JP2006073484A - 有機el素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 可視光の吸収がないまたは可視光の吸収が少ない材料を用いて、有機ELユニットを構成する層へダメージを与えることなく配設することができる、p−n接合を形成する二層構造の電荷発生層を有する多段構成の有機EL素子の提供。
【解決手段】 陽極と陰極との間に、少なくとも正孔輸送層、有機発光層および電子輸送層を含む少なくとも2つの有機ELユニットと、フタロシアニン化合物を含むn型電荷発生層およびフタロシアニン化合物を含むp型電荷発生層の積層体である電荷発生複合層とを含む有機EL素子であって、電荷発生複合層は有機ELユニットの間に配設されていることを特徴とする有機EL素子。
【選択図】 図1

Description

本発明は、高精細で視認性に優れ、携帯端末機または産業用計測器の表示など広範囲な応用可能性を有する有機エレクトロルミネセンス(以下有機ELという)ディスプレイに用いることができる多色有機EL素子の構成に関する。
表示装置に適用される発光素子の一例として、有機化合物の薄膜積層構造を有する有機EL素子が知られている。有機EL素子は、薄膜の自発光型素子であり、低駆動電圧、高解像度、高視野角といった優れた特徴を有することから、それらの実用化に向けて様々な検討がなされている。
有機EL素子は、陽極と陰極の間に少なくとも有機発光層を備えた構造を有している。有機発光層は、陽極および陰極に電圧が印加されることによって生じる正孔および電子が再結合することで発光する部位である。有機EL素子は、必要に応じて、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層および/または電子注入層を介在させた構造を有する。より具体的には、例えば、以下に示すような構造が挙げられる。
(1)有機発光層
(2)正孔注入層/有機発光層
(3)有機発光層/電子輸送層
(4)正孔注入層/有機発光層/電子輸送層
(5)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層
(6)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層
なお、上述の(1)〜(6)の構造を有する有機EL素子において、有機発光層または正孔注入層に陽極が接続され、有機発光層、電子輸送層または電子注入層に陰極が接続される。従来型の有機EL素子の構造の一例を図3に示す。
有機EL素子においては、有機発光層中に添加する色素の種類によって、その発光色を青色、緑色または赤色にすることができることが知られている。有機EL素子を用いてフルカラーディスプレイを実現するための1つの手段として、画素(ピクセル)として3原色のEL素子を副画素(サブピクセル)として配列することが検討されている。しかしながら、各色のEL素子の発光特性はそれぞれ異なるため、サブピクセルの形成およびその駆動方法は複雑となり、コストアップの要因となっている。そこで、有機EL素子を白色発光させ、その白色光からカラーフィルタを用いて3原色を得ることが試みられている。そのため、このようなカラーフィルタ方式に用いることができる多色発光の有機EL素子の実現が望まれている。
本明細書における「多色発光有機EL素子」とは、2つ以上の異なる波長域の光を同時に発光する有機EL素子を意味する。多色発光有機EL素子において、3原色を発光するか、または補色関係にある2色を発光することによって、白色光を放射する白色発光有機EL素子を実現することができる。このため、発光層材料および発光層に添加する色素の種類および濃度について、精力的な研究が進められている。一方、異なる色の光を発光する有機ELユニットを2段または3段積層する技術についても検討がなされてきている。たとえば、絶縁性透明基板上に、電荷注入層/発光層の結合体を電極を介して多段に積層し、同一極性の電極は絶縁性透明基板上で相互に電気的に接続されることを特徴とする有機EL素子が提案されている(特許文献1参照)。また、それぞれ異なる色を発光する複数の有機ELユニットを垂直方向に積層し、有機ELユニットのそれぞれの間に内部電極を配設して、個々の有機ELユニットを制御する方法が提案されている(特許文献2参照)。これらの方法は、ともにそれぞれの有機ELユニット間に介在させる電極への配線方法が複雑になり、製造工程が複雑になるという問題点があった。
さらに、上記の方法は垂直方向に積層された複数の有機ELユニットを個別に制御して複数の異なる色の光を放射するためのものであるが、複数のユニットの個別制御をせず白色発光を行う有機EL素子についても検討されてきている。たとえば、異なる色を発光する複数の有機ELユニットが導電層を介して積層されるタンデム構造体が提案されている(特許文献3参照)。
特許第3189438号公報 米国特許第5,703,436号明細書 米国特許第6,337,492号明細書 特許第2949230号公報
前述のタンデム構造体において、複数の有機ELユニット間に配設される導電層は、電荷発生層の機能を有するものであり、単層構造、およびp−n接合を形成する二層構造であることが開示されている。この二層構造における第1層の材料として、ITOのような透明導電性酸化物および金属が開示されており、第2層の材料としてITO、金属、ダイアモンド状炭素(DLC)、銅フタロシアニン、アルミニウムキレート化合物(Alqなど)が開示されている。しかしながら、ITOのような透明導電性酸化物および金属を有機ELユニット間に配設することは、有機ELユニットを構成する層へのダメージの問題がある。また、Alqはp型材料として機能することができない。したがって銅フタロシアニンが有望であるが、銅フタロシアニンは可視光を吸収して光学的に不利になるという問題点が存在する。
したがって、可視光の吸収がないまたは可視光の吸収が少ない材料を用いて、有機ELユニットを構成する層へダメージを与えることなく配設することができる、p−n接合を形成する二層構造の電荷発生層に対する要求が存在する。
本発明の有機EL素子は、陽極と陰極との間に、少なくとも正孔輸送層、有機発光層および電子輸送層を含む少なくとも2つの有機ELユニットと、フタロシアニン化合物を含むn型電荷発生層およびフタロシアニン化合物を含むp型電荷発生層の積層体である電荷発生複合層とを含む有機EL素子であって、前記電荷発生複合層は前記有機ELユニットの間に配設されていることを特徴とする。n型電荷発生層はアンチモンフタロシアニン化合物を含むことが望ましく、p型電荷発生層はチタニルフタロシアニンを含むことが望ましい。ここで、前述の少なくとも2つの有機ELユニットが、それぞれ異なる波長域の光を発光してもよい。この場合には、少なくとも2つの有機ELユニットの中で最も光の取出側に近い有機ELユニットが、赤色光を発光することが望ましい。本発明の有機EL素子は、白色光を放射することが可能である。
以上のような構成を採って、アンチモンフタロシアニン化合物を含むn型電荷発生層およびチタニルフタロシアニンを含むp型電荷発生層の積層体である電荷発生複合層を、複数の有機ELユニットの間に配置することによって、多段配列された有機ELユニットからの発光を効率よく得ることができる。この構成は、特に3原色を発光する白色発光有機EL素子、または補色関係にある2色を発光する白色発光有機EL素子を実現するのに有効である。3原色を発光する白色発光有機EL素子は、カラーフィルタ方式によるフルカラーディスプレイを製造するための光源部として特に有用である。
本発明の有機EL素子は、陽極、少なくとも2つの有機ELユニット、1つまたは複数の電荷発生複合層、および陰極を含み、前記複数の有機ELユニットは、正孔輸送層、有機発光層および電子輸送層を少なくとも含み、前記1つまたは複数の電荷発生複合層のそれぞれが前記有機ELユニットの間に配置されていることを特徴とする。
本発明の第1の実施態様の有機EL素子の模式断面図を図1に示す。図1の構成においては、第1電極20が陽極であり、第2電極40が陰極であり、第1有機ELユニット30aと第2有機ELユニット30bとの間に電荷発生複合層50が積層されている。
基板10として、ガラスやプラスチックなどからなる絶縁性基板、または、半導電性や導電性基板に絶縁性の薄膜を形成した基板を用いることができる。あるいはまた、ポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂またはポリイミド樹脂などから形成される可撓性フィルムを、基板10として用いてもよい。基板10側から発光を取り出すボトムエミッション方式を採用する場合、基板10は可視光透過率に優れていることが好ましい。この目的のためには、ガラス基板、各種プラスチックからなる基板、または可撓性フィルムを用いることが望ましい。また、後述するようなアクティブマトリクス駆動を行う場合には、基板10上にTFTなどのスイッチング素子を設けてもよい。
第1電極20は、陽極または陰極のいずれであってもよい。図1に示した構成では第1電極20は陽極である。ボトムエミッション方式を採る場合には、第1電極20に可視光透過性を有することが要求されるので、SnO、In、ITO、IZO、ZnO:Alなどの透明導電性金属酸化物が用いられる。なお、本発明において「可視光透過性を有する」とは、波長400〜800nmの光に対して50%以上の透過率を有することを意味する。より好ましくは波長400〜800nmの光に対して85%以上の透過率を有することが望ましい。第1電極20を陰極として用いる場合には、電子の注入効率を向上させるために、有機ELユニットに後述する電子注入層を設けて第1電極20に接触させることが好ましい。
基板10の反対側から発光を取り出すトップエミッション方式を採用する場合、第1電極を、高反射率の金属(Al,Ag,Mo,Wなどの金属またはそれらの合金、NiP、NiB、CrP、CrBなどのアモルファス金属または合金、あるいはNiAlなどの微結晶性合金)を用いて形成して、有機ELユニット30のそれぞれにて発光される光を反射させることが望ましい。トップエミッション方式を採用し、かつ第1電極20を陽極として使用する場合には、正孔の注入効率を向上させるために、高反射率の金属の上に、仕事関数が大きなSnO、In、ITO、IZO、ZnO:Alなどの透明導電性金属酸化物を積層した複層構造とすることが望ましい。この場合、高反射率の金属は、透明導電性金属酸化物より抵抗率が低いので補助電極としても機能する。第1電極20を陰極として用いる場合には、電子の注入効率を向上させるために、有機ELユニットに後述する電子注入層を設けて第1電極20に接触させることが好ましい。あるいはまた、Li、Na、K、またはCsなどのアルカリ金属、Ba、Ca、Srなどのアルカリ土類金属またはそれらを含む合金、あるいは希土類金属を用いて陰極として用いる第1電極20を形成してもよい。
第2電極40は、陽極または陰極のいずれであってもよい。図1に示した構成では第2電極40は陰極である。ボトムエミッション方式を採用する場合、第2電極40を高反射率の金属を用いて形成して、有機ELユニット30のそれぞれにて発光される光を基板10の方向へ反射させることが望ましい。第2電極40を陰極として用いる場合には、電子の注入効率を向上させるために、有機ELユニットに後述する電子注入層を設けて第2電極40に接触させることが好ましい。あるいはまた、Li、Na、K、またはCsなどのアルカリ金属、Ba、Ca、Srなどのアルカリ土類金属またはそれらを含む合金、あるいは希土類金属を用いて陰極として用いる第2電極40を形成してもよい。
第2電極40を陽極として用いる場合には、第2電極40を前述の透明導電性金属酸化物と高反射率の金属との複層構造とし、透明導電性金属酸化物を有機ELユニット30と接触させて、正孔の注入効率を向上させることが望ましい。
一方、トップエミッション方式を採用する場合には、第2電極40を、可視光透過性を有する透明導電性金属酸化物から形成することが望ましい。トップエミッション方式を採用し、かつ第2電極40を陰極として用いる場合には、電子の注入効率を向上させるために、有機ELユニットに後述する電子注入層を設けて第2電極40に接触させることが好ましい。
第1電極20および第2電極40は、蒸着、スパッタなどの当該技術において知られている任意の方法で形成することができる。
本発明において、第1電極20および第2電極40のそれぞれを複数のストライプ形状部分電極から形成して、パッシブマトリクス駆動を行うようにしてもよい。この場合、第1電極20のストライプ形状部分電極の延びる方向は、第2電極40のストライプ形状部分電極の延びる方向と交差し、好ましくは直交する。あるいはまた、前述のように基板10表面に複数のスイッチング素子(TFTなど)を設け、複数のスイッチング素子に1対1で対応する複数の部分電極から第1電極20を構成して、アクティブマトリクス駆動を行うようにしてもよい。この場合には第2電極40は一体型の電極として形成される。
有機ELユニット30のそれぞれ(図1における第1有機ELユニット30aおよび第2有機ELユニット30b)は、少なくとも、正孔輸送層31、有機発光層32および電子輸送層33を含み、必要に応じて、正孔注入層および/または電子注入層をさらに含んでもよい。図1においては、第1電極20を陽極、第2電極40を陰極とする構成が例示されており、第1有機ELユニット30aおよび第2有機ELユニット30bともに、正孔輸送層(31a,31b)/有機発光層(32a,32b)/電子輸送層(33a,33b)の層構成を有する。第1電極20を陰極、第2電極40を陽極とする構成を採用する場合、有機ELユニット30の各構成層の積層順序が逆になることは、当業者であれば容易に理解するであろう。有機ELユニットの各構成層の形成には、当該技術で知られている任意の方法を用いることができるが、通常は真空蒸着法が用いられる。
正孔輸送層32は、トリアリールアミン部分構造、カルバゾール部分構造、オキサジアゾール部分構造を有する材料(たとえばTPD、α−NPD、PBD、m−MTDATAなど)を用いて形成することができる。
有機発光層32の材料は、所望する色調に応じて選択することが可能であり、例えば青色から青緑色の発光を得るためには、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系などの蛍光増白剤、スチリルベンゼン系化合物、芳香族ジメチリデイン系化合物などを使用することが可能である。あるいはまた、前述の材料をホスト材料として用い、これにドーパントを添加することによって有機発光層32を形成してもよい。ドーパントとして用いることができる材料としては、たとえばレーザ色素としての使用が知られているクマリン誘導体(たとえば、クマリン6など)、ペリレン、ルブレン、キナクリドン類、DCM、金属ポルフィリン錯体(たとえば、PtOEPなど)などを用いることができる。
Figure 2006073484
電子輸送層33は、PBD、TPOBのようなオキサジアゾール誘導体;TAZのようなトリアゾール誘導体;トリアジン誘導体;フェニルキノキサリン類;BMB−2T、BMB−3Tのようなチオフェン誘導体;アルミニウムトリス(8−キノリノラート)(Alq)のようなアルミニウム錯体などを用いて形成することができる。電子輸送層33の膜厚は、駆動電圧および透明性等を考慮して適宜選択することができるが、通常の場合には40nm以下であることが好ましい。
正孔注入層の材料としては、フタロシアニン(Pc)類(銅フタロシアニン(CuPc)などを含む)またはインダンスレン系化合物などを用いることができる。
電子注入層の材料としては、Li、Na、K、またはCsなどのアルカリ金属、Ba、Ca、Srなどのアルカリ土類金属またはそれらを含む合金、希土類金属、あるいはそれら金属のフッ化物などを用いることができるが、それらに限定されるものではない。あるいはまた、アルカリ金属ないしアルカリ土類金属をドープしたアルミニウムのキノリノール錯体を用いてもよい。本発明の構成においては、電子注入効率の改善の観点から、電子注入層を設けることが好ましい。電子注入層の膜厚は、駆動電圧および透明性等を考慮して適宜選択することができるが、通常の場合には10nm以下であることが好ましい。
有機ELユニット30を構成するそれぞれの層は、蒸着(抵抗加熱または電子ビーム加熱)などの当該技術において知られている任意の手段を用いて形成することができる。
電荷発生複合層50は、電子発生層として機能するn型電荷発生層51と、正孔発生層として機能するp型電荷発生層52とから構成される。電荷発生複合層50は、有機ELユニット30の間に配置される。n型電荷発生層51は、一方の有機ELユニットの電子輸送層または存在する場合には電子注入層と接触して配置される。p型電荷発生層は、他方の有機ELユニットの正孔輸送層または存在する場合には正孔注入層と接触して配置される。図1の構成において、電荷発生複合層50は、第1有機ELユニット30aと第2有機ELユニット30bとの間に配置され、n型電荷発生層51は第1有機ELユニット30aの電子輸送層33aに接触しており、p型電荷発生層52は第2有機ELユニット30bの正孔注入層31bと接触している。
n型電荷発生層51は、n型半導性を有するアンチモンフタロシアニン化合物から形成される。本発明において用いられるアンチモンフタロシアニン化合物は、式(I)の構造を有するジハロゲン(フタロシアニナト)アンチモン(V)ラジカルアニオンである(特許文献4参照)。
Figure 2006073484
式中、XはCl、Br、Iを表し、好ましくはClである。また、配位子であるフタロシアニンは、式(I)の化合物の合成を妨げないことを条件として、炭化水素基、アルコキシ基などの置換基を有していてもよい。式(I)の化合物は、対応するジハロゲン(フタロシアニナト)アンチモン(V)カチオンの、電解的1電子還元または化学的1電子還元(たとえば金属銀を用いる)により調整することができる(特許文献4参照)。式(I)の化合物は、可視領域(特に400〜600nm)において、銅フタロシアニンよりも優れた光透過性を有する。本発明においては、ジクロロ(フタロシアニナト)アンチモン(V)ラジカルアニオンを用いることが最も好ましい。n型電荷発生層51は、充分な電子発生能力と高い可視光透過性を両立するために、5〜30nmの膜厚を有することが望ましい。
p型電荷発生層52は、p型半導性を有するフタロシアニン化合物から形成される。また、可視領域(特に400〜600nm)において、優れた光透過性を有することが望ましい。本発明のp型電荷発生層52において用いられるフタロシアニン化合物は、好ましくは、式(II)の構造を有するチタニルフタロシアニンである。配位子であるフタロシアニンは、炭化水素基、アルコキシ基などの置換基を有していてもよい。
Figure 2006073484
式(II)の化合物は、可視領域(特に400〜600nm)において、銅フタロシアニンよりも優れた光透過性を有する。p型電荷発生層52は、充分な正孔発生能力と高い可視光透過性を両立するために、5〜20nmの膜厚を有することが望ましい。
電荷発生複合層50を形成するn型電荷発生層51およびp型電荷発生層52は、蒸着、スパッタなどの当該技術において知られている任意の方法で形成することができる。また、図1においては、第1電極20を陽極、第2電極40を陰極とする構成が例示されている。第1電極20を陰極、第2電極40を陽極とする構成を採用する場合、n型電荷発生層51およびp型電荷発生層52の積層順序が逆になることは、当業者であれば容易に理解するであろう。
本実施態様において、第1有機ELユニット30aの有機発光層32aと、第2有機ELユニット30bの有機発光層32bとが、異なる波長の光、より好ましくは補色関係にある2つの波長の光を放出するように形成することが好ましい。たとえば、一方が青色光を発光し、他方が赤色光を発光すれば、素子全体として白色光が放射される。さらに、より好ましくは、光の取出側に近い有機ELユニットが赤色光を発光し、他方の有機ELユニットが青色光を発光する。たとえば、図1の構成において、第1電極20が透明であり、第2電極が反射性である場合、第1有機ELユニット30aが赤色光を発光し、第2有機ELユニット30bが青色光を発光する。このような構成とすることにより、第1有機ELユニット30aが発した赤色光が、電荷発生複合層50を透過することなしに外部に取り出されるので、赤色光の取出効率を向上させることができる。
なお、図1の構成において、第1電極20を陰極、第2電極40を陽極として用いる場合には、各有機ELユニットおよび電荷発生複合層中の積層構造の順序を逆転すればよいことは、当業者にとって明らかであろう。
また、本発明の有機EL素子は、3つ以上の有機ELユニットと2つ以上の電荷発生複合層を有してもよく、ここで電荷発生複合層のそれぞれは2つの有機ELユニットの間に配置される。3つの有機ELユニットおよび2つの電荷発生複合層を有する本発明の第2の実施態様の有機EL素子の模式断面図を、図2に示す。図2の構成においては、第1電極20が陽極であり、第2電極40が陰極であり、第1有機ELユニット30aと第2有機ELユニット30bとの間に第1電荷発生複合層50aが積層されており、第2有機ELユニット30bと第3有機ELユニット30cとの間に第2電荷発生複合層50bが積層されている。
第1電極20、第2電極40、それぞれの有機ELユニット30(a,b,c)、およびそれぞれの電荷発生複合層50(a,b)は、第1の態様に記載のものと同様である。
本実施態様においても、それぞれの有機ELユニット30の有機発光層が、異なる波長の光を発光してもよい。より好ましくは、有機ELユニット30のそれぞれが赤色領域、緑色領域および青色領域のいずれかの光を発光して、有機EL素子全体として、赤色、緑色および青色の3波長域の成分をバランスよく含む白色光を発光するようにされる。このような構成は、カラーフィルタ方式を用いるフルカラーディスプレイの光源部として特に有用である。たとえば、第1有機ELユニット30aが赤色光を、第2有機ELユニット30bが緑色光を、第3有機ELユニット30cが青色光を発光するようにしてもよい。いずれのユニットがいずれの波長域の光を発光するかについては特に制限はないが、光の取出側に最も近い有機ELユニットが赤色光を発光することが好ましい。このような構成とすることにより、電荷発生複合層50を透過させることなしに赤色光を外部に取り出されるので、赤色光の取出効率を向上させることができる。
[実施例1]
図1の構造を有する本発明に基づく有機EL発光素子を以下の手順により作製した。最初に、ガラス基板10上に、室温において、DCスパッタ法により膜厚200nmのIn−Zn酸化物膜を堆積させて、陽極として用いる第1電極20を得た。スパッタターゲットにはIn−Zn酸化物焼成ターゲットを用い、スパッタガスとしてArおよび酸素の混合ガスを用いた。
引き続いて、前記第1電極20を形成した基板10を抵抗加熱蒸着装置内に装着し、正孔輸送層31a、有機発光層32aおよび電子輸送層33aを真空を破らずに順次成膜して第1有機ELユニット30aを形成した。成膜に際して真空槽内圧は1×10−4Paまで減圧した。正孔輸送層31aとして、膜厚20nmの4,4’−ビス[N−(2−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)を積層した。有機発光層32aとして、膜厚20nmの4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)を積層した。有機発光層32aの積層中、ドーパントとして、体積比で5%のペリレンを同時蒸着した。電子輸送層33aとして、膜厚20nmのAlqを積層した。
次に、真空を破ることなしに、ジクロロ(フタロシアニト)アンチモン(V)ラジカルアニオン(式(I)の化合物(X=Cl))を蒸着法により積層して膜厚10nmのn型電荷発生層51を形成し、引き続いてチタニルフタロシアニンを蒸着法により積層して膜厚10nmのp型電荷発生層52を形成した。
さらに、第1有機ELユニット30aと同様の手順を繰り返して、正孔輸送層31b、有機発光層32bおよび電子輸送層33bを有する第2有機ELユニット30bを形成した。
次に、真空を破ることなしに、蒸着法により膜厚200nmのMg/Ag(10:1の重量比率)層を堆積させて、陰極として用いる第2電極40を形成した。こうして得られた構造物を、グローブボックス内乾燥窒素雰囲気(酸素および水分濃度ともに10ppm以下)下において、封止ガラスとUV硬化接着剤を用いて封止して、有機EL素子を得た。本実施例の有機EL素子は、ボトムエミッション方式であり、第1および第2有機ELユニットの両方が青色光を発光するものである。
得られた有機EL素子は青色に発光した。この素子について、電圧−瞬間輝度特性を測定した結果、電流密度0.6×10−2A/cmで輝度642cd/mを得た。初期輝度1000cd/mを与える電流の連続通電において輝度が半減する連続通電寿命半減期間は、3000時間であった。
[比較例1]
第2有機ユニット30bの形成をしなかったたことを除いて、実施例1の手順を繰り返して有機EL素子を得た。得られた有機EL素子は、1個の有機ELユニットを有する従来型の有機EL素子である。
得られた有機EL素子は青色発光し、電流密度1.0×10−2A/cmで695cd/mの輝度を有した。連続通電寿命半減期間は、1500時間であった。
[実施例2]
実施例1の手順に従って、第2有機ELユニット30b以下の構造を形成した。次いで、実施例1に記載の電荷発生複合層50の形成手順を繰り返して電荷発生複合層50bを形成し、引き続いて実施例1に記載の有機ELユニット30の形成手順を繰り返して第3有機ELユニット30cを形成した。最後に、実施例1の手順に従って、第2電極40の形成を行い図2に示した構造を有する有機EL素子を得て、封止を行った。本実施例の有機EL素子は、3個の有機ELユニットを有し、第1〜第3有機ELユニット30a〜30cの全てが青色発光するものである。
得られた有機EL素子は青色発光し、電流密度0.6×10−2A/cmで948cd/mの輝度を有した。
[実施例3]
第1有機ELユニット30aの有機発光層32aの形成時に、ドーパントとして、ペリレンに代えて4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)を用いたこと以外は、実施例1の手順を繰り返して有機EL素子を得た。本実施例の有機EL素子は、ボトムエミッション方式であり、第1有機ELユニット30aが赤色光を発光し、第2有機ELユニット30bが青色光を発光するものである。
得られた有機EL素子の発光は、CIE XYZ表色系において色度(x,y)=(0.36,0.40)を有する白色光であった。本実施例において、第1有機ELユニット30aにおいて発光される赤色光が電荷発生複合層を透過することなく外部へと放射されるために、電荷発生複合層による600nm以上の長波長の吸収がなく、所望の色度を得ることができた。
[実施例4]
第1有機ELユニット30aの有機発光層32aの形成時に、ドーパントとして、ペリレンに代えて4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)を用い、第2有機ELユニット30bの有機発光層32bの形成時に、ドーパントとして、ペリレンに代えてクマリン6を用いたこと以外は、実施例2の手順を繰り返して有機EL素子を得た。本実施例の有機EL素子は、ボトムエミッション方式であり、第1有機ELユニット30aが赤色光を発光し、第2有機ELユニット30bが緑色光を発光し、第3有機ELユニット30cが青色光を発光するものである。
得られた有機EL素子の発光は、CIE XYZ表色系において色度(x,y)=(0.30,0.32)を有する白色光であった。本実施例において、第2有機ELユニット30bにおいて発光される緑色光の電荷発生複合層50aによる吸収は少なく、所望の色度を得ることができた。
実施例1および2と比較例1との結果から明らかなように、本発明の多段構成の有機EL素子は、従来型の有機EL素子に比較してより少ない電流密度で同等またはそれ以上の輝度を与えており、発光効率が高いことが分かる。また、実施例1と比較例1との比較から、本発明の多段構成の有機EL素子は従来型の有機EL素子よりも長い寿命を有することが分かる。これは発光効率の向上に伴って電流密度を低下させることができたことによると考えている。
また、実施例3および4に示すように、それぞれの有機ELユニットに異なるドーパントを添加することにより、それぞれの有機ELユニットから異なる色の光を得ることができ、素子全体として多色発光型有機EL素子を得ることができた。
2つの有機ELユニットを有する本発明の第1の実施態様の有機EL素子の構造を示す模式的断面図である。 3つの有機ELユニットを有する本発明の第2の実施態様の有機EL素子の構造を示す模式的断面図である。 従来技術の有機EL素子の構造を示す模式的断面図である。
符号の説明
10 基板
20 第1電極
30(a,b,c) 有機ELユニット
31(a,b,c) 正孔輸送層
32(a,b,c) 有機発光層
33(a,b,c) 電子輸送層
40 第2電極
50(a,b) 電荷発生複合層
51(a,b) n型電荷発生層
52(a,b) p型電荷発生層

Claims (6)

  1. 陽極と陰極との間に、少なくとも正孔輸送層、有機発光層および電子輸送層を含む少なくとも2つの有機ELユニットと、フタロシアニン化合物を含むn型電荷発生層およびフタロシアニン化合物を含むp型電荷発生層の積層体である電荷発生複合層とを含む有機EL素子であって、前記電荷発生複合層は前記有機ELユニットの間に配設されていることを特徴とする有機EL素子。
  2. 前記n型電荷発生層はアンチモンフタロシアニン化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
  3. 前記p型電荷発生層はチタニルフタロシアニンを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL素子。
  4. 前記少なくとも2つの有機ELユニットが、それぞれ異なる波長域の光を発光することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の有機EL素子。
  5. 前記少なくとも2つの有機ELユニットの中で最も光の取出側に近い有機ELユニットが、赤色光を発光することを特徴とする請求項4に記載の有機EL素子。
  6. 前記有機EL素子が白色光を放射することを特徴とする請求項4または5に記載の有機EL素子。
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