JP2006097713A - 一方向クラッチ - Google Patents
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Abstract
【課題】 噛み合い部の剥離寿命を向上させた一方向クラッチを提供する。
【解決手段】 一方向クラッチ5は、内輪3、外輪4、両輪3,4間に配された複数の噛み込み部材としてのころ13、各ころ13を噛み込み方向へ付勢するコイルばね14および複数のころ13を保持する保持器15を備えており、内輪3外周面に、窒化物の平均粒子径が1μm以下の緻密な窒化層3aが形成されている。
【選択図】 図3
【解決手段】 一方向クラッチ5は、内輪3、外輪4、両輪3,4間に配された複数の噛み込み部材としてのころ13、各ころ13を噛み込み方向へ付勢するコイルばね14および複数のころ13を保持する保持器15を備えており、内輪3外周面に、窒化物の平均粒子径が1μm以下の緻密な窒化層3aが形成されている。
【選択図】 図3
Description
この発明は、例えば、内燃機関の始動時および内燃機関による補機駆動時の回転力をベルトによって伝達するベルト伝動システムにおいて、ベルト駆動スタータやオルタネータに使用されるのに好適な一方向クラッチに関する。
内輪、外輪、両輪間に配された複数の噛み込み部材としてのころ、各ころを噛み込み方向へ付勢する付勢部材および複数のころを保持する保持器を備えた一方向クラッチは、従来より知られている(特許文献1)。この種の一方向クラッチでは、潤滑は、グリースによって行われている。
特開2003−156075号公報
上記特許文献1の一方向クラッチでは、高速回転させられることによってグリースが外輪内周に移動しやすいため、内輪外周のグリースが希薄になり、内輪外周と噛み込み部材としてのころとの噛み合い部における剥離が起こりやすいという問題があった。
この発明の目的は、噛み合い部の剥離寿命を向上させた一方向クラッチを提供することにある。
この発明による一方向クラッチは、内輪、外輪、両輪間に配された複数の噛み込み部材としてのころ、各ころを噛み込み方向へ付勢する付勢部材および複数のころを保持する保持器を備えた一方向クラッチにおいて、内輪外周面に、窒化物の平均粒子径が1μm以下の緻密な窒化層が形成されていることを特徴とするものである。
内輪は、例えば、高炭素クロム軸受鋼のような軸受鋼によって形成され、所定の窒化処理が施されることによって、その外周面に、窒化物の平均粒子径が1μm以下の緻密な窒化層が形成される。窒化処理は、内輪表面の酸化物を金属ふっ化膜に置き換えるふっ化処理を前処理工程として含むものとされる。
ふっ化処理では、活性化されたふっ素原子により、内輪外周面に付着していた加工助剤等の異物が除去され、表面が浄化されると同時に、鋼表面の酸化皮膜のような不働態膜が金属ふっ化膜に置き換えられる。これにより、鋼の表面が金属ふっ化膜によって被覆保護された状態になり、後の窒化処理まで酸化物の生成が阻止されるので、確実に酸化物を除去できる。これに続く窒化処理では、480℃〜700℃程度の温度で、窒素源を有するガス(例えばNH3ガス)とH3ガスとの混合ガスを炉内に導入することにより、上記H2ガスによって、鋼材表面を被覆保護している金属ふっ化膜は破壊され除去される。これにより、浄化されて活性化した金属素地が現れ、この活性化した金属素地に窒化ガス(例えばNH3ガス)中のN原子が作用し、内部に迅速に浸透拡散し、深い窒化層を均一に形成する。すなわち、鋼の表面から内側に向かってCrN,Fe2N,Fe3N,Fe4N等の窒化物を含有する超硬質な化合物層(窒化層)が、均一に深く形成され、それに続いて硬質なN原子の拡散層が形成され、上記化合物層+拡散層が全窒化層を構成する。こうして得られた内輪は、表面硬さが例えばビッカース硬さ450HV程度となって耐摩耗性に優れているとともに、内部の硬さは低くて柔軟性、靱性に優れたものとなっており、クラッチ噛み合い部の構成部材として優れた機能を発揮することができる。
外輪は、内輪と同様の高炭素クロム軸受鋼のような軸受鋼によって形成されるが、外輪の内周面に対しては、このような窒化処理は施されない。
一方向クラッチは、外輪の内周面に設けられたカム面と、カム面と内輪の外周面とによって形成された楔状空間内に配置され、内輪と外輪とが一の方向(ロック方向)に相対回転することにより内輪と外輪との間に噛み込み、他の方向(フリー方向)に相対回転したとき噛み込みを解除する複数の噛み込み部材としてのころと、ころを噛み込み方向(楔状空間の狭い側)に付勢する付勢部材としてのコイルばねと、ころを楔状空間内に位置させる保持器とを備えている(外輪カム式)ことがあり、また、内輪の外周面に設けられたカム面と、カム面と外輪の内周面とによって形成された楔状空間内に配置され、内輪と外輪とが一の方向に相対回転することにより内輪と外輪との間に噛み込み、他の方向に相対回転したとき噛み込みを解除する複数の噛み込み部材としてのころと、ころを噛み込み方向(楔状空間の狭い側)に付勢する付勢部材としてのコイルばねとを備えている(内輪カム式)ことがある。
上記一方向クラッチは、軸とこれの周囲に同心状に配されたプーリとの間にこの一方向クラッチを配するとともに、その両側に転がり軸受を配置した一方向クラッチ付きプーリユニットとして使用するのに好適である。この場合に、一方向クラッチは、プーリとは別部材の外輪および中空軸とは別部材の内輪を有していることがあり、また、プーリの中間部が一方向クラッチの外輪とされているとともに、中空軸の中間部が一方向クラッチの内輪とされていることがある。前者(一方向クラッチの外輪および内輪がプーリまたは中空軸と別部材)の場合、例えば、プーリの内径は、密封シール用の環状溝部分を除いて同じ径とされ、軸受の外輪は、圧入時に一方向クラッチの外輪に当接することによってその軸方向の位置決めが行われる。そして、中空軸の外径は、密封シール用の環状溝部分を除いて同じ径とされ、軸受の内輪は、圧入時に一方向クラッチの内輪に当接することによってその軸方向の位置決めが行われる。後者(プーリが一方向クラッチの外輪を兼ね、中空軸が同内輪を兼ねる)の場合、例えば、プーリの内径は、両端部が中間部よりも大径となる段付き状に形成され、軸受の外輪は、プーリの段差部によって位置決めされ、軸受の内輪の位置決めは、外輪が位置決めされることによって行われる。
この発明の一方向クラッチによると、内輪外周面に、窒化物の平均粒子径が1μm以下の緻密な窒化層が形成されているので、内輪は、表面が硬くて耐摩耗性に優れているとともに、内部の硬さが低くて柔軟性、靱性に優れたものとなり、内輪外周のグリースが希薄になりやすい一方向クラッチの内輪をこのようにすることで、内輪ところとが噛み合った際の摩耗量を少なくしかも衝撃吸収を優れたものとすることができ、クラッチ噛み合い部における剥離寿命を大幅に向上させることができる。
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。以下の説明において、左右は、図1の左右をいうものとする。
図1から図3までは、この発明による一方向クラッチを使用したプーリユニットを示している。この一方向クラッチ付きプーリユニット(1)は、エンジンの駆動部とスタータモータの回転軸とを連結する部分に配置されるもので、スタータモータの回転軸(2)に嵌められた中空軸(3)とこれと同心に配置されたプーリ(4)との間に、一方向クラッチ(5)が設けられている。プーリ(4)の外周には、Vリブドベルト(B)が掛け渡されるベルト掛け渡し部(4a)が設けられている。
一方向クラッチ(5)は、中空軸(3)とプーリ(4)の軸方向中間部との間に設けられており、中空軸(3)とプーリ(4)の各端部寄り部分との間には、転動体がころ(6a)のころ軸受(6)と転動体が玉(7a)の玉軸受(7)とが一方向クラッチ(5)を挟んで設けられている。そして、プーリ(4)と一方向クラッチ(5)の外輪と軸受(6)(7)の外輪とが一体とされるとともに、中空軸(3)と一方向クラッチ(5)の内輪と軸受(6)(7)の内輪とが一体とされている。
ころ軸受(6)および玉軸受(7)の軸方向外側には、シール部材(8)(9)がそれぞれ配置されており、プーリユニットの自由端側(図の左端側)には、プーリユニット内部に泥水等の侵入を防止するために、さらに別のシール部材(10)が配置されている。
一方向クラッチ(5)は、図2に示すように、プーリ(4)の内周面に設けられたカム面(11)と、カム面(11)と中空軸(3)の外周面とによって形成された楔状空間(12)内に配置され、中空軸(3)とプーリ(4)とが一の方向(ロック方向)に相対回転することにより中空軸(3)とプーリ(4)との間に噛み込み、他の方向(フリー方向)に相対回転したとき噛み込みを解除する複数の噛み込み部材としてのころ(13)と、ころ(13)を噛み込み方向(楔状空間(12)の狭い側)に付勢する付勢部材としてのコイルばね(14)と、ころ(13)を楔状空間(12)内に位置させる保持器(15)とを備えている。
カム面(11)は、軸心を挟んで対向する2面(11a)(11b)(11c)(11d)が周方向に複数組(この実施形態では4組)設けられることによって構成されている。こうして、プーリ(4)にカム面(11)が設けられることにより、プーリ(4)には、一方向クラッチ(5)の外輪としての機能が付与され、プーリ(4)と一方向クラッチ(5)の外輪との一体化が果たされている。カムの対向2面(11a)(11b)(11c)(11d)の楔状空間(12)の広い側の端部には、横断面が円弧状で遠心力を受けたころ(13)を停止させる凹面部(16)が設けられている。
図1に示すように、プーリ(4)の内径は段付状とされており、プーリ(4)が有しているころ軸受(6)の外輪、一方向クラッチ(5)の外輪および玉軸受(7)の外輪の各機能に対応する寸法に関して、ころ軸受(6)の外輪軌道部内径をD1、一方向クラッチ(5)の外輪の最小内径(この実施形態では、外輪カム面(11)の2面間距離)をD2、玉軸受(7)の外輪軌道肩部内径をD3として、D1>D2≧D3とされている。中空軸(3)の外径に関しては、溝を除いて一定とされており、ころ軸受(6)の内輪軌道部外径=一方向クラッチ(5)の内輪外径=玉軸受(7)の外輪軌道肩部外径となっている。
保持器(15)は、合成樹脂製で、カム面(11)にほぼ沿った外周形状と中空軸(3)外周面に沿った内周形状を有しており、カム面(11)内に圧入されている。保持器(15)と中空軸(3)の外周との間には若干の間隙が設けられている。保持器(15)は、ころ(13)およびコイルばね(14)を収納するポケット(15a)を有しており、保持器(15)のポケット(15a)には、コイルばね(14)を位置決めするばね受け凹所(17)が設けられている。
保持器(15)のポケット(15a)のばね受け凹所(17)側には、グリースが封入されている。このグリースは、噛み合い性能(特に低温噛み合い性能)に優れたグリース、例えば、基油がエステル系で基油動粘度90mm2/s−40℃以上でありかつ増ちょう剤がウレア系のグリースとされている。
中空軸(3)およびプーリ(4)は、SUJ2のような高炭素クロム軸受鋼で形成されており、内輪となる中空軸(3)の外周面には、以下の表面処理が施されることにより、Fe3Nを主成分とする窒化物が、その平均粒子径が1μm以下であるように、緻密かつ均一に積層された状態の窒化層(3a)が形成されている。
この内輪(3)の表面処理は、内輪(3)の表面の酸化物を金属ふっ化膜に置き換えるふっ化処理と、窒化層(3a)を形成する窒化処理とを備えている。
ふっ化処理では、内輪(3)を、3ふっ化窒素(NF3)、窒素等の混合気中に、所定のふっ化温度(例えば300℃〜400℃)に所定時間(10分〜120分)保持する。その結果、内輪(3)外周面の異物等は、ふっ化処理に用いる活性化されたふっ素原子によって破壊等されて除去され、表面が浄化されると同時に、鋼表面の酸化皮膜のような不働態膜が、金属ふっ化膜に置き換えられる。この際に、表面に形成される金属ふっ化膜は、不働態膜であるので、表面への酸素の吸着や酸化作用を防止し、次の窒化処理まで酸化物の生成を阻止し、その結果、確実に酸化物を除去することができる。
窒化処理では、ガス窒化が行われる。ふっ化処理によって表面が金属ふっ化膜で覆われた内輪(3)は、所定の反応ガス、例えばNH3単体からなるガスまたはNH3と炭素源とからなる混合ガス(例えばRXガス)中に、所定の窒化温度(例えば480℃〜700℃)に、所定時間(0.5時間〜5時間)保持される。そして、ふっ化温度から窒化温度に温度が昇温される過程で、内輪(3)外周面の金属ふっ化膜は活性化膜となる。その結果、窒化処理で、窒素は金属に速やかに深く浸透して、窒化層(3a)が形成される。その後、所定時間をかけて、冷却される。内輪(3)は、冷却終了まで、窒素ガス中に保持されており、表面に酸化物の生成が防止される。
窒化処理での窒化温度および保持時間は、窒化処理で形成される窒化層(3a)の深さ等に応じて、所定値に設定される。また、ふっ化処理で内輪(3)の表面が活性化されるので、窒化温度を480℃〜700℃程度に低くすることができ、この窒化温度で形成される窒化層(3a)の表面が平滑になり、クラックが殆どないものとなる。
窒化層(3a)は、上述のように、表面が硬く、耐摩耗性を良好なものとするのに加えて、内部の窒化されていない鋼材の部分によって柔軟性、靱性が維持されるため、耐衝撃性を備えているので、内輪(3)の強度がより一層向上する。
このようにして、基材に軸受用鋼を用い、その表面に窒化層(3a)が形成された内輪(3)は、内部の基材の性質、例えば、形状加工性、経済性、強度等に優れた性質を有し、それに加えて、表面の窒化層(3a)の性質、例えば、耐蝕性、硬さ、耐焼き付き性に優れた性質を得ることができる。
この一方向クラッチは、次のように動作する。
まず、始動時においては、スタータモータの回転軸(2)と一体の中空軸(3)が反時計回りに回転させられる。これにより、一方向クラッチ(5)の中空軸(3)が反時計回りに回転し、一方向クラッチ(5)の楔状空間(12)の狭い側にころ(13)が噛み込まれ、駆動力が伝達されて、一方向クラッチ(5)の中空軸(3)とプーリ(4)とが一体となって回転する(ロック状態)。プーリ(4)はベルトを介してクランクシャフトに接続されており、プーリ(4)の回転によってエンジンが始動する。エンジンが始動すると、スタータが停止し、プーリ(4)は反時計方向の回転を続ける。これにより、ころ(13)の噛み込みが解除され、プーリ(4)だけが回転する状態が継続され、エンジンの高速回転時、ころ(13)は、中空軸(3)と非接触状態となる(フリー状態)。こうして、プーリ(4)が所定回転速度以上になると、プーリ(4)だけが回転することになり、エンジンの駆動に寄与しない部分が回転することに伴うエネルギロスを抑えることができる。
保持器(15)内に封入されているグリースは、一方向クラッチ(5)が高速で回転するのに伴ってそのプーリ(4)内周に集中しやすい。そのため、ころ(13)の噛み込みに際しては、グリースが多いプーリ(外輪)(4)よりもグリースが希薄な中空軸(内輪)(3)が剥離に対して不利なものとなっている。これに対し、内輪(3)の外周面には、上述のように窒化層(3a)が形成されているため、内輪(3)の剥離寿命が向上しており、一方向クラッチ(5)全体としての剥離寿命が大幅に向上させられている。
(3) 中空軸(一方向クラッチ内輪)
(3a) 窒化槽
(4) プーリ(一方向クラッチ外輪)
(5) 一方向クラッチ
(13) ころ
(14) コイルばね(付勢部材)
(15) 保持器
(3a) 窒化槽
(4) プーリ(一方向クラッチ外輪)
(5) 一方向クラッチ
(13) ころ
(14) コイルばね(付勢部材)
(15) 保持器
Claims (1)
- 内輪、外輪、両輪間に配された複数の噛み込み部材としてのころ、各ころを噛み込み方向へ付勢する付勢部材および複数のころを保持する保持器を備えた一方向クラッチにおいて、
内輪外周面に、窒化物の平均粒子径が1μm以下の緻密な窒化層が形成されていることを特徴とする一方向クラッチ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004281238A JP2006097713A (ja) | 2004-09-28 | 2004-09-28 | 一方向クラッチ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2004281238A JP2006097713A (ja) | 2004-09-28 | 2004-09-28 | 一方向クラッチ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2006097713A true JP2006097713A (ja) | 2006-04-13 |
Family
ID=36237735
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2004281238A Pending JP2006097713A (ja) | 2004-09-28 | 2004-09-28 | 一方向クラッチ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2006097713A (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2008117774A1 (ja) * | 2007-03-26 | 2008-10-02 | Ntn Corporation | 一方向クラッチ及び一方向クラッチ内蔵プーリユニット |
JP2008240779A (ja) * | 2007-03-26 | 2008-10-09 | Ntn Corp | 一方向クラッチ |
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-
2004
- 2004-09-28 JP JP2004281238A patent/JP2006097713A/ja active Pending
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