JP2006102376A - ミシンの中押え装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】縫い針(107)を縫製物から抜く際に縫製物を針板(101)に向けて押さえ付けるように縫い針(107)の上下動に同期して上下動する中押え(29)を備えるミシンの中押え装置(1)において、縫製時に縫製物を針板(101)に向けて押さえ付けるとともにミシン(100)の電源遮断時に所定位置に退避可能な外押え(104)が所定位置に退避している場合に、電源遮断時に上方の中押え退避位置(P5)と下方の中押え下位置(P4)の一方に中押え(29)が移動可能となるように構成した。
【選択図】図3
Description
このような中押え装置として、カムやつまみを回動させて中押えを上下動させる揺動体を構成するリンクの傾きを調節し、中押え下位置を調節可能としたものが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1に開示される中押え装置において、中押えの退避は、ソレノイドの駆動によりリンクを介して中押え棒抱きを上昇させることにより行われ、ミシンの電源が切られることによってソレノイドの電源が切られると、ソレノイドからリンクに作用する力が無くなるので中押えは中押え下位置まで下降する。そこで、中押えの退避にソレノイドを用いず、カム等を用いた機械的な機構により中押えを中押え退避位置まで退避させ、ミシンの電源が切られた後でも中押えが下降しないような中押え装置も提案されている。
ここで、所定位置とは、縫製終了後に外押えが邪魔にならないように外押えをミシンアーム近傍まで上昇させた外押え上位置をいう。
また、中押え退避位置とは、縫製終了後に中押えを上昇させて針板から大きく隔離させた位置をいい、中押え下位置とは、縫製中に縫い針を縫製物から抜いた後に中押えが戻って待機する位置をいう。
〔実施形態1〕
<ミシンの構成>
図1に示すように、本発明に係る中押え装置1(図2参照)を有するミシン100は、針板101と外押え104との間に縫製物を挟持して保持する保持機構106と、この保持機構106を水平方向に移動させる送り機構(図示略)とを有し、水平面内での位置が固定された状態の縫い針107に対して、縫製物を水平方向に移動させることにより、所定の範囲(例えば、針板101及び外押え104の内側、もしくは、縫い針107に対する保持機構106の送り機構による移動可能範囲)内の任意の位置に糸を通して縫い目を付けることが可能となっている。具体的には、ミシン100は、各種形状に対応した縫い目を付けることができるサイクルミシンである。
図2〜図4に示すように、中押え装置1は、先端に縫い針107が設けられた針棒を上下方向に駆動させる上軸2に設けられている。上軸2には偏心カム3が固定され、この偏心カム3には接続リンク4が連結されている。接続リンク4には揺動軸抱き5が連結され、揺動軸抱き5には揺動軸6の一端部が連結されている。
揺動軸6の他端部には中押えの上下方向D1の移動量を調節する中押え調節腕7の基端部が固定されている。中押え調節腕7には溝カム7aが形成されている。この溝カム7aは弧状の長孔になっており、この溝カム7aの所望の位置と第1リンク8の一端部とが調節ナット9と段ねじ10により回動自在に固定される。この固定位置は揺動軸6の軸芯線と交差する位置からこの交差位置より中押え調節腕7の一端側の所定位置の範囲までの間に形成され、この範囲内で所望に調節することができる。
位置決めリンク13は、その中央部近傍で段ねじ14によりミシン筐体としてのミシンフレーム15に回動自在に取り付けられ、段ねじ14の位置は、中押え29が下死点にあるときの段ねじ12の位置と一致する。
第4リンク22の他端部には、リンク中継板25が段ねじ26により連結されている。リンク中継板25には中押え棒抱き27が固定されており、中押え棒抱き27には上下方向に延びる中押え棒28が保持されている。中押え棒28の下端部には、縫製時に布地を針板101に押さえ付ける中押え29が取り付けられている。中押え棒28の上端部にはコイルばね30が設けられており、ボルト31及びナット32により中押え棒抱き27に取り付けられている。
角駒33は、段ねじ23と、第3リンク20と第4リンク22の連結部P3との隙間をうめるスペーサの役割を果たしており、各リンクのがたつきを防ぎ、各部材を円滑に駆動させる。
中押え昇降カム45は、図5〜図7に示すように、回動中心を通る中心線を境に一方は、回動中心から外周面までの距離がほぼ同一の円弧状に形成され(以下、維持部45aという。)、他方は、回動中心から外周面までの距離が、維持部45aにおける回動中心から外周面までの距離よりも大きく、かつ、滑らかに変化する形状(以下、変化部45bという。)とされている。また、図3及び図5〜図7に示すように、中押え昇降カム45の一面側には、モータ42から伝達された駆動力を伝達する駆動軸51に中押え昇降カム45を固定するための固定部45cが形成されている。さらに、この固定部45cには、変化部45bの外周縁に向かって延びるように突起部45dが形成されている。
また、中押え昇降カム45の上方には、ソレノイド54により保持された中押え上げ戻し腕52の先端部と突出部45dとの間に出入可能とされ、中押え上げ戻し腕52が突出部45dに接触するのを防止する移動規制機構M4を構成する遮蔽板55が設けられている。すなわち、中押え29の位置を維持するために中押え昇降カム45を回転させたくない場合には、遮蔽板55を中押え上げ戻し腕52の先端部と突出部45dとの間に移動させるとよい。
図8に示すように、中押え29が縫製中に待機している位置を中押え下位置P4といい、中押え29が縫製終了後に上方に退避した位置を中押え退避位置P5という。また、外押え104が縫製中に縫製物を押さえ付ける位置を外押え下位置といい、外押え104が縫製終了後に退避した位置を外押え上位置という。
これらの位置関係は、中押え退避位置P5、外押え上位置、中押え下位置P4、外押え下位置の順で針板101からの高さが低くなっている。
次に、上述の構成を有する中押え装置1の動作について説明する。
上軸モータ(図示略)を駆動させて偏心カム3を回動させると、接続リンク4の先端は上軸2の軸線に略直交する方向(第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に対して横切る方向D3)に揺動し、接続リンク4に連結された揺動軸抱き5も同方向に揺動する。揺動軸抱き5が揺動することにより、揺動軸6も揺動するため、第1リンク8の一端部が揺動支点となって第1リンク8の他端部が揺動軸6の軸線に略直交する方向(第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に対して横切る方向D3)に揺動する。第1リンク8の他端部の揺動に伴い、第2リンク11の他端部は第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に揺動し、第2リンク11の他端部に連結された第3リンク20及び第4リンク22は、その直列方向(上下方向)D2に揺動する。第3リンク20及び第4リンク22の揺動に伴い、第4リンク22に連結された中押え棒28は上下方向D1に沿って下方に移動するため、中押え29も上下方向に移動する。
次に、上述の構成を有する中押え装置1による中押え下位置P4の調節動作について説明する。
モータ42を駆動させると、モータ42の駆動は、かさ歯車41、ベアリング40を介して可動軸39に伝達され、可動軸39は回動を始める。可動軸39の回動により、偏心カム38も回動し、移動リンク36は、可動軸39の軸線に略直交する方向(第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に対して横切る方向D3)に揺動する。移動リンク36の揺動により、案内部材34は第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に対して横切る方向D3に揺動する。
次に、縫製終了後に中押え29を中押え退避位置P5に移動させるときの動作について説明する。
中押え下位置P4の調節は、各リンク比を調節してモータ42を0°〜180°の範囲内で回動させることにより行い、中押え29の退避は、モータ42を180°〜360°の範囲内で回動させることにより行う。
すなわち、中押え下位置P4の調節の際には、モータ42を0°〜180°の範囲内で回動させると、中押え昇降カム45の維持部45aがコロ47に当接するようにし、中押え29を退避させる際には、モータ42を180°〜360°の範囲内で回動させると、中押え昇降カム45の変化部45bがコロ47に当接するように各部が連結されている。
次に、縫製終了後に中押え29を昇降させるときの動作について説明する。
ミシン100の電源遮断時に中押え29が中押え退避位置にある場合、ミシン100の電源が遮断されると、ソレノイド54の電源も遮断される。ソレノイド54の電源が遮断されると、中押え上げ戻し腕52の保持が解放されるため、中押え上げ戻し腕52は、コイルばね53の付勢力により、中押え昇降カム45の突出部45dに向けて飛び出す。そして、中押え上げ戻し腕52が突出部45dに当接することにより、中押え上げ戻し腕52の運動エネルギーが突出部45dに伝達され、突出部45dは図5における時計回りに回転し始める。
実施形態1におけるミシンの中押え装置1によれば、ミシン100の電源遮断時に、中押え上げ戻し腕52が中押え昇降カム45の突出部45dに当接して中押え昇降カム45を回転させることにより、中押え29を中押え下位置P4に移動させることができ、中押え29が針棒の下降の邪魔になって針棒を下降させることができなかったり、縫い針107に糸を通すことができないといったことがない。また、ミシン100の電源遮断時に遮蔽板55が中押え上げ戻し腕52による中押え昇降カム45の回動を規制することにより、中押え29を中押え退避位置P5に維持させることができ、中押え29が取り付けの邪魔になったり、下降時に押え枠105(図1参照)と接触して押え枠105を損傷させてしまうことがない。よって、ミシン100の電源を遮断した後の作業性を向上させることができる。
<中押え装置の構成>
実施形態2における中押え装置1Gは、図2、図10、図11に示すように、実施形態1における移動制御機構及び移動規制機構に替えて、制御装置90で中押え29の昇降を制御するように構成したものである。なお、制御装置90以外の他の構成要素については実施形態1と同様の構成であるため、同一符号を付して説明を省略する。
図11に示すように、制御装置90は、各種処理を行うCPU91と、プログラムやデータが記憶された記憶手段としてのメモリ92と、を備えている。
メモリ92には、CPU91が処理を行う作業エリア93と、処理に用いるデータを記録するデータエリア94と、中押え装置に各動作をさせるためのプログラムが記憶されたプログラムエリア95と、が形成されている。
データエリア94には、中押え退避位置P5及び中押え下位置P4とモータ42の駆動量とが対応付けられた中押え位置データ94aが記憶されている。具体的には、中押え位置データ94aには、中押え29を中押え退避位置まで移動させるために必要なモータ42のシャフトの回転角度と、中押え29を中押え下位置まで移動させるために必要なモータ42のシャフトの回転角度とが記憶されている。
プログラムエリア95には、データエリア94に記憶された中押え位置データ94aに基づいてモータ42の駆動を制御する駆動制御プログラム95aが記憶されている。すなわち、制御装置90は、CPU91が駆動制御プログラム95aを実行することにより駆動制御手段として機能する。
次に、縫製終了後に中押え29を昇降させるときの制御装置90の制御について説明する。
中押え29を中押え下位置P4に設定する旨の設定がなされている場合、制御装置80がミシン100の電源が遮断されたことを検出すると、制御装置80は内蔵されている電力保持装置(例えば、コンデンサ)の電力を利用して、中押え位置データ94aに基づいた量だけモータ42のシャフトを回転させる。モータ42の駆動力は、かさ歯車41,43を介して中押え昇降カム45に伝達され、中押え昇降カム45が図5〜図7における時計回りに中押え位置データ94aに設定された角度だけ回転する。
実施形態2におけるミシンの中押え装置1Gによれば、制御装置90のCPU91が駆動制御プログラム95aを実行することにより、モータ42は中押え位置データ94aに基づいて中押え昇降カム45を動作させる。ここで、制御装置90が中押え退避位置P5に対応する駆動量を出力するようにモータ42のシャフトを回転させると、中押え29を中押え退避位置P5に移動させることができ、中押え29が取り付けの邪魔になったり、下降時に押え枠105(図1参照)と接触して押え枠105を損傷させてしまうことがない。また、制御装置90が中押え下位置P4に対応する駆動量を出力するようにモータ42のシャフトを回転させると、中押え29を中押え下位置P4に移動させることができ、中押え29が針棒の下降の邪魔になって針棒を下降させることができなかったり、縫い針107に糸を通すことができないといったことがない。よって、ミシン100の電源を遮断した後の作業性を向上させることができる。
また、実施形態においては、所望の中押え下位置P4とするために必要なデータを制御装置90に記憶させているが、作業者によりモータ42の駆動量を縫製の都度設定するようにしてもよい。
また、中押え昇降カム45及び中押え上げリンク46を設けなくても、モータ42の出力軸を偏心させて中押え29を中押え退避位置P5に移動させてもよい。
11 第2リンク
15 ミシンフレーム
16 コイルばね
24 中押えリンク部材
29 中押え
34 案内部材
34t、55t 案内部材の上端部
36 移動リンク
42 モータ(駆動手段)
51 移動機構
90 制御装置(駆動制御手段)
92 メモリ(記憶手段)
94a 中押え位置データ
95a 駆動制御プログラム
100 ミシン
101 針板
104 外押え
105 押え枠
107 縫い針
D1 中押えの上下方向
D2 リンクの直列方向
D3 リンクの直列方向に対して横切る方向
M1 中押え揺動機構(第1リンク8、第2リンク11、位置決めリンク13)
M2 昇降機構(中押え昇降カム45、中押え上げ部材46、コロ47)
M3 移動制御機構(中押え上げ戻し腕52、コイルばね53、ソレノイド54)
M4 移動規制機構(遮蔽板55)
P1,P2 接続部
P3 連結部
P4 中押え下位置
P5 中押え退避位置
L 接続部間の距離
θ 隣接するリンクがなす角度
Claims (4)
- 縫い針を縫製物から抜く際に縫製物を針板に向けて押さえ付けるように前記縫い針の上下動に同期して上下動する中押えを備えるミシンの中押え装置において、
縫製時に縫製物を針板に向けて押さえ付けるとともにミシンの電源遮断時に所定位置に退避可能な外押えが前記所定位置に退避している場合に、前記電源遮断時に上方の中押え退避位置と下方の中押え下位置の一方に前記中押えが移動可能となるように構成したことを特徴とするミシンの中押え装置。 - 前記中押えを縫い針の上下動方向に沿って昇降させる昇降機構を有し、
前記ミシンの電源遮断時に、前記中押えを前記中押え下位置に移動させるように前記昇降機構を動作させる移動制御機構と、
前記ミシンの電源遮断時に、前記中押えを前記中押え退避位置に維持させるように前記移動制御機構による前記昇降機構への制御動作を規制する移動規制機構と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のミシンの中押え装置。 - 前記中押えを縫い針の上下動方向に沿って昇降させる昇降機構と、前記昇降機構を動作させる駆動手段と、を有し、
前記中押え退避位置及び前記中押え下位置と前記駆動手段の駆動量とが対応付けられた中押え位置データを記憶する記憶手段と、
前記ミシンの電源遮断時に、前記記憶手段に記憶された前記中押え位置データに基づいて前記駆動手段を制御する駆動制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のミシンの中押え装置。 - 前記中押えを縫い針の上下動方向に沿って昇降させる昇降機構を有し、
前記昇降機構に設けられ、前記ミシンの電源遮断時に、前記ミシンの外部から手動で操作することにより、前記中押えを前記中押え退避位置と前記中押え下位置とに移動可能となるように構成された中押え駆動部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載のミシンの中押え装置。
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