JP2006105355A - チェーンベルト - Google Patents

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正広 長谷部
Hisanori Shirai
久則 白井
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Abstract

【課題】連結・係合部材がプーリに係合するタイミングのずれを積極的に利用して、振動波の合成によりプーリやベルトの振動を抑制し、もって騒音を低減する。
【解決手段】多数のリンクプレート21を無端状に連結しかつプーリに係合する連結・係合部材が、ベルト幅方向の長さW1の第1群の連結・係合部材部材3Aと、長さW1より若干短いベルト幅方向の長さW2の第2群の連結・係合部材部材3Bとからなる。したがって、第1群の連結・係合部材部材3Aがプーリに係合する時間間隔と第2群の連結・係合部材部材3Bがプーリに係合する時間間隔とが異なる。そして、これらの時間間隔は、先の連結・係合部材の係合で発生した振動を後続の連結・係合部材の係合で発生した振動で打ち消すように設定される。これにより、振動が抑制されて騒音が低減する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、トルクを伝達する伝動用のチェーンベルトの技術分野に関し、詳しくは、並行軸配置の2つのプーリに巻き掛けて両プーリ間でトルクを伝達させるべく、リンクプレートをピンにより無端状に連結した形式のチェーンベルトの技術分野に関する。
従来、例えば無段変速機(CVT)においては、並行軸配置の2つのプーリ(本明細書において、トルク入力側をプライマリプーリ、トルク出力側をセカンダリプーリ、両プーリ共通の場合を単にプーリという)の間に掛け渡されて、トルクをプライマリプーリからセカンダリプーリへ伝達する無端状のチェーンベルトベルトが用いられている。
この種のチェーンベルトの一例として、多数のリンクプレートを用い、かつ隣り合うリンクプレートを細長い連結・係合部材で互いに連結して無端化することで形成されたチェーンベルトが知られている。このチェーンベルトは連結・係合部材を間欠的にプーリ壁面に係合することで、ベルトが走行してトルクを伝達するようになっている。
このように、連結・係合部材がプーリ壁に接触することでトルクを伝達する形式では、連結・係合部材が周期的にプーリに接触するため、連結・係合部材のプーリへの接触のたびに接触の衝撃による振動で騒音が発生する。この騒音は、連結・係合部材がプーリ壁に接触する周期に対応した周波数(周期の逆数)とその高調波の周波数にピークがあることが知られている。これは連結・係合部材の接触によるプーリへの周期的な衝撃が起こる振動源となって、プーリやベルト自体が振動することが原因であると考えられる。
そこで、例えば連結・係合部材を有するチェーンベルトにおいて、連結・係合部材のベルト走行方向の配置間隔(以下、ピッチという)を異なる長さに設定し、連結・係合部材がプーリ壁に接触する周期を複数に分散させることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、ベルト幅方向の長さが異なる連結・係合部材を用いて、連結・係合部材がプーリ壁に接触する時間間隔を不均一にして騒音を低減させることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開平10−122307号公報(請求項45)。 特開昭63−53337号公報(請求項1)。
前述の特許文献1および2に開示の騒音の低減方法は、いずれもピンがプーリ壁に接触する周期を不規則にするものであるため、騒音のピーク周波数は分散されるが、騒音そのものを抑制するものでがないため、騒音全体を低減するものとしては不十分である。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、連結・係合部材がプーリに係合するタイミングのずれを積極的に利用して、振動波の合成によりプーリやベルトの振動を抑制し、もって騒音を低減することのできるチェーンベルトを提供することである。
前述の課題を解決するために、請求項1の発明のチェーンベルトは、多数の環状のリンクプレートと、隣接するリンクプレートを互いに連結して無端化する多数の連結・係合部材とからなり、2つのプーリに巻き掛けられたとき、前記多数の連結・係合部材の両端が前記2つのプーリの各プーリ壁面にそれぞれ順次係合して、一方のプーリから力が伝達されるとともに該力を他方のプーリに伝達させることで、前記プーリ間でトルクを伝達させるチェーンベルトにおいて、前記連結・係合部材が前記プーリ壁面に順次係合する時間間隔が、先に連結・係合部材が前記プーリ壁面に係合した際に発生する振動を後続する連結・係合部材が前記プーリ壁面に係合した際に発生する振動で打ち消すように設定されていることを特徴としている。
また、請求項2の発明は、前記時間間隔が、チェーンベルトの幅方向の前記連結・係合部材の長さを変えることにより設定されていることを特徴としている。
更に、請求項3の発明は、前記時間間隔が、前記多数の連結・係合部材における隣接する連結・係合部材間の距離(ピッチ)を変えることにより設定されていることを特徴としている。
更に、請求項4の発明は、前記時間間隔が、前記多数の連結・係合部材のうち、第1の連結・係合部材が前記プーリ壁面に係合した後次の第2の連結・係合部材が前記プーリ壁面に係合するまでの時間と前記第2の連結・係合部材が前記プーリ壁面に係合した後次の第3の連結・係合部材が前記プーリ壁面に係合するまでの時間との比が、ベルトの回転速度が一定の場合に1:3/2の比率となる組み合わせを順次繰り返し設定されていることを特徴としている。
更に、請求項5の発明は、前記時間間隔が、前記多数の連結・係合部材のうち、第1の連結・係合部材が前記プーリ壁面に係合した後次の第2の連結・係合部材が前記プーリ壁面に係合するまでの時間と前記第2の連結・係合部材が前記プーリ壁面に係合した後次の第3の連結・係合部材が前記プーリ壁面に係合するまでの時間と前記第3の連結・係合部材が前記プーリ壁面に係合した後次の第4の連結・係合部材が前記プーリ壁面に係合するまでの時間との比が、ベルトの回転速度が一定の場合に2/3:1:4/3の比率となる組み合わせを順次繰り返し設定されていることを特徴としている。
更に、請求項6の発明は、前記時間間隔が、前記2つのプーリ間のトルク伝達比が1.0より大きいトルク伝達比において前記時間間隔の比率となるように設定されていることを特徴としている。
このように構成された本発明のチェーンベルトによれば、連結・係合部材がプーリ壁面に順次係合する時間間隔を、先に連結・係合部材がプーリ壁面に係合した際に発生する振動が、後続する連結・係合部材がプーリ壁面に係合した際に発生する振動で打ち消すように設定しているので、連結・係合部材がプーリに接触するタイミングをずらすことができる。このようにタイミングをずらすことで、先に発生した振動と後で発生した振動との振動波の合成により振動が打ち消されるので、プーリやベルトの振動を効果的に抑制でき、振動による騒音を低減することができる。
また、連結・係合部材のチェーンベルト幅方向の長さを変えることにより設定することにより、あるいは隣接する連結・係合部材間の距離(ピッチ)を変えることにより設定することで、前述の時間間隔を簡単に設定することができる。
更に、第1の連結・係合部材がプーリ壁面に係合した後次の第2の連結・係合部材がプーリ壁面に係合するまでの時間と第2の連結・係合部材がプーリ壁面に係合した後次の第3の連結・係合部材がプーリ壁面に係合するまでの時間との比を1:3/2の比率に設定することにより、あるいは第1の連結・係合部材がプーリ壁面に係合した後次の第2の連結・係合部材がプーリ壁面に係合するまでの時間と第2の連結・係合部材がプーリ壁面に係合した後次の第3の連結・係合部材がプーリ壁面に係合するまでの時間と第3の連結・係合部材がプーリ壁面に係合した後次の第4の連結・係合部材がプーリ壁面に係合するまでの時間との比を2/3:1:4/3の比率に設定することにより、前者の場合には第2の連結・係合部材によって発生された振動の位相と第3の連結・係合部材によって発生された振動の位相とが180度ずれるようになり、また、後者の場合には第2の連結・係合部材によって発生された振動の位相と第3の連結・係合部材によって発生された振動の位相と第4の連結・係合部材によって発生された振動の位相とが120度ずつずれるようになるので、これらの振動の振動波の合成によりプーリやベルトの振動を効果的に抑制でき、振動による騒音をより確実に低減することができる。
本発明のチェーンベルトを実施するための最良の形態について説明する。
本発明のチェーンベルトにおけるピッチの設定は、連結・係合部材のベルト幅方向の長さの設定によりなされることが望ましい。この設定によると、連結・係合部材を構成するピンの長さ、ブロックの幅等を微小長さだけ異ならせるだけで、所望の仮想ピッチ、つまりプーリの回転速度を一定とした場合に所望の時間間隔を設定することができる。しかもこの場合、チェーンベルトの主体となるリンクプレートを共通化した上で、所望のピッチ設定が可能となり、部品の種類数を削減することができる。
以下、図面を用いて本発明のチェーンベルトの実施例について説明する。
(第1実施例)
図1は、本発明のチェーンベルトの第1実施例を部分的に示す図であり、図2は図1における部分平面図である。
図1および図2に示すように、チェーンベルト2は、多数のリンクプレート21と、隣り合うリンクプレート21を互いに連結して無端化する多数の細長い連結・係合部材3とを備えている。各リンクプレート21は、ベルト進行方向(図1において左方向)に直交する方向(図2において上下方向)に整列された所定枚数(図示例では5枚)のリンクプレート21からなる第1プレート組と、この第1プレート組のリンクプレート21の間に介在するように設けられた第1プレート組の枚数より1枚少ない枚数(図示例では4枚)のリンクプレート21からなる第2プレート組とにまとめられて設けられている。
そして、第1プレート組のリンクプレート21と第2プレート組のリンクプレート21とがベルト進行方向に順に交互に配置されている。その場合、第1プレート組みの各リンクプレート21のベルト進行方向後端部とこの第1プレート組にベルト進行方向上流側に隣接する第2プレート組の各リンクプレート21のベルト進行方向前端部とが、ベルト進行方向と直交方向に重ね合わされているとともに、第2プレート組の各リンクプレート21のベルト進行方向後端部とこの第2プレート組にベルト進行方向上流側に隣接する第1プレート組の各リンクプレート21のベルト進行方向前端部とが、同様に重ね合わされている。
第1プレート組の各リンクプレート21と第2プレート組の各リンクプレート21との重合部に形成されるそれぞれの孔に、連結・係合部材3がベルト進行方向と直交方向に貫通されることで、チェーンベルト2が無端状に連結されて構成される。このチェーンベルト2は、例えば互いに間隔を置いて配設された一対のプーリに掛け渡されて、一方のプーリ(プライマリプーリ)から他方のプーリ(セカンダリプーリ)へトルクを伝達するようになっている。
一対のプライマリプーリおよびセカンダリプーリは同じ構成のプーリからなっている。図3に示すように、このプーリ1は、プーリ回転軸10にこの回転軸10と相対回転不能(一体回転可能)にかつプーリ回転軸10の軸方向に相対移動不能に設けられた固定プーリ11と、プーリ回転軸10にこの回転軸10と相対回転可能にかつプーリ回転軸10の軸方向に相対移動可能に設けられた可動プーリ12とから構成されている。そして、固定プーリ11および可動プーリ12はそれぞれ円錐面からなるプーリ壁11a,12aを有しており、これらのプーリ壁11a,12aは互いに対向して配置されている。
各連結・係合部材3は対向するプーリ壁11a,12a間に、プーリ1へのチェーンベルト2の巻き込みにより順次挟み込まれることで、プーリ1とチェーンベルト2との間でトルクを伝達するようにされている。
そして、連結・係合部材3はこれがプーリ1に順次挟み込まれるときの衝撃により、このプーリ1の回転に対して一定周期の振動を生じさせる第1群の連結・係合部材部材3Aと、第1群の連結・係合部材部材3Aによる一定周期の振動を打ち消すべく同じ周期で位相がずれた振動を生じさせる第2群の連結・係合部材部材3Bとから構成されている。
第1群の連結・係合部材部材3Aは、相互に転動可能でかつ互いに等しいベルト幅方向の長さ(以下、ピン長)W1を有し一対のピン31a,32aで構成されており、これらのピン31a,32aはそれぞれリンクプレート21に相対回転不能に係合されている。同様に、第2群の連結・係合部材部材3Bは、相互に転動可能でかつピン長W1より若干小さく互いに等しいピン長W2を有しかつ一対のピン31b,32bで構成されており、これらのピン31b,32bもそれぞれリンクプレート21に相対回転不能に係合されている。
そして、この第1実施例では、第1群の一対のピン31a,32aの長さW1と第2群の一対のピン31b,32bの長さW2とを異ならせることで、ピッチの設定を行っている。以下にこのピッチの設定について説明する。
この第1実施例のように、ピン31a,32a;31b,32bの長さを異ならせて得られるプーリ1への係合タイミングにより所望の位相差を得ようとする場合、ピン3の長さが同じである通常のピッチの概念の適用は不可能である。そこで、本発明では、仮想ピッチの概念を用いている。したがって、第1実施例の具体的説明に先立ち、仮想ピッチについて説明する。
本発明における仮想ピッチは、任意の第1のピンがプーリに接触してから次の第2のピンがプーリに接触するまでに、この第1のピンが移動する直線距離として定義される。もともとピッチを複数備えて同一周波数の振動が生じるのを避けるという複数のピッチ長さを有するチェーンベルトに対して、ピンの長さを複数持たせることで同一の効果を得る技術を比較する場合に、ピッチ長さの差異の程度を比較するために、仮想ピッチという概念を導入したものである。
この第1実施例では、この仮想ピッチという概念を、振動周波数の位相をずらすための指標として用いる。互いに打ち消し合う振動を生ぜしめるために、1つの方法として、仮想ピッチがLと1.5Lを有するようにする。1.5Lの仮想ピッチは、プーリの一定回転速度の場合Lの仮想ピッチで生じる基の振動に対して、ピンがプーリに接触する時間間隔が1.5倍、すなわち基の振動に対して位相を180度ずらす効果を得ることができる。また、他の方法として、仮想ピッチ(2/3)L、L、(4/3)Lを有するようにチェーンベルトを構成すると、(2/3)Lの仮想ピッチで生じる基の振動に対して、次のピンがプーリに接触する時間間隔が1.5倍、更に次のピンがプーリに接触する時間間隔が2倍となり、その結果、基の振動に対して位相を120度ずつずらした振動を生成することができる。
このように180度位相のずれた2つの振動、あるいは120度ずつ位相のずれた3つの振動は合成すると互いに打ち消し合うので、プーリとベルトの振動が抑制され、その結果、ノイズを低減することができる。しかも、発明者らの実験によると、互いに打ち消し合う振動を意図的に生じさせると、高次の振動成分によるノイズも低減できることが判明した。
異なる長さのピンは、プーリに挟み込まれる位置が異なる。長いピン(以下、ロングピンという;長さの等しい一対のピン31a,32aからなる連結・係合部材と構成する)は、短いピン(以下、ショートピンという;長さの等しい一対のピン31b,32bからなる連結・係合部材と構成する)よりプーリの大きい半径位置において接触する。また、ピンとピンはピッチ長さLとなるようにリンクプレート孔に嵌挿されているので、ピンがプーリに挟み込まれるプーリ周方向の位置は、その一つ前にプーリに挟み込まれたピンがロングピンでであるかショートピンであるかによっても変わってくる。
例えば、図4(a)に示すように、先にロングピンL31が挟み込まれ、次にロングピンL32が挟み込まれる場合は、両ロングピンL31,32とも大きなピッチ円半径R1の位置でプーリ壁面に係合する位置関係となり、また、図4(b)に示すように、先にロングピンL31が挟み込まれ、次にショートピンS32が挟み込まれる場合は、先のロングピンL31は大きなピッチ円半径R1の位置でプーリ壁面に係合し、後のショートピンS32は小さなピッチ円半径R2の位置でプーリ壁面に係する位置関係となり、更に、図4(c)に示すように、先にショートピンSが挟み込まれ、次にショートピンSが挟み込まれる場合は、両ショートピンSとも小さなピッチ円半径R2の位置でプーリ壁面に係合する位置関係となり、更に、図4(b)に示すように、先にショートピンSが挟み込まれ、次にロングピンLが挟み込まれる場合は、先のショートピンSは小さなピッチ円半径R2の位置でプーリ壁面に係合し、後のロングピンLは大きなピッチ円半径R1の位置でプーリ壁面に係する位置関係となる。なお、図4において、ピンを○で示すとともにピンの長短をこの○の中にそれぞれL、Sを記入して示す。また、符号31は先にプーリに挟み込まれるピンを示し、符号32は後にプーリに挟み込まれるピンを示す。更に、円弧状の矢印はプーリの回転方向を表す。
そして、仮想ピッチは、そのピンに対する前後のピンがロングピンであるか、ショートピンであるかによっても異なる。
図5(a)ないし(c)に示すように、例えばロングピンL3a、ショートピンS3b、ロングピンL3cの順にプーリに係合する場合を考える。図4に示す場合と同様に、ロングピンLがプーリに係合する位置の半径をR1とし、ショートピンSがプーリに係合する位置の半径をR2とする。また、隣接するピン間の実際のピッチをLとする。
まず、ロングピンL3aが図5(a)に示す半径R1の位置でプーリに係合し、次に、ショートピンS3bが図5(b)に示す半径R2の位置でプーリに係合する。このとき、ショートピンS3bの係合位置とプーリ中心とを結ぶ直線が、チェーンベルトのプーリへの進入方向に対して直交方向でかつプーリの中心を通る直線Pとなす角度(以下、ショートピンS3bが直線Pとなす角度と称する。他も同様である)をθ″とする。更に、次のロングピンL3cが図5(c)に示す半径R1の位置でプーリに係合する。
このとき、ショートピンS3bは図5(c)に実線で示す位置となっており、この位置は、直線Pに関してショートピンS3bがプーリに係合した図5(b)に示す位置と線対称の位置となっている。したがって、このときのショートピンS3bが直線Pとなす角度もθ″となる。そして、ショートピンS3bがプーリへの係合状態で図5(b)に示す位置から図5(c)に示す位置まで直線距離が、仮想ピッチと定義される。この仮想ピッチは、
Figure 2006105355
で表される。
また、図6(a)ないし(c)に示すように、他の例としてショートピンS3a、ショートピンS3b、ロングピンL3cの順にプーリに係合する場合を考える。この場合には、まず、ショートピンS3aが図6(a)に示す半径R2の位置でプーリに係合し、次に、ショートピンS3bが図6(b)に示す同じ半径R2の位置でプーリに係合する。このときのショートピンS3bが直線Pとなす角度(前述の角度θ″に相当する角度)は、図6(b)にθで表されている。この角度θは、ショートピンS3bの前がショートピンS3aであることから、前述のようなショートピンS3bの前がロングピンL3aである場合の角度θ″より大きくなる。
更に、次のロングピンL3cが図6(c)に示す半径R1の位置でプーリに係合する。このとき、ショートピンS3bがプーリに係合してからのショートピンS3bの移動距離は直線距離で示すと図6(c)に示す仮想ピッチで示される距離となる。この仮想ピッチは、
Figure 2006105355
で表される。このように3つのピンの長さの組合せにより3つのピンのうち中央のピンの仮想ピッチが決定されている。
更に、図7に示すように、更に他の例としてロングピンL3a、ロングピンL3b、ロングピンL3cの順にプーリに係合する場合を考える。この場合には、3つの各ロングピンL3a,3b,3cは、いずれも図7に示す半径R1の位置でプーリに係合する。そして、中央のピンロングピン3bは、図7に示すロングピンL3cが記載されている位置でプーリに係合する。このときのロングピンL3bが直線Pとなす角度(前述の角度θ″またはθに相当する角度)は、図7にθ′′′で表されている。その後、ロングピンL3bはプーリの回転に伴って移動し、図7に示すようにロングピンL3cがプーリに係合したときは図7に示す位置となる。中央のロングピンL3bのこの位置は、線pに関し、ロングピンL3bがプーリに係合した位置(図7にロングピンL3cが記載されている位置)と線対称の位置となっている。
以上のことを鑑みると、結局、連続する3つのピンの長さの組合せと中央のピンの仮想ピッチとは、次のようになる。
(1)ロング(L)−ロング(L)−ショート(S)の組合せ
Figure 2006105355
(2)ロング(L)−ロング(L)−ロング(L)の組合せ
Figure 2006105355
(3)ショート(S)−ロング(L)−ロング(L)の組合せ
Figure 2006105355
(4)ショート(S)−ロング(L)−ショート(S)の組合せ
Figure 2006105355
(5)ショート(S)−ショート(S)−ロング(L)の組合せ
Figure 2006105355
(6)ショート(S)−ショート(S)−ショート(S)の組合せ
Figure 2006105355
(7)ロング(L)−ショート(S)−ロング(L)の組合せ
Figure 2006105355
(8)ロング(L)−ショート(S)−ショート(S)の組合せ
Figure 2006105355
これらの式3ないし10から明らかなように、連続する3つのピンの長さの組合せ(1)ないし(8)において、(1)の組合せと(3)の組合せとが同一であり、また、(2)の組合せと(6)の組合せとが同一であり、(5)の組合せと(8)の組合せとが同一である。したがって、チェーンベルトに用いる連結・係合部材として2種類の異なった長さを有するピンを使用することで、5種類の仮想ピッチ幅、つまりプーリの回転速度が一定の場合5種類の時間間隔を実現することができる。
なお、この仮想ピッチの考え方は、前述の図5ないし図7では、一対のピン31a,32a;31b,32bからなる1つの連結・係合部材3を用いるものとして説明しているが、1つのピンからなる1つの連結・係合部材3を用いた場合あるいは一対のピンの間に設けられてプーリに接触する係合部材としてのブロック部材を有する連結・係合部材3を用いた場合にも適用することができる。
また、前述の各式において、θ、θ′、θ″、θ′′′、R1、R2、およびリンクピッチLとの間には次の関係が成り立つ。
Figure 2006105355
Figure 2006105355
Figure 2006105355
Figure 2006105355
Figure 2006105355
Figure 2006105355
そして、前述の5種類の仮想ピッチのうちいずれか2種類を、例えばLと1.5Lの関係となるように、あるいは、前述の5種類の仮想ピッチのうちいずれか3種類を、(2/3)LとLと(4/3)Lとの関係となるようにピンの長さを設定することで、プーリの回転速度が一定の場合に時間間隔が基の時間間隔とこの基の時間間隔の1.5倍の時間間隔との2種類の時間間隔、あるいは、プーリの回転速度が一定の場合に時間間隔が基の時間間隔とこの基の時間間隔の1.5倍の時間間隔とこの基の時間間隔の2倍の時間間隔との3種類の時間間隔を設定可能とする本発明のチェーンベルトを実現することができる。
なお、ロングピン(L)とショートピン(S)の長さの差をε、プーリ角(図3に示すように、プーリの円錐面がプーリ軸に垂直な面に対してなす角)をθpとすると、ロングピン(L)がプーリに接触する半径R1とショートピン(S)がプーリに接触する半径R2との関係は、式
Figure 2006105355
で表される。したがって、プーリ角θp、ベルトピッチL、仮想ピッチを所望のプーリ比に対応する半径が決まれば、所望の仮想ピッチを実現するピンの長さの差を決定することができる。
次に、このピンの長さの差の具体例について説明する。ピンの長さを2種類とした場合の5種類の仮想ピッチを、今、符号L1、L2、L3、L4、L5で表す。前提条件として、ピンの長さ(幅)をW1、W2とし、ピンの長さの差εをε=W1−W2とし、チェーンベルトの基本ピッチLをL=8.0mmとする。また、ピンの長さW1のピンがプライマリプーリに噛み込むときの半径Rpを、変速比がアンダードライブU/D(最小変速比)である時にRp=30mm、変速比が1.0である時にRp=50mm、変速比がオーバドライブO/D(最大変速比)である時にRp=70mmとし、プーリ角θpを、θp=10度とした無段変速を仮定する。
(1)L1:L3:L5を2/3:1:4/3(120度相当)付近とするケース
(a)変速比がU/D〜O/D内のいずれかでL1、L3、L5を120度相当とする場合、ピンの長さの差εが53μm〜126μmで位相120度が得られる。そして、
ε=53μmのとき、変速比がO/D(Rp=70mm)で、L1:L3:L5が約5.3:8.0:10.7、
ε=126μmのとき、変速比がU/D(Rp=30mm)で、L1:L3:L5が約5.3:8.0:10.7
となり、それぞれ120度位相相当となる。すなわち、εをこの範囲で設定すればよい。
(b)変速比が1.0でL1、L3、L5を120度相当とする場合、ピンの長さの差εは75μmに設定すればよい。
ε=75μmのとき、変速比が1.0(Rp=50mm)で、L1:L3:L5が約5.3:8.0:10.7
となり、それぞれ120度位相相当となる。すなわち、εをこの範囲で設定すればよい。
(c)変速比が1.0〜O/D内のいずれかでL1、L3、L5を120度相当とする場合、ピンの長さの差εが53μm〜75μmで位相120度が得られる。そして、
ε=53μmのとき、変速比がO/D(Rp=70mm)で、L1:L3:L5が約5.3:8.0:10.7、
ε=75μmのとき、変速比が1.0(Rp=50mm)で、L1:L3:L5が約5.3:8.0:10.7
となり、それぞれ120度位相相当となる。すなわち、εをこの範囲で設定すれば、振動波の合成により互いに打ち消すことのできる時間間隔を設定することができる。いずれにしても、ノイズの最も大きくなる変速比周辺で所望の位相を設定することが好ましい。
(2)L2:L3:L4を2/3:1:4/3(120度相当)付近とするケース
(a)変速比がU/D〜O/D内のいずれかでL2、L3、L4を120度相当とする場合、ピンの長さの差εは107μm〜255μmに設定される。そして、
ε=107μmのとき、変速比がO/D(Rp=70mm)で、L2:L3:L4が約5.3:8.0:10.7、
ε=255μmのとき、変速比がU/D(Rp=30mm)で、L2:L3:L4が約5.3:8.0:10.7
となり、それぞれ120度位相相当となる。
(b)変速比が1.0でL2、L3、L4を120度相当とする場合、ピンの長さの差εは151に設定すればよい。
ε=151μmのとき、変速比が1.0(Rp=50mm)で、L2:L3:L4が約5.3:8.0:10.7
となり、それぞれ120度位相相当となる。
(c)変速比が1.0〜O/D内のいずれかでL2、L3、L4を120度相当とする場合、ピンの長さの差εが107μm〜151μmで位相120度が得られる。そして、
ε=107μmのとき、変速比がO/D(Rp=70mm)で、L2:L3:L4が約5.3:8.0:10.7、
ε=151μmのとき、変速比が1.0(Rp=50mm)で、L2:L3:L4が約5.3:8.0:10.7
となり、それぞれ120度位相相当となる。すなわち、εをこの範囲で設定すれば、同様に、振動波の合成により互いに打ち消すことのできる時間間隔を設定することができる。
(3)L1:5を1:3/2(180度相当)付近とするケース
(a)変速比がU/D〜O/D内のいずれかでL1、L5を180度相当とする場合、ピンの長さの差εが32μm〜75μmで位相180度が得られる。そして、
ε=32μmのとき、変速比がO/D(Rp=70mm)で、L1:L5が約6.4:9.6、
ε=75μmのとき、変速比がU/D(Rp=30mm)で、L1:L5が約6.4:9.6
となり、それぞれ180度位相相当となる。すなわち、εをこの範囲で設定すれば、振動波の合成により互いに打ち消すことのできる時間間隔を設定することができる。
(b)変速比が1.0でL1、L5を180度相当とする場合、ピンの長さの差εは45μmに設定すればよい。
ε=45μmのとき、変速比が1.0(Rp=50mm)で、L1:L5が約6.4:9.6
となり、それぞれ180度位相相当となる。
(c)変速比がU/D〜1.0内のいずれかでL1、L5を180度相当とする場合、ピンの長さの差εが32μm〜45μmで位相180度が得られる。そして、
ε=32μmのとき、変速比がU/D(Rp=30mm)で、L1:L5が約6.4:9.6、
ε=45μmのとき、変速比が1.0(Rp=50mm)で、L1:L5が約6.4:9.6
となり、それぞれ180度位相相当となる。すなわち、εをこの範囲で設定すれば、振動波の合成により互いに打ち消すことのできる時間間隔を設定することができる。
以上説明した第1実施例によれば、リンクプレートを連結しかつプーリに係合する連結・係合部材としてのピンのピン長を2種類設定することで、プーリの回転速度が一定である場合、ピンがプーリに係合する時間間隔を2種類設定することができ、基となる振動波形に対して逆相の振動波形を合成することができ、プーリとベルトの振動を抑制することができる。したがって、これらの振動による騒音を低減することができる。
(第2実施例)
前述の実施例では、ピンのピン長を2種類としたが、これを3種類以上とすることもできる。この第2実施例は、ピンのピン長を3種類に設定した例である。
この3種類の場合にも、前述の2種類の場合と同様の計算により、ピンのピン長を求めることができる。ここで、図8に示すように長さx−y−zのピン(それぞれ、ピンx、ピンy、ピンzと称する)が順に並んでいる場合を考える。その場合、ピンの長さは短い方から順にピンy、ピンx、ピンzとし、これらのピンのプーリ係合時のピッチ円半径をそれぞれ、Rx、Ry、Rzとする。これらのピッチ円半径は、ピンの長さの関係から、それぞれ、Ry<Rx<Rzとなる。また、隣接するピン間の距離(つまり、ピッチ)をLとする。
今、図8にPyで示す位置でピンyがプーリに係合する場合、ピンxは図8に示す半径Rx上のPxの位置で既にプーリに係合しており、またピンzは図8に示すPzの位置にあってまだプーリに係合していない。このとき、図5に示すと同様にピンxが直線Pとなす角度をθxyとし、またピンyが直線Pとなす角度をθyxとする。ピンyがプーリに噛み込まれてプーリと一体で回転していくと、ピンzがプーリに次第に近づく。そして、ピンzが図8に示すPz′の位置でプーリに噛み込まれて係合する。このとき、ピンyは図8に示す半径Ry上のPy′の位置に到達している。このときのピンyが直線Pとなす角度を、θyzとする。
今、ピッチ円半径Rでプーリに係合する基準ピンを考える。この基準ピンに対するピンxのピンの長さの減少量をεxとすると、
Figure 2006105355
であり、同様に
Figure 2006105355
Figure 2006105355
である。次に、θxyは2種類の場合と同様に、ピン間ピッチをLとして、
Figure 2006105355
であり、また、
Figure 2006105355
Figure 2006105355
である、以上より、
Figure 2006105355
となり、この式よりピッチを計算することができる。
この第2実施例によれば、連結・係合部材であるピンのピン長を3種類設定することで、プーリの回転速度が一定である場合、ピンがプーリに係合する時間間隔を3種類設定することができ、基となる振動波形に対して120度ずつ位相のずれた振動波形を合成することができ、プーリとベルトの振動を抑制することができる。したがって、これらの振動による騒音を低減することができる。
(第3実施例)
前述の2つの第1および第2実施例では、いずれもピンの長さにより仮想ピッチを設定することで前述の時間間隔を設定しているが、ピンの長さは同じであるが実際のピッチ(連結・係合部材の長さ)Lを所定の長さ比で複数設定することで前述の時間間隔を複数設定して、前述の各実施例と同等に基準となる振動を打ち消すような波形を合成することが可能である。この第3実施例は、本発明の思想に基づき、このような実際のピッチを設定している。
まず、リンクプレートの長さ(以下、リンク長という)がロングリンクと標準リンク(ロングリンクより短い)との2種類である場合、連続する2つのリンクプレートの組合せとして、
(1)ロングリンク→ロングリンク
(2)標準リンク→ロングリンク
(3)ロングリンク→標準リンク
(4)標準リンク→標準リンク
が考えられる。
図9に示すように、標準リンクの両端を連結するピン(連結・係合部材)をP0およびP1とし、またロングリンクの両端を連結するピン(連結・係合部材)をP′0およびP′1とする。これらのピンP0,P1,P′0,P′1は、いずれもピッチ円半径Rの位置でプーリと係合する。また、標準リンクのピッチP0−P1をLとし、ロングリンクのピッチP′0−P′1をL′とする。
ここで、図10(a)に示すように、例えば連続する2つのリンクプレートが標準リンク→ロングリンクである場合を想定する。このとき、標準リンクの前端の連結ピン(連結・係合部材)を3aとし、標準リンクとロングリンクとの連結ピン(連結・係合部材)を3bとし、ロングリンクの後端の連結ピン(連結・係合部材)を3cとする。中央のピン3bはプーリと図10(a)に示す3bの位置で係合し、その後次のロングピンの後端のピン3cが図10(a)に示す3c′の位置で係合するまでに図10(a)に示す3b′の位置まで移動する。すなわち、ピン3bは図10(a)に直線矢印で示す直線距離だけ移動することになる。図9においてピンP1(図10(a)におけるピン3bに相当)が直線Pとなす角度をθとしかつピンP′0(図10(a)におけるピン3b′に相当)が直線Pとなす角度をθ′とすると、このときのピン3bのプーリ中心とした回転角はθ+θ′であり、ピン3bの直線移動距離はP′0−P1(図10(a)において、3b′−3b)である。
また、連続する2つのリンクプレートがロングリンク→標準リンクである場合は、ピン3bは図10(b)に示す3bから3b′を結ぶ直線矢印で示す直線距離だけ移動することになる。図9においてピンP′1(図10(b)におけるピン3bに相当)が直線Pとなす角度をθ′としかつピンP0(図10(b)におけるピン3b′に相当)が直線Pとなす角度をθとすると、このときのピン3bのプーリ中心とした回転角はθ′+θであり、ピン3bの直線移動距離はP0−P′1(図10(b)において、3b′−3b)である。
以上のことを整理すると、異なる2種類のリンク長のリンクプレートの場合、連続する2つのリンクプレートの組合せにおけるピッチは、
(1)ロングリンク→ロングリンクの場合
Figure 2006105355
(2)標準リンク→ロングリンクの場合
Figure 2006105355
(3)ロングリンク→標準リンクの場合
Figure 2006105355
(4)標準リンク→標準リンクの場合
Figure 2006105355
となる。
この場合、(2)標準リンク→ロングリンクの場合と(3)ロングリンク→標準リンクの場合のピッチは同等となる。したがって、リンク長が2種類である場合は、3種類のピッチの組合せとなる。
次に、リンク長が第1ロングリンクと第2ロングリンク(第1ロングリンクより長い)と標準リンク(第1ロングリンクより短い)との3種類である場合、連続する2つのリンクプレートの組合せとして、
(1)第1ロングリンク→第1ロングリンク
(2)標準リンク→第1ロングリンク
(3)第1ロングリンク→標準リンク
(4)標準リンク→標準リンク
(5)第1ロングリンク→第2ロングリンク
(6)標準リンク→第2ロングリンク
(7)第2ロングリンク→第1ロングリンク
(8)第2ロングリンク→標準リンク
(9)第2ロングリンク→第2ロングリンク
が考えられる。
図9に示すように、標準リンクの両端を連結するピン(連結・係合部材)をP0およびP1とし、またロングリンクの両端を連結するピン(連結・係合部材)をP′0およびP′1とする。これらのピンP0,P1,P′0,P′1は、いずれもピッチ円半径Rの位置でプーリと係合する。また、標準リンクのピッチP0−P1をLとし、ロングリンクのピッチP′0−P′1をL′とする。
ここで、前述のリンク長が2種類の場合と同様に、図11に示すような寸法および角度の関係、すなわち標準リンクのリンクピッチP0−P1をL(回転角θ=asin(L/2R)とし、また第1リンクのリンクピッチP′0−P′1をL′(回転角θ′=asin(L′/2R)とし、更に第2リンクのリンクピッチP″0−P″1をL″(回転角θ″=asin(L″/2R)とすると、異なる3種類のリンク長の場合、連続する2つのリンクプレートの組合せにおけるピッチは、
(1)第1ロングリンク→第1ロングリンクの場合
Figure 2006105355
(2)標準リンク→第1ロングリンクの場合と第1ロングリンク→標準リンクの場合、
Figure 2006105355
(3)標準リンク→標準リンクの場合
Figure 2006105355
(4)標準リンク→第2ロングリンクの場合と第2ロングリンク→標準リンクの場合、
Figure 2006105355
(5)第1ロングリンク→第2ロングリンクの場合と第2ロングリンク→第1ロングリンクの場合、
Figure 2006105355
(6)第2ロングリンク→第2ロングリンクの場合
Figure 2006105355
となり、リンクプ長が3種類である場合は、6種類のピッチの組合せとなる。
以上の仮想ピッチの種類に対して所望の位相差を有するようにピン間隔(実際のピッチ)を得るため、リンク長の長さ比を、例えば以下の通りに決定する。
(1)図12(a)に示すようなリンク長(ピッチ長さ)L1=L、L2=1.5Lである2種類のピッチ
このときの係合ピッチ(ピンがプーリに係合するピッチ)は、L、xL(x≒1.25)、1.5Lとなり、ピッチLとピッチ1.5Lが180度相当となり、ノイズ低減効果が高い。なお、ピッチLとピッチ1.5Lは実際のピッチであり、xLは仮想ピッチである。
(2)図12(b)に示すようなリンク長(ピッチ長さ)L1=L、L2=2Lである2種類のピッチ
このときの係合ピッチは、L、xL(x≒1.5)、2Lとなり、比が2/3:1:4/3の120度相当となり、ノイズ低減効果が高い。
(3)図12(c)に示すようなリンク長(ピッチ長さ)L1=L、L2=1.5L、L3=2Lである3種類のピッチ
このときの係合ピッチは、L、xL(x≒1.25)、yL(y≒1.75)、2Lとなり、5ピッチ中3ピッチの位相が120度相当となり、ノイズ低減効果が高い。
(4)その他120度相当、180度相当となる係合ピッチが存在するリンクランダム
この第3実施例のピッチ比による前述の時間間隔を設定することによっても、前述の第1および第2実施例と同様の効果を得ることができる。
なお、前述の第1および第2実施例は、ピン長を所定の比で設定してピンがプーリに接触する周期の振動を打ち消すような位相のずれた振動を生じさせるように構成することにより、また第3実施例は実際のピッチを所定のピッチ比で構成することにより、前述の時間間隔を設定して、それぞれ前述の効果を得るようにしているが、ピン長とピッチ比を適宜組み合わせることによって前述の時間間隔を設定して、同様の効果を得ることも可能である。
本発明のチェーンベルトは、自動車等の車両用ベルト式無段変速機を始め、2つのプーリ間に掛け渡されて、一方のプーリからトルクを他方のプーリに伝達するような動力伝達装置を備えた機械に好適に利用することができる。
本発明のチェーンベルトの第1実施例を部分的に示す図である。 図1における部分平面図である。 第1実施例のチェーンベルトが掛け渡されるプーリを示す断面図である。 チェーンベルトとプーリとの係合の種類を示す説明図である。 チェーンベルトとプーリとの係合作動の一例を示す説明図である。 チェーンベルトとプーリとの係合作動の他の例を示す説明図である。 チェーンベルトとプーリとの係合作動における角度関係を示す説明図である。 本発明のチェーンベルトの第2実施例を示すとともに、このチェーンベルトとプーリとの係合作動の各部寸法と角度関係を示す説明図である。 本発明のチェーンベルトの第3実施例を示すとともに、このチェーンベルトにおける2種類のピンのプーリとの係合作動の各部寸法と角度関係を示す説明図である。 第3実施例の係合作動の角度関係を場合分けして示す説明図である。 第3実施例に係る3種類のピンのプーリとの係合作動の各部寸法と角度関係を示す説明図である。 第3実施例に係るチェーンベルトのピッチ配置例を示す説明図である。
符号の説明
11…固定プーリ
11a…プーリ壁
12…可動プーリ
12a…プーリ壁
2…チェーンベルト、
21…リンクプレート
3…連結・係合部材
3A…第1群の連結・係合部材部材
31a,32a…ピン
3B…第2群の連結・係合部材部材
31b,32b…ピン
3a,3b,3c…ピン

Claims (6)

  1. 多数の環状のリンクプレートと、隣接するリンクプレートを互いに連結して無端化する多数の連結・係合部材とからなり、2つのプーリに巻き掛けられたとき、前記多数の連結・係合部材の両端が前記2つのプーリの各プーリ壁面にそれぞれ順次係合して、一方のプーリから力が伝達されるとともに該力を他方のプーリに伝達させることで、前記プーリ間でトルクを伝達させるチェーンベルトにおいて、
    前記連結・係合部材が前記プーリ壁面に順次係合する時間間隔が、先に連結・係合部材が前記プーリ壁面に係合した際に発生する振動を後続する連結・係合部材が前記プーリ壁面に係合した際に発生する振動で打ち消すように設定されていることを特徴とするチェーンベルト。
  2. 前記時間間隔は、チェーンベルトの幅方向の前記連結・係合部材の長さを変えることにより設定されていることを特徴とする請求項1記載のチェーンベルト。
  3. 前記時間間隔は、前記多数の連結・係合部材における隣接する連結・係合部材間の距離(ピッチ)を変えることにより設定されていることを特徴とする請求項1記載のチェーンベルト。
  4. 前記時間間隔は、前記多数の連結・係合部材のうち、第1の連結・係合部材が前記プーリ壁面に係合した後次の第2の連結・係合部材が前記プーリ壁面に係合するまでの時間と前記第2の連結・係合部材が前記プーリ壁面に係合した後次の第3の連結・係合部材が前記プーリ壁面に係合するまでの時間との比が、ベルトの回転速度が一定の場合に1:3/2の比率となる組み合わせを順次繰り返し設定されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1記載のチェーンベルト。
  5. 前記時間間隔は、前記多数の連結・係合部材のうち、第1の連結・係合部材が前記プーリ壁面に係合した後次の第2の連結・係合部材が前記プーリ壁面に係合するまでの時間と前記第2の連結・係合部材が前記プーリ壁面に係合した後次の第3の連結・係合部材が前記プーリ壁面に係合するまでの時間と前記第3の連結・係合部材が前記プーリ壁面に係合した後次の第4の連結・係合部材が前記プーリ壁面に係合するまでの時間との比が、ベルトの回転速度が一定の場合に2/3:1:4/3の比率となる組み合わせを順次繰り返し設定されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1記載のチェーンベルト。
  6. 前記時間間隔は、前記2つのプーリ間のトルク伝達比が1.0より大きいトルク伝達比において前記時間間隔の比率となるように設定されていることを特徴とする請求項4または5記載のチェーンベルト。
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