JP2006100598A - 積層型圧電素子の製造方法及び酸素供給方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 圧電セラミックス層と内部電極とが積層された積層型圧電素子の製造方法であって、所定組成の磁器組成物粉末とバインダを含む圧電セラミックス層前駆体と卑金属を導電材料として含む内部電極前駆体とが積層された積層体を第1の還元性雰囲気下で焼成する焼成工程と、焼成された積層体を、第1の還元性雰囲気よりも酸素分圧の高い第2の還元性雰囲気下で加熱する熱処理工程とを備える。
【選択図】図2
Description
しかしながら、Cuを酸化させない還元性雰囲気中で焼成することにより、圧電セラミックス層の絶縁抵抗が150℃程度の高温になると低下してしまい、積層型圧電素子の実用上障害となる場合がある。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、電極層にCu等の卑金属材料を使用し還元性雰囲気中で焼成した積層型圧電素子に生じる、高温での絶縁抵抗の低下を改善した積層型圧電素子を提供することである。
また本発明において、焼成工程における加熱温度T1は800〜1080℃であることが好ましく、熱処理工程における加熱温度T2は550〜950℃(ただし、T1>T2)であることが好ましい。
ここで、所定の酸素分圧を有する雰囲気下で焼結体を加熱することにより、所定部位に酸素が供給される。また、この加熱は、酸素分圧が10-2〜10-6atm、温度が550〜950℃の条件で行われることが好ましい。
図1は、本発明により得られる積層型圧電素子1の構成例を示す断面図である。なお、図1はあくまで一例を示すものであって、本発明が図1の積層型圧電素子1に限定されないことはいうまでもない。この積層型圧電素子1は、複数の圧電セラミックス層11と複数の内部電極12とを交互に積層した積層体10を備えている。圧電セラミックス層11の一層当たりの厚さは例えば1〜100μm程度が好ましいが、内部電極12に挟まれた圧電セラミックス層11よりも上下両端の圧電セラミックス層11(11a,11c)の厚さを厚く形成する場合がある。また、圧電セラミックス層11の積層数は目標とする変位量に応じて決定される。
(Pb1-BMeB)A[(Zn1/3Nb2/3)aTibZrc]O3で示され、前記式中の記号Me、A、B、a、bおよびcが、Me:Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種、0.99≦A≦1.005、 0≦B≦0.1、0.05≦a≦0.25、0.35≦b≦0.50、0.38≦c≦0.48、およびa+b+c=1である組成の酸化物を含む主成分と、Fe、Co、NiおよびCuから選ばれる少なくとも1種を含む第1副成分と、Sb、NbおよびTaから選ばれる少なくとも1種を含む第2副成分とのいずれか一方又は双方と、を有する圧電磁器組成物であって、主成分1モルの質量に対する各副成分の比率が、第1副成分:酸化物(NiO、CoO、Fe2O3、CuO)に換算して0.01〜0.8重量%、および第2副成分:酸化物(Sb2O3、Nb2O5、Ta2O5)に換算して0.1〜1重量%である圧電セラミックス。
また、端子電極21、22は、例えばAu、Ag、Cuなどの金属をスパッタリングすることにより形成されていてもよく、端子電極用ペーストを焼き付けることにより形成されていてもよい。端子電極用ペーストは、例えば、導電材料と、ガラスフリットと、ビヒクルとを含有し、導電材料は、例えば、Au、Ag、Cu、Ni、Pd及びPtからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものが好ましい。端子電極21、22の厚さは用途等に応じて適宜決定されるが、通常、10〜50μmである。
なお、副成分の出発原料は、後述する仮焼成(ステップS103)の前に添加してもよいが、仮焼成後に添加するようにしてもよい。但し、仮焼成前に添加した方がより均質な圧電セラミックスを作製することができるので好ましい。仮焼成後に添加する場合には、副成分の出発原料には酸化物を用いることが好ましい。
次に、この仮焼成粉にバインダを加えて圧電セラミックス層用ペーストを作製する(ステップS105)。具体的には以下の通りである。はじめに、例えばボールミル等を用いて、湿式粉砕によりスラリを得る。このとき、スラリの溶媒として、水もしくはエタノールなどのアルコール、または水とエタノールとの混合溶媒を用いることができる。湿式粉砕は、仮焼成粉の平均粒径が0.5〜2.0μm程度となるまで行うことが好ましい。
さらに、端子電極用ペーストも内部電極層用ペーストと同様にして作製する(ステップS107)。
以上では圧電セラミックス層用ペースト、内部電極層用ペースト及び端子電極用ペーストを順番に作製しているが、並行して作製してもよいし、逆の順番でもよいことは言うまでもない。
印刷法を用いグリーンチップを作製する場合は、圧電セラミックス層用ペーストを、ポリエチレンテレフタレート等の基板上に所定厚さで複数回印刷して、図1に示すように、グリーン状態の外側圧電セラミックス層11aを形成する。次に、このグリーン状態の外側圧電セラミックス層11aの上に、内部電極層用ペーストを所定パターンで印刷して、グリーン状態の内部電極層(内部電極層前駆体)12aを形成する。次に、このグリーン状態の内部電極層12aの上に、前記同様に圧電セラミックス層用ペーストを所定厚さで複数回印刷して、グリーン状態の圧電セラミックス層(圧電セラミックス層前駆体)11bを形成する。次に、このグリーン状態の圧電セラミックス層11bの上に、内部電極層用ペーストを所定パターンで印刷して、グリーン状態の内部電極層12bを形成する。グリーン状態の内部電極層12a、12b…は、対向して相異なる端部表面に露出するように形成する。以上の作業を所定数繰り返し、最後に、グリーン状態の内部電極12の上に、前記同様に圧電セラミックス層用ペーストを所定厚さで複数回印刷して、グリーン状態の外側圧電セラミックス層11cを形成する。その後、加熱しながら加圧、圧着し、所定形状に切断してグリーンチップ(積層体)とする。
以上では、印刷法によりグリーンチップを作製する例を説明したが、シート成形法を用いてグリーンチップを作製することもできる。
脱バインダ処理において、内部電極層前駆体中の導電材料の酸化を考慮する必要があり、還元性雰囲気下での加熱を採用すべきである。一方で、脱バインダ処理において、圧電セラミックス層前駆体に含まれる酸化物、例えばPbOが還元されることを考慮する必要がある。還元の度合いによっては、後の酸素供給熱処理では、十分な量の酸素を供給することができないおそれがあるからである。したがって、例えば導電材料としてCuを用いた場合、CuとCu2Oの平衡酸素分圧(以下、単にCuの平衡酸素分圧)及びPbとPbOの平衡酸素分圧(以下、単にPbの平衡酸素分圧)に基づいて、いかなる還元性雰囲気を脱バインダ処理に適用するか設定する必要がある。
この熱処理は、高温での絶縁抵抗の低下を防止して所定の絶縁抵抗を得ることを目的とし所定の酸素を含む雰囲気で行う。この熱処理によって所定の絶縁抵抗が得られる理由は明らとなっていないが、以下の2つの理由のいずれか又は双方であると本発明者らは推察している。
1つ目の理由は、圧電セラミックス層の粒界が、酸素の供給により絶縁化したことに起因して、所定の絶縁抵抗を得ることができるというものである。
よく知られているように、SrTiO3は大気中での焼成が困難なために、還元性雰囲気で焼成を行う。その際、素体全体が還元されて、セラミックス半導体となる。この素体を大気中で熱処理(酸化)することにより素体を絶縁化することができる。絶縁化後の構造は、結晶粒が半導体で、粒界部分が絶縁体であると言われている。大気中の熱処理によって、粒界に酸素が拡散してショトキーバリアを形成するという理論に基づいている。
このような粒界の絶縁化が、本発明においても生じているために、所定の絶縁抵抗を得ることができる。
これまたよく知られているように、Ni卑金属コンデンサとしてのBaTiO3の還元焼成品を大気中で熱処理(酸化)すると、焼成後に存在した転移ループが消失することが確認されている。この転移ループが格子欠陥であることはTEM観察により明らかにされており、BaTiO3の場合には熱処理により格子欠陥に酸素が補完されるものと考えられている。
本発明者らが検討を行った圧電セラミックスには、焼成後に前述のような転移ループは観察されていない。しかし転移ループが観察されていないだけで、本発明による熱処理が格子欠陥を補完する働きを持つものと解される。
焼成は、図4に示すように、昇温過程、保持及び降温過程を含むが、酸素供給熱処理を焼成と別個に独立して行う場合には、図4に示すように降温過程が終了した後に、焼結体を再度当該熱処理の温度まで昇温し、かつ所定時間保持した後に降温する。この態様は、通常、焼成と酸素供給熱処理とを別の加熱炉を用いて行う場合に適用されよう。
以上により、図1に示した積層型圧電素子1が得られる。
PbO粉末、SrCO3粉末、ZnO粉末、Nb2O5粉末、TiO2粉末及びZrO2粉末を下記主組成になるよう秤量するとともに、当該主成分に対して副成分としてTa2O5粉末を0.4重量%を添加した原料粉末をボールミルにより16hr湿式混合し、乾燥した後、大気雰囲気中700〜900℃−2hrで仮焼した。得られた仮焼紛を更にボールミルにより16hr湿式粉砕し、乾燥した後、バインダとしてポリビニルアルコール(PVA)を適量加えて造粒した。造粒紛は一軸プレス成形機を用いて245MPaの圧力で直径17mmφ、厚さ1mmの円板状の成形体を作製した。
主成分:(Pb0.965Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/3)0.1Ti0.43Zr0.47]O3
その後、120℃のシリコーンオイル中で3kV/mm−15minの分極処理をした。この試料を50℃、100℃、150℃の恒温槽中に10min放置した後、600Vの電圧を30secチャージし絶縁抵抗(IR)を測定した。その結果を図6〜図9に示すが、放置した温度が高くなると絶縁抵抗(IR)が低下する傾向にあることがわかる。
その後、積層体の両側面にCu及びAgを蒸着により形成し、150℃のシリコーンオイル中で2.5kV/mm−5minの分極処理をした。この試料に2kV/mm−0.1Hzの電圧を印加して変位測定をし、変位があった場合にはCuによる内部電極層が酸化していないと判断し、変位がなかった場合には内部電極層が酸化していると判断した。
試料No.17は還元性雰囲気中で焼成した従来の条件である。この条件では積層体のCu酸化は見られないものの、150℃における絶縁抵抗(IR)が1012Ω・cmを大きく下回ってしまう。
また、試料No.18は大気中で焼成したものであるが、還元性雰囲気中焼成とは逆に、150℃における絶縁抵抗(IR)は十分であるものの、積層体のCu電極に酸化が見られる。
また、酸素分圧が2×10-7atmの試料No.1、2、3、4については1020℃熱処理のNo.4以外は150℃における絶縁抵抗(IR)が1012Ω・cm未満となり、酸素分圧が2×10-1atm(大気)の試料No.13、14、15、16については何れも積層体のCu酸化が見られる。
150℃における絶縁抵抗(IR)が1012Ω・cm以上あり、尚且つ積層体でのCu酸化が見られないのは試料No.6、7、10、11である。これら試料はCuの導電性が焼成から熱処理にかけて実質的に維持されたことになる。このことはまた、Cuからなる内部電極は、その電極としての機能が確保されたことを意味する。また表1の結果から、熱処理条件は、酸素分圧10-2〜10-6atm、好ましくは10-3〜10-5atmの雰囲気中で、650〜950℃、好ましくは700〜800℃の温度範囲を採用すべきことを示唆している。
主成分:(Pb0.965Sr0.03)[(Zn1/3Nb2/3)0.1Ti0.43Zr0.47]O3
また、酸素分圧が2×10-7atmの試料No.20〜24については1020℃熱処理のNo.24以外は150℃における絶縁抵抗(IR)が1012Ω・cm未満となり、酸素分圧が2×10-1atm(大気)の試料No.36〜39については積層体のCu酸化が見られる。
150℃における絶縁抵抗(IR)が1012Ω・cm以上あり、尚且つ積層体でのCu酸化が見られないのは試料No.26、27、28、31、32、33である。これら試料はCuの導電性が焼成から熱処理にかけて実質的に維持されたことになる。このことはまた、Cuからなる内部電極は、その電極としての機能が確保されたことを意味する。また表2の結果から、本実施例の組成に対する熱処理条件は、酸素分圧10-2〜10-6atm、好ましくは10-3〜10-5atmの雰囲気中で、550〜950℃、好ましくは600〜800℃の温度範囲を採用すべきことを示唆している。
Claims (9)
- 圧電セラミックス層と内部電極とが積層された積層型圧電素子の製造方法であって、
所定組成の磁器組成物粉末を含む圧電セラミックス層前駆体と卑金属を導電材料として含む内部電極前駆体とが積層された積層体を第1の還元性雰囲気下で焼成する焼成工程と、
焼成された前記積層体を、前記第1の還元性雰囲気よりも酸素分圧の高い第2の還元性雰囲気下で加熱する熱処理工程と、
を備えることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。 - 前記第1の還元性雰囲気は酸素分圧が10-6〜10-9atmであり、
前記第2の還元性雰囲気は酸素分圧が10-2〜10-6atmであることを特徴とする請求項1に記載の積層型圧電素子の製造方法。 - 前記焼成工程における加熱温度T1が800〜1080℃であり、
前記熱処理工程における加熱温度T2が550〜950℃(ただし、T1>T2)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層型圧電素子の製造方法。 - 前記導電材料はCuであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層型圧電素子の製造方法。
- 前記焼成工程から前記加熱処理工程にかけて、前記導電材料の導電性が実質的に維持されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層型圧電素子の製造方法。
- 前記熱処理工程において、前記圧電セラミックス層内に酸素が供給されることを特徴とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層型圧電素子の製造方法。
- 複数の圧電セラミックス層とCuからなる複数の内部電極とが積層された焼結体の前記内部電極の機能を確保しつつ、前記圧電セラミックス層の所定部位に酸素を供給する、ことを特徴とする酸素供給方法。
- 所定の酸素分圧を有する雰囲気下で前記焼結体を加熱することにより、前記所定部位に酸素を供給することを特徴とする請求項7に記載の酸素供給方法。
- 前記加熱は、前記酸素分圧が10-2〜10-6atm、温度が550〜950℃の条件で行われることを特徴とする請求項8に記載の酸素供給方法。
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