景としてなされたものであり、第2のオイル吐出口から第1の油路にオイルを供給する場合に、オイルの供給応答性を向上することの可能な油圧制御装置を提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、複数のオイル吐出口を有するオイルポンプと、複数のオイル吐出口のうち、第1のオイル吐出口から吐出された圧油が供給され、かつ、圧力制御弁の第1の入力ポートに接続された第1の油路と、複数のオイル吐出口のうち、第2のオイル吐出口から吐出された圧油が供給され、かつ、前記第1の油路および前記圧力制御弁の第2の入力ポートに接続された第2の油路と、前記第1の油路と前記第2の油路との間に配置され、前記第2の油路から前記第1の油路に圧油が流れることを許容し、かつ、前記第1の油路から前記第2の油路に圧油が流れることを防止する第1の逆止弁とが設けられ、前記圧力制御弁は動作可能な弁体を有しており、この弁体の動作により、前記第1の入力ポートから第3の油路に排出される圧油の流量が制御され、かつ、前記第2の入力ポートから第4の油路に排出される圧油の流量が制御されるように構成されている油圧制御装置において、前記第2の油路に、前記第2のオイル吐出口から吐出された圧油を、前記第1の逆止弁を経由させて前記第1の油路に供給する第1の動作状態と、前記第2のオイル吐出口から吐出された圧油を、前記第2の入力ポートに供給する第2の動作状態とを選択的に切り替え可能な切替弁が設けられていることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記第2の油路と並列に設けられ、かつ、前記切替弁を迂回して設けられた迂回油路と、この迂回油路に設けられた第2の逆止弁とを有し、この第2の逆止弁は、前記切替弁の動作状態として前記第1の動作状態が選択されて前記第2のオイル吐出口の吐出油圧が上昇した場合に開放される構成を有していることを特徴とするものである。
請求項3の発明は、請求項1または2の構成に加えて、前記オイルポンプがオイル吸入口を有しており、前記切替弁は、前記第2のオイル吐出口から吐出された圧油を、前記オイル吸入口に戻す第3の動作状態を選択可能な構成を、更に有していることを特徴とするものである。
請求項4の発明は、請求項3の構成に加えて、前記第1の油路における圧油の必要量が増加した場合は、前記切替弁の動作状態として第1の動作状態を選択する第1の選択手段と、前記第1の油路に供給される圧油の流量が少ない場合に、前記切替弁の動作状態として前記第2の動作状態を選択する第2の選択手段と、前記第1の油路に供給される圧油の流量が多い場合に、前記切替弁の動作状態として前記第3の動作状態を選択する第3の選択手段とを有していることを特徴とするものである。
請求項5の発明は、請求項1または2の構成に加えて、前記第1の油路と前記第2の油路とを接続し、かつ、前記第1の逆止弁と並列に配置された第3の逆止弁が設けられており、この第3の逆止弁は、前記第1の油路の油圧の方が前記第2の油路の油圧よりも所定圧だけ高圧である場合に開放されて、第1の油路の圧油が第2の油路に流れることを許容し、かつ、前記第2の油路から前記第1の油路に圧油が流れることを防止する構成を有していることを特徴とするものである。
請求項6の発明は、請求項5の構成に加えて、前記オイルポンプがオイル吸入口を有しており、前記切替弁は、前記第2のオイル吐出口から吐出された圧油を、前記オイル吸入口に戻す第3の動作状態を選択可能な構成を、更に有していることを特徴とするものである。
請求項7の発明は、請求項6の構成に加えて、前記第1の油路の油圧が所定圧以上に上昇した場合に、前記切替弁の動作状態として第3の動作状態を選択する第4の選択手段を有していることを特徴とするものである。
請求項8の発明は、請求項6または7の構成に加えて、前記第3の逆止弁が開放される場合は、前記切替弁の動作状態として、前記第2の動作状態または前記第3の動作状態を選択する第5の選択手段を有していることを特徴とするものである。
請求項9の発明は、請求項1または8の構成に加えて、前記圧力制御弁の弁体の動作量の変化に対する前記第1の入力ポートの開口面積の変化が少ない領域で、前記切替弁の動作状態を変更する第6の選択手段を有していることを特徴とするものである。
請求項10の発明は、請求項1ないし9のいずれかの構成に加えて、前記圧力制御弁の弁体の動作量の変化に対する前記第1の入力ポートの開口面積の変化よりも、前記圧力制御弁の弁体の動作量の変化に対する前記第2の入力ポートの開口面積の変化の方が大きく構成されていることを特徴とするものである。
請求項11の発明は、請求項1ないし10のいずれかの構成に加えて、前記圧力制御弁は、前記第1の入力ポートが全閉である場合にも、前記第2の入力ポートが開口される構成を有していることを特徴とするものである。
請求項1の発明によれば、オイルポンプの第1のオイル吐出口から吐出された圧油が第1の油路に供給される一方、切替弁の動作状態として第2の動作状態が選択された場合は、第2のオイル吐出口から第2の油路に吐出された圧油が、圧力制御弁の第2の入力ポートに供給される。そして、圧力制御弁の弁体の動作により、第1の油路から第3の油路に排出される圧油の流量が制御され、かつ、弁体の動作により、第2の油路から第4の油路に排出される圧油の流量が制御される。
これに対して、第1の油路における圧油の必要量が増加した場合は、切替弁の動作状態として第1の動作状態が選択されて、第2のオイル吐出口から吐出される圧油の油圧が上昇して逆止弁が開放され、第2の油路の圧油が第1の油路に供給される。このように、圧力制御弁の弁体が動作して第2の入力ポートの開度が減少する前に、第2のオイル吐出口から吐出された圧油を第1の油路に供給することが可能である。したがって、第2のオイル吐出口から第1の油路にオイルを供給する必要がある場合に、オイルの供給応答性を向上することが可能である。
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、切替弁の動作状態として第1の動作状態が選択されると、第2のオイル吐出口から吐出された圧油の油圧が上昇して、第2の逆止弁が開放される。その結果、第2のオイル吐出口から吐出された圧油が、第1の逆止弁を経由して第1の油路に供給される経路と、第2の逆止弁を経由して第2の入力ポートに供給される経路とに分岐される。したがって、切替弁の動作状態として第1の動作状態が選択された場合において、第1の油路に供給される圧油の流量が急激に増加することを抑制でき、かつ、第1の油路の油圧が急激に上昇することを抑制できる。
請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明と同様の効果を得られる他に、切替弁の動作状態として第3の動作状態を選択可能である。つまり、切替弁の動作状態を第1の動作状態ないし第3の動作状態という3段階に変更可能である。そして、切替弁の動作状態として第3の動作状態が選択された場合は、第2のオイル吐出口から吐出された圧油が、オイルポンプのオイル吸入口に戻される。したがって、オイルポンプの駆動に必要なトルクを低減することが可能である。
請求項4の発明によれば、請求項3の発明と同様の効果を得られる他に、第1の油路における圧油の必要量が増加して、第1のオイル吐出口から第1の油路に供給される圧油量では、第1の油路における圧油の必要量を確保できない場合に、切替弁の動作状態として第1の動作状態を選択することが可能である。また、第1の油路に供給されている圧油の流量が少ない場合に、切替弁の動作状態として第2の動作状態を選択することが可能である。
一方、第1の油路における圧油の必要量が減少し、かつ、第1の油路に供給されている圧油の流量が多い場合、つまり、第1のオイル吐出口から吐出される圧油量により、第1の油路における圧油必要量を確保できる場合は、切替弁の動作状態として第3の動作状態を選択することにより、第2のオイル吐出口から吐出された圧油を、オイルポンプの吸入口に戻すことが可能である。
請求項5の発明によれば、請求項1または2の発明と同様の効果を得られる他に、第1の油路の油圧の方が第2の油路の油圧よりも所定圧だけ高圧である場合は、第3の逆止弁が開放されて、第1の油路の圧油が第2の油路に流れ込む。また、第2のオイル吐出口の圧油を切替弁を経由させて排出可能であるため、第2のオイル吐出口と切替弁との間にプレッシャーリリーフバルブを設けずに済むとともに、第1の油路の圧油を第2の油路に逃がすプレッシャーリリーフバルブとして第3の逆止弁を1個設ければよい。さらに、第2の油路の油圧は大気圧よりも高圧であるため、第3の逆止弁を閉弁させる機構の荷重を高荷重に設定せずに済む。したがって、第3の逆止弁を閉弁させる機構の大型化を抑制できる。さらに、プレッシャーリリーフバルブを2個設けずに済むため、各プレッシャーリリーフバルブが交互に開閉を繰り返す現象、いわゆるハンチングを防止できる。
請求項6の発明によれば、請求項5の発明と同様の効果を得られる他に、切替弁の動作状態として第3の動作状態を選択可能である。つまり、切替弁の動作状態を第1の動作状態ないし第3の動作状態という3段階に変更可能である。そして、切替弁の動作状態として第3の動作状態が選択された場合は、第2のオイル吐出口から吐出された圧油が、オイルポンプのオイル吸入口に戻される。したがって、オイルポンプの駆動に必要なトルクを低減することが可能である。
請求項7の発明によれば、請求項6の発明と同様の効果を得られる他に、例えば、圧力制御弁の第1の入力ポートが全閉となるフェールが発生して、第1の油路の油圧が所定圧以上に上昇した場合に、切替弁の動作状態として第3の動作状態を選択することが可能である。すると、第1の油路から第3の逆止弁を経由して第2の油路に流れ込んだ圧油が、オイルポンプのオイル吸入口に戻される。したがって、第1の油路の油圧の更なる上昇を抑制できる。
請求項8の発明によれば、請求項6または7の発明と同様の効果を得られる他に、第3の逆止弁が開放される場合に、切替弁が第2の動作状態または第3の動作状態に制御される。したがって、第1の油路から第3の逆止弁を経由して第2の油路に排出された圧油が、再度第1の油路に戻されることを回避できる。
請求項9の発明によれば、請求項1または8の発明と同様の効果を得られる他に、例えば、圧力制御弁の製造誤差により弁体の動作量の変化と第1の入力ポートの開口面積との対応関係にバラツキがある場合でも、第1の入力ポートの開口面積が変動する領域で、切替弁の動作状態が切り替えられることを回避できる。したがって、圧力制御弁の製造誤差にともなう第2の油路の圧油変化のバラツキを抑制できる。
請求項10の発明によれば、請求項1ないし9のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、圧力制御弁の弁体の動作量の変化に対して、第2の油路の圧油が第1の油路に供給されない状態で、第2の油路の油圧の低下程度を大きくすることができる。
請求項11の発明によれば、請求項1ないし10のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、圧力制御弁の第1の入力ポートが全閉である場合にも、第2の油路の圧油を第4の油路に供給することができる。したがって、第4の油路における圧油不足を回避できる。
つぎに、この発明の油圧制御装置を、車両用の動力伝達装置の動作部材の動作を制御するために用いる場合の具体例を、図面に基づいて説明する。まず、この発明を適用できる車両のパワートレーン、およびその車両の制御系統を、図2に示す。図2に示す車両Veにおいては、駆動力源1と車輪2との間の動力伝達経路に、流体伝動装置3、ロックアップクラッチ4、前後進切り換え機構5、ベルト式無段変速機6などが設けられている。駆動力源1としては、例えば、エンジンまたは電動機の少なくとも一方を用いることができる。この実施例では、駆動力源1としてエンジンが用いられている場合について説明する。
また、流体伝動装置3およびロックアップクラッチ4は、駆動力源1と前後進切り換え機構5との間の動力伝達経路に設けられており、流体伝動装置3とロックアップクラッチ4とは相互に並列に配置されている。この流体伝動装置3は、流体の運動エネルギにより動力を伝達する装置であり、ロックアップクラッチ4は、摩擦力により動力を伝達する装置である。
さらに、前後進切り換え機構5は、入力部材に対する出力部材の回転方向を、選択的に切り換える装置である。この前後進切り換え機構5は、遊星歯車機構(図示せず)と、遊星歯車機構の回転要素に対する動力の伝達状態を制御するクラッチ(図示せず)と、遊星歯車機構の回転要素の回転・停止を制御するブレーキ(図示せず)とを有している。そして、クラッチやブレーキなどの摩擦係合装置の係合圧が、油圧に制御されるように構成されている。
ベルト式無段変速機6は、前後進切り換え機構5と車輪2との間の動力伝達経路に設けられている。ベルト式無段変速機6は、相互に平行に配置されたプライマリシャフト7およびセカンダリシャフト8を有している。このプライマリシャフト7にはプライマリプーリ9が設けられており、セカンダリシャフト8にはセカンダリプーリ10が設けられている。プライマリプーリ9は、プライマリシャフト7に固定された固定シーブ11と、プライマリシャフト7の軸線方向に移動できるように構成された可動シーブ12とを有している。そして、固定シーブ11と可動シーブ12との間に溝M1が形成されている。
また、この可動シーブ12をプライマリシャフト7の軸線方向に動作させることにより、可動シーブ12と固定シーブ11とを接近・離隔させる油圧サーボ機構13が設けられている。この油圧サーボ機構13は、油圧室13Aと、油圧室13Aの油圧に応じてプライマリシャフト7の軸線方向に動作できし、かつ、可動シーブ12に接続されたピストン(図示せず)とを備えている。
一方、セカンダリプーリ10は、セカンダリシャフト8に固定された固定シーブ14と、セカンダリシャフト8の軸線方向に移動できるように構成された可動シーブ15とを有している。そして、固定シーブ14と可動シーブ15との間にはV字形状の溝M2が形成されている。
また、この可動シーブ15をセカンダリシャフト8の軸線方向に動作させることにより、可動シーブ15と固定シーブ14とを接近・離隔させる油圧サーボ機構16が設けられている。この油圧サーボ機構16は、油圧室26と、油圧室26の油圧によりセカンダリシャフト8の軸線方向に動作でき、かつ、可動シーブ15に接続されたピストン(図示せず)とを備えている。上記構成のプライマリプーリ9およびセカンダリプーリ10に、無端状のベルト17が巻き掛けられている。
一方、ベルト式無段変速機6の油圧サーボ機構13,16およびロックアップクラッチ4、および前後進切り換え機構5を制御する油圧制御装置18が設けられている。さらに、駆動力源1、ロックアップクラッチ4、前後進切り換え機構5、ベルト式無段変速機6、油圧制御装置18を制御するコントローラとしての電子制御装置52が設けられている。
この電子制御装置52には、エンジン回転数、アクセルペダルの操作状態、ブレーキペダルの操作状態、スロットルバルブの開度、シフトポジション、プライマリシャフト7の回転数、セカンダリシャフト8の回転数などの検知信号が入力される。このセカンダリシャフト8の回転数に基づいて車速が求められる。電子制御装置52には各種のデータが記憶されており、電子制御装置52に入力される信号、および記憶されているデータに基づいて、電子制御装置52からは、駆動力源1を制御する信号、ベルト式無段変速機6を制御する信号、前後進切り換え機構5を制御する信号、ロックアップクラッチ4を制御する信号、油圧制御装置18を制御する信号などが出力される。
電子制御装置52に記憶されているデータとしては、変速制御マップ、ロックアップクラッチ制御マップなどが挙げられる。この変速制御マップは、車速、アクセル開度などに基づいて、ベルト式無段変速機6の変速比を設定するマップである。駆動力源1としエンジンが用いられている場合は、ベルト式無段変速機6の変速比の制御により、最適燃費曲線に応じた目標エンジン回転数に、実エンジン回転数を近づけることが可能である。また、これに合わせて実エンジントルクを目標エンジントルクに近づける制御が実行される。なお、ロックアップクラッチ制御マップは、車速、アクセル開度などに基づいて、ロックアップクラッチ4のトルク容量を設定するマップである。
つぎに、図2に示す車両Veの作用を説明する。駆動力源1のトルクは、流体伝動装置3またはロックアップクラッチ4のいずれか一方を経由して、前後進切り換え機構5に入力される。そして、前後進切り換え機構5から出力されたトルクは、ベルト式無段変速機6のプライマリシャフト7に伝達される。プライマリシャフト7のトルクは、プライマリプーリ9、ベルト17、セカンダリプーリ10を介してセカンダリシャフト8に伝達される。そして、セカンダリシャフト8のトルクが車輪2に伝達されて駆動力が発生する。
ここで、ベルト式無段変速機6の変速制御を説明する。まず、油圧室13Aの油圧に基づいて、プライマリプーリ9の可動シーブ12を軸線方向に動作させる推力が変化する。また、油圧サーボ機構16の油圧室26の油圧により、セカンダリプーリ10の可動シーブ15を軸線方向に動作させる推力が変化する。そして、可動シーブ12の軸線方向の動作に応じて溝M1の幅が変化し、可動シーブ15の軸線方向の動作に応じて溝M2の幅が変化する。
上記のようにして、溝M1の幅が調整されると、プライマリプーリ9におけるベルト17の巻き掛け半径と、セカンダリプーリ10におけるベルト17の巻き掛け半径との比が変化する。その結果、プライマリシャフト7とセカンダリシャフト8との間の回転速度の比、すなわち変速比が変化する。具体的には、油圧室13Aの油圧が高められて溝M1の幅が狭められると、プライマリプーリ9におけるベルト17の巻き掛け半径が大きくなり、ベルト式無段変速機6の変速比が小さくなるように変速する。これに対して、油圧室13Aの油圧が低下して溝M1の幅が広げられると、プライマリプーリ9におけるベルト17の巻き掛け半径が小さくなり、ベルト式無段変速機6の変速比が大きくなるように変速する。
また、この変速制御に伴い溝M2の幅が調整されると、ベルト17に作用する挟圧力が変化してベルト17の張力が変化する。その結果、プライマリシャフト7とセカンダリシャフト8との間で伝達されるトルクの容量が制御される。具体的には、油圧室26の油圧が高められて、ベルト17に作用する挟圧力が高められると、トルク容量が大きくなる。これに対して、油圧室26の油圧が低下されて、ベルト17に作用する挟圧力が弱められると、トルク容量が小さくなる。このように、ベルト17に作用する挟圧力の変化に伴い、ベルト式無段変速機6のトルク容量が変化する。
ところで、図2に示す車両Veにおいては、油圧制御装置18の一部を構成する油圧回路として各種の構成を採用することができる。以下、これらの油圧回路の構成例を順次説明する。
この油圧回路の実施例1を図1に示す。この実施例1は、請求項1ないし4に対応している。図1に示す油圧回路には、オイルポンプ53が設けられている。オイルポンプ53は、複数のオイル吸入口54,55および複数のオイル吐出口56,57を有しており、オイル吸入口54とオイル吐出口56とが接続され、オイル吸入口55とオイル吐出口57とが接続されている。また、オイル吸入口54,55は、油路58によりオイルパン59に接続されている。一方のオイル吐出口56には油路60が接続されており、油路60の圧油が圧油必要部61に供給されるように構成されている。この圧油必要部61としては、例えば、油圧室13A,26、および前後進切り換え機構5の摩擦係合装置の係合圧を制御する油圧室(図示せず)などが挙げられる。
また、油路60はプライマリレギュレータバルブ62に接続されている。このプライマリレギュレータバルブ62は、入力ポート63,64と、ドレーンポート65と、フィードバックポート66と、信号圧ポート67とを有している。そして、油路60と入力ポート63とが接続され、油路60はフィードバックポート66にも接続されている。なお、信号圧ポート67には、ソレノイドバルブ(図示せず)から出力される信号圧が入力される。
さらに、プライマリレギュレータバルブ62は、軸線方向に動作自在なスプール68と、スプール68を軸線方向の一方に向けて付勢する弾性部材69とを有している。スプール68はランド部70,71,72を有している。そして、弾性部材69の付勢力と、信号圧ポート67の信号圧に対応する付勢力とが、スプール68に対して同じ向き、つまり、図1において上向きに作用する構成となっている。
これに対して、フィードバックポート66の油圧に対応する付勢力が、弾性部材69の付勢力と、信号圧ポート67の油圧に対応する付勢力とは逆向き、つまり、図1において下向きに、スプール68に作用する構成となっている。このように構成されたプライマリレギュレータバルブ62は、フィードバックポート66の油圧に対応する付勢力と、弾性部材69の付勢力、および信号圧ポート67の油圧に対応する付勢力との対応関係に基づいて、スプール68が軸線方向に動作する。そして、スプール68の動作により、入力ポート63とドレーンポート65との間の開口面積が、ランド部71により制御され、入力ポート64とドレーンポート65との間の開口面積が、ランド部72により制御される。より具体的には、スプール68が図1において上向きに動作した場合に、入力ポート63,64の開口面積が共に縮小し、スプール68が図1において下向きに動作した場合に、入力ポート63,64の開口面積が共に拡大されるように構成されている。
一方、プライマリレギュレータバルブ62のドレーンポート65には油路73が接続されているとともに、油路73の圧油が圧油必要部74に供給されるように構成されている。この圧油必要部74としては、流体伝動装置3の油路およびロックアップクラッチ4の係合圧を制御する油圧室(図示せず)などが挙げられる。
そして、油路73にはセカンダリレギュレータバルブ75が接続されている。このセカンダリレギュレータバルブ75は、入力ポート76と、ドレーンポート77,78と、フィードバックポート79と、信号圧ポート80とを有している。そして、油路73と入力ポート76とが接続され、油路73はフィードバックポート79にも接続されている。なお、信号圧ポート80には、ソレノイドバルブ(図示せず)から出力される信号圧が入力される。
さらに、セカンダリレギュレータバルブ75は、軸線方向に動作自在なスプール81と、スプール81を軸線方向の一方に向けて付勢する弾性部材82とを有している。スプール81はランド部83,84,85を有している。そして、弾性部材82の付勢力と、信号圧ポート80の信号圧に対応する付勢力とが、スプール81に対して同じ向き、つまり、図1において上向きに作用する構成となっている。
これに対して、フィードバックポート79の油圧に対応する付勢力が、弾性部材82の付勢力と、信号圧ポート80の油圧に対応する付勢力とは逆向き、つまり、図1において下向きに、スプール81に作用する構成となっている。このように構成されたセカンダリレギュレータバルブ75は、フィードバックポート79の油圧に対応する付勢力と、弾性部材82の付勢力、および信号圧ポート80の油圧に対応する付勢力との対応関係に基づいて、スプール81が軸線方向に動作する。
そして、スプール81の動作により、入力ポート76とドレーンポート77との間の開口面積が、ランド部85により制御され、入力ポート76とドレーンポート78との間の開口面積が、ランド部84により制御される。より具体的には、スプール81が図1において上向きに動作した場合に、ドレーンポート77,78の開口面積が共に狭められ、スプール81が図1において下向きに動作した場合に、ドレーンポート77,78の開口面積が共に拡大されるように構成されている。さらに、ドレーンポート77は潤滑系統86に接続されているとともに、ドレーンポート78は油路58に接続されている。
前記オイルポンプ53のオイル吐出口57には油路87が接続されているとともに、油路87と油路60とが逆止弁88を介在させて接続されている。この逆止弁88は、油路87の油圧が油路60の油圧よりも高圧となった場合に開放されて、油路87の圧油が油路60に供給されることを許容し、油路60の油圧が油路87の油圧よりも高圧となった場合は閉じられて、油路60の圧油が油路87に逆流することを防止する構成を有している。
また、前記プライマリレギュレータバルブ62の入力ポート64には油路89が接続されており、油路87と油路89との間には切替弁90が設けられている。この切替弁90は、入力ポート91と、出力ポート92と、ドレーンポート93と、信号圧ポート94とを有している。そして、油路87と入力ポート91とが接続され、ドレーンポート93が油路58に接続され、出力ポート92が油路89に接続されている。なお、信号圧ポート94には、ソレノイドバルブ(図示せず)から出力される信号圧が入力される。
さらに、切替弁90は、軸線方向に動作自在なスプール95と、スプール95を軸線方向の一方に向けて付勢する弾性部材96とを有している。また、スプール95はランド部97,98を有している。そして、弾性部材96の付勢力と、信号圧ポート94の信号圧に対応する付勢力とが、スプール95に対して逆向きに作用する構成となっている。このように構成された切替弁90は、弾性部材96の付勢力と信号圧ポート94の油圧に対応する付勢力との対応関係に基づいて、スプール95が軸線方向に動作する。
具体的には、切替弁90の動作状態として、3段階の動作状態を選択的に切り替え可能である。例えば、信号圧ポート94に入力される信号圧が中間圧に制御された場合は、ランド部97により出力ポート92が閉じられ、かつ、ランド部98によりドレーンポート93が閉じられる位置で、スプール95が停止する。このように、出力ポート92が閉じられ、かつ、ドレーンポート93が閉じられる動作状態が、切替弁90における第1の動作状態である。
これに対して、信号圧ポート94に入力される信号圧が低圧に制御された場合は、スプール95が図1において上向きに動作し、図1に左半分で示す位置でスプール95が停止する。つまり、ランド部98によりドレーンポート93が閉じられ、かつ、入力ポート91と出力ポート92とが接続される位置で、スプール95が停止する。このように、入力ポート91と出力ポート92とが接続され、かつ、ドレーンポート93が閉じられる動作状態が、切替弁90における第2の動作状態である。
さらに、信号圧ポート94に入力される信号圧が高圧に制御された場合は、スプール95が図1において下向きに動作し、図1に右半分で示す位置でスプール95が停止する。つまり、ランド部97により出力ポート92が閉じられ、かつ、入力ポート91とドレーンポート93とが接続される位置で、スプール95が停止する。このように、入力ポート91とドレーンポート93とが接続され、かつ、出力ポート92が閉じられる動作状態が、切替弁90における第3の動作状態である。
さらにまた、油路87と油路89とを接続し、かつ、切替弁90をバイパスする油路99が設けられており、油路99には逆止弁100が設けられている。この逆止弁100は、油路87の油圧が油路89の油圧よりも高圧となった場合に開放されて、油路87の圧油が油路89に供給されることを許容し、油路89の油圧が油路87の油圧よりも高圧となった場合は閉じられて、油路89の圧油が油路87に逆流することを防止する構成を有している。
つぎに、図1に示す油圧回路の作用を説明する。オイルポンプ53が駆動された場合は、オイルパン59からオイル吸入口54にオイルが吸入されて、オイル吐出口56から油路60に圧油が吐出されるとともに、オイルパン59からオイル吸入口55に吸入されて、オイル吐出口57から油路87に圧油が吐出される。
まず、オイル吐出口56から油路60に吐出された圧油の流れについて説明すると、油路60に供給された圧油は圧油必要部61に供給される。ここで、油路60における圧油の必要量に対して、油路60に供給される圧油量が不足している場合は、プライマリレギュレータバルブ62のフィードバックポート66に入力される油圧が低下し、スプール68が図1で上向きに動作する。その結果、入力ポート63の開度が狭められ、油路60から油路73に排出される圧油の流量が減少する。このようにして、油路60における圧油不足が抑制される。
これに対して、油路60における圧油の必要量が満足されて、フィードバックポート66の油圧が上昇すると、スプール68が図1において下向きに動作し、入力ポート63の開度が大きくなり、油路60から油路73に排出される圧油の流量が増加する。このようにして、油路60の圧油量が過剰となることが抑制される。
一方、プライマリレギュレータバルブ62を経由して油路73に排出された圧油は圧油必要部74に供給される。ここで、油路73に排出される圧油には、油路89を経由して油路73に供給される圧油も含まれる。なお、油路89に対する圧油の供給作用は後述する。油路73における圧油の必要量に対して、油路73に供給される圧油量が不足している場合は、セカンダリレギュレータバルブ75のフィードバックポート79に入力される油圧が低下し、スプール81が図1で上向きに動作する。その結果、ドレーンポート77,78の開度が狭められ、油路73から、油路58および潤滑系統86に供給される圧油の流量が減少する。このようにして、油路73における圧油不足が抑制される。
これに対して、油路73における圧油の必要量が満足されて、セカンダリレギュレータバルブ75のフィードバックポート79の油圧が上昇すると、スプール81が図1において下向きに動作し、ドレーンポート77,78の開度が拡大され、油路73から油路58および潤滑系統86に排出される圧油の流量が増加する。このようにして、油路73の圧油量が過剰になることが抑制される。
つぎに、オイルポンプ53のオイル吐出口57から油路87に吐出された圧油の流れについて説明する。この油路87に吐出された圧油の流通経路は、切替弁90の動作状態により変更される。以下、切替弁90の制御を、図3のフローチャートに基づいて説明する。まず、油路60における圧油の必要量が増加するか否かが判断される(ステップS1)。例えば、ベルト式無段変速機6で変速比を急激に変化させる条件が不成立である場合は、このステップS1で否定的に判断される。ついで、オイル吐出口56から吐出される圧油の流量が、所定流量よりも少ないか否かが判断される(ステップS2)。
ステップS2で肯定的に判断されるということは、オイル吐出口56から油路60に吐出される圧油量により、油路60の圧油の必要量が満足されていると考えられる。そこで、ステップS2で肯定的に判断された場合は、切替弁90の動作状態として第2の動作状態を選択し(ステップS3)、リターンする。切替弁90の動作状態として第2の動作状態が選択された場合は、入力ポート91と出力ポート92とが接続されて、油路87の圧油が切替弁90を経由して油路89に供給される。また、プライマリレギュレータバルブ62は、スプール68が図1で下向きに動作している場合、および、スプール68が図1で上向きに動作して、入力ポート63が全閉となっている場合のいずれにおいても、入力ポート64とドレーンポート65とが連通する構成となっているため、油路89に供給された圧油は、プライマリレギュレータバルブ62のドレーンポート65から油路73に排出される。このため、逆止弁88は閉じられており、油路87の圧油は油路60には供給されない。
これに対して、ステップS2で否定的に判断されるということは、油路60における圧油の必要量をオイル吐出口56から吐出される圧油により賄っており、オイル吐出口56から吐出される圧油量を多く確保する必要があると考えられる。そこで、ステップS2で否定的に判断された場合は、切替弁90の動作状態として第3の動作状態を選択し(ステップS4)、リターンする。切替弁90の動作状態として、第3の動作状態が選択された場合は、出力ポート92が遮断され、入力ポート91とドレーンポート93とが接続される。その結果、油路87の圧油が切替弁90を経由して油路58に排出され、油路58のオイルが再びオイルポンプ53に吸引される。したがって、オイル吐出口56から油路60に吐出される圧油量の減少を抑制でき、かつ、オイル吐出口57から圧油を吐出するためのオイルポンプ53の駆動トルクを低減することができる。このため、駆動力源1から車輪2に伝達される動力の伝達効率の低下を抑制できる。
一方、ステップS1の判断時点で、ベルト式無段変速機6で変速比を急激に変化させるさせる条件が成立した場合は、ステップS1で肯定的に判断される。つまり、油路60における圧油の必要量が急激に増加すると考えられる。そこで、ステップS1で肯定的に判断された場合は、切替弁90の動作状態が、第2の動作状態または第3の動作状態から、第1の動作状態に切り替えられ(ステップS5)、図3の制御ルーチンを終了する。このように、切替弁90の動作状態として第1の動作状態が選択された場合は、出力ポート92およびドレーンポート93が共に閉じられる。そして、オイル吐出口57から油路87に吐出される圧油量が増加することにともない、油路87の油圧が上昇して、油路87の油圧が油路60の油圧よりも高圧になると、逆止弁88が開放されて、油路87の圧油が油路60に供給される。したがって、油路60における圧油不足を抑制できる。
また、油路60における圧油の必要量が少なく、プライマリレギュレータバルブ62のスプール68が図1で下向きに動作している状態から、油路60における圧油の必要量が急激に増加して、フィードバックポート66の油圧が低下した場合、または、信号圧ポート67に入力される信号圧が急激に上昇した場合は、スプール68が図1で上向きに動作する。このスプール68の動作により、プライマリレギュレータバルブ62の入力ポート64の開度が狭められる。ここで、入力ポート64の開度が狭められるまでには、所定時間を要するため、油路87の油圧が、逆止弁88を開放する油圧まで上昇するまでに長時間を要する可能性がある。これに対して、図1の油圧回路によれば、急変速条件の成立が予測される時点で、ステップS5に進み、スプール切替弁90の動作状態として、第1の動作状態を選択することができる。
つまり、プライマリレギュレータバルブ62のスプール68が図1で上向きに動作して入力ポート64の開度が狭められる前に、オイル吐出口57から吐出された圧油を油路60に供給することが可能である。言い換えれば、油路60における圧油の必要量が増加した場合は、切替弁90の動作状態として第1の動作状態を選択することにより、プライマリレギュレータバルブ62のスプール68の動作に関わりなく、あるいは、プライマリレギュレータバルブ62の動作の応答遅れがあっても、オイル吐出口57の圧油を油路60に供給することが可能である。したがって、オイル吐出口57から油路60にオイルを供給する場合に、オイルの供給応答性を向上することが可能である。
また、この実施例1においては、切替弁90と並列に油路99が設けられているため、切替弁90の動作状態が第1の動作状態に切り替えられた場合でも、油路89の油圧よりも油路87の油圧の方が高い場合は、逆止弁100が開放されて、油路87の圧油の一部を油路99を経由させて油路89に供給することが可能である。したがって、切替弁90の動作状態として第1の動作状態を選択した場合でも、オイル吐出口57から油路87に吐出された圧油が全部油路60に供給されることを回避できる。したがって、油路60の圧油量が急激に増加することによる油圧変化を抑制できる。
さらに、この実施例1においては、切替弁90が第2の動作状態に制御されると、第2の動作状態油路60における圧油の必要量と、油路60に供給される実圧油量との収支により、プライマリレギュレータバルブ62のスプール68が動作し、油路73における圧油の必要量と、油路73に供給される実圧油量との収支により、セカンダリレギュレータバルブ75のスプール81が動作するため、切替弁90を制御する必要はない。
なお、図3のフローチャートのステップS3は、「第2の動作状態を選択する条件」の成立・不成立を判断するものであり、前述の説明では、圧油の流量に基づいて、第2の動作状態を選択する条件の成立・不成立を判断しているが、他のパラメータにより、「第2の動作状態を選択する条件」の成立・不成立を判断することも可能である。例えば、油路60における圧油の流量が所定流量よりも少ないこと、または、油路60が高油圧であること(高負荷走行であること)のうち、少なくとも一方が検知された場合に、「第2の動作状態を選択する条件」が成立したと判断するとともに、油路60における圧油の流量が所定流量よりも少ないこと、油路60が高油圧であることが、共に検知されない場合に、「第2の動作状態を選択する条件」が不成立であると判断することも可能である。
ここで、実施例1で説明した構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、オイル吐出口56が、この発明の第1のオイル吐出口に相当し、オイル吐出口57が、この発明の第2のオイル吐出口に相当し、プライマリレギュレータバルブ62が、この発明の圧力制御弁に相当し、入力ポート63が、この発明の第1の入力ポートに相当し、入力ポート64が、この発明の第2の入力ポートに相当し、油路60が、この発明の第1の油路に相当し、油路87,89が、この発明の第2の油路に相当し、油路73が、この発明の第3の油路および第4の油路に相当し、逆止弁88が、この発明の第1の逆止弁に相当し、逆止弁100が、この発明の第2の逆止弁に相当し、スプール68が、この発明の弁体に相当し、油路99が、この発明の迂回油路に相当し、オイル吸入口54,55が、この発明のオイル吸入口に相当する。また、図3に示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS5が、この発明における第1の選択手段に相当し、ステップS3が、この発明における第2の選択手段に相当し、ステップS4が、この発明における第3の選択手段に相当する。
なお、各実施例においては、単数のオイルポンプに複数のオイル吐出口が設けられているが、オイルポンプ自体が複数設けられており、異なるオイルポンプの吐出口を、この発明の複数の吐出口として把握することも可能である。
つぎに、油圧制御装置18の一部を構成する油圧回路の実施例2を、図4に基づいて説明する。この実施例2は、請求項5ないし8の発明に対応する。この実施例2において、実施例1の構成と同じ構成については実施例1と同じ符号を付してある。図4の油圧回路においては、油路60と油路87とを接続する油路101が形成されており、油路101には逆止弁102が設けられている。つまり、逆止弁88と逆止弁102とが並列に配置されている。この逆止弁101は、ポート103を開閉するボール104と、ボール104をポート103に向けて付勢する弾性部材105とを有している。この逆止弁102は、油路60の圧油が油路87に排出されることを許容し、かつ、油路87の圧油が油路60に逆流することを防止する構成を有している。
より具体的には、油路60の油圧に応じてボール104に加えられる付勢力の方が、油路87の油圧および弾性部材105の押圧力に応じてボール104に加えられる付勢力よりも大きくなった場合に、逆止弁102が開放されるように構成されている。さらに、油路60と油路87との差圧が所定値以上となった場合に逆止弁102が開放されるように、弾性部材105のばね定数が設定されている。なお、油路60の油圧が所定圧以下である場合はオフされ、油路60の油圧が所定圧を越えた場合にオンされる油圧スイッチ106が設けられている。この油圧スイッチ106の信号は、図2の電子制御装置52に入力される。
つぎに、実施例2で実行可能な制御例を、図5のフローチャートに基づいて説明する。まず、油路60のライン圧が高圧であるか否かが判断され(ステップS11)、ステップS11で否定的に判断された場合は、図3のフローチャートが実行される。このステップS11で肯定的に判断された場合は、切替弁90の信号圧ポート94に入力される信号圧が低圧に制御されて、切替弁90の動作状態として第2の動作状態が選択される(ステップS12)。
このステップS12についで、油路60における圧油の流量不足が生じているか否かが判断され(ステップS13)、ステップS13で肯定的に判断された場合は、プライマリレギュレータバルブ62の信号圧ポート67に入力される信号圧が上昇されて、スプール68が図4で上向きに動作して入力ポート63が閉じられるとともに、切替弁90の動作状態が第1の動作状態に切り替えられ(ステップS14)、リターンする。このようにして、油路87の油圧が上昇して逆止弁88が開放され、油路87の圧油が油路60に供給されて、油路60における圧油不足が回避される。また、油路87の油圧が上昇するため、逆止弁102は閉じられる。
これに対して、前記ステップS13で否定的に判断された場合は、信号圧ポート67に入力される信号圧が低下されて、スプール68が図4において下向きに動作し、入力ポート63が開放されるとともに、切替弁90を第2の動作状態または第3の動作状態に制御し(ステップS15)、リターンされる。このステップS15の制御により、油路87の圧油が、油路89を経由して油路73に排出されるか、または油路58に排出されることとなり、油路87の油圧が低下する。そして、油路87の油圧が低下して、油路60と油路87との差圧が所定値を越えた場合は、逆止弁102が開放されて、油路60における余剰分の圧油が油路87に排出される。
つぎに、実施例2で実行可能な他の制御例を、図6のフローチャートに基づいて説明する。この図6のフローチャートは、プライマリレギュレータバルブ62の入力ポート63が全閉となるフェールが生じた場合に実行される。まず、切替弁90が第3の動作状態に制御されているか否かが判断される(ステップS21)。ステップS21で肯定的に判断された場合は、油路60の油圧の上昇により逆止弁102が開放されて、油路60の圧油が、油路87および油路58を経由して、オイルポンプ53に戻され(ステップS22)、リターンする。
これに対して、ステップS21で否定的に判断された場合は、油路60の油圧が上昇して油圧スイッチ106がオンされ(ステップS23)、ついで、油圧スイッチ106のオンに基づいて、切替弁90を第3の動作状態に切り替えるように、信号圧ポート94の信号圧を高圧にする制御が実行され(ステップS24)、ステップS22に進む。
このように、実施例2においては、逆止弁102が開放されて、油路60の油圧が更に上昇することを抑制できる。また、切替弁90の動作状態として第3の動作状態が選択された場合は、オイル吐出口57の圧油をプライマリレギュレータバルブ62を経由して油路73に排出することが可能であり、オイル吐出口57と切替弁90との間にプレッシャーリリーフバルブを設けることなく、油路87の油圧の上昇を抑制できる。したがって、油路60の圧油を油路87に逃がすプレッシャーリリーフバルブとして逆止弁102を1個設ければよい。さらに、油路87の油圧は大気圧よりも高圧であるため、逆止弁102を閉弁させる弾性部材105の荷重を高荷重に設定せずに済む。したがって、逆止弁102の大型化を抑制できる。さらに、プレッシャーリリーフバルブを2個設けずに済むため、各プレッシャーリリーフバルブが交互に開閉を繰り返す現象、いわゆるハンチングを防止できる。
また、プライマリレギュレータバルブ62が全閉となるフェールが発生して、油路60の油圧が所定圧以上に上昇した場合に、切替弁90の動作状態として第3の動作状態を選択すれば、油路60の油圧の更なる上昇を抑制できる。
さらに、逆止弁102が開放される場合に、切替弁90を第2の動作状態または第3の動作状態に制御することにより、油路60から逆止弁102を経由して油路87に排出された圧油が、再度油路60に戻されることを回避できる。なお、この実施例2において、実施例1の構成と同じ構成については、実施例1と同様の作用効果が生じる。ここで、実施例2の構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、逆止弁102が、この発明の第3の逆止弁に相当する。また、図6のステップS23,S24が、この発明における第4の選択手段に相当し、図5のステップS15が、この発明における第5の選択手段に相当する。さらに、「油路60と油路87との差圧が所定値以上となった場合」が、この発明における「第1の油路の油圧の方が第2の油路の油圧よりも所定圧だけ高圧である場合」に相当する。
つぎに、油圧回路の実施例3を図7に基づいて説明する。この実施例3は、請求項1ないし4の発明に対応している。まず、油路60にはプライマリレギュレータバルブ107が接続されている。このプライマリレギュレータバルブ107は、図7において上下方向に動作可能なスプール108と、スプール108を図7において下向きに付勢する弾性部材109とを有している。また、プライマリレギュレータバルブ107は、入力ポート110,111およびドレーンポート112,113およびフィードバックポート114および信号圧ポート115を有している。ここで、入力ポート110が油路60に接続され、入力ポート111が油路89に接続され、フィードバックポート114が油路60に接続されている。さらに、信号圧ポート115にはソレノイドバルブ(図示せず)の信号圧が入力される。さらに、前記スプール108にはランド部116,117,118,119が形成されている。そして、信号圧ポート115に入力される信号圧により、スプール108を図7において下向きに付勢する力が生じる。また、フィードバックポート114の油圧により、スプール108を図7で上向きに付勢する力が生じる。
このようにして、スプール108が動作して、入力ポート110とドレーンポート112との間の開口面積がランド部117により制御され、入力ポート111とドレーンポート113との間の開口面積がランド部116により制御される構成となっている。具体的には、図7においてスプール116が上向きに動作すると、入力ポート110,111の開口面積が拡大され、スプール116が下向きに動作すると、入力ポート110,111の開口面積が狭められるように構成されている。なお、図7の構成において、図1の構成と同じ構成については、図1と同じ符号を付してある。
つぎに、図7の油圧回路の作用を説明する。油路60の油圧が上昇した場合は、フィードバックポート114の油圧が上昇し、スプール108が図7において上向きに動作し、入力ポート110の開口面積が拡大され、油路60から油路120に排出される圧油の流量が増加する。これに対して、油路60の油圧が低下した場合は、フィードバックポート114の油圧が低下し、スプール108が図7において下向きに動作し、入力ポート110の開口面積が狭められ、油路60から油路120に排出される圧油の流量が減少する。
一方、油路89に圧油が供給されている場合において、スプール108が図7において上向きに動作し、入力ポート111の開口面積が拡大されると、油路89から油路121に排出される圧油の流量が増加する。これに対して、スプール108が図7において下向きに動作し、入力ポート111の開口面積が狭められると、油路89から油路121に排出される圧油の流量が減少する。
つぎに、セカンダリレギュレータバルブ123の動作を説明する。油路120の油圧が上昇した場合は、スプール124が図7において上向きに動作し、油路120からドレーンポート127,128に排出される圧油の流量が増加するとともに、油路121からドレーンポート128に排出される圧油の流量が増加する。これに対して、油路120の油圧が低下した場合は、スプール124が図7において下向きに動作し、油路120からドレーンポート128,129に排出される圧油の流量が減少するとともに、油路121からドレーンポート128に排出される圧油の流量が減少する。
この図7の油圧回路においても、図3の制御例を実行可能である。ステップS1において否定的に判断された場合は、ステップS2に進み、ステップS2で肯定的に判断された場合は、切替弁90が第2の動作状態に制御される。その結果、オイル吐出口57から吐出された圧油が、油路89および入力ポート111およびドレーンポート113を経由して油路121に供給される。これに対して、ステップS2で否定的に判断された場合は、切替弁90が第3の動作状態に制御されて(ステップS4)、リターンする。その結果、オイル吐出口57から吐出された圧油が、切替弁90の入力ポート91およびドレーンポート93を経由して油路58に排出される。
一方、ステップS1で肯定的に判断された場合は切替弁90が第1の動作状態に制御され(ステップS5)、リターンされる。その結果、オイル吐出口57から吐出された圧油が、逆止弁88を経由して油路60に供給される。このように、図7の油圧回路で図3の制御例を実行した場合も、図1の油圧回路で図3の制御例を実行した場合と同様の効果を得られる。
ここで、実施例3の構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、プライマリレギュレータバルブ107が、この発明の圧力制御弁に相当し、入力ポート111が、この発明の第2の入力ポートに相当し、スプール108が、この発明の弁体に相当し、油路120が、この発明の第3の油路に相当し、油路121が、この発明の第4の油路に相当する。実施例3におけるその他の構成と、この発明の構成との対応関係は、実施例1の構成とこの発明の構成との対応関係と同じである。
つぎに、各実施例に共通する構成について説明する。実施例1および実施例2においては、プライマリレギュレータバルブ62が、スプール68の動作量(ストローク)に対して、入力ポート63の開口面積自体および開口面積の変化状態と、入力ポート64の開口面積自体および開口面積の変化状態とが異なる値となるように構成されている。より具体的には、入力ポート63が閉じられる位置(基準位置)でスプール68が停止している場合でも、入力ポート64が開口される。また、基準位置で停止しているスプール68を、入力ポート64の開口面積が拡大する方向に動作させた場合でも、基準位置からの動作量が所定量以上になるまでは、入力ポート63が閉じられたままに維持される。こようなプライマリレギュレータバルブ62の特性を得られるように、軸線方向における入力ポート63とランド部71との位置関係(長さ、寸法を含む)、および入力ポート64とランド部72との位置関係が決定されている。
また、プライマリレギュレータバルブ62は、スプール68の動作量(ストローク)の変化に対して、入力ポート63の開口面積の変化量(変化率、変化勾配、変化割合)よりも、入力ポート64の開口面積の変化量の方が多く(大きく)なるように構成されている。例えば、円柱形状のランド部72の外径を、円柱形状のランド部71の外径よりも大きく設定することにより、このような開口面積の変化特性を得ることが可能である。
また、実施例3のプライマリレギュレータバルブ107は、スプール108の動作量(ストローク)に対して、入力ポート110の開口面積自体および開口面積の変化状態と、入力ポート111の開口面積自体および開口面積の変化状態とが異なる値となるように構成されている。より具体的には、スプール108が基準位置で停止して、入力ポート110が閉じられている場合でも、入力ポート111が開口されるように構成されている。また、基準位置で停止しているスプール108を、入力ポート111の開口面積が拡大する方向に動作させた場合でも、基準位置からの動作量が所定量以上になるまでは、入力ポート110が閉じられたままに維持される。このようなプライマリレギュレータバルブ107の特性が得られるように、軸線方向における入力ポート110とランド部117との位置関係、および入力ポート111とランド部116との位置関係が決定されている。
さらに、プライマリレギュレータバルブ107は、スプール108の動作量の変化に対して、入力ポート110の開口面積の変化量よりも、入力ポート111の開口面積の変化量の方が多くなるように構成されている。例えば、円柱形状のランド部116の外径を、円柱形状のランド部117の外径よりも大きく設定することにより、このような開口面積の変化特性を得ることが可能である。
上記のようなプライマリレギュレータバルブ62,107の特性を、図8の線図により説明する。図8の線図は、スプールのストローク量と、入力ポートの開口面積との関係を示すものである。メイン側が、入力ポート63および入力ポート110の開口面積を示し、サブ側が、入力ポート64および入力ポート111の開口面積を示している。この図8に示すように、メイン側の入力ポートが全閉であっても、サブ側の入力ポートは開口されるように構成されている。また、ストローク量の増加に対するサブ側の入力ポートの開口面積の増加程度(増加割合、増加率、増加勾配)は、ストローク量の増加に対するメイン側の入力ポートの開口面積の増加程度(増加割合、増加率、増加勾配)よりも大きく(多く)なっている。
そして、各制御例の実施例で切替弁の動作状態を切り替える場合に、スプールのストローク量が変化しても、メイン側の入力ポートの開口面積が変化しない領域A1で、切替弁の動作状態の切り換えをおこなうことが可能である。例えば、図3のステップS5、図5のステップS14などで実行可能である。このような制御を実行すると、たとえ、プライマリレギュレータバルブの製造誤差により、スプールの動作量の変化とメイン側の入力ポートの開口面積との対応関係にバラツキがある場合でも、メイン側の入力ポートの開口面積が変動する領域で、切替弁の動作状態が切り替えられることを回避できる。したがって、切替弁の動作状態の切り替えにともなう油路60の圧油変化のバラツキを抑制できる。上記の制御を実行する場合、図3のステップS5、図5のステップS14等が、この発明の第6の選択手段に相当する。
また、各実施例においては、プライマリレギュレータバルブがフェールして、メイン側の入力ポートが全閉していても、サブ側の入力ポートが開放されるため、オイル吐出口57から吐出された圧油を潤滑系統86に供給することが可能であり、潤滑不足による焼き付きを抑制できる。さらに、車両を停止して駆動力源1を停止し、再度駆動力源1を始動した場合に、オイル吐出口57から吐出された圧油をサブ側の入力ポートを経由させて圧油必要部74に供給することが可能である。なお、各油圧回路を、ベルト式無段変速機以外の無段変速機、例えば、トロイダル式無段変速機を制御する油圧制御装置に用いることも可能である。
この発明の油圧制御装置の実施例1を示す模式図である。
この発明を適用できる車両のパワートレーンおよびその制御系統の一例を示す図である。
図1に示す油圧制御装置で実行可能な制御例を示すフローチャートである。
この発明の油圧制御装置の実施例2を示す模式図である。
図4に示す油圧制御装置で実行可能な制御例を示すフローチャートである。
図4に示す油圧制御装置で実行可能な制御例を示すフローチャートである。
この発明の油圧制御装置の実施例3を示す模式図である。
この発明の実施例1ないし実施例3で用いるプライマリレギュレータバルブの特性を示す線図である。
符号の説明
18…油圧制御装置、 53…オイルポンプ、 54,55…オイル吸入口、 56,57…オイル吐出口、 58,60,73,87,120,121…油路、 62,107…プライマリレギュレータバルブ、 63,64,111…入力ポート、 68,108…スプール、 88,100…逆止弁。