JP2006099876A - 光情報記録媒体用原盤の製造方法、光情報記録媒体用スタンパ及び光情報記録媒体 - Google Patents

光情報記録媒体用原盤の製造方法、光情報記録媒体用スタンパ及び光情報記録媒体 Download PDF

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Abstract

【課題】 ピット長がピット幅よりも小さい形状の短ピットを含み、線密度を高くした場合に充分な変調度が確保される光情報記録媒体を調製するための光情報記録媒体用原盤の製造方法を提供すること。
【解決手段】 回転台22及び移動台23により半径方向に移動しつつ回転する原盤21の表面に塗布された電子線感応レジスト薄膜に、外部高周波信号に基づき原盤21のトラック方向と略垂直方向に偏向した電子線19を集束し、螺旋状又は同心円状に配置された凹凸ピットの潜像を形成する工程を有する光情報記録媒体用原盤の製造方法によれば、ピット長がピット幅より小さい形状の最短ピットを含む凹凸ピットの潜像を形成することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、光情報記録媒体用原盤の製造方法等に関し、より詳しくは、ピット長がピット幅より小さい形状の最短ピットを含む光情報記録媒体用原盤の製造方法等に関する。
光情報記録媒体(以下、光ディスクという場合がある)は、基板表面に凹凸ピットと呼ばれる微小な凹凸を螺旋状に配置したトラックが形成されている。この基板を所定の速度で回転させながら、集光した再生光ビームをトラックに添って照射し、凹凸ピットの有無による反射光強度の違いを検出し、最終的にディジタル信号に変換している。
凹凸ピットの長さ(ピット長)は、自己同期を抽出可能にするために、規格化された間隔T(チャネルビット長)の整数倍の間隔で配置されている。ピット長が過度に短いと、再生装置の光ピックアップのOTF(Optical Transfer Function)や回折限界により波形干渉を起こし、充分な変調度が取れなくなる。また、ピット長が過度に長いと、直流(DC)成分の変動が大きくなる。このため、同期信号等の特殊パターンを除き、ディジタル信号を所定の変調方式で変調し、総ての記録ピット長が最短ピット長Tminと最長ピット長Tmaxとの範囲内に収まるように設計されている。
具体的には、CD−ROMでは、チャネルビット長Tは約0.29μmであり、最短ピットは3T(約0.87μm)、最長ピットは11T(約3.18μm)である。また、DVD−ROMでは、チャネルビット長Tは約0.13nmであり、最短ピットは3T(約0.40μm)、最長ピットは14T(約1.87μm)である。この例からも分かるように、光ディスクの高容量化を目的として、線密度の向上、すなわちチャネルビット長の短縮化が行われている。更に、DVD−ROMの4倍以上の記録容量を有するブルーレーザ対応の高密度ディスクでは、チャネルビット長の短縮化(1T=約0.07μm)に加え、変調方式の改良により圧縮率が向上し、最短ピットはチャネルビット長の2倍の長さを有する2T(約0.14μm)が採用される等、記録再生光ビームの短波長化を上回る割合で最短ピット長は飛躍的に短くなっている。
ところで、様々なピット長を有する凹凸ピットは、通常、フォトリソグラフィー法にて形成される。即ち、記録再生光よりも更に短波長のレーザ光を、音響光学(AO)素子の回折効率又は電気光学(EO)素子の透過率等を外部のパルス信号に基づいて高速変調し、この高速変調された短波長のレーザ光のビームを、フォトレジストの薄膜を塗布した回転するガラス原盤上に照射し、照射された領域を現像液で溶解して凹凸形状を作製する。ピット長は、このような外部のパルス信号のパルス幅により制御することができる。また、容量の大きい、即ち線密度の大きい光情報記録媒体を形成する場合は、ガラス原盤の回転線速に対するパルス幅を短くする方法が採用されている。
しかし、このようなフォトリソグラフィー法に基づき凹凸ピットを形成する従来の方法では、以下のような問題がある。即ち、ブルーレーザ対応の高密度ディスクのように線密度が高くなる場合、ガラス原盤の回転線速に対する外部のパルス変調信号のパルス幅を更に短くすると、ピット長と同時にピット幅も狭くなる。そのため、作成した光情報記録媒体では、再生信号の変調度が不充分になる。
図7は、従来の原盤露光装置を用い、フォトリソグラフィー法に基づき、外部のパルス変調信号のパルス幅を短くすることにより形成される凹凸ピットの形状を説明する図である。図7(A)は、2Tマーク〜6Tマークに対応する凹凸ピットの形状であり、図7(B)は、2Tマーク〜6Tマークに対応する変調信号である。図7には、従来の原盤露光装置のレーザビームにより形成される5種類のピット長を有する凹凸ピット(2T〜6T)が示されている。ここで、図7(A)には、従来の原盤露光装置を用いるフォトリソグラフィー法に基づき、ガラス原盤の回転線速に対する外部のパルス変調信号のパルス幅を短くすると、2Tマーク又は3Tマークのような短ピットのピット幅が、他の4T〜6Tマークのピット幅と比べ、狭くなることが示されている。尚、図7(A)において、ピット幅は、2Tマーク〜6Tマークに対応する各凹凸ピットの縦方向の長さであり、ピット長は、2Tマーク〜6Tマークに対応する各凹凸ピットの横方向の長さである。
次に、図8は、原盤記録装置のレーザ光又はドライブの記録再生レーザ光の像面における光の強度分布を説明する図である。ここで、図8中、第1軸及び第2軸は像面の座標であり、第3軸は光の強度を示している。図8には、レーザより発せられた光ビームの像面における強度分布は、光軸に対して点対称なガウシアン分布であることが示されている。
即ち、従来の原盤記録装置又はドライブでは、このようなガウシアン分布を有する丸い形状のレーザビームを用いるため、線密度を更に向上させようとして、ガラス原盤の回転線速に対する外部のパルス変調信号のパルス幅を短くしても、短ピットのピット幅が狭くなり、そのために変調度が不充分となってしまう。
上述したように、光ディスクの記録再生方法において、ピット幅が狭い短ピットの変調度が不充分であることは以下のように説明される。
図9は、光ディスクの反射層から反射する記録再生レーザ光を説明する図である。図9には、光ディスクの凹凸ピット部74とミラー部75とからの反射光が示されている。図9に示すように、第1の位相状態(b)を有する凹凸ピット部74からの反射光72(反射光2)と、第2の位相状態(a及びc)を有する凹凸ピット部74以外のミラー部分75からの反射光71(反射光1),73(反射光3)とで、反射光の位相を180度異なるものとし、互いに干渉し打ち消しあうことにより、再生系に戻る反射光強度の変調度が最大となる。再生光の波長をλ、凹凸ピット部74に充填されている物質の波長λにおける屈折率をnとすると、ピット深さがλ/4nのときに変調度は最大となり、ピット深さがこれよりも深くても、反対に浅くても変調度は減少する。
以下、このような関係を有するピット深さを「変調度が最大になるピット深さ」と呼ぶ。例えば、再生系の半導体レーザの波長を405nm、凹凸ピット部74に充填されている物質の屈折率を1.58とすると、ピット深さが約64nmの時に変調度が最大となる。
次に、図10は、記録再生レーザ光のビーム径と凹凸ピットの大きさとの関係を説明する図である。図10には、集光されたビームスポット91のビーム径φよりピット長Lが大きい凹凸ピット92の再生系に戻る反射光の強度分布が示されている。図10に示すように、(b)は、図9において説明したように、凹凸ピット92の底面からの反射光の第1の位相状態であり、(a)及び(c)は、図9において説明したように、凹凸ピット92以外の部分からの反射光の第2の位相状態である。
また、図11は、図10に示された反射光の強度分布を説明する図である。図11に示すように、記録再生レーザより発せられ、ガウシアン分布であるレーザ光の反射光の強度分布は、中央部の第1の位相状態の部分と、第1の位相状態の部分の両側に位置する第2の位相状態の部分とからなることが示されている。
図12は、ビームスポットと凹凸ピットとの関係を説明する図である。図12(A)は、ビームスポット111のビーム径φに対して凹凸ピット112のピット幅が適当な場合であり、図12(B)は、ビームスポット121のビーム径φに対して凹凸ピット122のピット幅が過度に広い場合であり、図12(C)は、ビームスポット131のビーム径φに対して凹凸ピット132のピット幅が過度に狭い場合である。図12中、(b)は、反射光の第1の位相状態の強度の部分であり、(a)及び(c)は、反射光の第2の位相状態の部分である。
次に、図13は、ピット幅とトラックに沿って記録再生光ビームが移動した場合の反射光強度の変化との関係を説明する図である。図13(A)は、ビーム径φの再生光のビームスポット141とピット142との関係を示し、図13(B)は、ビーム径φに対してピット幅が適当な場合のトラックに沿って記録再生光ビームが移動した場合の反射光強度の変化であり、図13(C)は、ビーム径φに対してピット幅が過度に広い場合のトラックに沿って記録再生光ビームが移動した場合の反射光強度の変化であり、図13(D)は、ビーム径φに対してピット幅が過度に狭い場合のトラックに沿って記録再生光ビームが移動した場合の反射光強度の変化である。図13(A)中の横矢印は、凹凸ピット142のトラック方向の長さ(ピット長L)であり、左側の縦矢印は、再生光のビーム径φであり、右側の縦矢印は、凹凸ピット142のピット幅Wである。
ここで、凹凸ピット142の幅(ピット幅W)は、再生系に戻る反射光の強度が集光されたビームスポット141のビーム径φよりも大きいピット長Lを有する凹凸ピット142の中央部付近で、以下に示すような関係を有するときに最も変調度が高くなる。即ち、図13(B)に示すように、凹凸ピット142の底面から反射された反射光(第1の位相状態)強度の部分の体積(b)と、凹凸ピット142以外のミラー部分から反射された反射光(第2の位相状態)の部分の体積の和(a+c)とが、ほぼ等しくなる(a+c=b)ようにピット142の幅を設定すると、再生信号の変調度が最大となる。
一方、図13(C)に示すように、ピット幅Wが過度に狭い場合は、凹凸ピット142の底面から反射された反射光(第1の位相状態)強度の部分の体積(b)が、凹凸ピット142以外のミラー部分から反射された反射光(第2の位相状態)の部分の体積の和(a+c)よりも大きくなり(a+c<b)、凹凸ピット142の再生信号折り返しが発生する。
また、図13(D)に示すように、ピット幅Wが過度に広い場合は、凹凸ピット142の底面から反射された反射光(第1の位相状態)強度の部分の体積(b)が、凹凸ピット142以外のミラー部分から反射された反射光(第2の位相状態)の部分の体積の和(a+c)よりも小さくなり(a+c>b)、凹凸ピット142の再生信号は変調度が不足する。
このように、図13(B)に示すような第1の位相状態の強度の部分の体積(b)と、第2の位相状態の部分の体積の和(a+c)とが、ほぼ等しくなる(a+c=b)場合に最も高い変調度が確保できる。以下、(a+c=b)の関係を有するピット幅を「変調度が最大になるピット幅」と呼ぶ。
具体的には、再生系の半導体レーザの波長を405nm、凹凸ピット部に充填されている物質の屈折率を1.58、集光レンズの開口数(NA)を0.85とすると、変調度が最大となるピット幅は約180nmになる。即ち、変調度が最大となるピット深さとピット幅とは、記録再生光の波長及び集光レンズの開口数(NA)と、凹凸ピット部に充填されている物質の屈折率とに基づき望ましい値が物理的にほぼ限定される。
即ち、従来から行われている方法は、フォトレジストを塗布したガラス原盤に、断面形状が丸い所定のビーム径を有するレーザビームを照射して潜像を形成し、その後に現像処理を経てガラス原盤上に凹凸ピット形状を転写するものである。しかし、このような従来の方法では、線密度を更に向上させるために、ガラス原盤の回転線速に対する外部のパルス変調信号のパルス幅を短くする手法を用いても、記録再生光ビームの短波長化を上回る割合で最短ピットのピット長Lが短くなると、ガラス原盤上に形成される最短ピットのピット幅Wが狭くなり、その結果、光情報記録媒体から得られる再生信号の変調度が不充分になるおそれがある。
一方、このような従来から行われている方法により形成される短ピットのピット幅に、短ピット以外のその他の充分な長さを有する長ピットのピット幅を合致させたとしても、このようなピット幅は、前述した「変調度が最大になるピット幅」と異なるピット幅となるため、光情報記録媒体の再生信号の変調度が不充分となる。また、短ピットのピット幅を確保するために、レーザ光の照射量を増加した場合には、形成された短ピットのピット長も同時に増加する。即ち、形成された短ピットの前後に存在するミラー部分の長さが短くなってしまうため、その結果、再生信号のジッタが増加する。
このため、最短マークに基づく再生信号の変調度を高めるための方法として、例えば、集光レンズに至る光軸上にスリットを導入し、トラック方向と半径方向とで実効的な開口数(NA)を変化させ、特定方向のビーム径が拡大された楕円形状のレーザ光を用いて、ガラス原盤上に塗布されたフォトレジストを露光する方法(特許文献1参照)、或いは、最短マークに限り、2本のレーザビームを半径方向に並べて照射し、最短マークの変調度を増幅する方法(特許文献2参照)等が報告されている。
特開平10−199001号公報 特開2004−055097号公報
ところで、特許文献1に記載されているように、集光レンズに至る光軸上にスリットを導入し、トラック方向と半径方向とで実効的な開口数(NA)を変化させて楕円形状のレーザ光を形成し、この楕円形状のレーザ光を用いて、ガラス原盤上に塗布されたフォトレジストの薄膜を露光する方法では、レーザビームの半径方向の開口数(NA)が大きく低下してしまう。その結果、光学コントラストの低下を招き、ピット幅を細く抑えることができず、即ち、記録密度の向上が困難であるという問題がある。
更に、照射パルスが短くなった場合に凹凸ピットが著しく小さくなり、変調度が不充分になる。このため、特許文献1に記載されているような、開口部の形状を変化させることにより、集光レンズに導かれる光ビームの特定方向のビーム径を制御する手法は、幅の太い溝又は凹凸ピットを形成する用途に適用範囲が限定され、面密度の高いピット列を形成するには適さないという問題がある。
また、特許文献2に記載されているように、2本のレーザビームを半径方向に並べて照射し、最短ピットのピット幅を、その他の凹凸ピットのピット幅よりも広くした場合、隣接トラックとのクロストークが増大する。さらに、凹凸ピットの微細化をさらに高めるために用いられる電子線を利用した原盤照射装置では、電流値の安定な熱放出型の電子銃より発生する電子線を2本並べて原盤に照射することが原理的に困難であるという問題がある。
また、高密度光ディスク媒体を再生する再生装置は、短ピットの再生信号に相当する高周波の再生信号を選択的に増幅するリミットイコライザー機能を付与させたものが提案されている。しかし、このようなリミットイコライザー機能を有する再生装置では、再生信号のノイズも同時に増幅してしまい、充分な変調度が得られない。即ち、リミットイコライザー機能を利用する場合も、良好な再生信号が得られるためには、短ピットの形状が、「変調度が最大になるピット深さ」且つ「変調度が最大になるピット幅」を有することが必要である。
本発明は、このような高密度ディスクを形成する際に浮き彫りになった技術的課題を解決するためになされたものである。
即ち、本発明の目的は、線密度を高くした場合に充分な再生信号の変調度が確保される光情報記録媒体を調製するための光情報記録媒体用原盤の製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、線密度を高くした場合に充分な再生信号の変調度が確保される光情報記録媒体を調製するための光情報記録媒体用スタンパを提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、線密度を高く、充分な再生信号の変調度が確保される光情報記録媒体を提供することにある。
そこで、本発明者は鋭意検討の結果、偏向させた電子線を電子線感応レジスト薄膜を塗布した原盤に照射することにより、ピット長がピット幅よりも小さい形状の短ピットの潜像が容易に形成されることを見出し、この知見に基づき本発明を完成した。
即ち、本発明によれば、電子線照射による光情報記録媒体用原盤の製造方法であって、電子線感応レジスト薄膜が表面に塗布された原盤を、駆動手段により原盤の半径方向に移動しつつ回転する工程と、駆動手段により回転する原盤上に、電子線照射手段により単一の電子線を、外部高周波信号に基づき原盤のトラック方向と略垂直方向に偏向しつつ集束する工程と、集束された電子線により、原盤上に螺旋状又は同心円状に配置され、ピット長がピット幅より小さい形状の短ピットを含む凹凸ピットの潜像を形成する工程と、を有することを特徴とする光情報記録媒体用原盤の製造方法が提供される。
このようなピット長がピット幅より小さい形状の凹凸ピットを含むピット列を螺旋状或いは同心円状に配置することにより、再生信号の変調度の高い光情報記録媒体を作成することが可能となる。
ここで、本発明が適用される光情報記録媒体用原盤の製造方法において、原盤上に形成される潜像の中、ピット長がピット幅より小さい形状の短ピットのピット幅は、この短ピット以外の凹凸ピットのピット幅と比べて、同等または小さいものであることを特徴とすることにより、隣接トラックの影響を受けて発生するクロストークを抑制することができる。
本発明が適用される光情報記録媒体用原盤の製造方法では、このように凹凸ピットの列の潜像を形成する電子線を偏向するための外部高周波信号に、所定の最大電圧と最小電圧との間を往復する周期的な信号を印加することにより、ピット幅を一定に保つことができる。このような周期的な信号としては三角波又はのこぎり波であることが好ましく、電子線照射領域の単位面積あたりの電子線照射量を一定に保つことができる。
また、外部高周波信号は、電子線の偏向周波数Fが、電子線のビーム径Pに対する原盤の線速度Vとの比率(V/P)より大きく(F≧V/P)、且つ、偏光量の振幅Hが、原盤上に形成する凹凸ピットの潜像のピット幅Wとビーム径Pとの差(W−P)とほぼ同等(H=W−P)となるように印加し、凹凸ピットの列のエッジ形状の蛇行を防止することを特徴とするものであり、再生信号のノイズを低減することができる。
本発明が適用される光情報記録媒体用原盤の製造方法は、通常、電子線照射手段及び駆動手段を備えた電子線照射装置を用いて実施され、その場合の電子線照射手段としては、電子線を照射し得る電子銃と、電子線を外部高周波信号に基づき偏向する偏向器と、電子線を外部変調信号に基づき変調するブランキング機構と、原盤上に電子線を集束する集束手段と、を有することが好ましい。
また、電子線照射装置が備える駆動手段としては、原盤を保持して一定の線速度で回転する回転手段と、電子線と原盤との水平方向の相対位置を変動させる変動手段と、を有することが好ましい。
さらに、本発明が適用される光情報記録媒体用原盤の製造方法によれば、凹凸ピットの潜像を形成後、極性変化に基づく現像処理により原盤の表面に形成した微細な凹凸ピットをエッチングマスクとしてエッチングを行い、潜像を原盤の表面に転写することにより、マイクロローディング効果が発揮される。その結果、最短ピットである2Tマークの形成を容易に行うことができ、また、最短ピットである2Tマークの再生信号の変調度を更に向上させることができる。尚、エッチングとしては反応性イオンエッチングであることが好ましい。
次に、本発明によれば、光照射による光情報記録媒体用原盤の製造方法であって、フォトレジスト薄膜が表面に塗布された原盤を、駆動手段により回転する工程と、駆動手段により回転する原盤上に、光照射手段により、原盤のトラック方向と直行する偏波面を有する直線偏光を集光する工程と、集光された直線偏光により、原盤上に螺旋状又は同心円状に配置され、ピット長がピット幅より小さい形状の短ピットを含む凹凸ピットの潜像を形成する工程と、を有することを特徴とする光情報記録媒体用原盤の製造方法が提供される。
このようなピット長がピット幅より小さい形状の凹凸ピットを含むピット列を螺旋状或いは同心円状に配置することにより、再生信号の変調度の高い光情報記録媒体を作成することが可能となる。
また、原盤上に形成される潜像の中、ピット長がピット幅より小さい形状の短ピットのピット幅は、この短ピット以外の凹凸ピットのピット幅と比べて、同等または小さいものであることを特徴とすることにより、隣接トラックの影響を受けて発生するクロストークを抑制することができる。
本発明が適用される光情報記録媒体用原盤の製造方法は、通常、光照射手段及びフォトレジスト薄膜が塗布された原盤を半径方向に移動しつつ回転する駆動手段を備えた原盤露光装置を用いて実施される。その場合の駆動手段は、原盤を保持して一定の線速度で回転する回転手段と、直線偏光と原盤との水平方向の相対位置を変動させる変動手段と、を有することが好ましい。また、光照射手段としては、レーザ光を出射する光源と、レーザ光を外部信号に基づき強度変調する変調手段と、強度変調されたレーザ光を原盤の表面に集光する集光手段と、を有することが好ましい。
また、レーザ光を出射する光源を備える光照射手段には、トラック方向と直交する偏波面を有する直線偏光を集光手段に導く直線偏光手段をさらに備えることが好ましい。直線偏光手段としては、例えば、1/2波長板等の光学素子を光軸上に設ける手段が挙げられる。集光手段に導かれたトラック方向と直交する偏波面を有する直線偏光により、短ピットのピット幅が半径方向に広がり、高い変調度を確保することができる。
また、直線偏光手段は、直線偏光を集光手段に1本のみ導くことにより、原盤露光装置の構成を簡略化でき、光ビームの調整が容易等、生産効率を向上させることができる。
さらに、本発明が適用される光情報記録媒体用原盤の製造方法によれば、凹凸ピットの潜像を形成後、極性変化に基づく現像処理により原盤の表面に形成した微細な凹凸ピットをエッチングマスクとしてエッチングを行い、潜像を原盤の表面に転写することにより、マイクロローディング効果が発揮される。その結果、最短ピットである2Tマークの形成を容易に行うことができ、また、最短ピットである2Tマークの再生信号の変調度を更に向上できる。尚、エッチングとしては反応性イオンエッチングであることが好ましい。
次に、本発明によれば、このような光情報記録媒体用原盤の製造方法により製造した光情報記録媒体用原盤の表面には、ピット長がピット幅より小さい形状の短ピットを含む螺旋状又は同心円状に配置された凹凸ピット形成され、この原盤の表面に導電膜を形成した後、ニッケル電気めっきを行い、ニッケルめっき層に電子線感応レジストパターンを転写した光情報記録媒体用原盤から剥離することによって製造された光情報記録媒体用スタンパが提供される。
さらに、前述した方法により作成した光情報記録媒体用スタンパを使用し、例えば、ポリカーボネイト樹脂等の射出成型を行うことにより、レジストパターンが転写された記録トラックが表面に形成された基板を得ることができる。
即ち、本発明によれば、前述した方法により作成した光情報記録媒体用スタンパを用いて成型した基板を備え、基板の表面にピット長がピット幅より小さい形状の短ピット含む螺旋状又は同心円状に配置された凹凸ピットを有することを特徴とする光情報記録媒体が提供される。尚、光情報記録媒体としては、この基板上に、記録膜、反射層、保護層等の中から選ばれる所定の各層を積層することが好ましい。
また、本発明が適用される光情報記録媒体の基板に形成された凹凸ピットに含まれる最短ピットが2Tマークであり、この凹凸ピットに基づく再生信号のジッタが8%以下であることを特徴とするものである。また、このような短ピットのピット長が180m以下であることが好ましい。
かくして本発明によれば、線密度を高くした場合に充分な再生信号の変調度が確保される光情報記録媒体を調製するための光情報記録媒体用原盤の製造方法が得られる。
以下、図面に基づき、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)について説明する。
(第1の実施形態)
本実施の形態が適用される光情報記録媒体用原盤の製造方法の第1の実施形態は、電子線感応レジストが塗布された原盤上に電子線を照射する工程により達成される。
図1は、電子線照射装置を説明する図である。本実施の形態が適用される光情報記録媒体用原盤の製造方法は、図1に示される電子線照射装置100により実施される。図1に示される電子線照射装置100は、電子線照射手段としての電子光学系を収納する鏡塔10と、原盤保持回転手段を備えた試料室20とから構成されている。鏡塔10及び試料室20は、適当な真空装置(図示せず)により真空状態に保たれている。電子光学系は、鏡塔10の内部に取り付けられ、所定の印加電圧(例えば、50kV)により電子線19を放射する熱電子放出型電子銃11と、放射された電子線19を絞るコンデンサレンズ12と、ビーム変調器18により変調された信号源17の信号により、コンデンサレンズ12により絞られた電子線19の変調を行うブランキング電極13と、ブランキング電極13により偏向された電子線19を遮るアパーチャー14と、電子線19の振幅を制御器26の信号に基づき偏向させる偏向電極15と、電子線19を微小なビーム径に絞り、原盤21上に照射する対物レンズ16と、を備えている。
試料室20中には、原盤21を保持して回転する駆動手段である回転台22と、原盤21を水平方向に移動させ、電子線19と原盤21との水平方向の相対位置を変動させる変動手段としての移動台23とが備えられ、回転台22及び移動台23は、リードスクリュー24を介して、ACサーボモーター25の動力が伝達されている。
次に、電子線照射装置100の作用を説明する。図1に示すように、熱電子放出型電子銃11から放射された電子線19はコンデンサレンズ12により集束される。ブランキング電極13は、信号源17の信号がビーム変調器18により変調された電場により電子線19の進行方向を偏向し、電子線19のアパーチャー14の通過量を変調する。アパーチャー14を通過した電子線19は、偏向電極15により偏向制御されたのち、対物レンズ16により再度集束された後、原盤21の表面に照射される。
偏向電極15は、制御器26の振幅制御信号による高周波振動の振幅を制御し、これにより、電子線19の偏向量が制御される。制御器26は、原盤21に照射される電子線19の原盤21上の位置と、その位置における原盤21の回転数の情報とに基づく演算を行い、電子線19の偏向量を制御する。
また、制御器26は、原盤21に照射される電子線19と原盤21との水平方向の相対位置に基づく回転数制御信号により、ACサーボモーター25を制御し、原盤21の回転数を制御する原盤回転制御手段としても機能する。
次に、電子線照射装置100を用いて、本実施の形態が適用される光情報記録媒体用原盤の製造方法について説明する。電子線照射装置100において、加速電圧を所定の電圧に上昇させることにより、電子線19のビーム径を、光学読み取り式の光ディスクドライブ又は光磁気ディスクドライブに搭載される記録再生レーザ光を対物レンズにより集光したスポットサイズよりも小さい径にまで集束させることが可能である。また、電子線19は、光とは異なり価電粒子の流れであるため、磁場又は電場により進行方向を変えることができ、このため、光ビームと比較して高速偏向及びブランキングを利用した変調が可能である。
熱電子放出型電子銃11から放出された電子線19を、外部から所定の高周波信号が印可された偏向電極15により、トラック方向に対しほぼ垂直に高速に偏向させる。同時に、外部の信号源17から所定の変調信号が印可されたブランキング電極13により電子線19の変調を行い、電子線感応レジスト薄膜を有する原盤21の表面に集束させる。さらに、これと同時に、原盤21を所定の速度で回転させながら、半径方向に所定の速度で移動させ、原盤21表面の電子線感応レジスト薄膜に、螺旋状のトラックに沿って、変調したピット列の潜像を形成する。原盤21の表面に電子線19を集束し、ピット列の潜像を形成する場合は、半径位置によって原盤21の回転数を連続的に変化させるCLV(Constant Linear Velocity)方式により、原盤21を線速度一定の条件で回転することが好ましい。
このとき、電子線19の偏向周波数F(単位:1/sec)が、電子線19のビーム径をP(単位:m)、電子線19を照射する際の原盤21の線速をV(単位:m/sec)、原盤21に形成する凹凸ピットのピット幅をW(単位:m)とすると、電子線19の偏向周波数Fは、(V/P)より大きく(F≧V/P)、且つ、偏向量の振幅H(単位:m)が(W−P)となる(H=W−P)ように、外部信号を印加することが好ましい。ここで、電子線19のビーム径Pは、偏向量を0とした場合に形成される凹凸ピットのピット幅として定義される。こうすることにより、凹凸ピットのエッジ形状が蛇行することを防ぎ、再生信号のノイズを低く抑えることが可能となる。
電子線19の偏向周波数Fがこのような条件の場合、電子線19をトラック方向に対しほぼ垂直に振動させることができ、外部信号に基づき電子線19の偏向量を制御することにより任意のピット幅を形成できる。また、形成するピット幅よりも微細なビームを高周波で振動させてピット列を描画するため、回転線速に対するブランキング電極13における変調速度を上昇させても、形成されるピット幅の減少が抑えられる。このため、電子線19の偏向量を適切に設定することにより、総ての凹凸ピットのピット幅を、変調度が最大となるピット幅に一定に保つことが可能となる。更に、適切な速度で、ブランキングにより変調を行うことにより、変調度が最大となるピット長がピット幅より小さい形状の微細な凹凸ピットを形成することができ、短ピットの変調度を高く保つことができる。
更に、偏向制御信号に所定の最大電圧と最小電圧との間を往復する周期的な信号を印加することによりピット幅を一定に保つことが可能となる。周期的な信号としては、例えば、正弦波、矩形波、三角波、のこぎり波等が挙げられる。
この場合、最大電圧と最小電圧との間を往復する周期的な信号を三角波又はのこぎり波とすることが好ましい。周期的な信号が三角波又はのこぎり波の場合、原盤21上に塗布された電子照射領域の単位面積あたりの電子線照射量を更に一定に保つことができる。
図2は、本実施の形態が適用される製造方法により形成された凹凸ピットの形状を説明する図である。図2(A)は、凹凸ピットの形状であり、図2(B)は、変調信号であり、図2(C)は、三角波の電子線の軌跡であり、図2(D)は、偏光信号である。図2(A)及び図2(C)中のWは、形成する凹凸ピットのピット幅であり、図2(A)中のLは、形成する凹凸ピットのピット長であり、図2(C)中のPは、電子線のビーム径である。
図2(A)に示すように、短マークである2Tマーク又は3Tマークは、ピット幅Wはピット長Lより大きく、このような短マークでは、従来のレーザ光のビーム径を用いる方法と比較して、凹凸ピットのピット幅Wを広げることができる。また、2Tマーク〜5Tマークの総ての凹凸ピットのピット幅Wを、変調度が最大となる幅に一定に保つことが可能となる。
次に、原盤21の構成について説明する。原盤21は、適当な基板上に電子線感応レジストをスピンコートした後、加熱処理によって余剰の溶剤を除去し、電子線感応レジスト薄膜が形成されている。
原盤21の基板としては、例えば、シリコンウェハー、石英ガラス、ソーダガラス、表面に導電層を形成した石英ガラス、表面に導電層を形成したソーダガラス等が挙げられる。これらの中でも、シリコンウェハーが、チャージアップが少なく好適である。
電子線感応レジストは、通常、酸発生剤とバインダー樹脂とを、塩基性化合物を溶解させて塩基性に調整された溶剤で希釈して用いられる。
酸発生剤としては、電子線の照射により化学構造が変化し、酸性物質を生成するものであれば特に限定されないが、例えば、トリフェニルスルフォニウムトリフレート、トリフェニルスルフォニルノナフレート、ビスフェニルヨードニウムトリフレート、ビスフェニルヨードニウムノナフレート、ビスフェニル−p−メトキシフェニルノナフレート、ビスフェニル−p−メチルフェニルノナフレート等のオニウム塩類;1,8−ナフタルイミジルメタンスルフォネート、1,8−ナフタルイミジルトリフレート、1,8−ナフタルイミジルトシレート、ベンゾイントシレート等のスルフォン酸エステル類;ビス(フェニルスルフォニル)ジアゾメタン、ビス(p−クロロフェニルスルフォニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルフォニル)ジアゾメタン等のジアゾメタン類等が挙げられる。これらの中でも、トリフェニルスルフォニウムトリフレート等のオニウム塩が、高感度を実現でき好適である。酸発生剤の具体例を以下に示す。
Figure 2006099876
バインダー樹脂としては、電子線照射により、酸発生剤が化学変化し、その結果生成した酸性物質により、室温又は加熱状況下で極性変化するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸イソプロピル、アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;ポリヒドロキシスチレン誘導体等が挙げられる。これらの中でも、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)が極性変化による現像速度の変化が大きく好適である。また、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)の分子量分布を狭くすることで、電子線照射領域における現像残差を軽減でき好適である。
溶剤は、酸発生剤およびバインダー樹脂を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、プロピレングリコール−2−モノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PE)等のセルソルブ類;2−ヘプタノン(HP)、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン類;乳酸エチル(EL)、酢酸ブチル(BA)等のエステル類;更に、これらの混合溶媒等が、スピンコート後の電子線感応レジスト薄膜の膜厚均一性を向上でき好適である。中でも、プロピレングリコール−2−モノメチルエーテルアセテート(PGMEA)と乳酸エチル(EL)との混合溶媒が特に好ましい。更に、塩基性化合物を溶解して塩基性に調製することにより、現像後の所定の長さを有する各ピットの大きさの面内均一性が向上する。
塩基性化合物としては、電子線照射により酸発生剤が化学変化し、その結果生成した酸性物質と中和反応を起こし得るものであれば特に限定されないが、例えば、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチルチメタン)(Bis−Tris)、トリイソプロパノールアミン(TIPA)等の、スピンコート後の熱処理により蒸散の生じない不揮発性塩基化合物が好ましい。この中でも、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチルチメタン)(Bis−Tris)が現像後の電子線感応レジストの側壁角が急峻であり、好適である。塩基性化合物の具体例を以下に示す。
Figure 2006099876
また、溶剤にはスピンコートにより形成する電子線感応レジスト薄膜の膜厚の均一性を向上させるために、界面活性剤を微量添加することが好ましい。界面活性剤は、フッ素を含有するものが、スピンコートの際にストライエーションの発生を抑制する効果が大きく好適である。
次に、電子線照射装置100を用いて電子線照射された原盤21から光情報記録媒体用原盤を調製する方法について説明する。
電子線照射により、電子線感応レジスト薄膜に所定の潜像を形成した原盤21をホットプレートで下面より加熱し、電子線感応レジスト薄膜の電子線19を照射した領域の極性を変化させる。続いて、極性変化の生じた電子線照射領域をアルカリ現像液で溶解し、レジストパターンを得る。
現像液は、極性変化が生じた電子線感応レジスト薄膜を溶解するものであれば特に限定されないが、例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液、水酸化カリウム(KOH)水溶液、燐酸緩衝液、およびこれらの混合物等が好ましい。これらの中でも、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いると、現像後の電子線感応レジストに、急峻な側壁角を有する微細な凹凸形状が形成されるので、好適である。
本実施の形態では、目的とする変調度が最大となるピット幅よりも、集束した電子線19のビーム径が小さくなるように加速電圧を上昇させる必要がある。これに対して、一般に、加速電圧の上昇と相反して電子線感応レジストの感度は低下する。このような電子線感応レジストの感度の低下は、原盤21上に形成する電子線感応レジスト薄膜の膜厚を増加することにより改善できる。
しかし、一方、電子線感応レジスト薄膜の膜厚が増加すると、原盤21上に形成される微細な凹凸ピットの深さを、変調度が最大となるピット深さと同一にすることが困難になる。このため、原盤21の表面に微細な凹凸ピットの潜像を転写する方法としては、例えば、酸素プラズマアッシングにより、電子線感応レジストによって形成された微細な凹凸ピットの深さを調整する方法、或いは、この原盤21上の電子線感応レジスト薄膜に形成された微細な凹凸ピットをエッチングマスクとし、反応性エッチング等のエッチングの手法を用いて、変調度が最大となるピット深さとなるように電子線感応レジスト薄膜で形成した微細な凹凸ピットを転写する方法が挙げられる。この中でも、反応性エッチングは、マイクロローディング効果により、微細な凹凸ピットの形成が容易となり特に好適である。
反応性イオンエッチングに用いる気体は、電子線感応レジストのエッチング速度に対する原盤21のエッチング速度、即ち、エッチング選択比が1.0以上であれば特に限定されないが、例えば、CHF、C等の炭化フッ素ガスは、エッチング選択比が大きく好適である。この中でも、Cは、エッチング速度の面内均一性が良好となり特に好適である。
反応性イオンエッチング等のエッチングの場合は、続いて、原盤21表面に残った電子線感応レジストを除去し、光情報記録媒体用原盤を完成させる。電子線感応レジストを除去する方法は、原盤21に転写した凹凸ピットの形状を劣化させない方法であれば特に限定されない。具体的には、酸素プラズマアッシング、有機溶剤による溶解、アルカリ水溶液による溶解等の方法を採用することが出来る。中でも、原盤にシリコンウェハーを用いた場合は、シリコンウェハーの化学エッチングの起こらない酸素プラズマアッシングが好適である。
このように作成した変調度が最大となるピット深さに制御された電子線感応レジストパターンを有する光情報記録媒体用原盤、または電子線感応レジストパターンを転写した光情報記録媒体用原盤の表面に、導電膜を形成した後、ニッケル電気めっきを行い、ニッケルめっき層に電子線感応レジストパターンを転写した光情報記録媒体用原盤から剥離することによって、光情報記録媒体用スタンパが得られる。
光情報記録媒体は、通常、このように作成した光情報記録媒体用スタンパを使用し、例えば、ポリカーボネイト樹脂等の射出成型を行うことにより、電子線感応レジストパターンが転写された記録トラックが表面に形成された基板を得た後、この基板上に記録層、反射層、保護層等の中から選ばれる所定の各層を積層して調製される。
以上、詳述したように、本実施の形態が適用される光情報記録媒体用原盤の製造方法によれば、電子線19をトラック方向に対し略垂直に高速に偏向させながら、同時に所定の外部信号に基づき変調を行い、電子線感応レジスト薄膜を形成した原盤21に電子ビーム19を集束し、潜像を形成した電子線感応レジスト薄膜を有する原盤21を極性変化に基づいた現像処理をすることにより、回転線速に対する変調パルスが短くなった場合にも、総てのピット幅Wを変調度が最大となるピット幅Wに一定に保ちつつ、線密度が高く、ピット長Lがピット幅Wより小さい形状の短ピットを形成でき、このような短ピットの再生信号を良好に保つことが出来る。
また、本実施の形態が適用される光情報記録媒体用原盤の製造方法において、偏向制御信号に所定の最大電圧と最小電圧との間を往復する周期的な信号を印加することにより、ピット幅Wを一定に保つことが可能となり、更に、最大電圧と最小電圧との間を往復する周期的な信号が三角波又はのこぎり波の場合は、単位面積当たりの電子線照射量を更に一定に保つことができる。
また、電子線19のビーム径P、電子線照射の際の原盤の線速V、形成する凹凸ピットのピット幅Wの場合、電子線19のトラックにほぼ垂直な方向の偏向の周波数Fが(V/P)以上であり、偏向振幅Hが(W−P)となるような外部信号を印加することにより、凹凸ピットのエッジ形状が蛇行することを防ぎ、再生信号のノイズを低く抑えることが可能となる。
また、本実施の形態が適用される光情報記録媒体用原盤の製造方法に製造された原盤を用いて調製された光情報記録媒体は、従来の光情報記録媒体と比較して線密度が向上し、また、再生装置に大きな変更を必要としないため、これとの互換性を保つことが容易である。
(第2の実施形態)
次に、本実施の形態が適用される光情報記録媒体用原盤の製造方法の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態によれば、トラック方向と直交する偏波面を有する直線偏光を露光レンズに導くことにより、ピット長Lがピット幅Wより小さい楕円状短ピットを形成することができる。この場合、1本の光ビームのみを使用するので、露光装置の構成及びその信号源を極めて簡素化でき、また、ビームの調整も容易となり、生産効率が向上する。
図3は、原盤露光装置を説明する図である。図3には、トラック方向と直交する偏波面を有する直線偏光のレーザ光のビームをフォトレジスト薄膜を有する原盤に照射し、潜像を形成する原盤露光装置300が示されている。図3に示す原盤露光装置300は、フォトレジストを露光するためのレーザ光を発振するレーザ光発生装置31と、レーザ光の強度の時間変動を吸収する電気光学(EO)素子32と、凸レンズ34,37及び音響光学(AO)素子35から構成され、外部信号に基づきレーザ光のビームを変調するビーム変調部310と、凸レンズ39,41及びアパーチャー40から構成されるビーム整形部320と、レーザ光の偏波面の回転を行う1/2波長板43と、凸レンズ44,45からなるビームエキスパンダ330と、変調されたレーザ光のビームを原盤回転台51に載置された原盤50の表面に塗布されたフォトレジスト薄膜に集光する露光レンズ49を備え、集光されたレーザ光を原盤50上の所定の半径位置へと導く移動光学系340と、から構成されている。また、光軸上には、ミラー33,38,46,47,48が設けられている。
レーザ光発生装置31より発振されるレーザ光としては、例えば、クリプトンレーザ(波長351nm)、アルゴンレーザ等を非線型光学結晶に導いて得られる第2高調波(波長257nm)、位相同期半導体レーザ励起のYAGレーザ共振器内に非線型光学結晶を配置し出力させたレーザ光をさらに非線型光学結晶に導いて得られる第2高調波(266nm)等が用いられる。
ビーム変調部310は、例えば、凸レンズ34,37と互いの焦点位置に配置された音響光学(AO)素子35とから構成され、発生した1次光を露光レンズ49へ導くように配置される。音響光学(AO)素子35から発生した1次回折光は、外部信号により強度変調が可能であり、露光レンズ49を透過する光量を変調し、原盤50表面に塗布されたフォトレジスト薄膜に凹凸ピットに対応した潜像を形成する。尚、ビーム変調部310としては、この他に、電気光学(EO)変調素子等を用いることができる。
尚、図3に示す原盤露光装置300では、フォトレジスト薄膜を塗布した原盤50に照射する短波長ビームの変調を音響光学(AO)素子35を用いて行う場合、通常、高速変調を目的として、露光ビームを凸レンズ34で集光し、凸レンズ34の焦点位置近傍で音響光学(AO)素子35に照射し、その1次回折光を抽出している。このとき、集束光である短波長ビームの入射方向が超音波の進行方向に対し僅かに異なるため、回折効率に差が生じる。その結果、音響光学(AO)素子35を透過した1次光は、凸レンズ37により再び平行光となった後に僅かに楕円形状の強度分布となる。しかし、このような楕円形状の強度分布を有する光ビームを露光レンズ49へ導くだけでは、ピット長Lがピット幅Wより小さい形状の凹凸ピットを形成することができないことが、本発明者等の検討により判明している。
ビーム整形部320は、凸レンズ39,41とその焦点位置に配置されたアパーチャー40とから構成され、ビーム変調部310を透過した露光ビームの波面を整える。
ビームエキスパンダ330は、焦点距離の異なる2つの凸レンズ44,45から構成され、露光ビームのビーム径を拡大し、露光レンズ49へと導く。
原盤回転台51は、原盤50を載置し所定の回転速度で回転する。移動光学系340は、回転する原盤50表面上に塗布されたフォトレジスト薄膜の所定の半径位置に、露光ビームを移動させる。
1/2波長板43は、原盤50表面に塗布されたフォトレジスト薄膜に所定の偏光方向の露光ビームを導くために配置される。本実施の形態においては、1/2波長板43により、トラック方向に直交する偏波面を有する直線偏光が露光レンズ49に導かれ、ピット長Lがピット幅Wより小さい楕円形状の短ピットを形成することができる。
尚、レーザ光発生装置31から出力されたレーザ光をそのまま露光レンズ49に導くことにより、トラック方向に垂直な偏波面を有する露光ビームを、原盤50表面に塗布されたフォトレジスト薄膜に照射できる場合には、1/2波長板43は不要である。
次に、原盤露光装置300を用いて、本実施の形態が適用される光情報記録媒体用原盤の製造方法の第2の実施形態について説明する。
即ち、レーザ光発生装置31より発振されるレーザ光は、ビーム変調部310に備わる音響光学(AO)素子35により1次回折光を発生し、発生した1次回折光は、1/2波長板43により原盤21の半径方向と直交する偏波面を有する直線偏光として露光レンズ49へ導かれる。また、外部信号により露光レンズ49を透過する光量を変調し、線速度一定の条件(CLV)で回転する原盤50表面に塗布されたフォトレジスト薄膜に凹凸ピットに対応した潜像を形成する。
トラック方向と直交する偏波面を有する直線偏光のレーザ光のビームをフォトレジスト薄膜を有する原盤に照射することにより、ピット長Lがピット幅Wより小さい楕円形状の短ピットの潜像が形成されることは以下のように説明される。
図4は、露光レンズに導かれた偏波面を有する偏光を説明する図である。図4には、露光レンズ410に入射する光ビーム411と、露光レンズ410の中央近傍の偏光の電場振動412と、露光レンズ410の外側の偏光の電場振動413とが示されている。図4中の、Iyは、露光レンズ410の外側の偏光の電場振動413のY軸方向の振動成分であり、Izは、露光レンズ410の外側の偏光の電場振動413のZ軸方向の振動成分である。
図4において、偏波面が紙面に平行であり、トラックが紙面に垂直となっている。光ビームが露光レンズ410の中央近傍を透過する場合には、像面に直交する電場の振動成分はわずかであるが、露光レンズ410の外側ほど、像面に対し角度を持って入射するので、像面に直交する電場の振動成分が増加する。この傾向は、開口数(NA)が大きくなる程顕著となる。一方、光ビームはガウシアン分布を有し、このため中央部分が最も強度が強い。このため、像面における像面に直交する電場のエネルギー密度は2個の極大値を有するようになる。反対に像面に平行な方向に振動する成分(紙面の横方向)は減少、実効的な開口数(NA)が減少するような挙動を示す。
図5は、図4のY軸方向の図である。図4において、偏波面が紙面に垂直であり、トラックが紙面に平行となっている。図4との大きな違いは、像面に対する入射角度が変化しても、像面に直交する電場の振動成分が生じないことである。この結果、半径方向に偏波面を有する偏光を露光レンズ410に導いた場合、像面に平行な振動成分と、直交する振動成分の和で表される電場のエネルギー密度分布は偏光(半径)方向に伸びることになる。
電場のエネルギー密度は露光レンズ410に導く偏光方向にそって伸びた形状となるが、電磁波には電場と直交する磁場が存在し、磁場のエネルギー密度は反対に露光レンズ410に導く偏光方向に直行する方向に伸びた形状となる。このため通常、電磁波のエネルギーの大きさは、偏光方向とそれに直行する方向とで等しくなる。
一方、光と物質の相互作用は電気双極子遷移で近似的に表記でき、光の電場によって励起される電気双極子モーメントは電場に比例する。即ち、フォトレジストの感光は磁場のエネルギー密度には関係なく、電場のエネルギー密度のみに支配される。また、フォトレジスト薄膜は等方的な膜であり、感度は電場の振動方向には依存しない。よって、フォトレジストの感光量は電場の各々の方向成分のエネルギー密度分布の和で決定される。
このように、図3に示す原盤露光装置300において、トラック方向と直交する偏波面を有する偏光を露光レンズ49に導き、所定のパルス幅の信号に基づき、変調速度させた光ビームの焦点位置において極性変化が起こるフォトレジスト薄膜を感光させると、極性変化に基づいた現像処理によって、目的とする変調度が最大となるピット長Lがピット幅Wより小さい短い凹凸ピットが形成でき、短ピットの変調度を高くすることができる。
図3に示す原盤露光装置300において、トラック方向と直交する偏波面を有する直線偏光を露光レンズ49に導くことにより、前述した変調度が最大となるピット幅に対し、ピット長Lが小さい形状を有する短ピットを含む、高い線密度を有する光情報記録媒体に含まれる短ピットの変調度を高くすることができる。例えば、記録再生光が波長405nmのブルーレーザの場合、最短ピット長が180nm以下となる高い線密度を有する光情報記録媒体に含まれる短ピットの変調度を高くすることができる。
尚、既存のCD−ROMやDVD−ROMの場合では、最短マーク長が3Tであり、変調度が最大となるピット幅に対しピット長Lが小さい形状の凹凸ピットが含まれないので、電場エネルギー分布が半径方向とトラック方向とで等しい円偏光を使用する場合でも、ノイズレベルの充分に低いものが作製できる。
図6は、本実施の形態が適用される製造方法により形成された凹凸ピットの形状を説明する図である。図6(A)は、凹凸ピットの形状であり、図6(B)は、変調信号である。図6(A)に示すように、従来の円偏光を使用する露光方法と比較して、2T及び3Tの短マークのピット幅を広くすることができる。
このように、本実施の形態によれば、半径方向と直交する偏波面を有する直線偏光を露光レンズ49に導くことにより、半径方向に伸びた凹凸ピットを形成することができ、高い変調度が確保できる。同様の理由により、半径方向と直交する偏波面を有する直線偏光を露光レンズ49に導くことにより、溝幅が更に狭い案内溝を形成できる。
次に、原盤露光装置300を用いてレーザ光が照射された原盤50から光情報記録媒体用原盤を調製する方法について説明する。
初めに、フォトレジスト薄膜を塗布した原盤50の作製方法について説明する。
原盤50は、例えば、シリコンウェハー、石英ガラス、ソーダガラス、表面に導電層を形成した石英ガラス、表面に導電層を形成したソーダガラス等が使用され、特に限定されない。
フォトレジストには、レーザ光の照射により極性が変化し、現像によりパターンを形成できるものであれば、特に限定はされない。通常、クレゾールノボラック樹脂とナフトキノンジアジドと混合系、ポリヒドロキシスチレン誘導体と光酸発生剤との混合系等のポジ型フォトレジスト等が挙げられる。中でも、露光開始時点と露光終了時点とにおける現像後に形成される凹凸ピットの大きさが、より均一であることから、クレゾールノボラック樹脂とナフトキノンジアジドとの混合系が特に望ましい。
ポリヒドロキシスチレン誘導体と光酸発生剤との混合系は、電子線感応レジストの場合と同様に、酸発生剤とポリヒドロキシスチレン誘導体とを、塩基性化合物を溶解し塩基性に保った溶剤で希釈して用いることにより、現像後に形成される凹凸ピットの大きさを、より均一に保つことができる。使用する酸発生剤、塩基性化合物及び溶剤としては、電子線感応レジストと同様のものが使用できる。
酸発生剤は、使用するレーザ光の波長に応じて最適な酸発生剤を選択することが好ましい。例えば、クリプトンレーザ(波長351nm)を用いる場合は、1,8−ナフタルイミジルトシレートが挙げられる。また、アルゴンレーザを非線型光学結晶に導いて得られる第2高調波(波長257nm)を用いる場合は、ビス(フェニルスルフォニル)ジアゾメタンが挙げられる。これらは、それぞれ現像後のフォトレジストの側壁角が急峻であり、特に好適である。
上述したフォトレジストを原盤50上にスピンコートし、加熱処理を行って余剰の溶剤を除去し、原盤50表面にフォトレジスト薄膜を形成する。
続いて、極性変化が生じた露光ビーム照射領域をアルカリ現像液で溶解し、レジストパターンを得る。現像液としては、極性変化が生じたフォトレジスト薄膜を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液、水酸化カリウム(KOH)水溶液、燐酸緩衝液、及びこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液が、現像後のフォトレジストの側壁角が急峻であり、好適である。
さらに、このように調製した光情報記録媒体用原盤を用いて、以下のように光情報記録媒体を調製する。現像処理によりフォトレジストパターンを形成した光情報記録媒体用原盤表面に導電膜を形成し、ニッケル電気めっきを行い、フォトレジストパターンを形成した光情報記録媒体用原盤より剥離することによって光情報記録媒体用スタンパが得られる。
また、フォトレジストパターンをエッチングマスクとして、反応性イオンエッチングによりフォトレジストパターンを原盤50に転写し、この表面に導電膜を形成し、ニッケル電気めっきを行い、フォトレジストパターンを形成した光情報記録媒体用原盤より剥離することによって光情報記録媒体用スタンパを得ることもできる。このような方法によれば、再生信号のノイズがより低い光情報記録媒体を調製することができる。また、反応性イオンエッチングによりフォトレジストパターンを原盤50に転写する手法は、マイクロローディング効果により、微細な凹凸ピットの形成が容易となり特に好適である。
反応性イオンエッチングに用いる気体は、フォトレジストのエッチング速度に対する原盤50のエッチング速度、即ちエッチング選択比が1.0以上であれば特に限定されないが、例えば、CHF、C等の炭化フッ素ガスは、エッチング選択比が大きく好適である。中でも、Cはエッチング速度の面内均一性が良好となり特に好適である。
更に、光情報記録媒体用スタンパを用いて、2P法、射出成型法等により、フォトレジストパターンを表面に形成した基板を得、これに記録膜或いは反射層、保護層等のうち所定の各層を積層して光情報記録媒体を作成する。
以上、詳述したように、本実施の形態が適用される光情報記録媒体用原盤の製造方法の第2の実施形態によれば、所定の外部信号に基づき変調を行い、トラック方向に直交する偏波面を有する直線偏光を露光レンズ49に導き、フォトレジスト薄膜を塗布した原盤50に光ビームを集光し、フォトレジスト薄膜に潜像を形成した原盤50を極性変化に基づいた現像処理をすることにより、変調パルスが短くなった場合にも線密度の高い、ピット長Lがピット幅Wより小さい形状の凹凸ピットを形成することができ、短ピットの再生信号を良好に保つことが出来る。
また、所定の外部信号に基づき変調を行い、トラック方向に直交する偏波面を有する直線偏光を一本のみ露光レンズ49に導く構成により、簡略化された原盤露光装置300を得ることができ、且つ、光ビームの調整を容易にし、生産効率を向上させることができる。
以下、実施例に基づき本実施の形態をさらに具体的に説明する、尚、本実施の形態は実施例に限定されない。
(実施例1)
(1)電子線感応レジスト薄膜を有するシリコンウェハーの調製
以下の溶液1〜溶液3を混合して電子線感応レジストを調製し、これをシリコンウェハーにスピンコートし、ホットプレートで110℃で2分間加熱し、膜厚80nmの電子線感応レジスト薄膜を有するシリコンウェハーを調製した。
(i)溶液1
トリフェニルスルフォニウムトリフレート200mgとポリメタクリル酸メチル10g(但し、重量平均分子量/数平均分子量≦1.2)とをプロピレングリコール−2−モノメチルエーテルアセテート及び乳酸エチル混合溶媒54gに溶解した溶液5.40g。
(ii)溶液2
(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチルチメタン)0.79gを乳酸エチル100gに溶解した溶液0.22g。
(iii)溶液3
界面活性剤(住友3M株式会社製:FC−430)2gをプロピレングリコール−2−モノメチルエーテルアセテート100gで希釈した溶液0.029g。
(2)光情報記録媒体用原盤の調製
(i)電子線照射
前述した電子線感応レジスト薄膜を有するシリコンウェハーを線速1m/秒で一定となるように回転させると同時に、トラックピッチ0.32μmとなるように原盤回転台を半径方向に移動させ、電子線照射により螺旋状に配列されたピット列の潜像を形成した。
電子線は、13.4MHzの三角波の外部信号を偏向電極に印可し、シリコンウェハーの半径方向に120nm(p−p)の幅で偏向させると同時に、ブランキング電極にピット列を生成するためのON/OFF信号を印可して変調させた。変調はBluRay Discで用いられている17PPに従ったランダム変調方式とした。変調のチャネルクロックは、Hz(チャネルビット長74.5nm)とした。電子線照射装置は、加速電圧50kV、集束半角6mrad、ビーム電流約120nAとした。
(ii)現像操作
電子線照射が完了したシリコンウェハーをホットプレートで下面より加熱し、電子線感応レジスト薄膜の電子線を照射した領域の極性を変化させた。これを現像液(東京応化工業株式会社製:NMD−3)を純水で希釈した溶液で現像し、極性変化した領域を溶解することによって、シリコンウェハー上に形成したレジストパターンが得られた。
続いて、電子線感応レジストパターンをエッチングマスクとして、Cガスを用いた反応性イオンエッチングにより電子線感応レジストパターンを原盤に転写した。更に、酸素プラズマアッシングにより、残った電子線感応レジストを除去することによって、光情報記録媒体用原盤を得た。
このシリコンウェハー製の光情報記録媒体用原盤に形成された最短ピットの2Tマークを、原子間力顕微鏡(AFM)で観察した結果を表1に示す。
(3)光情報記録媒体の調製
(i)スタンパの調製
シリコンウェハー製の光情報記録媒体用原盤にスパッタリング法にてニッケル導電皮膜を形成した後、電気めっきにより平均290μmのニッケル皮膜を形成した。次いで、シリコンウェハーとニッケル皮膜を剥離し、光情報記録媒体用スタンパを得た。
(ii)光情報記録媒体
次に、光情報記録媒体用スタンパを用いてポリカーボネイト樹脂の射出成型を行い、電子線感応レジストパターンを表面に形成したポリカーボネイト基板を得、これに反射膜をスパッタリングにより形成した後、紫外線硬化樹脂を用いて保護コート層を形成し、光情報記録媒体を作成した。
このように調製した光情報記録媒体をBluRay Discのテスターでリミットイコライザーとともに再生信号を評価したジッタの結果を表1に示す。
(実施例2)
(1)フォトレジスト薄膜を有する石英原盤の調製
クレゾールノボラック樹脂及びナフトキノンジアジド混合系ポジ型レジスト(東京応化工業株式会社製:ポジ型フォトレジストTDMR−AR80HP)75gを2−ヘプタノン425gに希釈して調製したフォトレジスト溶液を石英ガラス原盤にスピンコートした後、ホットプレートで120℃で2分間加熱し、石英ガラス原盤の表面に膜厚80nmのフォトレジスト薄膜を有する石英原盤を調製した。
(2)光情報記録媒体用原盤の調製
(i)フォトレジスト薄膜の露光
前述した表面にフォトレジスト薄膜を有する石英原盤を線速1.0m/秒で一定となるように回転させると同時に、トラックピッチ0.32μmとなるように集光レンズを半径方向に移動させ、トラック方向と直交する偏波面を有する直線偏光されたレーザ光を照射して螺旋状に配列されたピット列の潜像を形成した。
露光ビームは、アルゴンの発振線の一つである波長514nmのレーザ光を非線型光学素子に導き、発生した第2高調波(波長257nm)を用いた。露光ビームの変調方式はBluRay Discで用いられている17PPに従ったランダム変調とした。変調のチャネルクロックは、13.4MHz(チャネルビット長74.5nm)である。
(ii)現像操作
直線偏光されたレーザ光の照射が完了した石英原盤を現像液(東京応化工業製NMD−3)を用いて現像し、極性変化した領域を溶解することによって、石英原盤上に形成したレジストパターンが得られた。
続いて、フォトレジストパターンをエッチングマスクとして、Cガスを用いた反応性イオンエッチングによりフォトレジストパターンを石英原盤に転写した。更に、10%の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、残ったフォトレジストを除去することによって、光情報記録媒体用原盤を得た。
この石英製の光情報記録媒体用原盤に形成された最短ピットの2Tマークを、原子間力顕微鏡(AFM)で観察した結果を表1に示す。
(3)光情報記録媒体の調製
(i)スタンパの調製
次に、石英製の光情報記録媒体用原盤に無電界めっき法にてニッケル燐導電皮膜を形成した後、電気めっきにより平均290μmのニッケル皮膜を形成し、次いで、石英原盤とニッケル皮膜を剥離し、光情報記録媒体用スタンパを得た。
(ii)光情報記録媒体
続いて、光情報記録媒体用スタンパを用いてポリカーボネイト樹脂を射出成型することにより、フォトレジストパターンを表面に形成したポリカーボネイト基板を得、これに反射膜をスパッタリングにより形成した後、紫外線硬化樹脂を用いて保護コート層を形成し、光情報記録媒体を調製した。
このように調製した光情報記録媒体をBluRay Discのテスターでリミットイコライザーとともに再生信号を評価したジッタの結果を表1に示す。
(比較例)
比較のため、直線偏光を用いず、円偏光のレーザ光を用いる以外は、実施例2と同様の方法により、光情報記録媒体用原盤及び光情報記録媒体を調製し、光情報記録媒体用原盤に形成された最短ピットの2Tマークを原子間力顕微鏡(AFM)で観察した結果と、光情報記録媒体をBluRay Discのテスターでリミットイコライザーとともに再生信号を評価したジッタの結果とを表1に示す。
Figure 2006099876
表1に示す結果から、電子線感応レジスト薄膜を有するシリコンウェハーを線速度一定の条件で回転させながら、三角波の外部信号により偏向させた電子線を照射して潜像を形成する場合(実施例1)と、フォトレジスト薄膜を有する石英原盤を線速度一定の条件で回転させながら、トラック方向と直交する偏波面を有する直線偏光を行ったレーザ光を照射して潜像を形成する場合(実施例2)とは、最短(2T)マークを、ピット幅よりもピット長が小さい形状の凹凸ピットに形成することできることが分かる。また、このような最短(2T)マークの凹凸ピットを有する光情報記録媒体におけるジッタが低減し、その結果、最短マークの再生の変調度が高く維持できること分かる。
これに対して、従来の方法で、石英原盤上に塗布されたフォトレジスト薄膜に、円偏光のレーザビームを照射して最短(2T)マークを形成する場合(比較例)は、ピット長がピット幅より小さい形状の凹凸ピットを形成することが困難であることが分かる。
以上、詳述したように、本発明によれば、ピット長がピット幅より小さい形状の短ピットを含み、線密度を高くした場合に充分な変調度が確保される光情報記録媒体を調製するための光情報記録媒体用原盤を製造することができる。
また、本発明が適用されるスタンパを用いることにより、ピット長がピット幅よりも小さい形状の短ピットを含み、線密度を高くした場合に充分な再生信号の変調度が確保される光情報記録媒体を製造することができる。
さらに、本発明が適用される光情報記録媒体は、ピット長がピット幅よりも小さい形状の短ピットを含み、線密度を高くした場合に充分な再生信号の変調度が確保される。
電子線照射装置を説明する図である。 本実施の形態が適用される製造方法により形成された凹凸ピットの形状を説明する図である。図2(A)は、凹凸ピットの形状であり、図2(B)は、変調信号であり、図2(C)は、三角波の電子線の軌跡であり、図2(D)は、偏光信号である。 原盤露光装置を説明する図である。 露光レンズに導かれた偏波面を有する偏光を説明する図である。 図4のY軸方向の図である。 本実施の形態が適用される製造方法により形成された凹凸ピットの形状を説明する図である。図6(A)は、凹凸ピットの形状であり、図6(B)は、変調信号である。 従来の原盤露光装置を用い、フォトリソグラフィー法に基づき、外部のパルス変調信号のパルス幅を短くすることにより形成される凹凸ピットの形状を説明する図である。 原盤記録装置のレーザ光又はドライブの記録再生レーザ光の像面における光の強度分布を説明する図である。 光ディスクの反射層から反射する記録再生レーザ光を説明する図である。 記録再生レーザ光のビーム径と凹凸ピットの大きさとの関係を説明する図である。 図10に示した反射光の強度分布を説明する図である。 ビームスポットと凹凸ピットとの関係を説明する図である。 ピット幅とトラックに沿って記録再生光ビームが移動した場合の反射光強度の変化との関係を説明する図である。
符号の説明
10…鏡塔、11…熱電子放出型電子銃、12…コンデンサレンズ、13…ブランキング電極、14,40…アパーチャー、15…偏向電極、16…対物レンズ、17…信号源、18…ビーム変調器、19…電子線、20…試料室、21,21a,21b…原盤、22…回転台、23…移動台、24…リードスクリュー、25…ACサーボモーター、26…制御器、31…レーザ光発生装置、32…電気光学(EO)素子、33,38,46,47,48…ミラー、34,37,39,41,44,45…凸レンズ、35…音響光学(AO)素子、43…1/2波長板、49,410…露光レンズ、50…原盤、51…原盤回転台、71…反射光1、72…反射光2、73…反射光3、74…凹凸ピット部、91,111,121,131…ビームスポット、92、112,122,132,142…凹凸ピット、100…電子線照射装置、300…原盤露光装置、310…ビーム変調部、320…ビーム整形部、330…ビームエキスパンダ、340…移動光学系、412…露光レンズの中央近傍の偏光の電場振動、413…露光レンズの外側の偏光の電場振動

Claims (20)

  1. 電子線照射による光情報記録媒体用原盤の製造方法であって、
    電子線感応レジスト薄膜が表面に塗布された原盤を、駆動手段により前記原盤の半径方向に移動しつつ回転する工程と、
    前記駆動手段により回転する前記原盤上に、電子線照射手段により単一の電子線を、外部高周波信号に基づき当該原盤のトラック方向と略垂直方向に偏向しつつ集束する工程と、
    前記集束された前記電子線により、前記原盤上に螺旋状又は同心円状に配置され、ピット長がピット幅より小さい形状の短ピットを含む凹凸ピットの潜像を形成する工程と、
    を有することを特徴とする光情報記録媒体用原盤の製造方法。
  2. 前記短ピットの前記ピット幅は、当該短ピット以外の前記凹凸ピットのピット幅と比べて、同等または小さいものであることを特徴とする請求項1記載の光情報記録媒体用原盤の製造方法。
  3. 前記外部高周波信号は、前記電子線に所定の最大電圧と最小電圧との間を往復する三角波又はのこぎり波を印加することを特徴とする請求項1記載の光情報記録媒体用原盤の製造方法。
  4. 前記外部高周波信号は、前記電子線の偏向周波数Fが、当該電子線のビーム径Pに対する前記原盤の線速度Vとの比率(V/P)より大きく(F≧V/P)、且つ、偏光量の振幅Hが、前記原盤上に形成する凹凸ピットの潜像のピット幅Wと前記ビーム径Pとの差(W−P)と略同等(H=W−P)となるように当該電子線に印加し、前記凹凸ピットの列の蛇行を防止することを特徴とする請求項1記載の光情報記録媒体用原盤の製造方法。
  5. 前記電子線照射手段は、電子線を照射し得る電子銃と、前記電子線を外部高周波信号に基づき偏向する偏向器と、当該電子線を外部変調信号に基づき変調するブランキング機構と、前記原盤上に当該電子線を集束する集束手段と、を有することを特徴とする請求項1記載の光情報記録媒体用原盤の製造方法。
  6. 前記駆動手段は、前記原盤を保持して一定の線速度で回転する回転手段と、前記電子線と前記原盤との水平方向の相対位置を変動させる変動手段と、を有することを特徴とする請求項1記載の光情報記録媒体用原盤の製造方法。
  7. 前記凹凸ピットの潜像を形成後、極性変化に基づく現像処理により前記原盤の表面に形成した微細な凹凸ピットをエッチングマスクとしてエッチングを行い、前記潜像を当該原盤の表面に転写することを特徴とする請求項1記載の光情報記録媒体用原盤の製造方法。
  8. 前記エッチングが反応性イオンエッチングであることを特徴とする請求項7記載の光情報記録媒体用原盤の製造方法。
  9. 光照射による光情報記録媒体用原盤の製造方法であって、
    フォトレジスト薄膜が表面に塗布された原盤を、駆動手段により回転する工程と、
    前記駆動手段により回転する前記原盤上に、光照射手段により、当該原盤のトラック方向と直行する偏波面を有する直線偏光を集光する工程と、
    前記集光された前記直線偏光により、前記原盤上に螺旋状又は同心円状に配置され、ピット長がピット幅より小さい形状の短ピットを含む凹凸ピットの潜像を形成する工程と、
    を有することを特徴とする光情報記録媒体用原盤の製造方法。
  10. 前記短ピットの前記ピット幅は、当該短ピット以外の前記凹凸ピットのピット幅と比べて、同等または小さいものであることを特徴とする請求項9記載の光情報記録媒体用原盤の製造方法。
  11. 前記駆動手段は、前記原盤を保持して一定の線速度で回転する回転手段と、前記直線偏光と前記原盤との水平方向の相対位置を変動させる変動手段と、を有することを特徴とする請求項9記載の光情報記録媒体用原盤の製造方法。
  12. 前記光照射手段は、レーザ光を出射する光源と、前記レーザ光を外部信号に基づき強度変調する変調手段と、強度変調された前記レーザ光を前記原盤の表面に集光する集光手段と、を有することを特徴とする請求項9記載の光情報記録媒体用原盤の製造方法。
  13. 前記光照射手段は、トラック方向と直交する偏波面を有する直線偏光を前記集光手段に導く直線偏光手段をさらに備えることを特徴とする請求項9記載の光情報記録媒体用原盤の製造方法。
  14. 前記直線偏光手段は、前記直線偏光を前記集光手段に1本のみ導くことを特徴とする請求項13記載の光情報記録媒体用原盤の製造方法。
  15. 前記凹凸ピットの潜像を形成後、極性変化に基づく現像処理により前記原盤の表面に形成した微細な凹凸ピットをエッチングマスクとしてエッチングを行い、前記潜像を当該原盤の表面に転写することを特徴とする請求項9記載の光情報記録媒体用原盤の製造方法。
  16. 前記エッチングが反応性イオンエッチングであることを特徴とする請求項15記載の光情報記録媒体用原盤の製造方法。
  17. 請求項1又は9記載の製造方法により製造した光情報記録媒体用原盤の表面に形成されたレジストパターンを転写した光情報記録媒体用スタンパ。
  18. 請求項17記載の光情報記録媒体用スタンパを用いて成型した基板を備え、前記基板の表面にピット長がピット幅より小さい形状の短ピットを含む螺旋状又は同心円状に配置された凹凸ピットを有することを特徴とする光情報記録媒体。
  19. 前記凹凸ピットに含まれる最短ピットが2Tマークであり、当該凹凸ピットに基づく再生信号のジッタが8%以下であることを特徴とする請求項18記載の光情報記録媒体。
  20. 前記短ピットのピット長が180nm以下であることを特徴とする請求項18記載の光情報記録媒体。
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