JP2006089812A - チタンあるいはチタン合金からなる金属材料の表面処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 チタンあるいはチタン合金からなる金属材料の表面10にショットピーニング処理を施すショットピーニング工程と、前記ショットピーニング工程と同時もしくはその後に前記金属材料を加熱する加熱工程と、を有する金属材料の表面処理方法。前記金属材料は、α+β型のチタン合金であることを特徴とする金属材料の表面処理方法。前記加熱工程では、金属材料を700℃以上の温度で加熱することを特徴とする金属材料の表面処理方法。
【選択図】 図1
Description
(1)チタンあるいはチタン合金からなる金属材料の表面にショットピーニング処理を施すショットピーニング工程と、前記ショットピーニング工程と同時もしくはその後に前記金属材料を加熱する加熱工程と、を有する金属材料の表面処理方法。
(2)金属材料は、α+β型のチタン合金であることを特徴とする上記(1)に記載の金属材料の表面処理方法。
(3)上記(1)または(2)に記載の金属材料の表面処理方法であって、加熱工程では、金属材料を700℃以上の温度で加熱することを特徴とする金属材料の表面処理方法。
(4)上記(1)から(3)のうちいずれか1項に記載の金属材料の表面処理方法であって、加熱工程では、金属材料を700℃以上の温度で0.5時間以上加熱することを特徴とする金属材料の表面処理方法。
(5)上記(1)から(4)のうちいずれか1項に記載の金属材料の表面処理方法であって、加熱工程では、金属材料を加熱することにより、ショットピーニング工程において金属材料の表面に形成されたナノ結晶層と基材との間にβ層を形成することを特徴とする金属材料の表面処理方法。
(6)上記(1)から(5)のうちいずれか1項に記載の金属材料の表面処理方法であって、ショットピーニング工程において用いられるショット材は、β安定化元素を含むショット材であることを特徴とする金属材料の表面処理方法。
(7)上記(1)から(6)のうちいずれか1項に記載の金属材料の表面処理方法によって表面処理されたチタンあるいはチタン合金からなる金属材料。
(8)上記(1)から(6)のうちいずれか1項に記載の金属材料の表面処理方法によって表面処理されたチタンあるいはチタン合金からなるエンジンバルブ。
(9)表面に形成されたナノ結晶層と基材との間にβ層が形成されていることを特徴等するチタンあるいはチタン合金からなる金属材料。
本発明の方法によって表面処理される金属材料としては、チタンあるいはチタン合金からなる金属材料が用いられる。ここでいう「チタンあるいはチタン合金」とは、チタン単体の金属であってもよく、チタンと他の金属元素との合金であってもよい趣旨である。したがって、本発明において表面処理される金属材料としては、チタン単体金属(例えば、JIS1種〜4種の純チタン金属)のみならず、例えば、Ti-6Al-4V、Ti-6Al-2Sn-4Zr-2Mo、Ti-3Al-2.5V、Ti-6Al-2Sn-4Zr-6Moなどの各種のチタン合金を採用することができる。なお、チタン合金は、α型、β型、α+β型の3つの合金系に分類することができるが、本発明において表面処理される金属材料としては、強度と靭性のバランスが良く耐食性に優れるα+β型のチタン合金を特に好ましく採用することができる。α+β型のチタン合金としては、前述した各種のチタン合金をその例として挙げることができる。
図1(a)に示すように、ショットピーニング工程においては、例えばエア噴射式のショットピーニング装置を用いて、金属材料の表面10に対して金属粉末等からなるショット材12を吹き付ける。これにより、金属材料の表層部に高ひずみ速度で大きな変形を起こさせることができる。そして、金属材料の表層部の転位密度が臨界に達すると、その表層部の結晶組織は再結晶(温度を上げないで強加工中に生じる再結晶)により結晶粒径が100nm以下のナノ結晶粒組織に変化するとともに、同時に硬さが、例えば、ビッカース硬度で2倍程度に上昇する。このショットピーニング工程により、図1(b)に示すように、金属材料の表層部には100nm以下のナノ結晶粒組織からなるナノ結晶層14が形成される。
ショットピーニング工程におけるショット材としてこれらのβ安定化元素を含むショット材を使用することによって、ショット材に含有されているβ安定化元素を金属組織の内部に侵入させることができる。これにより、ショットピーニング工程の後に実施される加熱工程において、表層部に形成されたナノ結晶層と基材との間に中間層としてのβ層をより安定的に形成することが可能になる。
また、本発明の表面処理方法は、その他のエンジン部品の表面処理方法に適用することも可能であり、例えば、エンジンに使用されるシャフトやカム、ハウジング等の表面処理方法に適用することが可能である。
図2は、ショットピーニング装置の概略構成図である。本実施例では、図2に示すように、φ13mm×L5mm、Ti-6Al-4V合金製のテストピース22(金属材料)の表面に対して、エア噴射式のショットピーニング装置20を用いてショット材を吹き付けた。ショット材としては、φ0.05mm、Fe-1.0C(鋳鉄)製のショット材を使用した。ショット材の噴射速度は、190m/sに設定した。ショットピーニングの加工の程度を示すカバレージ(C)は、6000%(噴射時間60秒)に設定した。カバレージ(C)は、テストピース22の加工全面積(A)とショットピーニングにより生じた圧痕の総面積(B)より、C=B/A×100%と定義される。本実施例では、テストピース表面でのショット材の衝突回数をより分り易く表現するために、カバレージ50%の加工に要する噴射時間を基準にして、噴射時間に比例してカバレージを表現している。例えば、カバレージ50%のショットピーニング加工に要する時間が0.5秒の場合には、噴射時間が10秒の場合をカバレージ1000%と表現している。
ショットピーニング装置20によりショットピーニング処理を施したテストピース22に対して、電熱式のヒータにより加熱処理を施した。このときの加熱温度は850℃、加熱時間は1時間に設定した。
ショットピーニング処理及び加熱処理を施したテストピース22の表面近傍の状態を電子顕微鏡により観察するとともに、エネルギー分散型X線マイクロアナライザー(EDX)によるテストピース22の元素分析を行った。この結果を図3に示す。
また、比較例として、ショットピーニング処理のみを施して加熱処理を施す前のテストピース22の表面近傍の状態を電子顕微鏡により観察するとともに、エネルギー分散型X線マイクロアナライザー(EDX)によるテストピース22の元素分析を行った。この結果を図4に示す。
これに対して、図4に示すように、ショットピーニング処理のみを施したテストピース22の表面近傍には、ナノ結晶層(丸付き番号1)と基材(丸付き番号2〜9)との間に、β層が全く形成されていなかった。
ナノ結晶層と基材との間にβ層が形成されることによって反発係数が小さくなることを確認するために、以下の要領で反発係数測定試験を行った。
まず、以下の表1に示すように、表面処理方法が異なる5種類のテストピースを準備した。テストピースの材質、形状は、実施例1のテストピース22と同様である。
12 ショット材
14 ナノ結晶層
16 基材
18 β層
20 ショットピーニング装置
22 テストピース
Claims (9)
- チタンあるいはチタン合金からなる金属材料の表面にショットピーニング処理を施すショットピーニング工程と、前記ショットピーニング工程と同時もしくはその後に前記金属材料を加熱する加熱工程と、を有する金属材料の表面処理方法。
- 金属材料は、α+β型のチタン合金であることを特徴とする請求項1に記載の金属材料の表面処理方法。
- 請求項1または請求項2に記載の金属材料の表面処理方法であって、
加熱工程では、金属材料を700℃以上の温度で加熱することを特徴とする金属材料の表面処理方法。 - 請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の金属材料の表面処理方法であって、
加熱工程では、金属材料を700℃以上の温度で0.5時間以上加熱することを特徴とする金属材料の表面処理方法。 - 請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の金属材料の表面処理方法であって、
加熱工程では、金属材料を加熱することにより、ショットピーニング工程において金属材料の表面に形成されたナノ結晶層と基材との間にβ層を形成することを特徴とする金属材料の表面処理方法。 - 請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の金属材料の表面処理方法であって、
ショットピーニング工程において用いられるショット材は、β安定化元素を含むショット材であることを特徴とする金属材料の表面処理方法。 - 請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の金属材料の表面処理方法によって表面処理されたチタンあるいはチタン合金からなる金属材料。
- 請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の金属材料の表面処理方法によって表面処理されたチタンあるいはチタン合金からなるエンジンバルブ。
- 表面に形成されたナノ結晶層と基材との間にβ層が形成されていることを特徴等するチタンあるいはチタン合金からなる金属材料。
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