JP2006074250A - 量子暗号通信装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 量子暗号鍵配送における配送距離の長距離化を実現する。
【解決手段】 中継器14と量子相関光子対発生装置13とを用いて、量子暗号鍵配送における配送距離の長距離化を達成し、長距離配送を正しく行なう。中継器14は、2×2光カップラ15と、この光カップラの出力ポートに接続された2つの光子検出器16,17とから構成されている。量子相関光子対発生器13は、光パラメトリック過程によりポンプ光子からシグナル光子とアイドラー光子を発生する装置であり、2次光非線形結晶20に代表される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、量子暗号通信装置に関し、特に従来よりも長い距離離れた送信機と受信機に対して量子暗号鍵を供給することができる量子暗号通信装置に関する。
近年、光子1個レベルの光を用いることにより、物理的に安全性が保証された量子暗号通信の研究が進められている。量子暗号は、離れた地点にいる2つの通信機間で暗号通信を行うための秘密鍵を供給する暗号化方式の1つで、量子鍵配送とも呼ばれている(特許文献1)。量子鍵配送にも各種方式があるが、ここでは、本発明に類似の差動位相シフト量子鍵配送方式について説明する(非特許文献1)。
図3は従来の差動位相シフト量子鍵配送装置の基本構成を示す。送信機1は、0またはπでランダムに位相変調した一定間隔のコヒーレント光パルス列を、パルス当り平均1個光子未満として送出する。この平均光子数1個未満という状態は、通常のレーザ光を大きく減衰させることにより実現される。このようなパルス列を光子検出すると、あるパルスでは光子が検出されるが、あるパルスでは何も検出されない、という検出結果となる。どのパルスで光子が検出されるかはまったくの確率的で、検出するまで不確定である。
送信機1から送出されたパルス列2は伝送路3を経て、受信機4に到達する。受信機4は、受信パルス列を光分岐器(光カップラ)5で2つに分岐し、光遅延回路(光遅延線)6により一方に遅延を加えたのち、2×2の光カップラ(光合波器)7により再び合波する。この合波カップラ7の2つの出力ポートには、それぞれ光子検出器A 8、光子検出器B 9が備えられている。
ここで、分岐・合波回路5〜7で一方に与える遅延時間は、入力されるパルス列の時間間隔に等しいものとする。このようにすると、合波カップラ7では、前後のパルスが重なり合って合波される。入力パルス列は0またはπで位相変調されている。従って、分岐・合波経路の伝播位相が適当であれば、重なり合うパルスの位相差は0またはπとなっている。干渉の結果、位相差が0ならば、検出器A 8が、位相差πなら検出器B 9が、光子を検出することになる。
以上の構成を用いて、送信機1と受信機4は以下の手順により秘密鍵を得ることができる。まず、受信機4は、上記の受信構成により光子を検出する。この時、検出した時刻と検出器(8または9のいずれか)とを記録する。必要な数だけ光子が送受信された後、受信機4は送信機1に光子検出時刻を知らせる。送信機1は、知らされた検出時刻と自分の位相変調データから、受信機4がどちらの検出器で光子を検出したかを知ることができる。
そこで、検出器A 8をビット「0」、検出器B 9をビット「1」と予め取り決めておけば、送信機1と受信機4は同じビット列を得ることができる。この手順において、受信機1から送信機4へ知らされるのは光子検出時刻のみで、ビット情報は外部には出されない。したがって、これからビット情報が他の受信機(図示しない)を通じて他人に盗聴されることはない。また、送られているのはパルスあたり平均1光子未満の光なので、他の受信機が信号の一部を分岐してビット情報を得ることはできない。なぜなら、光子が2分割されることはないので、他の受信機が分岐により光子検出すると、その光子は受信機4には届かず、送信機1が送信したビット列と受信機4が受信したビット列とが一致しないからである。このように、以上の構成と手順とにより送受信機1,4が得るビット列は、外部から盗聴されることのないビット列となっている。そこで、このビット列を暗号データを生成・再生するための秘密鍵としている。
特開2004−187268号公報 K. Inoue, E. Waks, and Y. Yamamoto, "Differential-phase-shift quantum key distribution using coherent light", Physical Review A, vol. 68, paper number 022317 (2003).
上記のような従来の差動位相シフト量子鍵配送方式では、分岐による盗聴を避けるため、光子1個レベルの光パルスを送受信している。ところで、実際の伝送路3には損失があり、このため、光子の一部は伝送路3で消失して受信機4には届かない。伝送路3が長いと損失も大きく、受信機4に光子が届く確率は小さくなる。一方、一般に光子検出器9,9は、実際には光子が入力されていないのにあたかも光子を検出したかのような動作をすることがある。光子検出器9,9の誤動作は、入力光子がある程度多ければ無視できるが、入力光子数が少ないと、相対的に誤動作による誤信号が多くなり、正しい光子検出ができなくなる。すなわち、伝送距離が長いと、装置が正しく動作しなくなる。つまり、伝送路の減衰により伝送可能距離が制限されることになる。
通常の光通信であれば、光増幅器または光電気変換を介した中継器を用いて弱まった信号を再び強めることは可能であるが、量子鍵配送の場合には、光子1個レベルの光信号であるため、光直接増幅しようとすると、本来の光信号が光増幅器の自然放出光に埋もれてしまう。また、光電気変換を介して信号再生しようとしても、量子鍵配送で伝送されているのは、どのパルスで光子が検出されるかは確率的であるような光信号であり、このような光パルス列を光電気変換により再生することは不可能である。
以上のように、従来技術による量子鍵配送には、通常の信号中継手段が適用できず、伝送路損失のために伝送可能距離が制限されるという課題があった。
本発明は、上記の点に鑑みて成されたもので、その目的は、量子鍵配送可能とされた従来の限界距離よりも長い距離離れた送信機と受信機に対して量子暗号鍵を供給することができる量子暗号通信装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、送信機と受信機間において送受信されるデータを暗号化し、復号化するための暗号鍵を供給する量子暗号通信装置において、一定間隔の光パルス列を出力する送信機と、量子相関のあるシグナル光子とアイドラー光子から成る光子対を前記光パルス列と同じ時間間隔で出力する量子相関光子対発生器と、前記送信機からの光と前記シグナル光子とが入力される中継機と、前記アイドラー光子が入力される受信機とを備え、前記中継機は、2×2の入出力端子を有し、同じ時刻に、前記送信機からの光パルス列をその第1の入力端子に入力し、前記シグナル光子の光子列をその第2の入力端子に入力する光カップラと、前記光カップラの第1の出力端子に接続された第1の光子検出器と、前記光カップラの第2の出力端子に接続された第2の光子検出器とを有し、前記中継機は、前記第1と第2の光子検出器の少なくともいずれかが光子を連続して検出した場合に、その時刻を前記送信機と前記受信機の両方に知らせ、ひとつの光子検出器が連続して光子検出したか、2つの光子検出器が交互に光子検出したかを前記送信機に知らせることを特徴とする。
ここで、前記受信機は、入力された前記アイドラー光子の光子列を2経路に分岐する分岐手段と、前記分岐手段により分岐された光子列の一方を分岐された光子列の他方に対して1パルス分遅延する遅延手段と、2×2の入出力端子を有し、前記分岐手段で分岐された光子列の他方をその第1の入力端子に入力し、前記遅延手段で遅延された光子列をその第2の入力端子に入力する第2の光カップラと、前記第2の光カップラの第1の出力端子に接続されて光子列の検出を行なう第3の光子検出器と、前記第2の光カップラの第2の出力端子に接続され光子列の検出を行なう第4の光子検出器とを有し、前記中継器から通知された検出時刻に対応する時刻に、前記第3の光検出器が光子検出していればビット「0」、前記第4の光検出器が光子検出していればビット「1」としてビットを生成し、該ビットを生成した光子の検出時刻を前記送信機に知らせることを特徴とすることができる。
また、前記送信機は、一定間隔のコヒーレントな光パルス列を発生する手段と、前記光パルスの位相を0またはπで変調する手段と、変調された前記光パルスを1パルス当り平均1光子未満で前記中継機への伝送路に送出する手段とを備え、位相変調データを記録し、前記中継器からの検出情報と、前記受信機からの時刻情報と、及び自分の位相変調データとから、前記受信機が生成したビット情報を感知して、該ビット情報を自身のビット情報とすることを特徴とすることができる。
また、前記量子相関光子対発生器は、ポンプ光子を発生する手段を含み、前記光子対として光パラメトリック過程により該ポンプ光子からシグナル光子とアイドラー光子を発生することを特徴とすることができる。
一般に、信号伝送装置の伝送距離は、送信パワーと最小受信感度の差で決まる。本発明で用いる量子相関光子対発生器の光子発生効率が送信機のそれと同じであると想定すると、その量子相関光子対発生器から受信機までの伝送距離は、中継ノードが無い場合の送受信機間の距離と同じにできる。本発明ではこれに加えて、本発明による中継器(中継ノード)を採用したので、量子相関光子発生器からその中継器までの距離に、送信機から中継器までの距離が足されたものが、送信機から受信機までの実効的な伝送距離となる。したがって、本発明を適用すると、送受信機間の距離を従来よりも大幅に長くすることができる。
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
本発明は、以下に詳述するように、従来技術で述べた差動位相シフト量子鍵配送を基本としつつ、送信機と受信機の間に、量子相関光子対発生器と中継ノードとを挿入することにより、送受信機間の長距離化を図っている。
図1は、本発明の一実施の形態における量子暗号通信装置の特に量子相関光子対発生器と中継ノードに関わる部分の構成を示す。送受信機間1,4の伝送路中に、量子相関光子対発生器13と、中継ノード(中継器)14とが配置されている。中継ノード14は合波手段としての2×2の光カップラ15と、そのカップラの出力ポートにそれぞれ接続した2つの光子検出器16、17と、2つの光子検出器16、17に接続して送信機1間と受信機4間で情報交換を行なう手段としての情報交換装置18とを備えている。情報交換装置18はCPU等から構成される。図1では説明のため、量子相関光子対発生器13と中継ノード14は近い位置に配置されているように描かれているが、実際には従来よりも大幅に長い伝送路を介して接続されているものとする。
送信機1は、コヒーレントパルス光源21からの光をパルス毎に|0,π|で位相変調し、平均1光子/パルス未満に減衰させて、伝送路へ送出する。さらに詳細には、送信機1は、一定間隔のコヒーレントな光パルス列を発生するコヒーレントパルス光源21と、その光パルスの位相を0またはπで変調する位相変調回路22と、変調された光パルスを1パルス当り平均1光子未満で中継機14へ送出する減衰回路23と、位相変調回路22に接続して中継ノード1間と受信機4間で情報交換を行なう手段としての情報交換装置24とを備えている。情報交換装置24はCPU等から構成される。
受信機4は、入力光パルス列を2分岐し、一方に1パルス分の遅延を与えた後に再び合波する。合波カップラ7の2つの出力端にはそれぞれ光子検出器8,9が備えられている。さらに詳細には、受信機4は、入力された後述のアイドラー光子の光子列を2経路に分岐する光分岐器(光カップラ)5と、その分岐された光子列の一方を分岐された光子列の他方に対して1パルス分遅延する光遅延回路(光遅延線)6と、2×2の入出力端子を有し、分岐された光子列の他方をその第1の入力端子に入力し、遅延された光子列をその第2の入力端子に入力する2×2の光カップラ(光合波)7と、その光カップラの第1の出力端子に接続されて光子列の検出を行なう光子検出器A 8と、その光カップラの第2の出力端子に接続され光子列の検出を行なう光子検出器B 9と、2つの光子検出器8,9に接続して送信機1間と中継ノード14間で情報交換を行なう手段としての情報交換装置25とを備えている。情報交換装置25はCPU等から構成される。
中継ノード14の情報交換装置(CPU)18は、光子を検出した時刻といずれかの光子検出器が検出したかを記録し、後述のように、その光子検出時刻を送信機1と受信機4の両方に知らせ、ひとつの光子検出器が連続して光子検出したか、2つの光子検出器が交互に光子検出したかを送信機1に知らせる。送信機1の情報交換装置(CPU)24は、位相変調データを記録し、後述のように、中継器14からの検出情報と、受信機4からの時刻情報と、及び自分の位相変調データとから、受信機4が生成したビット情報を感知して、そのビット情報を自身のビット情報とする動作をする。受信機4の情報交換装置(CPU)25は、光子検出時刻および検出した検出器を記録し、後述のように、中継器14から通知された検出時刻に対応する時刻に、光検出器A 8が光子検出していればビット「0」、光検出器B 9が光子検出していればビット「1」としてビットを生成し、そのビットを生成した光子の検出時刻を送信機1に知らせる動作をする。
量子相関光子対発生器13は、ポンプ光源19と光非線形媒質20とを有し、相関を持った2つの光子を必ず同時に出力する装置である。具体的には、量子相関光子対発生器13は、例えば、光パラメトリック過程(optical parametric process)を利用して2つの光子、すなわち後述のシグナル光子とアイドラー光子を出力する。ポンプ光源19からの光を光非線形媒質20に入力し、光非線形媒質20から出力されるシグナル光子とアイドラー光子を、前者を中継ノード14へ送信し、後者を受信機4に送信する。
上記の光パラメトリック過程とは光非線形現象の一種で、例えば、光周波数fのポンプ光と光周波数fのシグナル光を2次の光非線形結晶20に入力すると、非線形分極P=c から光周波数f=f−fの周波数光が発生する(c:非線形感受率、E:ポンプ光電場、E:シグナル光電場、*は複素共役)。慣例的に、その新たに発生する光はアイドラー光(idler light)と呼ばれる。量子学的に言うと、これは、ポンプ光子とシグナル光子からアイドラー光子が発生する現象で、エネルギー保存則より3つの光子間には図2のような関係がある。この関係は、1つのポンプ光子(f)が消滅してシグナル光子(f)とアイドラー光子(f)が1つずつ生成される過程、とみることができる。シグナル光入力はこの過程を促進する働きをするが、ポンプ光が充分強ければ、シグナル光入力無しでも自発的にこの過程を起こすことができる。
すなわち、ポンプ光のみの入力から、シグナル光子とアイドラー光子が発生する。この際、エネルギー保存を満たすために、シグナル光子とアイドラー光子は必ず対で発生する。このような相関を持った光子のペアーを量子相関光子対という。
図1の量子相関光子対発生器13は、このような相関のある光子のペアーを発生する装置である。なお、光パラメトリック過程を利用して相関光子対を発生させる場合、相互作用するポンプ光、シグナル光、アイドラー光の位相には、後述のようなある関係が成り立っている。上記のように、古典的には、アイドラー光はP=c という非線形分極から発生する。この表式の位相をみると、φ=φ−φ(φ:アイドラー分極波の位相=アイドラー光位相、φ:ポンプ光位相、φ:シグナル光位相)という関係にあることがわかる。光パラメトリック過程により発生する量子相関光子対にも、この間系がそのまま成り立っている。
図1の構成において、量子相関光子対発生器13からは上記のような量子相関光子対が発せられ、シグナル光子は中継ノード(中継器)14へ、アイドラー光子は受信機4へ、と送出される。ここで、送出される光子は、送信機からの送信パルス列と同じ時間間隔のパルス列であるとする。ここで、送出されるシグナル光子とアイドラー光子との光子対は1パルス当り1ペア以下であるとする。
中継ノード14には、送信機1からの送信信号と量子相関光子対発生器13からのシグナル光子が入力される。入力された送信信号とシグナル光子は、2×2の光カップラ15により合波される。光カップラ15の2つの出力ポートには、光子検出器16,17がそれぞれ配置されている。
以上の構成により、送受信機1,4に秘密鍵を供給することができる。その原理及び手順を以下に式を用いて説明する。量子力学的表示を用いると、中継ノード14へ入力される送信機1からの送信信号の状態|Ψ>は、次式(1)のように表される。
Figure 2006074250
ここで、|t>は時刻tに1光子が存在する状態、a exp(iθ)は状態|t>の確率振幅(複素数)で、aが振幅部(実数)、θが位相を表す。Nはパルス数である。添え字のtは受信機4へ転送したいターゲット状態の意味で用いている。以後、送信機1から送られてきた状態をターゲット状態と呼ぶ。一方、量子相関光子対発生器13から発せられる状態|Ψ>は、次式(2)のように表される。
Figure 2006074250
ここで、添え字s、iはそれぞれ、シグナル光子、アイドラー光子を表す。量子相関光子対は必ずペアーで発生するので、ペアーでひとつの量子状態として|t|tという形で表される。a exp(iφ)は状態|t|tの確率振幅(複素数)で、aが振幅部(実数)、φが位相を表す。これが、周期的なパルスとして出力されるので、相関光子対発生器13からの出力状態は各ペアーの和として表される。
本発明では、ターゲット状態と量子相関光子対状態とを相互作用させることにより、伝送距離の拡大を図っている。このような状況を記述するために、ターゲット状態と相関光子対状態をまとめてひとつの状態とみなし、全体状態|Ψ>を次式(3)のように書き表す。
Figure 2006074250
ここで、中継ノード15において、時刻t及び時刻tj+1で光子が検出される場合に着目する。このような光子検出事象に関係する状態を書き出すと、次式(4)のようになる。
Figure 2006074250
上式(4)は、上式(1)、(2)のt及びtj+1に関する項を上式(3)に代入したもので、さらに、Δ=θj+1−θ、δ=φj+1−φ、という置き換えを行っている。ここで、そのφ及びδについて考える。φはシグナル光子状態とアイドラー光子状態を掛け合わせた状態の位相である(式(2))。したがって、φ=φ+φである。ところで、前述のように、量子相関光子対発生器13から発せられる光子対には、φ=φ−φという関係が成り立っている。したがって、φ=φである。ここで、量子相関光子対発生器13内のポンプ光のコヒーレンス時間は、パルス列の時間間隔よりも充分長いものとする。すなわち、隣り合う光子対を発生するポンプ光の位相は一定であるものとする。このように設定すると、φ(t)=φ(tj+1)、よってδ=0となる。これを代入すると、式(4)は次式(5)のようになる。
Figure 2006074250
上式(5)は、ターゲット状態とシグナル光子が中継ノード14内の光カップラ15へ入力される前の段階における全体状態を表わしている。光カップラ15において、ターゲット状態とシグナル光子は、それぞれ2つの出力ポートに分岐される。その分岐による状態変化は、次式(6a),(6b)のように表される。
Figure 2006074250
ここで、|d,t>は1光子が光子検出器16への出力ポートへ時刻tに出力される状態を表わし、|d,t>は1光子が光子検出器17への出力ポートへ時刻tに出力される状態を表す。上式(6a),(6b)を上式(5)に代入し、さらに光子が時刻t及びtj+1で連続して検出される状態を取り出すと、次式(7)となる。
Figure 2006074250
ここで、光子検出に際して、ターゲット光子とシグナル光子は区別がつかないものと仮定する。そうすると、ターゲット光子状態とシグナル光子状態を区別する添え字t、sがなくなり、上式(7)は次式(8)のように書き直される。
Figure 2006074250
上式(8)は、光子検出器16が連続して光子を検出する状態(|d,t>|d,tj+1>がかかっている項)、光子検出器17が連続して光子を検出する状態(|d,t>|d,tj+1>がかかっている項)、光子検出器16と17とが交互に光子を検出する状態(|d,t>|d,tj+1>または|d,t>|d,tj+1>がかかっている項)、の足し合わせとなっている。
次に、その各々の状態について考えてみる。上式(8)から、ひとつの光子検出器が連続して光子を検出する状態を抜き出すと、次式(9)となる。
Figure 2006074250
従来技術の項で述べたように、差動位相シフト量子鍵配送においては、送信光パルスは0またはπで位相変調されている。したがって、Δ=0または±π、である。これを上式(9)に代入すると、各場合について次式(10a),(10b)が得られる。
Figure 2006074250
ここで、アイドラー光子の状態に着目する。上式(10a)には、(|t+|tj+1)という項が共通項として掛け合わさっている。これは、ひとつの光子検出器が時刻t、tj+1で連続して光子を検出する場合には、時刻t、tj+1のアイドラー光子の確率振幅は必ず同位相となることを表している。一方、上式(10b)には、(|t−|tj+1)という項が共通項として掛け合わさっている。これは、ひとつの光子検出器が時刻t、tj+1で連続して光子を検出する場合には、時刻t、tj+1のアイドラー光子の確率振幅は必ず逆位相となることを表している。
同様に、2つの光子検出器16,17が交互に光子を検出する状態については、次式(11a),(11b)となる。
Figure 2006074250
上式(11a)は、Δ=0で、かつ2つの光子検出器16,17が交互に光子を検出する場合には、時刻t、tj+1のアイドラー光子の確率振幅は必ず逆位相となることを表している。上式(11b)は、Δ=±πで、かつ2つの光子検出器16,17が交互に光子を検出する場合には、時刻t、tj+1のアイドラー光子の確率振幅は必ず同位相となることを表している。
受信機4が、従来技術の項で述べた構成(図3)と同様な構成で光子を検出すると、2連続パルスが同位相ならば光子検出器8が光子を検出し、2連続パルスが逆位相ならば光子検出器9が光子を検出する。この受信動作と上記の場合分けを考え合わせると、受信機4の光子検出の態様は次のようになる。
(i)中継ノード14がひとつの光子検出器(16または17)で連続して光子を検出し、かつΔ=0ならば、受信機4は光子検出器A 8で光子を検出、
(ii)中継ノード14がひとつの光子検出器で連続して光子を検出し、かつΔ=±πならば、受信機4は光子検出器B 9で光子を検出、
(iii)中継ノード14が2つの光子検出器16,17で交互に光子を検出し、かつΔ=0ならば、受信機4は光子検出器B 9で光子を検出、
(iv)中継ノード14が2つの光子検出器16,17で交互に光子を検出し、かつΔ=±πならば、受信機4は光子検出器A 8で光子を検出、
することになる。
以上の動作特性を利用すると、以下の手順で、送信機1と受信機4は暗号鍵を得ることができる。
送信機1と量子相関光子発生器13はターゲットパルス列と量子相関光子対パルス列をそれぞれ送信し、中継ノード14と受信機4は図3及び図1の受信構成で光子検出をする。
中継ノード14は、光子検出器(16,17)が光子を連続して検出した場合に、その時刻を送信機1と受信機4に知らせる。また中継ノード14は、その場合に、ひとつの光子検出器が連続して光子検出したか、2つの光子検出器が交互に光子検出したか、を送信機1に知らせる。
受信機4は、中継ノード14から通知された検出時刻に対応する時刻に、検出器A 8が光子検出していればビット「0」、検出器B 9が光子検出していればビット「1」、とする。さらに受信機4は、ビットを生成した光子の検出時刻を送信機1に知らせる。
送信機1は、中継ノード14からの検出情報と、受信機4からの時刻情報と、及び自分の変調データとから、受信機4が生成したビット情報を知ることができる。そこで、それを自身のビット情報とする。
以上の手順により、送受信機1,4は同じビット列を得る。この際、ビット情報そのものは外部には出されていない。したがって、このビット列を秘密鍵とすることができる。
(他の実施の形態)
上記では、本発明の好適な実施形態を例示して説明したが、本発明の実施形態は上記例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内であれば、その構成要素の置換、変更、追加、個数の増減の設計変更等の各種変形は、全て本発明の実施形態に含まれる。
本発明の一実施形態における量子暗号通信装置の主要部の構成を示すブロック図である。 2次の光パラメトリック過程の原理を説明する概念図である。 従来の差動位相シフト量子鍵配送方式による量子暗号装置の基本構成を示すブロック図である。
符号の説明
1 送信機
2 パルス列
3 伝送路
4 受信機
5 光分岐器(光カップラ)
6 光遅延回路(光遅延線)
7 光合波器(2×2の光カップラ)
8 光子検出器A
9 光子検出器B
13 量子相関光子対発生器
14 中継ノード(中継器)
15 光カップラC
16 光子検出器1
17 光子検出器2
18,24,25 情報交換装置(CPU)
19 ポンプ光源
20 光非線形媒質
21 コヒーレントパルス光源
22 位相変調回路
23 減衰回路

Claims (4)

  1. 送信機と受信機間において送受信されるデータを暗号化し、復号化するための暗号鍵を供給する量子暗号通信装置において、
    一定間隔の光パルス列を出力する送信機と、
    量子相関のあるシグナル光子とアイドラー光子から成る光子対を前記光パルス列と同じ時間間隔で出力する量子相関光子対発生器と、
    前記送信機からの光と前記シグナル光子とが入力される中継機と、
    前記アイドラー光子が入力される受信機とを備え、
    前記中継機は、
    2×2の入出力端子を有し、同じ時刻に、前記送信機からの光パルス列をその第1の入力端子に入力し、前記シグナル光子の光子列をその第2の入力端子に入力する光カップラと、
    前記光カップラの第1の出力端子に接続された第1の光子検出器と、
    前記光カップラの第2の出力端子に接続された第2の光子検出器とを有し、
    前記中継機は、前記第1と第2の光子検出器の少なくともいずれかが光子を連続して検出した場合に、その時刻を前記送信機と前記受信機の両方に知らせ、ひとつの光子検出器が連続して光子検出したか、2つの光子検出器が交互に光子検出したかを前記送信機に知らせることを特徴とする量子暗号通信装置。
  2. 前記受信機は、
    入力された前記アイドラー光子の光子列を2経路に分岐する分岐手段と、
    前記分岐手段により分岐された光子列の一方を分岐された光子列の他方に対して1パルス分遅延する遅延手段と、
    2×2の入出力端子を有し、前記分岐手段で分岐された光子列の他方をその第1の入力端子に入力し、前記遅延手段で遅延された光子列をその第2の入力端子に入力する第2の光カップラと、
    前記第2の光カップラの第1の出力端子に接続されて光子列の検出を行なう第3の光子検出器と、
    前記第2の光カップラの第2の出力端子に接続され光子列の検出を行なう第4の光子検出器とを有し、
    前記中継器から通知された検出時刻に対応する時刻に、前記第3の光検出器が光子検出していればビット「0」、前記第4の光検出器が光子検出していればビット「1」としてビットを生成し、該ビットを生成した光子の検出時刻を前記送信機に知らせることを特徴とする請求項1に記載の量子暗号通信装置。
  3. 前記送信機は、
    一定間隔のコヒーレントな光パルス列を発生する手段と、
    前記光パルスの位相を0またはπで変調する手段と、
    変調された前記光パルスを1パルス当り平均1光子未満で前記中継機への伝送路に送出する手段と
    を備え、
    位相変調データを記録し、前記中継器からの検出情報と、前記受信機からの時刻情報と、及び自分の位相変調データとから、前記受信機が生成したビット情報を感知して、該ビット情報を自身のビット情報とすることを特徴とする請求項1または2に記載の量子暗号通信装置。
  4. 前記量子相関光子対発生器は、ポンプ光子を発生する手段を含み、前記光子対として光パラメトリック過程により該ポンプ光子からシグナル光子とアイドラー光子を発生することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の量子暗号通信装置。
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JP2011510582A (ja) * 2008-01-25 2011-03-31 キネテイツク・リミテツド 量子暗号装置

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