JP2005155897A - ベルト式無段変速機の油圧制御装置 - Google Patents

ベルト式無段変速機の油圧制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 一方のプーリにおける推力を、複数の油圧室の油圧により確保する場合に、個々の油圧室が単独で保持するべき油圧を可及的に低下させる。
【解決手段】 プライマリプーリ9およびセカンダリプーリ10に巻き掛けられたベルト17と、プライマリプーリ9の溝M1の幅を制御する第1の油圧室23および第2の油圧室24と、セカンダリプーリ10の溝M2の幅を制御する第3の油圧室29および第4の油圧室30と、第2の油圧室24と第4の油圧室30とを接続する接続油路49とを有するベルト式無段変速機の油圧制御装置において、第3の油圧室29からオイルを排出させる場合に、第3の油圧室29と接続油路49とを接続して、第3の油圧室29の油圧が、接続油路49の油圧未満に低下することを抑制する油圧低下抑制油路44,45,47,48を有する。
【選択図】 図1

Description

この発明は、プライマリプーリおよびセカンダリプーリにベルトを巻き掛けた構成のベルト式無段変速機の油圧制御装置に関するものである。
従来、内燃機関を搭載した車両においては、内燃機関から車輪に至る動力伝達経路に、無段変速機を設けることが知られている。そして、要求駆動力に応じて内燃機関の出力を制御する場合に、無段変速機の変速比を無段階に制御することで、内燃機関の燃費が最適燃費となるように、エンジン出力を制御することが可能である。このような無段変速機としては、ベルト式無段変速機およびトロイダル式無段変速機が知られており、そのベルト式無段変速機の一例が、特許文献1に記載されている。
この特許文献1に記載されたベルト式無段変速機は、入力軸および出力軸と、入力軸に設けられた入力側可変プーリと、出力軸に設けられた出力側可変プーリとを有している。この入力軸はクラッチを介してエンジンに連結され、出力軸は差動減速機を介して駆動輪に連結されている。入力側プーリおよび出力側プーリには伝動ベルトが巻き掛けられており、入力側プーリおよび出力側プーリにはV溝が形成されている。また、入力側可変プーリは、入力軸の軸方向に移動可能な第1の可動回転体を有している一方、出力側可変プーリは、出力軸の軸方向に移動可能な第2の可動回転体を有している。
さらに、入力側プーリには、第1の油圧アクチュエータが設けられており、第1の油圧アクチュエータは、第1の油圧室および第2の油圧室を有している。そして、第1の油圧室および第2の油圧室の油圧に応じた推力が前記第1の可動回転体に加えられて、入力側プーリの溝幅が調整される構成となっている。また、出力側プーリには、第2の油圧アクチュエータが設けられており、第2の油圧アクチュエータは、第3の油圧室および第4の油圧室を有している。そして、第3の油圧室および第4の油圧室の油圧に応じた推力が前記第2の可動回転体に加えられて、出力側プーリの溝幅が調整される構成となっている。
さらに、第1の油圧室ないし第4の油圧室にオイルを供給する油圧装置は、エンジンにより駆動される油圧ポンプを有しており、油圧ポンプから吐出されたオイルがライン油路に供給される構成となっている。そして、ライン油路のライン油圧を調圧する圧力制御サーボ弁が設けられている。ライン油路のオイルは、第2の油圧室および第4の油圧室に直接供給される構成となっている。さらにライン油路から、第1の油圧室および第3の油圧室に至る経路には、流量制御サーボ弁が設けられている。流量制御サーボ弁は、入力ポートおよび第1,第2出力ポートおよびドレンポートを有している。そして、入力ポートはライン油路に接続され、第1出力ポートは第1の油圧室に接続され、第2出力ポートは第3の油圧室に接続され、ドレンポートはオイルタンクに接続されている。
上記構成において、ベルト式無段変速機の変速比を小さくする場合は、電子制御回路からの指令に従って、流量制御サーボ弁を制御し、入力ポートを第1出力ポートに連通させると同時に、ドレンポートを第2出力ポートと連通させる。このような動作により、ライン油路の作動油が第1の油圧室内に流入されるとともに、第3の油圧室内の作動油がオイルタンクに排出される。これに対して、ベルト式無段変速機の変速比を大きくする場合は、電子制御回路からの指令に従って、流量制御サーボ弁を制御し、入力ポートを第2出力ポートに連通させると同時に、ドレンポートを第1出力ポートと連通させる。このような動作により、ライン油路の作動油が第3の油圧室内に流入されるとともに、第1の油圧室内の作動油がオイルタンクに排出される。
上記のような変速制御において、入力軸側において、第1の油圧室の作動油が排出されても、第2の油圧室に作用するライン油圧によって、第1の可動回転体に推力が常時付与される。また、出力軸側において、第4の油圧室に作用するライン油圧によって、第2の可動回転体に推力が常時付与される。したがって、変速比の変化時においても、伝動ベルトの張力が好適に維持されるものとされている。なお、ベルト式無段変速機の油圧制御装置としては、下記の特許文献2も知られている。
実公平3−5712号公報 特開平8−210451号
上記特許文献1に記載されている油圧装置においては、流量制御サーボ弁の動作により、出力側プーリの第3の油圧室が、ライン油路またはオイルタンクに選択的に接続される構成となっている。このため、第3の油圧室の油圧は、大気圧に応じた油圧(ほぼ零メガパスカル)から、ライン油路における油圧の範囲で変化する。このため、第3の油圧室の油圧が最低圧の零メガパスカルとなる場合を考慮すると、伝動ベルトの滑り状態などから判断される「必要最低限のトルク容量」を確保しておくためには、出力側の第4の油圧室における油圧を、「必要最低限のトルク容量」に対応する所定値以上に制御する必要があった。
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、複数のプーリのいずれか一方のプーリの溝幅を制御するにあたり、そのプーリの溝幅を制御する複数の油圧室のうち、所定の油圧室で保持するべき油圧を、可及的に低下させることの可能なベルト式無段変速機の油圧制御装置を提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、プライマリプーリおよびセカンダリプーリと、プライマリプーリおよびセカンダリプーリに巻き掛けられたベルトと、前記プライマリプーリの溝幅を制御する第1の油圧室および第2の油圧室と、前記セカンダリプーリの溝幅を制御する第3の油圧室および第4の油圧室と、前記第2の油圧室と前記第4の油圧室との間でオイル(圧油)の行き来をおこなうことの可能な接続油路とを有するベルト式無段変速機の油圧制御装置において、前記第3の油圧室からオイル(圧油)を排出させる場合に、前記第3の油圧室と前記接続油路とを接続することにより、前記第3の油圧室の油圧が接続油路の油圧未満に低下することを抑制する油圧低下抑制油路が設けられていることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記第1の油圧室に供給されるオイル流量を制御する機能、および前記第3の油圧室から排出されるオイル流量を制御する機能を備えた第1の変速制御弁と、前記第3の油圧室に供給されるオイル流量を制御する機能、および前記第1の油圧室から排出されるオイル流量を制御する機能を備えた第2の変速制御弁とが設けられており、前記第1の変速制御弁と第2の変速制御弁とが別々に動作する構成であることを特徴とするものである。
請求項3の発明は、請求項1または2の構成に加えて、前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリとの間における変速比を小さくする変速を実行する場合に、前記第3の油圧室のオイルが前記接続油路に排出される構成であることを特徴とするものである。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの構成に加えて、前記第3の油圧室へオイルを供給する変速制御弁が設けられており、この変速制御弁を経由して前記第3の油圧室にオイルを供給する制御が停止され、かつ、前記第3の油圧室のオイルを、前記油圧低下抑制油路を経由させて前記接続油路に排出する制御が停止されている場合に、前記第3の油圧室と前記接続油路との間でオイルの行き来をおこなうことの可能な迂回油路が設けられており、この迂回油路と、前記油圧低下抑制油路および前記変速制御弁とが並列に配置されていることを特徴とするものである。
請求項5の発明は、請求項4の構成に加えて、前記迂回油路に、前記第3の油圧室の油圧が第1の所定油圧よりも高い場合は、前記第3の油圧室のオイルを前記接続油路に排出する機能、または、前記第3の油圧室の油圧が第2の所定油圧よりも低い場合は、前記接続油路のオイルを前記第3の油圧室に供給する機能、の少なくとも一方の機能を有する方向制御弁が設けられていることを特徴とするものである。
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかの構成に加えて、前記プライマリプーリにおけるベルトの巻き掛け半径を小さくすることにより、前記プライマリプーリとセカンダリプーリとの間における変速比を大きくする場合に、前記第2の油圧室と第4の油圧室との間におけるオイルの行き来を停止し、かつ、前記第2の油圧室の油圧を前記第4の油圧室の油圧よりも低下させる切換弁が、前記接続油路に設けられていることを特徴とするものである。
請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかの構成に加えて、前記第2の変速制御弁に接続されたライン圧油路を有しており、このライン圧油路のオイルが前記第2の変速制御弁を経由して前記第3の油圧室に供給される構成であり、前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリとの間における変速比を大きくする変速を実行する場合に、前記ライン圧油路の油圧を上昇させるライン圧上昇弁が設けられていることを特徴とするものである。
請求項1の発明によれば、第3の油圧室のオイルを排出する場合は、第3の油圧室と接続油路とが接続されるため、第3の油圧室の油圧は接続油路の油圧未満には低下しない。したがって、ベルトの巻き掛け状態(例えば、変速比、トルク容量)を所定の状態に保持するために、第4の油圧室で保持するべき油圧を、可及的に低下させることが可能である。
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、第1の油圧室ないし第4の油圧室に供給されるオイルの状態に基づいて、プライマリプーリとセカンダリプーリとの間における変速比が制御される。具体的には、第1の変速制御弁の動作により、第1の油圧室に供給されるオイル流量が増加して油圧が上昇し、かつ、第3の油圧室に供給されるオイル流量が減少して油圧が低下する。また第2の変速制御弁の動作により、第3の油圧室に供給されるオイル流量が増加して油圧が上昇し、かつ、第1の油圧室に供給されるオイル流量が減少して油圧が低下する。また、第1の変速制御弁と第2の変速制御弁とが別々に動作可能であるため、一方の変速制御弁の機能が低下した場合でも、他方の変速制御弁を制御することで、第1の油圧室および第3の油圧室の油圧を制御することが可能である。
請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明と同様の効果を得られる他に、ベルト式無段変速機の変速比を小さくする変速を実行する場合に、第3の油圧室の油圧の低下が抑制される。したがって、ベルト式無段変速機の変速比の変化速度が遅くなるとともに、ベルト式無段変速機のトルク容量が緩やかに変化する。
請求項4の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、第3の油圧室へオイルを供給する制御が停止され、かつ、第3の油圧室から接続油路へオイルを排出する制御が停止されている場合に、第3の油圧室と接続油路との間でオイルの行き来をおこなうことで、第3の油圧室の油圧の低下および上昇を抑制できる。
請求項5の発明によれば、請求項4の発明と同様の効果を得られる他に、第3の油圧室の油圧が第1の所定油圧よりも高い場合は、第3の油圧室のオイルが、方向制御弁を経由して接続油路に排出され、第3の油圧室の油圧の上昇が抑制される。これに対して、第3の油圧室の油圧が第2の所定油圧よりも低い場合は、接続油路のオイルが方向制御弁を経由して、第3の油圧室に供給される。したがって、第3の油圧室の油圧を、一層確実に制御可能である。
請求項6の発明によれば、請求項1ないし5のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、ベルト式無段変速機の変速比を大きくする条件が成立して、プライマリプーリにおけるベルトの巻き掛け半径を小さくする場合に、第2の油圧室と第4の油圧室との間におけるオイルの行き来が停止され、かつ、第2の油圧室の油圧が第4の油圧室の油圧よりも低くなる。このため、プライマリプーリにおける溝幅を狭めようとする推力が低下し、かつ、セカンダリプーリの溝幅を狭めるために必要な推力が低下する。したがって、ベルト式無段変速機の変速比を大きくし易くなる。
請求項7の発明によれば、請求項1ないし6のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、プライマリプーリとセカンダリプーリとの間における変速比を大きくする変速を実行する場合に、ライン圧油路の油圧を上昇させることが可能である。したがって、変速比を大きくする場合における変速速度が高まる。
つぎに、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。まず、この発明を適用できる車両のパワートレーン、およびその車両の制御系統を、図2に示す。図2に示す車両Veにおいては、駆動力源1と車輪2との間の動力伝達経路に、流体伝動装置3、ロックアップクラッチ4、前後進切り換え機構5、ベルト式無段変速機6などが設けられている。駆動力源1としては、例えば、エンジンまたは電動機の少なくとも一方を用いることができる。電動機としては、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを有するモータ・ジェネレータを用いることが可能である。この実施例では、駆動力源1として、主としてエンジンが用いられている場合について説明する。
また、流体伝動装置3およびロックアップクラッチ4は、駆動力源1と前後進切り換え機構5との間の動力伝達経路に設けられており、流体伝動装置3とロックアップクラッチ4とは相互に並列に配置されている。流体伝動装置3は、流体の運動エネルギにより動力を伝達する装置であり、駆動力源1の出力軸1Aに連結されたポンプインペラ3Aと、中間軸3Bに連結されたタービンランナ3Cとを有する。ロックアップクラッチ4は、出力軸1Aと、中間軸3Bとの間で、摩擦力により動力を伝達する装置である。前後進切り換え機構5は、遊星歯車機構(図示せず)および摩擦係合装置(図示せず)などを有している。前後進切り換え機構5は、中間軸3Bの回転方向と、プライマリシャフト7の回転方向との対応関係を切り換える機能を有している。また、前後進切り換え機構5は、中間軸3Bとプライマリシャフト7とを、動力の伝達可能な状態、または動力伝達不可能な状態に切り換える機能を有している。
前記ベルト式無段変速機6は、前後進切り換え機構5と車輪2との間の動力伝達経路に設けられている。ベルト式無段変速機6は、相互に平行に配置されたプライマリシャフト7およびセカンダリシャフト8を有している。このプライマリシャフト7にはプライマリプーリ9が設けられており、セカンダリシャフト8にはセカンダリプーリ10が設けられている。プライマリプーリ9は、プライマリシャフト7に固定された固定シーブ11と、プライマリシャフト7の軸線方向に移動できるように構成された可動シーブ12とを有している。そして、固定シーブ11と可動シーブ12との間に溝M1が形成されている。また、この可動シーブ12をプライマリシャフト7の軸線方向に動作させることにより、可動シーブ12と固定シーブ11とを接近・離隔させる油圧サーボ機構13が設けられている。
一方、セカンダリプーリ10は、セカンダリシャフト8に固定された固定シーブ14と、セカンダリシャフト8の軸線方向に移動できるように構成された可動シーブ15とを有している。そして、固定シーブ14と可動シーブ15との間にはV字形状の溝M2が形成されている。また、この可動シーブ15をセカンダリシャフト8の軸線方向に動作させることにより、可動シーブ15と固定シーブ14とを接近・離隔させる油圧サーボ機構16が設けられている。上記構成のプライマリプーリ9およびセカンダリプーリ10に、無端状のベルト17が巻き掛けられている。
一方、ベルト式無段変速機6の油圧サーボ機構13,16およびロックアップクラッチ4、および前後進切り換え機構5を制御する機能を有する油圧制御装置70が設けられている。さらに、駆動力源1、ロックアップクラッチ4、前後進切り換え機構5、ベルト式無段変速機6、油圧制御装置70を制御するコントローラとしての電子制御装置18が設けられており、この電子制御装置18は、演算処理装置(CPUまたはMPU)および記憶装置(RAMおよびROM)ならびに入出力インターフェースを主体とするマイクロコンピュータにより構成されている。
この電子制御装置18に対しては、エンジン回転数、アクセルペダルの操作状態、ブレーキペダルの操作状態、スロットルバルブの開度、シフトポジション、プライマリシャフト7の回転数、セカンダリシャフト8の回転数などを検知する各種のセンサ(図示せず)の信号が入力される。電子制御装置18により検知されるシフトポジションとしては、パーキングポジション、リバースポジション、ニュートラルポジション、ドライブポジションなどが挙げられる。また、セカンダリシャフト8の回転数に基づいて車速が求められる。
前記電子制御装置18には各種のデータが記憶されており、電子制御装置18に入力される信号、および記憶されているデータに基づいて、電子制御装置18から、駆動力源1を制御する信号、ベルト式無段変速機6を制御する信号、前後進切り換え機構5を制御する信号、ロックアップクラッチ4を制御する信号、油圧制御装置70を制御する信号などが出力される。
電子制御装置18に記憶されているデータとしては、エンジン制御マップ、変速機制御マップ、ロックアップクラッチ制御マップなどが挙げられる。この変速機制御マップには、変速比制御マップ、トルク容量の制御マップなどが含まれる。前記エンジン制御マップには、エンジン回転数およびエンジントルクをパラメータとして、最適燃費線が設定されている。また、変速比制御マップは、車速、アクセル開度などに基づいて、ベルト式無段変速機6の変速比を設定するマップである。駆動力源1としてエンジンが用いられている場合は、車速およびアクセル開度に基づいて要求駆動力を算出するとともに、要求駆動力の算出結果に基づいてエンジン出力を制御する場合に、エンジンの運転状態を最適燃費線に近づけるために、ベルト式無段変速機6の変速比を制御するとともに、エンジントルクを制御することが可能である。トルク容量制御マップは、ベルト式無段変速機6のトルク容量を制御する場合に用いるマップである。また、ロックアップクラッチ制御マップは、車速、アクセル開度などに基づいて、ロックアップクラッチ4のトルク容量を設定するマップである。
つぎに、図2に示す車両Veの作用を説明する。前記パーキングポジションおよびリバースポジションは非駆動ポジションであり、この非駆動ポジションが選択された場合は、前後進切り換え機構5が制御されて、駆動力源1と車輪2との間で動力伝達が不可能な状態となる。これに対して、リバースポジションおよびドライブポジションは駆動ポジションであり、駆動ポジションが選択された場合は、前後進切り換え機構5が制御されて、駆動力源1と車輪2との間で動力伝達が可能な状態となる。
そして、駆動ポジションが選択され、駆動力源1からトルクが出力された場合は、前後進切り換え機構5を経由して、ベルト式無段変速機6のプライマリシャフト7にトルクが伝達される。プライマリシャフト7のトルクは、ベルト17を経由してセカンダリシャフト8に伝達される。そして、セカンダリシャフト8のトルクが車輪2に伝達されて駆動力が発生する。
ここで、ベルト式無段変速機6の変速制御を説明する。前記の変速比制御マップに基づいて、ベルト式無段変速機6の変速比が制御される。まず、油圧サーボ機構13により、プライマリプーリ9の可動シーブ12を軸線方向に動作させる推力が調整される。また、油圧サーボ機構16により、セカンダリプーリ10の可動シーブ15を軸線方向に動作させる推力が調整される。そして、可動シーブ12の軸線方向の動作に応じて溝M1の幅が変化し、可動シーブ15の軸線方向の動作に応じて溝M2の幅が変化する。
上記のようにして、溝M1の幅が調整されると、プライマリプーリ9におけるベルト17の巻き掛け半径と、セカンダリプーリ10におけるベルト17の巻き掛け半径との比が変化する。その結果、プライマリシャフト7の回転速度と、セカンダリシャフト8の回転速度との比、すなわち変速比が変化する。具体的には、油圧サーボ機構13により推力が調整されて、溝M1の幅が狭められると、プライマリプーリ9におけるベルト17の巻き掛け半径が大きくなり、ベルト式無段変速機6の変速比が小さくなるように変速する。これに対して、油圧サーボ機構13により推力が調整されて、溝M1の幅が広げられると、プライマリプーリ9におけるベルト17の巻き掛け半径が小さくなり、ベルト式無段変速機6の変速比が大きくなるように変速する。
また、この変速比の制御に伴い、ベルト式無段変速機6のトルク容量が、つぎのようにして制御される。すなわち、油圧サーボ機構16により推力が調整されて、セカンダリシャフト8の溝M2の幅が調整される。溝M2の幅が調整されると、セカンダリプーリ10からベルト17に加えられる挟圧力、およびベルト17の張力が変化する。このような原理により、プライマリシャフト7とセカンダリシャフト8との間で伝達されるトルクの容量が制御される。具体的には、油圧サーボ機構16の推力が調整されて、ベルト17に加えられる挟圧力が増加すると、ベルト17のトルク容量が増加する。これに対して、油圧サーボ機構16の推力が調整されて、セカンダリプーリ10からベルト17に加えられる挟圧力が減少すると、ベルト17のトルク容量が低下する。つぎに、油圧サーボ機構13,16および油圧制御装置70の実施例を順次説明する。
この発明の実施例1を図1に基づいて説明する。この実施例1は、請求項1ないし3の発明に対応する実施例である。前記油圧サーボ機構13は、シリンダ19,20およびピストン21および隔壁22を有している。シリンダ19と可動シーブ12とは、軸線方向に一体的に移動可能に連結されている。前記隔壁22は、シリンダ19内には、プライマリシャフト7と一体回転し、かつ、軸線方向に移動不可能に構成されている。また、シリンダ20はプライマリシャフト7と一体回転し、かつ、プライマリシャフト7の軸線方向には移動不可能に構成されている。ピストン21は、シリンダ20内で軸線方向に移動可能に配置されており、シリンダ20とピストン21との間に第1の油圧室23が形成されている。さらに、可動シーブ12とシリンダ19と隔壁22とにより取り囲まれた空間に、第2の油圧室24が形成されている。
前記油圧サーボ機構16は、シリンダ25,26および隔壁27,28を有している。シリンダ25,26と可動シーブ15とは、軸線方向に一体的に移動可能に連結されている。また、シリンダ25の内側にシリンダ26が配置されている。前記隔壁27,28は、セカンダリシャフト8と一体回転し、かつ、軸線方向に移動不可能に構成されている。そして、シリンダ25,26と可動シーブ15と隔壁28とにより取り囲まれた空間に、第3の油圧室29が形成されている。さらに、可動シーブ15とシリンダ26と隔壁27とにより取り囲まれた空間に、第4の油圧室30が形成されている。
一方、前記油圧制御装置70の油圧回路にオイルを供給するオイルポンプ31が設けられている。オイルポンプ31は、駆動力源1により駆動されて、オイルパン32のオイルを油路33に吐出する構成となっている。この油路33には第1の圧力制御弁34が接続されている。第1の圧力制御弁34は、入力ポート35および出力ポート36およびフィードバックポート37を有している。そして、前記油路33と入力ポート35とが接続され、出力ポート36は油路38を経由してオイルパン32に接続され、フィードバックポート37は油路33に接続されている。
前記油路33には増速用流量制御弁39および減速用流量制御弁40が接続されている。まず、増速用流量制御弁39は、所定方向に動作可能な弁体41と、弁体41を所定の向きに付勢する弾性部材39Aと、弾性部材39Aの付勢力とは逆向きに弁体41を付勢するような磁気吸引力を生成するソレノイド39Bと、4つのポート42,43,44,45とを有している。つまり、増速用流量制御弁39は、4方向流量制御弁である。ポート42は油路33に接続され、ポート43は、油路46を経由して第1の油圧室23に接続されている。また、ポート44は、油路47を経由して第3の油圧室29に接続されている。また、ポート45は、油路48を経由して油路49に接続されている。この油路49は2方向に分岐されて、第2の油圧室24および第4の油圧室30に接続されている。ソレノイド39Bの電流値と、弁体41の動作との関係は任意に設定可能であるが、この実施例1においては、この増速用流量制御弁39は、ソレノイド39Bの電流値が高まるほど、ポート42とポート43との連通面積が拡大され、かつ、ポート44とポート45との連通面積が拡大されるような制御特性を有している場合を例示する。
これに対して、減速用流量制御弁40は、所定方向に動作可能な弁体50と、弁体50を所定の向きに付勢する弾性部材40Aと、弾性部材40Aの付勢力とは逆向きに弁体50を付勢するような磁気吸引力を生成するソレノイド40Bと、4つのポート51,52,53,54とを有している。つまり、減速用流量制御弁40は、4方向流量制御弁である。ポート51は油路33に接続され、ポート52は、油路46を経由して第1の油圧室23に接続されている。また、ポート54は、油路47を経由して第3の油圧室29に接続されている。なお、ポート53は、油路55を経由してオイルパン32に接続されている。ソレノイド40Bの電流値と弁体50の動作との対応関係は、任意に設定可能であるが、この実施例1では、ソレノイド40Bの電流値が高まるほど、ポート51とポート54との連通面積が拡大され、かつ、ポート52とポート53との連通面積が拡大される制御特性を有する場合を例示する。
さらに、油路48と油路49との接続部分と、油路33との間には、第2の圧力制御弁56が設けられている。この第2の圧力制御弁56は、入力ポート57および出力ポート58およびフィードバックポート59とを有している。そして、入力ポート57と油路33とが接続され、出力ポート58と油路49が接続され、フィードバックポート59と油路49とが接続されている。
上記のように構成された油圧回路において、オイルポンプ31から吐出されたオイルが油路33に供給されるとともに、油路33の油圧が所定値以下である場合は、第1の圧力制御弁34の入力ポート35と出力ポート36とが遮断されており、油路33のオイルは油路38には排出されない。油路33の油圧が所定値を越えた場合は、入力ポート35と出力ポート36とが連通されて、油路33のオイルが油路38に排出されて、油路33の油圧の上昇が抑制される。その後、油路33の油圧が低下した場合は、入力ポート35と出力ポート36とが遮断され、油路33のオイルは油路38には排出されなくなる。このように、第1の圧力制御弁34の機能により、油路33の油圧であるライン圧PLが、設定圧を越えることが防止される。
油路33に供給されたオイルは、第2の圧力制御弁56および油路49を経由して、第2の油圧室24および第4の油圧室30に供給される。ここで、油路49の油圧が所定値以下である場合は、入力ポート57と出力ポート58との連通面積が拡大されており、油路33から油路49に供給されるオイル流量が多くなる。これに対して、油路49の油圧が所定値を越えた場合は、入力ポート57と出力ポート58との連通面積が狭められ、油路33から油路49に供給されるオイル流量が減少する。このように、第2の圧力制御弁56の機能により、油路49の油圧Pdが制御される。ここで、油路33のライン圧PLが、第2の圧力制御弁56により減圧されて、油路49の油圧Pdがライン圧PL以下となるように、第2の圧力制御弁56の圧力制御特性が設定されている。このようにして、第2の圧力制御弁56により減圧されたオイルが、第2の油圧室24および第4の油圧室30に供給される。
一方、油路33のオイルは、増速用流量制御弁39および減速用流量制御弁40にも供給される。まず、ベルト式無段変速機6の変速比を小さくする条件、すなわち、増速変速を実行する増速条件が成立した場合を説明する。この増速条件が成立した場合は、増速用流量制御弁39において、ポート42とポート43との連通面積を拡大し、かつ、ポート44とポート45との連通面積を拡大する制御が実行される。また、減速用流量制御弁40において、ポート52とポート53との連通面積を狭め、かつ、ポート51とポート54との連通面積を狭める制御が実行される。
このような制御により、油路33から油路46を経由して第1の油圧室23に供給される圧油の流量が増加するとともに、第3の油圧室29から油路47を経由して油路49に排出される圧油の流量が増加する。第1の油圧室23における圧油の流量が増加して、第1の油圧室23の油圧が上昇すると、その油圧に応じた推力がシリンダ19を経由して可動シーブ12に伝達される。このようにして、可動シーブ12に加えられる推力が高められて、溝M1の幅が狭められると、プライマリプーリ9におけるベルト17の巻き掛け半径が大きくなる。
一方、セカンダリプーリ10においては、第3の油圧室29の圧油が油路49に排出されて、第3の油圧室29の油圧が低下し、第3の油圧室29の油圧は、油路49の油圧とほぼ等しくなる。このため、第3の油圧室29の油圧に応じて可動シーブ15に加えられる推力が低下する。そして、前記プライマリプーリ9の溝M1の幅が減少して、ベルト17の全体がプライマリプーリ9側に変位し、ベルト17がセカンダリプーリ10の溝M1に食い込む。その結果、可動シーブ15が固定シーブ14から離れる方向に移動して、第4の油圧室30の容積が狭められて、第4の油圧室30の圧油が油路49に排出され、その圧油が第2の油圧室24に流れ込む。このような動作により、セカンダリプーリ10におけるベルトの巻き掛け半径が小さくなる。
つぎに、ベルト式無段変速機6の変速比を大きくする条件、すなわち、減速変速を実行する減速条件が成立した場合を説明する。この場合は、減速用流量制御弁40において、ポート51とポート54との連通面積を拡大し、かつ、ポート52とポート53との連通面積を拡大する制御が実行される。また、増速用流量制御弁39においては、ポート42とポート43との連通面積を狭め、かつ、ポート44とポート45との連通面積を狭める制御が実行される。
このような制御により、油路33から、ポート51,54および油路47を経由して第3の油圧室29に供給される圧油の流量が増加するとともに、第1の油圧室23から、油路46およびポート52,53を経由してオイルパン32に排出される圧油の流量が増加する。第3の油圧室29における圧油量が増加して、第3の油圧室29の油圧が上昇すると、可動シーブ15に加えられる推力が高められる。その結果、溝M2の幅が狭められて、セカンダリプーリ10におけるベルト17の巻き掛け半径が大きくなる。
一方、プライマリプーリ9においては、第1の油圧室23の圧油がオイルパン32に排出されて、第1の油圧室23の油圧が低下する。このため、第1の油圧室23の油圧に応じて、可動シーブ12に加えられる推力が低下する。そして、前記セカンダリプーリ10の溝M2の幅が減少して、ベルト17の全体がセカンダリプーリ10側に変位するため、ベルト17がプライマリプーリ9の溝M1に食い込む。その結果、可動シーブ12が固定シーブ11から離れる方向に移動して、第2の油圧室24の容積が狭められて、第2の油圧室24の圧油が油路49に排出され、その圧油が第4の油圧室30に流れ込む。このようにして、プライマリプーリ9におけるベルトの巻き掛け半径が小さくなる。
さらに、ベルト式無段変速機6の変速比を略一定に維持する条件が成立した場合に、増速用流量制御弁39では、ポート43,44が遮断される。また、減速用流量制御弁40では、ポート52,54が遮断される。このようにして、第1の油圧室23における圧油の排出および供給が停止され、かつ、第3の油圧室29における圧油の供給および排出が停止される。このようにして、第1の油圧室23および第3の油圧室29の圧油量が所定量に維持される。すると、第1の油圧室23の油圧に応じて可動シーブ12に加えられる推力が略一定に維持されるとともに、第3の油圧室29の油圧に応じて可動シーブ15に加えられる推力が略一定に維持される。したがって、溝M1,M2の幅も略一定に維持されて、プライマリプーリ9およびセカンダリプーリ10におけるベルトの巻き掛け半径は変化しない。このような制御により、ベルト式無段変速機6の変速比が略一定に維持される。
図1に示す油圧制御装置70においては、第2の油圧室24と第4の油圧室30とが油路49により接続されており、可動シーブ12,15の動作に応じて、第2の油圧室24と第4の油圧室30との間で圧油が行き来する。つまり、第2の油圧室24の油圧と第4の油圧室30の油圧とが略同じとなる。このため、第2の油圧室24の油圧に応じて可動シーブ12に加えられる推力と、第4の油圧室30の油圧に応じて可動シーブ15に加えられる推力とが相殺される。したがって、第2の油圧室24の油圧は、ベルト式無段変速機6の変速比を制御する場合において、可動シーブ12に加えられる推力に影響を及ぼさない。また、第4の油圧室30の油圧は、ベルト式無段変速機6の変速比に応じてトルク容量を制御する場合において、可動シーブ15に加えられる推力に影響を及ぼさない。
ところで、この実施例1においては、可動シーブ15に加わる推力は、次式により算出される。
N1=(A1×Pout1)+(A2×Pout2)
ここで、「N1」は可動シーブ15に加わる推力であり、「A1」は第3の油圧室29に対応する可動シーブ15の受圧面積であり、「Pout1」は第3の油圧室29の油圧であり、「A2」は第4の油圧室30の油圧に対応する可動シーブ15の受圧面積であり、「Pout2」は第4の油圧室30の油圧である。
そして、実施例1では、増速制御を実行するために第3の油圧室29のオイルを排出する場合に、第3の油圧室29と油路49とが接続されるため、第3の油圧室29の油圧が、油路49の油圧とほぼ同じに制御される。このため、増速制御時においても、第3の油圧室29の油圧Pout1が、零メガパスカルになることはない。つまり、油圧Pout1は、油路49の油圧Pdを最低圧とし、油路33のライン圧PLを最高圧とする範囲で変化する。なお、増速制御を実行する場合は、第3の油圧室29および第4の油圧室30が共に油路49に接続されるため、
Pout1=Pout2
の関係となる。
このような原理に基づき、ベルト式無段変速機6で確保するべきトルク容量の最低値を、セカンダリプーリ10からベルト17に加えられる挟圧力で維持する場合に、可動シーブ15に加える推力の目標値に対応する油圧を、第3の油圧室29および第4の油圧室30で協同して負担することが可能である。したがって、比較例の構成、例えば、「増速制御時に、可動シーブの推力の目標値に対応する油圧を、第4の油圧室の油圧で負担し、第3の油圧室の圧油がオイルパンにドレーンされる構成」で生じる課題、すなわち、「第4の油圧室および第4の油圧室に接続される油路の油圧を、高く制御する必要がある、という課題」を、この実施例1によれば回避できる。
この実施例1において、第1の油圧室23の油圧と、第3の油圧室29の油圧との関係の一例を、図3のマップに示す。Pinは第1の油圧室23の油圧であり、Poutは第3の油圧室29の油圧である。図3に示すように、増速用流量制御弁39の電流値を高め、かつ、減速用流量制御弁40の電流値を低下させることにともない、油圧Pinが高まる特性となる。これに対して、増速用流量制御弁39の電流値を低下させ、かつ、減速用流量制御弁40の電流値を高めることにともない、油圧Pinが低下する特性となる。
一方、減速用流量制御弁40の電流値を高め、かつ、増速用流量制御弁39の電流値を低下させることにともない、油圧Poutが高まる特性となる。これに対して、減速用流量制御弁40の電流値を低下させ、かつ、増速用流量制御弁39の電流値を高めることにともない、油圧Poutが低下する特性となる。ここで、油圧Poutは、前述した理由により、油圧Pdに相当する油圧が最低圧となる。
前述した「比較例の構成」に対応するマップの一例を図4に示す。減速用流量制御弁の電流値および増速用流量制御弁の電流値と、各油圧との対応関係は実施例1とほぼ同じである。しかし、この比較例では、増速用流量制御弁の電流値を高めると、第3の油圧室の圧油がオイルパンにドレーンされるため、油圧Poutが零メガパスカルまで低下する特性となっている。
また、この実施例1によれば、ベルト式無段変速機6の変速比を小さくする増速変速を実行する場合に、第1の油圧室23に供給されるオイル流量が増加されて油圧Pinが上昇し、かつ、第3の油圧室29の圧油が油路49に排出されて、第3の油圧室29の油圧Poutの低下が抑制される。したがって、ベルト式無段変速機6の変速比の変化速度が遅くなるとともに、ベルト式無段変速機6のトルク容量が緩やかに変化し、ショックとして体感されることを回避できる。
つぎに、増速用流量制御弁39の弁体41がスティックスリップして、油路33から第1の油圧室23に供給されるオイル流量が増加する場合を想定する。この実施例1においては、増速用流量制御弁39の弁体41と、減速用流量制御弁40の弁体50とを逆向きに動作させることが可能である。このため、減速用流量制御弁40の機能が正常であれば、減速用流量制御弁40を制御して、ポート51とポート54との連通面積を拡大し、かつ、ポート52とポート53との連通面積を拡大する制御を実行すれば、第1の油圧室23に供給されるオイルの一部が、オイルパン32にドレーンされるとともに、油路33の圧油が油路47を経由して第3の油圧室29に供給される。つまり、第1の油圧室23の油圧の上昇を抑制し、かつ、第3の油圧室29の油圧を高めることが可能である。したがって、実施例1によれば、「増速用流量制御弁の弁体がスティックスリップして、ベルト式無段変速機の変速比が小さくなる不都合」を回避できるとともに、増速用流量制御弁39がフェールした場合でも、ベルト式無段変速機6の変速比を目標変速比に近づけることが可能である。
これとは逆に、減速用流量制御弁40の弁体50がスティックスリップして、油路33から第3の油圧室29に供給されるオイル流量が増加する場合を想定する。この場合は、増速用流量制御弁39が正常であれば、増速用流量制御弁39を制御して、ポート42とポート43との連通面積を拡大し、かつ、ポート44とポート45との連通面積を拡大する制御を実行すれば、第3の油圧室29に供給されるオイルの一部が、油路47を経由して油路49に排出されるとともに、油路33の圧油が第1の油圧室23に供給される。つまり、第3の油圧室29の油圧が上昇することを抑制し、かつ、第1の油圧室23の油圧を上昇させることが可能である。したがって、実施例1によれば、「減速用流量制御弁の弁体がスティックスリップして、ベルト式無段変速機の変速比が大きくなる不都合」を回避できるとともに、減速用流量制御弁がフェールした場合でも、ベルト式無段変速機6の変速比を目標変速比に近づけることが可能である。
ここで、実施例1の構成と、請求項1ないし3の発明の構成との対応関係を説明すれば、ベルト式無段変速機6における変速比、プライマリプーリ9およびセカンダリプーリ10におけるベルト17の巻き掛け半径、ベルト式無段変速機6のトルク容量が、この発明の「ベルトの巻き掛け状態」に相当し、油路49が、この発明の「接続油路」に相当し、油路47,48および増速用流量制御弁39のポート44,45が、この発明の「油圧低下抑制油路」に相当し、増速用流量制御弁39が、この発明の「第1の変速制御弁」に相当し、減速用流量制御弁40が、この発明の「第2の変速制御弁」に相当し、弁体41が、この発明の「第1の変速制御弁の弁体」に相当する。また、この発明の「第1の変速制御弁と第2の変速制御弁とが別々に動作する」とは、「弁体41と弁体50とが別々に動作可能であること」、「弁体41と弁体50とが逆向きに動作可能であること」、「弁体41または弁体50のいずれか一方が停止している場合に、いずれか他方が動作可能であること」などを意味する。
この発明の実施例2を図5に基づいて説明する。この実施例2は、請求項1,3の発明に対応する実施例である。図5において、図1に示す構成と同じ構成については、図1と同じ符号を付してその説明を省略する。また、図5に示した構成以外の構成は、図1の構成と同じである。さらに、図5の油圧制御装置70も、図2の車両Veに適用可能である。図5において、変速制御弁60は、リニアソレノイドバルブにより構成されている。この変速制御弁60は、所定方向に動作可能な弁体61と、弁体61を相互に逆向きに付勢する弾性部材60A,60Bと、弁体61を相互に逆向きに付勢する磁気吸引力を生成するソレノイド60C,60Dと、5つのポート62,63,64,65,66とを有している。ポート62は油路48を経由して油路49に接続され、ポート63は油路33に接続され、ポート64は油路55を経由してオイルパン32に接続され、ポート65は油路46を経由して第1の油圧室23に接続され、ポート66は油路47を経由して第3の油圧室29に接続されている。
この実施例2では、上記構成の変速制御弁60は、ソレノイド60Cにおける電流値が高まるほど、ポート63とポート65との連通面積が拡大し、かつ、ポート62とポート66との連通面積が拡大するとともに、ソレノイド60Dにおける電流値が高まるほど、ポート63とポート66との連通面積が拡大し、かつ、ポート64とポート65との連通面積が拡大し、ソレノイド60C,60Dの電流値を最低に制御すると、ポート65,66が遮断される制御特性を有している。
つぎに、実施例2の作用を説明する。まず、ベルト式無段変速機6の変速比を小さくする条件、すなわち、増速変速を実行する増速条件が成立した場合を説明する。この増速条件が成立した場合は、変速制御弁60において、ポート63とポート65との連通面積を拡大し、かつ、ポート62とポート66との連通面積を拡大する一方、ポート65とポート64との連通面積を狭め、かつ、ポート63とポート66との連通面積を狭める制御が実行される。
このような制御により、油路33から油路46を経由して、プライマリプーリ9の第1の油圧室23に供給されるオイル流量が増加するとともに、第3の油圧室29から油路47,48を経由して油路49に排出されるオイル流量が増加する。その結果、実施例1と同じ原理により、可動シーブ12に加えられる推力が高められて、プライマリプーリ9におけるベルト17の巻き掛け半径が大きくなる。一方、セカンダリプーリ10においては、第3の油圧室29のオイルが油路49に排出されて、第3の油圧室29の油圧が低下し、第3の油圧室29の油圧は、油路49の油圧とほぼ等しくなる。以下、実施例1と同様の原理により、セカンダリプーリ10におけるベルトの巻き掛け半径が小さくなる。以上のようにして、プライマリプーリ9およびセカンダリプーリ10におけるベルトの巻き掛け半径が変化し、ベルト式無段変速機6の変速比が小さくなる。
つぎに、ベルト式無段変速機6の変速比を大きくする条件、すなわち、減速変速を実行する減速条件が成立した場合を説明する。この場合は、変速制御弁60において、ポート63とポート66との連通面積を拡大し、かつ、ポート64とポート65との連通面積を拡大する一方、ポート63とポート65との連通面積を狭め、かつ、ポート62とポート66との連通面積を狭める制御が実行される。このような制御により、油路33から油路47を経由して第3の油圧室29に供給されるオイル流量が増加するとともに、第1の油圧室23から、油路46,55を経由してオイルパン32に排出されるオイル流量が増加する。第3の油圧室29のオイル流量が増加すると、実施例1と同様の原理により、可動シーブ15に加えられる推力が高められて、セカンダリプーリ10におけるベルト17の巻き掛け半径が大きくなる。
一方、プライマリプーリ9においては、第1の油圧室23のオイルがオイルパン32に排出されて、第1の油圧室23の油圧が低下する。以下、実施例1と同様の原理により、プライマリプーリ9におけるベルトの巻き掛け半径が小さくなる。以上のようにして、プライマリプーリ9およびセカンダリプーリ10におけるベルトの巻き掛け半径が変化し、ベルト式無段変速機6の変速比が大きくなる。
さらに、ベルト式無段変速機6の変速比を略一定に維持する条件が成立した場合は、変速制御弁60が制御されて、ポート65,66が遮断される。その結果、実施例1と同じ原理により、ベルト式無段変速機6の変速比が略一定に維持される。
この実施例2においても、増速変速を実行する場合に、第3の油圧室29と油路49とが、油路47,48により接続されて、第3の油圧室29の油圧が、所定値以下まで低下することが抑制される。すなわち、第3の油圧室29の油圧は、油路49の油圧未満、例えば、零メガパスカルにはならない。したがって、実施例2においても、実施例1で述べた理由と同じ理由により、実施例1と同じ効果を得ることが可能である。
この実施例2の構成と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、油路47,48および変速制御弁60のポート62,66が、この発明の規制油路に相当する。この実施例2のその他の構成と、この発明の構成との対応関係は、実施例1の構成とこの発明の構成との対応関係と同じである。
この発明における油圧制御装置の実施例3を、図6に基づいて説明する。この実施例3は、請求項4および請求項5の発明に対応する実施例である。図6において、図1の構成と同じ構成については、図1と同じ符号を付してその構成の説明を省略する。実施例3においては、油路49と油路47とを接続する油路71が設けられている。この油路71と油路48とは並列に接続されている。また、油路71にはチェックバルブ(逆止弁)72が設けられている。チェックバルブ72は、油路47のオイルが、油路71を経由して油路49に流れることを許容する機能と、油路49のオイルが、油路71を経由して油路47に逆流することを防止する機能とを有している。また、油路71であって、チェックバルブ72と油路47との間には、絞り部73が設けられている。絞り部73としては、オリフィスまたはチョークのいずれを用いてもよい。
さらに、この実施例3においては、油路49と油路47とを接続する油路74が設けられている。この油路74と油路48とは並列に配置され、かつ、油路74と油路71とは並列に配置されている。また、油路74にはチェックバルブ(逆止弁)75が設けられている。チェックバルブ75は、油路49のオイルが、油路74を経由して油路47に流れることを許容する機能と、油路47のオイルが、油路74を経由して油路49に逆流することを防止する機能とを有している。また、油路74であって、チェックバルブ75と油路49との間には、絞り部76が設けられている。絞り部76としては、オリフィスまたはチョークのいずれを用いてもよい。
この実施例3において、実施例1の構成と同じ構成部分については、実施例1と同様の作用効果を生じる。ところで、ポート44,54を遮断している場合においても、油路33のオイルが、弁体50のランドとバルブボデーとの隙間を通過して油路47に浸入し、第3の油圧室29の油圧目標油圧よりも高圧となる可能性がある。これに対して、実施例3においては、油路71であって、絞り部73とチェックバルブ72との間の油圧の方が、油路49の油圧よりも高い場合は、チェックバルブ72が開放される。このため、第3の油圧室29のオイルが、油路47および油路71を経由して油路49に排出され、第3の油圧室29の油圧の上昇が抑制される。なお、油路47の油圧は、油路74であって、チェックバルブ75と絞り部76と間の油圧よりも高圧であるため、チェックバルブ75は閉じられている。したがって、油路47のオイルが、油路74を経由して油路49に逆流することが防止される。なお、第3の油圧室29の油圧と油路49の油圧とが略一致した場合に、油路47のオイルが油路49に排出されなくなる。
その後、減速条件が成立して、ポート54の連通面積が拡大されると、油路47から油路71を経由して油路49に排出されるオイル流量よりも、油路33から油路47に供給されるオイル流量の方が多くなるため、第3の油圧室29の油圧が上昇し、第3の油圧室29の油圧は、油圧PLまで上昇する。
一方、ポート44,54を遮断している場合において、第3の油圧室29のオイルが、隔壁28とシリンダ25との間のシール面(図示せず)などを通過して外部に漏れ出し、第3の油圧室29の油圧が、目標変速比に対応する目標油圧よりも低圧となる可能性がある。これに対して、実施例3においては、油路74であって、絞り部76とチェックバルブ75との間の油圧の方が、油路47の油圧よりも高い場合は、チェックバルブ75が開放される。このため、油路49のオイルが、油路74および油路47を経由して第3の油圧室29に供給され、第3の油圧室29の油圧の低下が抑制される。なお、油路49の油圧は、油路71であって、チェックバルブ72と絞り部73と間の油圧よりも高圧であるため、チェックバルブ72は閉じられている。したがって、油路49のオイルが、油路71を経由して油路47に逆流することが防止される。なお、第3の油圧室29の油圧と油路49の油圧とが略一致した場合に、油路49のオイルが油路47に供給されなくなる。
その後、減速条件が成立して、ポート54の連通面積が拡大されると、第3の油圧室29の油圧が上昇する。すると、チェックバルブ72が開放されて、油路47のオイルの一部が油路71を経由して油路49に排出されるが、前述と同様の原理により、第3の油圧室29の油圧は油圧PLまで上昇する。
この実施例3および比較例の油圧特性を、図7の線図により説明する。図7においては、実施例3の油圧特性が線分B1で示され、比較例1の油圧特性が線分C1で示され、比較例2の油圧特性が線分D1で示されている。線分B1は、中立点において、第3の油圧室29の油圧Poutが油圧Pdとなる特性を得られる。ここで、「中立点」とは、ソレノイド39B,40Bの電流値が共に最低値となり、ポート43,44,52,54が遮断される制御点を意味する。また、線分B1においては、ポート54の連通面積の拡大にともない、第3の油圧室29の油圧が上昇し、第3の油圧室29の油圧は油圧PLに制御されている。
これに対して、比較例1の線分C1は、油路71が設けられていないとともに、前記中立点が選択され、かつ、油路33のオイルがポート54を通過して油路47に浸入する場合の一例である。比較例1のその他の構成は、実施例1の構成と同じであるものとする。この線分C1においては、中立点に対応する第3の油圧室29の油圧Poutが、油路49の油圧Pdよりも高圧となっている。
また、比較例1の線分D1は、油路74が設けられていないとともに、前記中立点にあり、かつ、第3の油圧室29のオイルが不可避的に漏れ出す場合の一例である。この線分D1においては、中立点に対応する第3の油圧室29の油圧Poutが、油路49の油圧Pdよりも低圧となっている。
このように、実施例3においては、中立点が選択された場合において、第3の油圧室29の油圧が必要以上に上昇すると、第3の油圧室29のオイルが、増速用流量制御弁39および油路48を経由することなく、油路71を経由して油路49に排出されて、第3の油圧室29の油圧Poutが油圧Pdに制御される。一方、前記中立点が選択され、かつ、第3の油圧室29の油圧が必要以上に低下すると、油路49のオイルが、増速用流量制御弁39および油路48を経由することなく、油路74を経由して第3の油圧室29に供給されて、第3の油圧室29の油圧Poutが油圧Pdに制御される。したがって、中立点における第3の油圧室29の油圧Poutの制御精度が向上する。また、「油路33のオイルが減速用流量制御弁40を通過して第3の油圧室29に浸入することを防止するために、減速用流量制御弁40の制御ゲインを大きく設定する。」というような制御を実行せずに済む。
さらに、中立点にあり、かつ、第3の油圧室29から不可避的にオイル漏れが生じている場合に、ベルト式無段変速機6の変速比を急激に大きくする制御を実行する場合でも、第3の油圧室29の油圧Poutを早期に油圧PLまで高めることが可能であり、変速応答性の低下を抑制できる。なお、油路71または油路74のうち、いずれか一方の油路を設け、その油路にチェック弁および絞り部を設けてもよい。
ここで、実施例3の構成と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、増速用流量制御弁39が、この発明の変速制御弁に相当し、油路71,74の少なくとも一方が、この発明の迂回油路に相当し、油路49の油圧Pdが、第1の所定油圧および第2の所定油圧に相当し、チェック弁72,75が、この発明の方向制御弁に相当する。また、実施例3においては油路48と並列に2つの油路71,74を設け、その油路71,74に個々にチェック弁72,75を設けているが、油路74を設けることなく油路71のみを設け、油路71に、チェック弁72,75の両方の機能を備えた単一の方向制御弁(例えば、オリフィス)を設ける構成も、請求項4,5の発明に含まれる。
つぎに、図2に示す油圧制御装置70の実施例4を、図8に基づいて説明する。この実施例4は、請求項4および請求項5の発明に対応する。図8の構成において、図1および図5および図6の構成と同じ構成部分については、図1および図5および図6の構成と同じ符号を付してある。この実施例4において、図1および図5の構成と同じ構成部分については、実施例1および実施例2と同じ作用効果を得られる。また、実施例4において、ポート65,66が遮断された場合に、油路33のオイルが、変速制御弁60の弁体61とバルブボデーとの隙間を通過して油路47に漏れ込み、第3の油圧室29の油圧が上昇した場合は、実施例3と同様の原理により、第3の油圧室29のオイルが油路49に排出される。これとは逆に、ポート65,66が遮断されて、第3の油圧室29から不可避的にオイル漏れが生じた場合は、実施例3と同様の原理により、油路49のオイルが、油路74を経由して第3の油圧室29に供給される。したがって、実施例4においても、実施例3と同様の効果を得られる。
この実施例4において、油路74を設けることなく油路71のみを設け、油路71に、チェック弁72,75の両方の機能を備えた単一の方向制御弁(例えば、オリフィス)を設ける構成も、請求項4,5の発明に含まれる。
つぎに、図2の油圧制御装置70の実施例5を、図9に基づいて説明する。実施例5は、請求項4ないし6の発明に対応するものである。図9の構成において、図1の構成と同じ構成については、図1の構成と同じ符号を付してある。この図9において、増速用流量制御弁39は信号圧ポート77,78を有している。信号圧ポート77には油路79が接続され、信号圧ポート78には油路80が接続されている。ここで、信号圧ポート77の油圧に応じた付勢力と、信号圧ポート78の油圧に応じた付勢力とが、弁体41に逆向きに作用する構成となっている。また、信号圧ポート77の油圧に応じた付勢力と、弾性部材39Aに応じた付勢力とが、弁体41に同じ向きに作用する構成となっている。なお、図9に示された増速用流量制御弁39は、図1に示したソレノイド39Bを有していない。
一方、減速用流量制御弁40は信号圧ポート81を有しており、信号圧ポート81には油路79が接続されている。ここで、信号圧ポート81の油圧に応じた付勢力と、弾性部材40Aに応じた付勢力とが、弁体50に逆向きに作用する構成となっている。なお、図9に示された減速用流量制御弁40は、図1に示したソレノイド40Bを有していない。
さらに、油路33は第3の圧力制御弁82に接続されている。第3の圧力制御弁82は、入力ポート83および出力ポート84およびフィードバックポート85を有している。そして、入力ポート83と油路33とが接続され、出力ポート84と油路86とが接続され、フィードバックポート85と油路86とが接続されている。前記油路86は2つに分岐され、油路86はリニアソレノイドバルブSOL1およびリニアソレノイドバルブSOL2に接続されている。
このリニアソレノイドバルブSOL1は、入力ポート87および出力ポート88を有しており、入力ポート87が前記油路86に接続され、出力ポート88が油路79に接続されている。この実施例5においては、リニアソレノイドバルブSOL1として、電流値が零である場合にポート87とポート88とが遮断される一方、電流値の増加にともない、ポート87とポート88との連通面積が増加して信号圧が高まる機能を有するノーマルクローズ形式のリニアソレノイドバルブを用いる場合を説明する。
また、リニアソレノイドバルブSOL2は、入力ポート89および出力ポート90を有しており、入力ポート89が前記油路86に接続され、出力ポート90が油路80に接続されている。この実施例5においては、リニアソレノイドバルブSOL2として、電流値が零である場合にポート89とポート90とが遮断される一方、電流値の増加にともない、ポート89とポート90との連通面積が増加して信号圧が高まる機能を有するノーマルクローズ形式のリニアソレノイドバルブを用いる場合を説明する。
一方、第2の油圧室24には油路91が接続され、油路49と油路91との間に切換弁92が設けられている。切換弁92はポート93,94および信号圧ポート95,96およびドレーンポート97を有している。そして、ポート93と油路49とが接続され、ポート94と油路91とが接続され、ドレーンポート97が油路98を経由してオイルパン32に接続され、信号圧ポート95と油路79とが接続され、信号圧ポート96と油路80とが接続されている。この切換弁92は、信号圧ポート95に入力される信号圧が所定圧以上となり、かつ、信号圧ポート96に入力される信号圧が所定圧以上となった場合に限り、ポート94とドレーンポート97とを連通し、かつ、ポート93を遮断する機能を有している。また、切換弁92は、信号圧ポート95に入力される信号圧または、信号圧ポート96に入力される信号圧の少なくとも一方が所定圧未満である場合は、ポート93とポート94とを連通し、かつ、ポート97を遮断する機能を有している。
つぎに、実施例5の作用を説明する。この実施例5において、実施例1の構成と同じ構成部分については、実施例1と同様の作用が生じる。また、実施例5において、油路33のオイルは、第3の圧力制御弁82の入力ポート83および出力ポート84を経由して油路86に供給される。油路86の油圧が上昇すると、フィードバックポート85に作用する油圧が上昇して、入力ポート83と出力ポート84との連通面積が狭められる。これに対して、油路86の油圧が低下すると、フィードバックポート85に作用する油圧が低下して、入力ポート83と出力ポート84との連通面積が拡大される。このようにして、油路33の油圧が減圧されて、油路86に供給される。この油路86のオイルは、リニアソレノイドバルブSOL1の入力ポート87およびリニアソレノイドバルブSOL2の入力ポート89に供給される。
そして、前述した増速条件が成立した場合は、リニアソレノイドバルブSOL1の電流値が低下され、かつ、リニアソレノイドバルブSOL2の電流値が高められる。リニアソレノイドバルブ1の電流値が低下されて、出力ポート88から出力される信号圧が低下すると、増速用流量制御弁39の信号圧ポート77に伝達される信号圧が低下し、かつ、減速用流量制御弁40の信号圧ポート81に伝達される信号圧が低下し、かつ、切換弁92の信号圧ポート95に伝達される信号圧が低下する。リニアソレノイドバルブSOL2の電流値が高められて、出力ポート90から出力される信号圧が上昇すると、増速用流量制御弁39の信号圧ポート78に伝達される信号圧が上昇し、かつ、切換弁92の信号圧ポート96に伝達される信号圧が上昇する。
すると、増速用流量制御弁39においては、ポート42とポート43との連通面積が拡大するとともに、ポート44とポート45との連通面積が拡大される。一方、減速用流量制御弁40においては、ポート51とポート54との連通面積が狭められ、かつ、ポート52とポート53との連通面積が狭められる。その結果、実施例1と同様の原理により、第1の油圧室23の油圧が上昇するとともに、第3の油圧室29の油圧が低下する。ところで、切換弁92においては、ポート95の信号圧が低く、ポート96の信号圧が高い場合は、ポート93とポート94とが連通され、ドレーンポート97は遮断される。したがって、実施例1と同様の原理により、第4の油圧室30から油路49に排出されたオイルは、切換弁92および油路91を経由して、第2の油圧室24に流れ込む。このような作用により、ベルト式無段変速機6の変速比が小さくなるように変化する。
これに対して、前述した減速条件が成立した場合は、リニアソレノイドバルブSOL1の電流値が高められ、かつ、リニアソレノイドバルブSOL2の電流値が低下される。リニアソレノイドバルブSOL1の電流値が高められて、出力ポート88から出力される信号圧が上昇すると、増速用流量制御弁39の信号圧ポート77に伝達される信号圧が上昇し、かつ、減速用流量制御弁40の信号圧ポート81に伝達される信号圧が上昇し、かつ、切換弁92の信号圧ポート95に伝達される信号圧が上昇する。リニアソレノイドバルブSOL2の電流値が低下されて、出力ポート90から出力される信号圧が低下すると、増速用流量制御弁39の信号圧ポート78に伝達される信号圧が低下し、かつ、切換弁92の信号圧ポート96に伝達される信号圧が低下する。
すると、増速用流量制御弁39においては、ポート42とポート43との連通面積が狭められるとともに、ポート44とポート45との連通面積が狭められる。一方、減速用流量制御弁40においては、ポート51とポート54との連通面積が拡大され、かつ、ポート52とポート53との連通面積が拡大される。その結果、実施例1と同様の原理により、第1の油圧室23の油圧が低下するとともに、第3の油圧室29の油圧が上昇する。ところで、切換弁92においては、ポート95の信号圧が高く、ポート96の信号圧が低い場合は、入力ポート93と出力ポート94とが連通され、ドレーンポート97は遮断される。したがって、実施例1と同様の原理により、第2の油圧室24から油路91に排出されたオイルは、切換弁92および油路49を経由して、第4の油圧室30に流れ込む。このような作用により、ベルト式無段変速機6の変速比が大きくなるように変化する。
さらに、ベルト式無段変速機6の変速比を略一定に維持する条件が成立した場合は、リニアソレノイドバルブSOL1の電流値が最低値に制御され、かつ、リニアソレノイドバルブSOL2の電流値が最低値に制御される。その結果、信号圧ポート77に伝達される信号圧、信号圧ポート81に伝達される信号圧、信号圧ポート95に伝達される信号圧、信号圧ポート78に伝達される信号圧が、それぞれ全て最低圧となる。
すると、増速用流量制御弁39においては、ポート43,44が遮断され、減速用流量制御弁40においては、ポート52,54が遮断される。その結果、実施例1と同様の原理により、第1の油圧室23の油圧が略一定に維持され、かつ、第3の油圧室29の油圧が略一定に維持される。ところで、切換弁92においては、ポート95の信号圧およびポート96の信号圧が最低圧である場合も、ポート93とポート94とが連通され、ドレーンポート97は遮断されるが、実施例1と同様の原理により、第2の油圧室24と第4の油圧室30との間でオイルの行き来はおこなわれず、第2の油圧室24の油圧が略一定に維持され、第4の油圧室30の油圧が略一定に維持される。
つぎに、ベルト式無段変速機6の変速比を急激に大きくする急減速条件が成立した場合について説明する。この場合は、リニアソレノイドバルブSOL1の電流値が最大に制御され、かつ、リニアソレノイドバルブSOL2の電流値が最大に制御される。その結果、信号圧ポート77に伝達される信号圧、信号圧ポート81に伝達される信号圧、信号圧ポート95に伝達される信号圧、信号圧ポート78に伝達される信号圧が、それぞれ全て最大圧となる。
すると、増速用流量制御弁39においては、ポート42とポート43との連通面積が狭められ、かつ、ポート44とポート45との連通面積が狭められる。また、減速用流量制御弁40においては、ポート52とポート53との連通面積が拡大され、ポート51とポート54との連通面積が拡大される。その結果、実施例1と同様の原理により、第1の油圧室23の油圧が低下し、第3の油圧室29の油圧が上昇する。ところで、切換弁92においては、ポート95の信号圧およびポート96の信号圧が最高圧となった場合は、ポート94とドレーンポート97とが連通され、ポート93が遮断される。このため、第2の油圧室24のオイルは、油路91および切換弁92および油路98を経由してオイルパン32に排出され、第2の油圧室24の油圧が、油路49の油圧未満、具体的には大気圧に対応する油圧まで低下する。なお、第2の油圧室24のオイルが第4の油圧室30には供給されないため、第4の油圧室30の油圧は略一定となる。
このように、急減速条件が成立した場合は、第1の油圧室23の油圧が低下する(零メガパスカルとなる)ことに加えて、第2の油圧室24の油圧が油路49の油圧未満まで低下されるため、可動シーブ12に加えられる推力を、可及的に低下させること、より具体的には、ほぼ零ニュートンに制御することが可能である。このため、可動シーブ12に加えられる推力を、可動シーブ15に加えられる推力で除した値、すなわち推力比を、略「零」にすることができる。ここで、急減速制御の実行時において、前記推力比を、次式により求めることが可能である。
推力比={(A3×Pin1)+(A4×Pin2)}/{(A1×Pout1)+(A2×Pout2)}=A4・Pd1/(A1・PL)+(A2・Pd)
ここで、「A3」は第1の油圧室23に対応する可動シーブ12の受圧面積であり、「Pin1」は第1の油圧室23の油圧であり、「A4」は第2の油圧室24の油圧に対応する可動シーブ12の受圧面積であり、「Pin2」は第2の油圧室24の油圧であり、「A1」は第3の油圧室29に対応する可動シーブ15の受圧面積であり、「Pout1」は第3の油圧室29の油圧であり、「A2」は第4の油圧室30の油圧に対応する可動シーブ15の受圧面積であり、「Pout2」は第4の油圧室30の油圧、「Pd」は油路49の油圧、「Pd1」は油路91の油圧である。つまり、上記式の「Pd1」が零メガパスカルに低下することにより、推力比が零となる。
上記の急減速条件が成立する場合としては、例えば、車両Veが極低車速で走行する場合が挙げられる。すなわち、車両Veが極低車速で走行中に、プライマリプーリ9におけるベルト17の巻き掛け半径を可及的に小さくし、ベルト式無段変速機6の変速比を最大変速比に制御することが可能である。したがって、車両Veが極車速で走行中に加速する場合、または、車両Veが極低車速で走行して一旦停車し、その後に、再度発進する場合において、駆動力不足を未然に回避することができ、車両Veの走行性能が向上する。
また、実施例5においては、増速用流量制御弁39を制御するリニアソレノイドバルブSOL2、増速用流量制御弁39および減速用流量制御弁40を制御するリニアソレノイドバルブSOL1が、切換弁92の動作を切り換える機能を兼備している。このため、切換弁92の動作を切り換えるために専用のアクチュエータなどを設けずに済む。なお、実施例5の油圧回路において、実施例1と同じ構成部分については、実施例1と同様の効果を得られる。また、この実施例5において、実施例3で説明した油路71,74およびチェック弁72,75および絞り部73,76を設けることも可能である。なお、実施例5においては、油路49,91が、この発明の接続油路に相当する。
つぎに、油圧制御装置70の他の実施例を、図10に基づいて説明する。この実施例6は、請求項6の発明に対応するものである。図10の構成において、図1の構成、図6の構成、図9の構成と同じ構成については、図1および図6および図9と同じ符号を付してある。この実施例6においては、増速用流量制御弁39および減速用流量制御弁40が、実施例1と同様に構成されている。すなわち、実施例5で説明したリニアソレノイドバルブSOL1およびリニアソレノイドバルブSOL2は設けられていない。また、実施例6においては、切換弁92の動作がソレノイド99により切り換えられる構成となっている。
この実施例6においては、前述した急減速条件が成立した場合は、ソレノイド99の電流値が高められて、出力ポート94とドレーンポート97とが連通され、かつ、入力ポート93が遮断される。これに対して、増速条件が成立した場合、または減速条件が成立した場合、または変速比を略一定に維持する条件が成立した場合は、入力ポート93と出力ポート94とが連通され、ドレーンポート97が遮断される。したがって、実施例5と同様の効果を得ることが可能である。なお、実施例6において、実施例1および実施例3と同じ構成部分については、実施例1および実施例3と同じ作用効果を得られる。
つぎに、油圧制御装置70の他の実施例を、図11に基づいて説明する。この実施例7は、請求項4ないし6の発明に対応するものである。図11の構成において、図1の構成、図5の構成、図6の構成、図9の構成と同じ構成については、図1および図5および図6および図9と同じ符号を付してある。この実施例7においては、変速制御弁60が、図5と同様に構成されている。また、切換弁92の動作がソレノイド99により切り換えられる構成となっている。さらに、実施例3で説明した油路71,74およびチェック弁72,75および絞り部73,76を設けた場合が、図11に示してある。なお、実施例7において、実施例1および実施例2および実施例3および実施例5と同じ構成部分については、実施例1および実施例2および実施例3および実施例5と同じ作用効果を得られる。
各実施例において、ソレノイドおよびリニアソレノイドバルブの電流値の高低と、各ポートの連通面積の増減との対応関係は、任意に変更可能である。また、駆動力源から車輪にトルクを伝達する場合に、トルクの伝達経路の上流側に配置されているプーリをプライマリプーリとして説明し、下流側に配置されているプーリをセカンダリプーリとして説明しているが、プライマリプーリとセカンダリプーリとの配置位置が逆である構成のドライブトレーンも、特許請求の範囲に記載された各請求項の発明に含まれる。
ここで、実施例1および実施例2に記載された特徴的な構成を記載すれば、プライマリプーリおよびセカンダリプーリと、プライマリプーリおよびセカンダリプーリに巻き掛けられたベルトと、前記プライマリプーリの溝幅を制御する第1の複数の油圧室(第1の油圧室および第2の油圧室)と、前記セカンダリプーリの溝幅を制御する第2の複数の油圧室(第3の油圧室および第4の油圧室)と、第1の複数の油圧室のうち所定の油圧室(第2の油圧室)と、第2の複数の油圧室のうち所定の油圧室(第4の油圧室)との間で、相互にオイルを流入および排出させる接続油路とを有するベルト式無段変速機の油圧制御装置において、前記第2の複数の油圧室のうちの所定の油圧室以外の特定油圧室(第3の油圧室)からオイルを排出させる場合に、前記特定油圧室と前記接続油路とを接続することにより、前記特定油圧室の油圧が接続油路の油圧未満に低下することを抑制する油圧低下抑制油路が設けられていることを特徴とするベルト式無段変速機の油圧制御装置である。
つぎに、油圧制御装置70の他の実施例を、図12および図13に基づいて説明する。この実施例8は、請求項7の発明に対応するものである。図12および図13の構成において、図1の構成と同じ構成については、図1と同じ符号を付してある。この実施例8においては、図1における第1の圧力制御弁34は設けられていない。また、実施例8においては、油路33の油圧を制御するプライマリレギュレータバルブ100が設けられている。プライマリレギュレータバルブ100は、軸線方向に、かつ、別個に往復移動自在なスプール101,102と、スプール101を軸線方向における所定の向きに付勢する力を生じる弾性部材103とを有している。また、スプール101には、ランド104,105,106,107が形成されている。
さらに、プライマリレギュレータバルブ100は、入力ポート108およびドレーンポート109を有しており、入力ポート108と油路33とが接続され、ドレーンポート109とセカンダリ油路110とが接続されている。そして、スプール101の動作により入力ポート108とドレーンポート109とが連通・遮断される。また、プライマリレギュレータバルブ100はフィードバックポート111を有しており、フィードバックポート111は油路33に接続されている。このフィードバックポート111の油圧により、弾性部材103の力とは逆向きにスプール101を付勢する力が生じる。さらに、プライマリレギュレータバルブ100は、第1の信号圧ポート112および第2の信号圧ポート113および第3の信号圧ポート114を有している。この第1の信号圧ポート112の油圧により、スプール102をスプール101に押し付ける向きの力が生じる。また、第2の信号圧ポート113の油圧により、スプール101を弾性部材103の力と同じ向きで付勢する力が生じる。さらに、第3の信号圧ポート114の油圧により、スプール101を弾性部材103の力とは逆向きに付勢する力が生じる。
また、前記プライマリレギュレータバルブ100の調圧機能を制御する切換弁115が設けられている。切換弁115は、所定方向に往復移動可能なスプール116と、スプール116を所定の向きで付勢する力を生じる弾性部材117とを有している。スプール116は、ランド118,119,120を有している。また、切換弁115は、入力ポート121および出力ポート122およびドレーンポート123を有している。入力ポート121には油路124が接続され、この油路124には第1の信号圧ポート112が接続されている。ドレーンポート123にはオイルパン32が接続されている。さらに、油路124の油圧を制御するソレノイドバルブ125が設けられている。このソレノイドバルブ125は、油路33の油圧を減圧して、油路124に供給するものである。さらにまた、切換弁115は、第1の信号圧ポート126および第2の信号圧ポート127を有している。
そして、第1のリニアソレノイドバルブ128から出力される信号油圧が、油路129を経由して第1の信号圧ポート126に入力されて、スプール116を弾性部材117の力とは逆向きに付勢する力が生じる。さらに、第2のリニアソレノイドバルブ130から出力される信号油圧が、油路131を経由して第2の信号圧ポート127に入力されて、スプール116を弾性部材117の力とは逆向きに付勢する力が生じる。また、リニアソレノイドバルブ132が設けられており、そのリニアソレノイドバルブ132から出力された信号油圧が、油路133を経由して第2の信号圧ポート113に入力される。この第2の信号圧ポート113の油圧により、スプール101を弾性部材103の力と同じ向きに付勢する力が生じる。
一方、前記第2の圧力制御弁56は、所定方向に往復移動可能なスプール56Aを有しており、スプール56Aを所定方向に付勢する力を生じる弾性部材56Bが設けられている。さらに、第2の圧力制御弁56に信号圧ポート56Cが設けられており、信号圧ポート56Cには油路133の信号油圧が入力される。信号圧ポート56Cの信号圧、および弾性部材56Bの押圧力により、スプール56Aを所定方向に付勢する向きの力が生じる。
前記増速用流量制御弁39は、第1の信号圧ポート39Cおよび第2の信号圧ポート39Dを有している。また、前記減速用流量制御弁40は信号圧ポート40Cを有している。そして、油路129が、第1の信号圧ポート39Cおよび信号圧ポート40Cに接続されている。また油路131が、第2の信号圧ポート39Dに接続されている。そして、第1の信号圧ポート39Cの信号圧により、弾性部材39Aの力と同じ向きの力が、スプール41に与えられる。これに対して、第2の信号圧ポート39Dの信号圧により、ソレノイド39Bの磁気吸引力と逆向きの力が、スプール41に与えられる。さらに、信号圧ポート40Cの信号圧により、ソレノイド40Bの磁気吸引力と同じ向きの力が、スプール50に与えられる。
つぎに、この実施例8における油圧制御装置70の作用を説明する。まず、プライマリレギュレータバルブ100における基本的な調圧機能を説明する。前記オイルポンプ31から油路33に吐出された圧油は、プライマリレギュレータバルブ100の入力ポート108に供給されるとともに、フィードバックポート111にも供給される。さらに、リニアソレノイドバルブ132の信号油圧は、プライマリレギュレータバルブ100における第2の信号圧ポートに入力される。また、プライマリレギュレータバルブ100においては、弾性部材103からスプール101に対して、図13で下向きの力が加えられる。
そして、フィードバックポート111の油圧が低圧である場合は、入力ポート108とドレーンポート109とが遮断されており、油路33の油圧、すなわち、ライン圧が上昇する。油路33の油圧が上昇することにともない、フィードバックポート111の油圧により、スプール101を図13で上向きに付勢する力が増加すると、スプール101が図13で上向きに動作して、入力ポート108とドレーンポート109とが連通し、油路33からセカンダリ油路110に排出される圧油の流量が増加する。その結果、油路33のライン圧の上昇が抑制される。その後、油路33のライン圧が低下して、フィードバックポート111に入力される油圧が低下した場合は、スプール13が図13で下向きに動作して、油路33からセカンダリ油路110に排出される圧油の流量が減少し、油路33のライン圧の低下が抑制される。このようにして、油路33のライン圧が調圧される。
つぎに、切換弁115の作用と、プライマリレギュレータバルブ100の作用との関係を説明する。まず、ベルト式無段変速機6の変速比を略一定に維持する場合は、ソレノイドバルブ128,130の信号油圧が共に低圧に制御される。すると、切換弁115においては、弾性部材117の付勢力によりスプール116が、図13において下向きに動作する。その結果、図13の切換弁115で右半分に示すように、入力ポート121と出力ポート122とが連通され、ドレーンポート123が遮断される。したがって、リニアソレノイドバルブ125の信号油圧が油路124を経由して、プライマリレギュレータバルブ100における第3の信号圧ポート114に入力され、第3の信号圧ポート114の油圧が上昇する。また、リニアソレノイドバルブ125の信号油圧は、油路124を経由して、プライマリレギュレータバルブ100における第1の信号圧ポート112にも入力される。さらに、リニアソレノイドバルブ132の信号油圧は、プライマリレギュレータバルブ100の第2の信号圧ポート113に入力される。このように、ベルト式無段変速機6の変速比を略一定に維持する場合は、第3の信号圧ポート114の油圧が上昇して、スプール101を図13で上向きに付勢する力が上昇する。つまり、油路33のライン圧の上昇が抑制され易くなる。また、第1の信号圧ポート112および第2の信号圧ポート113の油圧により、スプール101を図13において下向きに付勢する力が生じる。
これに対して、ベルト式無段変速機6で増速変速を実行する条件が成立した場合は、ソレノイドバルブ128の信号油圧が低圧に制御され、ソレノイドバルブ130の信号油圧が高圧に制御される。このように、ソレノイドバルブ130の信号油圧が高圧に制御された場合でも、ソレノイドバルブ128の信号油圧が低圧に制御されている場合は、切換弁115においては、入力ポート121と出力ポート122とが連通され、かつ、ドレーンポート123が遮断された状態に維持される。したがって、第3の信号圧ポート114の油圧は高圧に維持され、油路33のライン圧の上昇が抑制され易くなる。一方、ソレノイドバルブ130の信号油圧は、油路131を経由して増速用流量制御弁39の第2の信号圧ポート39Dに伝達され、ソレノイド39Bの磁気吸引力と同じ向きの力が強められる。その結果、油路33から油路46に供給される圧油の流量の増加が、一層促進される。
さらに、ベルト式無段変速機6で減速変速を実行する条件が成立し、かつ、油路33のライン圧を所定圧以上に制御する条件が成立していない場合は、ソレノイドバルブ128の信号油圧が高圧に制御され、ソレノイドバルブ130の信号油圧が低圧に制御される。このように、ソレノイドバルブ128の信号油圧が高圧に制御された場合でも、ソレノイドバルブ130の信号油圧が低圧に制御されている場合は、切換弁115においては、入力ポート121と出力ポート122とが連通され、かつ、ドレーンポート123が遮断された状態に維持される。したがって、第3の信号圧ポート114の油圧は高圧に維持される。一方、ソレノイドバルブ128の信号油圧は、油路129を経由して増速用流量制御弁39の第1の信号圧ポート39Cに伝達され、かつ、減速用流量制御弁40の信号圧ポート40Cに伝達される。このため、増速用流量制御弁39においては、弾性部材39Aの力と同じ向きの力が強められ、油路33から油路46に供給される圧油の流量の減少が、一層促進される。一方、減速用流量制御弁40においては、ソレノイド40Bの磁気吸引力と同じ向きの力が強められて、油路46からオイルパン32に排出される圧油の流量が一層増加する。
ところで、ベルト式無段変速機6で減速変速を実行する条件が成立し、かつ、油路33のライン圧を所定圧以上に制御する条件が成立した場合は、ソレノイドバルブ128の信号油圧が高圧に制御され、かつ、ソレノイドバルブ130の信号油圧が高圧に制御される。すると、切換弁115においては、スプール116が図13において上向きに動作し、図13で左側半分に示すように、出力ポート122とドレーンポート123とが連通され、かつ、入力ポート121が遮断される。その結果、第3の信号圧ポート114の圧油がオイルパン32に排出されて、スプール101を図13で上向きに付勢する力が低下する。したがって、プライマリレギュレータバルブ100のスプール101は、図13において上向きに動作することが抑制されて、油路33のライン圧が上昇し易くなる。
このようにして、油路33のライン圧が高められ、その所定圧以上の圧油が、減速用流量制御弁40および油路47を経由して、セカンダリプーリ10の第3の油圧室29に供給される。したがって、ベルト式無段変速機6で減速変速を実行する場合において、その変速速度を可及的に高速化することが可能である。すなわち、変速応答性が向上する。また、ソレノイドバルブ128の信号油圧が高圧に制御され、ソレノイドバルブ130の信号油圧が高圧に制御されると、増速用流量制御弁39においては、第1の信号圧ポート39Cおよび第2の信号圧ポート39Dに入力される信号油圧が共に高圧となる。そして、第1の信号圧ポート39Cの信号油圧に応じてスプール41に加えられる力と、第2の信号圧ポート39Dの信号油圧に応じてにスプール41に加えられる力とが相殺される。また、減速用流量制御弁40においては、信号圧ポート40Cに入力される信号油圧が高圧となり、前述と同様の効果を得られる。
なお、この実施例8は前述した実施例1ないし実施例7のいずれかと組み合わせて用いることが可能である。ここで、実施例8の構成とこの発明の構成との対応関係を説明すれば、油路33が、この発明のライン圧油路に相当し、プライマリレギュレータバルブ100および切換弁115が、この発明のライン圧上昇弁に相当する。
この発明の実施例1を示す油圧回路図である。 この発明の適用対象である車両のパワートレーンおよびその制御系統を示す概念図である。 実施例1の油圧特性を示す線図である。 実施例1に対応する比較例の油圧特性を示す線図である。 この発明の実施例2を示す部分的な油圧回路図である。 この発明の実施例3を示す油圧回路図である。 この発明の実施例3の油圧特性、および実施例3に対応する比較例の油圧特性を示す線図である。 この発明の実施例4を示す部分的な油圧回路図である。 この発明の実施例5を示す油圧回路図である。 この発明の実施例6を示す部分的な油圧回路図である。 この発明の実施例7を示す部分的な油圧回路図である。 この発明の実施例8を示す油圧回路図である。 この発明の実施例8を示す部分的な油圧回路図である。
符号の説明
6…ベルト式無段変速機、 9…プライマリプーリ、 10…セカンダリプーリ、 17…ベルト、 23…第1の油圧室、 24…第2の油圧室、 29…第3の油圧室、 30…第4の油圧室、 33…油路、 39…増速用流量制御弁、 40…減速用流量制御弁、 41…弁体、 47,48,49,71,74,91…油路、 44,45,62,66…ポート、 70…油圧制御装置、 72,75…チェック弁、 92…切換弁、 100…プライマリレギュレータバルブ、 115…切換弁、 M1,M2…溝。

Claims (7)

  1. プライマリプーリおよびセカンダリプーリと、プライマリプーリおよびセカンダリプーリに巻き掛けられたベルトと、前記プライマリプーリの溝幅を制御する第1の油圧室および第2の油圧室と、前記セカンダリプーリの溝幅を制御する第3の油圧室および第4の油圧室と、前記第2の油圧室と前記第4の油圧室との間でオイルの行き来をおこなうことの可能な接続油路とを有するベルト式無段変速機の油圧制御装置において、
    前記第3の油圧室からオイルを排出させる場合に、前記第3の油圧室と前記接続油路とを接続することにより、前記第3の油圧室の油圧が接続油路の油圧未満に低下することを抑制する油圧低下抑制油路が設けられていることを特徴とするベルト式無段変速機の油圧制御装置。
  2. 前記第1の油圧室に供給されるオイル流量を制御する機能、および前記第3の油圧室から排出されるオイル流量を制御する機能を備えた第1の変速制御弁と、
    前記第3の油圧室に供給されるオイル流量を制御する機能、および前記第1の油圧室から排出されるオイル流量を制御する機能を備えた第2の変速制御弁とが設けられており、
    前記第1の変速制御弁と第2の変速制御弁とが別々に動作する構成であることを特徴とする請求項1に記載のベルト式無段変速機の油圧制御装置。
  3. 前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリとの間における変速比を小さくする変速を実行する場合に、前記第3の油圧室のオイルが前記接続油路に排出される構成であることを特徴とする請求項1または2に記載のベルト式無段変速機の油圧制御装置。
  4. 前記第3の油圧室へオイルを供給する変速制御弁が設けられており、この変速制御弁を経由して前記第3の油圧室にオイルを供給する制御が停止され、かつ、前記第3の油圧室のオイルを、前記油圧低下抑制油路を経由させて前記接続油路に排出する制御が停止されている場合に、前記第3の油圧室と前記接続油路との間でオイルの行き来をおこなうことの可能な迂回油路が設けられており、この迂回油路と、前記油圧低下抑制油路および前記変速制御弁とが並列に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のベルト式無段変速機の油圧制御装置。
  5. 前記迂回油路に、
    前記第3の油圧室の油圧が第1の所定油圧よりも高い場合は、前記第3の油圧室のオイルを前記接続油路に排出する機能、
    または、
    前記第3の油圧室の油圧が第2の所定油圧よりも低い場合は、前記接続油路のオイルを前記第3の油圧室に供給する機能、
    の少なくとも一方の機能を有する方向制御弁が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のベルト式無段変速機の油圧制御装置。
  6. 前記プライマリプーリにおけるベルトの巻き掛け半径を小さくすることにより、前記プライマリプーリとセカンダリプーリとの間における変速比を大きくする場合に、前記第2の油圧室と第4の油圧室との間におけるオイルの行き来を停止し、かつ、前記第2の油圧室の油圧を前記第4の油圧室の油圧よりも低下させる切換弁が、前記接続油路に設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のベルト式無段変速機の油圧制御装置。
  7. 前記第2の変速制御弁に接続されたライン圧油路を有しており、このライン圧油路のオイルが前記第2の変速制御弁を経由して前記第3の油圧室に供給される構成であり、前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリとの間における変速比を大きくする変速を実行する場合に、前記ライン圧油路の油圧を上昇させるライン圧上昇弁が設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のベルト式無段変速機の油圧制御装置。
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