JP2006094074A - フィルタ素子 - Google Patents

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浩一 柳沢
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Abstract

【課題】優れたノイズ減衰特性を有するフィルタ素子を提供することを主目的とする。
【解決手段】帯状絶縁体7b、帯状絶縁体7bの幅方向において互いに離間した状態で帯状絶縁体7bの一方の面側に並設された複数の帯状導電体9a,9b、および帯状絶縁体7bの他方の面側に配設された接地用帯状導電体8aを巻回することによって全体として筒状に形成されたコイル部15を備え、各帯状導電体9a,9bは、一端側において相互接続されると共に、そのうちの帯状導電体9aが信号用帯状導電体として機能する。
【選択図】図14

Description

本発明は、帯状絶縁体に帯状導電体を重ねた状態で巻回して構成されたフィルタ素子に関するものである。
この種のフィルタ素子として、特許第2826320号公報において開示されたフィルタ素子が知られている。このフィルタ素子は、複数枚の帯状導電体(通電用および接地用の帯状導電体)を、高誘電率の誘電体シートを介して、磁性または非磁性巻枠あるいは空心に巻き回して形成されて、3端子型ノイズフィルタ(ノーマルモード型ノイズフィルタ)として機能する。このフィルタ素子では、通電用の帯状導電体の巻始め部と巻き終わり部に接続された一対のリード間にインダクタンスが形成され、しかも通電用の帯状導電体の全長に亘り、接地用の帯状導電体との間にキャパシタンスが分布定数的に形成される。したがって、このフィルタ素子では、広い周波帯域に亘って優れた減衰特性を実現することが可能となっている。
特許第2826320号公報(第2頁)
ところで、近年では、上記のような構成、つまり複数枚の帯状導電体を誘電体シート(絶縁体シート)を介して巻き回して形成した構成のフィルタ素子に対して、さらなるノイズ減衰特性の向上が望まれている。
本発明は、上記の要望に鑑みてなされたものであり、優れたノイズ減衰特性を有するフィルタ素子を提供することを主目的とする。
上記目的を達成すべく請求項1記載のフィルタ素子は、帯状絶縁体、当該帯状絶縁体の幅方向において互いに離間した状態で当該帯状絶縁体の一方の面側に並設された複数の帯状導電体、および前記帯状絶縁体の他方の面側に配設された接地用帯状導電体を巻回することによって全体として筒状に形成されたコイル部を備え、前記各帯状導電体は、一端側において相互接続されると共に、そのうちの1本が信号用帯状導電体として機能する。ここで、本発明における「帯状導電体」とは、厚みの薄いシート状の導電体に限らず、ある程度の厚みのある導電体、例えば、断面形状が丸形、楕円、四角形、または台形に形成された可撓性を有する板状の導電体をも含むことを意味する。
また、請求項2記載のフィルタ素子は、帯状絶縁体、当該帯状絶縁体の幅方向において互いに離間した状態で当該帯状絶縁体の一方の面側に並設された複数の帯状導電体、および前記帯状絶縁体の他方の面側に配設された接地用帯状導電体を巻回することによって全体として筒状に形成されたコイル部を備え、前記複数の帯状導電体は、当該帯状導電体をそれぞれ複数有する複数の帯状導電体群に分割され、前記各帯状導電体群に含まれている前記帯状導電体は、一端側において相互接続されると共に、そのうちの1本が信号用帯状導電体として機能する。
また、請求項3記載のフィルタ素子は、請求項1または2記載のフィルタ素子において、前記信号用帯状導電体として機能する前記帯状導電体は、相互接続されている前記一端側が出力端として構成されている。この発明において、「出力端」とは、このフィルタ素子の出力端を意味する。
また、請求項4記載のフィルタ素子は、請求項1から3のいずれかに記載のフィルタ素子において、前記コイル部の中心部に形成された空隙に磁性体が配設されている。
請求項1,2記載のフィルタ素子によれば、各帯状導電体の一端側を相互接続すると共に、このうちの1本を信号用帯状導電体として機能させるることにより、帯状導電体と同電位であって信号が伝搬されない帯状導電体を信号伝搬用の帯状導電体と磁気的に結合した状態でコイル部内に配設し、かつ帯状導電体と同電位であって信号が伝搬されない帯状導電体を信号伝搬用の帯状導電体と磁気的に結合した状態でコイル部内に配設することができる結果、広い周波数帯域に亘ってノーマルモードノイズまたはコモンモードノイズを良好に減衰させることができる。
また、請求項3記載のフィルタ素子によれば、各信号用帯状導電体として機能する帯状導電体における相互接続されている一端側を出力端として構成したことにより、各帯状導電体における相互接続されていない端部側を出力端とする構成と比較して、ノイズ源のライン間インピーダンスあるいは対地インピーダンスが時間と共に変化して、インピーダンスのバランスが崩れたとしても、フィルタ素子がこの崩れを吸収するため、広い周波数帯域に亘ってノイズ成分をさらに良好に減衰させることができる。
また、請求項4記載のフィルタ素子によれば、コイル部の中心部に形成された空隙に磁性体を配設したことにより、信号用帯状導電体として機能する帯状導電体のインダクタンスを大きくすることができるため、ノイズ成分をさらに一層良好に減衰させることができる。
以下、添付図面を参照して、本発明に係るフィルタ素子について説明する。
最初に、フィルタ素子1について、図面を参照して説明する。
フィルタ素子1は、図1に示すように、複数本(一例として2本)の入力端子2a,2b(以下、特に区別しないときは「入力端子2」ともいう)、入力端子2と同数(2本)の出力端子3a,3b(以下、特に区別しないときは「出力端子3」ともいう)、接地用端子4、コイル部5および柱状(一例として円柱状)の磁性体(磁性コア)6を備えて構成されて、分布定数型の5端子型ノイズフィルタ(低域通過型のコモンモードフィルタ)として機能する。なお、コイル部5に使用する磁性コア6としては、柱状のコアに代えて、EI型コア、RM型コア、日型コア、ポットコア等各種形状のコアを使用することができる。
コイル部5は、図3に示すように、例えば、同じ幅に形成された2つの帯状絶縁体7a,7b(以下、特に区別しないときは「帯状絶縁体7」ともいう)、入力端子2と同数(2本)の接地用帯状導電体8a,8b(以下、特に区別しないときは「接地用帯状導電体8」ともいう)、および入力端子2の2倍の数(4本)の帯状導電体9a,9b,9c,9d(以下、特に区別しないときは「帯状導電体9」ともいう)を備えて構成されている。この場合、各帯状絶縁体7は、誘電性および電気的絶縁性を有する材料(ポリイミド、ポリエチレン、絶縁紙など)を用いて均一な厚みに構成されている。各接地用帯状導電体8は、例えば、同じ幅、同じ長さに設定されると共に、帯状絶縁体7aの幅方向において互いに離間して、かつ平行な状態で帯状絶縁体7aの上側(本発明における帯状絶縁体の他方の面側)に並設されている。また、各接地用帯状導電体8は、一例として、その巻き終わり端側(図3中の左端側)において互いに接続されると共に、この巻き終わり端側に接地用端子4の一端側が電気的に接続されている。帯状絶縁体7bは、各接地用帯状導電体8を帯状絶縁体7aとの間で挟み込むようにして帯状絶縁体7aの上に重ねられている。
各帯状導電体9は、同じ幅、および同じ長さに設定されると共に、図3に示すように、帯状絶縁体7bの幅方向において互いに離間して、かつ平行な状態で帯状絶縁体7bの上側(本発明における帯状絶縁体の一方の面側)に並設されている。また、各帯状導電体9は、一例として、その幅が接地用帯状導電体8よりも幅狭に形成されている。なお、各帯状導電体9の幅については、接地用帯状導電体8よりも幅狭に形成する構成に限定されない。例えば、各帯状導電体9の幅を接地用帯状導電体8の幅と同一または幅広に形成することもできる。また、帯状導電体9a,9cは、信号を伝送させる信号用帯状導電体として機能する。なお、各帯状導電体9については、互いの幅をすべて同じに揃える構成に限定されない。例えば、信号用帯状導電体として使用されない帯状導電体9b,9dに関しては、帯状導電体9a,9cよりも太くすることができるのは勿論のこと、信号用帯状導電体として使用される帯状導電体9a,9cのように信号に対する抵抗値の増大を回避する必要がないため、帯状導電体9a,9cよりも細くすることもできる。また、各帯状導電体9のうちの各帯状導電体9a,9bは、複数(この例では2つ)の帯状導電体を有する一の帯状導電体群を構成すると共に接地用帯状導電体8aに対応してそれぞれ配設されている。具体的には、各帯状導電体9a,9bは、帯状絶縁体7bを挟んで接地用帯状導電体8aに対向するようにして配設されている。一方、各帯状導電体9c,9dは、複数(この例では2つ)の帯状導電体を有する他の帯状導電体群を構成すると共に接地用帯状導電体8bに対応してそれぞれ配設されている。以上の構成により、帯状絶縁体7bを基準としたときに、その一方の面(図3における紙面手前の面)側には、各帯状導電体9が配設され、その他方の面(同図における紙面奥側の面)側には、各接地用帯状導電体8が配設されている。
また、信号用帯状導電体としての各帯状導電体9a,9cは、巻き終わり端側(図3中の左端側)に入力端子2a,2bの一端側が電気的にそれぞれ接続されている。また、各帯状導電体9a,9bは、巻始め端側(図3中の右端側。本発明における一端側)が相互接続されると共に、この巻始め端側に出力端子3aの一端側が電気的に接続されている。また、各帯状導電体9c,9dは、巻始め端側(同図中の右端側。本発明における一端側)が相互接続されると共に、巻始め端側(同図中の右端側)に出力端子3bの一端側が電気的に接続されている。この場合、帯状導電体9aと帯状導電体9bとの接続に関しては、巻始め端側でのみ相互接続され、他の部分では互いに接触しないようにする必要がある。つまり、帯状導電体9aと帯状導電体9bとが巻始め端側以外の部分においても互いに接触するときには、帯状導電体9aの一部と帯状導電体9bの一部とによってループが形成される。このため、帯状導電体9bにおけるループを構成する部位にも信号(ノイズ)が通過する結果、実質的に帯状導電体9bが帯状導電体9aよりも短くなって、電源内のノイズ源についてのインピーダンスのバランスの崩れを吸収する能力が低下するからである。帯状導電体9cと帯状導電体9dについても、同様の理由により、ループを形成しない構成にする必要がある。
コイル部5は、このようにして互いに重ねられた各帯状絶縁体7、各接地用帯状導電体8および各帯状導電体9を、図3における右端側を巻き始めとして、かつ各帯状導電体9に対して各接地用帯状導電体8が外側となるように巻回することにより、全体として図1に示すように、筒状(中心部に空隙Hが形成された円筒状)に形成されている。磁性コア6は、この空隙H内に装着されて、コイル部5の中心部に配設されている。
この場合、各入力端子2が接続されている各帯状導電体(信号用帯状導電体)9a,9cの巻き終わり端側はコイル部5の外周側に位置して、各入力端子2は、図1に示すように、コイル部5の一方の端面(同図中の上端面)における外周側部位(図2中の引出し部位A)からそれぞれ引き出されている。一方、各出力端子3が接続される各帯状導電体9の巻始め端側はコイル部5の中心側に位置して、各出力端子3は、図1に示すように、コイル部5の一方の端面における中心(内周)側部位(図2中の引出し部位B)からそれぞれ引き出されている。ここで、各出力端子3の引出し部位Bは、図2に示すように、コイル部5の中心軸Oと各入力端子2の引出し部位Aとを含む仮想平面L(以下、「平面L」ともいう)上であって、中心軸O(空隙H、言い換えれば磁性コア6)を挟んで引出し部位Aとは反対側に設定されている。また、接地用端子4が接続される各接地用帯状導電体8における巻き終わり端側はコイル部5の外周側に位置して、接地用端子4は、図1に示すように、コイル部5の一方の端面における外周側部位(図2中の引出し部位C)から引き出されている。具体的には、接地用端子4の引出し部位Cは、図2に示すように、平面L上であって、引出し部位B(または中心軸O)を挟んで引出し部位Aとは反対側に設定されている。ここで、入力端子2等の「引出し部位」とは、入力端子2等がコイル部5から突出するコイル部5の表面における部位をいう。
このフィルタ素子1によれば、一の帯状導電体群を構成する各帯状導電体9a,9bの巻始め端側(本発明における一端側)を相互接続すると共に、このうちの1本(帯状導電体9a)に入力端子2aを接続して信号用帯状導電体として構成し、かつ他の帯状導電体群を構成する各帯状導電体9c,9dの巻始め端側(本発明における一端側)を相互接続すると共に、このうちの1本(帯状導電体9c)に入力端子2bを接続して信号用帯状導電体として構成したことにより、帯状導電体9aと同電位であって信号が伝搬されない帯状導電体9bを信号伝搬用の帯状導電体9aと磁気的に結合した状態でコイル部5内に配設し、かつ帯状導電体9cと同電位であって信号が伝搬されない帯状導電体9dを信号伝搬用の帯状導電体9cと磁気的に結合した状態でコイル部5内に配設することができる結果、広い周波数帯域に亘ってコモンモードノイズを良好に減衰させることができる。
具体的には、本発明に係るフィルタ素子1、(または、フィルタ素子1の構成から帯状導電体9b,9dのみを省いた構成のフィルタ素子(従来型のフィルタ素子)110)を、図4に示すように、スイッチング電源100の二次側(直流出力端子側)に接続すると共に、各フィルタ素子1(または110)を通して出力される直流出力に含まれているノイズ成分を同軸ケーブル101を介してスペクトラムアナライザ102で測定した。なお、同図中のC1はノーマルモード対策用コンデンサ(一例として470μF)であり、C2は直流デカップリングコンデンサ(一例として0.1μF)であり、R1は負荷抵抗(26W相当の負荷)である。フィルタ素子1についての測定結果を図5に、また従来型のフィルタ素子110についての測定結果を図6にそれぞれ示す。この測定結果によれば、フィルタ素子1は、従来型のフィルタ素子110と比較して、広い周波数帯域に亘ってノイズ成分を一層良好に減衰(ノイズレベルを低減)できるのが確認される。また、フィルタ素子1は、特に200KHz以下の周波数帯域に現れるノイズ成分をフィルタ素子110よりも約12dBμVほど大きく減衰させていることが確認される。
また、このフィルタ素子1によれば、各帯状導電体(信号用帯状導電体)9a,9cにおける各帯状導電体9b,9dと相互接続された各巻始め端側に各出力端子3a,3bを接続して各帯状導電体9a,9cの巻始め端側を出力端として構成したことにより、各帯状導電体9a,9cにおける各巻き終わり端側(各帯状導電体9b,9dと相互接続されていない端部側)を出力端とする構成と比較して、インピーダンスのバランスを崩れにくくすることができる結果、広い周波数帯域に亘ってノイズ成分をさらに良好に減衰させることができる。
具体的には、フィルタ素子1における入力端子2および出力端子3の帯状導電体9に対する接続位置を逆にしたフィルタ素子111を比較例として作製し、このフィルタ素子111またはフィルタ素子1を、図7に示すように、疑似電源回路網(LISN:Line Impedance Stabilization Network)103とスイッチング電源100とを結ぶACラインに介装した状態での各フィルタ素子1(または111)についてのノイズ減衰特性(電源端子妨害電圧特性)を負荷条件を変えてスペクトラムアナライザ102で測定した。図8,9はフィルタ素子1についての電源端子妨害電圧特性図であって、図8は負荷104を5Wに設定したときの特性図を示し、図9は負荷104を26Wに設定したときの特性図を示している。一方、図10,11はフィルタ素子111についての電源端子妨害電圧特性図であって、図10は負荷104を5Wに設定したときの特性図を示し、図11は負荷104を26Wに設定したときの特性図を示している。なお、各図8〜図11において符号Aで示す線は、VCCIクラスBの規格を示している。
図8〜図11に示す各電源端子妨害電圧特性図によれば、フィルタ素子1およびフィルタ素子111のいずれにおいても、VCCIクラスBの規格を十分に満たすレベルにノイズ成分が減衰されている。このため、信号用帯状導電体としての帯状導電体9aに帯状導電体9bを接続し、信号用帯状導電体としての帯状導電体9cに帯状導電体9dを接続するだけで、VCCIクラスBの規格を十分に満たすレベルにノイズ成分を減衰できることが確認できる。一方、負荷条件が同じ図8と図10とを比較し、同様にして負荷条件が同じ図9と図11とをそれぞれ比較した場合、各帯状導電体(信号用帯状導電体)9a,9cにおける各帯状導電体9b,9dと相互接続された巻始め端側を出力端とした構成の方がノイズ成分を一層減衰させることができることが確認できる。
なお、本発明は、上記した構成に限定されない。例えば、上述したフィルタ素子1では、図1,3に示すように、2本の接地用帯状導電体8a,8bと、各接地用帯状導電体8a,8bにそれぞれ対応する2組の帯状導電体群(帯状導電体9a,9bで構成される帯状導電体群と、帯状導電体9c,9dで構成される帯状導電体群)とを備えたコイル部5を用いることによって2相の伝送線路に対するコモンモード用のフィルタ素子を構成する例について説明したが、図12〜図14に示すように、各接地用帯状導電体8a,8bのいずれか一方(同図では一例として接地用帯状導電体8a)、およびそれに対応する1組の帯状導電体群(同図では帯状導電体9a,9b)のみでコイル部15を形成することにより、ノーマルモード用のフィルタ素子11を構成することもできる。なお、フィルタ素子1と同一の構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、図示はしないが、接地用帯状導電体8a、およびそれに対応する1組の帯状導電体群(同図では帯状導電体9a,9b)を3組以上備えたコイル部を形成することにより、多相の伝送線路に対するコモンモード用のフィルタ素子を構成することもできる。そして、上記のフィルタ素子11および3相以上の多相のフィルタ素子においても、フィルタ素子1と同様にして、ノイズ成分を十分に減衰させることができると考えられる。
また、上述したフィルタ素子1,11では、図3,14に示すように、各接地用帯状導電体8についてはその巻き終わり端側を接地し、各帯状導電体9a,9cについては巻き終わり端側を入力端とすると共に巻始め端側を出力端とした例について説明したが、図15,18に示すフィルタ素子21,31のように、各接地用帯状導電体8の巻始め端側(図17または図20における右端側)を接地し、かつ帯状導電体9a,9cの巻始め端側を入力端とすると共に巻き終わり端側(図17または図20における左端側)を出力端としたとしても、フィルタ素子1,11と同様の作用効果を奏することができると考えられる。以下、各フィルタ素子21,31の構成について説明する。
まず、フィルタ素子21について、図15〜図18を参照しつつ説明する。なお、フィルタ素子1,11と同一の構成要素については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
フィルタ素子21は、図15に示すように、複数本(一例として2本)の入力端子2a,2b、入力端子2と同数の出力端子3a,3b、接地用端子4、コイル部25および磁性コア6を備えて構成されて、分布定数型の5端子型ノイズフィルタ(低域通過型のコモンモードフィルタ)として機能する。
コイル部25は、図17に示すように、2つの帯状絶縁体7a,7b、入力端子2と同数の接地用帯状導電体8a,8b、および入力端子2の2倍の数の帯状導電体9a,9b,9c,9dを備えて構成されている。この場合、各帯状導電体9は、帯状絶縁体7aの幅方向において互いに離間して、かつ平行な状態で帯状絶縁体7aの上側(本発明における帯状絶縁体の一方の面側)に並設されている。また、各帯状導電体9のうちの各帯状導電体9a,9bは、一の帯状導電体群を構成し、巻き終わり端側(図17中の左端側。本発明における一端側)が相互接続されると共に、この巻き終わり端側に出力端子3aが接続されている。また、帯状導電体9aの巻始め端側(図17中の右端側)には、入力端子2aが接続されて信号用帯状導電体として構成されている。各帯状導電体9c,9dは、他の帯状導電体群を構成し、巻き終わり端側(図17中の左端側。本発明における一端側)が相互接続されると共に、この巻き終わり端側に出力端子3bが接続されている。また、帯状導電体9cの巻始め端側(図17中の右端側)には、入力端子2bが接続されて信号用帯状導電体として構成されている。帯状絶縁体7bは、各帯状導電体9を帯状絶縁体7aとの間で挟み込むようにして帯状絶縁体7aの上に重ねられている。各接地用帯状導電体8a,8bは、帯状絶縁体7bの幅方向において互いに離間して、かつ平行な状態で帯状絶縁体7bの上側(本発明における帯状絶縁体の他方の面側)に並設されている。また、接地用帯状導電体8aは、各帯状導電体9a,9bに対応して配設され、接地用帯状導電体8bは、各帯状導電体9c,9dに対応して配設されている。また、各接地用帯状導電体8a,8bは、巻始め端側(図17中の右端側)が相互接続されると共に、この巻始め端側に接地用端子4が接続されている。以上の構成により、帯状絶縁体7bを基準としたときに、一方の面(同図における紙面奥側の面)側には、各帯状導電体9がそれぞれ配設され、他方の面(図17における紙面手前の面)側には、各接地用帯状導電体8がそれぞれ配設されている。コイル部25は、このようにして互いに重ねられた各帯状絶縁体7、各接地用帯状導電体8および各帯状導電体9を、図17における右端側を巻き始めとして、かつ各接地用帯状導電体8に対して各帯状導電体9が外側となるように巻回することにより、全体として図15に示すように、筒状に形成されている。
この場合、各入力端子2が接続されている各帯状導電体(信号用帯状導電体)9a,9cの巻始め端側はコイル部5の内周側に位置して、各入力端子2は、図15に示すように、コイル部25の一方の端面(同図中の上端面)における内周側部位(図16中の引出し部位A)からそれぞれ引き出されている。一方、各出力端子3が接続される各帯状導電体9の巻き終わり端側はコイル部25の外周側に位置して、各出力端子3は、図15に示すように、コイル部25の一方の端面における外周側部位(図16中の引出し部位B)からそれぞれ引き出されている。ここで、各出力端子3の引出し部位Bは、図16に示すように、コイル部25の中心軸Oと各入力端子2の引出し部位Aとを含む平面L上であって、中心軸O(空隙H、言い換えれば磁性コア6)を挟んで引出し部位Aとは反対側に設定されている。また、接地用端子4が接続される各接地用帯状導電体8における巻始め端側はコイル部25の内周側に位置して、接地用端子4は、図15に示すように、コイル部25の一方の端面における内周側部位(図16中の引出し部位C)から引き出されている。具体的には、接地用端子4の引出し部位Cは、図16に示すように、平面L上であって、中心軸Oを挟んで引出し部位Aとは反対側に設定されている。
このフィルタ素子21によれば、一の帯状導電体群を構成する各帯状導電体9a,9bの一端側(具体的には、巻き終わり端側)を相互接続すると共に、このうちの1本(帯状導電体9a)に入力端子2aを接続して信号用帯状導電体として構成し、かつ他の帯状導電体群を構成する各帯状導電体9c,9dの一端側(具体的には、巻き終わり端側)を相互接続すると共に、このうちの1本(帯状導電体9c)に入力端子2bを接続して信号用帯状導電体として構成することにより、帯状導電体9aと同電位であって信号が伝搬されない帯状導電体9bを信号用帯状導電体としての帯状導電体9aと磁気的に結合した状態でコイル部25内に配設し、かつ帯状導電体9cと同電位であって信号が伝搬されない帯状導電体9dを信号用帯状導電体としての帯状導電体9cと磁気的に結合した状態でコイル部25内に配設することができる結果、フィルタ素子1と同様にして、コモンモードノイズを良好に減衰させることができる。
また、このフィルタ素子21によれば、各帯状導電体(信号用帯状導電体)9a,9cにおける各帯状導電体9b,9dと相互接続された各巻き終わり端側に各出力端子3a,3bを接続することによって各帯状導電体9a,9cの巻き終わり端側(相互接続された端部側)を出力端として構成したことにより、各帯状導電体9a,9cにおける巻始め端側(各帯状導電体9b,9dと相互接続されていない端部側)を出力端とする構成と比較して、インピーダンスのバランスを崩れにくくすることができる結果、ノイズ成分をさらに減衰させることができる。
なお、上述したフィルタ素子21についても、フィルタ素子1と同様にして、図18〜図20に示すように、各接地用帯状導電体8a,8bのいずれか一方(同図では一例として接地用帯状導電体8a)、およびそれに対応する1組の帯状導電体群(同図では帯状導電体9a,9b)のみでコイル部35を形成することにより、ノーマルモード用のフィルタ素子31を構成することもできる。なお、フィルタ素子1,11,21と同一の構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、図示はしないが、接地用帯状導電体8a、およびそれに対応する1組の帯状導電体群(同図では帯状導電体9a,9b)を3組以上備えたコイル部を形成することにより、多相の伝送線路に対するコモンモード用のフィルタ素子を構成することもできる。そして、上記のフィルタ素子11および2相を超える多相のフィルタ素子においても、フィルタ素子1と同様にして、ノイズ成分を十分に減衰させることができると考えられる。
また、上記した各フィルタ素子1,21では、一の帯状導電体群を構成する帯状導電体9a,9b同士を隣接させ、他の帯状導電体群を構成する帯状導電体9c,9d同士を隣接させる構成を採用したが、例えば、帯状導電体9a,9bを挟むようにして各帯状導電体9c,9dを配置することもできるし、帯状導電体9a,9bの間に帯状導電体9c,9dのいずれか一方を配置することもできる。また、上述したフィルタ素子1(または11,21,31)を複数使用して共通の磁性コア6で互いに磁気的に結合させることにより、1つのフィルタ素子を構成することもできる。また、上記した各フィルタ素子1,11,21,31では、コイル部5,15,25,35に磁性コア6を配設することにより、帯状導電体9a〜9d(フィルタ素子11,31では帯状導電体9a,9b)のインダクタンスを増加させて、ノイズ成分をより一層減衰させ得る構成が採用されているが、磁性コア6のない状態でも必要な減衰量を確保できるときには、コイル部5,15,25,35に磁性コア6を配設しない構成を採用することもできる。
フィルタ素子1の構成を示す斜視図である。 入力端子2、出力端子3および接地用端子4の各引出し部位A,B,Cを示すためにフィルタ素子1を一方の端面から見た平面図である。 フィルタ素子1の各帯状絶縁体7a,7b、各接地用帯状導電体8a,8bおよび各帯状導電体9a〜9dの構成を示す分解図である。 スイッチング電源100の二次側出力端子に接続した状態のフィルタ素子1(110)についてのノイズ減衰特性を測定する測定系を示す回路図である。 図4の測定系によって測定したフィルタ素子1の周波数とノイズの減衰量との関係を示すノイズ特性図である。 図4の測定系によって測定したフィルタ素子110の周波数とノイズの減衰量との関係を示すノイズ特性図である。 フィルタ素子1(111)の周波数と電源端子妨害電圧との関係を測定する測定系を示す回路図である。 図7の測定系(負荷:5W)によって測定したフィルタ素子1の周波数と電源端子妨害電圧との関係を示す電源端子妨害電圧特性図である。 図7の測定系(負荷:26W)によって測定したフィルタ素子1の周波数と電源端子妨害電圧との関係を示す電源端子妨害電圧特性図である。 図7の測定系(負荷:5W)によって測定したフィルタ素子111の周波数と電源端子妨害電圧との関係を示す電源端子妨害電圧特性図である。 図7の測定系(負荷:26W)によって測定したフィルタ素子111の周波数と電源端子妨害電圧との関係を示す電源端子妨害電圧特性図である。 フィルタ素子11の構成を示す斜視図である。 入力端子2、出力端子3および接地用端子4の各引出し部位A,B,Cを示すためにフィルタ素子11を一方の端面から見た平面図である。 フィルタ素子11の各帯状絶縁体7a,7b、各接地用帯状導電体8aおよび各帯状導電体9a,9bの構成を示す分解図である。 フィルタ素子21の構成を示す斜視図である。 入力端子2、出力端子3および接地用端子4の各引出し部位A,B,Cを示すためにフィルタ素子21を一方の端面から見た平面図である。 フィルタ素子21の各帯状絶縁体7a,7b、各接地用帯状導電体8a,8bおよび各帯状導電体9a〜9dの構成を示す分解図である。 フィルタ素子31の構成を示す斜視図である。 入力端子2、出力端子3および接地用端子4の各引出し部位A,B,Cを示すためにフィルタ素子31を一方の端面から見た平面図である。 フィルタ素子31の各帯状絶縁体7a,7b、各接地用帯状導電体8aおよび各帯状導電体9a,9bの構成を示す分解図である。
符号の説明
1,11,21,31 フィルタ素子
2a,2b 入力端子
3a,3b 出力端子
4 接地用端子
5,15,25,35 コイル部
6 磁性コア
7a,7b 帯状絶縁体
8a,8b 接地用帯状導電体
9a,9b,9c,9d 帯状導電体
H 空隙

Claims (4)

  1. 帯状絶縁体、当該帯状絶縁体の幅方向において互いに離間した状態で当該帯状絶縁体の一方の面側に並設された複数の帯状導電体、および前記帯状絶縁体の他方の面側に配設された接地用帯状導電体を巻回することによって全体として筒状に形成されたコイル部を備え、
    前記各帯状導電体は、一端側において相互接続されると共に、そのうちの1本が信号用帯状導電体として機能するフィルタ素子。
  2. 帯状絶縁体、当該帯状絶縁体の幅方向において互いに離間した状態で当該帯状絶縁体の一方の面側に並設された複数の帯状導電体、および前記帯状絶縁体の他方の面側に配設された接地用帯状導電体を巻回することによって全体として筒状に形成されたコイル部を備え、
    前記複数の帯状導電体は、当該帯状導電体をそれぞれ複数有する複数の帯状導電体群に分割され、
    前記各帯状導電体群に含まれている前記帯状導電体は、一端側において相互接続されると共に、そのうちの1本が信号用帯状導電体として機能するフィルタ素子。
  3. 前記信号用帯状導電体として機能する前記帯状導電体は、相互接続されている前記一端側が出力端として構成されている請求項1または2記載のフィルタ素子。
  4. 前記コイル部の中心部に形成された空隙に磁性体が配設されている請求項1から3のいずれかに記載のフィルタ素子。
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