JP2006087195A - 振動アクチュエータ及び振動アクチュエータの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】汎用の工作機械を用いて、弾性体と電機機械変換素子との接着強度及び導通を確保した振動アクチュエータを提供する。
【解決手段】振動アクチュエータ10を、円環状に形成され、その一方の端面に、径方向成分を含む複数の微細溝21cを周方向に周期性を持って分布させた接着剤受容層を有する弾性体21と、弾性体21の端面に対向して配置された圧電体22と、弾性体21と圧電体22との間に設けられた接着剤層23とを備える構成とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、弾性体と振動体とを接着した振動アクチュエータ及びその製造方法に関するものである。
振動アクチュエータは、圧電体に交流電圧を印加して生ずる振動を利用して、回転運動等の機械的出力を得るものをいい、特に、超音波域の振動を利用するものは、超音波モータと称されている。
一般に、このような振動アクチュエータは、共振先鋭度の大きな弾性材料によって形成され、ロータ等の移動体に駆動力を伝達する弾性体と、圧電体とを接着した振動体を備えている。この弾性体と圧電体との接着部は、接着強度を確保することが求められる。
また、圧電体は、弾性体との接着面に、分極された電極を備えており、この電極と弾性体との間の導電性を確保することが求められる。
従来、弾性体と圧電体との間の接着強度及び導電性を確保するために、弾性体の接着面の表面粗さが大きくなるように加工したものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
このような表面粗さを大きくする処理は、例えば、研削専用の工作機械であるラップ盤を用いて、接着面に加工疵(カッタマーク)をつけることによって行なわれていた。ラップ盤は、その表面に砥石等の研削部が設けられた定盤に、加工対象物(ワーク)を押圧した状態で、定盤と加工対象物との少なくとも一方を移動させることによって、加工対象物の被加工面を研削するものである。
この場合、接着面の表面粗さを得るだけのためにラップ盤を用意しなければならず、また、工程間の仕掛かり品が増加してしまう。
また、ラップ盤を用いたラップ加工では、加工対象物のカッタマークはランダムに形成されるから、その位置や方向にムラが生ずる場合があった。
特開平6−153542号公報
本発明の課題は、汎用の工作機械を用いて製作でき、弾性体と圧電体との接着強度及び導電性を確保した振動アクチュエータを提供することである。
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施例に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、円環状に形成され、その一方の端面に、径方向成分を含む複数の微細溝(21c)を周方向に周期性を持って分布させた接着剤受容層を有する弾性体(21)と、前記弾性体(21)の前記端面に対向して配置された圧電体(22)と、前記弾性体(21)と前記圧電体(22)との間に設けられた接着剤層(23)とを備える振動アクチュエータである。
請求項2の発明は、請求項1に記載の振動アクチュエータにおいて、前記微細溝(21c)は、前記弾性体(21)の周方向に沿って分布するあやめ模様であることを特徴とする振動アクチュエータである。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の振動アクチュエータにおいて、前記微細溝(21c)は、前記弾性体(21)の中心軸に対して略平行でありかつずらして設けられた回転軸回りに回転する回転砥石によって形成されたカッタマークであることを特徴とする振動アクチュエータである。
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、前記圧電体(22)は、前記弾性体(21)と導通する電極部を備えることを特徴とする振動アクチュエータである。
請求項5の発明は、円環状に形成された弾性体(21)の一方の端面に、前記弾性体(21)の中心軸に対して略平行でありかつずらして設けられた回転軸回りに回転する回転砥石を接触させながら、前記回転軸を前記弾性体(21)の周方向に沿って移動させる微細溝形成工程と、前記弾性体(21)の前記端面の一部に、その周方向に沿って接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、前記弾性体の前記端面に圧電体(22)を押圧し、前記接着剤を前記弾性体(21)の径方向に伸ばしかつ前記弾性体(21)と前記圧電体(22)とを接着する接着工程とを有する振動アクチュエータの製造方法である。
本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
(1)微細溝は、汎用の工作機械を用いたフライス加工によって形成することができるから、ラップ盤等の専用機械を準備する必要がなく、かつ、工程間の仕掛かり品を低減することができる。
(2)微細溝は、弾性体の周方向に周期性を持って形成されているから、弾性体の周上の位置ごとの表面粗さや、微細溝の方向を均一化することができる。これによって、接着剤層と弾性体との接着強度を安定化することができる。また、弾性体と圧電体とが弾性体の端面を介して導通する場合には、その導電性を確保することができる。
(3)微細溝は、径方向成分を含むから、弾性体の端面の一部に、その周方向に沿って塗布した接着剤が、圧電体との押圧によって径方向に広がりやすくなり、接着状態を改善することができる。
本発明は、汎用の工作機械によって製作でき、弾性体と圧電体との接着強度及び導電性を確保した振動アクチュエータを提供するという課題を、円環状のステータの一方の端面に、径方向成分を含み周期的に分布するカッタマークからなるあやめ模様を形成し、この端面に圧電体を接着することによって解決した。
以下、図面等を参照して、本発明の実施例をあげて、さらに詳しく説明する。
図1は、本発明を適用した振動アクチュエータの実施例1の断面図である。
なお、以下の実施例は、振動アクチュエータとして、超音波の振動域を利用した進行波モータである超音波モータを例にとって説明する。
実施例1の振動アクチュエータ10は、振動体20と、ロータ30と、出力軸40と、振動体保持部50とを有し、ステータ20側を固定し、ロータ30側を回転駆動する形態となっている。
振動体20は、ステータ21と、ステータ21に接着され、電気エネルギを機械エネルギに変換する電気機械変換素子(以下、「圧電体」と称する。)22と、ステータ21と圧電体22との間に設けられた接着剤層23とを有する。
この振動体20には、例えば、1周あたり9波長の進行波が発生する。
ステータ21は、例えばステンレス合金等の共振先鋭度が大きい金属材料からなり、円環状に形成されている。ステータ21の圧電体22が接合される側(ベース側とも称される。)と反対側の端面には、径方向に複数の溝を切った櫛歯21aが形成されており、この先端面が駆動面としてロータ30に加圧接触される。櫛歯21aを形成する理由は、進行波の中立面をできる限り圧電体22側に近づけて駆動面における進行波の振幅を増幅させるためである。
ステータ21は、その内周側にフランジ部21bが形成されており、このフランジ部21bの内周縁部は、後述する振動体保持部50のステータ取付台51に固定されている。
図2は、図1の振動アクチュエータ10のステータ21の圧電体22が接着される側の端面を、出力軸40の長手方向に沿った方向から見た図である。
ステータ21の接着面は、その径方向成分を含む微細溝である複数のカッタマーク21cが形成されている。個々のカッタマーク21cは、円弧状に形成され、この円弧の中心は、環状の接着面の径方向幅の略中央部に配置されている。
カッタマーク21cは、その円弧がステータ21の周回りに沿って時計方向に膨らんだものと、反時計方向に膨らんだものとがあり、これらは後述する回転砥石のいわゆる前歯側及び後歯側においてそれぞれ形成される。
これらのカッタマーク21cは、相互に重なり合い、それぞれ周方向に沿って、略等間隔で周期的に形成され、これによって、ステータ21の周方向に沿って分布するいわゆるあやめ模様が形成されている。
また、ステータ21の接着面における表面粗さは、JIS B0601−1994規格に規定される十点平均表面粗さRzが、例えば2μmから10μmの範囲とされている。
圧電体22は、例えば、圧電素子や、電歪素子が用いられる。圧電体22は、振動体20の周方向に沿って2つの相(A相、B相)に分かれており、各相においては、1/2波長毎に分極が交互となった要素が並べられており、A相とB相との間には、1/4波長分間隔があくようになっている。
圧電体22は、例えばエポキシ系の接着剤によってステータ21に接着されており、ステータ21の端面と圧電体22との間には、接着剤層23が形成されている。
また、ステータ21のカッタマーク21cが形成された領域には、カッタマーク21c内に接着剤が入りこんだ図示しない接着剤受容層が形成されている。
また、圧電体22のステータ21に対して反対側の面には、駆動電圧を供給する図示しないフレキシブルプリント基板(FPC)が接続されている。
一方、圧電体22のステータ21側の面部には、図示しない銀電極が備えられ、この銀電極は、接着剤層23を介さずに、直接ステータ21の端面のカッタマーク21c以外の領域と接し、等電位となっている。
ロータ30は、例えば、アルミニウム等の軽金属によって円盤状に形成され、その外周縁部に設けられ、ステータ21と接する摺動面30aには、耐摩耗性を向上する表面処理が施されている。
出力軸40は、その一端部がロータ30に固定され、他端部がこの振動アクチュエータ10の出力部となっている。
振動体保持部50は、上述した振動体20を出力軸40に対してその軸回りに回転可能に保持するものであり、ステータ取付台51と、固定ナット52と、ベアリング53,54と、スプリング55と、ストッパリング56とを備えている。
ステータ取付台51は、出力軸40が挿入される筒状の部材であって、その外周部にステータ21のフランジ部21bが固定される。
固定ナット52は、ステータ21のフランジ部21bをステータ取付台51に固定するものであり、出力軸40と略同心に配置され、その内周面に形成されたネジ部を、ステータ取付部51の外周面に形成されたネジ部にネジ結合される。
ベアリング53,54は、例えば、単列の深溝玉軸受であり、外輪の外径側をステータ取付台51の内径側に挿入され、また、内輪の内径側に、出力軸40が挿入されている。ベアリング53,54は、出力軸の長手方向に沿って間隔を有して配置され、ベアリング53は、出力軸40のロータ30が固定されている側の端部に設けられている。
スプリング55は、その内径側に出力軸40が挿入されるコイルスプリングであり、ベアリング53とベアリング54との間に配置され、これらが相互に離間する方向に付勢するものである。
ストッパリング56は、出力軸40の外周面に周方向に沿って形成された溝部に嵌め込まれたスナップリングであり、ベアリング54のベアリング53と反対側の端面に接し、ベアリング54の脱落を防止するものである。
上述した構成によって、スプリング55は、ベアリング53を介してステータ取付台51及びステータ21をロータ30側に付勢し、この付勢力によってステータ21の櫛歯21aの先端面は、ロータ30の摺動面30aに押圧されている。
<振動体の製作方法について>
以下、上述した振動アクチュエータ10の振動体20の製作方法について説明する。
(切削加工によるステータ21の形成)
まず、母材である円柱状のバー材を、コレットチャックによってマシニングセンタに固定し、駆動面側の平面加工を砥石等を用いて行なう。
次に、駆動面の内径側及びフランジ部21bの駆動面側を、ドリル等を用いて加工する。
ワークの外径側を旋盤加工によって順次荒加工及び仕上げ加工し、その後、フライス加工によって櫛歯21aを形成する。
次に、ワークを、コレットチャックから取り外し、櫛歯21a側をバックチャックによって再固定する。なお、この再固定は、ワークの自動着脱装置を用いて、自動的に行なうことができる。
その後、旋盤加工(突っ切り加工)によって、バー材の余剰部分をワークから切り離す。この突っ切り加工後の端面は、ステータ21の厚みを調整するための切削加工が施される。さらに、この端面側の内径側を、ドリル等を用いて加工する。
そして、ステータ21の圧電体22側の端面に対して、ステータ21の中心軸と略平行かつずらした回転軸回りに回転する回転砥石を接触させながら、回転軸をステータ21の周方向に沿って移動する。これによって、上述したあやめ模様状のカッタマーク21cが形成される。
その後、バックチャックからステータ21の製品を取り外し、バー材を所定量送って次の製品の加工を開始する。
(ステータ21と圧電体22との接合)
ステータ21の圧電体22側の端面の一部に、これらを接着する接着剤を塗布する。接着剤は、ステータ21の端面の径方向に沿った幅の略中央部に、その周方向に沿って環状に塗布される。
接着剤を塗布後、圧電体22をこの端面に対し位置を合わせて押圧する。この押圧力によって、接着剤は、ステータ21の径方向に沿って、内径側及び外径側にそれぞれ伸ばされて広がる。このとき、接着剤の一部は、カッタマーク21cに流れ込み、このカッタマーク21c内をステータ21の内径側及び外径側にそれぞれ進行し、接着面部に供給される。
以上のように実施例1によれば、ステータ21の接着剤が塗布される端面の表面粗さを、回転砥石を用いたフライス加工によって、あやめ模様状のカッタマーク21cを形成することによって大きくしているから、例えばラップ盤等の専用工作機械を準備する必要がなく、製造コストを低減でき、かつ、工程間の仕掛かり品を低減することができる。また、機械加工をする際に、ワークの着脱を自動化できるため、加工精度を向上することができ、振動アクチュエータ10の品質を向上することができる。
また、カッタマーク21cは、ステータ21の周方向に周期性を持って形成されているから、ステータ21の周上の位置ごとの表面粗さや、カッタマーク21cの延在する方向を、全周にわたって均一化することができる。これによって、ステータ21と圧電体22とを押圧したときの接着剤の広がりを均一化することができ、かつ、接着剤層23とステータ21との間の接着強度を安定化することができ、振動アクチュエータ10を長期間使用しても、ステータ21と圧電体22との剥離を防止して、振動アクチュエータ10の出力を確保することができる。
さらに、圧電体22とステータ21との間の導電性を確保することができる。
本発明を適用した振動アクチュエータの実施例2について説明する。この実施例2は、上述した実施例1と略同様な構成を備えており、同じ部分については同じ符号を付し、説明を省略し、以下主に相違点について説明する。
図3は、実施例2の振動アクチュエータのステータ21の圧電体が接着される側の端面を、出力軸40の長手方向に沿った方向から見た図である。
実施例2は、あやめ模様状のカッタマーク21dを、ステータ21の中心軸に対して同心円状に2列形成している。このようなカッタマーク21dは、回転砥石をステータ21の周方向に沿って移動させるときに、ステータ21の中心軸から回転砥石の回転軸までの距離をそれぞれ異ならせて、回転砥石をステータ21の周回りに移動させることによって形成することができる。
以上のように、実施例2によれば、上述した実施例1と同様の効果を奏することができ、また、加工部の径が小さい回転砥石によって加工を行なうことができ、また、ステータの端面の面積が大きい場合であってもその全面にわたって加工を行なうことができる。
(変形例)
なお、本発明は、上述した実施例によって限定されるものではなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
(1)各実施例は、その中心部に出力軸を備えるものであったが、本発明は、例えば、カメラの撮影用レンズ鏡筒の外周部に備えられる円環型の振動アクチュエータにも適用することができる。また、振動アクチュエータが用いる進行波の波数も限定されない。
(2)各実施例は、カッタマーク21cは、回転砥石の前歯側と後歯側との両方によって形成されているが、いずれか一方の歯によって形成したものであってもよい。
(3)各実施例は、回転砥石によってカッタマーク21cを形成しているが、他の工具を用いてカッタマークを形成してもよい。
(4)実施例2は、あやめ模様状のカッタマークを2列形成しているが、これに限らず、3列以上形成してもよい。
(5)各実施例は、ステータ21がステンレスによって形成されているが、他の材料によって形成した弾性体であっても同様の効果を得ることができる。
本発明を適用した振動アクチュエータの実施例1の断面図である。 図1の振動アクチュエータのステータの接着面を示す図である。 本発明を適用した振動アクチュエータの実施例2のステータの接着面を示す図である。
符号の説明
10 振動アクチュエータ
20 振動体
21 ステータ
21a 櫛歯
21b フランジ部
21c カッタマーク
21d カッタマーク
22 圧電体
23 接着剤層
30 ロータ
30a 摺動面
40 出力軸
50 振動体保持部
51 ステータ取付台
52 固定ナット
53 ベアリング
54 ベアリング
55 スプリング
56 ストッパリング

Claims (5)

  1. 円環状に形成され、その一方の端面に、径方向成分を含む複数の微細溝を周方向に周期性を持って分布させた接着剤受容層を有する弾性体と、
    前記弾性体の前記端面に対向して配置された圧電体と、
    前記弾性体と前記圧電体との間に設けられた接着剤層と
    を備える振動アクチュエータ。
  2. 請求項1に記載の振動アクチュエータにおいて、
    前記微細溝は、前記弾性体の周方向に沿って分布するあやめ模様であること
    を特徴とする振動アクチュエータ。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の振動アクチュエータにおいて、
    前記微細溝は、前記弾性体の中心軸に対して略平行でありかつずらして設けられた回転軸回りに回転する回転砥石によって形成されたカッタマークであること
    を特徴とする振動アクチュエータ。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、
    前記圧電体は、前記弾性体と導通する電極部を備えること
    を特徴とする振動アクチュエータ。
  5. 円環状に形成された弾性体の一方の端面に、前記弾性体の中心軸に対して略平行でありかつずらして設けられた回転軸回りに回転する回転砥石を接触させながら、前記回転軸を前記弾性体の周方向に沿って移動させる微細溝形成工程と、
    前記弾性体の前記端面の一部に、その周方向に沿って接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
    前記弾性体の前記端面に圧電体を押圧し、前記接着剤を前記弾性体の径方向に伸ばしかつ前記弾性体と前記圧電体とを接着する接着工程と
    を有する振動アクチュエータの製造方法。

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