JP2000042922A - ばねの表面処理方法 - Google Patents

ばねの表面処理方法

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JP2000042922A
JP2000042922A JP10214084A JP21408498A JP2000042922A JP 2000042922 A JP2000042922 A JP 2000042922A JP 10214084 A JP10214084 A JP 10214084A JP 21408498 A JP21408498 A JP 21408498A JP 2000042922 A JP2000042922 A JP 2000042922A
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sec
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Masaaki Ishida
雅昭 石田
Kazuhiro Utsumaki
和宏 宇津巻
Yuji Isono
裕司 礒野
Keiichirou Teratoko
圭一郎 寺床
Yoshiaki Yamada
凱朗 山田
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Suncall Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ばねの耐久性、特に耐疲労破壊性能を大幅に
向上させること。 【解決手段】 ばねの表層を窒化処理する。次に、窒化
処理されたばねの表面へ、直径20〜80μmの多数の
硬質金属粒子を80m/sec以上の衝突速度であ投射
する。このとき、ショットによるばね表面の瞬間的昇温
限界を、窒素原子による動的歪時効と加工硬化を有効に
起こさせるが、母地の回復再結晶が起こる温度よりは低
温となるように、ショットの速度ないし粒径を制御しつ
つ投射する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、窒化処理と、粒径
80μm以下の微細金属粒子による高速ショットピーニ
ング処理(以下「SS処理」という)とを組合わせた、
ばねの耐久性を向上させる表面処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】内燃機関の弁ばね、内燃機関の動力伝達
用クラッチに使用するクラッチばね等のコイルばね又は
平板形状の各種ばね等には、通常、直径0.2〜0.6
mmのショット粒によるショットピーニングが施される。
【0003】また、ショットピーニングの特殊な方法と
しては、金属微粒子の高速投射によってA3 変態点以上
の温度に加熱急冷する方法(特公平2−17607号
「金属製品の表面加工熱処理法」)や、回復再結晶温度
以下であって150℃以上の温度で金属微粒子を高速投
射して耐久性を高める方法(特開平9−279229号
「鋼製ワークの表面処理方法」)なども提案されてい
る。
【0004】さらに、加熱されたばねを温間でショット
ピーニングする技術も知られている。
【0005】その他、弁ばね、クラッチばね等のコイル
ばねの耐久性向上のための技術として、窒化処理とショ
ットピーニングの組み合わせ技術や、窒化に適したばね
材料を使用して窒化とショットピーニングの最適化を追
求した技術などがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来のショットピーニ
ング技術によってある程度のばねの耐久性や耐疲労破壊
性能は得られるが、本発明はさらに弁ばねやクラッチば
ね等の窒化処理による耐久性、特に耐疲労破壊性能をさ
らに向上させることを目的とする。
【0007】従来の窒化を組合わせたショットピーニン
グでは、表面硬さないし表層内部硬さが必ずしも十分と
はいえず、例えば表面硬さはビッカース硬度(Hv)で
精々1100程度であったが、この程度の硬さは現在で
は特に優れているとはいえない。
【0008】また、例えばショットピーニング後に窒化
処理をする場合は、疲労折損防止の観点からショットピ
ーニングによる表面粗さが5μm以下となるような制御
が行われる場合もある。しかし、このような表面粗さの
制御は工程管理上煩わしい。
【0009】本発明はこのような表面粗さの管理をしな
くても十分な耐疲労破壊性能を実現できるように、極表
層〜数10μm深さまでの残留応力を極めて高い圧縮状
態にするばねの表面処理方法を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】窒化によって弁ばね、ク
ラッチばね等の耐久性、特に耐疲労強度を向上させるた
め、次のような工程が従来より採用されている。
【0011】ばね用合金鋼オイルテンパー線(以下OT
線という)→ばね成型(冷間コイリング)→残留応力除
去焼鈍→座面研磨→表面スケール除去→窒化処理→ショ
ットピーニング→低温焼鈍 ここで、窒化後のショットピーニングとして、通常、一
段ショットの場合は直径0.5〜0.8mm程度の鋼
球、またはカットワイヤ等の多数の硬質金属粒子を投射
する。また二段ショットの場合は、直径0.5〜0.8
mm程度の多数の鋼球のショット後に、直径0.2〜
0.4mm程度の多数の金属粒子を投射する。 (手段1)本発明者は、窒化後のショットピーニングに
ついて種々の条件で試験を実施した。そして窒化後、 1)従来と同様に直径0.5〜0.8mmの硬質カット
ワイヤ、高速度鋼粒子、超硬ショット粒子等を、速度v
=50〜80m/secで投射し、カバレージ80%以
上、望ましくは100%以上とした後、さらに、 2)直径20〜80μmの寸法の硬質金属粒子または超
硬粒子を速度v=80m/sec以上、望ましくは速度
v=100m/sec以上(カバレージ95%以上)で
投射することによって、単に1)のみの工程に比して、
表面から10〜30μmの深さにおける極表面部の硬さ
と残留応力を大きく改善できることを見出した。
【0012】さらに、この1)と2)の処理後、低温焼
鈍によってショットの影響層(表層150〜200μ
m)における転位固着を確実にすることによって耐疲労
性及び耐へたり性において、従来の1)のみによっては
得ることができなかった非常に良好な耐久性を有するば
ねを得ることができた。
【0013】なお、20〜80μmの寸法の硬質粒子を
ワークに投射する場合、速度がv=200m/secで
あっても、局所的変形であるせん断変形帯(adiavatic
shear band)を発生せず、このため投射速度はv=10
0m/secよりもさらに高速にした方が残留応力等の
付与効果は大きい。投射エネルギーはショット粒子の質
量と速度の二乗に比例するので、より密度の高い粒子
で、かつ、硬さがHv700程度以上、かつ、速度は1
00〜120m/secよりも150m/sec、15
0m/secよりも180〜200m/secの方が本
発明においては有効である。 (手段2)次に、本発明のもう一つの手段について述べ
る。ばね表面を窒化後、 3)速度v=50〜100m/secで硬質金属粒子
(直径0.5〜0.8mm)を十分に投射したのち(カ
バーレージ80〜100%以上)、 4)200〜250℃程度のばね素材の成分に応じた温
度で数分ないし1時間以内加熱して転位を固着する。こ
の後、さらに5)ばねを冷却した後、もしくは低温焼鈍
加熱された温間のばねに対して、直径が30〜80μm
の金属粒子または超硬合金を、速度v=85m/sec
以上の高速で投射し(カバレージ95%以上、望ましく
は100%以上)、表層部の硬さと圧縮残留応力を十分
に高める。これによって、前記手段1に述べた方法より
も高い表層硬さと高い圧縮残留応力を得ることができ
る。
【0014】なお、手段1と2のいずれの方法でも、手
段1と2の間、または手段3と4の間、もしくは手段4
の後に、直径0.2〜0.4mmの硬質金属粒子もしく
は超硬合金粒子を室温/温間で投射して、表面からの深
さ30〜100μmにおける残留応力と硬さ分布を改善
することを行うことも本発明に含まれる。 (手段3)薄板ばねや小物ばねの耐久性を高めるため、
高速微粒ショットを十分に投射し、その後窒化を実施す
る。 (手段4)目的は手段3と同じ。
【0015】高速微粒ショット→窒化→高速微粒ショッ
トを行う。必要によってその後低温焼鈍を行う。
【0016】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施形態につき説
明する。 (実施形態1) 用途:内燃機関の弁ばね 材料:OT線、線径:3.2mm、引張強さ:210kgf/m
m2=2058MPa ばね形状:線径3.2mm、平均コイル径21.2m
m、全コイル巻数6.5、有効巻数4.5、自由高さ5
3.0mm 窒化条件:450℃で7時間 化学組成(質量%):表1の通り。
【0017】なお、窒化温度は400〜500℃が好ま
しい。400℃以下では表層の化合物層の形成は防止さ
れるが、窒化そのものが不十分となり、数十時間の長時
間の窒化処理でも効果が少ない。また、500℃以上で
は表層の窒化物の発達が顕著になり、窒化層厚さが5μ
mを越えるほど厚くなり、以後のショットピーニングで
窒化層の一部が剥離する等で、疲労強度向上の目的が達
成されない。また、500〜600℃で窒化する場合、
表層化合物層が脆いε(イプシロン)窒化物主体となる
ので疲労向上を阻害する。
【0018】窒化処理の後、0.5〜0.8mmφ及び
0.2〜0.4mmφの通常のショットピーニングを施
した後、さらに0.08mmφ以下の高速ショットを施
す場合でも、窒化による化合物層はできるだけ薄くし、
好ましくは5μm以下とするのがよい。
【0019】
【表1】
【0020】 ショットピーニングの条件(各条件の1行目が第1ショット、2行目が第2ショ ット、3行目が第3ショット) (条件A)0.6mmφカットワイヤ、速度v= 70m/sec、40分間 0.05mmφ高速度鋼球、速度v=200m/sec、10分間 (条件B)0.6mmφカットワイヤ、速度v= 70m/sec、40分間 0.30mmφスチールショット、 速度v= 80m/sec、20分間 0.05mmφ高速度鋼球、速度v=180m/sec、10分間 (条件C)0.6mmφカットワイヤ、速度v= 70m/sec、40分間 0.05mm鋼球( 硬度Hv=900) 、速度v=160m/sec、20分間 (比較ばね)化学組成、ばね形状、窒化処理は、すべて上記実施形態1と同じ。 ショットピーニングの条件 (条件D)0.6mmφカットワイヤ、速度v= 70m/sec、40分間 (この条件は実施形態1の条件A〜Cの1段目ショットと同じである。) ショットピーニングの条件E (条件E) ショット条件Dの後、 0.30mmφスチールショット、 速度v= 80m/sec、20分間 以下に、実施形態1(ショットA,B,C)と比較ばね
(ショットD,E)の疲労試験結果を示す。
【0021】
【表2】
【0022】(実施形態2)実施形態1と同じ材料(O
T線)、ばね形状で、以下の4種類の処理を行った。 (1)N→SA →SB →A→SS …図1の「○」に対応 (2)N→SA →SB →→→SS …図1の「□」に対応 (3)N→→→→→→→→SS …図1の「●」に対応 (4)N→SA →SB …図1の「△」に対応 ここで、 N :450℃で7時間の窒化 SA :0.6mmφカットワイヤ、速度v= 70m/
sec、40分間 SB :0.30mmφ高速度鋼球、速度v= 80m/
sec、20分間 A :220℃で15分間の低温焼鈍 SS:0.05mm鋼球( 硬度Hv=900) 、速度v=180m
/sec、20分間 である。
【0023】SA ,SB ,SSはショットピーニング処
理を表わし、使用ショット粒、ショット速度及び処理時
間を順に記載している。
【0024】図1に上記の方法により処理したばね表層
の残留応力分布曲線を示す。同図の第1番目の処理
(「○」で示す)の結果から、220℃の低温焼鈍後の
ショットによって、表面近傍から20μm程度の深さま
での残留応力と硬さを大幅に改善できることが分かっ
た。これによって、特に繰り返し応力振幅の比較的大き
い場合でも、表面からの疲労折損を防止できて、高応力
における疲労寿命改善効果が顕著であることが分かっ
た。
【0025】また、前記SS処理のように、高硬度微細
粒(Hv700 以上、 粒径0.03-0.08mmφ)を使用した高速
(100m/sec以上)ショットピーニングでは、被ショット
材の表面の変態による組織変化を生ずることなく、むし
ろ、温間の回復再結晶を起こすよりも低温で、効果的に
表層に残留応力を付与することができることが確認され
た。この時、表層部には塑性変形層が形成されるが、も
との熱処理によって付与された組織は変態を起こさな
い。
【0026】本発明は、窒化促進元素であるMo(モリ
ブデン)やAl(アルミニュウム)を鋼中に添加しなく
ても、窒化したばねの耐久性改善に効果を発揮する。 (実施形態3)実施形態1におけるディスケーリングと
して、酸洗い法、電解研磨法、ショットピーニング法が
考えられる。ここでは、これら3つの方法によって冷間
コイリング後残留応力除去焼鈍したばね(実施形態1と
同じ弁ばね)を、一定条件(450℃で7時間)で窒化
処理した。
【0027】なお、窒化後の表面粗さは2μm,3μm
及び8μmの3種類に異ならせた。
【0028】窒化後、実施形態1のショット条件Aを施
し、さらに220℃で15分間低温焼鈍を施した。
【0029】表3に各工程後の表面粗さと疲労強度を示
す。上から順に、電解研磨法、酸洗い法、ショットピー
ニング法によりディスケーリングしたばねである。
【0030】
【表3】
【0031】このように、窒化後の表面粗さは以後のシ
ョット条件によって大きくは変化しないが、疲労強度に
ついては影響を受けることが分かった。これは、表面粗
さ以外に、窒化の進行が前処理(ディスケーリング)の
種類によって影響を受けることを示している。
【0032】表3より、窒化前処理として電解研磨法や
酸性法を採用した場合(表3の第1行目と第2行目)
は、ショットピーニングによる前処理よりも、窒化によ
る残留応力形成が小さい、換言すると、ショットピーニ
ングによる前処理は電解研磨法や酸性法による前処理よ
りも窒化による圧縮残留応力形成が大きいといえる。
【0033】これは、ショットピーニングによって前処
理をした場合は、表面の被窒化材の塑性歪によってでき
た転位が、窒素原子の侵入拡散のための通路として働く
ためと推定され、従って窒化前にできるだけ表層深部に
まで歪みを付加することが大切であると考えられる。
【0034】このことを確認するために、本発明者は以
下の実験を行った。〜は相異なるショットピーニン
グ処理である。は二段ショットである。 0.04〜0.05mmφ鋼球、速度v=150m/sec、20分間 0.6mmφカットワイヤ、 速度v= 70m/sec、20分間 0.05mmφセラミック(SiC)粒子、 速度v=200m/sec、20分間 0.6mmφカットワイヤ、 速度v= 70m/sec、20分間 0.05mmφ高速度鋼ショット(Hv1000)、速度v=150m/sec、10分間 以上の〜の方法でショットピーニング処理したばね
(実施形態1と同じ弁ばね)に、一定条件(460℃で
5時間)の窒化を施すと、表4の結果が得られた。
【0035】
【表4】
【0036】との窒化後、 0.6mmφショット(速度v=70m/sec、40
分間)→0.3mmφショット(速度v=80m/se
c、20分間)を実施した場合、 表5のように疲労限はの方が良好であった。
【0037】
【表5】
【0038】また、とのサンプル(窒化のまま)を
さらに以下の条件で2段ショットしたところ、疲労強度
はの方が優れていた。 (I)0.6mmφカットワイヤ、 速度v= 60m/sec、40分間 (II)0.05mmφ硬質粒子、 速度v=180m/sec、10分間 以上述べたように、窒化後のショットピーニング、特に
最後の微粒高速ショットによって、表面からの疲労折損
が防止され、疲労寿命を向上させることができる。
【0039】この理由は次のように考えられる。
【0040】微粒高速ショットによって、ばね表面から
約20μmの深さまでの表面層の圧縮残留応力と硬さが
大きく向上する。この時の硬化は、窒化によって表層部
に侵入した窒素原子の、ショットに因る表層部の塑性変
形中の動的歪時効及び温間における強加工硬化層の形成
が原因としてあげられる。
【0041】すなわち、鋼中の窒素の一部は鉄窒化物F
4 Nを形成し、また一部は鉄結晶格子中に固溶してい
る。高速ショット粒子の投射されたばね表面層は瞬間的
に昇温されるので、鉄結晶格子中の固溶N原子の拡散が
促進され、変形中の転位の周りに拡散して転位運動を妨
げ、これにより新しい転位の形成を促進し、全体的に転
位密度が窒化していない場合よりも高くなり硬化を促進
する。このことは、回復再結晶を高温側にずらせる効果
を生じる。
【0042】通常の0.6mmφ又は0.2mmφショ
ット粒子の100m/sec以下のショットでは、ショ
ットピーニングによる表層の塑性歪によって生成した転
位は、十分に炭素又は窒素によって固着されていない。
【0043】しかし、窒素の固溶度は炭素よりもはるか
に大きく、室温でもショット後次第に転位の周りに拡散
して、表層部の時効硬化をもたらす。しかし、残留応力
そのものは大きな効果はない。
【0044】窒化をしていない場合、鋼中の窒素量はし
かし、歪時効硬化を十分に生起させるためには不十分で
ある。窒化後、0.2〜0.6mmφのショットを施し
た後、150〜250℃にて低温焼鈍を施すと、窒素と
炭素の固溶度の差に基づき、窒素原子は転位固着位置で
ある転位芯の周りから離れて行き、代わって炭素原子が
転位の固着、すなわちコットレル雰囲気あるいは微細鉄
炭化物を形成する。このようにして、低温焼鈍によって
固溶量の増大した窒素原子は、さらに次の段階の高硬度
微粒ショット粒の高速投射によって、移動(変形)中の
転位と窒素原子の相互作用の効果が増大して、より大き
な表層圧縮残留応力へと導く。
【0045】次に、窒化前にショットピーニングを施し
てばね表面を窒化に適した状態にする方法として、前記
表4のサンプルで使用した方法(0.6mmφショッ
ト→0.05mmφショット)以外に次の方法が有効で
あると分かった。
【0046】表4で使用した方法は、0.6mmφの高
炭素鋼カットワイヤ及び鋳鋼微粒子などのいわゆる鋼粒
子による窒化前のディスケール法に関するものであっ
た。
【0047】しかし、鉄よりも窒化を促進する元素とし
て、タングステン(W),アルミニュウム(Al),ク
ローム(Cr),モリブデン(Mo),マンガン(M
n)などが考えられる。そこで、W,Al,Cr,Mo,Mn などの
数種を適度に含有した窒化鋼粒子(例…C:0.45%、Si:0.2
0%01n:0.51%、Cr:1.55%01o:0.25%、Al:0.90%)、純Al粒
子、18Cr−2Moステンレス鋼粒子、高速度鋼粒子
などを作成した。
【0048】Al,Cr,Moは純金属としては硬さが
比較的小さいので、鉄系高硬度粒子(Hv>600)に
よるショット処理の後に投射した。その結果、表層をA
l,Cr,Moなどで被覆できることが分かった。
【0049】Alは、投射速度に拘わらず比較的容易に
ばね表面に転写されるが、400〜500℃でガス窒化
の場合、特に400℃近傍の温度では、AlNが表面に
生成され、ばね(鋼)の表層内部への拡散が促進されな
い。しかし、450℃以上では、Alの鋼中への拡散の
効果もあって窒化を促進する。
【0050】Mo,Cr粒子はAlに比べて融点が高
く、ショット処理によってばね表面に転写(めっき)さ
れる程度はAlよりも小さい。しかし、これらCr,M
o等の投射されたばねは、窒化によって表面硬さの上昇
と内部への窒素拡散が促進される。
【0051】高Crステンレス鋼には、フェライト系、
マルテンサイト系、オーステナイト系等の種々の鋼種が
あるが、それらにはCrが多く含有されている(通常1
2%以上)。ここでは18Crを含有する420J2の
0.05mmφ粒子(Hv=700)を使用し、これを
速度v=200m/secでばね鋼表面に投射した。対
する比較例として、同じ寸法(=0.05mmφ)の炭
素鋼ショット(Hv=900)を同じ速度で同様に投射
した。その後、両ばね鋼サンプルを一定条件(450
℃、一定時間)で窒化した。
【0052】その結果、窒化による硬さ分布は図2のよ
うになった。このことから、W,Al,Cr,Mo,M
nなどの鉄よりも窒化を促進する元素を含んだショット
粒子を窒化前にばね鋼表面に投射することが、窒化促進
と窒化硬さ上昇に効果的なことが分かった。
【0053】なお、窒化ないし高速微粒ショット処理の
対象とするばねは、焼入れ・焼戻しされた焼戻しマルテ
ンサイト主体のSi−Cr鋼オイルテンパー線(C:0.50
〜0.60% 、Si:1.20 〜1.60% 、Mn:0.50 〜0.80% 、P:0.
030%以下、S:0.030%以下、C r:0.50〜0.80% )、これよ
りも耐熱性を高めたより高強度のオイルテンパー線、例
えばC:0.50〜0.70% 、Si:1.0〜2.5%、Mn:0.30 〜1.50%
、Cr:0.3〜2.0%を含有する鋼、およびこれにV:0.05
〜0.50% 、Mo:0.05 〜0.50% 、Nb:0.02 〜0.08% の一種
または二種以上を添加した成分を含有する鋼より製造し
たオイルテンパー線、Cr−V系のオイルテンパー線を
冷間コイリング成形したもの、またはこれらと同一成分
鋼で、ばね成形後に焼入れ・焼戻ししたばねと材料など
である。容体化後冷間加工したマルエージング鋼、パー
ライト変態後冷間加工強化した上記オイルテンパー線と
同一成分鋼ばね材を冷間成形したばねなども本発明の対
象になる。
【0054】
【発明の効果】ばね表面及び表面近傍深さでの残留応力
と硬さを大幅に改善でき、これにより特に繰り返し応力
振幅の比較的大きい場合でも表面からの疲労折損を防止
できて、高応力における疲労寿命を大幅に改善できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ばね表層の残留応力分布曲線図。
【図2】窒化前処理をした場合のばね表層の窒化硬さ曲
線図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F16F 1/02 F16F 1/02 B // C22C 38/00 301 C22C 38/00 301Y 38/46 38/46 (72)発明者 礒野 裕司 京都府京都市右京区梅津西浦町14番地 サ ンコール株式会社内 (72)発明者 寺床 圭一郎 京都府京都市右京区梅津西浦町14番地 サ ンコール株式会社内 (72)発明者 山田 凱朗 京都府京都市右京区梅津西浦町14番地 サ ンコール株式会社内 Fターム(参考) 3J059 AB12 AD04 BA01 BC01 EA08 EA17 GA08 GA14 4K028 AA02 AB01 AB06

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A) ばねの表層を窒化処理する工程
    と、(B) 窒化処理されたばねの表面へ、直径20〜
    80μmの多数の硬質金属粒子を80m/sec以上の
    衝突速度であって、かつ、衝突によるばね表面の瞬間的
    昇温限界を、窒素原子による動的歪時効と加工硬化を有
    効に起こさせるが、母地の回復再結晶が起こる温度より
    は低温に制御しつつ投射する工程とを有することを特徴
    とするばねの表面処理方法。
  2. 【請求項2】(A) ばねの表層を窒化処理する工程
    と、(B) 窒化処理されたばねの表面へ、直径0.5
    〜0.8mmの多数の硬質金属粒子又は超硬粒子を投射
    して残留応力を比較的深い内部にまで付与する工程と、
    (C) 前記(B)工程の後のばねの表面へ、直径20
    〜80μmの多数の硬質金属粒子を80m/sec以上
    の衝突速度であって、かつ、衝突によるばね表面の瞬間
    的昇温限界を、窒素原子による動的歪時効と加工硬化を
    有効に起こさせるが、母地の回復再結晶が起こる温度よ
    りは低温に制御しつつ投射する工程とを有することを特
    徴とするばねの表面処理方法。
  3. 【請求項3】(A) ばねの表層を窒化処理する工程
    と、(B) 窒化処理されたばねの表面へ、直径0.5
    〜0.8mmの多数の硬質金属粒子又は超硬粒子を投射
    して残留応力を比較的深い内部にまで付与する工程と、
    (C) 前記(B)工程の後のばねの表面へ、直径0.
    2〜0.4mmの多数の硬質金属粒子又は超硬粒子を投
    射して圧縮残留応力と硬さを上げる工程と、(D) 前
    記(C)工程の後のばねの表面へ、直径20〜80μm
    の多数の硬質金属粒子を80m/sec以上の衝突速度
    であって、かつ、衝突によるばね表面の瞬間的昇温限界
    を、窒素原子による動的歪時効と加工硬化を有効に起こ
    させるが、母地の回復再結晶が起こる温度よりは低温に
    制御しつつ投射する工程とを有することを特徴とするば
    ねの表面処理方法。
  4. 【請求項4】請求項2の(B)工程と(C)工程の間、
    請求項3の(B)工程と(C)工程の間及び/又は請求
    項3の(C)工程と(D)工程の間に、 ばねを150〜250℃で低温焼鈍する工程を有するこ
    とを特徴とする請求項2又は3記載のばねの表面処理方
    法。
  5. 【請求項5】(A) ばねの表面へ、直径0.3〜0.
    8mmであってビッカース硬さ500以上の多数の硬質
    金属粒子又は超硬粒子を、60m/sec以上の速度で
    投射してばねの表層中比較的深い内部にまで残留応力を
    付与する工程と、(B) 前記(A)工程の後のばねの
    表面へ、直径20〜80μmの多数の鉄系粒子を80m
    /sec以上の衝突速度であって、かつ、衝突によるば
    ね表面の瞬間的昇温限界を、窒素原子による動的歪時効
    と加工硬化を有効に起こさせるが、母地の回復再結晶が
    起こる温度よりは低温に制御しつつ投射する工程と、
    (C) 前記(B)工程の後のばねの表層を窒化処理す
    る工程と、を有することを特徴とするばねの表面処理方
    法。
  6. 【請求項6】ばね表層の窒化化合物層の厚さが、0〜5
    μmとなるように窒化の温度と時間を設定したことを特
    徴とする請求項1から5のいずれか記載のばねの表面処
    理方法。
  7. 【請求項7】窒化温度を400〜500℃とし、窒化時
    間を1〜12時間としたことを特徴とする請求項6記載
    のばねの表面処理方法。
  8. 【請求項8】窒化工程の前に、鉄よりも窒化傾向の強い
    クローム、モリブデン、タングステン又はアルミニュウ
    ム等の元素を含有させた金属合金粒子を、ばねの表面に
    投射することによりばね表面に前記元素を転写する工程
    を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか記
    載のばねの表面処理方法。
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