JP2006081553A - 釣竿 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、強度低下を防止して効率良く強度の向上が図れる釣竿を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の釣竿は、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグを巻回して形成された本体層20と、孔形成部又は部品取付部とを備えた竿管2を有しており、前記孔形成部又は部品取付部に、強化繊維方向を傾斜方向とした繊維強化プリプレグを具備する補強層26を配設したことを特徴とする。
【選択図】 図2

Description

本発明は、釣竿に関する。
従来、釣竿に用いられる竿管は、強化繊維を引き揃え、これに合成樹脂を含浸した、いわゆるプリプレグを巻回することで構成されたものが一般的である。そして、各竿管は、それが用いられる個所に応じて、上記プリプレグに用いられる強化繊維の種類、引揃方向、弾性率、および樹脂含浸量、巻回数等が設定されている。
ところで、釣竿には、実釣時に様々な応力が加わるため、上記した竿管を部分的に補強することが行われている。具体的には、例えば実用新案登録第2538358号に開示されているように、中通し式釣竿において、竿管側面に形成された釣糸導入孔の周辺部を厚肉化したり、あるいは釣糸導入孔の縁部の強化繊維に織布を用いることが行われており、これにより、釣糸導入孔を強化して大きな応力が作用しても裂けや割れ等が生じないようにしている。
実用新案登録第2538358号公報
このように、釣竿に用いられる竿管を部分的に補強することは公知であるものの、効率の良い補強効果や強度向上については、まだ改善の余地がある。具体的には、上記したプリプレグによって形成される竿管は、強化繊維が特定方向に多く配分されているため、応力集中部分で強化繊維の一部が破断する(例えば繊維の圧縮座屈やせん断、又は繊維間の層間剥離の発生)と、その部分から急に破壊が進行するという特徴がある。
本発明は、上記した課題に着目して成されたものであり、強度低下を防止して効率良く強度の向上が図れる釣竿を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の釣竿は、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグを巻回して形成された本体層と、孔形成部又は部品取付部とを備えた竿管を有しており、前記孔形成部又は部品取付部に、強化繊維方向を傾斜方向とした傾斜方向プリプレグを具備する補強層を配設したことを特徴としている。
上記した構成の釣竿によれば、応力が集中しやすい孔形成部や部品取付部に配設され、強化繊維方向を傾斜方向とした繊維強化プリプレグを具備する補強層によって、そこに集中した応力は、より広い範囲に、又はより多方向(複数方向)に作用するようになる。
本発明によれば、各種釣竿の竿管に形成される孔部や、部品取付部分に応力が集中しても、傾斜方向繊維層を有する補強層により、応力集中部分の応力を傾斜方向等に分散でき、効率良く強度向上、強度の安定化が図れる。また、補強層形成による曲げ剛性の部分的増大が緩和でき、補強バランスが良くなる。
図1は、中通し式で振り出し構造とした本発明の一実施形態に係る釣竿の全体構成の概略を示した図である。
釣竿1は、順次振り出し式に継合される元竿管2、中竿管3および穂先竿管4を備えている(各継合部を符号Pで示す)。元竿管2には、リール100が装着できるように、リール固定装置2aが設けられており、それより穂先側にリール100から繰り出された釣糸を竿管内部に案内する釣糸導入部2bが設けられ、基端部に中竿管及び穂先竿管の抜けを防止する竿尻部品2cが装着されている。また、穂先竿管4の先端部には、ガイド取付部4aを介してトップガイド4bが装着されており、竿管内部に導入された釣糸を導出する。
上記した各竿管は、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグを芯金に巻回し、これを、加熱、脱芯、研磨等の常法にしたがった工程を経ることで形成される。なお、上記竿管を形成するに際しては、その竿管全体を形成する本体プリプレグ(本体層)の他に、竿管同士の継合個所あるいは釣糸導入部のような孔が形成される部分(孔形成部)や、釣糸導入部やトップガイド等の各種の部品が装着される部分に、補強プリプレグ(補強層)が配設される。この補強層は、図1に示す釣竿の場合、各竿管の継合部P、ガイド取付部4a、リール固定装置2a、釣糸導入部2b、竿尻部品2cが装着される領域の内、少なくとも1以上に配設される。
以下、図1に示す構成において、補強層が配設される部分について、詳細に説明する。
(1)釣糸導入部(図2参照)
上記元竿管2は、例えば、周方向に強化繊維を引き揃えたプリプレグ(周方向プリプレグ)による周方向繊維層を内周側及び外周側に配設し、その中間に軸長方向に強化繊維を引き揃えたプリプレグ(軸長方向プリプレグ)による軸長方向繊維層を介在した本体層20を備えている。また、上記釣糸導入部2bは、フレーム構造で上方が開口した釣糸導入ガイド21と、元竿管の側面に形成された長孔23とを備えている。
前記釣糸導入ガイド21は、リールからの釣糸を挿通して、長孔23に仕向けるガイドリング21aと長孔の前後に位置する脚部21bを備えており、両脚部21bを糸巻きやネジ等の固定手段によって元竿管2の外周面に固定することで装着される。また、前記長孔23には、これに沿うように長孔ガイド23aが設けられる。
上記したような釣糸導入部が設けられる部分には、上記した本体層以外に補強層が配設される。この場合、補強層は、例えば、軸長方向に対して強化繊維を所定角度(例えば+45°)に引き揃えたプリプレグ(傾斜方向プリプレグ)に、強化繊維を前記傾斜方向プリプレグと交差する方向(例えば−45°)に引き揃えたプリプレグ(傾斜方向プリプレグ)を重ね合わせて構成(交差プリプレグ)したり、強化繊維を傾斜方向に引き揃えたプリプレグ(傾斜方向プリプレグ)のみで構成したり、あるいは、これらのプリプレグを主体として、さらに別の補強プリプレグ(軸長方向に強化繊維を引き揃えたもの、周方向に強化繊維を引き揃えたもの、織布等)を重ね合わせて構成される。
図に示す構成では、釣糸導入部における補強層は、釣糸導入部が設けられる領域において、本体層20の外周側に軸長方向繊維層25を配設し、その外側に傾斜方向プリプレグの強化繊維が交差するように積層した傾斜方向繊維層26を配設することで構成されている。この場合、傾斜方向繊維層26は、図に示すように軸長方向繊維層25の外層に配設したり、あるいは軸長方向繊維層25の外層と内層に配分するのが良く、外層と内層に配分するのであれば、それぞれ異なる方向に強化繊維を引き揃えた傾斜プリプレグとすることもできる。また、傾斜方向繊維層26の厚さは、破断の進行防止及びねじれ強度向上等のために、本体層20又は本体層20の軸長方向繊維層より厚くする(1.5〜3.5倍)のが良く、樹脂含浸量については、繊維間張りの防止、層間剥離防止のために、本体層20の軸長方向繊維層より多く設定するのが良い。また、傾斜方向繊維層の強化繊維の弾性率は任意であるが、貫通孔形成による剛性低下を補うために、本体層20の軸長方向繊維層より高いものを用いるのが良い。しかし、厚さや樹脂含浸量や弾性率は上記の例に限らず任意に設定できる。
また、開孔部分ではねじれ剛性が極度に低下することから、それを補強するために傾斜繊維層を入れる。この場合、傾斜繊維層は1ply以上あれば良く、厚さも0.01mm以上あれば良い。また、これと共に、周方向補強層又は軸長方向補強層を巻いても良い。この傾斜方向繊維層は、巻き付け時の作業性を考慮すると、本体層より樹脂含浸量を多くするのが良いが、巻き付けに支障が無ければ本体層より少なくても良い。強化繊維の弾性率については、せん断弾性向上を図るということから、1ton/mm以上あれば良く、好ましくは本体層の強化繊維と同等以上であることが望ましい。
(2)継合部P(図2参照)
図に示す構成では、釣糸導入部2bと継合部Pとの距離が比較的短いため、継合部Pにおける補強層は、上記した傾斜方向繊維層26を連続的に配設して構成されている。この場合、釣糸導入部と継合部の補強層を構成するプリプレグは、複数枚で構成しても1枚で構成しても良いが、貫通孔形成による強度低下が大きいため、これを補う必要があることから、釣糸導入部2b側の巻回数(厚さ)を多くするのが良い。
また、継合部Pに関しては、中竿管の基端部外周が当接するため、その当たりが生じる部分を効果的に補強するように、本体層20の内周側に、強化繊維を周方向に引き揃えたプリプレグによる周方向繊維層28を配設するのが良い。
上述した補強層を構成する傾斜方向繊維層26は、製造時及び使用中の応力に対し、繊維の動きを各方向(3方向)から押さえ、強度の安定向上を図ることから、本体層を構成する周方向繊維層もしくは補強層を構成する周方向繊維層と接するように巻回するのが良い。あるいは、補強層を構成する傾斜方向繊維層26は、これに軸長方向繊維層、周方向繊維層の3層を組み合わせた(張り合わせた)プリプレグシートとしても良い。この場合、周方向繊維層は、補強層全体の3〜30%とするのが良い。
(3)リール固定装置(図3、図4参照)
竿に取付けられる部品であるリール固定装置2aは、元竿管2の本体層20の外周部に別体として接着されており(元竿管と一体成形であっても良い)、図に示すように、リール脚載置部30と、前側リール脚が配される開口31aを有する固定フード31と、後側リール脚が配される開口32aを有する移動フード32と、移動フード32に設けられ、移動フード32の位置を固定する位置固定機構32bとを備えている。また、リール脚載置部30上には、位置固定機構32bの固定爪が係合する爪受け32cが軸方向に沿って形成されている。
補強層は、リール固定装置2aの前端部35aから後端部35bに亘って本体層20の外側に配設されており、強化繊維を傾斜方向に引き揃えた傾斜方向繊維層37を主体として構成されている。傾斜方向繊維層37は、リール固定装置の端部35a,35bよりも軸長方向に長く、かつリール固定装置側に向けて次第に肉厚が厚くなるように形成している。また、竿管本体からリール固定装置2aにかけて、塗料38を肉盛り形成し、段差を埋めてなだらかな平滑面状にしている。
前記傾斜方向繊維層37の強化繊維は、加工し易さを考慮して本体層20の軸長方向繊維層の強化繊維より低弾性のものを用い、樹脂含浸量は多くするのが良い。また、傾斜方向繊維層の厚さは、せん断方向の補強効果を考慮して本体層20の厚さに対して3〜30%(好ましくは10〜90%とし、本体層の肉厚以下)にするのが良い。
また、補強層を構成する傾斜方向繊維層37に、強化繊維を周方向に引き揃えた周方向プリプレグや織布(ガラススクリム等)を付加して巻回しても良い。また、リール固定装置2aの本体の剛性は、強度の向上を考慮して補強層の剛性以下にするのが良く、材料についても低弾性材料を用いるのが良い。
図4は、リール固定装置の別の実施形態を示す図であり、いわゆる筒状のリールシートを示す図である。なお、この構成では、図3に示すリール固定装置と同様な機能を有する部分については、同一の参照符号を付してある。
本体層20の表面には、膨出部40が一体的(別体でも良い)に形成されており、その一端側には、後述する移動フードの一部が移動できるように軸方向に延在する空隙40aが形成されている。また、本体層20の外周側には、強化繊維を傾斜方向に引き揃えたプリプレグを主体とした補強層42が配設されている。この補強層の一端側には、雄ネジ部42aが一体的に形成されており、ここにナット43が螺合されている。ナット43には、リールの脚部を受けるように合成樹脂等によって形成された緩衝部材45aを有する移動フード45が係合しており、ナット43を回動操作することで移動フード45は軸方向に移動可能となっている。
この構成では、リール固定装置の雄ネジ部42aを、繊維方向が傾斜方向となった補強層に形成するため、雄ネジ部を破損し難くすることができる。また、より補強効果を高めるために、補強層の一部に周方向繊維層を組み合わせるのが良く、本体層20よりも高強度(低弾性)の強化繊維を用いるのが良い。
(4)継合部P(図5参照)
上記(2)では、一方の竿管の継合部に補強層を配設する構成について説明したが、このような補強層は、大径竿管(元竿管2)と小径竿管(中竿管3)との両継合部分に配設しても良い。具体的には、元竿管2の本体層20の継合部における内周側と外周側に、それぞれ傾斜方向繊維層を主体とした補強層20a,20bを配設すると共に、中竿管3の本体層50の継合部における外周側に、傾斜方向繊維層を主体とした補強層50aを配設する。なお、補強層を配設する位置については、図に示すように、実際の継合領域より長めにしておくのが良い。
(5)ガイド取付部(図6参照)
穂先竿管4の先端部のガイド取付部4aは、穂先竿管の本体層60の外周に配設され傾斜方向繊維層を主体とした補強層61によって構成されている。この補強層61には、その端部にガイドリング4cが装着されると共に、トップガイド4bが取り付けられる。この場合、トップガイド4bは、補強層に対して接着固定されても良いし、ネジ等の螺合によって着脱自在にしても良い。また、補強層61は、トップガイド4bの装着領域よりも5〜20mm長く形成しておくことが好ましい。
なお、トップガイド4bには、その先端部にガイドリング4dが装着されていると共に、中間部に水抜き用の孔4eが形成されている。
(6)竿尻部品(図7参照)
元竿管2の基端部に装着される竿尻部品2cは、ゴム等の柔軟部材2dを収容し、中心に水抜き孔が形成された竿尻キャップ2eと、この竿尻キャップ2eに螺合され、元竿管2の外周面に嵌合される竿尻リング2fとを備えている。
このように、竿尻部品が装着される元竿管2の基端部には、その本体層20の外周に、傾斜方向繊維層を主体とした補強層65が配設されている。補強層65を配設する位置は任意であるが、本体層の外周側で竿尻部品と接する位置に配設することが好ましい。
(7)外ガイド取付部(図8参照)
竿管に遊動ガイド70を装着するタイプの釣竿では、そのガイドが装着される部分に、補強層が配設される。この場合、竿管75のガイド装着部分において、その本体層76の外側に傾斜方向繊維層を主体とした肉盛部77が形成される。なお、肉盛部77の外表面には、遊動ガイド70がスライドできるように、長手方向に沿って凹凸条77aが多数本形成されている。また、肉盛部77の両端部77bは傾斜状に形成されており、その端部からの破損を効果的に防止できるようになっている。
(8)節付け部(図9参照)
釣竿によっては、竿管81の外表面に外観上の模様として節82を付ける場合がある。このように節付けを行う場合、その節を、傾斜方向繊維層を主体とした補強層によって構成する。このように、節82を上記したような補強層で形成することにより、釣竿がたわんだ際に、節を付けた部分からの破損を防止することができる。なお、補強層の一部に周方向繊維層を配設しても良い。
(9)竿受け部(図10参照)
釣竿を竿受けに載置したり、あるいは竿受けを取り付ける場合、そのような竿受けが位置する部分に補強層を配設する。図に示す構成では、竿受け105が位置する竿管90の本体層91の外周側に、傾斜方向繊維層を主体とした補強層92を配設している。この場合、補強層92は、本体層91の軸長方向繊維層よりも低弾性の強化繊維を用いるのが良く、本体層よりも厚く形成するのが良い。また、つぶれを効果的に防止できるように、周方向繊維層をさらに重ねても良い。なお、補強層92は、ハンドル部の全体に長く形成したり、手で握持する竿管の握り部に形成しても良い。
また、リールシートと竿受け部が近いと大きなせん断力が作用するため、傾斜方向繊維層を入れることで変形を少なくすることができる。この場合、リールシート前部より先の20mmからリールシート後部の後20mm程度まで配設すればよい。この傾斜方向繊維層は、せん断方向の剛性を向上するといことから、1ton/mm以上あれば良く、厚さも0.01mm以上あれば良い。また、傾斜方向繊維層は全周に亘って巻装しても良いが、竿管の両側面に集中的に配設することが好ましい。
以上説明した釣竿の各種位置に配設される補強層は、以下のように構成することができる。なお、以下の(A)〜(H)の構成は、補強層が配設される位置、釣竿の特性等に応じて適宜組み合わせて実施される。
(A)補強プリプレグは、強化繊維を傾斜方向に引き揃えたもの、強化繊維を傾斜方向に引き揃えたものを強化繊維が交差状になるように重ね併せたもの、あるいは織布によって構成することができる。また、補強プリプレグは、シート状であっても良いし、テープ状であっても良い。
また、補強プリプレグを有する補強層は、上記した強化繊維を傾斜方向に引き揃えた傾斜方向繊維層が部分的に配設されていれば良いが、より効率良く強度向上でき、竿管の軽量化、比強度の向上を図るということから、傾斜方向繊維層が主体(もちろん、傾斜方向繊維層のみでも良い)に形成されていることが好ましい。また、このような補強層が配設される部分の竿管の本体層についても、上記同様、軸長方繊維層を主体として形成することが好ましい。
(B)補強プリプレグの巻装位置は、本体層に対して内層側と外層側に分けて配設したり、あるいは中層部分のみに配設する等、限定されることはないが、部品取付部に近い部分(例えば外層)に配設するのが好ましい。すなわち、相対的に外層側を多く(厚く)配分したり、外層のみに配設しても良い。このような位置に配設することで、竿管のたわみや変形による取付部品端部への応力集中を、部品に近い位置で(中層への影響を小さくして)傾斜方向への応力分散が図れ、強度の安定向上が図れる。
(C)補強プリプレグの強化繊維は、せん断弾性率やねじり強度が極大となる方向が45°であることから、±45°にするのが最も好ましいが、ねじり強度を効率良く向上でき、竿管の軽量化や比強度の向上が図れる、という点を考慮すると、±45°±15°の範囲であっても良い。もちろん、0°や90°方向に引き揃えられた強化繊維を付加しても良い。
また、傾斜方向繊維層は、強度の安定向上を図ると共に製造し易さを考慮して強化繊維を±45°±15°に引き揃えたものに裏打ちのプリプレグを重ねて形成するのが良い。この場合、裏打ちのプリプレグは、周方向又は軸長方向又は織布とする。また、裏打ちは、傾斜方向繊維のプリプレグより肉厚の薄いプリプレグを重ねるのが良い。この3層からなる傾斜方向繊維層は、何層(プリプレグを何回)巻回しても良いが、1層厚さは0.15mm以下(好ましくは0.1mm以下)にすると良い。
(D)補強プリプレグの肉厚は、補強層の10〜100%、好ましくは25〜100%とし、その位置での本体層の肉厚を考慮した場合、全体肉厚の3〜90%、好ましくは10〜75%にするのが良い。但し、釣糸導入部のような孔が形成される部分については、補強プリプレグの肉厚は、上記範囲よりも若干多めにするのが良い。具体的には、周方向繊維層および軸長方向繊維層がある部分に補強層を配設する場合、軸長方向繊維層を全体の50〜85%、周方向繊維層を全体の3〜15%、傾斜方向繊維層を全体の10〜75%にするのが良い。
(E)補強プリプレグに用いられる強化繊維の弾性率は、強度の向上を図るのであれば、20〜90ton/mmの高弾性率の材料を用いることができ、たわみバランスの向上を図るのであれば、低弾性の材料を用いることができる。なおせん断弾性向上を図るのであれば、1ton/mm以上あれば良く、本体層の軸長方向繊維層の強化繊維よりも高弾性材料を用いることが好ましい。
(F)補強プリプレグに用いられる強化繊維の樹脂含浸量は、剥離破損を防止できるように、本体層の軸長方向繊維層の樹脂含浸量よりも多くする(25〜60wt%)ことが好ましい。
(G)補強プリプレグ(補強層)は、部品取付部(又は孔部)から、肉厚の3倍以上の長さ(直径程度か直径の2倍程度以内の長さ)までの範囲を補強できるような長さであれば良い。
(H)補強プリプレグに用いられる強化繊維は、カーボン、ガラス、アラミド、ボロンなどで構成したり、その他のセラミックスや金属によって構成することができる。あるいは、ポリエーテルイミドやナイロンなどの有機材料で構成することも可能である。
以上(1)〜(9)で例示したように、釣竿の孔形成部(継合部、釣糸導入部等)や、各種部品が取り付けられる部品取付部に、上記した(A)〜(H)のような補強プリプレグを有する補強層を配設することで以下のような効果が得られる。
釣竿用FRP製の竿管は、軸長方向繊維層の割合が多く、通常70%以上(80%以上)である。そのため、強化繊維間の層間剥離が発生したり、竿管の裂けが発生したり、強化繊維と直交する方向の負荷に対して弱い。
しかし、傾斜方向(交差方向)繊維層を有する補強層を配設したことで、竿管本体の破壊の進行方向を異相させることができ、破壊の進行を防止(応力を複数方向に分散又は広い範囲に分散)し、強度の向上が図れる。特に、軸長方向、周方向に加え、傾斜方向の強化繊維を配設することで、3方向へ応力を分散でき、効率良く強度の向上が図れる。
また、傾斜方向繊維層の強化繊維を±45°±15°にすることで、ねじり強度の向上が図れ、かつそのようなプリプレグによる傾斜方向繊維層により、曲げ応力によるたわみ、変形に対するせん断強度の向上が図れる。
また、補強繊維層部分と竿管の本体層との間の剛性差を少なくでき、補強の割りには曲げ応力に対する応力集中を緩和して強度の安定向上が図れる。また、各種の取付部品の端部よりも少し長くなるように、補強層を本体層に形成し、かつ肉厚が取付部品から離れる程薄くなるように形成することで、一層の応力緩和が図れる。
そして、上記したような補強層を配設することで、効率良く強度向上が図れ、比強度の向上や釣竿全体として軽量化が図れる。
なお、本発明は、中通し式に限らず、外ガイド式の釣竿等、各種の釣竿に適用することができ、上記したような補強層が、釣竿の孔形成部や部品取付部のいずれかの部分に配設されていれば良い。
本発明に係る釣竿の一構成例を示す図。 図1に示す釣竿の釣糸導入部の断面図。 図1に示す釣竿のリール取付装置部分の断面図。 リール取付装置の別の構成を示す断面図。 図1に示す釣竿の継合部の断面図。 図1に示す釣竿のトップガイド部分の断面図。 図1に示す釣竿の竿尻部分の断面図。 釣竿に装着される外ガイド部分の断面図。 釣竿に設けられる節部分を示す図。 釣竿に係合する竿受け部分の断面図。
符号の説明
1 釣竿
2a リール固定装置
2b 釣糸導入部
2c 竿尻部品
4a ガイド取付部
20 本体層
26 傾斜方向繊維層(補強層)

Claims (4)

  1. 強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグを巻回して形成された本体層と、孔形成部又は部品取付部とを備えた竿管を有する釣竿において、前記孔形成部又は部品取付部に、強化繊維方向を傾斜方向とした傾斜方向プリプレグを具備する補強層を配設したことを特徴とする釣竿。
  2. 前記本体層は軸長方向繊維層を主体に形成されており、前記補強層は傾斜方向繊維層を主体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
  3. 前記補強層に用いられる傾斜方向プリプレグの強化繊維は、軸長方向に対して±45°±15°に引き揃えられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の釣竿。
  4. 前記傾斜方向繊維層は、前記部品取付部に装着された部品に接触又は近接する位置に配設されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の釣竿。
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