JP2006104539A - 切削性に優れた同軸コネクタ用銅合金およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】強度、導電性、耐応力緩和特性に加え、鉛やベリリウムによる人体や環境への悪影響がない上に、切削性に優れる銅合金を提供する。
【解決手段】Niを1.0〜4.5質量%、Siを0.2〜1.1質量%、残部がCu及び不可避的不純物からなる銅合金であって、大きさが0.2μm以上のNi−Si金属間化合物の個数が、103個/mm2以上であることを特徴とする切削性に優れた同軸コネクタ用銅合金。
【選択図】なし

Description

本発明は、電子機器部品の高強度高導電合金棒材、特に同軸コネクタ中心コンタクトピン、同軸コネクタ外部導体用などとして好適な銅合金に関する。
同軸コネクタとは、電気信号を伝達するケーブルの端部にある接続器具の一種であり、放送機器、音響機器等に用いられる。前記同軸コネクタは中心の金属接点を介して、オス端子メス端子が電気的に接続される。端子の中心には、自動車用途や電気機器用と同様、接続を維持するため強度、導電性、耐応力緩和性が求められる。しかし、それら自動車用途等の他の用途と異なるのは、直径1〜5mm程度の棒を切削加工して製造されることである。
切削性を要求される銅合金には、主として低融点金属である鉛を添加した材料が使用されており、代表的には快削黄銅(JIS C3601B)や快削リン青銅(JIS C5441B)などがある。また、特に強度やばね性を要求される用途には、ベリリウム銅に鉛を添加した快削ベリリウム銅があり、特に強度と導電性が求められる場合にはもっぱら快削ベリリウム銅が用いられている。
鉛は人体や環境に悪影響を及ぼす有害元素として使用が制限される傾向にある。また、ベリリウムも環境に悪影響を与える有害元素の一つとして挙げられている。このため鉛やベリリウムを含まずに、切削性と強度、導電性を有する銅合金材料が求められている。
強度、導電性、耐応力緩和特性にすぐれ、コネクタ用途に適した銅合金の例がある(例えば、特許文献1、2参照)。水質悪化を招く鉛を含有させずとも優れた被削性を有する、水栓金具や接水栓等に用いる鋳物用無鉛銅合金の例がある(例えば、特許文献3参照)。
しかし、同軸コネクタは直径3mm程度の棒状であり、かつ同軸コネクタには切削性が求められるが、従来の金属条では対応できなかった。さらに、600MPa以上の高強度が求められ、さらに耐応力緩和特性を求められるため、水栓金具用銅合金では対応できなかった。
特開2002−38228号公報 特開2002−180161号公報 特開2003−147460号公報
本発明は、上記のような問題点を解消するため、強度、導電性、耐応力緩和特性に加え、鉛やベリリウムによる人体や環境への悪影響がない上に、切削性に優れる銅合金を提供することを目的とする。
本発明の上述の目的は以下の手段によって達成された。すなわち本発明は、
(1)Niを1.0〜4.5質量%、Siを0.2〜1.1質量%、残部がCu及び不可避的不純物からなる銅合金であって、大きさが0.2μm以上のNi−Si金属間化合物の個数が、103個/mm2以上であることを特徴とする切削性に優れた同軸コネクタ用銅合金、
(2)Niを1.0〜4.5質量%、Siを0.2〜2質量%、Mnを0を超え2質量%以下、残部がCu及び不可避的不純物からなる銅合金であって、大きさが0.2μm以上のNi−Si金属間化合物と大きさが0.2μm以上のMn−Si金属間化合物の個数が合計で103個/mm2以上であることを特徴とする切削性に優れた同軸コネクタ用銅合金、
(3)前記(1)または(2)項記載の銅合金において、さらに0を超え1.5質量%以下のSn、0を超え1.5質量%以下のZnのいずれかまたは両方を含有することを特徴とする切削性に優れた同軸コネクタ用銅合金、
(4)前記(1)乃至(3)いずれか1項記載の銅合金において、さらに0を超え0.3質量%以下のAg、0を超え0.2質量%以下のMg、0を超え0.5質量%以下のFe、0を超え0.5質量%以下のCr、0を超え2質量%以下のCo、0を超え0.1質量%以下のP、0を超え0.2質量%以下のB、0を超え2質量%以下のBiの1種または2種以上を総量で0を超え3質量%以下含有することを特徴とする切削性に優れた同軸コネクタ用銅合金、
(5)前記(1)乃至(4)項いずれか1項記載の銅合金において、導電率が20%IACS以上50%IACS以下かつ引張強度が600MPa以上1200MPa以下であることを特徴とする切削性に優れた同軸コネクタ用銅合金、
(6)前記(1)乃至(5)いずれか1項記載の銅合金の製造方法であって、銅合金を荒引きして線材としたのち、溶体化処理を施し、次いで300℃以上600℃以下で1時間以上の時効処理を施すことを特徴とする切削性に優れた同軸コネクタ用銅合金の製造方法、
(7)前記(1)乃至(5)いずれか1項記載の銅合金の製造方法であって、銅合金を荒引きして線材としたのち、溶体化処理を施し、伸線加工し、次いで300℃以上600℃以下で1時間以上の時効処理し、さらに伸線加工を施すことを特徴とする切削性に優れた同軸コネクタ用銅合金の製造方法、
(8)前記(1)乃至(5)いずれか1項記載の銅合金の製造方法であって、銅合金を荒引きして線材としたのち、溶体化処理を施し、伸線加工し、300℃以上600℃以下で1時間以上の時効処理し、次いで伸線加工を行い、さらに200℃以上500℃以下で10分以上の焼鈍処理を施すことを特徴とする切削性に優れた同軸コネクタ用銅合金の製造方法、及び
(9)前記(1)乃至(5)いずれか1項記載の銅合金の製造方法であって、銅合金を荒引きして線材としたのち、溶体化処理を施し、伸線加工し、次いで300℃以上600℃以下で1時間以上の時効処理を施すことを特徴とする切削性に優れた同軸コネクタ用銅合金の製造方法
を提供するものである。
本発明の銅合金は、強度、導電性、耐応力緩和特性に加え、鉛やベリリウムによる人体や環境への悪影響がない上に、切削性に優れる。
本発明の製造方法によれば、上述のように強度、導電性、耐応力緩和特性に加え、鉛やベリリウムによる人体や環境への悪影響がない上に、切削性に優れる銅合金を製造することができる。
まず、本発明の、電子電気機器部品に用いられる高強度高導電銅合金棒材に含有される各成分について説明する。
銅にニッケルとケイ素を添加すると、Ni−Si化合物(Ni−Si金属間化合物)が銅マトリックス中に生成され、強度および導電性が向上することが知られている。また、このNi−Si化合物が材料中に存在することによって、切削加工をした時に生じる切屑が細かく分断され易くなり、切削性が向上する。
Niを1.0〜4.5質量%に限定した理由は、Ni含有量が1.0質量%未満であると析出量が少ないため目標とする強度が得られない。逆にNi含有量が4.5質量%を超えて添加されると鋳造時や熱処理時に強度上昇に寄与しない析出が生じ、添加量に見合う強度を得ることができないばかりか、引抜き加工性、伸線加工性、曲げ加工性にも悪影響を与えることになる。好ましくは1.8〜4.0質量%、より好ましくは2.2〜3.9質量%である。
Si含有量については、析出するNiとSiの化合物(Ni−Si金属間化合物)が主にNi2Si相であると考えられるため、Mnを添加しない場合は、添加するNi量を決定すると最適なSi添加量が決まる。Siを0.2〜1.1質量%に限定した理由は、Si含有量が0.2質量%未満であるとNi含有量が少ないときと同様に充分な強度を得ることができないからである。逆にSi含有量が1.1質量%を超えるときもNi含有量が多いときと同様の問題が生じる。
また、Mnを添加する場合は、MnとSiの化合物(Mn−Si金属間化合物)が主にMn5Si3相であると考えられるため、Mn添加量によって決まるSi量を増量しておく必要があり、Siは、好ましくは0.2〜2質量%である。Siの含有量が0.2質量%未満であると、充分な強度を得ることができない。逆にSiの含有量が2質量%を超えるときも、Ni含有量が多いときと同様の問題が生じる。より好ましくは0.4〜1.0質量%、特に好ましくは0.52〜0.95質量%である。
Snは耐応力緩和特性を改善するとともに伸線加工性を改善する。Snは1.5質量%を超えて添加されると十分な導電性が得られない。好ましくは0.1〜0.35質量%、より好ましくは0.12〜0.26質量%である。
Znは曲げ加工性を改善するとともに、錫メッキや半田メッキの耐熱剥離性、耐マイグレーション特性も改善する。Znは1.5質量%を超えて添加されると十分な導電性が得られない。好ましくは0.3〜0.8質量%、より好ましくは0.45〜0.55質量%である。
Mnは強度を上昇させると同時に熱間加工性を改善する効果がある。また、SiとMn−Siの化合物を形成し、この化合物が存在することによって切削性が向上する。Mnは0を超え2質量%以下であり、Mnは2.0質量%を超えると導電性が低下する。好ましくは0.05〜1.8質量%、より好ましくは0.08〜1.5質量%である。
次に、本発明の銅合金に添加する任意成分について説明する。Ag,Mg,Fe,Cr,Co,P,B,Biの中から選ばれ、1種または2種以上を0を超え3質量%以下含有させるものである。
Agは耐熱性および強度を向上させると同時に、結晶粒の粗大化を阻止して曲げ加工性を改善する。Agを0.3質量%を超えて添加しても特性上に悪影響はないもののコスト高になる。好ましくは0.01〜0.2質量%、より好ましくは0.01〜0.1質量%である。
Mgは耐応力緩和特性を改善するが、曲げ加工性には悪影響を及ぼす。Mgが0.2質量%を超えると良好な曲げ加工性を得ることは困難である。好ましくは0.02〜0.18質量%、より好ましくは0.05〜0.15質量%である。
鉄、クロムはケイ素と結合し、それぞれ、Fe−Si化合物、Cr−Si化合物を形成し、強度を上昇させる。また、ニッケルとの化合物を形成せずに銅マトリックス中に残存するケイ素をトラップし、導電性を改善する効果がある。FeあるいはCrが0.5質量%を超えると曲げ加工性が低下するという問題が起きる。好ましくは0.05〜0.45質量%、より好ましくは0.1〜0.3質量%である。
コバルトはニッケルと同様にケイ素と化合物を形成し、強度を向上させる。コバルトはニッケルに比べて高価であるため、本発明ではCu−Ni−Si系合金を利用しているが、コスト的に許されるのであれば、Cu−Co−Si系やCu−Ni−Co−Si系を選択してもよい。Cu−Co−Si系は時効析出させた場合に、Cu−Ni−Si系より強度、導電性ともにわずかによくなる。したがって、熱・電気の伝導性を重視する部材には有効である。また。Co−Si化合物は析出硬化能が僅かに高いため、耐応力緩和特性も若干改善される傾向にある。Coを2質量%を超えて添加しても特性上に悪影響はないもののコスト高になる。好ましくは0.05〜1.8質量%、より好ましくは0.08〜1.5質量%である。
Pは強度を上昇させると同時に導電性を改善する効果を有する。0.1質量%を超えると、曲げ加工性が低下するという問題が起きる。好ましくは0.01〜0.08質量%、より好ましくは0.02〜0.05質量%である。
Bは結晶粒の粗大化を抑制し、強度上昇に寄与する効果があり、また、NiとNi−B化合物を形成し、この化合物が存在することによって、切削性が向上する。Bは0.2質量%を超えて含有しても添加量に見合った効果が得られないばかりでなく、冷間加工性が低下し、生産性が悪くなる。好ましくは0.01〜0.15質量%、より好ましくは0.02〜0.1質量%である。
Biはマトリックスに固溶せず、分散して存在し、切削加工時にチップブレーカーとして切削屑を分断し、切削性の向上に寄与する。Biは添加量が多いほど切削性は向上するが、2質量%を超えて含有しても効果が飽和するばかりでなく、冷間加工時に割れが生じるなどして生産性が悪くなる。好ましくは0.3〜1.8質量%、より好ましくは0.3〜1.5質量%である。
これらを2種以上同時に添加する場合には、求められる特性に応じて適宜決定すればよいが、耐熱性、錫メッキ耐熱剥離性、半田メッキ耐熱剥離性、導電性の観点から総量で3質量%以下とした理由は、3質量%を超えると導電性が低下するという問題が起きる。好ましくは0.01〜2.0質量%、より好ましくは0.1〜1.5質量%である。
本発明では、Sは熱間加工性を悪化させるので、その含有量を0.005質量%未満、好ましくは0.002質量%未満にするとよい。
本発明では、強度や導電性などの基本的な特性を低下させない程度に、Ti,Zr,V,Alなどを総量として0.01〜0.5質量%添加することができる。
本発明に用いられる銅合金において、以上の各成分以外の残部は、銅及び不可避的不純物である。
次に、Ni−Si金属間化合物、Mn−Si金属間化合物等の析出物の大きさと数の規定について述べる。母相中に析出物が存在することによって、切削時の切屑を細かく分断する働きをすることによって、切削性が向上する。ただし、析出物の大きさが、0.2μmよりも小さいと、切屑を分断する効果はほとんどない。また、0.2μmより大きい析出物があったとしても、その析出物の総量が少ないと、切削屑を分断する効果はない。具体的には、0.2μm以上の大きさの析出物が10個/mm2以上の密度で分布していないと、十分に切削屑を分断する効果はない。大きさは、TEM写真で観察された析出物の長径とし、好ましくは0.3〜1μm、より好ましくは0.5〜1μmである。
また、密度は好ましくは5×103個/mm2以上、より好ましくは104個/mm2以上である。密度の上限は特に制限するものではなく、多ければ多いほど良い。
本発明に用いられる銅合金棒材の製造方法は、特に制限するものではないが、前記銅合金を荒引き加工して棒材としたのち、次のような各工程を経る方法があげられる。
溶体化処理 → 時効処理
溶体化処理 → 時効処理 → 伸線加工
溶体化処理 → 伸線加工 → 時効処理
溶体化処理 → 伸線加工 → 時効処理 → 伸線加工
また、上記各工程で製造した線材に対して、導電率改善を目的として、焼鈍処理を行ってもよい。焼鈍処理温度は特に制限はないが、好ましくは200〜500℃、より好ましくは220〜350℃であり、焼鈍処理時間は10分以上、好ましくは30分以上、より好ましくは1時間〜5時間とすることにより行われる。
ここで、まず銅合金を荒引きして棒材とする処理は、ビレット鋳造し、熱間押出プレスにより押出棒を作り、圧延・伸線加工などにより荒引きして行われる。本発明において、荒引きして棒材としたものが、目的の棒材の最終径に合致していれば、改めて、後段で伸線加工を行う必要がないことは言うまでもない。
溶体化処理は添加元素を銅マトリクス中に固溶させるという役目を持つ。荒引き棒材を700℃以上で10分以上、好ましくは800〜1000℃で10分以上保持して行うことができる。
ここで、溶体化処理温度を700℃以上としたのは、溶体化処理を700℃より低い温度で実施すると、添加元素の固溶が不十分となり、後段で行う時効熱処理の際の析出が不十分となり、必要な強度が得られなくなるからである。溶体化温度が1000℃を超えると、添加元素の固溶効果が飽和するばかりか、コストが高くなる問題が生じる。
時効処理は金属間化合物の形成を進め、導電率と強度を向上させるという役目を持つ。時効熱処理温度は300〜600℃、好ましくは350〜550℃であり、時効熱処理時間は1時間以上、好ましくは1〜10時間とすることにより行われる。
ここで、時効熱処理温度を300℃以上としたのは、時効熱処理を300℃より低い温度で実施すると、析出が十分に行われず、必要な強度が得られないばかりか、必要な切削性が得られないからである。また、時効熱処理温度を600℃以下としたのは、時効熱処理を600℃より高い温度で実施すると、強度に寄与する析出物が粗大化するため、強度が低下し、必要な強度が得られなくなるからである。
また、時効熱処理時間を1時間以上としたのは、1時間未満では十分な析出が行われず、必要な強度および切削性が得られないからである。時効熱処理時間は長すぎても効果が飽和するばかりかコストが高くなる問題がある。好ましくは1〜10時間である。
本発明におけるNi−Si金属間化合物、Mn−Si金属間化合物等の析出物を増加させるには時効熱処理の温度を上記の範囲内で高温側に設定するか、時効熱処理の時間を長く設定するか、またはその両方を実施するかすればよい。
本発明における上記析出物を減少させるには時効熱処理の温度を上記の範囲内で低温側に設定するか、時効熱処理の時間を短く設定するか、またはその両方を実施するかすればよい。
伸線加工とは、荒引きした棒材や時効熱処理後の棒材を所定の目的の太さの線材に延伸加工するこという。この場合の加工は常温で加工度η=0〜7、好ましくは加工度η=0.5〜6で行う。ここで、加工度とは、加工前の材料の加工方向に対して垂直方向に切断した断面の断面積をS0、加工後の断面積をSとしたとき、η=ln(S0/S)で得られる値ηのことである。また、本発明の実施においては、伸線加工の代わりに引抜き加工を施しても良い。
上記製造方法により、導電率が20〜50%IACS、引張強度が600〜1200MPaであるような、強度、導電性に優れ、応力緩和率(負荷応力は耐力の80%、150℃1000時間加熱後)が50%以下であるように耐応力緩和特性に優れつつ、さらに切削性に優れた同軸コネクタ用銅合金が得られる。
本発明の電子電気機器部品用銅合金棒材にメッキを施すことも好ましい。メッキは、その方法に特に制限はなく、通常行われる方法により施される。
また、本発明の電子機器部品用銅合金棒材から切削加工によって作製したコネクタピンにメッキを施すことも好ましい。メッキは、その方法に特に制限はなく、通常行われる方法により施される。
本発明の銅合金棒材の直径は特に制限はなく用途により適宜に設定できるが、好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1〜100mmである。
以下に本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
高周波溶解炉にて、銅およびその他の添加元素を溶解して、表1に記す合金鋳塊(25mm×25mm×300mm)を鋳造した。次にこれら鋳塊を1000℃で加熱した状態で熱間加工を行い、その後、冷間加工により直径10mmの荒引き棒材とした。これらをさらに伸線加工を行ったのち溶体化処理(950℃で15分)を行い、途中で皮むきを入れながら、加工度η=1の伸線加工を行って直径3mmの棒材とした。これを不活性ガス雰囲気中で450℃で2時間の時効処理を施した。従来例には、市販の直径3mmの棒材のうち、Pbを含まない銅合金であるリン青銅棒(JIS C5191B),黄銅棒(JIS C2700B),ベリリウム銅(JIS C1720B)を使用した。なお、ベリリウム銅に限っては、315℃で2時間の時効処理を施した。こうして得られた直径3mmの棒材について引張強度(TS)、導電率(EC)、耐応力緩和率(SSR)、切削性の評価を行った。
引張強さと伸びは、JIS Z2241に準じて3本測定しその平均値を示した。
導電率は20℃(±0.5℃)に保たれた恒温槽中で四端子法により比抵抗を計測して導電率を算出した。なお、端子間距離は100mmとした。
析出物の粒径と分布密度は、棒材をφ3mmへ打ち抜き、ツインジェット研磨法を用いて薄膜研磨を行った後、加速電圧300kVの透過型電子顕微鏡で5000倍と100000倍の写真を任意で3ヶ所撮影して、その写真上で析出物の粒径と密度を測定した。析出物の大きさと密度を測定するとき、Ni−Siからなる析出物X、Mn−Siからなる析出物Yの両方とも電子線の入射方位を[001]とし、微細なので高倍の100000倍の写真でn=100(nは観察の視野数)でその個数を測定することで、個数の局所的な偏りを排除するように測定した。その個数を単位面積当たり(/mm2)へ演算した。
ここで、析出物の大きさは、TEM写真で観察された析出物の長径を測定したものである。
耐応力緩和特性は直径3mmの棒材では測定が困難であるため、別途サンプルを製造した。上記で得られた直径10mmの荒引き棒材から、引抜き・伸線加工を行って直径0.5mmとした。これを溶体化処理(950℃)を行ったのち、加工度η=1の伸線加工を行って直径0.3mmとした。これを不活性ガス雰囲気中で450℃で2時間の時効処理をした。従来例の合金については、市販の直径3mmの棒材を伸線加工して直径0.3mmとして用いた。なお、ベリリウム銅に限っては、315℃で2時間の時効処理を行った。こうして得られた直径0.3mmの線材を耐応力緩和特性試験用サンプルとした。耐応力緩和特性の評価は、日本電子材料工業会標準規格(EMAS−3003)の片持ちブロック式を採用し、表面最大応力が耐力の80%となるように負荷応力を設定し、150℃恒温槽に1000時間保持して応力緩和率(SRR)を求めた。
切削性の評価は、切削屑の分断性に着目して実施した。まず旋盤にて外周切削を行い、切削屑を回収した。その際の切削条件は切り込み量を0.5mm、材料の回転数を400rpm、バイトの送り速度を0.08mm/回転に固定した。回収した切削屑から3〜5gの適量を採取して切削屑の個数を数え、1gあたりの切削屑の個数を算出した。これを1つの材料につき3回実施して、その平均値を単位重量あたりの切削屑の個数とした。単位重量あたりの切削屑が30個以上のものを切削屑が細かく分断されていて切削性がよいと判断し、表中に「○」と表記した。逆に30個未満のものは「×」とした。結果を表1〜3に示す。
Figure 2006104539
表1から明らかなように、本発明例の試料は優れた特性を有している。これに対して、
比較例1はNiが少ないため強度が劣り、本発明における析出物が少ないため切削性に劣った。
比較例2はNiが多いため導電率が劣った。
比較例3はSiが少ないため強度、導電率が劣り、本発明における析出物が少ないため切削性に劣った。
比較例4はSiが多いため導電率が劣った。
比較例5、6はMnが多いため導電率が劣った。
従来例1、2、3は、本発明における析出物が無いため切削性が劣った。
実施例2
Niを3.75質量%、Siを0.9質量%、さらに表2の成分を含有し、残部が銅及び不可避不純物からなる合金を、実施例1と同様の製造工程で棒材を製造し、同様の評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 2006104539
表2から明らかなように、本発明例の試料は優れた特性を有している。これに対して、
比較例7はSnが多いため導電率が劣った。
比較例8はZnが多いため導電率が劣った。
比較例9はAgが多いためコストが高くなった。
比較例10はMgが多いため導電率が劣った。
比較例11、12はそれぞれFe、Crが多いため、加工中に割れを生じてしまい製造できなかった。
比較例13はCoが多いためコストが高くなった。
比較例14、15、16はそれぞれP、B、Biが多いため、加工中に割れを生じてしまい製造できなかった。
実施例3
Niを3.75質量%、Siを0.9質量%、Mnを0.4質量%、残部が銅及び不可避不純物からなる合金を、表3記載の製造条件にて棒材を製造した。その他の製造条件および評価は実施例1と同様とした。結果を表3に示す。
Figure 2006104539
表3から明らかなように、本発明例の試料は優れた特性を有している。これに対して、
比較例17は時効熱処理を行わなかったため本発明における析出物が少なくなり、強度、導電率、耐応力緩和特性、切削性が劣った。
比較例18は溶体化処理温度が低いため本発明における析出物が少なくなり、強度、切削性が劣った。
比較例19は時効処理温度が低いため、本発明における析出物が少なくなり、強度、導電率、耐応力緩和特性、切削性が劣った。
比較例20は時効処理温度が高いため、本発明における析出物が少なくなり、強度、耐応力緩和特性、切削性が劣った。
比較例21は時効処理時間が短いため、本発明における析出物が少なくなり、強度、耐応力緩和特性、切削性が劣った。

Claims (9)

  1. Niを1.0〜4.5質量%、Siを0.2〜1.1質量%、残部がCu及び不可避的不純物からなる銅合金であって、大きさが0.2μm以上のNi−Si金属間化合物の個数が、103個/mm2以上であることを特徴とする切削性に優れた同軸コネクタ用銅合金。
  2. Niを1.0〜4.5質量%、Siを0.2〜2質量%、Mnを0を超え2質量%以下、残部がCu及び不可避的不純物からなる銅合金であって、大きさが0.2μm以上のNi−Si金属間化合物と大きさが0.2μm以上のMn−Si金属間化合物の個数が合計で103個/mm2以上であることを特徴とする切削性に優れた同軸コネクタ用銅合金。
  3. 請求項1または2記載の銅合金において、さらに0を超え1.5質量%以下のSn、0を超え1.5質量%以下のZnのいずれかまたは両方を含有することを特徴とする切削性に優れた同軸コネクタ用銅合金。
  4. 請求項1乃至3いずれか1項記載の銅合金において、さらに0を超え0.3質量%以下のAg、0を超え0.2質量%以下のMg、0を超え0.5質量%以下のFe、0を超え0.5質量%以下のCr、0を超え2質量%以下のCo、0を超え0.1質量%以下のP、0を超え0.2質量%以下のB、0を超え2質量%以下のBiの1種または2種以上を総量で0を超え3質量%以下含有することを特徴とする切削性に優れた同軸コネクタ用銅合金。
  5. 請求項1乃至4いずれか1項記載の銅合金において、導電率が20%IACS以上50%IACS以下かつ引張強度が600MPa以上1200MPa以下であることを特徴とする切削性に優れた同軸コネクタ用銅合金。
  6. 請求項1乃至5いずれか1項記載の銅合金の製造方法であって、銅合金を荒引きして線材としたのち、溶体化処理を施し、次いで300℃以上600℃以下で1時間以上の時効処理を施すことを特徴とする切削性に優れた同軸コネクタ用銅合金の製造方法。
  7. 請求項1乃至5いずれか1項記載の銅合金の製造方法であって、銅合金を荒引きして線材としたのち、溶体化処理を施し、伸線加工し、次いで300℃以上600℃以下で1時間以上の時効処理し、さらに伸線加工を施すことを特徴とする切削性に優れた同軸コネクタ用銅合金の製造方法。
  8. 請求項1乃至5いずれか1項記載の銅合金の製造方法であって、銅合金を荒引きして線材としたのち、溶体化処理を施し、伸線加工し、300℃以上600℃以下で1時間以上の時効処理し、次いで伸線加工を行い、さらに200℃以上500℃以下で10分以上の焼鈍処理を施すことを特徴とする切削性に優れた同軸コネクタ用銅合金の製造方法。
  9. 請求項1乃至5いずれか1項記載の銅合金の製造方法であって、銅合金を荒引きして線材としたのち、溶体化処理を施し、伸線加工し、次いで300℃以上600℃以下で1時間以上の時効処理を施すことを特徴とする切削性に優れた同軸コネクタ用銅合金の製造方法。
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