JP2006089687A - ポリ乳酸樹脂水性分散体の製造方法 - Google Patents

ポリ乳酸樹脂水性分散体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 特殊な設備や煩雑な操作を必要とせず、生産性に優れたポリ乳酸樹脂水性分散体の製造方法を提供する。
【解決手段】(a)ポリ乳酸樹脂、(b)ポリ乳酸樹脂(a)に対して1〜30質量%のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤、(c)ポリ乳酸樹脂(a)のカルボキシル基に対して5〜30倍当量のアンモニアまたは沸点250℃以下の有機アミン化合物、(d)原料(a)〜(f)の総質量に対して5〜40質量%の両親媒性有機溶剤、(e)水、および(f)ポリ乳酸樹脂(a)に対して1〜50質量%の可塑剤を原料とし、(A)原料(a)〜(e)を容器中で加熱してポリ乳酸樹脂(a)を乳化する工程、(B)可塑剤(f)を添加する工程、および、(C)両親媒性有機溶剤(d)を除去する工程からなるポリ乳酸樹脂水性分散体の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、低温造膜性および貯蔵安定性に優れたポリ乳酸樹脂水性分散体の製造方法に関するものである。
従来の溶剤型塗料は、有機溶剤を含んでいるため、引火などの危険性や、環境負荷の問題があった。近年、揮発性有機化合物(VOC)の規制が特に厳しくなり、塗料及びコーティング剤の分野では、水性分散体、粉体塗料、紫外線・電子線硬化塗料などへとその様態が移行しつつある。中でも、水性分散体あるいは水性エマルジョンは、環境への負荷が小さく、また溶剤型塗料と同様に液状であることから、現行の塗料製造及び塗装ラインをほぼそのまま使用できるという長所を有するため、代替技術のうちで最も有望視されている。
また近年、環境への配慮から、石油原料に頼らずしかも廃棄時の環境負荷が小さい植物由来の生分解性樹脂が注目されている。従って水性分散体用樹脂として植物由来の生分解性樹脂を使用することで、極めて環境に優しい水性分散体を提供できると考えられる。このような要望に応えるため、ポリ乳酸樹脂の水性分散体について様々な研究が行われている。
しかしながら、ポリ乳酸樹脂は、ガラス転移点が高く、柔軟性、耐衝撃性、密着性に乏しいので、この樹脂の水性分散体を室温において良好に成膜させるためには、可塑剤が使用されている。
例えば特許文献1にはポリ乳酸樹脂、可塑剤、ポリビニルアルコール、酢酸エチルをオートクレーブ中、100℃、10,000rpmの撹拌条件下で水性化する方法が提案されている。
また、特許文献2ではポリ乳酸樹脂、ポリビニルアルコールを同方向回転型二軸押出機で、180℃、スクリュー回転数150rpmの混練条件で溶融混練するとともに、押出機の中間部に設けた給水口より水を供給して含水固形物を調製し、これを温水中に加えることで水性分散体を調製した後、100℃以下で可塑剤を添加する方法が提案されている。
特開2004−168927号公報 特開2004−107413号公報
しかしながら、特許文献1に記載されている方法は、乳化工程に可塑剤を添加していることから、可塑剤の分散化に乳化剤が消費され、安定な樹脂分散粒子を得るために乳化剤を増量する必要があり、結果として塗膜の耐水性などの特性を損ねるおそれがあった。また、熱安定性に乏しい可塑剤の場合には乳化工程において分解が進行するという問題もあった。
また、特許文献2に記載されている方法では、可塑剤添加の際に凝集を起す場合があり、また、可塑剤が非水溶性の場合には、添加した可塑剤が油滴状となる相分離を起こしたり、水性分散体を熱可塑性樹脂フィルムへ塗工する際にハジキ現象が発生し、作業性が低下するという問題があった。
さらに、特許文献1に記載されている製造方法では高速撹拌のためのホモジナイザーが必要であり、特許文献2に記載されている製造方法では同方向回転型二軸押出機を必要とするなど、従来の製造方法は、いずれも特殊な製造(撹拌)装置を必要としていた。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、より生産性に優れたポリ乳酸樹脂水性分散体の製造方法を提供するものである。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリ乳酸樹脂水性分散体を、特殊な撹拌設備を設置していない容器中で、界面活性剤、塩基性化合物、両親媒性溶剤および水の存在下にポリ乳酸樹脂を乳化する工程、可塑剤を添加する工程、溶剤を除去する工程を経て製造することにより、低温造膜性、長期保存安定性に優れたポリ乳酸樹脂水性分散体が得られ、しかもこの製造方法によれば、脱溶剤時の発泡が抑制され、その結果脱溶剤工程が短縮されることを見出し、それに基づいて本発明に達した。
すなわち本発明の要旨は、第一に、
(a)ポリ乳酸樹脂、
(b)ポリ乳酸樹脂(a)に対して1〜30質量%のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤、
(c)ポリ乳酸樹脂(a)のカルボキシル基に対して5〜30倍当量のアンモニアまたは沸点250℃以下の有機アミン化合物、
(d)原料(a)〜(f)の総質量に対して5〜40質量%の両親媒性有機溶剤、
(e)水、および
(f)ポリ乳酸樹脂(a)に対して1〜50質量%の可塑剤
を原料とし、
(A)原料(a)〜(e)を容器中で加熱してポリ乳酸樹脂(a)を乳化する工程、
(B)可塑剤(f)を添加する工程、および、
(C)両親媒性有機溶剤(d)を除去する工程
からなるポリ乳酸樹脂水性分散体の製造方法であり、また、第二に、この製造方法によって得られるポリ乳酸樹脂水性分散体である。
本発明の製造方法によれば、ポリ乳酸樹脂水性分散体を、特殊な撹拌設備を必要なしに、可塑剤添加に伴う樹脂粒子の凝集などのトラブルなしに製造することができるため、製造工程を簡略化できるとともに操業性、生産性が向上する。さらには、可塑剤の熱分解を抑制することができることから脱溶剤工程における発泡現象も低減させることができ、脱溶剤に要する時間を短縮することができる。
また、この方法により得られたポリ乳酸樹脂水性分散体は、樹脂粒径がナノメーターレベルの数平均粒子径を有しているので、低温で造膜しても透明性の高い被膜を形成することができる。また、長期貯蔵安定性にも優れている。さらに、このポリ乳酸樹脂水性分散体から形成される被膜は優れた耐水性を有しているので、水性分散体を、紙用塗工液や各種バインダーとして好適に用いることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
ポリ乳酸樹脂水性分散体の原料は、次の(a)〜(f)である。
(a)ポリ乳酸樹脂
(b)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤
(c)アンモニアまたは沸点250℃以下の有機アミン化合物
(d)両親媒性有機溶剤
(e)水
(f)可塑剤
〔(a)ポリ乳酸樹脂〕
本発明で用いられるポリ乳酸樹脂(a)は、乳酸単位からなり、単独では水に分散または溶解しない、本質的に疎水性のポリマーである。ポリ乳酸中に占めるD-乳酸の割合は、1.5〜25モル%であることが必要であり、好ましくは4〜20モル%、さらに好ましくは8〜20モル%である。D-乳酸の含有量が1.5モル%未満であると、両親媒性有機溶剤に膨潤あるいは溶解しにくくなるため、本発明の方法による水分散化が困難となる。またD-乳酸の含有量が25モル%以上であると、ガラス転移温度が低下し、得られる被膜の耐ブロッキング性が低下する傾向にある。
ポリ乳酸樹脂の形状は特に限定されないが、水性化速度を速めるという点から、粒子径1cm以下、好ましくは0.8cm以下の粒状ないしは粉末状のものを用いることが好ましい。
また、ポリ乳酸樹脂の酸価は、特に限定されず、たとえば、市販のポリ乳酸樹脂(一般に酸価は4mgKOH/g未満)をそのまま用いることができ、これをあらかじめ解重合などの操作により高酸価のものとしておくような煩雑な操作は必要としない。なお、本発明の製造方法の乳化過程において、ポリ乳酸は加水分解をうけ、その酸価は上昇する傾向にあるため、製造の前後においてポリ乳酸の酸価は必ずしも一致しない。
また、本発明の水性分散体中に分散しているポリ乳酸樹脂粒子の数平均粒子径は、水性分散体の分散安定性が向上するという点、低温造膜性が向上するという点から0.5μm未満であることが好ましく、0.3μm以下が好ましく、0.2μm以下がより好ましく、0.1μm以下が特に好ましい。下限は特にないが、0.03μm程度である。なお、粒径分布については、特に限定されない。
本発明において、水性分散体中のポリ乳酸樹脂粒子の量は、用途、乾燥後の塗膜の厚さ、塗布方法などによって適宜選択されるべきであるが、10〜60質量%とすることが好ましく、20〜50質量%であることが好ましい。上記樹脂粒子の含有量が10質量%未満では塗膜の乾燥に長時間を要する傾向があり、一方60質量%を超えると、水性分散体の粘度が高くなって、他成分の配合や塗布が困難になるおそれがある。
〔(b)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤〕
本発明においてポリ乳酸樹脂水性分散化には、特定の界面活性剤と塩基性化合物を併用することが必要である。界面活性剤は後述する水性分散化に際して界面活性機能を失わない化合物であることが必要で、そのような界面活性剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤(b)が用いられる。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤(b)の添加量は、ポリ乳酸樹脂(a)に対して1〜30質量%とすることが必要で、好ましくは3〜15質量%、さらに好ましくは5〜10質量%である。1質量%未満では界面活性剤添加の効果が小さく、30質量%を超えると被膜が充分な耐水性を付与し得なくなる場合がある。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤(b)は、数平均分子量として、3,500〜20,000である必要があり、4,000〜10,000がより好ましい。また、この界面活性剤の曇点は、50℃以上であることが好ましく、より好ましくは55℃以上、さらに好ましくは60℃以上である。曇点が50℃未満では分散安定性や保存安定性が低下する場合がある。
また、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤(b)中におけるエチレンオキシドの含有量は30〜80質量%であることが好ましく、40〜70質量%がより好ましく、45〜55質量%が特に好ましい。エチレンオキシドの含有量が30質量%未満では親水性に乏しく、分散安定性や保存安定性が低下する場合があり、一方80質量%を超えると樹脂との親和性が乏しくなり、分散安定性が低下する場合がある。
市販のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤(b)としては、三洋化成工業株式会社製「ニューポール」シリーズ、旭電化工業株式会社製「アデカプルロニック」シリーズ、BASF株式会社製「PLURONIC」シリーズなどがある。これらのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤は単独で使用してもよく、あるいは2種類以上を併用してもよい。また、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤を主成分として、他の界面活性剤、特に、非イオン性界面活性剤または両性界面活性剤を併用しても良い。このようにすると、より微細な粒子の水性分散体が得られる場合がある。非イオン性界面活性剤の具体例としては、脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系、アマイド系、ポリエチレングリコール系、ポリグリセリンエステル系、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系などが挙げられ、両性界面活性剤の具体例としては、ベタイン型、アミノ酸型、イミダゾリン型、アミノオキサイド型などが挙げられる。このような他の界面活性剤を併用する場合、その使用量は主たる界面活性剤であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤の量を超えない5〜100質量%の範囲であることが好ましく、5〜50質量%程度がより好ましい。
〔(c)アンモニアまたは沸点が250℃以下の有機アミン化合物〕
ポリ乳酸樹脂水性分散化には、上記特定の界面活性剤(b)とともに、塩基性化合物として、アンモニアまたは沸点が250℃以下の有機アミン化合物(c)を併用することが必要である。塩基性化合物は樹脂を加水分解すると共に、水性化に際してポリ乳酸樹脂中のカルボキシル基を中和し、界面活性剤(b)との併用により、ポリ乳酸樹脂微粒子間の凝集を防ぎ、水性分散体としての優れた貯蔵安定性に寄与する。また、このような塩基性化合物は、被膜形成時に、加熱によって容易に揮散するため好ましい。
有機アミン化合物の例としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン(以下「TEA」と略称する)、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−ジエタノールアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミンなどを挙げることができる。特に分散安定性が優れていることから、TEAを用いることが好ましい。
上記塩基性化合物の添加量は、ポリ乳酸樹脂中のカルボキシル基に対して5〜30倍当量とすることが必要である。5倍当量未満では塩基性化合物添加の効果が小さく、水性化が困難になったり、貯蔵安定性や造膜性が悪くなる場合がある。一方、30倍当量を超えると水性分散体が増粘したり、貯蔵安定性が低下する場合がある。塩基性化合物は、後述する脱溶剤工程において、その一部が系外に除去されることがあるため、仕込み時の量と、水性分散体中における含有量は必ずしも一致しない。アンモニアまたは沸点250℃以下の有機アミンの量は、水性分散体中では、ポリ乳酸樹脂に対して0.01〜20質量%の範囲であればよく、好ましくは、0.01〜10質量%である。
〔(d)両親媒性有機溶剤〕
本発明の水性分散体の製造方法には、乳化処理速度を加速させる目的で、両親媒性の有機溶媒(d)を使用することが必要である。両親媒性の有機溶剤とは、20℃における水に対する溶解度が5g/L以上である有機溶剤をいう。特に、溶解度が10g/L以上のものを用いることが好ましい。水に対する溶解度が5g/L未満のものは、乳化処理の加速効果に乏しい。両親媒性の有機溶剤の具体例としては、テトラヒドロフラン(以下「THF」と略称する)、1,4−ジオキサンなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−tert−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジメチルなどのエステル類、アセトニトリルなどを例示することができる。これらの溶剤は単一でも、また2種以上を混合しても使用できる。特に分散安定性が優れていることから、THFを用いることが好ましい。
また、両親媒性の有機溶剤は、ポリ乳酸樹脂に対して可塑化能力を有していることが好ましい。具体的には、後述の評価方法によって、少なくとも、膨潤度が1.1以上、または溶解度が0.01g/g以上のいずれかを満たすことが好ましい。この条件を満たせば、その有機溶剤は可塑化能力を有すると判定される。中でも溶解度が0.1g/g以上であるものが特に好ましい。膨潤度が1.1未満かつ溶解度0.01g/g未満のときは、乳化処理速度を加速させる効果に乏しい。膨潤度および溶解度は、例えば次の方法により評価できる。
(A)膨潤度:粒径1〜5mmの樹脂片を質量比で10倍量の有機溶剤中、25℃で24時間撹拌した後、樹脂片を取り出し、表面に付着した有機溶剤を拭って質量を測定して、乾燥質量との比で表す。
(B)溶解度:粒径1〜5mmの樹脂片を質量比で10倍量の有機溶剤中、25℃で24時間撹拌した後の、残存樹脂の乾燥質量あるいは樹脂溶液をエバポレートして得られた溶質成分の乾燥質量から算出する。
また、有機溶剤としては、沸点が100℃以下または水と共沸可能であって、しかも毒性、爆発性や引火性の低い、汎用の有機溶剤が好ましい。沸点が100℃以上であるか又は水と共沸しないものは、後の脱溶剤工程で除去することが困難となる。
両親媒性有機溶剤の使用量は、水性分散体に対して5〜40質量%、好ましくは10〜20質量%とすることが必要である。5質量%未満の場合には、乳化処理の加速効果に乏しく、一方、水性分散体に対して有機溶剤の含有率が40質量%を超えると、環境保護、省資源、消防法などによる危険物規制、職場環境改善の立場から好ましくない。なお、両親媒性有機溶剤は容易に除去することができ、水性分散体調製後はできる限り系外に留去してしまうことが望ましい。したがって、水性分散体中の両親媒性有機溶剤量は、0〜40質量%の範囲をとることができるが、好ましくは有機溶剤量を水性分散体に対して0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%であり、特に好ましくは0〜5質量%である。脱溶剤後の水性分散体に対して有機溶剤の残存率が40質量%を超えると、「低有機溶剤」という水性分散体本来の目的が失われるだけでなく、水性分散体が異常に増粘したり、貯蔵安定性が低下するという不具合を生じやすい。
〔(e)水〕
本発明に使用する水としては、蒸留水、イオン交換水、純水、水道水、電解水、脱イオン水など特に制限無く使用することができる。
〔(f)可塑剤〕
本発明のポリ乳酸樹脂水性分散体には、水性分散体の低温造膜性および樹脂の柔軟性向上のために可塑剤(f)の使用が必要である。可塑剤(f)としては、特に限定されないが、エーテルエステル系可塑剤、オキシ酸エステル系可塑剤、グリセリンエステル系可塑剤、多塩基酸エステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、ロジンエステル系可塑剤、フタル酸誘導体系可塑剤、ポリヒドロキシカルボン酸系可塑剤などが挙げられる。エーテルエステル系可塑剤の具体例としては、ビスメチルジエチレングリコールアジペート、ビスブチルジエチレングリコールアジペート、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アジペート、トリエチレングリコールジプロピオネートなどが挙げられる。オキシ酸エステル系可塑剤の具体例としては、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチルアセテート、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチルなどが挙げられる。グリセリンエステル系可塑剤の具体例としては、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、グリセリンジパルミテート、グリセリンジステアレート、グリセリンジオレート、グリセリントリアセテート、グリセリントリプロピオネート、グリセリントリブチレート、グリセリンジアセトモノカプリレート、グリセリンジアセトモノカプレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノミリスチレート、グリセリンジアセトモノパルミテート、グリセリンジアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリンジアセトモノリノレネート、グリセリンモノアセトジカプリレート、グリセリンモノアセトジカプレート、グリセリンモノアセトジラウレート、ジグリセリン酢酸エステルなどが挙げられる。多塩基酸エステル系可塑剤の具体例としては、ジメチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケートなどが挙げられる。多価アルコールエステル系可塑剤の具体例としては、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノオレイルエーテル、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノオレイルエーテルなどが挙げられる。ロジンエステル系可塑剤の具体例としては、アビエチン酸メチル、アビエチン酸ジエチルグリコール、2−ヒドロアビエチン酸ジエチレングリコール、2−ヒドロキシアビエチン酸ジエチレングリコール、ロジンのモノエチレングリコールエステル、ロジンのペンタエリトリットエステルなどが挙げられる。フタル酸誘導体系可塑剤の具体例としては、エチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレートなどが挙げられる。ポリヒドロキシカルボン酸系可塑剤の具体例としては、ポリカプロラクトン、ポリプロピオラクトンなどが挙げられる。
さらに、ポリ乳酸樹脂に対して相溶し、かつ、不揮発性であり、環境問題などの観点から無毒性で、生分解性を有し、さらにFDA(Food and Drug Administration)に合格しているものが好ましく、具体的には、エーテルエステル系可塑剤、オキシ酸エステル系可塑剤、グリセリンエステル系可塑剤が好ましい。特に、エーテルエステル系可塑剤の具体例としては、ビスメチルジエチレングリコールアジペート、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アジペートなどが挙げられる。また、オキシ酸エステル系可塑剤の具体例としては、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチルアセテートなどが挙げられる。グリセリンエステル系可塑剤の具体例としては、ジグリセリン酢酸エステル、グリセリンジアセトモノカプリレートなどが挙げられる。これらの可塑剤は単独で使用してもよく、あるいは2種類以上を併用してもよい。
可塑剤(f)の配合割合は、ポリ乳酸樹脂に対して1〜50質量%の範囲であることが好ましく、5〜30質量%の範囲であることがより好ましく、10〜20質量%の範囲であることが特に好ましい。添加量が1質量部未満であると添加効果が小さく、30質量部を超えると耐ブロッキング性や被膜の耐水性が低下する傾向にある。
さらに本発明の水性分散体には、その特性が損なわれない範囲で、顔料、染料、顔料分散剤、帯電防止剤、滑剤、撥水剤、防湿剤、湿潤剤、消泡剤、増粘剤、凍結融解安定剤、被膜形成助剤、防腐剤、防カビ剤、防サビ剤、接着剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ラジカル補足剤などを添加することができる。
次に、ポリ乳酸樹脂水性分散体の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は次の(A)〜(C)の工程からなる。
(A)原料(a)〜(e)を容器中で加熱してポリ乳酸樹脂(a)を乳化する工程、
(B)可塑剤(f)を添加する工程、および、
(C)両親媒性有機溶剤(d)の一部を除去する工程
〔工程(A)〕
工程(A)においては、原料(a)〜(e)を容器中で加熱してポリ乳酸樹脂(a)を乳化する。この際、処理装置としては、原料を適度に撹拌でき、容器内を30℃以上に加熱できるものであればよく、公知の固/液撹拌装置または乳化装置を使用することができる。撹拌の方法、撹拌の回転速度は特に限定されない。容器を加熱・冷却する方法も特に限定されないが、加熱・冷却工程に要する時間を短縮し、しかも容器内の温度を均一にし、高度に制御できるため、容器壁にジャケットを備え付けつける方法が好ましい。容器は密閉でき、加圧できるものが好ましい。このときの圧力は、0.01〜5MPaが好ましく、0.1〜0.5MPaがより好ましい。この工程によれば、樹脂の解重合工程または有機溶剤中への樹脂の溶解工程などを経なくともポリ乳酸樹脂を良好に乳化することができる。
工程(A)においては、系内の温度を30℃以上かつポリ乳酸樹脂の軟化点温度未満の温度に保ちつつ、好ましくは5〜300分間攪拌を続けることによりポリ乳酸樹脂を乳化させることができる。系内の温度が30℃未満の場合は、ポリ乳酸樹脂の水性化速度が遅く、また、系内の温度がポリ乳酸樹脂の軟化点温度を超える場合は、ポリ乳酸樹脂の安定分散が困難になったり、ポリ乳酸樹脂の分子量が著しく低下する恐れがある。
〔工程(B)〕
工程(B)においては、工程(A)で得られたポリ乳酸樹脂の乳化された分散液に対して、可塑剤(f)を添加する。可塑剤(f)は、熱分解を抑制するために工程(A)が終了した後に添加される。可塑剤を添加する際の温度は、特に限定されず、使用する装置の設備上、操作上の観点から適宜設定すればよいが、10〜50℃が好ましく、可塑剤の熱分解を抑制するためには20〜40℃がより好ましく、後の脱溶剤工程への移行を考慮すると30〜40℃が特に好ましい。
工程(C)(脱溶剤工程)以前の、両親媒性有機溶剤と水が混在している時期に可塑剤(f)を投入することにより、樹脂粒子の凝集や、相分離を抑制することができる。また、可塑剤が油滴状にならないため、得られた水性分散体を塗布する際にハジキ現象が抑えられ、塗工性が向上する。
工程(A)で可塑剤を投入する場合に比べて、乳化剤の使用量を低減させることができるので、塗膜の耐水性が向上するとともに、熱安定性が低い可塑剤を使用する場合には、熱分解が抑制されるので原料の歩留まりが向上する。
さらに、可塑剤の熱分解が抑制されることにより、工程(C)において、可塑剤の有する発泡抑制効果が妨げられないため、結果として溶剤の減圧留去がよりスムーズとなり脱溶剤に要する時間が短縮される場合がある。
〔工程(C)〕
工程(C)において、水性分散体中の両親媒性有機溶剤(d)は、その一部または全てを脱溶剤工程で系外へ留去させる。脱溶剤方法としては、常圧または減圧下で水性分散体を攪拌しながら加熱し、有機溶剤を留去する方法を挙げることができるが、その際の加熱温度はポリ乳酸樹脂のガラス転移点以下でなければならないため、減圧下で有機溶剤を留去する方法が好ましい。加熱温度は、具体的には、10〜55℃が好ましく、30〜45℃がより好ましい。10℃以下では有機溶剤の留去に時間がかかり、55℃を超えると樹脂粒子が凝集する場合がある。このとき、有機溶剤または水が留去されることにより、固形分濃度が高くなり、粘度が上昇し作業性が悪くなるような場合には、予め水性分散体に水を添加してもよい。
また、必要に応じてジェット粉砕処理を行って、ポリ乳酸樹脂水性分散体を、高圧下でノズルやスリットのような細孔より噴出させ、樹脂粒子同士や樹脂粒子と衝突板などとを衝突させて、機械的なエネルギーによって樹脂粒子をさらに細粒化してもよい。このための装置としては、A.P.V.GAULIN社製ホモジナイザー、みずほ工業社製マイクロフルイタイザーM−110E/Hなどが挙げられる。この処理は、工程(A)の後、任意の段階で行うことができる。
上記のように工程(A)〜工程(C)を経て、ポリ乳酸樹脂が水性媒体中に分散又は溶解され、均一な液状に調製されて得られる。ここで、均一な液状であるとは、外観上、水性分散体中に沈殿、相分離あるいは皮張りといった、固形分濃度が局部的に他の部分と相違する部分が見いだされない状態にあることをいう。
また、製造工程においては、異物などを除去する目的で、フィルターを適宜設置してもよい。たとえば、300メッシュ程度のステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)を用い、必要ならば0.2MPa程度の空気圧で加圧濾過する。
このようにして製造したポリ乳酸樹脂水性分散体は、分散安定性に優れており、耐水性に優れた被膜を形成することができる。特に、低温での造膜性に優れ、分散している樹脂の軟化点よりも低い温度でも透明性の高い被膜を形成することができる。
本発明の水性分散体は、ディップコート法、はけ塗り法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、カーテンフローコート法、各種印刷法などにより、樹脂成形体、不織布、紙、ガラス、金属などの各種基材上に均一に塗装することができ、必要に応じて室温付近でのセッティングや低温での乾燥工程を経た後、高温熱処理を行うことで、均一で光沢度が高く、しかも各種の性能に優れた被膜を得ることができる。高温熱処理は、通常、熱風循環型のオーブンや赤外線加熱ヒーターなどにより、50〜250℃で10秒〜30分間加熱することで達成される。
本発明の水性分散体の用途は特に限定されず、バインダー、コーティング剤、接着剤、塗料・インキなどとして好適に使用することができ、特にポリ乳酸樹脂基材に好適である。基材の形状は特に限定されず、フィルム、シート、ボトル、発泡体、繊維、布帛、不織布、メッシュなどに適用できる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。各分析項目は以下の方法に従って行った。
(1)ポリ乳酸樹脂の分子量
GPC分析(島津製作所製、溶媒:THF、屈折率分光計、ポリスチレン換算)より重量平均分子量を求めた。
(2)界面活性剤の分子量
界面活性剤10g(S)に無水フタル酸のピリジン溶液を25ml加え、沸騰水浴中で2時間加熱したのち室温まで冷却し、フェノールフタレインのピリジン溶液(1w/v%)を指示薬として1/2Nの水酸化ナトリウム溶液で滴定を行い、中和に消費された水酸化ナトリウム溶液の液量(ml)をA、同様に界面活性剤を含まない系の滴定も行い、その中和に消費された水酸化ナトリウム溶液の液量(ml)をBとし、各数値を下記式(1)に当てはめることにより、水酸基価(H)を算出した。なお、無水フタル酸のピリジン溶液は、ピリジン300mlに無水フタル酸42gを完全溶解させ、70℃で2時間熟成したものを用いた。
H=28.05×(B−A)×f/S (1)
(式中、fは水酸化ナトリウム溶液のファクターである。)
次いで、式(1)によって得た水酸基価Hを用いて、下記式(2)により、界面活性剤の数平均分子量(M)を求めた。
M=56.1×1000×2/H (2)
(3)ポリ乳酸樹脂の酸価
ポリ乳酸樹脂0.5g(C)を50mlの1,4−ジオキサン:蒸留水=9:1の溶液に加え、1時間加熱還流したのち室温まで冷却し、クレゾールレッドを指示薬として水酸化カリウムのメタノール溶液で滴定を行い、中和に消費された水酸化カリウム溶液の液量(ml)をD、同様にポリ乳酸を含まない系の滴定も行い、その中和に消費された水酸化カリウム溶液の液量(ml)をEとし、各数値を用いて下記式(3)により酸価を求めた。
酸価=5.61×(D−E)×F/C (3)
(式中、Fは水酸化カリウム溶液のファクターである。)
(4)ポリ乳酸樹脂のガラス転移点温度(Tg)
樹脂10mgをサンプルとし、示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製、DSC7)を用いて昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、求めた。
(5)ポリ乳酸樹脂の軟化点温度
樹脂10mgをサンプルとし、顕微鏡用加熱(冷却)装置ヒートステージ(リンカム社製、Heating-Freezing ATAGE TH-600型)を備えた顕微鏡を用いて、昇温速度20℃/分の条件で測定を行い、樹脂が溶融した温度を軟化点とした。
(6)水性分散体の固形分濃度
作成された水性分散体を適量秤量し、これを100℃以上で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、恒量後の質量より固形分濃度を求めた。
(7)水性分散体の平均粒子経
粒度分布測定装置(日機装社製、MICROTRAC UPA150)を用いて測定し、数平均粒子径で評価した。
(8)ポリ乳酸樹脂中のD−乳酸含有率
Hewlett Packard社製、ガスクロマトグラフHP-6890 Series GC System[FID検出器使用、キャリアーガス:ヘリウム、カラム:β-Dex 325 キャピラリーカラム スペルコ ♯24308 キラルカラム、カラムサイズ:直径0.25mm×3m、試料投入温度(インジェクション温度):300℃、オーブンプログラム:90℃(3min)−(50℃/min)−220℃(1min)]を用い、樹脂をアルカリ加水分解により乳酸にした後、メタノールによりメチルラクチレート化したものを装置内に投入して、D−乳酸含有率を求めた。
(9)水性分散体の貯蔵安定性
ポリ乳酸樹脂水性分散体を室温(20℃)で放置し、固化・凝集などの状態が観察されるまでの日数で評価した。30日以上固化・凝集が観測されなかったものは合格とし、貯蔵安定性に優れていると判断した。
(10)塗工性
2軸延伸PLAフィルム(ユニチカ製、テラマックフィルムTFE−25 厚み25μm)のコロナ処理面にポリ乳酸樹脂水性分散体を乾燥後のコート膜厚が2μmになるようにマイヤーバーを用いてコートした後、140℃で1分間乾燥させてコートフィルムを作製した。このようにして作製したコートフィルムの表面を塗膜の状態を目視で評価した。
〇:フィルム表面にコートされていない部分なし
×:フィルム表面にコートされていない部分あり
(11)ヘーズ(曇価)
JIS K7105に準じて、日本電色工業株式会社製のNDH2000「濁度、曇り度計」を用いて「ヘーズ(%)」を測定した。ヘーズが3.5%の2軸延伸PLAフィルム(ユニチカ製、テラマックフィルムTFE−25 厚み25μm)のコロナ処理面にポリ乳酸樹脂水性分散体を乾燥後のコート膜厚が2μmになるようにマイヤーバーを用いてコートした後、50℃で5分間乾燥させてコートフィルムを作製した。このようにして作製したコートフィルム全体のヘーズを測定した。20.0%以下を合格とし、低温造膜性に優れていると判断した。
(12)被膜の耐水性
2軸延伸PLAフィルム(ユニチカ製、テラマックフィルムTFE−25 厚み25μm)のコロナ処理面にポリ乳酸樹脂水性分散体を乾燥後のコート膜厚が1μmになるようにマイヤーバーを用いてコートした後、140℃で1分間、乾燥させた。得られたコートフィルムは室温で1日放置後、評価した。塗膜を水で濡らした布で数回擦り、塗膜の状態を目視で評価した。
〇:塗膜に溶解または曇りのいずれも認められない
×:塗膜に溶解または曇りのいずれかが認められる
(13)脱溶剤所要時間
乳化したポリ乳酸樹脂水性分散体490gを1Lのナスフラスコに入れ、ロータリーエバポレーターに設置し、40℃の湯浴に浸しながらアスピレーターにより減圧(最高90mmHg程度)し、98gの揮発成分(理論量のTHF含有量)が除去されるまでの時間を脱溶剤所要時間とした。泡がフラスコの口付近まで上昇した際には減圧を解除することで内容物が溢れ出すのを防ぎ、その間の時間も脱溶剤所要時間とした。
使用したポリ乳酸樹脂の組成を表1に示す。
実施例1
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットルガラス容器を備えた撹拌機を用いて、100.0gのポリ乳酸樹脂(A)(6300D、カーギルダウ製)、7.0gの界面活性剤(アデカプルロニック P−85、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤、数平均分子量:4,600、曇点:75℃、界面活性剤中のエチレンオキシド:50質量%、旭電化工業株式会社製)、5g(樹脂中のカルボキシル基に対して13.3倍当量)のTEA、両親媒性有機溶剤として100.0gのTHF及び278.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を600rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、ヒーターの電源を入れ加熱した。
そして系内温度を80℃に保って75分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度600rpmのまま攪拌しつつ35℃まで冷却した後、10gの可塑剤(クエン酸トリブチルアセテート(以下「ATBC」と略称する)、田岡化学工業株式会社製)を添加し、回転速度200rpmでさらに5分間撹拌して、乳白色の均一なポリ乳酸樹脂水性分散体を得た。得られた水性分散体から理論量のTHFを留去後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一なポリ乳酸樹脂水性分散体を得た。水性分散体の評価結果を表2に示した。
実施例2
ATBCの添加量を20g、水の添加量を268.0とした以外は、実施例1と同様の操作を行って乳白色の均一なポリ乳酸樹脂水性分散体を得た。得られた水性分散体の評価結果を表2に示す。
実施例3
可塑剤としてATBCの代わりにジグリセリン酢酸エステル(リケマールPL−710(以下「PL−710」と略称する)、理研ビタミン株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って乳白色の均一なポリ乳酸樹脂水性分散体を得た。得られた水性分散体の評価結果を表2に示す。
実施例4
可塑剤としてATBCの代わりにグリセリンジアセトモノカプリレート(リケマールPL−019(以下「PL−019」と略称する)、理研ビタミン株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って乳白色の均一なポリ乳酸樹脂水性分散体を得た。得られた水性分散体の評価結果を表2に示す。
実施例5
可塑剤としてATBCの代わりにビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アジペート(MXA(以下「MXA」と略称する)、大八株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って乳白色の均一なポリ乳酸樹脂水性分散体を得た。得られた水性分散体の評価結果を表2に示す。
比較例1
ATBCを加えず、水の添加量を288gとした以外は、実施例1と同様な操作を行って乳白色の均一なポリ乳酸樹脂水分散体を得た。得られた水性分散体の評価結果を表2に示す。
比較例2
比較例1と同様にしてポリ乳酸樹脂水性分散体を得た後、そのポリ乳酸樹脂水性分散体(樹脂固形分=25.0wt%)200gにATBCを5g添加してポリ乳酸樹脂水性分散体を得た。得られた水性分散体の評価結果を表2に示す。
比較例3
可塑剤を各原料と同時に加えた以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸樹脂水性分散体を得た。得られた水性分散体の評価結果を表2に示す。
上記の結果から明らかなように実施例1〜5ではいずれも良好なポリ乳酸樹脂水性分散体が得られ、良好な低温造膜性、耐水性、貯蔵安定性を示した。また、可塑剤を脱溶剤前に添加したことで、脱溶剤工程に要する時間を短縮することができた。しかも、両親媒性有機溶剤存在時に可塑剤を添加したことで水性分散体の不安定化も確認されず、脱溶剤後の安定性、塗工性も良好であった。
これに対し、比較例1では、水性化は達成できたものの、脱溶剤工程における発泡が激しく脱溶剤に時間を要した。比較例2の方法で得られたものは分散体中に油滴が確認され、塗工性に劣るものであった。また、比較例3の方法で得られた水性分散体は保存安定性が乏しかった。さらに、いずれの方法で得られた水性分散体も低温造膜性に劣るものであった。

Claims (8)

  1. (a)ポリ乳酸樹脂、
    (b)ポリ乳酸樹脂(a)に対して1〜30質量%のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤、
    (c)ポリ乳酸樹脂(a)のカルボキシル基に対して5〜30倍当量のアンモニアまたは沸点250℃以下の有機アミン化合物、
    (d)原料(a)〜(f)の総質量に対して5〜40質量%の両親媒性有機溶剤、
    (e)水、および
    (f)ポリ乳酸樹脂(a)に対して1〜50質量%の可塑剤
    を原料とし、
    (A)原料(a)〜(e)を容器中で加熱してポリ乳酸樹脂(a)を乳化する工程、
    (B)可塑剤(f)を添加する工程、および、
    (C)両親媒性有機溶剤(d)を除去する工程
    からなるポリ乳酸樹脂水性分散体の製造方法。
  2. 可塑剤(f)がエーテルエステル系可塑剤、オキシ酸エステル系可塑剤またはグリセリンエステル系可塑剤である請求項1記載のポリ乳酸樹脂水性分散体の製造方法。
  3. ポリ乳酸樹脂(a)のD−乳酸含有率が1.5〜25モル%である請求項1記載のポリ乳酸樹脂水性分散体の製造方法。
  4. ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤(b)の数平均分子量が3,500〜20,000である請求項1記載のポリ乳酸樹脂水性分散体の製造方法。
  5. アンモニアまたは沸点250℃以下の有機アミン化合物(c)が、トリエチルアミンである請求項1記載のポリ乳酸樹脂水性分散体の製造方法。
  6. 両親媒性有機溶剤(d)が、テトラヒドロフランである請求項1記載のポリ乳酸樹脂水性分散体の製造方法。
  7. 請求項1〜6いずれかの製造方法によって得られるポリ乳酸樹脂水性分散体。
  8. ポリ乳酸の平均分散粒子径が0.5μm以下である請求項7記載のポリ乳酸樹脂水性分散体。
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