ところが、この種のフィルタには、以下のような問題点がある。すなわち、この種のフィルタでは、出力インピーダンスの変動が大きな回路(例えばスイッチング電源装置の二次側出力回路)に使用されたときには、ノイズに対する減衰特性が大きくばらつくという問題点が存在する。
本発明は、上記の問題を解決すべくなされたものであり、ノイズ源の出力インピーダンスの変動が大きいときであっても、ノイズに対する減衰特性のばらつきの少ないフィルタ素子を提供することを主目的とする。
上記目的を達成すべく請求項1記載のフィルタ素子は、信号用帯状導電体と接地用帯状導電体とを帯状絶縁体を介して重ねた状態で巻回することによって全体として筒状に形成されたコイル部と、前記信号用帯状導電体における前記コイル部の外周側に位置する端部側に接続されて当該コイル部の外周側部位から引き出された入力端子と、前記信号用帯状導電体におけるその長さ方向に沿った中心点を中心とする当該信号用帯状導電体の全長の3分の1の領域内に接続された出力端子とを備えているフィルタ素子であって、前記コイル部は、前記信号用帯状導電体に対して前記接地用帯状導電体が外側になるように巻回されて形成され、前記出力端子は、前記コイル部におけるその中心を挟んで前記入力端子の引出し部位とは反対側に位置する部位から引き出され、前記接地用帯状導電体における前記コイル部の外周側に位置する端部側に接続されると共に前記コイル部の中心を挟んで前記入力端子の引出し部位とは反対側に位置する当該コイル部の外周側部位から引き出された接地用端子を備えている。ここで、本発明における「帯状導電体」とは、厚みの薄いシート状の導電体に限らず、ある程度の厚みのある導電体、例えば、断面形状が丸形、楕円、四角形、または台形に形成された可撓性を有する板状の導電体をも含むことを意味する。また、帯状導電体の端部側とは、帯状導電体におけるその端縁から1ターン以内の部位を意味する。
また、請求項2記載のフィルタ素子は、請求項1記載のフィルタ素子において、前記信号用帯状導電体の巻数をnとしたときに、前記出力端子は、前記信号用帯状導電体におけるほぼn/2巻目の部位に接続されている。
また、請求項3記載のフィルタ素子は、請求項1記載のフィルタ素子において、前記出力端子は、前記信号用帯状導電体の前記中心点に接続されている。
また、請求項4記載のフィルタ素子は、並設された複数の信号用帯状導電体と接地用帯状導電体とを帯状絶縁体を介して重ねた状態で巻回することによって全体として筒状に形成されたコイル部と、前記各信号用帯状導電体における前記コイル部の外周側に位置する各端部側にそれぞれ接続されて当該コイル部の外周側部位からそれぞれ引き出された複数の入力端子と、前記各信号用帯状導電体におけるその長さ方向に沿った中心点を中心とする当該各信号用帯状導電体の全長の3分の1の領域内にそれぞれ接続された複数の出力端子とを備えているフィルタ素子であって、前記コイル部は、前記各信号用帯状導電体に対して前記接地用帯状導電体が外側になるように巻回されて形成され、前記各出力端子は、前記コイル部におけるその中心を挟んで前記各入力端子の引出し部位とは反対側に位置する部位からそれぞれ引き出され、前記接地用帯状導電体における前記コイル部の外周側に位置する端部側に接続されると共に前記コイル部の中心を挟んで前記各入力端子の引出し部位とは反対側に位置する当該コイル部の外周側部位から引き出された接地用端子を備えている。
また、請求項5記載のフィルタ素子は、請求項4記載のフィルタ素子において、前記各信号用帯状導電体の巻数をnとしたときに、前記各出力端子は、前記各信号用帯状導電体におけるほぼn/2巻目の部位にそれぞれ接続されている。
また、請求項6記載のフィルタ素子は、請求項4記載のフィルタ素子において、前記各出力端子は、前記各信号用帯状導電体の前記中心点にそれぞれ接続されている。
また、請求項7記載のフィルタ素子は、信号用帯状導電体と接地用帯状導電体とを帯状絶縁体を介して重ねた状態で巻回することによって全体として筒状に形成されたコイル部を備え、前記信号用帯状導電体における前記コイル部の外周側に位置する端部側に入力部位が規定され、前記信号用帯状導電体におけるその長さ方向に沿った中心点を中心とする当該信号用帯状導電体の全長の3分の1の領域内に出力部位が規定されているフィルタ素子であって、前記コイル部は、前記信号用帯状導電体に対して前記接地用帯状導電体が外側になるように巻回されて形成され、前記出力部位は、前記コイル部におけるその中心を挟んで前記入力部位とは反対側に位置する部位に規定され、前記接地用帯状導電体における前記コイル部の外周側に位置する端部側であって、当該コイル部の中心を挟んで前記入力部位とは反対側に位置する部位に接地部位が規定されている。
また、請求項8記載のフィルタ素子は、請求項7記載のフィルタ素子において、前記信号用帯状導電体の巻数をnとしたときに、前記出力部位は、前記信号用帯状導電体におけるほぼn/2巻目の部位に規定されている。
また、請求項9記載のフィルタ素子は、請求項7記載のフィルタ素子において、前記出力部位は、前記信号用帯状導電体の前記中心点に規定されている。
また、請求項10記載のフィルタ素子は、並設された複数の信号用帯状導電体と接地用帯状導電体とを帯状絶縁体を介して重ねた状態で巻回することによって全体として筒状に形成されたコイル部を備え、前記各信号用帯状導電体における前記コイル部の外周側に位置する各端部側に複数の入力部位がそれぞれ規定され、前記各信号用帯状導電体におけるその長さ方向に沿った中心点を中心とする当該各信号用帯状導電体の全長の3分の1の領域内に複数の出力部位がそれぞれ規定されているフィルタ素子であって、前記コイル部は、前記各信号用帯状導電体に対して前記接地用帯状導電体が外側になるように巻回されて形成され、前記各出力部位は、前記コイル部におけるその中心を挟んで前記各入力部位とは反対側に位置する部位にそれぞれ規定され、前記接地用帯状導電体における前記コイル部の外周側に位置する端部側であって、当該コイル部の中心を挟んで前記各入力部位とは反対側に位置する部位に接地部位が規定されている。
また、請求項11記載のフィルタ素子は、請求項10記載のフィルタ素子において、前記各信号用帯状導電体の巻数をnとしたときに、前記各出力部位は、前記各信号用帯状導電体におけるほぼn/2巻目の部位にそれぞれ規定されている。
また、請求項12記載のフィルタ素子は、請求項10記載のフィルタ素子において、前記各出力部位は、前記各信号用帯状導電体の前記中心点にそれぞれ規定されている。
また、請求項13記載のフィルタ素子は、請求項1から12のいずれかに記載のフィルタ素子において、前記コイル部の中心部に形成された空隙に磁性体が配設されている。
請求項1および7記載のフィルタ素子によれば、信号用帯状導電体と接地用帯状導電体とを帯状絶縁体を介して重ねた状態で巻回することによって全体として筒状に形成されたコイル部を備え、信号用帯状導電体におけるコイル部の外周側に位置する端部側に入力端子を接続するための入力部位を規定し、信号用帯状導電体におけるその長さ方向に沿った中心点を中心とする信号用帯状導電体の全長の3分の1の領域内に出力端子を接続するための出力部位を規定したことにより、出力端子(出力部位)よりも内周側に、接地用帯状導電体との間に帯状絶縁体を介在させた状態で信号用帯状導電体を配設することができる。このため、信号用帯状導電体における出力部位よりも内周側の部位を一方の電極とし、かつこの内周側の部位に対向する接地用帯状導電体における部位を他方の電極とするコンデンサを、出力端子(出力部位)と接地との間に形成することができる。したがって、フィルタ素子によれば、このコンデンサを介して出力端子(出力部位)から接地側にノーマルモードノイズをバイパスさせることができる結果、出力インピーダンスの変動が大きなノイズ源の出力フィルタに使用したとしても、ノイズに対する減衰特性のばらつきの少ないノーマルモード用のフィルタ素子を実現することができる。
この場合、ノイズ減衰特性を優れたものにするために、コイル部は、信号用帯状導電体に対して接地用帯状導電体が外側になるように巻回されて形成されている。また、出力端子(出力部位)は、コイル部におけるその中心を挟んで入力端子(入力部位)とは反対側に位置している。さらに、接地用帯状導電体におけるコイル部の外周側に位置する端部側であって、コイル部の中心を挟んで入力端子(入力部位)とは反対側に位置する部位に接地用端子を接続するための接地部位が規定されている。
また、請求項2および8記載のフィルタ素子によれば、信号用帯状導電体の巻数をnとしたときに、信号用帯状導電体におけるほぼn/2巻目の部位を出力部位として規定したことにより、信号用帯状導電体についての巻数の確保と、上記のコンデンサについての容量の確保とをバランスよく実現することができる結果、ノイズに対する減衰特性のばらつきのさらに少ないノーマルモード用のフィルタ素子を実現することができる。また、コイル部の製造時において、信号用帯状導電体の巻数を目安に出力端子を信号用帯状導電体に接続することができるため、出力端子を所望の位置に確実に接続することができる。
また、請求項3および9記載のフィルタ素子によれば、信号用帯状導電体の中心点に出力端子を接続するための出力部位を規定したことにより、信号用帯状導電体についての巻数の確保と、上記のコンデンサについての容量の確保とをバランスよく実現することができる結果、ノイズに対する減衰特性のばらつきのさらに少ないノーマルモード用のフィルタ素子を実現することができる。
また、請求項4および10記載のフィルタ素子によれば、並設された複数の信号用帯状導電体と接地用帯状導電体とを帯状絶縁体を介して重ねた状態で巻回することによって全体として筒状に形成されたコイル部を備え、各信号用帯状導電体におけるコイル部の外周側に位置する各端部側に入力端子を接続するための入力部位をそれぞれ規定し、各信号用帯状導電体におけるその長さ方向に沿った中心点を中心とする各信号用帯状導電体の全長の3分の1の領域内に出力端子を接続するための出力部位をそれぞれ規定したことにより、各出力端子(各出力部位)よりも内周側に、接地用帯状導電体との間に帯状絶縁体を介在させた状態で各信号用帯状導電体を配設することができる。このため、各信号用帯状導電体における各出力部位よりも内周側の各部位を一方の電極とし、かつこの内周側の各部位にそれぞれ対向する接地用帯状導電体における各部位を他方の電極とする複数のコンデンサを、各出力端子(各出力部位)と接地との間に形成することができる。したがって、このフィルタ素子によれば、これらのコンデンサを介して各出力端子(各出力部位)から接地側にコモンモードノイズをバイパスさせることができる結果、出力インピーダンスの変動が大きなノイズ源の出力フィルタに使用したとしても、ノイズに対する減衰特性のばらつきの少ないコモンモード用のフィルタ素子を実現することができる。
この場合、ノイズ減衰特性を優れたものにするために、コイル部は、各信号用帯状導電体に対して接地用帯状導電体が外側になるように巻回されて形成されている。また、各出力端子(各出力部位)は、コイル部におけるその中心を挟んで入力端子(入力部位)とは反対側に位置している。さらに、接地用帯状導電体におけるコイル部の外周側に位置する端部側であって、コイル部の中心を挟んで各入力端子(各入力部位)とは反対側に位置する部位に接地用端子を接続するための接地部位が規定されている。
また、請求項5および11記載のフィルタ素子によれば、各信号用帯状導電体の巻数をnとしたときに、各信号用帯状導電体におけるほぼn/2巻目の部位を出力部位として規定したことにより、各信号用帯状導電体についての巻数の確保と、上記のコンデンサについての容量の確保とをバランスよく実現することができる結果、ノイズに対する減衰特性のばらつきのさらに少ないコモンモード用のフィルタ素子を実現することができる。また、コイル部の製造時において、各信号用帯状導電体の巻数を目安に各出力端子を各信号用帯状導電体にそれぞれ接続することができるため、出力端子を所望の位置に確実に接続することができる。
また、請求項6および12記載のフィルタ素子によれば、各信号用帯状導電体の中心点に各出力端子を接続するための出力部位をそれぞれ規定したことにより、信号用帯状導電体についての巻数の確保と、上記のコンデンサについての容量の確保とをバランスよく実現することができる結果、ノイズに対する減衰特性のばらつきのさらに少ないコモンモード用のフィルタ素子を実現することができる。
また、請求項13記載のフィルタ素子によれば、コイル部の中心部に形成された空隙に磁性体を配設したことにより、信号用帯状導電体のインダクタンスを増加させることができるため、ノイズ減衰特性の一層良好なフィルタ素子を実現することができる。
以下、添付図面を参照して、フィルタ素子の最良の形態について説明する。
最初に、フィルタ素子1について、図面を参照して説明する。
フィルタ素子1は、図1に示すように、入力端子2、出力端子3、接地用端子4、コイル部5および柱状(一例として円柱状)の磁性コア6を備えて構成されて、分布定数型の3端子型ノイズフィルタ(低域通過型のノーマルモードフィルタ)として機能する。
コイル部5は、図3に示すように、帯状絶縁体5a,5b、各帯状絶縁体5a,5bよりも幅狭に形成された接地用帯状導電体7、および接地用帯状導電体7とほぼ同じ平面形状の信号用帯状導電体8を備えている。この場合、各帯状絶縁体5a,5bは、誘電性および電気的絶縁性を有する材料(ポリイミド、ポリエチレン、絶縁紙など)を用いて、同じ幅、同じ長さで、かつ均一な厚みに構成されている。接地用帯状導電体(以下、「接地用導電体」ともいう)7は均一な厚みに形成され、その一端側(図3中の左端部側)に接地用端子4が電気的に接続されている。具体的には、接地用端子4は、接地用導電体7における巻き終わりの1ターン(最外周部。図3中の領域Y)内に規定された接地部位に接続されている。また、接地用導電体7は、帯状絶縁体5aの上に、帯状絶縁体5aにおける幅方向の中央部に位置するようにして重ねられている。帯状絶縁体5bは、帯状絶縁体5aの上に、帯状絶縁体5aとの間で接地用導電体7を挟み込むようにして重ねられている。
信号用帯状導電体(以下、「信号用導電体」ともいう)8は均一な厚みに形成され、その一端側(図3中の左端部側)には入力端子2が電気的に接続されている。具体的には、入力端子2は、信号用導電体8における巻き終わりの1ターン(最外周部。図3中の領域Y)内に規定された入力部位に接続されている。この場合、この入力部位は、接地用端子4の接続位置(接地部位)に対して各導電体7,8の長さ方向に沿って2分の1ターン分ずらした位置に規定されている。また、信号用導電体8の長さ方向に沿った中心点W上に出力部位が規定され、この出力部位に出力端子3が電気的に接続されている。この場合、出力端子3の接続位置(出力部位)は、中心点W上に限定されず、信号用導電体8におけるその中心点Wを中心とする領域(信号用導電体8の全長の3分の1の長さの領域)X内の任意の位置に規定することができる。したがって、例えば、信号用導電体8の巻数をnターンとしたときに、信号用導電体8におけるほぼn/2巻(ターン)目の部位を出力部位として規定して、この部位に出力端子3を接続することもできる。このようにすることで、コイル部5の製造時において、信号用導電体8の巻数(ターン数)を目安に出力端子3を信号用導電体8に接続することができるため、出力端子3を所望の位置に確実に接続することができる。また、信号用導電体8は、帯状絶縁体5bの上に、帯状絶縁体5bにおける幅方向の中央部に位置するようにして重ねられている。つまり、各導電体7,8は、帯状絶縁体5bを挟んだ状態で帯状絶縁体5a上に重ねられている。コイル部5は、このように互いに重ねられた各帯状絶縁体5a,5bおよび各導電体7,8を、各導電体7,8の他端側(図3中の右端部側)を巻き始めとして、かつ信号用導電体8に対して接地用導電体7が外側になるように巻回することにより、全体として図1に示すように筒状(中心部に空隙Hが形成された円筒状)に形成されている。磁性コア6は、この空隙H内に装着されて、コイル部5の中心部に配設されている。
このコイル部5では、入力端子2が接続された信号用導電体8の一端側はコイル部5の外周側に位置して、入力端子2は、図1に示すように、コイル部5の一方の端面(図1中の上端面)における外周側部位(図2中の引出し部位A)から引き出されている。また、出力端子3は、コイル部5の中心(中心軸O)と入力端子2の引出し部位Aとを含む仮想平面L(以下、「平面L」ともいう)上であって、中心軸O(または空隙H、または磁性コア6)を挟んで引出し部位Aとは反対側に位置する引出し部位Bから引き出されている。また、接地用端子4が接続された接地用導電体7における一端側はコイル部5の外周側に位置して、接地用端子4は、図1に示すように、コイル部5の一方の端面における外周側部位(図2中の引出し部位C)から引き出されている。具体的には、接地用端子4の引出し部位Cは、図2に示すように、平面L上であって、中心軸Oを挟んで引出し部位Aとは反対側(言い換えれば、引出し部位Bを挟んで引出し部位Aとは反対側)に規定されている。ここで、入力端子2等の「引出し部位」とは、入力端子2等がコイル部5から突出する(引き出される)コイル部5の表面における部位をいう。この場合、入力端子2、出力端子3および接地用端子4は、信号用導電体8の幅方向に沿ってコイル部5の一方の端面側に直線的に引き出されている。このため、図2に示すように、コイル部5を一方の端面から見た状態において、入力端子2の引出し部位Aと信号用導電体8の一端側(最外周部)に規定された入力部位とはほぼ一致する。同様にして、出力端子3の引出し部位Bは信号用導電体8に規定された出力部位とほぼ一致し、接地用端子4の引出し部位Cは接地用導電体7に規定された接地部位とほぼ一致する。なお、上記した引出し部位の定義、および各引出し部位と入力部位等との位置関係については、後述するフィルタ素子11,21,31についても適用される。したがって、信号用導電体8に規定された入力部位および出力部位、並びに接地用導電体7に規定された接地部位もまた、上記した各引出し部位A,B,Cと同一の位置関係で平面L上に規定されている。
このフィルタ素子1によれば、信号用導電体8と接地用導電体7とを各帯状絶縁体5a,5bを介して重ねた状態で信号用導電体8に対して接地用導電体7が外側になるように巻回して形成されたコイル部5を備え、信号用導電体8におけるコイル部5の外周側に位置する端部側(最外周部)に規定された入力部位に入力端子2を接続すると共にコイル部5の外周側部位から引き出し、信号用導電体8の中心側の領域X内に規定された出力部位に出力端子3を接続してコイル部5の中心軸Oを挟んで入力端子2の引出し部位Aとは反対側に位置する引出し部位Bから引き出し、接地用導電体7におけるコイル部5の外周側に位置する端部側(最外周部)に規定された接地部位に接地用端子4を接続すると共にコイル部5の中心軸Oを挟んで入力端子2の引出し部位Aとは反対側に位置するコイル部5の外周側の引出し部位Cから引き出したことにより、コイル部5における出力端子3の引出し部位B(信号用導電体8における出力部位)よりも内周側に、接地用導電体7との間に帯状絶縁体5bを介在させた状態で信号用導電体8を配設することができる。このため、信号用導電体8における出力端子3の引出し部位Bよりも内周側の部位を一方の電極とし、かつこの内周側の部位に対向する接地用導電体7における部位を他方の電極とするコンデンサを、出力端子3(信号用導電体8における出力部位)と接地との間に形成することができる。したがって、このフィルタ素子1によれば、このコンデンサを介して出力端子3(信号用導電体8における出力部位)から接地側にノーマルモードノイズをバイパスさせることができる結果、出力インピーダンスの変動が大きなノイズ源の出力フィルタに使用したとしても、ノイズに対する減衰特性のばらつきの少ないノーマルモード用のフィルタ素子を実現することができる。また、このフィルタ素子1によれば、信号用導電体8の中心点Wを出力部位として規定してこの出力部位に出力端子3を接続したことにより、信号用導電体8についての巻数の確保と、上記のコンデンサについての容量の確保とをバランスよく実現することができる結果、ノイズに対する減衰特性のばらつきのさらに少ないノーマルモード用のフィルタ素子を実現することができる。また、磁性コア6により、信号用導電体8のインダクタンスを増加させることができるため、ノイズ減衰特性の一層良好なフィルタ素子を実現することができる。
次に、ネットワークアナライザ(ADVANTEST社製 R3767CG)を用いて、その出力インピーダンスを5Ω、50Ωおよび500Ωと変化させたときのフィルタ素子1についてのノイズに対する減衰特性の変化の様子を図13に具体的に示す。また、同様にして測定した比較例としてのフィルタ素子51についてのノイズに対する減衰特性の変化の様子を図14に示す。この場合、比較例としてのフィルタ素子51は、信号用導電体と接地用導電体とを帯状絶縁体を介して重ねた状態で信号用導電体に対して接地用導電体が外側になるように巻回してコイル部55を形成し、図16に示すように、信号用導電体におけるコイル部55の外周側に位置する端部側(最外周部)に規定した入力部位に入力端子2を接続すると共にコイル部55の外周側部位から引き出し、信号用導電体におけるコイル部55の内周側に位置する端部側(信号用導電体における巻き始めの1ターン(最内周部))に規定した出力部位に出力端子3を接続してコイル部55の中心軸Oを挟んで入力端子2の引出し部位とは反対側に位置する引出し部位から引き出し、接地用導電体におけるコイル部55の外周側に位置する端部側(最外周部)に規定した接地部位に接地用端子4を接続すると共に出力端子3の引出し部位を挟んで入力端子2の引出し部位とは反対側に位置するコイル部55の外周側の引出し部位から引き出して構成されている。また、フィルタ素子1では、入力端子2と出力端子3とで挟まれた信号用導電体8の巻数は、7ターンに規定されている。一方、比較例としてのフィルタ素子51でも、入力端子2と出力端子3とで挟まれた信号用導電体の巻数は、7ターンに規定されている。
図13,14によれば、ネットワークアナライザの出力インピーダンスを5Ω、50Ωおよび500Ωというように変化させたときのフィルタ素子1についての周波数毎の減衰量のバラツキ(減衰特性のバラツキ)は、フィルタ素子51についての周波数毎の減衰量のバラツキよりも、明らかに少ないことが確認できる。
次に、フィルタ素子11の構成について図4〜図6を参照して説明する。なお、フィルタ素子1と同一の構成については同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
フィルタ素子11は、図4に示すように、入力端子2、出力端子3、接地用端子4、コイル部15および磁性コア6を備えて構成されて、分布定数型の3端子型ノイズフィルタ(低域通過型のノーマルモードフィルタ)として機能する。
コイル部15は、図6に示すように、帯状絶縁体5a,5b、接地用帯状導電体7および信号用帯状導電体8を備えている。この場合、信号用導電体8の他端側(図6中の右端部側)には、入力端子2が電気的に接続されている。具体的には、入力端子2は、信号用導電体8における巻き始めの1ターン(最内周部。図6中の領域Y)内に規定された入力部位に接続されている。出力端子3は、信号用導電体8の領域X内に規定された出力部位(具体的には中心点W上)に電気的に接続されている。この場合、出力端子3の接続位置(出力部位)は、フィルタ素子1と同様にして、中心点W上に限定されず、信号用導電体8におけるその中心点Wを中心とする領域X内の任意の位置に規定することができる。信号用導電体8は、帯状絶縁体5aの上に、帯状絶縁体5aにおける幅方向の中央部に位置するようにして重ねられている。帯状絶縁体5bは、帯状絶縁体5aの上に、信号用導電体8を帯状絶縁体5aとの間で挟み込むようにして重ねられている。接地用導電体7の他端側(図6中の右端部側)には、接地用端子4が電気的に接続されている。具体的には、接地用端子4は、接地用導電体7における巻き始めの1ターン(最内周部。図6中の領域Y)内に規定された接地部位に接続されている。この場合、接地用端子4の接続位置(接地部位)は、入力端子2の接続位置(入力部位)に対して各導電体7,8の長さ方向に沿って2分の1ターン分ずらして規定されている。また、接地用導電体7は、帯状絶縁体5bの上に、帯状絶縁体5bにおける幅方向の中央部に位置するようにして重ねられている。つまり、各導電体7,8は、帯状絶縁体5bを挟んだ状態で帯状絶縁体5a上に重ねられている。コイル部15は、このように互いに重ねられた各帯状絶縁体5a,5bおよび各導電体7,8を、各導電体7,8の他端側(図6中の右端部側)を巻き始めとして、かつ接地用導電体7に対して信号用導電体8が外側になるように巻回することにより、全体として図4に示すように筒状(中心部に空隙Hが形成された円筒状)に形成されている。磁性コア6は、この空隙H内に装着されて、コイル部15の中心部に配設されている。
このコイル部15では、入力端子2が接続された信号用導電体8の他端側はコイル部15の内周側に位置して、入力端子2は、図4に示すように、コイル部15の一方の端面(図4中の上端面)における内周側部位(図5中の引出し部位A)から引き出されている。また、接地用端子4が接続された接地用導電体7における他端側はコイル部15の内周側に位置して、接地用端子4は、図4に示すように、コイル部15の一方の端面における内周側部位(図5中の引出し部位C)から引き出されている。ここで、接地用端子4の引出し部位Cは、図5に示すように、コイル部15の中心軸Oと入力端子2の引出し部位Aとを含む平面L上であって、中心軸O(または空隙H、または磁性コア6)を挟んで入力端子2の引出し部位Aとは反対側に規定されている。また、出力端子3は、コイル部15の中心軸Oと入力端子2の引出し部位Aとを含む平面L上であって、コイル部15におけるその中心(中心軸O)を挟んで入力端子2の引出し部位Aとは反対側(言い換えれば、接地用端子4の引出し部位Cを挟んで入力端子2の引出し部位Aとは反対側)に位置する引出し部位Bから引き出されている。
このフィルタ素子11によれば、信号用導電体8と接地用導電体7とを各帯状絶縁体5a,5bを介して重ねた状態で接地用導電体7に対して信号用導電体8が外側になるように巻回して形成されたコイル部15を備え、信号用導電体8におけるコイル部15の内周側に位置する端部側(最内周部)に規定された入力部位に入力端子2を接続すると共にコイル部15の内周側部位から引き出し、接地用導電体7におけるコイル部15の内周側に位置する端部側(最内周部)に規定された接地部位に接地用端子4を接続すると共にコイル部15の中心軸Oを挟んで入力端子2の引出し部位Aとは反対側に位置するコイル部15の内周側部位(引出し部位)Cから引き出し、信号用導電体8の中心側の領域X内に規定された出力部位に出力端子3を接続してコイル部15の中心軸Oを挟んで入力端子2の引出し部位Aとは反対側に位置する引出し部位Bから引き出したことにより、コイル部15における出力端子3の引出し部位B(信号用導電体8における出力部位)よりも外周側に、接地用導電体7との間に帯状絶縁体5bを介在させた状態で信号用導電体8を配設することができる。このため、信号用導電体8における出力端子3の引出し部位Bよりも外周側の部位を一方の電極とし、かつこの外周側の部位に対向する接地用導電体7における部位を他方の電極とするコンデンサを、出力端子3(信号用導電体8における出力部位)と接地との間に形成することができる。したがって、このフィルタ素子11によれば、このコンデンサを介して出力端子3(信号用導電体8における出力部位)から接地側にノーマルモードノイズをバイパスさせることができる結果、出力インピーダンスの変動が大きなノイズ源の出力フィルタに使用したとしても、ノイズに対する減衰特性のばらつきの少ないノーマルモード用のフィルタ素子を実現することができる。また、このフィルタ素子11によれば、信号用導電体8の中心点Wを出力部位として規定してこの出力部位に出力端子3を接続したことにより、信号用導電体8についての巻数の確保と、上記のコンデンサについての容量の確保とをバランスよく実現することができる結果、ノイズに対する減衰特性のばらつきのさらに少ないノーマルモード用のフィルタ素子を実現することができる。
次に、フィルタ素子21について、図面を参照して説明する。
まず、フィルタ素子21の構成について説明する。なお、このフィルタ素子21は、ノーマルモードフィルタとして機能するフィルタ素子1の信号用導電体8についての構成を変更することにより、コモンモードフィルタとして構成されている。このため、殆どの構成要素はフィルタ素子1の対応する構成要素と共通する。したがって、フィルタ素子1と同一の構成については同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
フィルタ素子21は、図7に示すように、一対の入力端子2a,2b(以下、区別しないときには「入力端子2」ともいう)、一対の出力端子3a,3b(以下、区別しないときには「出力端子3」ともいう)、一対の接地用端子4a,4b(以下、区別しないときには「接地用端子4」ともいう)、コイル部25および円柱状の磁性コア6を備えて構成されて、分布定数型のコモンモードノイズフィルタ(低域通過型フィルタ)として機能する。
コイル部25は、図9に示すように、帯状絶縁体5a,5b、一対の接地用導電体7a,7b(以下、特に区別しないときは「接地用導電体7」ともいう)、および一対の信号用導電体8a,8b(以下、特に区別しないときは「信号用導電体8」ともいう)を備えている。この場合、各接地用導電体7a,7bは、その一端側(図9中の左端部側)に接地用端子4a,4bが電気的にそれぞれ接続されている。具体的には、各接地用端子4は、各接地用導電体7における巻き終わりの1ターン(最外周部。図9中の領域Y)内に規定された接地部位にそれぞれ接続されている。また、各接地用導電体7a,7bは、同じ幅に形成されると共に、互いに接触しないようにして平行な状態で帯状絶縁体5aの上に重ねられている。帯状絶縁体5bは、帯状絶縁体5aの上に、帯状絶縁体5aとの間で各接地用導電体7を挟み込むようにして重ねられている。信号用導電体8a,8bは、同じ幅に形成されると共に、互いに接触しないようにして平行な状態で帯状絶縁体5b上に載置されている。つまり、各導電体7,8は、帯状絶縁体5bを挟んだ状態で帯状絶縁体5a上に重ねられている。また、各信号用導電体8a,8bの各々の一端側(図9中の左端部側)には、入力端子2a,2bが電気的にそれぞれ接続されている。具体的には、各入力端子2は、各信号用導電体8における巻き終わりの1ターン(最外周部。図9中の領域Y)内に規定された入力部位にそれぞれ接続されている。また、各信号用導電体8a,8bのそれぞれの長さ方向に沿った中心点Wを中心とする領域(各信号用導電体8a,8bの全長の3分の1の領域)X内にそれぞれ規定された出力部位には、出力端子3a,3bがそれぞれ接続されている。この場合、各出力端子3a,3bの各信号用導電体8a,8bへの接続位置(出力部位)は、フィルタ素子1における出力端子3の信号用導電体8への接続位置(出力部位)の場合と同様にして、中心点W上に限定されず、信号用導電体8a,8bにおけるその中心点Wを中心とする領域X内の任意の位置に規定することができる。コイル部25は、このように互いに重ねられた各帯状絶縁体5a,5b、および各導電体7,8a,8bを、それぞれの他端側を巻き始めとして、かつ信号用導電体8a,8bに対して各接地用導電体7が外側になるように巻回することにより、全体として図7に示すように筒状(中心部に空隙Hが形成された円筒状)に形成されている。また、コイル部25の空隙H内には、磁性コア6が装着されている。
このコイル部25では、各入力端子2a,2bが接続された各信号用導電体8a,8bにおける各々の一端側はコイル部25の外周側に位置して、各入力端子2a,2bは、図7に示すように、コイル部25の一方の端面における外周側部位(図8中の引出し部位A)から引き出されている。各出力端子3a,3bは、コイル部25の中心(中心軸O)と入力端子2の引出し部位Aとを含む平面L上であって、中心軸O(または空隙H、または磁性コア6)を挟んで引出し部位Aとは反対側に位置する引出し部位Bから引き出されている。各接地用端子4が接続された各接地用導電体7における一端側はコイル部25の外周側に位置して、各接地用端子4は、図7に示すように、コイル部25の一方の端面における外周側部位(図8中の引出し部位C)からそれぞれ引き出されている。具体的には、各接地用端子4の引出し部位Cは、図8に示すように、平面L上であって、コイル部25の中心軸Oを挟んで引出し部位Aとは反対側(言い換えれば、引出し部位Bを挟んで引出し部位Aとは反対側)にそれぞれ規定されている。
このフィルタ素子21では、並設された2本の信号用導電体8a,8bと2本の接地用導電体7a,7bとを帯状絶縁体5bを介して重ねた状態で各信号用導電体8a,8bに対して各接地用導電体7が外側になるように巻回することによって形成されたコイル部25を備え、各信号用導電体8a,8bにおけるコイル部25の外周側に位置する各端部側(最外周部)にそれぞれ規定された入力部位に入力端子2a,2bを接続してコイル部25の外周側部位からそれぞれ引き出し、各信号用導電体8a,8bの中央側の領域X内にそれぞれ規定された出力部位に各出力端子3a,3bを接続してコイル部25の中心軸Oを挟んで各入力端子2a,2bの引出し部位Aとは反対側に位置する引出し部位Bからそれぞれ引き出し、各接地用導電体7におけるコイル部25の外周側に位置する端部側(最外周部)にそれぞれ規定された接地部位に各接地用端子4をそれぞれ接続してコイル部25の中心軸Oを挟んで各入力端子2a,2bの引出し部位Aとは反対側に位置するコイル部25の外周側部位からそれぞれ引き出したことにより、コイル部25における出力端子3a,3bの引出し部位B(各信号用導電体8における出力部位)よりも内周側に、各接地用導電体7との間に帯状絶縁体5bを介在させた状態で各信号用導電体8a,8bを配設することができる。このため、信号用導電体8aにおける出力端子3aの引出し部位Bよりも内周側の部位を一方の電極とし、かつこの内周側の部位に対向する各接地用導電体7における部位を他方の電極とするコンデンサと、信号用導電体8bにおける出力端子3bの引出し部位Bよりも内周側の部位を一方の電極とし、かつこの内周側の部位に対向する各接地用導電体7における部位を他方の電極とするコンデンサとを、各出力端子3a,3b(各信号用導電体8における出力部位)と接地との間に形成することができる。
したがって、このフィルタ素子21によれば、入力端子2aから信号用導電体8aを経由して出力端子3aに至る経路と、入力端子2bから信号用導電体8bを経由して出力端子3bに至る経路の双方を同時に伝搬するコモンモードノイズを、各出力端子3a,3b側に形成された上記の各コンデンサを介して接地側にバイパスさせることができる結果、フィルタ素子1がノーマルモードノイズに対する減衰特性のばらつきを少なくできるのと同様にして、コモンモードノイズに関して出力インピーダンスの変動が大きなノイズ源の出力フィルタに使用したとしても、ノイズに対する減衰特性のばらつきの少ないコモンモード用のフィルタ素子を実現することができる。また、このフィルタ素子21によれば、各信号用導電体8a,8bの中心点Wを出力部位として規定してこの出力部位に出力端子3a,3bを接続したことにより、信号用導電体8a,8bについての巻数の確保と、上記のコンデンサについての容量の確保とをバランスよく実現することができる結果、ノイズに対する減衰特性のばらつきのさらに少ないコモンモード用のフィルタ素子を実現することができる。
次に、フィルタ素子31について、図面を参照して説明する。
まず、フィルタ素子31の構成について説明する。なお、このフィルタ素子31は、ノーマルモードフィルタとして機能するフィルタ素子11の信号用導電体8についての構成を変更することにより、コモンモードフィルタとして構成されている。このため、殆どの構成要素はフィルタ素子11の対応する構成要素と共通する。したがって、フィルタ素子11と同一の構成については同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
フィルタ素子31は、図10に示すように、一対の入力端子2(2a,2b)、一対の出力端子3(3a,3b)、一対の接地用端子4(4a,4b)、コイル部35および磁性コア6を備えて構成されて、分布定数型のコモンモードノイズフィルタ(低域通過型フィルタ)として機能する。
コイル部35は、図12に示すように、帯状絶縁体5a,5b、各接地用導電体7および一対の信号用導電体8(8a,8b)を備えている。この場合、各信号用導電体8a,8bは、同じ幅に形成されると共に、互いに接触しないようにして平行な状態で帯状絶縁体5aの上に載置されている。また、各信号用導電体8a,8b各々の他端側(図12中の右端部側)には、各入力端子2a,2bが電気的にそれぞれ接続されている。具体的には、各入力端子2は、各信号用導電体8における巻き始めの1ターン(最内周部。図12中の領域Y)内に規定された入力部位にそれぞれ接続されている。また、各信号用導電体8a,8bのそれぞれの長さ方向に沿った中心点Wを中心とする領域(各信号用導電体8a,8bの全長の3分の1の領域)X内にそれぞれ規定された出力部位には、出力端子3a,3bがそれぞれ接続されている。この場合、各出力端子3a,3bの各信号用導電体8a,8bへの接続位置(出力部位)は、フィルタ素子11における出力端子3の信号用導電体8への接続位置(出力部位)の場合と同様にして、中心点W上に限定されず、信号用導電体8a,8bにおけるその中心点Wを中心とする領域X内の任意の位置に規定することができる。帯状絶縁体5bは、各信号用導電体8a,8bの上に、各信号用導電体8a,8bを帯状絶縁体5aとの間で挟み込むようにして重ねられている。各接地用導電体7の他端側(図12中の右端部側)には、各接地用端子4が電気的にそれぞれ接続されている。具体的には、各接地用端子4は、各接地用導電体7における巻き始めの1ターン(最内周部。図12中の領域Y)内に規定された接地部位にそれぞれ接続されている。また、各接地用導電体7a,7bは、同じ幅に形成されると共に、互いに接触しないようにして平行な状態で帯状絶縁体5bの上に重ねられている。つまり、各導電体7a,7bと各導電体8a,8bとは、帯状絶縁体5bを挟んだ状態で帯状絶縁体5a上に重ねられている。コイル部35は、このように互いに重ねられた各帯状絶縁体5a,5b、および各導電体7a,7b,8a,8bを、各導電体7a,7b,8a,8bの他端側を巻き始めとして、かつ各接地用導電体7に対して信号用導電体8a,8bが外側になるように巻回することにより、全体として図10に示すように筒状(中心部に空隙Hが形成された円筒状)に形成されている。また、コイル部35の空隙H内には、磁性コア6が装着されている。
このコイル部35では、各入力端子2a,2bがそれぞれ接続された各信号用導電体8a,8bの他端側はコイル部35の内周側に位置して、各入力端子2a,2bは、図10に示すように、コイル部35の一方の端面(図10中の上端面)における内周側部位(図11中の引出し部位A)から引き出されている。また、各接地用端子4が接続された各接地用導電体7における他端側はコイル部35の内周側に位置して、各接地用端子4は、図10に示すように、コイル部35の一方の端面における内周側部位(図11中の引出し部位C)からそれぞれ引き出されている。ここで、各接地用端子4の引出し部位Cは、図11に示すように、コイル部35の中心(中心軸O)と各入力端子2a,2bの引出し部位Aとを含む平面L上であって、中心軸O(または空隙H、または磁性コア6)を挟んで各入力端子2a,2bの引出し部位Aとは反対側にそれぞれ規定されている。各出力端子3a,3bは、コイル部35の中心軸Oと各入力端子2a,2bの引出し部位Aとを含む平面L上であって、コイル部35の中心軸Oを挟んで引出し部位Aとは反対側(言い換えれば、引出し部位Cを挟んで引出し部位Aとは反対側)に位置する引出し部位Bから引き出されている。
このフィルタ素子31では、並設された2本の信号用導電体8a,8bと2本の接地用導電体7a,7bとを帯状絶縁体5bを介して重ねた状態で各接地用導電体7に対して各信号用導電体8a,8bが外側になるように巻回することによって形成されたコイル部35を備え、各信号用導電体8a,8bにおけるコイル部35の内周側に位置する各端部側(最内周部)にそれぞれ規定された入力部位に入力端子2a,2bを接続してコイル部35の内周側部位からそれぞれ引き出し、各接地用導電体7におけるコイル部35の内周側に位置する端部側(最内周部)に規定された接地部位に各接地用端子4をそれぞれ接続してコイル部35の中心軸Oを挟んで各入力端子2a,2bの引出し部位Aとは反対側に位置するコイル部35の内周側部位からそれぞれ引き出し、各信号用導電体8a,8bの中央側の領域X内にそれぞれ規定された出力部位に各出力端子3a,3bを接続してコイル部35の中心軸Oを挟んで各入力端子2a,2bの引出し部位Aとは反対側に位置する引出し部位Bからそれぞれ引き出したことにより、コイル部35における出力端子3a,3bの引出し部位B(各信号用導電体8における出力部位)よりも外周側に、各接地用導電体7との間に帯状絶縁体5bを介在させた状態で各信号用導電体8a,8bを配設することができる。このため、信号用導電体8aにおける出力端子3aの引出し部位Bよりも外周側の部位を一方の電極とし、かつこの外周側の部位に対向する各接地用導電体7における部位を他方の電極とするコンデンサと、信号用導電体8bにおける出力端子3bの引出し部位Bよりも外周側の部位を一方の電極とし、かつこの部位に対向する各接地用導電体7における部位を他方の電極とするコンデンサとを、各出力端子3a,3b(各信号用導電体8における出力部位)と接地との間に形成することができる。
したがって、このフィルタ素子31によれば、入力端子2aから信号用導電体8aを経由して出力端子3aに至る経路と、入力端子2bから信号用導電体8bを経由して出力端子3bに至る経路の双方を同時に伝搬するコモンモードノイズを、各出力端子3a,3b側に形成された上記の各コンデンサを介して接地側にバイパスさせることができる結果、コモンモードノイズに関して、ノーマルモードノイズに対してフィルタ素子11がノイズに対する減衰特性のばらつきを少なくできるのと同様にして、出力インピーダンスの変動が大きなノイズ源の出力フィルタに使用したとしても、ノイズに対する減衰特性のばらつきの少ないコモンモード用のフィルタ素子を実現することができる。また、このフィルタ素子31によれば、各信号用導電体8a,8bの中心点Wを出力部位として規定してこの出力部位に出力端子3a,3bを接続したことにより、信号用導電体8a,8bについての巻数の確保と、上記のコンデンサについての容量の確保とをバランスよく実現することができる結果、ノイズに対する減衰特性のばらつきのさらに少ないコモンモード用のフィルタ素子を実現することができる。
なお、上記した実施の形態に限定されない。例えば、上述した各フィルタ素子1,11,21,31では、コイル部5,15,25,35に形成された空隙Hの内部に磁性コア6を装着して各接地用導電体7および信号用導電体8の結合度合いや分布インダクタンスの値を向上させることによって減衰特性を向上させているが、磁性コア6に代えてポットコア内にコイル部5,15,25,35を装着することもできる。また、磁性コア6およびポットコアを用いずに、空芯コイルとしてコイル部5,15,25,35を形成することもできる。
また、上記した各フィルタ素子1,11,21,31では、入力端子2、出力端子3および接地用端子4を、コイル部の同一端面(図1では上端面)にのみ配設する構成が採用されているが、入力端子2、出力端子3および接地用端子4は、コイル部の中心軸Oを含む平面L上に配設されていればよく、入力端子2、出力端子3および接地用端子4の内の一部の端子を他の端子とは逆の端面(図1では下端面)に配設する構成を採用することもできる。また、上記した各フィルタ素子1,11,21,31では、入力端子2、出力端子3および接地用端子4を、コイル部の中心軸Oを含む平面L上に配設する構成が採用されているが、すべての端子が平面L上に厳密には配設されずに、平面Lから若干ずれた位置に各端子が配置されていてもよい。また、フィルタ素子21,31では、一対の信号用導電体8a,8bを備えてコモンモードフィルタとして機能する構成が採用されているが、3本以上の信号用導電体を備えて構成することもできる。また、フィルタ素子21,31では、複数の信号用導電体8に対して、信号用導電体8毎に独立した接地用導電体7をそれぞれ配設する構成が採用されているが、複数の信号用導電体に対して1つの共通する接地用導電体を配設する構成を採用することもできる。
また、上記した各フィルタ素子1,11,21,31では、帯状絶縁体5aが最も外側になるように各コイル部5,15,25,35を形成したが、信号用導電体8に対して接地用導電体7が外側に位置するコイル部5,25を備えたフィルタ素子1,21については、帯状絶縁体5aを信号用導電体8の内側に配設することにより、接地用導電体7の最外周部がコイル部の最外周に位置するように構成することもできる。このようにして構成したフィルタ素子によれば、コイル部の最外周に接地用導電体7の最外周部が露出するため、例えば接地用導電体7をプリント基板のグランド電位に直接接続することで確実かつ容易に接地することが可能となる。一例として、図15に示すフィルタ素子41は、フィルタ素子1のコイル部5をベースとして、接地用導電体7が最外周に位置するように構成されたコイル部45を備えて構成されている。また、図示はしないが、接地用導電体7に対して信号用導電体8が外側に位置するコイル部15,35を備えたフィルタ素子11,31をベースとして、帯状絶縁体5aを接地用導電体7の内側に配設することにより、信号用導電体8の最外周部がコイル部の最外周に位置するフィルタ素子を構成することもできる。