JP2006083425A - 多孔質ニオブ素材の製造方法および多孔質ニオブ素材とそれを備えた電解コンデンサ並びに触媒担持体 - Google Patents

多孔質ニオブ素材の製造方法および多孔質ニオブ素材とそれを備えた電解コンデンサ並びに触媒担持体 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、耐圧を大きくすることができ、漏れ電流を少なくすることができ、容量の変化を引き起こさないようにすることができるコンデンサの提供を目的とする。
【解決手段】 本発明は、ニオブからなる基材の表面に多孔質酸化被膜を備えた多孔質ニオブ素材を製造するに際し、フッ酸を含有する電解液により基材の表面をアノード酸化することを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明はニオブ電解コンデンサ用などの用途に供される多孔質ニオブ素材の製造方法と多孔質ニオブ素材に関し、更に詳しくは、高比表面積を有し、緻密で欠陥の無いニオブの酸化被膜を備えたニオブ素材とその応用物を提供する技術に関する。
ニオブはいわゆるレアメタルの1種であり、非常に高価であったことから、本格的な技術開発はこれまでは消極的であったが、近年になって世界市場にニオブが大量に供給され始めてから、様々な方面においてニオブの用途および開発が検討されてきている。
ニオブはバルブ金属の一種で不動態としての特徴を有し、その酸化皮膜は高耐食性を示し、表面は干渉色を示すなどの性質を有している。
例えばこのニオブを用いてコンデンサを構成しようとする試みは古くから提案されているが、近年、金属タンタルの採掘量の減少情報などの要因もあって、ニオブ電解コンデンサの開発が盛んに行われている。
このような背景から材料として有望なニオブを電解コンデンサに利用しようとする製品が登場し、タンタルの代わりにニオブを用いて電解コンデンサの陽極と誘電体を形成する構造が採用されている。しかし、従来のニオブコンデンサには、大きな欠点があると言われていた。
例えば、ニオブのコンデンサでは陰極と陽極間の漏れ電流がタンタルコンデンサに比べて大きくなるとされている。従ってニオブコンデンサにおいて酸化皮膜の状態が重要であり、漏れ電流を少なくすることが技術的な課題の1つとされている。(非特許文献1参照)
日経エレクトロニクス2001年7月30日号(P39参照)
また、陽極酸化皮膜を備えたニオブを利用しているコンデンサは他にも様々な問題点を抱えている。例えば、コンデンサの漏れ電流特性が極めて不安定であること、コンデンサとしての耐圧が大きくならないというなどである。
例えば、ニオブの陽極酸化処理時に処理電圧を大きくすると陽極酸化皮膜に部分的に亀裂が生じ、被膜部分が金属ニオブの部分からめくれ上がるように盛り上がって花弁状の孔が形成されてしまうという問題がある。
本発明者らの研究によれば、この花弁状の孔が形成されてしまうことがニオブコンデンサにおいて耐圧を大きくとれない原因の1つであり、漏れ電流特性が不安定な原因の1つであると考えている。
以上のような背景に鑑み本発明者らが鋭意研究を行った結果、酸化被膜部分に花弁状の孔をできるだけ形成することなく緻密で欠陥の少ない多孔質酸化皮膜を有するニオブ素材を形成できる技術について知見し、本願発明に到達した。
また、ニオブは耐食性に富み、化学的に極めて安定な金属素材であることに着目し、先の酸化皮膜に多孔質構造を採用できるならば、有機物質の合成・改質等の化学反応に用いられる各種触媒の担持体などとしても有望と考えることができる。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、ニオブの陽極酸化皮膜に従来生じていた花弁状の孔の生成をできる限り少なくして欠陥の少ないニオブの酸化皮膜を得ることができる方法とそれにより得られるニオブ素材と電解コンデンサ並びに触媒担持体の提供を目的とする。
また、本発明は、耐圧を大きくすることができ、漏れ電流を少なくすることができ、容量の変化を引き起こさないようにすることができるニオブコンデンサを提供することを目的とする。
本発明は、ニオブからなる基材の表面に多孔質酸化被膜を備えた多孔質ニオブ素材を製造するに際し、フッ酸を含有する電解液により基材の表面をアノード酸化することを特徴とする。
本発明において、前記フッ酸を含有する電解液により前記基材をアノード酸化するに際し、電圧を10V〜100Vの範囲で選択して定電圧電解するか、電流密度を1〜10A/mの範囲で選択して定電流電解することができる。
本発明において、前記電解液に添加するフッ酸を0.1〜5wt%の範囲とすることができる。
本発明において、前記電解液として、フッ酸を含有する硫酸電解液を用いることができる。
本発明において、前記電流密度を1〜5A/mの範囲で選択し、孔径10〜20nmのポーラス層をバリア層の上に備えた多孔質酸化皮膜を形成することができる。
本発明の多孔質ニオブ素材は、バリア層の上に孔径10〜20nmのポーラス層を備え、孔径0.2〜1μmあるいはこの範囲以上に大きなポア部あるいは花弁状の欠陥部が形成されていないことを特徴とする。
本発明の多孔質ニオブ素材は、先のいずれかに記載の製造方法により得られ、バリア層の上に孔径10〜20nmのポーラス層を備え、孔径0.2〜1μmあるいはこの範囲以上に大きなポア部あるいは花弁状の欠陥部が形成されていないことを特徴とする。
本発明の電解コンデンサは、先のいずれかに記載の製造方法により得られた多孔質ニオブ素材を備えたことを特徴とする。
本発明の触媒担持体は、先のいずれかに記載の製造方法により得られた多孔質ニオブ素材を備え、前記多孔質酸化被膜の多孔質部が触媒担持部とされたことを特徴とする。
フッ酸を含有した電解液でニオブの基材を電解し、その表面をアノード酸化処理することで花弁状の欠陥の少ない多孔質酸化皮膜を得ることができる。このため、欠陥の少ない多孔質ニオブを提供することができる。
フッ酸を含有する電解液により前記基材をアノード酸化するに際し、電圧を10V〜100Vの範囲で選択するか、電流密度を1〜10A/mの範囲で選択して電解することにより、大きな穴状の欠陥の少ない、緻密な多孔質の高比表面積のニオブ酸化皮膜を得ることができる。
前記電解液として、0.1〜5wt%のフッ酸を含有する硫酸電解液、またはフッ酸電解液を用いることができ、更に本発明において、前記電流密度を1〜5A/mの範囲で選択することにより、孔径10〜20nmのポーラス層をバリア層の上に備えた多孔質ニオブ酸化皮膜を形成することができる。
このような微細なポーラス層をバリア層上に備えた多孔質で欠陥の少ない多孔質ニオブ酸化皮膜を備えたニオブ素材を得ることにより、そのニオブ素材を備えた電解コンデンサであるならば、耐圧を大きくすることができ、漏れ電流特性が不安定ではない、特性の安定した電解コンデンサを提供できる。
また、同様なニオブ素材を得ることにより、多孔質酸化皮膜の部分において触媒を担持した触媒を得ることができ、特性の安定した触媒を提供できる。
次に、本発明の構成について図面を参照して説明する。
図1は本発明に係るニオブ素材を備えたニオブコンデンサの第1の実施の形態を示すもので、この形態のコンデンサ1は、ブロック状のモールド部材2の中心部にニオブのペレット本体(多孔質ニオブ素材)3を備えて概略構成されている。なお、図1に示す構造のコンデンサ1はニオブコンデンサとして最も一般的な構成の一例を示すものであるので、本発明が図1の構成に限定解釈されるものではない。
前記ペレット本体(多孔質ニオブ素材)3は、金属ニオブのブロック状のペレットの基材5の一面を除く周面部に陽極酸化皮膜からなる誘電体層としての多孔質酸化皮膜6が被覆形成され、その外部にグラファイト層7と銀などからなる導電体層8とが被覆形成されている。更に、ペレットの基材5の一面側にはペレットの基材5を棒状に延出させた形の接続部5aが形成され、この接続部5aの先端側に金属板からなる陽極端子9が接続されているとともに、ペレットの基材5の周面側の一部分には金属板からなる陰極端子10が導電性接着層12を介して接続されている。そして、これらのペレットの基材5とグラファイト層7と導電体層8および陽極端子9の接合部分と陰極端子10の接合部分およびそれらの部分の周囲などを覆ってモールド部材2が設けられ、モールド部材2の一側に陽極端子9の一部と陰極端子10の一部が接続端子として露出されている。
この実施形態のコンデンサ1にあっては、陽極を構成するニオブのペレットの基材5に形成されている多孔質酸化皮膜(誘電体膜)6が緻密で欠陥が少なく、このためコンデンサ1としての漏れ電流特性に優れ、コンデンサ1としての耐圧に優れ、コンデンサ1としての静電容量の安定性にも優れているものが得られ易い。
本実施形態のペレットの基材5の表面積層部分の拡大モデル構造を図2に示す。なお、実際のペレットの基材5の表面は凹凸を有するが、図2では平面化により簡略化して示した。
この基材5の金属ニオブからなる基材の表面部分に、緻密なバリア層6Aと多孔質なポーラス層6Bからなる多孔質酸化皮膜6が形成されている。
ここで用いられるポーラス層6Bは、孔径10〜20nm程度の微細な孔が多数形成されている構造を呈し、孔径0.2〜1μmあるいはこの範囲以上に大きなポア部あるいは花弁状の欠陥部が存在しない形状であることが好ましい。なお、本発明においては孔径10〜20nm程度の微細な孔が多数形成されている構造を主体として考えるが、陽極酸化処理の条件によっては孔径0.2〜1μm程度のポア部が多少含まれていても良い。
以下にこのような多孔質酸化皮膜6の形成方法について詳細に説明する。
ペレットの基材5の製造方法については一般的なこの種のニオブコンデンサ用製造方法の一環として用いられている焼結法を利用して製造すればよい。即ち、単体金属ニオブの粉末を必要量用意し、これを加圧装置で目的のサイズに圧密してから約1000〜1450℃の高温で焼結し、多孔質の焼結体とする。次いでこの焼結体に対し、以下に説明する陽極酸化処理を施して焼結体表面部分に多孔質酸化皮膜を形成する。
前記金属ニオブの基材5の表面を清浄化し、その後にフッ酸を添加した硫酸電解液を用いて陽極酸化処理を施す。
ここで用いる電解液は一例であるが、フッ酸を0.15wt%、あるいは、0.3wt%程度含有する1モルdm−3硫酸電解液あるいはフッ酸の単独電解液を用いることができる。ここで添加するフッ酸は一例として0.1〜5wt%程度の範囲のものを選択することができる。
前記電解液に添加するフッ酸の望ましい範囲は、0.1〜3wt%の範囲であり、より望ましい範囲は0.1〜2wt%の範囲である。ここでフッ酸は強酸であり、電解液として用いた場合の安全性などの面で取り扱いが難しいので、必要以上に高濃度としないことが製造上は有利である。このため、0.1〜5wt%の範囲であっても、先に記載の如く低めの濃度設定とすることが好ましい。
陽極酸化処理の際に定電圧電解する場合に印加する電圧は例えば10〜100Vの範囲、より好ましくは20〜70Vの範囲、定電流電解を行う場合に印加する電流密度は、例えば1〜10Am−2の範囲、より好ましくは1〜7Am−2の範囲、最も好ましくは1〜5Am−2の範囲を例示することができる。このような電解液であって前記範囲の条件で陽極酸化処理を行うならば、先に説明したバリア層6Aとポーラス層6Bとからなる誘電体層6を得ることができる。
先に説明した孔径10〜20nm程度の微細な孔が多数形成されている構造の多孔質酸化皮膜6を備えた基材5を備えたコンデンサ1であるならば、基材5表面の多孔質酸化皮膜6に欠陥がなく、緻密で比表面積の大きなポーラス層6Bを備えているので、耐圧が高く、しかもその耐圧性が安定しており、しかも比表面積の大きなポーラス層6Bを備えたコンデンサ1を提供することができる。
ところで先の実施形態では、本発明に係る多孔質酸化皮膜6を備えたコンデンサについて説明したが、例えば、図1、図2に示す構造の多孔質酸化皮膜6を備えた基材5を触媒担持体として利用することもできる。例えば、図1、図2に示すブロック状の基材5の多孔質酸化皮膜6のポーラス層6Bに必要な機能を備えた触媒を必要量充填した構造として基材5を触媒担持体として利用することができる。この触媒担持体として利用する場合に基材5の形状は粉粒体、あるいは板状、ブロック状などのいずれの形状であっても差し支えない。
「実施例1」
電解面積10cmの高純度ニオブ箔に化学研磨(体積比フッ酸:硝酸=1:4に3分間浸漬)を施し,0.1moldm−3硫酸(40℃)、水酸化ナトリウム(20℃)、及びフッ酸0.15,0.3wt%含有の1moldm−3硫酸電解液(室温)を用いて定電流アノード酸化した。
硫酸、及び水酸化ナトリウム電解液中での定電流電解は、電流密度10Am−2で絶縁破壊電圧到達後30分間行った。フッ酸含有の硫酸電解液を使用したアノード酸化は、定電流電解を1〜50Am−2、定電圧電解を10〜70Vで行った。皮膜の構造評価として、0.1molm−3リン酸(20℃)中での再アノード酸化、及び走査型電子顕微鏡(SEM)による皮膜表面及び破断面の観察を行った。
図3にフッ酸0.3wt%含有の1moldm−3硫酸電解液(室温)を用いて定電圧電解した場合の電解挙動を示す。図3において横軸はアノード酸化時間(分)、縦軸は電流密度(Am−2)を示す。
図4に図3に示す電圧20Vの場合に2時間電解して得られた多孔質ニオブ素材試料の破断面拡大図(FE−SEM像)を示す。図4に示すように底部がバリア層であり、上部が多孔質であって、孔径約10〜20nmと計測できるポーラス層を備えた多孔質酸化皮膜を得ることができた。
図5は同等の電解液を用いて電圧10Vとした場合に得られた多孔質ニオブ素材試料の破断部分の拡大図(FE−SEM像)を示し、図6は同等の電解液を用いて電圧20Vとした場合に得られた多孔質ニオブ素材試料の破断部分の拡大図(FE−SEM像)を示し、図7は同等の電解液を用いて電圧50Vとした場合に得られた多孔質ニオブ素材試料の破断部分の拡大図(FE−SEM像)を示し、図8は同等の電解液を用いて電圧70Vとした場合に得られた多孔質ニオブ素材試料の破断部分の拡大図(FE−SEM像)を示す。いずれの試料においても、底部がバリア層であり、上部が多孔質であって、孔径約10〜20nmと計測できるポーラス層を備えた多孔質酸化皮膜を得ることができた。
また、定電圧電解に代えて定電流電解によって前記と同じ電解液を用いて1〜50Am−2の範囲で同様な電解試験を行ったところ、1〜4Am−2 の範囲で得られた試料において図5〜図8に示された試料と同等の多孔質酸化皮膜を得ることができた。
これらの試料に対し、図9は定電流電解により、5Am−2 の条件で電解した試料であるが、図8と同じ倍率の拡大図(FE−SEM像)において先の試料のnmオーダーの微細なポーラス層に比べて遙かにμオーダーの巨大な孔状の欠陥が多数生成した。図10は5Am−2 の条件で電解した試料であるが、同じようにμオーダーの孔状の欠陥が多数生成した。
図11は先の電解液に代えて、フッ酸を混合していない硫酸電解液のみの電解液(40℃)により30分間アノード酸化した試料、図12はNaOH電解液(20℃)を用いた場合に30分間アノード酸化した試料を示す。図11と図12は縮尺は同等であるが、図11に示す試料は花弁状の欠陥として見なし得る孔部が形成され、図12に示す試料ではポア状の多数の孔部が形成された。
図11に示す如き花弁状の孔部が形成されたニオブ素材を用いたコンデンサでは、耐圧や漏れ電流特性が劣化する原因となる。図12に示すポア状の孔部を有するニオブ素材を用いたコンデンサにおいても花弁状の孔部を有するものを用いるよりは良好な特性を期待できるが、図5〜図8に示す多孔質酸化皮膜を有するニオブ素材を用いたコンデンサであれば、耐圧を更に向上させることができ、漏れ電流特性も大幅に改善できる。
よって多孔質酸化皮膜を備えたニオブ素材を適用したコンデンサが有望であり、仮に、多孔質酸化皮膜の一部に多少のポア状の孔部を備えたニオブ素材であってもコンデンサの性能向上に寄与する。
図13は先のフッ酸0.3wt%の電解液に代えてフッ酸0.5wt%含有させた電解液により上述の場合と同様に各電圧でニオブ箔を定電圧電解した場合の電解挙動を示す。
この電解液を用いて電解した場合であっても、フッ酸0.3wt%の電解液を用いた場合と同等の多孔質酸化皮膜を備えたニオブ素材を得ることができた。
この場合の試験においても電解条件は先の例と同等としたが、10〜70Vで多孔質酸化皮膜を得ることができ、1〜4Am−2 の範囲で多孔質酸化皮膜を得ることができた。
また、先のフッ酸0.5wt%の電解液に代えてフッ酸0.15wt%含有させた電解液により上述の場合と同様に各電圧でニオブ箔を定電圧電解した場合の電解挙動についても同等の結果を得ることができ、フッ酸0.3wt%の電解液を用いた場合と同等の多孔質酸化皮膜を備えたニオブ素材をフッ酸0.15wt%含有させた電解液を用いて得ることができた。
図14は0.3wt%の電解液を用いて10V〜70Vの定電圧電解した場合の各試料においてポアフィリング法によるポロシティの経時変化を測定した結果を示す。このポロシティは、リン酸電解液(20℃)中で電流密度10A m−2の条件で定電流電解したときの電圧−時間曲線から求めるポアフィリング法によるものである。
これらの試料のポロシティに対して先の例の如くNaOH電解液(20℃)を用いた場合に30分間アノード酸化した試料のポロシティは0.1未満であったので、先の0.3wt%の電解液を用いて10V〜70Vの定電圧電解した場合の各試料は高比表面積を有していることが明らかであり、微細なポーラス構造の多孔質酸化皮膜を得られていることが明らかである。
従って先の多孔質酸化皮膜を備えたニオブ素材をコンデンサ用の電極材料の一部として、あるいは、先の多孔質酸化皮膜のポーラス層部分に触媒を担持させるなどして触媒担持体として有効に活用できることが明らかとなった。
「実施例2」
先のフッ酸含有の硫酸電解液に代えて、フッ酸単独電解液を用いて多孔質ニオブ素材を製造した。
化学研磨(体積比 フッ酸:硝酸=1:4)後の高純度ニオブ箔を,0.1〜1wt%フッ酸電解液(室温)中で定電圧アノード酸化を行った。生成電圧は10〜100Vの範囲とし、1〜2時間電解を行った。
生成した皮膜の表面及び破断面を電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)で観察した。皮膜のポロシティはリン酸電解液(20℃)中で電流密度10A m−2の条件で定電流電解したときの電圧−時間曲線から求めた(ポアフィリング法)。
0.5wt%フッ酸電解液中で室温において定電圧アノード酸化を1時間行った際のI−t曲線を図15に示す。10〜100Vの範囲で,電流値は電解の初期段階で極小値を経た後,上昇して定常値に至ったが、これらの結果のうち、20V、50V、70Vの場合のI−t曲線を図15に示している。このような電解挙動はアルミニウムのアノード酸化によりポーラスアルミナが生成する場合に現れ、図15に示す結果は、先の図3、図13に示す場合と同様な結果になった。
次に、0.1〜1wt%の範囲で濃度を変えたフッ酸電解液中で20Vの定電圧電解を1時間室温で行った際のI−t曲線を図16に示す。1wt%フッ酸電解液中では,0.5wt%フッ酸電解液の場合と同様にポーラス皮膜生成の特徴が顕著に現れる際のI−t曲線を示した。
これらの電解条件で生成した皮膜の破断面の拡大図(FE−SEM像)を図17〜図20に示す。
図17に示す0.5wt%フッ酸電解液中で20Vの条件、及び図18に示す70Vの条件で1時間電解した場合、いずれも多孔質のポーラス層の存在を確認することができ、皮膜のポーラス層の構造は両者ともほぼ類似していた。これらの図の比較から素地側に存在するバリヤー層は70Vの方が厚いことがわかる。
図19に20Vで2時間電解を行った皮膜の断面を示すが,図17、図18の構造と厚さがほぼ同じであり、電解を継続してもポーラス層の成長には限界があると考えられる。 また,図19に示す如く2時間の電解で生成した皮膜はポーラス層が溶解し,孔径が拡大しているのが確認された。
図20に濃度の低い0.1wt%フッ酸電解液中で生成した皮膜の断面を示すが、この試料はポーラス層が完全に成長する前の段階であると思われるが、表面に微細な孔の発生が見られ、多孔質であった。
また、図21に示す如く濃度の高い1wt%フッ酸電解液中で生成した皮膜は0.5wt%フッ酸電解液中で生成した皮膜と比較してポーラス層の厚さが顕著に増加したが,同時に溶解による孔径の拡大も確認された。
ポアフィリング法でこれらの皮膜のポロシティを測定すると,約0.2であった。
これらの試験結果から、10〜100Vの範囲で定電圧で、好ましくは20〜70Vの範囲で定電圧電解することにより、ポーラス層を備えた多孔質ニオブ素材を得られることが明らかとなった。また、フッ酸電解液の濃度として、0.1〜1wt%の範囲でポーラス層を備えた多孔質ニオブ素材を得られることが明らかとなった。なお、フッ酸の濃度を向上させた場合に、ポーラス層の成長が促進されていることから、フッ酸電解液の濃度をこれらの数値以上に大きくしても多孔質ニオブ素材を得られるものと思われる。
しかし、フッ酸は強酸であり、薬液管理や処理性の問題から、あまりに高濃度のものを電解液として用いることは難しい問題がある。従ってフッ酸の濃度は最大でも5wt%程度、より好ましくは3wt%以下、薬液管理、大量生産などの融通性に鑑みると、2wt%以下が望ましい。
図1は本発明に係るコンデンサの第1の実施の形態を示す断面図。 図2は同コンデンサの部分拡大断面図である。 図3はフッ酸0.3wt%含有の硫酸電解液を用いて定電圧電解した場合の電解挙動を示す図。 図4は図3に示す電圧20Vの場合に2時間電解して得られた多孔質ニオブ素材試料の破断面拡大図(FE−SEM像)。 図4は図3に示す電圧10Vの場合に2時間電解して得られた多孔質ニオブ素材試料の破断面拡大図(FE−SEM像)。 図6は図3に示す電圧20Vの場合に2時間電解して得られた多孔質ニオブ素材試料の破断面拡大図(FE−SEM像)。 図7は図3に示す電圧50Vの場合に2時間電解して得られた多孔質ニオブ素材試料の破断面拡大図(FE−SEM像)。 図8は図3に示す電圧70Vの場合に2時間電解して得られた多孔質ニオブ素材試料の破断面拡大図(FE−SEM像)。 図9は定電流電解により、5Am−2 の条件で電解した試料の破断面拡大図(FE−SEM像)。 図9は定電流電解により、20Am−2 の条件で電解した試料の破断面拡大図(FE−SEM像)。 図11はフッ酸を混合していない硫酸電解液(40℃)により30分間アノード酸化した試料の破断面拡大図(FE−SEM像)。 図12はフッ酸を混合していないNaOH電解液(20℃)により30分間アノード酸化した試料の破断面拡大図(FE−SEM像)。 図13はフッ酸0.5wt%含有させた電解液により各電圧でニオブ箔を定電圧電解した場合の電解挙動を示す図。 図14は0.3wt%の電解液を用いて10V〜70Vの定電圧電解した場合の各試料においてポアフィリング法によるポロシティの経時変化を示す図。 図15は0.5wt%フッ酸電解液中で室温において定電圧アノード酸化を1時間行った際のI−t曲線を示す図。 図16は0.1〜1wt%の範囲で濃度を変えたフッ酸電解液中で20Vの定電圧電解を1時間室温で行った際のI−t曲線を示す図。 図17は0.5wt%フッ酸電解液中で20Vの条件で電解した条件において得られた多孔質ニオブ素材試料の破断面拡大図(FE−SEM像)。 図18は0.5wt%フッ酸電解液中で70Vの条件で1時間電解した条件において得られた多孔質ニオブ素材試料の破断面拡大図(FE−SEM像)。 図19は0.5wt%フッ酸電解液中において20Vで2時間電解を行う条件において得られた多孔質ニオブ素材試料の破断面拡大図(FE−SEM像)。 図20は0.1wt%フッ酸電解液中において20Vで1時間電解を行う条件において得られた多孔質ニオブ素材試料の破断面拡大図(FE−SEM像)。 図21は1wt%フッ酸電解液中において20Vで1時間電解を行う条件において得られた多孔質ニオブ素材試料の破断面拡大図(FE−SEM像)。
符号の説明
1…コンデンサ、3…ペレット本体(多孔質ニオブ素材)、5…ペレット、6…陽極酸化皮膜(誘電体膜)、6A…バリア層、6B…ポーラス層、7…グラファイト層、8…導電体層、9…陽極端子、10…陰極端子、12…導電性接着層。

Claims (9)

  1. ニオブからなる基材の表面に多孔質酸化被膜を備えた多孔質ニオブ素材を製造するに際し、フッ酸を含有する電解液により基材の表面をアノード酸化することを特徴とする多孔質ニオブ素材の製造方法。
  2. 前記フッ酸を含有する電解液により前記基材をアノード酸化するに際し、電圧を10V〜100Vの範囲で選択して定電圧電解するか、電流密度を1A/m〜10A/mの範囲で選択して定電流電解することを特徴とする請求項1に記載の多孔質ニオブ素材の製造方法。
  3. 前記電解液に添加するフッ酸を0.1〜5wt%の範囲とすることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質ニオブ素材の製造方法。
  4. 前記電解液として、フッ酸を含有する硫酸電解液を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質ニオブ素材の製造方法。
  5. 前記電流密度を1〜5A/mの範囲で選択し、孔径10〜20nmのポーラス層をバリア層の上に備えた多孔質酸化皮膜を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質ニオブ素材の製造方法。
  6. バリア層の上に孔径10〜20nmのポーラス層を備え、孔径0.2〜1μmあるいはこの範囲以上に大きなポア部あるいは花弁状の欠陥部が形成されていないことを特徴とする多孔質ニオブ素材。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られ、バリア層の上に孔径10〜20nmのポーラス層を備え、孔径0.2〜1μmあるいはこの範囲以上に大きなポア部あるいは花弁状の欠陥部が形成されていないことを特徴とする多孔質ニオブ素材。
  8. 請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られた多孔質ニオブ素材を備えたことを特徴とする電解コンデンサ。
  9. 請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られた多孔質ニオブ素材を備え、前記多孔質酸化被膜の多孔質部が触媒担持部とされたことを特徴とする触媒担持体。


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JP2009073675A (ja) * 2007-09-18 2009-04-09 Mitsui Mining & Smelting Co Ltd 金属酸化物粉及びその製造方法
KR101353190B1 (ko) 2012-03-30 2014-01-22 (주) 더바이오 정전류 조건의 양극산화를 통한 이중층 구조의 니오븀 옥사이드의 제조방법
CN113818062A (zh) * 2021-09-10 2021-12-21 西北有色金属研究院 一种利用低酸度溶液阳极氧化铌或铌合金的方法

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