以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(第1の実施形態)
まず,図1に基づいて,本発明の第1の実施形態にかかる超音波振動切削装置の一例として構成されたダイシング装置10の全体構成について説明する。なお,図1は,本実施形態にかかるダイシング装置10を示す全体斜視図である。
図1に示すように,ダイシング装置10は,例えば,半導体ウェハなどの被加工物12を切削加工する切削ユニット20と,被加工物12を保持する保持手段の一例であるチャックテーブル15と,切削ユニット移動機構(図示せず。)と,チャックテーブル移動機構(図示せず。)とを備える。
切削ユニット20は,スピンドルに装着された切削ブレード22を備えている。この切削ユニット20は,径方向に超音波振動する切削ブレード22を高速回転させながら,その刃先を被加工物12に切り込ませることにより,被加工物12を切削して極薄のカーフ(切溝)を形成することができる。
また,チャックテーブル15は,例えば,上面が略平坦な円盤状のテーブルであり,その上面に真空チャック(図示せず。)等を具備している。このチャックテーブル15は,例えば,ウェハテープ13を介してフレーム14に支持された状態の被加工物12が載置され,この被加工物12を真空吸着して安定的に保持することができる。
切削ユニット移動機構は,切削ユニット20を,Y軸方向に移動させる。このY軸方向は,切削方向(X軸方向)に対して直交する水平方向であり,例えば,切削ユニット20内に配設されたスピンドルの軸方向である。このようなY軸方向の移動により,切削ブレードの刃先を被加工物12の切削位置(切削ライン)に位置合わせすることができる。また,この切削ユニット移動機構は,切削ユニット20をZ軸方向(垂直方向)にも移動させる。これにより,被加工物12に対する切削ブレード22の切り込み深さを調整したり,切削ブレード22の基準位置を検出するための接触セットアップを実行したりできる。
チャックテーブル移動機構は,通常のダイシング加工時には,被加工物12を保持したチャックテーブル15を切削方向(X軸方向)に往復移動させて切削送りして,被加工物12に対し切削ブレード22の刃先を直線的な軌跡で作用させる。
かかる構成のダイシング装置10は,高速回転する切削ブレード22を被加工物12に切り込ませながら,切削ユニット20とチャックテーブル15とを相対移動させることにより,被加工物12を格子状に切削,即ちダイシング加工することができる。
次に,図2に基づいて,本実施形態にかかる切削ユニット20の概略構成について説明する。なお,図2は,本実施形態にかかる切削ユニット20を示す斜視図である。
図2に示すように,切削ユニット20は,例えば,切削砥石部23と基台部21とが一体構成された切削ブレード22と,先端部に切削ブレード22が装着されるスピンドル25と,スピンドル25を回転可能に支持するスピンドルハウジング26と,切削水供給ノズル27と,ホイルカバー28と,ボルト29と,調整部材40と,を主に備える。
切削ブレード22は,略リング形状を有する極薄の切削砥石部23と,該切削砥石部23を支持する基台部21とが一体構成されたハブブレードである。基台部21は,例えば,アルミニウム等の金属材などの導電性材料を成形したものである。切削砥石部23は,ダイヤモンド等の砥粒を基台部21に対して例えば電着することによって形成され,切削ブレード22の外周に配置される。このように,基台部21と切削砥石部23とは一体的に構成されて相互に分離不可能であるので,相互間に隙間が無く,このため超音波振動の伝達に適した構造となっている。
かかる切削ブレード22は,例えば,ボルト29によって,スピンドル25の先端部(図示せず。)に装着される。このとき,切削ブレード22の一側には略円柱状の調整部材40も装着される。かかる切削ブレード22の装着機構と,調整部材40の詳細については後述する(図3参照)。
また,スピンドル25は,例えば,後述するモータ(図示せず。)の回転駆動力を切削ブレード22に伝達するための回転軸であり,装着された切削ブレード22を例えば30,000rpmで高速回転させる。このスピンドル25の大部分は,スピンドルハウジング26に覆われているが,その先端部は,スピンドルハウジング26から露出しており,かかる先端部に切削ブレード22が装着される。
また,スピンドルハウジング26は,スピンドル25を覆うようにして設けられたハウジングである。このスピンドルハウジング26は,内部に設けられたエアベアリングによって,スピンドル25を高速回転可能に支持することができるが,詳細については後述する(図3参照)。
また,切削水供給ノズル27は,例えば切削ブレード22の両側に脱着可能に設けられ,切削ブレード22の側面及び加工点付近に切削水を供給して冷却する。また,ホイルカバー28は,切削ブレード22の外周を覆うにして設けられ,切削ブレード22を保護するとともに,切削水や切削屑などの飛散を防止する。
かかる構成の切削ユニット20は,スピンドル25により切削ブレード22を高速回転させ,かかる切削ブレード22の切削砥石部23を被加工物12に切り込ませて相対移動させる。これにより,例えば,被加工物12の加工面を切削加工して,切削ラインに沿って極薄の切溝(カーフ)を形成することができる。
次に,図3に基づいて,本実施形態にかかるスピンドルハウジング26の内部構成と,切削ブレード22の装着機構について詳細に説明する。なお,図3は,本実施形態にかかる切削ユニット20におけるスピンドルハウジング26の内部構成を示す縦断面図である。
図3に示すように,切削ユニット20のスピンドルハウジング26の内部には,例えば,スピンドル25と,スピンドル25を回転可能に支持するラジアルエアベアリング30およびスラストエアベアリング31と,ラジアルエアベアリング30及びスラストエアベアリング31に高圧エアを供給するためのエア供給路(図示せず。)と,ラジアルエアベアリング30およびスラストエアベアリング31によって噴出されたエアを排出するための排気路(図示せず。)と,ロータ321およびステータ322を有するモータ32と,ステータ322に電力を供給するためのステータ用給電部34と,スピンドル25の後端部側に設けられた超音波振動子としての例えばPZT振動子33と,PZT振動子33に電力を供給するための非接触給電装置35と,が設けられている。
詳細には,スピンドル25の後部側には,モータ32を構成する回転軸であるロータ321が設けられている。ステータ用給電部34によりステータ322に電力を供給すると,ロータ321およびステータ322の相互作用により回転駆動力が発生し,この回転駆動力によってスピンドル25が高速回転する構成である。また,スピンドル25の先端部側には,スピンドル25の軸径よりも大径のスラストプレート251が設けられている。
また,ラジアルエアベアリング30は,スピンドル25の外周に向けてエアを噴出することにより,空気圧によって,高速回転するスピンドル25をラジアル方向(XZ平面方向)に支持する。一方,スラストエアベアリング31は,スラストプレート251にエアを噴出することにより,高速回転するスピンドル25をスラスト方向(Y軸方向)に支持する。
このようなスピンドル25,スピンドルハウジング26,ラジアルエアベアリング30,スラストエアベアリング31,モータ32などは,エアスピンドル機構を構成しており,高速回転するスピンドル25を非接触で支持することができる。
また,スピンドル25には,超音波振動子として,例えば,電歪振動子であるPZT振動子33と,このPZT振動子33に電力を供給する非接触給電装置35とが設けられている。
PZT振動子33は,例えば,スピンドル25の後部側(切削ブレード22とは反対側)において,ロータ321よりさらに後部側に配設されている。このPZT振動子33は,ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックス材料などで構成されたボルト締めランジュバン型振動子などである。なお,振動子としては,この電歪振動子の例に限定されず,例えば磁歪振動子を使用することもできる。
非接触給電装置35は,スピンドルハウジング26の内周面に配設される給電側のトランスである一次側トランス351と,スピンドル25の後端部に配設された受電側のトランスである二次側トランス352と,外部電源(図示せず。)と一次側トランス351とを接続する給電端子353とからなる。かかる構成の非接触給電装置35は,外部電源から給電端子353を介して供給された電力を,一次側トランス351から二次側トランス352に電磁誘導方式により非接触で伝達し,さらに,スピンドル25を介してPZT振動子33に供給する。この非接触給電装置35により非接触でPZT振動子33に給電することにより,スピンドル25に給電用の部材を接触させなくて済むので,スピンドル25が円滑に回転でき,エアスピンドル機構の利点を生かすことができる。
このようにして非接触給電装置35から供給された電力により,PZT振動子33は,超音波振動を発生させてスピンドル25を超音波振動させる。この超音波振動は,スピンドル25の軸方向(Y軸方向)に伝達され,スピンドル25の先端部24に装着された切削ブレード22に向かう。さらに,このようにスピンドル25の軸方向(Y軸方向)に伝達される超音波振動は,切削ブレード22の径方向(XZ平面方向)に変換される。この振動伝達方向変換点のY軸位置が,切削ブレード22の切削砥石部23のY軸位置と同一またはその近傍となるように,切削ブレード22の装着機構の構造や,PZT振動子33の周波数などが調整されている。
ここで,上記図3に基づき,本実施形態にかかる切削ブレード22の装着機構の構造について詳述する。
図3に示すように,本実施形態にかかる切削ブレード22は,上記のように基台部21と,基台部21に例えば電着された切削砥石部23とが,一体化された構成である。かかる切削ブレード22の基台部21の両側には,スピンドル25の先端部24と略同一の径を有する円柱状の第1接合部21a,第2接合部21bがそれぞれ突設されている。この第1接合部21aの端面(図3における基台部21の左端の平坦面)が調整部材40との第1接合面となり,また,第2接合部21bの端面(図3における基台部21の右端の平坦面)が,スピンドル25の先端部24との第2接合面となる。これらの第1,第2接合面の形状は,スピンドル25の先端部24の接合面と略同一の径の円形である。
また,切削ブレード22の基台部21には,スピンドル25の軸方向に基台部貫通孔21cが貫通形成されている。この基台部貫通孔21cは,後述するボルト29のボルト胴部29bよりも大径となっており,基台部貫通孔21c内にボルト胴部29bが挿入された時に,両者が非接触状態となるようになっている。
また,調整部材40は,例えば,アルミニウム等の金属材を成形して構成され,スピンドル25の先端部24に対応した円柱形状を有する部材である。この円柱状の調整部材40の外径は,上記切削ブレード22の基台部21の第1接合部21aの外径と略同一となるように調整されている。かかる調整部材40は,当該基台部21の第1接合部21aの第1接合面に接合される。
かかる構造の調整部材40は,スピンドル25から軸方向に伝達される超音波振動の周波数に応じて,当該超音波振動の振動状態を調整するために使用する。具体的には,この調整部材40は,当該軸方向に伝達される超音波振動が調整部材40の軸方向の先端部(図3における左端部)において最大振動振幅点,つまり振動伝達方向変換点から上記超音波振動の1/4波長の距離にある点となるようにする機能を有する(図4参照)。
ボルト29は,調整部材40と係合するボルト頭部29aと,外周に雄ねじが形成されたボルト胴部29bとから構成される。このボルト頭部29aの径は,調整部材40内に係合可能な大きさであって,上記切削ブレード22の基台部貫通孔21cの径よりも大きくなるように調節されている。一方,ボルト胴部29bの径は,当該基台部貫通孔21cの径よりも小さくなるように調整されている。また,ボルト胴部29bは,スピンドル25の先端部24に形成された雌ねじ孔24aに螺合するようになっている。
かかる構成のボルト29により,調整部材40と,切削ブレード22の基台部21と,スピンドル25の先端部24とを相互に接合して,切削ブレード22及び調整部材40をスピンドル25の先端部24に装着・固定することができる。このとき,ボルト頭部29aは,調整部材40を係止し,ボルト胴部29bは,切削ブレード22の基台部貫通孔21cを非接触状態で貫通して,スピンドル25の先端部24に螺合する。
また,かかる接合時には,調整部材40の接合面と,切削ブレード22の基台部21の第1接合面との間には,第1の密着部材の一例である第1の密着リング51が挟み込まれる。一方,切削ブレード22の基台部21の第2接合面と,スピンドル25の先端部24との間には,第2の密着部材の一例である第2の密着リング52が挟み込まれる。かかる第1の密着リング51及び第2の密着リング52は,例えば,軟質の樹脂や紙などの絶縁性の軟質材料で形成されたリング形状の凹凸吸収部材である。なお,以下では,この第1の密着リング51及び第2の密着リング52を,密着リング50と総称して説明する場合もある。
まず,このような密着リング50を介在させる理由について説明する。超音波振動切削装置では,超音波振動を発生させることによって,切削ブレード22やスピンドル25自体が振動する。このため,切削ブレード22の第1接合面と調整部材40の接合面,或いは,切削ブレード22の第2接合面とスピンドル25の先端部24の接合面に,大きな凹凸があると,これらの接合面間に隙間が生じ,調整部材40と切削ブレード22とスピンドル25とが一体的な構成とならない。この結果,超音波振動による切削ブレード22の径方向の振幅が小さくなるという問題があるだけでなく,接合面が相互に削り合って破損してしまい,更に平坦度が失われるという問題がある。
技術的には,上記接合面が高い平坦性を有するように各部材を成形すれば,これらの問題は解決できるが,このような高い平坦性を得るためには,非常に高い成形加工精度が要求され,製造コストが高くなり,不良品発生率も高くなってしまうという問題がある。また,各部材の品質のバラツキなども考慮する必要があり不便である。
そこで,本実施形態では,上記調整部材40と,切削ブレード22と,スピンドル25の先端部24との間に,それぞれ,軟質材料からなる密着リング50を挟み込む構成を採用している。かかる密着リング50を介在させることによって,当該各接合面の平坦面の凹凸を吸収できるので,当該各平坦面の加工精度が悪くても,調整部材40と切削ブレード22とスピンドル25とを,相互に隙間無く密着させることができる。
第1の密着リング51の外形状は,調整部材40と切削ブレード22の基台部21との接合面と同一の形状(円形)を有し,第2の密着リング52の外形状は,切削ブレード22の基台部21とスピンドル25の先端部24との接合面と同一の形状(円形)を有する。本実施形態では,第1の密着リング51と第2の密着リング52の外形状とは,同一形状(同一径の円形)である。また,密着リング50は,その中心部に上記ボルト胴部28bを挿通させるための貫通孔が形成されたリング形状を有する。また,密着リング50の厚さは,例えば3〜100μm程度である。
この密着リング50の材質としては,樹脂や紙等のように上記平坦面の凹凸を吸収できる程度の硬度の軟質材料が好ましい。例えば,切削ブレード22をスピンドル25に取り付ける際に,ボルト29を締めつけるトルクTが,10Nm<T<30Nmの範囲であると考えた場合,密着リング50の硬度(ロックウェル硬さHRR)が,5<HRR<70以下となるような軟質材質であればよく,上記樹脂,紙以外の材質であってもよい。
このような軟質材料は絶縁性材料である場合が多いので,密着リング50は,絶縁性部材となる。なお,導電性の樹脂なども存在するが,上記密着リング50として適している硬度を有しているとは限らない。
また,密着リング50の取り付け手法としては,例えば,密着リング50の一側に接着面を設けて,切削ブレード22の基台の第1接合面若しくは第2接合面,或いは,スピンドル25の先端部24の接合面や調整部材40の接合面に,密着リング50を予め貼り付け可能にすれば,取り扱いが容易になるという利点がある。また,密着リング50の材料を液状として,この液状の材料(例えば液状の樹脂)を上記基台部21等の接合面に塗布して乾燥させることで,当該接合面に密着リング50を固着させる手法も有効である。
以上,図3を参照して,本実施形態にかかる切削ユニット20の内部構成と,切削ブレード22の装着機構の概要について説明した。以上のような構成により,スピンドル25の先端部24と,切削ブレード22の基台部21と,調整部材40とを,相互に隙間無く好適に接合して,一体構成に近い状態にできる。さらに,PZT振動子33により発生させた超音波振動をスピンドル25の軸方向に伝達させ,切削ブレード22と略同一位置にある振動伝達方向変換点で,当該伝達された超音波振動の伝達方向を切削ブレード22の径方向に変換できる。これにより,切削ブレード22を径方向に超音波振動させながら,即ち,リング形状の切削砥石部23を高周波で拡径,縮径を繰り返すように振動させながら,当該切削ブレード22によって被加工物12を切削することができる。
このように切削ブレード22を径方向に超音波振動させる原理についは,例えば上記特許文献2に記載されており公知であるが,以下に,図4に基づいて簡単に説明する。
図4は,本実施形態にかかる切削ユニット20において,PZT振動子33からの超音波振動に共振する振動波形W1と,伝達方向が径方向に変換された振動波形W2とを示す説明図である。振動波形W1は,共振による超音波振動の瞬間的な変位(振動振幅)を表し,振動波形W2は,伝達方向が径方向に変換された超音波振動の瞬間的な変位(振動振幅)を表す。
図4に示すように,スピンドル25の軸上(Y軸上)には,振動波形W1の最大振動振幅点A,C,E,Gと,最小振動振幅点B,D,F,Hが存在する。通常,最小振動振幅点B,D,F,Hでは,スピンドル25の径方向の伸長が最大となる。したがって,スピンドル25とスピンドルハウジング26との間隔は,少なくとも最小振動振幅点B,D,F,Hにおけるスピンドル25の最大拡径量よりも大きくしなければならない。しかし,その他の点に関しては,切削ユニット20がエアスピンドル機構を採用しているため,メカスピンドル機構を採用した場合のように最小振動振幅点B,D,F,H付近を構造的に補強したりする必要はない。
振動波形W1の最小振動振幅点Bは,振動伝達方向変換点であり,この振動伝達方向変換点Bと同一若しくはその近傍のY軸位置に,切削ブレード22の切削砥石部23が配置されている。振動伝達方向変換点Bにおいて,超音波振動の伝達方向が,スピンドル25の軸方向(Y軸方向)から,切削ブレード22の径方向(XZ平面方向)に変換される。このように伝達方向が径方向に変換された超音波振動の振動波形W2における最大振動振幅点α,βが,切削ブレードの刃先位置に位置するように,切削ブレード22のブレード径や超音波振動の周波数等が調整されている。
さらに,上記超音波振動を好適に伝達および変換するために,上記のように,切削ブレード22の切削砥石部23と基台部21とが一体構成されており,かつ,調整部材40と切削ブレード22の基台部21とスピンドル25の先端部24とが,第1の密着リング51,第2の密着リング52を介して,相互に密着して強固に固定されるように構成されている。さらに,切削ブレード22の基台部21は,振動伝達方向変換点Bを中心としてY軸方向に対称な形状となるように成形されており,また,最大振動振幅点Aは,調整部材40の先端部に位置づけられている。
以上のようにして,スピンドル25を軸方向に伝達してきた超音波振動の伝達方向を径方向に変換することにより,切削ブレード22の切削砥石部23は拡径,縮径を繰り返して,その刃先が径方向に好適に超音波振動する。
次に,再び図3を参照して,本実施形態にかかるダイシング装置10において切削ブレード22の基準位置を決定する接触セットアップについて説明する。
接触セットアップを行うための構成として,図3に示すように,例えば,スピンドル25の後端部の軸芯上に突設された接続端子71と,当該接続端子71に対して当接される検出用端子72とが設けられている。この検出用端子72は,配線73を介してチャックテーブル15に接続されている。さらに,この配線73上には,直流電源74と,当該配線74に電流が流れたことを検出する検出回路75とが直列に設けられている。
また,切削砥石部23と基台部21とからなる切削ブレード22,及びスピンドル25は,導電性の材質で形成されている。例えば,切削砥石部23は電着砥石等,基台部21はアルミニウム等,スピンドル25はステンレス等で形成されている。また,チャックテーブル15のうち少なくとも切削ブレード22の切削砥石部23が接触する部分も,導電性の材質で形成されている。
接触セットアップを行う際には,上記切削ユニット20をZ軸方向に徐々に降下させて,切削ブレード22の切削砥石部23の刃先(下端部)がチャックテーブル15に接触させる。この接触時には,直流電源74から,チャックテーブル15→切削ブレード22→スピンドル25→接触端子71→検出用端子72→検出回路75→直流電源74の順で電流が流れ,検出回路74によって通電が検出される。そして,この通電検出時における切削ブレード22のZ軸方向の高さが,基準位置に設定される。
ところが,上述したように,本実施形態にかかる切削ブレード装着機構では,切削ブレード22をスピンドル25に装着するためのボルト29は,切削ブレード22の基台部貫通孔21cと非接触になっている。また,調整部材40と切削ブレード22の基台部21の間,並びに,調整部材40と切削ブレード22の基台部21とスピンドルの先端部24と間には,それぞれ第1の密着リング51,第2の密着リング52が介在している。従って,これらの密着リング50が上記絶縁性材料で形成されている場合には,何らの対策も施さなければ,切削ブレード22とスピンドル25とが通電不能になってしまうので,上記接触セットアップを実行できないことになる。
そこで,本実施形態にかかる切削ユニット20では,密着リング50が絶縁性材料で形成されている場合であっても,上記接触セットアップを実行可能とするために,切削ブレード22とスピンドル25とが通電可能となるような構造となっている。具体的には,密着リング50の一部に切欠部を設け,切削ブレード22とスピンドル25との間,或いは,切削ブレード22と調整部材40との間で,この切欠部を通じて通電可能な構造としている。
以下に,図5〜図6を参照して,本実施形態にかかる切削ブレード22とスピンドル25との間の通電構造の具体例について説明する。なお,図5は,本実施形態にかかる切削ブレード装着機構を示す分解側面図(a)と,第1の密着リング51及び第2の密着リング52を示す正面図(b)である。また,図6は,本実施形態にかかる切削ブレード装着機構を示す分解断面図(a)と,組立断面図(b)である。
図5および図6に示すように,切削ブレード22をスピンドル25の先端部24に装着する時には,ボルト29のボルト胴部29bを,調整部材40の調整部材貫通孔40a,及び切削ブレード22の基台部21の基台部貫通孔21cに挿通して,スピンドル25の先端部24の雌ねじ孔24aに締結する。なお,調整部材40の一側中央部には,調整部材貫通孔40aより大径のボルト嵌合用凹部40bが陥没形成されており,このボルト嵌合用凹部40bにボルト頭部29aが嵌合するようになっている。
このようにして,調整部材40及び基台部21を貫通したボルト29をスピンドル25の先端部24に締結することによって,ボルト頭部29aにより調整部材40を係止し,この調整部材40とスピンドル25の先端部24との間で,切削ブレード22の基台部21を狭持して固定できる。このとき,上記のように,調整部材40の接合面40cと基台部21の第1接合面21dとの間には,第1の密着リング51が挟み込まれて密着し,また,基台部21の第2接合面21eとスピンドル25の先端部24の接合面24bとの間には,第2の密着リング52が挟み込まれて密着する。
また,調整部材40と切削ブレード22の基台部21との間には,本実施形態にかかる第1の通電部材として,弾性部材の一例であるコイルスプリング80が配設されている。このコイルスプリング80は,金属等の導電材料で形成され導電可能である。また,このコイルスプリング80の外径bは,切削ブレード22の基台部貫通孔21cの径aよりも大きく,コイルスプリング80の内径は,上記ボルト29のボルト胴部29bよりも大きい。また,調整部材40の切削ブレード22側には,コイルスプリング80の外径bに応じた径のスプリング用凹部40dが形成されており,かかるスプリング用凹部40dにコイルスプリング80が嵌着される。また,上記ボルト胴部29bは,このコイルスプリング80の内部を通過して,上記雌ねじ孔24aに螺合される。
さらに,かかる切削ブレード装着機構においては,上記切削ブレード22と調整部材40とを通電可能にするために,第1の密着リング51に切欠部53が形成されている。この切欠部53は,例えば,図5(b)に示すように,第1の密着リング51の内径bを,切削ブレード22の基台部貫通孔21cの径aよりも大きくなるように拡径させて形成された環状の切欠である。かかる切欠部53を形成することにより,調整部材40と切削ブレード22の基台部21とを隔絶するように配される第1の密着リング51に隙間が生じる。
そして,調整部材40と切削ブレード22の基台部21との間には,上記第1の密着リング51の切欠部53を通過するようにして,上記コイルスプリング80が配設される。これにより,コイルスプリング80の一端は調整部材40の接合面40cと接触し,他端は切削ブレード22の基台部21の第1接合面21dと接触するので,調整部材40と基台部21とが通電可能となる。この調整部材40は,ボルト29のボルト頭部29aと接触しており,さらに,このボルト29のボルト胴部29bはスピンドル25の先端部24と接触している。従って,上記のようにして切欠部53を通過するコイルスプリング80を配設することにより,このコイルスプリング80,調整部材40及びボルト29を介して間接的に,切削ブレード22とスピンドル25とを通電可能にすることができる。
さらに,切削ブレード22をスピンドル25に装着した時には,図6(b)に示すように,コイルスプリング80は,調整部材40のスプリング用凹部40dと基台部21の第1接合面21dとの間に挟み込まれて圧縮されるので,伸張する方向に弾性力を発揮した状態となる。従って,この弾性力により,コイルスプリング80の両端は,それぞれ,調整部材40のスプリング用凹部40dと基台部21の第1接合面21dとに押圧されて,確実に接触するようになる。よって,コイルスプリング80を第1の通電部材として確実に機能させて,調整部材40と切削ブレード22の基台部21とを安定的に通電可能にすることができる。
以下に,図7を参照して,本実施形態にかかる切削ブレード22とスピンドル25との間の通電構造の変更例について説明する。なお,図7は,本実施形態にかかる切削ブレード装着機構の変更例を示す分解側面図(a)と,第1の密着リング51及び第2の密着リング52を示す正面図(b)である。
図7に示す切削ブレード装着機構は,上記図5に示した切削ブレード装着機構と比べて,第2の密着リング52に上記切欠部54が形成される点と,切削ブレード22の基台部21とスピンドル25の先端部24との間に上記コイルスプリング80が配設される点で相違し,その他の機能構成は略同一である。
詳細には,図7(a)に示すように,コイルスプリング80は,切削ブレード22の基台部21とスピンドル25の先端部24とを通電させるための第2の通電部材として,切削ブレード22の基台部21とスピンドル25の先端部24との間に配設される。このコイルスプリング80の外径bは,切削ブレード22の基台部貫通孔21cの径aよりも大きく,コイルスプリング80の内径は,上記ボルト胴部29bよりも大きい。
また,スピンドル25の先端部24には,上記雌ねじ孔24aよりも浅い箇所に,円形の陥没部であるスプリング用凹部24cが形成されている。このスプリング用凹部24cの内径は,雌ねじ孔24aよりも大径であって,例えばコイルスプリング80の外径bと略同一若しくは若干大きい程度である。かかるスプリング用凹部24dに,上記コイルスプリング80が嵌着される。また,上記ボルト胴部29bは,コイルスプリング80の内部を通過して,上記雌ねじ孔24aに螺合される。なお,図7の例の調整部材40には,上記調整部材貫通孔40a及び上記ボルト嵌合用凹部40bのみが形成され,図5に示したようなスプリング用凹部40dは形成されていない。
また,上記切削ブレード22とスピンドル25とを通電可能にするために,第2の密着リング52に切欠部54が形成されている。この切欠部54は,例えば,図7(b)に示すように,第2の密着リング52の内径bを,切削ブレード22の基台部貫通孔21cの径aよりも大きくなるように拡径させて形成された環状の切欠である。かかる切欠部54を形成することにより,切削ブレード22の基台部21とスピンドル25の先端部24とを隔絶するように配される第2の密着リング52に隙間が生じる。
そして,この第2の密着リング52の切欠部54を通過するようにして,上記コイルスプリング80が配設される。これにより,コイルスプリング80の一端は,切削ブレード22の基台部21の第2接合面21eと接触し,コイルスプリング80の他端は,スピンドル25の先端部24の接合面24bと接触する。従って,切削ブレード22の基台部21とスピンドル25の先端部とが,コイルスプリング80を介して間接的に通電可能となる。なお,上記図5の具体例と同様に,圧縮されたコイルスプリング80が発揮する弾性力により,コイルスプリング80の両端が,それぞれ切削ブレード22の基台部21とスピンドル25の先端部24とに確実に接触するので,切削ブレード22とスピンドル25とを安定的に通電可能にすることができる。
以上,図5から図7を参照して本発明の第1の実施形態にかかる切削ブレード装着機構について説明した。本実施形態では,第1の密着リング51に形成された切欠部53又は第2の密着リング52に形成された切欠部54と,コイルスプリング80とによって,切削ブレード22とスピンドル25とが通電可能な構造となっている。従って,第1の密着リング51及び第2の密着リング52が絶縁部材であったとしても,図3で説明した接触セットアップを好適に実行して,切削ブレード22の高さ方向の基準位置を好適に検出・設定できる。よって,超音波振動切削装置として構成されたダイシング装置10を問題なく使用できる。
(第2の実施形態)
次に,図8を参照して,本発明の第2の実施形態にかかる切削ブレード22とスピンドル25との間の通電構造の具体例について説明する。なお,図8は,第2の実施形態にかかる切削ブレード装着機構を示す分解断面図(a)と,組立断面図(b)である。
この第2の実施形態にかかる切削ブレード装着機構は,上記第1の実施形態にかかる切削ブレード装着機構(図5〜図7)と比べて,コイルスプリング80を使用せずに,ボルト29と切削ブレード22の基台部21とを直接的に接触させて,切削ブレード22とスピンドル25とを通電可能にする点,並びに,ボルト29の外周に調整部材40が螺合する点で相違し,その他の機能構成については,上記第1の実施形態の場合と略同一であるので,その詳細説明は省略する。
図8に示すように,ボルト29には,ボルト頭部29aの外周に雄ねじ溝29cが形成されている。さらに,円柱形状の調整部材40には,切削ブレード22側の中心部に,上記ボルト頭部29aの雄ねじ溝29cと螺合する雌ねじ孔40eが形成さされている。かかる構成により,ボルト29により切削ブレード22をスピンドル25の先端部24に固定した状態で,ボルト頭部29aに調整部材40を螺着することで,調整部材40と切削ブレード22の基台部21とを第1の密着リング51を介して密着させることができる。
また,このボルト頭部29aの外径bは,切削ブレード22の基台部貫通孔21cの径aよりも大きく,ボルト胴部29bの径は,基台部貫通孔21cの径aよりも小さい。このため,基台部貫通孔21cにボルト胴部29bを非接触で挿入した状態で,ボルト頭部29aによって基台部21を係止することができる。
さらに,上記切削ブレード22とボルト29とを通電可能にするために,第1の密着リング51の貫通孔51aが拡径されて,上記ボルト頭部29aの外径b以上となっている。具体的には,例えば,上記図5(b)の例と同様にして,第1の密着リング51の内径(貫通孔51aの径)を拡径するように環状の切欠部53を形成することによって,第1の密着リング51の貫通孔51aは,上記基台部貫通孔21cより大きく,ボルト頭部29aの外径と例えば略同一の径bの円形となっている。これにより,ボルト頭部29aは,第1の密着部材51の貫通孔51aを通過して,基台部21の第1接合面21dに直接接触できるようになる。
なお,第1の密着リング51の貫通孔51aは,上記ボルト頭部29aが通過できるような形状及び大きさであれば,円形以外の形状であってもよいし,また,ボルト頭部29aの外径bより大きい円形であっても勿論よい。ただし,調整部材40と切削ブレード22の基台部21とを好適に密着させるという観点からは,第1の密着リング51の貫通孔51aは,ボルト頭部29aが通過可能な大きさで極力小さい方がよい。
かかる切削ブレード装着機構において,切削ブレード22をスピンドル25の先端部24に装着する時には,まず,ボルト29のボルト胴部29bを,第1の密着リング51の貫通孔51a,切削ブレード22の基台部貫通孔21c,及び第2の密着リング52の貫通孔52aに挿通して,スピンドル25の先端部24の雌ねじ孔24aに締結する。これにより,切削ブレード22がスピンドル25の先端部24に固定される。次いで,調整部材40の雌ねじ孔40eをボルト29のボルト頭部29aの雄ねじ溝29cに螺合して,調整部材40をボルト頭部29aの外側に締結する。これにより,調整部材40の接合面40cが第1の密着リング51に押圧されて,調整部材40と切削ブレード22の基台部21とが第1の密着リング51を介して密着する。
このようにして,切削ブレード22及び調整部材40をスピンドル25の先端部24に装着することによって,図8(b)に示すように,ボルト頭部29aは,上記第1の密着リング51の貫通孔51aを通過するように配置されて,切削ブレード22の基台部21の第1接合面21dと接触することができる。さらに,このように切削ブレード22の基台部21と接触するボルト29のボルト胴部29bは,スピンドル25の先端部24に螺合している。従って,切削ブレード22とスピンドル25とが当該ボルト29を介して間接的に通電可能となる。
以上のように,第2の実施形態では,第1の密着リング51の拡径された貫通孔51aを介して,ボルト29と切削ブレード22とを直接接触させることにより,切削ブレード22とスピンドル25とが通電可能な構造となっている。このため,第1の実施形態と比較して,部材間の密着性が低下するおそれがあるものの,切削ブレード22とスピンドル25とを確実に通電させることができるという利点がある。従って,第1の密着リング51及び第2の密着リング52が絶縁部材であったとしても,図3で説明した接触セットアップを好適に実行して,切削ブレード22の高さ方向の基準位置を好適に検出・設定できる。よって,超音波振動切削装置として構成されたダイシング装置10を問題なく使用できる。
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば,上記実施形態では,超音波振動切削装置としてダイシング装置10の例を挙げて説明したが,本発明は,かかる例に限定されない。例えば,径方向に超音波振動する切削ブレード22を高速回転させて,被加工物12を切削加工する装置であれば,例えば,ダイシング加工以外の切削加工を行う各種の切削装置であってもよい。
また,上記実施形態にかかる切削ユニット20では,スピンドル25の支持機構として,エアスピンドルの例を挙げて説明したが,本発明はかかる例に限定されない。例えば,スピンドル25の支持機構は,スピンドル25をベアリングで機械的に支持するメカスピンドルであってもよい。本発明は,切削ブレード22を径方向に超音波振動させる超音波振動切削装置であれば,如何なるスピンドルの支持機構であっても適用可能である。
また,上記実施形態では,密着部材として密着リング51,52を使用したが,本発明はかかる例に限定されない。密着部材の形状は,調整部材40と切削ブレード22の基台部21との接合面,或いは,切削ブレード22の基台部21とスピンドル25の先端部24との接合面の形状に応じて,例えば楕円形状,多角形状など任意の形状とすることができる。
また,上記第1の実施形態では,第1の密着リング51又は第2の密着リング52のいずれか一方にのみ切欠部53,54を形成したが,本発明はかかる例に限定されない。例えば,第1の密着部材又は第2の密着部材の双方に切欠部を形成して,調整部材40と切削ブレード22の基台部21との間,及び,切削ブレード22の基台部21とスピンドル25の先端部24との間の双方で,より確実に通電可能な構造にしてもよい。
また,上記第1の実施形態では,密着リング50の内周側に環状の切欠部53,54を形成したが,本発明はかかる例に限定されない。例えば,密着リング50等の密着部材の内周側若しくは外周側を部分的に切り欠いて切欠部を形成するといったように,切欠部の形状及び配置は,任意の形状及び配置であってよい。
また,上記第1の実施形態では,通電部材としてコイルスプリング80を使用したが,本発明はかかる例に限定されない。通電部材は,調整部材40と切削ブレード22の基台部21との間,又は,切削ブレード22の基台部21とスピンドル25の先端部24との間を,切欠部を介して連結する部材であれば,例えばピン,配線などで構成されてもよいし,或いは,調整部材40,切削ブレード22の基台部21,又はスピンドル25の先端部24の接合面に突設された接続端子であってもよい。