JP2006083937A - クロスグルーブ型ボールスプライン - Google Patents
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Abstract
【課題】 たたき音や、摺動音を減らし、車両全体の振動音を低減させる。
【解決手段】 軸線に対して角度をなすトラック22を外周面に形成した内輪20と、軸線に対して角度をなすトラック32を内周面に形成した外輪30と、内輪20のトラック22と外輪30のトラック32の交差部に組み込んだトルク伝達ボール40と、内輪20の外周面と外輪30の内周面との間に介在し、トルク伝達ボール40を収容するポケットを有するケージ50とで構成されるクロスグルーブ型ボールスプラインを軌間可変台車の伝動システムに採用し、車軸10の外周に同軸状に配置し、外輪30をギヤボックスの大歯車と接続し、内輪20を車輪と接続する。
【選択図】 図1
【解決手段】 軸線に対して角度をなすトラック22を外周面に形成した内輪20と、軸線に対して角度をなすトラック32を内周面に形成した外輪30と、内輪20のトラック22と外輪30のトラック32の交差部に組み込んだトルク伝達ボール40と、内輪20の外周面と外輪30の内周面との間に介在し、トルク伝達ボール40を収容するポケットを有するケージ50とで構成されるクロスグルーブ型ボールスプラインを軌間可変台車の伝動システムに採用し、車軸10の外周に同軸状に配置し、外輪30をギヤボックスの大歯車と接続し、内輪20を車輪と接続する。
【選択図】 図1
Description
本発明はクロスグルーブ型ボールスプラインに関するもので、たとえば、左右のレールの間隔(軌間)の異なる複数種の軌道を走行可能な鉄道車両用軌間可変台車(GCT:Gauge Changeable Train)におけるギヤボックス(減速機)と車輪を連結する伝動システムに利用することができる。
従来、軌間可変台車のギヤボックスと車輪を連結する伝動システムとしては、外筒に内歯、内筒に外歯を設け、外歯と内歯の間で軸方向に大きな伸縮が可能なスライディングギヤや、ボールスプラインまたはころスプラインが提案されている。
特開平10−278783号公報の図8には、スライディングギヤタイプの動力伝達スプラインが記載されている。図9を参照して説明すると、駆動筒2の端部の内面には、軸線方向に長く延びる雌スライディングギヤ3が形成されている。さらに、車輪と一体に回転するトルク伝達筒4の先端には、雌スライディングギヤ3とかみ合う軸線方向長さの短い雄スライディングギヤ5が形成されている。したがって、駆動モータによって駆動筒2を回転駆動することにより、トルク伝達筒4を介して車輪を回転させることができる。また、雌スライディングギヤ3と雄スライディングギヤ5とのかみ合い位置の変化により、軌間の変化を吸収することができる。符号1は車軸を示す。
また、特開平10−278783号公報の図1には、ボールスプラインタイプが記載されている。ボールに代えてころを使用したころスプラインを示す図10を参照して説明すると、駆動力を車輪に伝達する駆動力伝達手段としてのころスプライン筒(5,7)が、車軸1に対して同軸に設けてある。ころスプライン筒は、互いに同軸な外筒5と内筒7を有し、外筒5の内周面に形成した軸方向溝6と、内筒7の外周面に形成した軸方向溝8とに円筒ころ9を介在させてある。円筒ころ9の作用により、外筒5と内筒7とは軸線方向に滑らかにスライドしつつ駆動力を伝達することができる。これにより、このころスプライン筒は、駆動力を車輪に伝達して車輪を回転させながら、軌間の変化を滑らかに吸収することができる。
実公平07−047619号公報(図2)
特開平10−297487号公報(図1、図8)
鉄道車両では自動車と同様に益々静粛性が求められている。しかし、駆動系のガタに伴う振動音の問題がある。軌間可変台車のギヤボックスと車輪軸を連結する従来の伝動機構は、上述のスライディングギヤタイプであれ、ボールスプラインまたはころスプラインタイプであれ、かみ合い面にすきまを有している。このすきまの影響で、回転中の速度変動などによって、いわゆるたたき音が発生する。また、連結される車軸の僅かなミスアライメントによりスライディングギヤタイプでは内方側ギヤと外方側ギヤのかみ合い面の摺動に伴って摺動音が発生する。ころスプラインタイプは、ころところを収納する溝とのすきまでミスアライメントに伴う角度を許容しているが、殆ど角度自在性がなく、ころと溝との間でギヤと同様のたたき音が発生する。
本発明の主要な目的は、このようなたたき音や、摺動音を減らし、車両全体の振動音を低減させることにある。
本発明は、かかる振動音低減策として、軌間可変台車の伝動システムに、軸方向に大きな伸縮が可能で、しかも、ガタのないクロスグルーブジョイントを応用したボールスプラインすなわちクロスグルーブ型ボールスプラインを採用することを提案するものである。
本発明のクロスグルーブ型ボールスプラインは、軸線に対して角度をなすトラックを外周面に形成した内輪と、軸線に対して角度をなすトラックを内周面に形成した外輪と、内輪のトラックと外輪のトラックの交差部に組み込んだトルク伝達ボールと、内輪の外周面と外輪の内周面との間に介在し、トルク伝達ボールを収容するポケットを形成したケージとで構成される。
クロスグルーブ型ボールスプラインを軌間可変台車の伝動システムにおいて利用する場合、車軸の外周に同軸状に配置し、たとえば外輪をギヤボックスの大歯車と接続し、内輪を車輪と接続する。
トルク伝達ボールが内輪のトラックと外輪のトラックの交差部に挟まれているため、回転方向ガタがなく、大きな伸縮量が可能で、しかも、トルク伝達ボールの転がり運動によって僅かなミスアライメントにも対応可能である。したがって、鉄道車両の更なる静粛性向上に寄与する。
現状、新幹線と在来線の相互乗り入れに必要な軌間可変量が368mmであり、減速機を介して左右両輪に伸縮可能なボールスプラインを各1セット適用する場合、少なくとも184mm以上の大きな伸縮量が求められる。また、新幹線車両の車輪とレール間の摩擦係数0.35でこの時にボールスプラインに負荷される最大トルクが10KNm、車軸径が180mmで、内輪は少なくともこれ以上の大きさの内径を確保しなければならない。このように制約された条件下で伸縮可能なボールスプラインには限られたスペースにおいて高い捩り剛性と軽量・コンパクトが求められている。
クロスグルーブ型ボールスプラインは、ボール数を少なくしてトルク容量を確保しようとするとボール径を大きくするため必然的に外径が大きくなり所定のスペースを満足できない。また、ボール径を小さくしてたくさん入れてもトルク容量が確保できない(ボール径は負荷容量の3乗で、ボール数はそのままリニアに負荷容量に効いてくる)。また、トラックの交差角は3°未満にするとケージに作用するモーメントの釣り合いがとれず、ミスアライメント時の角度自在性を損ねる(実際は2°以下しか許容できない)。一方、トラック交差角が7°を越えると、隣り合うトラックの確保ができず大きな伸縮量が確保できない。本発明のクロスグルーブ型ボールスプラインはこのようにトルク伝達容量、車軸径、伸縮量およびスペースのバランス上、トルク伝達ボールを10個以上18個以下、トラック交差角を3°以上7°以下の範囲とするのが好ましい。たとえば現状の新幹線車両を想定するならば、ボール個数14個以上18個以下、トラック交差角3°以上5°以下が好適である。
軌間可変台車のギヤボックスと車輪軸を連結する伝動システムとして、ガタのないクロスグルーブ型ボールスプラインを採用することにより、従来のスライディングギヤや、ボールまたはころスプラインに見られる歯打ち音や擦れ音がなく、車両全体の振動音を低減させることができる。
以下、図面に従って本発明の実施の形態を説明する。
ここで、図1はクロスグルーブ型スプラインの縦断面を示し、軌間可変台車の台車枠や駆動モータを省略した正面図である図6のI部拡大断面図に相当する。図6には、車軸10と、車軸10に支持された一対の車輪12と、減速機14が現れている。軌間可変台車は白抜き矢印で示すように軌間が可変で、標準軌の場合を実線で示し、狭軌の場合を二点鎖線で示してある。また、図2は図1のII矢視図、図3は図1のクロスグルーブ型スプラ
インの一部をカットした要部斜視図、図4はトラックの展開図、図5はトラック交差角を説明するための略図である。
インの一部をカットした要部斜視図、図4はトラックの展開図、図5はトラック交差角を説明するための略図である。
図1に示すように、クロスグルーブ型ボールスプラインは、内輪20と外輪30と複数のトルク伝達ボール40とケージ50を主要な構成要素として成り立っている。内輪20は車軸10の外周に同軸状に位置し、外周面に複数のトラック22が形成してある。外輪30は内輪20の外周に同軸状に位置し、内周面に内輪20のトラック22と同数のトラック32が形成してある。図4に示すように、内輪20のトラック22と外輪30のトラック32は軸線に対して互いに反対方向に角度をなしている。軸線とトラック22,32がなす角度をトラック交差角αと呼ぶこととする(図5参照)。内輪20のトラック22と外輪30のトラック32との交差部にトルク伝達ボール40が組み込んである。ケージ50は内輪20の外周面と外輪30の内周面との間に介在し、円周方向の等間隔位置にトルク伝達ボール40を収容するポケット52を有する。
軌間可変台車のギヤボックスと車輪を連結する伝動機構として、トルク伝達ボール40のピッチ径を大きくするとともに、その数を増やし、所定のトルク伝達と軸方向に大きな伸縮が可能なクロスグルーブ型ボールスプラインとすることができる。具体的に例示するならば、モータ出力と負荷容量および主軸10の大きさとのバランスを考慮して、トルク伝達ボール40の数は10以上18以下、内外輪20,30のトラック交差角αは3°以上7°以下の範囲が好ましい。より具体的には、たとえば、トルク伝達ボール40の数を14、内外輪20,30のトラック交差角を3°とする。
組み込み性を考慮するならば、内輪20はケージ50に対して軸方向に分離できるタイプ、すなわち、内輪20の最大外径をケージ50の最小内径より小さくする。
外輪30の一端にシール固定板60が取り付けてある。シール固定板60は円筒部64と、円筒部64の一端に形成したフランジ部62と、円筒部64の他端に形成したシール部66とからなり、フランジ部62を外輪30の端面に当ててボルト70で固定してある。円筒部64は、外輪30からスライドアウトした内輪20のトラック22がシール部66のOリング68を越えて露出しないような長さに設定してある。シール部66は、内周面に形成した環状溝にOリング68を装着してある。Oリング68が常に内輪20の外周面に摺接することによって、内部に充填した潤滑剤の漏洩を防止し、また、外部から異物が侵入するのを防止する。
図6から理解できるとおり、クロスグルーブ型ボールスプラインの外輪30は減速機14の大歯車と接続し、内輪20は車輪12と接続する。そして、駆動モータ(図示せず)からのトルクが減速機14を介して外輪30に伝達され、さらにトルク伝達ボール40、内輪20を介して車輪12へと伝達される。
軌間変更に際しては、内輪20と外輪30が軸方向に相対変位する。図1は、トルク伝達ボール40が中立位置にあるときの状態を実線で示し、スライドアウト時およびスライドイン時の状態をそれぞれ二点鎖線で示してある。同図中、符号Cは中立位置にあるトルク伝達ボール40の中心、CIはスライドイン時のトルク伝達ボール40の中心、COはスライドアウト時のトルク伝達ボール40の中心をそれぞれ示している。
トルク伝達ボール40はトラック22,32の交差部に組み込まれ、トラック22,32によって挟まれているため、軸方向にも円周方向にもガタがなく、あるいは非常に小さく抑えられる。したがって、従来のスライディングギヤタイプやボールまたはころスプラインタイプにおけるようなたたき音や摺動音がなくなり、あるいは、大幅に減少し、車両全体の振動音を低減させることができる。
クロスグルーブ型ボールスプラインは上述の図1の実施の形態のように片輪当たり1個でもよいが、図7および図8に示すように、内輪20同士を共有する2個一組で使用すれば、1個当たりの伸縮量を少なくでき、しかも、交差角を大きくすることができ、より角度自在性が高まる。この場合、内輪20は、図示するように一体ものとするほか、別々の内輪を中間軸を用いてつないでもよい。
10 車軸
12 車輪
14 減速機
20 内輪
22 トラック
30 外輪
32 トラック
40 トルク伝達ボール
50 ケージ
52 ポケット
60 シール固定板
68 Oリング
12 車輪
14 減速機
20 内輪
22 トラック
30 外輪
32 トラック
40 トルク伝達ボール
50 ケージ
52 ポケット
60 シール固定板
68 Oリング
Claims (4)
- 軸線に対して角度をなすトラックを外周面に形成した内輪と、軸線に対して角度をなすトラックを内周面に形成した外輪と、内輪のトラックと外輪のトラックの交差部に組み込んだトルク伝達ボールと、内輪の外周面と外輪の内周面との間に介在し、トルク伝達ボールを収容するポケットを形成したケージとで構成されたクロスグルーブ型ボールスプライン。
- トラック交差角が3°以上7°以下の範囲内であることを特徴とする請求項1のクロスグルーブ型ボールスプライン。
- トルク伝達ボールの数が10以上18以下の範囲内であることを特徴とする請求項1のクロスグルーブ型ボールスプライン。
- 請求項1ないし3のいずれかのクロスグルーブ型ボールスプラインを車軸の外周に同軸状に配置し、外輪をギヤボックスの大歯車と接続し、内輪を車輪と接続したことを特徴とする軌間可変台車のギヤボックスと車輪を連結する伝動システム。
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