ところで、近年では、上記のノーマルモード型ノイズフィルタの構成を利用したコモンモード用のノイズフィルタも開発されているが、ノーマルモード型ノイズフィルタと同様にして、このコモンモード用のノイズフィルタに対しても、さらなるノイズ減衰特性の向上が望まれている。
本発明は、上記の要望に鑑みてなされたものであり、コモンモードノイズに対して優れたノイズ減衰特性を有するフィルタ素子を提供することを主目的とする。
上記目的を達成すべく請求項1記載のフィルタ素子は、第1の帯状絶縁体の幅方向において互いに離間した状態で当該第1の帯状絶縁体の上面に並設された一対の第1帯状導電体および一対の第1の導電体と、前記第1の帯状絶縁体との間で前記一対の第1帯状導電体および前記一対の第1の導電体を挟み込むようにして当該第1の帯状絶縁体の上に重ねられた第2の帯状絶縁体の上面に当該第2の帯状絶縁体の幅方向において互いに離間した状態で並設された一対の第2帯状導電体および一対の第2の導電体とを巻回することによって全体として筒状に形成されたコイル部を備え、前記一対の第1の導電体は、前記一対の第1帯状導電体の内側に並設されるか、または相互間で当該一対の第1帯状導電体を挟むようにして当該一対の第1帯状導電体の外側に並設され、前記一対の第1帯状導電体の一方は、前記第2の帯状絶縁体を介して前記一対の第2帯状導電体の一方と対向し、前記一対の第1帯状導電体の他方は、前記第2の帯状絶縁体を介して前記一対の第2帯状導電体の他方と対向し、前記一対の第1の導電体の一方は、前記第2の帯状絶縁体を介して前記一対の第2の導電体の一方と対向し、前記一対の第1の導電体の他方は、前記第2の帯状絶縁体を介して前記一対の第2の導電体の他方と対向し、前記一方の第1帯状導電体は、一端側において前記一方の第1の導電体の一端側と接続され、前記他方の第1帯状導電体は、一端側において前記他方の第1の導電体の一端側と接続され、前記一方の第2の導電体は、一端側において前記他方の第1帯状導電体の前記一端側および前記他方の第1の導電体の前記一端側のいずれかと接続され、前記他方の第2の導電体は、一端側において前記一方の第1帯状導電体の前記一端側および前記一方の第1の導電体の前記一端側のいずれかと接続されている。ここで、本明細書における「帯状導電体」とは、厚みの薄いシート状の導電体に限らず、ある程度の厚みのある導電体、例えば、断面形状が丸形、楕円、四角形、または台形に形成された可撓性を有する板状の導電体をも含むことを意味する。
請求項2記載のフィルタ素子は、第1の帯状絶縁体の幅方向において互いに離間した状態で当該第1の帯状絶縁体の上面に並設された一対の第1帯状導電体および一対の第1の導電体と、前記第1の帯状絶縁体との間で前記一対の第1帯状導電体および前記一対の第1の導電体を挟み込むようにして当該第1の帯状絶縁体の上に重ねられた第2の帯状絶縁体の上面に当該第2の帯状絶縁体の幅方向において互いに離間した状態で並設された一対の第2帯状導電体および一対の第2の導電体とを巻回することによって全体として筒状に形成されたコイル部を備え、前記一対の第1の導電体は、前記一対の第1帯状導電体の内側に並設されるか、または相互間で当該一対の第1帯状導電体を挟むようにして当該一対の第1帯状導電体の外側に並設され、前記一対の第1帯状導電体の一方は、前記第2の帯状絶縁体を介して前記一対の第2帯状導電体の一方と対向し、前記一対の第1帯状導電体の他方は、前記第2の帯状絶縁体を介して前記一対の第2帯状導電体の他方と対向し、前記一対の第1の導電体の一方は、前記第2の帯状絶縁体を介して前記一対の第2の導電体の一方と対向し、前記一対の第1の導電体の他方は、前記第2の帯状絶縁体を介して前記一対の第2の導電体の他方と対向し、前記一方の第2帯状導電体は、一端側において前記一方の第2の導電体の一端側と接続され、前記他方の第2帯状導電体は、一端側において前記他方の第2の導電体の一端側と接続され、前記一方の第1の導電体は、一端側において前記他方の第2帯状導電体の前記一端側および前記他方の第2の導電体の前記一端側のいずれかと接続され、前記他方の第1の導電体は、一端側において前記一方の第2帯状導電体の前記一端側および前記一方の第2の導電体の前記一端側のいずれかと接続されている。
請求項3記載のフィルタ素子は、第1の帯状絶縁体の幅方向において互いに離間した状態で当該第1の帯状絶縁体の上面に並設された一対の信号用帯状導電体および一対の第1の導電体と、前記第1の帯状絶縁体との間で前記一対の信号用帯状導電体および前記一対の第1の導電体を挟み込むようにして当該第1の帯状絶縁体の上に重ねられた第2の帯状絶縁体の上面に当該第2の帯状絶縁体の幅方向において互いに離間した状態で並設された一対の接地用帯状導電体および一対の第2の導電体とを巻回することによって全体として筒状に形成されたコイル部を備え、前記一対の第1の導電体は、前記一対の信号用帯状導電体の内側に並設されるか、または相互間で当該一対の信号用帯状導電体を挟むようにして当該一対の信号用帯状導電体の外側に並設され、前記一対の信号用帯状導電体の一方は、前記第2の帯状絶縁体を介して前記一対の接地用帯状導電体の一方と対向し、前記一対の信号用帯状導電体の他方は、前記第2の帯状絶縁体を介して前記一対の接地用帯状導電体の他方と対向し、前記一対の第1の導電体の一方は、前記第2の帯状絶縁体を介して前記一対の第2の導電体の一方と対向し、前記一対の第1の導電体の他方は、前記第2の帯状絶縁体を介して前記一対の第2の導電体の他方と対向し、前記一方の信号用帯状導電体は、一端側において前記一方の第1の導電体の一端側と接続され、前記他方の信号用帯状導電体は、一端側において前記他方の第1の導電体の一端側と接続され、前記一方の第2の導電体は、一端側において前記他方の信号用帯状導電体の前記一端側および前記他方の第1の導電体の前記一端側のいずれかと接続され、前記他方の第2の導電体は、一端側において前記一方の信号用帯状導電体の前記一端側および前記一方の第1の導電体の前記一端側のいずれかと接続されている。
請求項4記載のフィルタ素子は、第1の帯状絶縁体の幅方向において互いに離間した状態で当該第1の帯状絶縁体の上面に並設された一対の接地用帯状導電体および一対の第1の導電体と、前記第1の帯状絶縁体との間で前記一対の接地用帯状導電体および前記一対の第1の導電体を挟み込むようにして当該第1の帯状絶縁体の上に重ねられた第2の帯状絶縁体の上面に当該第2の帯状絶縁体の幅方向において互いに離間した状態で並設された一対の信号用帯状導電体および一対の第2の導電体とを巻回することによって全体として筒状に形成されたコイル部を備え、前記一対の第2の導電体は、前記一対の信号用帯状導電体の内側に並設されるか、または相互間で当該一対の信号用帯状導電体を挟むようにして当該一対の信号用帯状導電体の外側に並設され、前記一対の信号用帯状導電体の一方は、前記第2の帯状絶縁体を介して前記一対の接地用帯状導電体の一方と対向し、前記一対の信号用帯状導電体の他方は、前記第2の帯状絶縁体を介して前記一対の接地用帯状導電体の他方と対向し、前記一対の第1の導電体の一方は、前記第2の帯状絶縁体を介して前記一対の第2の導電体の一方と対向し、前記一対の第1の導電体の他方は、前記第2の帯状絶縁体を介して前記一対の第2の導電体の他方と対向し、前記一方の信号用帯状導電体は、一端側において前記一方の第2の導電体の一端側と接続され、前記他方の信号用帯状導電体は、一端側において前記他方の第2の導電体の一端側と接続され、前記一方の第1の導電体は、一端側において前記他方の信号用帯状導電体の前記一端側および前記他方の第2の導電体の前記一端側のいずれかと接続され、前記他方の第1の導電体は、一端側において前記一方の信号用帯状導電体の前記一端側および前記一方の第2の導電体の前記一端側のいずれかと接続されている。
また、請求項5記載のフィルタ素子は、請求項3または4記載のフィルタ素子において、前記一対の信号用帯状導電体は、前記一端側に出力部位がそれぞれ規定されている。
また、請求項6記載のフィルタ素子は、請求項5記載のフィルタ素子において、前記コイル部は、前記一対の信号用帯状導電体の前記一端側を巻始め端として巻回されて形成され、前記一対の信号用帯状導電体の各外周部に入力部位がそれぞれ規定され、前記コイル部の中心軸を挟んで前記入力部位に対して反対側に位置する前記一対の接地用帯状導電体の各外周部に接地部位がそれぞれ規定され、前記各出力部位は、前記コイル部の中心軸を挟んで前記入力部位に対して反対側に位置する前記一対の信号用帯状導電体の各内周部にそれぞれ規定されている。ここで、本明細書における「内周部」とは、信号用帯状導電体または接地用帯状導電体における巻始めの数ターンに含まれる部位をいい、「外周部」とは、信号用帯状導電体または接地用帯状導電体における巻き終わりの数ターンに含まれる部位をいう。
また、請求項7記載のフィルタ素子は、請求項5記載のフィルタ素子において、前記コイル部は、前記一対の信号用帯状導電体の前記一端側を巻始め端として巻回されて形成され、前記一対の信号用帯状導電体の各外周部に入力部位がそれぞれ規定され、前記コイル部の中心軸を挟んで前記入力部位に対して反対側に位置する前記一対の接地用帯状導電体の各外周部に接地部位がそれぞれ規定され、前記各出力部位は、前記コイル部の中心軸を挟んで前記接地部位に対して反対側に位置する前記一対の信号用帯状導電体の各内周部にそれぞれ規定されている。
また、請求項8記載のフィルタ素子は、請求項5記載のフィルタ素子において、前記コイル部は、前記一対の信号用帯状導電体の他端側を巻始め端として巻回されて形成され、前記一対の信号用帯状導電体の各内周部に入力部位がそれぞれ規定され、前記コイル部の中心軸を挟んで前記入力部位に対して反対側に位置する前記一対の接地用帯状導電体の各内周部に接地部位がそれぞれ規定され、前記各出力部位は、前記コイル部の中心軸を挟んで前記入力部位に対して反対側に位置する前記一対の信号用帯状導電体の各外周部にそれぞれ規定されている。
また、請求項9記載のフィルタ素子は、請求項5記載のフィルタ素子において、前記コイル部は、前記一対の信号用帯状導電体の他端側を巻始め端として巻回されて形成され、前記一対の信号用帯状導電体の各内周部に入力部位がそれぞれ規定され、前記コイル部の中心軸を挟んで前記入力部位に対して反対側に位置する前記一対の接地用帯状導電体の各内周部に接地部位がそれぞれ規定され、前記各出力部位は、前記コイル部の中心軸を挟んで前記接地部位に対して反対側に位置する前記一対の信号用帯状導電体の各外周部にそれぞれ規定されている。
また、請求項10記載のフィルタ素子は、請求項6から9のいずれかに記載のフィルタ素子において、入力端子が前記入力部位に接続され、出力端子が前記出力部位に接続され、接地用端子が前記接地部位に接続されている。ここで、本明細書における「端子」とは、棒状の導電体に限らず、可撓性を備えた配線ケーブル、さらには金属箔などの平板状導電体をも含むことを意味する。
また、請求項11記載のフィルタ素子は、請求項1から10のいずれかに記載のフィルタ素子において、前記コイル部の中心部に形成された空隙に磁性体が配設されている。
請求項1記載のフィルタ素子では、第2の帯状絶縁体を介して一対の第1帯状導電体の一方を一対の第2帯状導電体の一方と対向させると共に、第2の帯状絶縁体を介して一対の第1帯状導電体の他方を一対の第2帯状導電体の他方と対向させ、第2の帯状絶縁体を介して一対の第1の導電体の一方を一対の第2の導電体の一方と対向させると共に、第2の帯状絶縁体を介して一対の第1の導電体の他方を一対の第2の導電体の他方と対向させ、一方の第1帯状導電体を一端側において一方の第1の導電体の一端側と接続すると共に、他方の第1帯状導電体を一端側において他方の第1の導電体の一端側と接続し、一方の第2の導電体を一端側において他方の第1帯状導電体の一端側および他方の第1の導電体の一端側のいずれかと接続し、かつ他方の第2の導電体を一端側において一方の第1帯状導電体の一端側および一方の第1の導電体の一端側のいずれかと接続したことにより、一方の第1の導電体と一方の第2の導電体との間に静電容量の大きなコンデンサが形成されて、このコンデンサは、一対の第1帯状導電体間に接続される。また、他方の第1の導電体と他方の第2の導電体との間に静電容量の大きなコンデンサが形成されて、このコンデンサも一対の第1帯状導電体間に接続される。したがって、このフィルタ素子によれば、一対の第1帯状導電体間に静電容量の大きな2つのコンデンサを接続できるため、一対の第1帯状導電体間の高周波信号に対するインピーダンスを低下させることができ、この結果、広い周波数帯域に亘ってコモンモードノイズを良好に減衰させることができる。
請求項2記載のフィルタ素子では、第2の帯状絶縁体を介して一対の第1帯状導電体の一方を一対の第2帯状導電体の一方と対向させると共に、第2の帯状絶縁体を介して一対の第1帯状導電体の他方を一対の第2帯状導電体の他方と対向させ、第2の帯状絶縁体を介して一対の第1の導電体の一方を一対の第2の導電体の一方と対向させると共に、第2の帯状絶縁体を介して一対の第1の導電体の他方を一対の第2の導電体の他方と対向させ、一方の第2帯状導電体を一端側において一方の第2の導電体の一端側と接続すると共に、他方の第2帯状導電体を一端側において他方の第2の導電体の一端側と接続し、一方の第1の導電体を一端側において他方の第2帯状導電体の一端側および他方の第2の導電体の一端側のいずれかと接続し、かつ他方の第1の導電体を一端側において一方の第2帯状導電体の一端側および一方の第2の導電体の一端側のいずれかと接続したことにより、一方の第1の導電体と一方の第2の導電体との間に静電容量の大きなコンデンサが形成されて、このコンデンサは、一対の第2帯状導電体間に接続される。また、他方の第1の導電体と他方の第2の導電体との間に静電容量の大きなコンデンサが形成されて、このコンデンサも一対の第2帯状導電体間に接続される。したがって、このフィルタ素子によれば、一対の第1帯状導電体間に静電容量の大きな2つのコンデンサを接続できるため、一対の第1帯状導電体間の高周波信号に対するインピーダンスを低下させることができ、この結果、広い周波数帯域に亘ってコモンモードノイズを良好に減衰させることができる。
請求項3記載のフィルタ素子では、第2の帯状絶縁体を介して一対の信号用帯状導電体の一方を一対の接地用帯状導電体の一方と対向させると共に、第2の帯状絶縁体を介して一対の信号用帯状導電体の他方を一対の接地用帯状導電体の他方と対向させ、第2の帯状絶縁体を介して一対の第1の導電体の一方を一対の第2の導電体の一方と対向させると共に、第2の帯状絶縁体を介して一対の第1の導電体の他方を一対の第2の導電体の他方と対向させ、一方の信号用帯状導電体を一端側において一方の第1の導電体の一端側と接続すると共に、他方の信号用帯状導電体を一端側において他方の第1の導電体の一端側と接続し、一方の第2の導電体を一端側において他方の信号用帯状導電体の一端側および他方の第1の導電体の一端側のいずれかと接続し、かつ他方の第2の導電体を一端側において一方の信号用帯状導電体の一端側および一方の第1の導電体の一端側のいずれかと接続したことにより、一方の第1の導電体と一方の第2の導電体との間に静電容量の大きなコンデンサが形成されて、このコンデンサは、一対の信号用帯状導電体間に接続される。また、他方の第1の導電体と他方の第2の導電体との間に静電容量の大きなコンデンサが形成されて、このコンデンサも一対の信号用帯状導電体間に接続される。したがって、このフィルタ素子によれば、一対の信号用帯状導電体間に静電容量の大きな2つのコンデンサを接続できるため、一対の信号用帯状導電体間の高周波信号に対するインピーダンスを低下させることができ、この結果、広い周波数帯域に亘ってコモンモードノイズを良好に減衰させることができる。
請求項4記載のフィルタ素子では、第2の帯状絶縁体を介して一対の信号用帯状導電体の一方を一対の接地用帯状導電体の一方と対向させると共に、第2の帯状絶縁体を介して一対の信号用帯状導電体の他方を一対の接地用帯状導電体の他方と対向させ、第2の帯状絶縁体を介して一対の第1の導電体の一方を一対の第2の導電体の一方と対向させると共に、第2の帯状絶縁体を介して一対の第1の導電体の他方を一対の第2の導電体の他方と対向させ、一方の信号用帯状導電体を一端側において一方の第1の導電体の一端側と接続すると共に、他方の信号用帯状導電体を一端側において他方の第1の導電体の一端側と接続し、一方の第1の導電体を一端側において他方の信号用帯状導電体の一端側および他方の第2の導電体の一端側のいずれかと接続し、かつ他方の第1の導電体を一端側において一方の信号用帯状導電体の一端側および一方の第2の導電体の一端側のいずれかと接続したことにより、一方の第1の導電体と一方の第2の導電体との間に静電容量の大きなコンデンサが形成されて、このコンデンサは、一対の信号用帯状導電体間に接続される。また、他方の第1の導電体と他方の第2の導電体との間に静電容量の大きなコンデンサが形成されて、このコンデンサも一対の信号用帯状導電体間に接続される。したがって、このフィルタ素子によれば、一対の信号用帯状導電体間に静電容量の大きな2つのコンデンサを接続できるため、一対の信号用帯状導電体間の高周波信号に対するインピーダンスを低下させることができ、この結果、広い周波数帯域に亘ってコモンモードノイズを良好に減衰させることができる。
また、請求項5記載のフィルタ素子によれば、一端側を出力部位としたことにより、各信号用帯状導電体における各帯状導電体と相互接続されていない端部側を出力部位とする構成と比較して、インピーダンスのバランスを崩れにくくすることができる結果、広い周波数帯域に亘ってノイズ成分を一層良好に減衰させることができる。したがって、例えば、このフィルタ素子をスイッチング電源における交流入力段のノイズフィルタとして使用することにより、スイッチング電源の出力インピーダンスが時間的に変動したり、負荷のインピーダンスが変動したりした場合においても、コモンモードノイズを安定して良好に減衰させることができる。
また、請求項6,7,8,9記載のフィルタ素子によれば、一対の信号用帯状導電体の一端側または他端側を巻始め端としてコイル部を形成すると共に、一対の信号用帯状導電体についての入力部位および出力部位と、接地用帯状導電体についての接地部位とを上記のように規定したことにより、所定の周波数帯域において大きな減衰量を確保することができる結果、優れた減衰特性を有するコモンモード用のフィルタ素子を実現することができる。
また、請求項10記載のフィルタ素子によれば、入力部位に入力端子を接続し、出力部位に出力端子を接続し、接地部位に接地用端子したことにより、各端子を使用してフィルタ素子を電源装置などに容易に実装することができる。
また、請求項11記載のフィルタ素子によれば、コイル部の中心部に形成された空隙に磁性体を配設したことにより、接地用帯状導電体および信号用帯状導電体の結合度合いや分布インダクタンスの値を向上させることができるため、減衰特性を向上させることができる。
以下、添付図面を参照して、本発明に係るフィルタ素子の最良の形態について説明する。
(第1の最良の形態)
最初に、本形態に係るフィルタ素子1について、図1,2,3を参照して説明する。
フィルタ素子1は、図1,3に示すように、一対の入力端子2a,2b(以下、特に区別しないときには「入力端子2」ともいう)、入力端子2と同数の出力端子3a,3b(以下、特に区別しないときには「出力端子3」ともいう)、接地用端子4、コイル部5および柱状(一例として円柱状)の磁性体(磁性コア)6を備えて構成されて、分布定数型のノイズフィルタ(低域通過型のコモンモードフィルタ)として機能する。
コイル部5は、図3に示すように、2つの帯状絶縁体7a,7b(以下、特に区別しないときは「帯状絶縁体7」ともいう)、入力端子2と同数(2本)の接地用帯状導電体8a,8b(本形態では本発明における第1帯状導電体に相当し、以下、「接地用導電体8a,8b」ともいい、特に区別しないときには「接地用導電体8」ともいう)、入力端子2と同数(2本)の信号用帯状導電体9a,9b(本形態では本発明における第2帯状導電体に相当し、以下、「信号用導電体9a,9b」ともいい、特に区別しないときには「信号用導電体9」ともいう)、および入力端子2の2倍の数(4本)の導電体10a,10b,10c,10dを備えて構成されている。この場合、各帯状絶縁体7a,7bは、例えば、誘電性および電気的絶縁性を有する材料(ポリイミド、ポリエチレン、絶縁紙など)を用いて、同じ幅、同じ長さで、かつ均一な厚みに構成されている。各導電体10a,10b(本形態では本発明における第2の導電体)と各導電体10c,10d(本形態では本発明における第1の導電体)とは、一例として、同じ幅、同じ長さで、かつ均一な厚みの帯状(長尺な長方形)に形成されている。したがって、以下では、各導電体10a〜10dを「帯状導電体10a〜10d」ともいい、特に区別しないときには「帯状導電体10」ともいう。各接地用導電体8は、一例として、同じ幅、同じ長さで、かつ均一な厚みに形成されている。各信号用導電体9も、一例として、同じ幅、同じ長さで、かつ均一な厚みに形成されている。
各接地用導電体8および各帯状導電体10c,10dは、図3に示すように、帯状絶縁体7a(本発明における第1の帯状絶縁体)の幅方向において互いに離間して、かつ平行な状態で、帯状絶縁体7aの上面に並設されている。また、各帯状導電体10c,10dは、相互間で各接地用導電体8を挟むようにして配設されている。帯状絶縁体7b(本発明における第2の帯状絶縁体)は、帯状絶縁体7aとの間で各接地用導電体8および各帯状導電体10c,10dを挟み込むようにして帯状絶縁体7aの上に重ねられている。各信号用導電体9および各帯状導電体10a,10bは、帯状絶縁体7bの幅方向において互いに離間して、かつ平行な状態で、帯状絶縁体7bの上面に並設されている。この場合、各信号用導電体9のうちの一方の信号用導電体9aは帯状絶縁体7bを介して各接地用導電体8のうちの一方の接地用導電体8aと対向し、各信号用導電体9のうちの他方の信号用導電体9bは帯状絶縁体7bを介して各接地用導電体8のうちの他方の接地用導電体8bと対向するように配設されている。また、各帯状導電体10a,10bのうちの一方の帯状導電体10aは帯状絶縁体7bを介して各帯状導電体10c,10dのうちの一方の帯状導電体10cと対向し、各帯状導電体10a,10bのうちの他方の帯状導電体10bは帯状絶縁体7bを介して各帯状導電体10c,10dのうちの他方の帯状導電体10dと対向するように配設されている。この構成により、帯状絶縁体7bを基準としたときに、各信号用導電体9および各帯状導電体10a,10bは、帯状絶縁体7bの表面側に並設され、各接地用導電体8および各帯状導電体10c,10dは、帯状絶縁体7bの裏面側に並設されている。
また、各接地用導電体8は、図3に示すように、一例として、最外周部となる巻き終わり端側(同図中の左端側)において互いに接続されると共に、この各巻き終わり端側に接地部位Cがそれぞれ規定されている。また、各接地用導電体8の接地部位Cには、接地用端子4の一端側が電気的にそれぞれ接続されている。各信号用導電体9a,9bは、一例として、最外周部となる巻き終わり端側(同図中の左端側であって、本発明における他端側)にそれぞれ規定された入力部位Aに入力端子2a,2bの一端側が電気的にそれぞれ接続されると共に、最内周部となる巻始め端側(同図中の右端側であって、本発明における一端側)にそれぞれ規定された出力部位Bに出力端子3a,3bの一端側が電気的にそれぞれ接続されている。また、各信号用導電体9a,9bのうちの一方(信号用導電体9a)の巻始め端側は、各帯状導電体10a,10bのうちの一方(帯状導電体10a)の巻始め端側(本発明における一端側であって、同図中の右端側)と電気的に接続されている。また、各信号用導電体9a,9bのうちの他方(信号用導電体9b)の巻始め端側(本発明における一端側であって、同図中の右端側)は、各帯状導電体10a,10bのうちの他方(帯状導電体10b)の巻始め端側(本発明における一端側であって、同図中の右端側)と電気的に接続されている。また、帯状導電体10cは、対向する帯状導電体10aと異なる電位の信号用導電体9bおよび帯状導電体10bのいずれかと接続されている。本例では、帯状導電体10cは、一例として帯状導電体10bと接続されている。また、帯状導電体10dは、対向する帯状導電体10bと異なる電位の信号用導電体9aおよび帯状導電体10aのいずれかと接続されている。本例では、帯状導電体10dは、一例として帯状導電体10aと接続されている。したがって、帯状導電体10aと帯状導電体10cとの間に静電容量の大きなコンデンサが形成されて、このコンデンサは、信号用導電体9a,9b間に接続される。また、帯状導電体10bと帯状導電体10dとの間に静電容量の大きなコンデンサが形成されて、このコンデンサは、信号用導電体9a,9b間に接続される。この結果、信号用導電体9a,9b間に2つの静電容量の大きなコンデンサが接続されるため、両信号用導電体9a,9b間のインピーダンスは低下する。
コイル部5は、上記のように互いに重ねられた各帯状絶縁体7および各導電体8,9,10を、図3において矢印で示すように、各導電体8,9,10における同図中の右端側(一端側)を巻き始めとして、かつ各信号用導電体9に対して各接地用導電体8が外側になるように巻回することにより、図1に示すように、全体として筒状(中心部に空隙Hが形成された円筒状)に形成されている。磁性コア6は、この空隙H内に装着されて、コイル部5の中心部に配設されている。
この場合、各信号用導電体9の入力部位Aは、コイル部5を一方の端面(図1中の上端面)側から見たときに、図2に示すようにコイル部5の外周側部位に位置している。また、各信号用導電体9の入力部位Aにそれぞれ接続された各入力端子2は、図1に示すように、コイル部5の一方の端面(同図中の上端面)における外周側部位から他端側が引き出されている。このため、コイル部5を一方の端面側から見た状態において、各信号用導電体9の入力部位Aと各入力端子2の引出し部位とはほぼ一致する。したがって、以下では、各入力端子2の引出し部位を「引出し部位A」ともいう。一方、各信号用導電体9の出力部位Bは、コイル部5を一方の端面側から見たときに、図2に示すようにコイル部5の内周側部位にそれぞれ位置している。また、各信号用導電体9の出力部位Bに接続された各出力端子3は、図1に示すように、コイル部5の一方の端面における内周側部位から他端側が引き出されている。このため、コイル部5を一方の端面側から見た状態において、各信号用導電体9の出力部位Bと各出力端子3の引出し部位とはほぼ一致する。したがって、以下では、出力端子3の引出し部位を「引出し部位B」ともいう。ここで、各信号用導電体9の出力部位B(つまり出力端子3の引出し部位)は、図2に示すように、コイル部5の中心軸Oと各信号用導電体9の入力部位A(つまり入力端子2の引出し部位)とを含む仮想平面L(以下、「平面L」ともいう)上であって、中心軸O(または磁性コア6)を挟んで入力部位Aに対して反対側に設定されている。また、各接地用導電体8の接地部位Cは、コイル部5を一方の端面側から見たときに、図2に示すようにコイル部5の外周側部位に位置している。また、各接地用導電体8の接地部位Cに接続された接地用端子4は、図1に示すように、コイル部5の一方の端面における外周側部位から他端側が引き出されている。このため、コイル部5を一方の端面側から見た状態において、各接地用導電体8の接地部位Cと接地用端子4の引出し部位とはほぼ一致する。したがって、以下では、接地用端子4の引出し部位を「引出し部位C」ともいう。具体的には、各接地用導電体8の接地部位Cは、図2に示すように、平面L上であって、コイル部5の中心軸Oを挟んで各入力部位Aに対して反対側に設定されている。ここで、本明細書における入力端子2等の「引出し部位」とは、入力端子2等がコイル部5から突出するコイル部5の表面における部位をいう。したがって、コイル部5がポットコア(磁性体)等に収容されて、ポットコアから入力端子2等が引き出される部位と、コイル部5から入力端子2等が引き出される部位とが相違する構成においても、コイル部5から引き出される部位が、入力端子2等の「引出し部位」となる。同様にして、コイル部5から引き出した入力端子2等をボビンの足に接続するときにおいても、コイル部5から引き出される部位が、入力端子2等の「引出し部位」となる。したがって、ボビンの足を平面L上に配設する必要はなく、任意の位置にボビンの足を配設することができる。
このフィルタ素子1によれば、帯状絶縁体7bを介して各帯状導電体10c,10dとそれぞれ対向するように各帯状導電体10a,10bを配設し、信号用導電体9aおよび帯状導電体10aの各巻始め端側を相互に接続すると共に、信号用導電体9bおよび帯状導電体10bの各巻始め端側を相互に接続し、かつ各帯状導電体10a,10bに各帯状導電体10d,10cをそれぞれ相互接続したことにより、帯状導電体10a,10cおよび帯状導電体10b,10dによってそれぞれ形成される静電容量の大きな2つのコンデンサを各信号用導電体9a,9b間に接続することができる。したがって、各信号用導電体9a,9b間の高周波信号に対するインピーダンスを低下させることができるため、広い周波数帯域に亘ってコモンモードノイズを良好に減衰させることができる。また、各信号用導電体9a,9bにおける各帯状導電体10a,10bと相互接続された端部側に出力部位Bを規定したことにより、各信号用導電体9a,9bにおける各帯状導電体10a,10bと相互接続されていない端部側に出力部位Bを規定する構成と比較して、インピーダンスのバランスを崩れにくくすることができる結果、広い周波数帯域に亘ってノイズ成分を一層良好に減衰させることができる。したがって、例えば、図14に示すように、このフィルタ素子1をスイッチング電源における交流入力段のノイズフィルタとして使用することにより、スイッチング電源の出力インピーダンスが時間的に変動したり、負荷のインピーダンスが変動したりした場合においても、コモンモードノイズを安定して良好に減衰させることができる。
また、このフィルタ素子1によれば、信号用導電体9の入力部位A(各入力端子2の引出し部位)、信号用導電体9の出力部位B(各出力端子3の引出し部位)、および接地用導電体8の接地部位C(接地用端子4の引出し部位)の位置を上記のように規定したことにより、所定の周波数帯域において大きな減衰量を確保することができる結果、優れた減衰特性を有するコモンモード用のフィルタ素子を実現することができる。また、フィルタ素子1によれば、各入力部位Aに各入力端子2を接続し、各出力部位Bに各出力端子3を接続し、各接地部位Cに接地用端子を接続したことにより、各端子2,3,4を使用してフィルタ素子1を電源装置などに容易に実装することができる。
(第2の最良の形態)
次に、本形態に係るフィルタ素子11の構成について、図4〜図6を参照して説明する。なお、フィルタ素子1と同一の構成については同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
フィルタ素子11は、図4に示すように、一対の入力端子2a,2b、一対の出力端子3a,3b、接地用端子4、コイル部15および磁性コア6を備えて構成されて、分布定数型のノイズフィルタ(低域通過型のコモンモードフィルタ)として機能する。
コイル部15は、図6に示すように、帯状絶縁体7a,7b、接地用導電体8a,8b、信号用導電体9a,9b、および帯状導電体10a,10b,10c,10dを備えて構成されている。
各信号用導電体9(本形態では本発明における第1帯状導電体)および各帯状導電体10a,10b(本形態では本発明における第1の導電体)は、図6に示すように、帯状絶縁体7aの幅方向において互いに離間して、かつ平行な状態で、帯状絶縁体7aの上面に並設されている。また、各帯状導電体10a,10bは、相互間で各信号用導電体9を挟むようにして配設されている。帯状絶縁体7bは、帯状絶縁体7aとの間で各信号用導電体9および各帯状導電体10a,10bを挟み込むようにして帯状絶縁体7aの上に重ねられている。各接地用導電体8(本形態では本発明における第2帯状導電体)および各帯状導電体10c,10d(本形態では本発明における第2の導電体)は、帯状絶縁体7bの幅方向において互いに離間して、かつ平行な状態で、帯状絶縁体7bの上面に並設されている。この場合、接地用導電体8aは帯状絶縁体7bを介して信号用導電体9aと対向し、接地用導電体8bは帯状絶縁体7bを介して信号用導電体9bと対向するように配設されている。また、帯状導電体10cは帯状絶縁体7bを介して帯状導電体10aと対向し、帯状導電体10dは帯状絶縁体7bを介して帯状導電体10bと対向するように配設されている。この構成により、帯状絶縁体7bを基準としたときに、各信号用導電体9および各帯状導電体10a,10bは、帯状絶縁体7bの裏面側に並設され、各接地用導電体8および各帯状導電体10c,10dは、帯状絶縁体7bの表面側に並設されている。
また、各接地用導電体8は、図6に示すように、一例として、最内周部となる巻始め端側(同図中の左端側)において互いに接続されると共に、各巻始め端側に接地部位Cがそれぞれ規定されている。また、各接地用導電体8の接地部位Cには、接地用端子4の一端側が電気的にそれぞれ接続されている。各信号用導電体9a,9bは、一例として、最内周部となる巻始め端側(同図中の左端側であって、本発明における他端側)にそれぞれ規定された入力部位Aに入力端子2a,2bの一端側が電気的にそれぞれ接続されると共に、最外周部となる巻き終わり端側(同図中の右端側であって、本発明における一端側)にそれぞれ規定された出力部位Bに出力端子3a,3bの一端側が電気的にそれぞれ接続されている。また、各信号用導電体9a,9bのうちの一方(信号用導電体9a)の巻き終わり端側は、各帯状導電体10a,10bのうちの一方(帯状導電体10a)の巻き終わり端側(本発明における一端側であって、図6中の右端側)と電気的に接続されている。また、各信号用導電体9a,9bのうちの他方(信号用導電体9b)の巻き終わり端側(本発明における一端側)は、各帯状導電体10a,10bのうちの他方(帯状導電体10b)の巻き終わり端側(本発明における一端側であって、図6中の右端側)と電気的に接続されている。また、帯状導電体10cは、対向する帯状導電体10aと異なる電位の信号用導電体9bおよび帯状導電体10bのいずれかと接続されている。本例では、帯状導電体10cは、一例として帯状導電体10bと接続されている。同様にして、帯状導電体10dは、対向する帯状導電体10bと異なる電位の信号用導電体9aおよび帯状導電体10aのいずれかと接続されている。本例では、帯状導電体10dは、一例として帯状導電体10aと接続されている。したがって、このフィルタ素子11でも、フィルタ素子1と同様にして、帯状導電体10aと帯状導電体10cとの間に静電容量の大きなコンデンサが形成されて、このコンデンサは、信号用導電体9a,9b間に接続される。また、帯状導電体10bと帯状導電体10dとの間に静電容量の大きなコンデンサが形成されて、このコンデンサは、信号用導電体9a,9b間に接続される。この結果、信号用導電体9a,9b間に2つの静電容量の大きなコンデンサが接続されるため、両信号用導電体9a,9b間のインピーダンスは低下する。
コイル部15は、上記のように互いに重ねられた各帯状絶縁体7a,7b、および各導電体8,9,10を、図6において矢印で示すように、各導電体8,9,10における同図中の左端側(他端側)を巻き始めとして、かつ各信号用導電体9に対して各接地用導電体8が内側になるように巻回することにより、図4に示すように、全体として中心部に空隙Hが形成された円筒状に形成されている。磁性コア6は、この空隙H内に装着されて、コイル部15の中心部に配設されている。
この場合、各信号用導電体9の入力部位Aは、コイル部15を一方の端面(図4中の上端面)側から見たときに、図5に示すようにコイル部15の内周側部位に位置している。また、各信号用導電体9の入力部位Aにそれぞれ接続された各入力端子2は、図4に示すように、コイル部15の一方の端面(同図中の上端面)における内周側部位から他端側が引き出されている。このため、コイル部15を一方の端面側から見た状態において、各信号用導電体9の入力部位Aと各入力端子2の引出し部位とはほぼ一致する。したがって、以下では、各入力端子2の引出し部位を「引出し部位A」ともいう。一方、各信号用導電体9の出力部位Bは、コイル部15を一方の端面側から見たときに、図5に示すようにコイル部1の外周側部位にそれぞれ位置している。また、各信号用導電体9の出力部位Bに接続された各出力端子3は、図4に示すように、コイル部15の一方の端面における外周側部位から他端側が引き出されている。このため、コイル部15を一方の端面側から見た状態において、各信号用導電体9の出力部位Bと各出力端子3の引出し部位とはほぼ一致する。したがって、以下では、出力端子3の引出し部位を「引出し部位B」ともいう。ここで、各信号用導電体9の出力部位B(つまり出力端子3の引出し部位)は、図5に示すように、コイル部15の中心軸Oと入力部位A(つまり各入力端子2の引出し部位)とを含む平面L上であって、中心軸O(または磁性コア6)を挟んで入力部位Aに対して反対側に設定されている。また、各接地用導電体8の接地部位Cは、コイル部15を一方の端面(図4中の上端面)側から見たときに、図5に示すようにコイル部15の内周側部位に位置している。また、各接地用導電体8の接地部位Cに接続された接地用端子4は、図4に示すように、コイル部15の一方の端面における内周側部位から他端側が引き出されている。このため、コイル部15を一方の端面側から見た状態において、各接地用導電体8の接地部位Cと接地用端子4の引出し部位とはほぼ一致する。したがって、以下では、接地用端子4の引出し部位を「引出し部位C」ともいう。具体的には、各接地用導電体8の引出し部位Cは、図5に示すように、平面L上であって、コイル部15の中心軸Oを挟んで入力部位Aに対して反対側に設定されている。
このフィルタ素子11によれば、帯状絶縁体7bを介して各帯状導電体10c,10dとそれぞれ対向するように各帯状導電体10a,10bを配設し、信号用導電体9aおよび帯状導電体10aの各巻き終わり端側を相互に接続すると共に、信号用導電体9bおよび帯状導電体10bの各巻き終わり端側を相互に接続し、かつ各帯状導電体10a,10bに各帯状導電体10d,10cをそれぞれ相互接続したことにより、フィルタ素子1と同様にして、帯状導電体10a,10cおよび帯状導電体10b,10dによってそれぞれ形成される静電容量の大きな2つのコンデンサを各信号用導電体9a,9b間に接続することができる。したがって、各信号用導電体9a,9b間の高周波信号に対するインピーダンスを低下させることができるため、広い周波数帯域に亘ってコモンモードノイズを良好に減衰させることができる。また、各信号用導電体9a,9bにおける各帯状導電体10a,10bと相互接続された端部側に出力部位Bを規定したことにより、各信号用導電体9a,9bにおける各帯状導電体10a,10bと相互接続されていない端部側に出力部位Bを規定する構成と比較して、インピーダンスのバランスを崩れにくくすることができる結果、広い周波数帯域に亘ってノイズ成分を一層良好に減衰させることができる。したがって、例えば、図14に示すように、このフィルタ素子11をスイッチング電源における交流入力段のノイズフィルタとして使用することにより、スイッチング電源の出力インピーダンスが時間的に変動したり、負荷のインピーダンスが変動したりした場合においても、コモンモードノイズを安定して良好に減衰させることができる。
また、このフィルタ素子11によれば、信号用導電体9の入力部位A(各入力端子2の引出し部位)、信号用導電体9の出力部位B(各出力端子3の引出し部位)、および接地用導電体8の接地部位C(接地用端子4の引出し部位)の位置を上記のように規定したことにより、所定の周波数帯域において大きな減衰量を確保することができる結果、優れた減衰特性を有するコモンモード用のフィルタ素子を実現することができる。
なお、本発明は、上記した構成に限定されない。例えば、上述した各フィルタ素子1,11では、各信号用導電体9の出力部位Bをそれぞれ図2,5に示すように中心軸Oを挟んで各信号用導電体9の入力部位Aに対して反対側に位置するように規定したが、図7,9に示す各フィルタ素子21,31のように、中心軸Oを基準として各入力部位Aと同じ側に位置するように各出力部位Bを規定することもできる。以下、具体的に、各フィルタ素子21,31について説明する。
(第3の最良の形態)
次に、本形態に係るフィルタ素子21について、図3,7,8を参照して説明する。なお、フィルタ素子21は、各出力端子3についての引出し部位Bの配置以外の構成はフィルタ素子1の構成と同一のため、フィルタ素子1と同一の構成については同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
フィルタ素子21は、図7に示すように、一対の入力端子2a,2b、一対の出力端子3a,3b、接地用端子4、コイル部25および磁性コア6を備えて構成されて、分布定数型のノイズフィルタ(低域通過型のコモンモードフィルタ)として機能する。
コイル部25は、図3に示すように、帯状絶縁体7a,7b、接地用導電体8a,8b、信号用導電体9a,9b、および帯状導電体10a,10b,10c,10dを備えている。各帯状絶縁体7等は、同図に示すように、コイル部5の構成と同様にして、互いに重ねられている。また、各接地用導電体8には接地用端子4が、また各信号用導電体9a,9bには各入力端子2a,2bおよび各出力端子3a,3bが、コイル部5の構成と同様にして、それぞれ接続されている。また、帯状導電体10cは帯状導電体10bと接続され、帯状導電体10dは帯状導電体10aと接続されている。
コイル部25は、上記のように互いに重ねられた各帯状絶縁体7a,7b、および各導電体8,9,10を、図3において矢印で示すように、各導電体8,9,10における同図中の右端側(一端側)を巻き始めとして、かつ各信号用導電体9に対して各接地用導電体8が外側になるように巻回することにより、図7に示すように、全体として中心部に空隙Hが形成された円筒状に形成されている。磁性コア6は、この空隙H内に装着されて、コイル部15の中心部に配設されている。
この場合、各信号用導電体9の最外周部に規定された入力部位Aは、コイル部25を一方の端面(図7中の上端面)側から見たときに、図8に示すように、コイル部25の外周側部位に位置している。また、各信号用導電体9の入力部位Aにそれぞれ接続された各入力端子2は、図7に示すように、コイル部25の一方の端面(同図中の上端面)における外周側部位から他端側が引き出されている。このため、コイル部25を一方の端面側から見た状態において、各信号用導電体9の入力部位Aと各入力端子2の引出し部位とはほぼ一致する。一方、接地用導電体8の最外周部に規定された接地部位Cは、コイル部25を一方の端面側から見たときに、図8に示すようにコイル部25の外周側部位に位置している。また、各接地用導電体8の接地部位Cに接続された接地用端子4は、図7に示すように、コイル部25の一方の端面における外周側部位から他端側が引き出されている。このため、コイル部25を一方の端面側から見た状態において、各接地用導電体8の接地部位Cと接地用端子4の引出し部位とはほぼ一致する。ここで、各接地用導電体8の接地部位C(つまり接地用端子4の引出し部位)は、図8に示すように、コイル部25の中心軸Oと各入力部位A(つまり各入力端子2の引出し部位)とを含む平面L上であって、中心軸Oを挟んで各入力部位Aに対して反対側に設定されている。また、各信号用導電体9の最内周部に規定された出力部位Bは、コイル部25を一方の端面側から見たときに、図8に示すようにコイル部25の内周側部位(中心側)にそれぞれ位置している。また、各信号用導電体9の出力部位Bに接続された各出力端子3は、図7に示すように、コイル部25の一方の端面における内周側部位(中心側)から他端側がそれぞれ引き出されている。このため、コイル部25を一方の端面側から見た状態において、各信号用導電体9の出力部位Bと各出力端子3の引出し部位とはほぼ一致する。ここで、各信号用導電体9の出力部位B(つまり出力端子3の引出し部位)は、図8に示すように、コイル部5とは異なり、平面L上であって、中心軸Oを挟んで接地部位Cに対して反対側に設定されている。つまり、各信号用導電体9の出力部位Bは、中心軸Oを基準として各入力部位A(各入力端子2の引出し部位)と同じ側に位置している。
(第4の最良の形態)
次に、本形態に係るフィルタ素子31について、図6,9,10を参照して説明する。なお、フィルタ素子31は、各出力端子3についての引出し部位Bの配置以外の構成はフィルタ素子11の構成と同一のため、フィルタ素子11と同一の構成については同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
フィルタ素子31は、図9に示すように、一対の入力端子2a,2b、一対の出力端子3a,3b、接地用端子4、コイル部35および磁性コア6を備えて構成されて、分布定数型のノイズフィルタ(低域通過型のコモンモードフィルタ)として機能する。
コイル部35は、図6に示すように、帯状絶縁体7a,7b、接地用導電体8a,8b、信号用導電体9a,9b、および帯状導電体10a,10b,10c,10dを備えている。各帯状絶縁体7等は、同図に示すように、コイル部15の構成と同様にして、互いに重ねられている。また、各接地用導電体8には接地用端子4が、また各信号用導電体9a,9bには各入力端子2a,2bおよび各出力端子3a,3bが、コイル部15の構成と同様にして、それぞれ接続されている。また、帯状導電体10cは帯状導電体10bと接続され、帯状導電体10dは帯状導電体10aと接続されている。
コイル部35は、上記のように互いに重ねられた各帯状絶縁体7a,7b、および各導電体8,9,10を、図6において矢印で示すように、各導電体8,9,10における同図中の左端側(他端側)を巻き始めとして、かつ各信号用導電体9に対して各接地用導電体8が内側になるように巻回することにより、図9に示すように、全体として中心部に空隙Hが形成された円筒状に形成されている。磁性コア6は、この空隙H内に装着されて、コイル部35の中心部に配設されている。
この場合、各信号用導電体9の最内周部に規定された入力部位Aは、コイル部35を一方の端面(図9中の上端面)側から見たときに、図10に示すように、コイル部35の内周側部位に位置している。また、各信号用導電体9の入力部位Aにそれぞれ接続された各入力端子2は、図9に示すように、コイル部35の一方の端面における内周側部位から他端側が引き出されている。このため、コイル部35を一方の端面側から見た状態において、各信号用導電体9の入力部位Aと各入力端子2の引出し部位とはほぼ一致する。一方、接地用導電体8の最内周部に規定された接地部位Cは、コイル部35を一方の端面側から見たときに、図10に示すようにコイル部35の内周側部位に位置している。また、各接地用導電体8の接地部位Cに接続された接地用端子4は、図9に示すように、コイル部35の一方の端面における内周側部位から他端側が引き出されている。このため、コイル部35を一方の端面側から見た状態において、各接地用導電体8の接地部位Cと接地用端子4の引出し部位とはほぼ一致する。ここで、各接地用導電体8の接地部位C(つまり接地用端子4の引出し部位)は、図10に示すように、コイル部35の中心軸Oと各入力部位A(つまり各入力端子2の引出し部位)とを含む平面L上であって、中心軸Oを挟んで各入力部位Aに対して反対側に設定されている。また、各信号用導電体9の最外周部に規定された出力部位Bは、コイル部35を一方の端面側から見たときに、図10に示すようにコイル部35の外周側部位にそれぞれ位置している。また、各信号用導電体9の出力部位Bに接続された各出力端子3は、図9に示すように、コイル部35の一方の端面における外周側部位から他端側がそれぞれ引き出されている。このため、コイル部35を一方の端面側から見た状態において、各信号用導電体9の出力部位Bと各出力端子3の引出し部位とはほぼ一致する。ここで、各信号用導電体9の出力部位B(つまり出力端子3の引出し部位)は、図10に示すように、コイル部15とは異なり、平面L上であって、中心軸Oを挟んで接地部位Cに対して反対側に設定されている。つまり、各信号用導電体9の出力部位Bは、中心軸Oを基準として各入力部位A(各入力端子2の引出し部位)と同じ側に位置している。
なお、本発明は、上記した構成に限定されない。例えば、上述した各フィルタ素子1,11,21,31では、図3,6に示すように、各信号用導電体9a,9bを同じ帯状絶縁体7b上に並設した一対の帯状導電体10a,10bで挟むようにして配設したが、各信号用導電体9a,9bと各帯状導電体10a,10bの位置を入れ替えることにより、各帯状導電体10a,10bを挟むように各信号用導電体9a,9bを配設することもできる。以下、具体的に、各フィルタ素子1,11,21,31をベースとして、各信号用導電体9a,9bと各帯状導電体10a,10bの位置を入れ替えた各フィルタ素子41,51,61,71について説明する。
(第5の最良の形態)
次に、本形態に係るフィルタ素子41について、図1,2,11を参照して説明する。なお、フィルタ素子41はフィルタ素子1をベースとしているため、多くの構成がフィルタ素子1の構成と共通する。したがって、フィルタ素子1と同一の構成については同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
フィルタ素子41は、図1に示すように、一対の入力端子2a,2b、一対の出力端子3a,3b、接地用端子4、コイル部45および磁性コア6を備えて構成されて、分布定数型のノイズフィルタ(低域通過型のコモンモードフィルタ)として機能する。
コイル部45は、図11に示すように、帯状絶縁体7a,7b、接地用導電体8a,8b、信号用導電体9a,9b、および帯状導電体10a,10b,10c,10dを備えている。各接地用導電体8(本形態では本発明における第1帯状導電体)および各帯状導電体10c,10d(本形態では本発明における第1の導電体)は、帯状絶縁体7aの幅方向において互いに離間して、かつ平行な状態で、帯状絶縁体7aの上面に並設されている。また、各接地用導電体8は、相互間で各帯状導電体10c,10dを挟むようにして配設されている。帯状絶縁体7bは、帯状絶縁体7aとの間で各接地用導電体8および各帯状導電体10c,10dを挟み込むようにして帯状絶縁体7aの上に重ねられている。各信号用導電体9(本形態では本発明における第2帯状導電体)および各帯状導電体10a,10b(本形態では本発明における第2の導電体)は、帯状絶縁体7bの幅方向において互いに離間して、かつ平行な状態で、帯状絶縁体7bの上面に並設されている。この場合、信号用導電体9aは帯状絶縁体7bを介して接地用導電体8aと対向し、信号用導電体9bは帯状絶縁体7bを介して接地用導電体8bと対向するように配設されている。また、帯状導電体10aは帯状絶縁体7bを介して帯状導電体10cと対向し、帯状導電体10bは帯状絶縁体7bを介して帯状導電体10dと対向するように配設されている。また、各接地用導電体8の接地部位Cには接地用端子4が、また各信号用導電体9a,9bの入力部位Aには各入力端子2a,2bが、また各信号用導電体9a,9bの出力部位Bには各出力端子3a,3bが、コイル部5の構成と同様にして、それぞれ接続されている。また、帯状導電体10cは帯状導電体10bと接続され、帯状導電体10dは帯状導電体10aと接続されている。
コイル部45は、上記のように互いに重ねられた各帯状絶縁体7a,7b、および各導電体8,9,10を、図11において矢印で示すように、各導電体8,9,10における同図中の右端側(一端側)を巻き始めとして、かつ各信号用導電体9に対して各接地用導電体8が外側になるように巻回することにより、図1に示すように、全体として中心部に空隙Hが形成された円筒状に形成されている。磁性コア6は、この空隙H内に装着されて、コイル部45の中心部に配設されている。この場合、各入力部位A(入力端子2の引出し部位)、各出力部位B(出力端子3の引出し部位)、および接地部位C(接地用端子4の引出し部位)の位置は、図2に示すように、フィルタ素子1と同一に規定されている。
(第6の最良の形態)
次に、本形態に係るフィルタ素子51について、図4,5,12を参照して説明する。なお、フィルタ素子51はフィルタ素子11をベースとしているため、多くの構成がフィルタ素子11の構成と共通する。したがって、フィルタ素子11と同一の構成については同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
フィルタ素子51は、図4に示すように、一対の入力端子2a,2b、一対の出力端子3a,3b、接地用端子4、コイル部55および磁性コア6を備えて構成されて、分布定数型のノイズフィルタ(低域通過型のコモンモードフィルタ)として機能する。
コイル部55は、図12に示すように、帯状絶縁体7a,7b、接地用導電体8a,8b、信号用導電体9a,9b、および帯状導電体10a,10b,10c,10dを備えている。各信号用導電体9(本形態では本発明における第1帯状導電体)および各帯状導電体10a,10b(本形態では本発明における第1の導電体)は、帯状絶縁体7aの幅方向において互いに離間して、かつ平行な状態で、帯状絶縁体7aの上面に並設されている。また、各信号用導電体9は、相互間で各帯状導電体10a,10bを挟むようにして配設されている。帯状絶縁体7bは、帯状絶縁体7aとの間で各信号用導電体9および各帯状導電体10a,10bを挟み込むようにして帯状絶縁体7aの上に重ねられている。各接地用導電体8(本形態では本発明における第2帯状導電体)および各帯状導電体10c,10d(本形態では本発明における第2の導電体)は、帯状絶縁体7bの幅方向において互いに離間して、かつ平行な状態で、帯状絶縁体7bの上面に並設されている。この場合、接地用導電体8aは帯状絶縁体7bを介して信号用導電体9aと対向し、接地用導電体8bは帯状絶縁体7bを介して信号用導電体9bと対向するように配設されている。また、帯状導電体10cは帯状絶縁体7bを介して帯状導電体10aと対向し、帯状導電体10dは帯状絶縁体7bを介して帯状導電体10bと対向するように配設されている。また、各接地用導電体8の接地部位Cには接地用端子4が、また各信号用導電体9a,9bの入力部位Aには各入力端子2a,2bが、また各信号用導電体9a,9bの出力部位Bには各出力端子3a,3bが、コイル部15の構成と同様にして、それぞれ接続されている。また、帯状導電体10cは帯状導電体10bと接続され、帯状導電体10dは帯状導電体10aと接続されている。
コイル部55は、このように互いに重ねられた各帯状絶縁体7a,7b、および各導電体8,9,10を、図12において矢印で示すように、各導電体8,9,10における同図中の左端側(他端側)を巻き始めとして、かつ各信号用導電体9に対して各接地用導電体8が内側になるように巻回することにより、図4に示すように、全体として中心部に空隙Hが形成された円筒状に形成されている。磁性コア6は、この空隙H内に装着されて、コイル部55の中心部に配設されている。この場合、各入力部位A(入力端子2の引出し部位)、各出力部位B(出力端子3の引出し部位)、および接地部位C(接地用端子4の引出し部位)の位置は、図5に示すように、フィルタ素子11と同一に規定されている。
(第7の最良の形態)
次に、本形態に係るフィルタ素子61について、図7,8,11を参照して説明する。なお、フィルタ素子61は、そのコイル部65の構成についてはフィルタ素子41のコイル部45と共通し、各入力部位A(入力端子2の引出し部位)、各出力部位B(出力端子3の引出し部位)、および接地部位C(接地用端子4の引出し部位)の位置についてのみフィルタ素子21と同一に規定されている。このため、フィルタ素子61では、多くの構成がフィルタ素子41の構成と共通する。したがって、フィルタ素子41と同一の構成については同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
フィルタ素子61は、図7に示すように、一対の入力端子2a,2b、一対の出力端子3a,3b、接地用端子4、コイル部65および磁性コア6を備えて構成されて、分布定数型のノイズフィルタ(低域通過型のコモンモードフィルタ)として機能する。この場合、コイル部65は、図11に示すように、コイル部45と同一の構成要素を備えている。また、コイル部65は、互いに重ねられた各帯状絶縁体7a,7b、および各導電体8,9,10を、コイル部45と同様にして巻回することにより、図7に示すように、全体として中心部に空隙Hが形成された円筒状に形成されている。また、上記したように、各入力部位A等(各入力端子2等の引出し部位)については、図7,8に示すように、フィルタ素子21と同一に規定されている。
(第8の最良の形態)
次に、本形態に係るフィルタ素子71について、図9,10,12を参照して説明する。なお、フィルタ素子71は、そのコイル部75の構成についてはフィルタ素子51のコイル部55と共通し、各入力部位A(入力端子2の引出し部位)、各出力部位B(出力端子3の引出し部位)、および接地部位C(接地用端子4の引出し部位)の位置についてのみフィルタ素子31と同一に規定されている。このため、フィルタ素子71では、多くの構成がフィルタ素子51の構成と共通する。したがって、フィルタ素子51と同一の構成については同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
フィルタ素子71は、図9に示すように、一対の入力端子2a,2b、一対の出力端子3a,3b、接地用端子4、コイル部75および磁性コア6を備えて構成されて、分布定数型のノイズフィルタ(低域通過型のコモンモードフィルタ)として機能する。この場合、コイル部75は、図12に示すように、コイル部55と同一に構成要素を備えている。また、コイル部75は、互いに重ねられた各帯状絶縁体7a,7b、および各導電体8,9,10を、コイル部55と同様にして巻回することにより、図9に示すように、全体として中心部に空隙Hが形成された円筒状に形成されている。また、上記したように、各入力端子2等の引出し部位については、図9,10に示すように、フィルタ素子31と同一に規定されている。
上記した各フィルタ素子21,31,41,51,61,71では、フィルタ素子1,11と同様にして、帯状導電体10a,10cおよび帯状導電体10b,10dによってそれぞれ形成される静電容量の大きな2つのコンデンサを各信号用導電体9a,9b間に接続することができる。したがって、各信号用導電体9a,9b間の高周波信号に対するインピーダンスを低下させることができるため、広い周波数帯域に亘ってコモンモードノイズを良好に減衰させることができる。また、各信号用導電体9a,9bにおける各帯状導電体10a,10bと相互接続された端部側を出力部位Bとしたことにより、各信号用導電体9a,9bにおける各帯状導電体10a,10bと相互接続されていない端部側を出力部位Bとする構成と比較して、インピーダンスのバランスを崩れにくくすることができる結果、広い周波数帯域に亘ってノイズ成分を一層良好に減衰させることができる。したがって、例えば、図14に示すように、これらの各フィルタ素子21〜71をスイッチング電源における交流入力段のノイズフィルタとして使用することにより、スイッチング電源の出力インピーダンスが時間的に変動したり、負荷のインピーダンスが変動したりした場合においても、コモンモードノイズを安定して良好に減衰させることができる。また、各フィルタ素子21〜71によれば、各信号用導電体9の入力部位A(各入力端子2の引出し部位)、各信号用導電体9の出力部位B(各出力端子3の引出し部位)、および接地用導電体8の接地部位C(接地用端子4の引出し部位)の位置を上記のように規定したことにより、所定の周波数帯域において大きな減衰量を確保することができる結果、優れた減衰特性を有するコモンモード用のフィルタ素子を実現することができる。
なお、本発明は、上記した構成に限定されない。例えば、上述した各フィルタ素子1〜71では、帯状絶縁体7bを挟んで互いに対向する帯状導電体10aおよび帯状導電体10cと、帯状導電体10bおよび帯状導電体10dとを、各信号用導電体9および各接地用導電体8とほぼ同じ長さで、同じ幅に規定したが、これに限定されるものではなく、任意の長さで、任意の幅に規定することができる。また、各帯状導電体10a〜10dの平面形状は、長尺な長方形(帯状)に限定されず、楕円形や長円形等、種々の形状にすることができる。
また、上述した各フィルタ素子1〜71では、入力端子2、出力端子3および接地用端子4として、棒状の導電体を用いて接地や信号の入出力を行うようにしているが、可撓性を有する配線ケーブルを用いることもできる。また、各コイル部5〜75に形成された空隙Hの内部に磁性コア6を装着して各接地用導電体8および各信号用導電体9の結合度合いや分布インダクタンスの値を向上させることによって減衰特性を向上させた例について説明したが、磁性コア6に代えてポットコア内にコイル部5〜75を装着する構成を採用することもできる。この構成によれば、各接地用導電体8および各信号用導電体9の結合度合いや分布インダクタンスの値をさらに向上させつつ、外部磁界のコイル部5〜75に対する影響を低減させることができる。また、ポットコアに代えて、EI型コアやEE型コアをコイル部5〜75に装着することもできる。また、コイル部5〜75に形成された空隙Hの内部に磁性体を装着しない構成(空芯構造)を採用することもできる。
また、上記した各フィルタ素子1〜71では、各入力端子2、各出力端子3および接地用端子4を、コイル部5〜75の同一端面(図1,4,7,9では上端面)のみから引き出す構成を採用したが、入力端子2a,2b、出力端子3a,3bおよび接地用端子4は、コイル部の中心軸Oを含む平面L上から引き出されていれば良いため、各入力端子2、各出力端子3および接地用端子4の内の一部の端子を他の端子とは逆の端面(例えば図1では下端面)から引き出す構成を採用することもできる。また、上記した各フィルタ素子1〜71では、各信号用導電体9の入力部位A(各入力端子2の引出し部位)、各信号用導電体9の出力部位B(各出力端子3の引出し部位)、および接地用導電体8の接地部位C(接地用端子4の引出し部位)の位置を、コイル部の中心軸Oを含む平面L上に配設する構成を採用したが、全ての端子が平面L上に厳密には配設されずに、平面Lから若干ずれた位置に各端子が配置されていても良い。この場合、上記した各フィルタ素子1〜71と比較して減衰特性が若干低下するものの、従来のフィルタ素子と比較して、依然として十分に良好な減衰特性を示す。言い替えれば、各信号用導電体9の入力部位A(各入力端子2の引出し部位)、各信号用導電体9の出力部位B(各出力端子3の引出し部位)、および接地用導電体8の接地部位C(接地用端子4の引出し部位)の位置を、コイル部の中心軸Oを含む平面L上に配設することにより、所定の周波数帯域においてさらに大きな減衰量を確保することができる結果、一層優れた最良の減衰特性を有するコモンモード用のフィルタ素子を実現することができる。また、上記した各フィルタ素子1〜71では、出力端子3a,3b側において、帯状導電体10cを信号用導電体9bおよび帯状導電体10bのいずれかと接続し、帯状導電体10dを信号用導電体9aおよび帯状導電体10aのいずれかと接続しているが、入力端子2a,2b側において接続することもできる。また、上記した各フィルタ素子1〜71では、入力端子2、出力端子3および接地用端子4を、対応する信号用導電体9および接地用導電体8の最内周部(巻始めの1ターンに含まれる部位)または最外周部(巻き終わりの1ターンに含まれる部位)に接続したが、各端子を接続する部位はこれに限定されずに、例えば、対応する信号用導電体9および接地用導電体8の内周部(巻始めの数ターンに含まれる部位)または外周部(巻き終わりの数ターンに含まれる部位)に接続することもできる。
また、上記した各フィルタ素子1〜71では、帯状絶縁体7aが最も外側になるように各コイル部5〜75を形成したが、各導電体8等と各帯状絶縁体7等との位置を入れ替えることにより、各導電体8等の最外周部がコイル部の最外周に位置するように構成することもできる。このようにして構成したフィルタ素子によれば、コイル部の最外周に接地用導電体8の最外周部が露出するため、例えば接地用導電体8をプリント基板のグランド電位に直接接続することで確実かつ容易に接地することが可能となる。一例として、図13に示すフィルタ素子1Aは、フィルタ素子1のコイル部5をベースとして、接地用導電体8a,8bおよび帯状導電体10c,10dが最外周に位置するように構成されたコイル部5Aを備えて構成されている。このフィルタ素子1Aでは、図3において、帯状絶縁体7aと各導電体8a,8b,10c,10dの位置を逆にし、かつ帯状絶縁体7bと各導電体9a,9b,10a,10bとの位置を逆にした状態で、同図中の右端側を巻始め端としてこれらを巻回することによってコイル部5Aが形成されている。また、図示はしないが、フィルタ素子1Aと同様にして、フィルタ素子11のコイル部15をベースとしてフィルタ素子を構成したときには、各信号用導電体9a,9bの最外周部がコイル部の最外周に位置する構成となる。