JP2006071575A - コンクリートの管理方法および埋込型rfidモジュール - Google Patents

コンクリートの管理方法および埋込型rfidモジュール Download PDF

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Abstract

【課題】 センサ付きの埋込型RFIDモジュールの利用により、打設コンクリートの状態を現場でも効率良く、効果的に把握・管理でき、またコンクリートの状態や履歴を将来に渡って現場で簡単に取り出し、有効利用可能なコンクリートの管理方法を提供する。
【解決手段】 コンクリート中に温度センサを備えた埋込型RFIDモジュール2を埋め込んで所定時間ごとに温度測定を行い、温度データから算出される積算温度等を用いてコンクリートの状態を把握し管理する。埋込型RFIDモジュール2に、コンクリートIDを記憶させておき、コンクリートIDにより使用コンクリートを特定し、それに対応する強度推定式等を用いて、打設コンクリートの任意の初期材齢における強度を推定する。また、使用コンクリートに関する各種情報を、埋込型RFIDモジュール2内に併せて記憶させておけば、必要な情報を将来に渡って現場で直ちに得ることができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、コンクリート構造物やコンクリート部材の打設コンクリート中に温度センサを備えた埋込型RFIDモジュールを埋め込み、埋込型RFIDモジュールからリーダ/ライタ等で読み取ったデータを基に、打設コンクリートの任意の材齢、主として初期材齢におけるコンクリート強度やコンクリートの状態を把握し、コンクリートを管理する方法および該方法に用いられる埋込型RFIDモジュールに関するものであり、特に現場で打設コンクリートの脱型時期を求める場合等に好適に用いることができる。
一般的なコンクリート工事においては、型枠を組み、型枠内にコンクリートを打設してある期間養生を行った後、コンクリートが脱型可能な所定の強度に達していると推定される時点で脱型を行っている。
しかし、現場で打設されたコンクリートの強度を正確に求めることは困難であり、脱型時に強度が足りないと完成したコンクリート構造物、あるいはコンクリート部材の脱型不良により、施工性や品質に悪影響が出る恐れがある。安全のためには、脱型を遅らせることも考えられるが、そうすると型枠の回転率が落ち、工期も長期化することでコスト増となり、またコンクリートの打ち継ぎ部分では一体性が損なわれ、打ち継ぎ部分の品質に悪影響が生じる恐れがある。
コンクリート工事における強度推定の必要性としては、一般コンクリート構造物における脱型時期、支保工の取外し時期の推定の他、スリップフォーム工法における型枠の移動時期、コンクリート舗装における道路開放時期の決定などにおける必要性がある。
さらに、コンクリートが硬化する前に凍結すると凍害を引き起こし、所要の強度が得られないという問題があり、凍害を受けない目安としては、3.9N/mm2 以上の強度で脱型するのがよいとされている。
また、プレストレストコンクリートにおけるプレストレスの導入時期は、例えば35N/mm2 以上といった形で規定されており、その場合も強度推定が必要となる。
この他、プレキャストコンクリート製品については、脱型後の製品の取り扱いによる損傷を防ぐため、あるいは出荷時に所要の強度を得られていることを確認するために温度管理が必要であり、マスコンクリートにおいては、温度ひび割れを抑制するために、例えばパイプクーリングが施されるが、パイプクーリング温度の管理においてもコンクリート温度を把握する必要がある。
このように、コンクリートについては、種々の観点から初期材齢における温度の把握や強度推定の必要性が高い。
従来、コンクリートの強度を推定する方法としては、打設されるコンクリートの一部で所定の寸法・形状の供試体(テストピース)を製造し、圧縮試験等の規格化された試験条件で試験を行い、それを基に実構造物のコンクリート強度を推定する方法や、打設後のコンクリートの温度を経時的に測定して積算温度を求め、配合条件や打設条件に応じた積算温度に基づく強度推定式、その係数からコンクリートの強度を推定する方法がよく利用されている。
しかし、積算温度を用いてコンクリート強度を精度良く推定するためには、打設したコンクリートの内部の温度を所定時間ごと測定する必要があり、従来は打設したコンクリートに孔を開けて内部の温度を測定したり、コンクリート内に有線のセンサを埋め込んで内部の温度を測定するといった方法が行われている。
前者のコンクリートに孔を開ける方法は、測定後にグラウト等を充填するにしても、コンクリートの強度や品質に悪影響を与える他、孔を穿つ作業や測定作業にも手間がかかる。後者のセンサを埋め込む方法も、配線との関係でセンサの設置が面倒であったり、コンクリートの打設の際にも配線が邪魔になるといった問題がある。
これに対し、特許文献1には、コンクリートの非破壊評価方法および装置として、コンクリート中にマイクロプロセッサや不揮発メモリを取り付けた温度センサを埋め込み、温度センサで経時的に測定した温度と時間のデータを引き出し、積算温度を計算してコンクリートの強度を推定する方法とそのための装置が記載されている。
また、特許文献2では、埋込み型多目的センサ装置として、外部読み取り装置との間で無線通信可能なRFIDタグに数種の内蔵センサおよび外装センサを設けたものを、トンネル等の建造物内に埋め込んでおき、建造物の内部状態を非破壊で計測する装置が提案されている。
特許文献3には、各部のアナログ的状態量を検出する機能センサ群を備えた集合送信デバイス(RFIDタグに相当するもの)と、集合送信デバイスとの間で無線で送受信を行うリーダ/ライタ機能を有する移動体と、各センサのIDと埋設位置との関係を示すマップデータベースとからなる土木・建設構造物の状態検査システムが記載されている。その場合の移動体の形態としては、自動車や列車などの車両に搭載する場合や作業員が携帯するもの等が示されている。
特許文献4には、圧縮試験用のコンクリート供試体に、RFIDタグを取り付け、RFIDタグに記録した注文情報や採取日、試験日、強度試験等に関する情報を、通信ネットワークを通じて閲覧し、コンクリートの管理を行えるようにしたコンクリート品質管理用RFIDシステムが記載されている。
その他、特許文献5には縁石に電磁誘導型ICチップを組み込んだものが、特許文献6には異なる複数の規格に対応可能なRFIDタグとリーダ/ライタに関する発明が記載されている。
特公平07−050104号公報 特開2001−201373号公報 特許第3416875号公報 特開2004−109002号公報 特開平11−081214号公報 特開2004−213582号公報 特開平11−126293号公報
特許文献1〜4に示されるように、埋込型のセンサやセンサ付きのRFIDタグをコンクリート中に埋設してコンクリートの状態量を計測し、リーダ/ライタや無線通信により情報を得ようとする試みは種々なされており、また特許文献1においては、積算温度を求めるための温度測定を行うことが記載されている。
しかし、特許文献1記載のものは、センサとマイクロプロセッサとの間に配線を必要とするものであり、コンクリート中の所定位置にセンサやマイクロプロセッサ、不揮発メモリ等(センサモジュール)を埋め込むのが難しい。また、単に所定時間毎の温度を測定し、それをメモリに記憶し、まとめて取り出せるようにしただけであり、現場作業者が現場でも直ちにコンクリートの状態を容易に把握できるというところまでは到っていない。また、積算温度からのコンクリート強度の推定は、メモリから取り出したデータをコンピュータで計算することによって行われているが、積算温度により推定強度を求めた後のセンサモジュールの有効利用は特に考えられておらず、使用目的が完了した埋込型のセンサモジュールはそのまま放置されることになる。
特許文献2や特許文献3に記載されるものは、何種類かのセンサとRFIDタグを組み合わせて無線によりコンクリートの状態を把握しようとするものであり、特許文献3記載の発明ではさらにセンサの埋設位置を与えるセンサIDを記憶させる構成が記載されているが、外部データベース等の外部情報管理装置の使用を前提とした物性データの収集にとどまり、現場におけるコンクリートの管理という面では不十分である。
特許文献4記載の発明は、圧縮強度試験に用いられる供試体の情報を、通信ネットワークを通じて管理できるようにしたものであるが、実構造物におけるコンクリートの状態を管理する機能は有しておらず、その技術をそのまま実構造物に適用できるものではない。
本発明は、上述のような従来技術における課題の解決を図ったものであり、センサを備えた埋込型RFIDモジュールを用いて、センサに対しても配線することなく全て無線通信により、現場でも初期材齢の温度や強度といったコンクリートの状態を効率良く、把握・管理でき、また該強度だけでなくコンクリートの状態や履歴および使用コンクリートに関する付加的な情報を将来に渡って現場で簡単に取り出し、有効利用することも可能なコンクリートの管理方法および該方法に用いられる埋込型RFIDモジュールを提供することを目的としている。
本願の請求項1に係るコンクリートの管理方法は、打設コンクリート中に温度センサを備えた埋込型RFIDモジュールを埋め込んで所定時間ごとに温度測定を行い、温度データから算出される積算温度等を用いて、該打設コンクリートの状態を把握し管理する方法であって、前記埋込型RFIDモジュールに、打設コンクリート(該埋込型RFIDモジュールが埋め込まれるコンクリート)として使用するコンクリートのコンクリートIDを記憶させておき、該埋込型RFIDモジュールから読み取ったコンクリートIDにより使用した該コンクリートを特定し、特定された該コンクリートに対応する積算温度に基づく強度推定式、および/またはその他の強度推定に必要な蓄積データを用いて、前記打設コンクリートの任意の初期材齢における強度を推定することを特徴とするものである。
なお、本発明でいう初期材齢とは、コンクリートの配合強度より低い強度範囲において目的とする強度に到達するのに必要な期間である。
コンクリートの強度は、100年もの長い期間に及んで強度が増進することが知られているが、コンクリートの強度発現は、温度や湿度などの環境条件に左右される。通常はコンクリートを水中にて養生した材齢28日での強度を標準とする例が多いが、初期材齢はこの標準とした強度より低い範囲の強度に達するまでに必要とされる期間であり、コンクリートの凝結が開始してからおよそ2週間程度の期間、あるいはコンクリートの最終的な強度のおよそ8割程度の範囲での強度に到達するのに必要な期間である。
コンクリートIDによるコンクリートの特定は、適切な強度推定式を用いて強度推定を行うために必要不可欠である。最低限、コンクリート工事でどのようなコンクリートを使用したかを特定できればよい。
すなわち、例えばコンクリートの製造過程等において、一纏まりに扱われるコンクリートごとにその一纏まりのコンクリートを特定するためのコンクリートIDを付与するものであり、例えば連続番号やアルファベット、あるいはこれらの組み合わせなどによるIDが付与される。
一纏まりに扱われるコンクリートの単位(同一のコンクリートIDが付与される範囲)としては、製造過程における同一のバッチから出荷されるコンクリートの単位などが適すると考えられるが、これに限定されず、例えばコンクリートの出荷に用いられるアジテータトラック等の車両ごとに積み込まれる一纏まりのコンクリートに対し、それぞれIDを付与することも考えられる。
製造過程や出荷過程等におけるどの時点でコンクリートIDを付与し、どの範囲のコンクリートに同一のコンクリートIDを付与するかは、そのコンクリートをどれだけ具体的に特定することができるかといった精度に影響するが、作業性や精度、データ処理量等との関係で任意に定めることができる。
また、コンクリートIDは必ずしも一つでなければならないということではなく、例えばバッチごとのコンクリートIDと出荷のための車両ごとのコンクリートIDというように2段階で付与したり、必要であれば3段階以上付与することも可能である。
コンクリートIDが付与されていれば、必要に応じ、コンクリートIDを用いて特定されたコンクリートに関しての具体的なセメントの種類やコンクリートの配合、強度や性能に影響する施工時の各種使用条件(例えば、生コンの輸送時間や天候状態、気温等)等の使用したコンクリートに関する付加的情報を把握することもできる。
これらコンクリートIDによるコンクリートの特定や特定されたコンクリートに関する付加的情報の把握から、積算温度と強度との関係を与える強度推定式やその係数を特定したり、必要に応じそれらの補正をする。
埋込型RFIDモジュールにコンクリートIDのみを記憶させる場合には、そのコンクリートIDを基に打設コンクリートとして使用したコンクリートを特定し、コンピュータ等(紙の文書でもよい)のデータベースに保存された該コンクリートに関する情報を照査し、強度推定等に必要な情報を引き出すことができる。
使用したコンクリートに関する情報は、現場に持ち込んだコンピュータに、コンクリートIDとともにそれらの情報を保存しておく場合と、現場外の管理室内等にあるデータベース(外注先のコンクリートの製造業者等が管理するデータベースの場合等も含む)にコンクリートIDとともにそれらの情報を保存しておく場合とがある。後者の場合、コンクリートIDを基に、現場からでもインターネット等の通信ネットワークを利用して該コンクリートに関する情報を照査し、上記情報を引き出すことも可能である。
本発明のコンクリートの管理に用いる温度センサ等の測定対象の状態量を測定するセンサを備えた埋込型RFIDモジュールの構成要素となるRFIDは、特に限定されないが、通常、リーダ/ライタとの間でデータの送受信を行うアンテナと、データを記憶させるための記憶部としての不揮発性RAM等のメモリ、制御部としてのICチップ(マイクロプロセッサ)等を備え、制御のための電源としては、通常、リーダ/ライタから送信される電磁波によって誘電される電源を利用することができる。
ただし、該センサを機能させるためには、通常、電池を内蔵させる必要があり、制御のための電源の一部にも電池による電源を利用することもできる。その場合、例えば、コンクリート中に埋め込んだまま、積算温度に関連する温度測定以外に、長期の使用に用いるためには、できるだけ不使用時の電池の消耗を抑える必要があり、制御部あるいはリーダ/ライタからの信号によりスイッチの切り換えて、温度センサを機能させる期間だけ内蔵電池からの電源を供給するといったことが考えられる。
本発明に適応できる温度センサとしては、測温抵抗体(純金属の電気抵抗が温度とともに増加することを利用したもの)、サーミスタ(マンガン、ニッケル、コバルトなどを主原料とする酸化物粉末を焼成したセラミックスで温度に対して抵抗値が変化するもの)、熱電対(ゼーベック効果と呼ばれる二種類の導体で閉回路を作り、接点と接点との温度差によって起電力を生じることを利用したもの)の他、トランジスタの温度特性を利用したIC温度センサなどが利用できる。
温度、積算温度、それに基づく推定強度以外のコンクリートの状態量も把握したい場合には、例えば、湿度センサやひずみセンサの併用が考えられる。
コンクリートの湿度はコンクリートの強度発現性に影響を与えるので、湿度センサを併用して温度と共に湿度を測定することで、強度推定の精度向上を図ることも可能である。
湿度センサの種類としては、例えば、感湿材として塩化リチウム、高分子材料あるいはセラミックスを用い、湿度変化に対して電極間の電気抵抗が変化する電気抵抗式の湿度センサ、電極間に高分子材料を挟み湿度変化に対して電気容量が変化する電気容量式の湿度センサなどが利用できる。
コンクリートの強度はセメントの水和反応が進行することによって発現する。水和反応は化学反応であり、水和の進行で収縮を伴う。ひずみセンサによりコンクリートのひずみ量測定することで強度推定も可能であり、また、水和の進行で生じる発熱反応によって起こる温度ひび割れの発生も推測可能となる。
ひずみセンサ種類としては、例えば、伸縮に伴って電気抵抗が変化することを利用したひずみセンサ、光の干渉作用を利用した光ファイバーひずみセンサなどがある。
請求項2は、請求項1に係るコンクリートの管理方法において、前記埋込型RFIDモジュールに、さらに該埋込型RFIDモジュールの埋込み位置に関する位置情報を記憶させておくことを特徴とするものである。
この場合の位置情報としては、例えばコンクリート構造物中のどの部材のどの位置といった情報、あるいはコンクリート部材におけるコンクリート表面からの深さ、測量によって得られる位置情報等であり、これらの何れかあるいは各種の位置情報の組み合わせを利用することが考えられる。
RFIDモジュールは、コンクリート中に埋設された後は目視によりその位置を確認することができないが、このような位置情報を埋込型RFIDモジュールに直接記憶させておくことで、該位置情報に基づき、外部データベースに蓄積されたデータ、あるいは設計図面等と照合しなくても直ちにモジュールの位置を特定することができる。
また、このような位置情報との関係で、必要に応じ埋込型RFIDモジュールから読み取ったデータの補正を行ったり、他の埋込型RFIDモジュールとの関係でコンクリート中における温度分布その他種々の情報を把握することができる。
請求項3は、請求項1または2に係るコンクリートの管理方法において、前記埋込型RFIDモジュールに、前記コンクリートIDとともに、使用するまたは使用した該コンクリートに関する付加的な情報も記憶させておくことを特徴とするものである。
ここでいう付加的な情報とは、コンクリートの配合等、コンクリートの強度推定に必要な情報に限らず、工事名称や、発注者名、施工者名といったコンクリートの出荷に関する情報、あるいは単に参考的に用いられる情報であってもよく(後述する表1参照)、使用者が必要と考える任意のものを選択することができる。
コンクリートに関する付加的情報を、埋込型RFIDモジュール内に記憶させておけば、別途、外部データベースにアクセスし、照査を行わなくても、記憶させておいた必要情報を埋込型RFIDモジュールから直接読み出すことができるため、外部データベースへの接続等、面倒な作業を必要とせずに、作業者が現場で直ちに必要な情報を得ることができる。
また、月日が経ち、強度推定による管理が行われなくなった後も、任意の時点(例えば、劣化が問題となった時点)で埋込型RFIDモジュールから直接、使用したコンクリートに関する情報を引き出し、コンクリートの施工状況等を把握することができる。
請求項4は、請求項1、2または3記載のコンクリートの管理方法にも用いられる埋込型RFIDモジュールであって、リーダ/ライタとの間で無線通信によりデータの送受信を行うアンテナ部と、前記アンテナ部に接続され、前記リーダ/ライタからの無線通信により得た電力で駆動され、前記リーダ/ライタからの指示に従って前記共有記憶部に記憶されている情報を前記リーダ/ライタに送信するRFID制御部と、測定対象の状態量を測定するセンサと、前記センサを動作させて前記状態量に関する情報を得るセンサ制御部と、前記センサ及び前記センサ制御部を駆動させるためのセンサ用電源と、前記RFID制御部並びに前記センサ制御部と接続され、前記RFID制御部または前記センサ制御部からの指示に基づきデータの読み書きが行なわれる共有記憶部とを有することを特徴とするものである。
基本的な構成は、従来、知られているRFIDタグに、センサを内蔵させ、さらにその電源として電池を内蔵させたものであり、リーダ/ライタとの組み合わせにより、無線通信による情報の送受信を簡易にかつ安価に行うことができる。
具体的な形態や構成に関しては、コンクリート中に埋め込んだときに、異物としてコンクリートに悪影響を与えない形態で、電力消費が大きいセンサとの組み合わせにおいて、電池の消耗をできるだけ抑え、長期に使用可能な構成のものが望ましい。
測定対象は、コンクリート以外に、モルタル、外装部材といった各種建設資材が挙げられる。状態量を測定するセンサとしては、前記温度センサ、湿度センサ、ひずみセンサの他、イオンセンサ、pHセンサ等、各種センサが挙げられる。
本発明はコンクリートの管理において、請求項4で規定されるような無線でデータの送受信が可能なセンサ付き埋込型RFIDモジュールを用いるため、コンクリート内部の温度等の状態量測定やデータの取り出しが容易であるとともに、この埋込型RFIDモジュールに、使用コンクリートのコンクリートIDを記憶させておき、コンクリートIDによりそのコンクリートを特定することができる構成としたため、実際に使用したコンクリートごとに、最適な強度推定式やその係数を選択したり補正を行うことができ、現場作業者等が現場からでも積算温度を利用したコンクリートの強度推定を簡単かつ効率的に行うことができる。
例えばリーダ/ライタを用いて、現場において直ちに、温度、積算温度、推定強度等のコンクリートの状態を把握することができるため、コンクリート工事全体の作業工程との関係でも施工の合理化、工期の短縮が図れる。
請求項2に係る発明においては、さらに埋込型RFIDモジュールの埋込み位置に関する位置情報を直接記憶させておくことで、従来のように外部データベースに蓄積されたデータ、あるいは設計図面等と照合しなくても、該位置情報に基づき現場において直ちにモジュールの位置を確認することができるという利点があり、さらにコンクリート中での温度分布その他の情報の把握にも利用できる。
請求項3に係る発明においては、埋込型RFIDモジュールに、コンクリートを特定するための前記コンクリートIDとともに、使用コンクリートに関する付加的な情報も記憶させておくことで、初期材齢だけでなく、強度推定による管理が行われなくなった後も、任意の時点で埋込型RFIDモジュールから直接、そのコンクリートに関する各種情報を引き出し、コンクリートの施工状況等を把握することができる。
図1は、本発明のコンクリートの管理方法の一実施形態を概念的に示したものであり、右上部分が施工者等の現場作業者、現場管理者の領域、左下部分がコンクリート生産者等のコンクリート業者の領域となっている。この例では、現場の施工者がコンクリート生産者の持つ外部データベース11をインターネット等の通信ネットワーク12を通じて利用することを想定しているが、本発明はそのような場合に限定されず、後述するようにコンクリートの管理を現場内で完結させることも可能である。
以下、本実施形態を図2のフローチャートと対応させながら説明する。
(1) コンクリートの出荷まで(生産者側)
コンクリート生産者は、発注者あるいは施工者から要求される設計基準強度や指示に従って、コンクリートの製造を行い、製造過程あるいは搬出過程等において一纏まりに扱われるコンクリート(例えば、同じバッチで製造されたコンクリート、あるいはさらにそこからアジテータトラック等に積み込むために分けた場合の同じ車両に積載されたコンクリート等)を特定するためのIDを製造時あるいは出荷時に付与し、生産者が管理するデータベースに配合、その他コンクリートの強度に影響を与える事項(製造記録等)とともに、コンクリートIDを登録する。
また、必要に応じ、積算温度に基づいて強度推定する際に用いる強度推定式やその係数、必要に応じ補正式、補正係数等も各コンクリートIDととにも登録しておく。この場合の強度推定式等は、一般的には過去の膨大なデータから抽出されたものであり、生産者自身のデータに基づくものでもよいし、第三者の作成したものでもよい。また、この出荷時に与えられる補正式や補正係数としては、例えば、気温その他の天候状態、コンクリートの輸送時間等、コンクリートの強度等に影響を及ぼす種々の要因について、予め過去のデータ等をもとに用意されたもの等がある。
このようにして、生産されたコンクリートを生コンの状態でアジテータトラック等に積み込み、現場に向けて出荷する。その際、生コンの生産におけるバッチや車両ごとに前述のコンクリートIDを登録・交付してもよい。本発明に適用されるコンクリートは特に限定されない。
(2) 現場におけるコンクリートの受入れ、埋込型RFIDモジュールの設置から打設コンクリートの強度推定(供試体を用いない場合)まで(施工者側)
アジテータトラック1等で運び込まれたコンクリートは、ポンプ圧送等により現場に組まれた型枠内に打設されるともに、その一部は強度試験等のための供試体4の作成に用いられる。
その際、構築されるコンクリート構造体3の各部位に温度センサを備えた埋込型RFIDモジュール2が設置される。この埋込型RFIDモジュール2はコンクリート構造体3内に配筋される鉄筋等を利用してあらかじめ型枠内にセットしておき、その状態でコンクリートの打設を行うか、あるいは打設したコンクリートが未硬化の状態で後から直接コンクリート中に埋め込むなどして設置することができる。
具体例(図3)は後述するが、埋込型RFIDモジュール2は、課題を解決するための手段の項で述べたように、リーダ/ライタ5との間でデータの送受信を行うアンテナと、データを記憶させるための記憶部としての不揮発性RAM等のメモリ、制御部としてのICチップ等を備えたRFIDタグに温度センサ等のセンサや電池等を内蔵させたものであり、制御部にプログラムされたタイマー機能により所定時間ごとにコンクリート内部(各埋込型RFIDモジュール2が埋め込まれた位置)の温度を温度センサで測定し、時間と温度をメモリに記憶させることができる。
コンクリート内部の温度に関するこれらのデータとコンクリートIDを、各埋込型RFIDモジュール2について、リーダ/ライタ5で読み出すことで、その時点での積算温度を算出し、積算温度を基にコンクリートの強度を推定することができる。
すなわち、積算温度によるコンクリートの強度推定は、一定の条件のもとで、セメントの種類、粉末度、配合等が同じであれば、積算温度と強度との関係が求まるというものであり、積算温度を算出すれば、コンクリートIDによって特定されるコンクリートについて、前記生産者の持つデータベースに蓄積されている積算温度と強度の関係を与える最適の強度推定式(係数も含め)に当てはめ、その時点でのコンクリートの強度を推定することができる。これにより、現場にいても推定強度が簡便かつ効率的に得られる。
図1および図2に示した例では、現場においてリーダ/ライタ5から、コンクリートIDをネットワーク12経由で生産者の持つデータベース11へ送信し、そのコンクリートIDに対応するコンクリートについての最適な強度推定式を取り出し、リーダ/ライタ5において算出しておいた積算温度を強度推定式に代入して強度計算し、計算結果を表示する構成となっている。
なお、これは、リーダ/ライタ5が端末機能や計算機能、表示機能等を備えている場合であり、リーダ/ライタ5が端末機能や計算機能を備えていない場合には、現場に持ち込んだパソコン等のコンピュータを間に介在させればよい。
表1は、前記コンクリート生産者の持つ外部データベース11に蓄積されるデータ項目および埋込型RFIDモジュール2の記憶部に書き込むデータ項目の例を簡略化して示したものである(あくまで、例示であり、実際には目的や管理方法によって異なる)。
Figure 2006071575
表1において、◎(二重丸)は必須項目、〇(丸)は利便性の高い項目、★(黒星)は促進養生での補正を行う場合にさらに必須な項目であり、外部データベース11側(表のDB欄)と埋込型RFIDモジュール2側(表のMD欄)に分けて表示してある。
生産者の持つデータベース11を閲覧する代わりに、現場のコンピュータに納入したコンクリートに基づく強度推定式のデータあるいは上記データベース11に相当するデータをあらかじめ読み込ませておくか、あるいは記録媒体に記録されたこれらのデータを用いて強度推定の計算をさせることもでき、その場合、本発明のコンクリートの管理を施工現場内で完結させることができる。
なお、埋込型RFIDモジュール2側のデータ項目(MD欄)には、積算温度の測定の前に書き込まれるものと、積算温度の測定や強度推定の後に書き込まれるものとがある。コンクリートID等は、積算温度の測定前に書き込むべきものであり、その他、コンクリートの呼び方、コンクリート配合、材料、RFIDモジュールに関する項目は、通常、積算温度の測定前に書き込まれる。実測値に関する項目については、当然、測定後に書き込まれることになる。これらの書き込みはリーダ/ライタ5により行われる。
埋込型RFIDモジュール2に記憶されたデータは、脱型後、あるいはコンクリート構造物の構築が完了した後においても、リーダ/ライタ5を埋込型RFIDモジュール2の近傍にかざすことで、非接触でこれらの情報を読み出すことができる。また、リーダ/ライタ5により、必要に応じ温度センサ等を再度起動させ、その時点での測定情報をコンクリートの管理に利用することができる。
埋込型RFIDモジュール2は、コンクリート構造体3に、通常、複数埋め込まれるが、コンクリートIDが異なる部分については、最低1つ必要であり、さらに同じコンクリートIDの部分あるいは同じ測定個所についても、複数分散させて配置したり、あるいは深さ方向にも複数間隔をおいて配置することで、コンクリート内部の温度分布(温度マップ)を求めたり、各測定個所での温度測定データや温度分布の不均一に対する補正を行うなどして、より的確にコンクリート強度を推定することができる。さらには、強度分布(強度マップ)も得ることができる。
上記方法により推定した強度がコンクリート構造体3のどの部位の強度かを把握する場合、さらには温度分布図を作成する場合、埋込型RFIDモジュール2のコンクリート中における埋込位置の確認が重要となり、その位置情報は外部データベース11あるいは現場のコンピュータ等に入れておくこともできるが、前述のコンクリートIDとともに、埋込型RFIDモジュール2の記憶部に記憶させておけば、各埋込型RFIDモジュール2の位置を直ちに特定することができる。
(3) 供試体を用いた強度推定式の補正(生産者または施工者)
上記では供試体による試験を行わないで強度推定する例を示したが、供試体による試験結果から強度推定式の補正を行うことは好ましい。特に、打設に使用したコンクリートと同一のコンクリートによる供試体を用いてコンクリート強度の推定を行った場合、精度よく強度推定ができる。
図1の概念図においては、施工現場で打設したコンクリートと同じコンクリートを用いて作成した供試体4について、圧縮試験等の通常の強度試験以外に、供試体4にも実構造物に用いたのと同様の埋込型RFIDモジュール2aを埋め込み、供試体4を管理する生産者等がリーダ/ライタ5aで、時間と供試体4内部の温度を読み出し、これを積算温度とともにデータベース11に入力する構成となっている。
例えば、実構造物であるコンクリート構造体3における脱型のタイミングを図るためにコンクリート強度を推定する場合には、養生温度を高めた促進養生などによって供試体4の強度発現をコンクリート構造体3より先行させ、実際に使用したコンクリートにおける強度発現性と積算温度との関係を予め把握しておくことが望ましく、実構造物より養生温度を上げる等して硬化時間の短縮を図ることが考えられる。ただし、その場合の温度範囲は積算温度と強度との関係にあまり影響を与えない範囲とする。
供試体4については、上記温度測定とともに、通常の圧縮強度試験等も行い、これとリーダ/ライタ5aから読み出したデータに基づく積算温度との関係を求め、あらかじめデータベースに登録されている公知の一般の強度推定式と比較し、強度推定式の補正が必要な場合には強度推定式における係数の補正や強度推定式の更新を行う。
ただし、現場の実構造物と供試体4とでは、形状・寸法の違い、埋込型RFIDモジュール2a,2bの埋め込み深さの違い、養生条件の違い等、種々の異なる条件があるため、それらを考慮した上で、補正が必要と判断される場合に強度推定式等の補正を行う。
なお、図1では強度試験用の供試体4に埋込型RFIDモジュール2aを埋め込んで、1つの供試体4で温度測定(積算温度の算定のための測定)と強度試験の両者を行っているが、埋込型RFIDモジュール2aの形態や大きさ、埋設の仕方によっては強度試験の結果に影響を及ぼすため、温度計測用の供試体と強度試験用の供試体を分けて作成することも考えられる。
図3は、本発明で用いる埋込型RFIDモジュール2の一実施形態をモジュール系統図として示したものである。
基本的な構成は、アンテナや電源整流回路、記憶部としての不揮発性RAMやICチップを備えた一般的なRFIDタグと同様であり、この例では温度センサ10と電池9を内蔵した構成を有する。
全体形状は一般的なRFIDタグに多いカード形状でもよいが、コンクリート内に埋め込まれるものであるため、寸法的には骨材の最大径程度以下程度の寸法とするのが好ましい。また、形状についてもできるだけコンクリート中の異物としてひび割れの原因とならない形状が望ましく、立体形状の人工骨材などと一体化して埋め込むことも考えられる。
さらに、コンクリート構造物に配筋される鉄筋などに取り付け固定して埋め込む場合には、該RFIDモジュールの表面に固定用の金具あるいは結束用の線材等を設けておくことが好ましい。
この埋込型RFIDモジュール2の構成および機能を、図3のモジュール系統図を参照して述べると以下の通りである。
(1) リーダ/ライタ5からのアクセス時には、電源整流回路22、受信回路23、データ処理ロジック回路24、送信変調25、クロック抽出26、不揮発性RAMは、リーダ/ライタ5からの供給エネルギーで動作するため、この時間は内蔵電池29の消耗はない。
(2) リーダ/ライタ5からのコマンドで起動されると、あらかじめCPU内のタイマーで設定されている時間間隔で、温度センサ30で測定された温度データをA/Dコンバータを介してCPU27に取り込み、不揮発性RAM28に格納し記憶させる。
(3) CPU27は、内蔵タイマーにより測定間隔毎、測定に要する時間だけ内蔵電池29がONするようになっており、低消費電力化を図っている。
(4) リーダ/ライタ5からデータ収集のコマンドがデータ処理ロジック回路24に与えられると、不揮発性RAM28のデータを読み出し、送信変調25により、リーダ/ライタ5へ送出され、このようにしてリーダ/ライタ5によるデータ収集が行われる。
(5) 不揮発性RAM28に記憶されたデータを全てリーダ/ライタ5に送出した後、一旦、不揮発性RAM28の温度データをクリアし、新たな温度データを記憶させるようにすれば、不揮発性RAM28のメモリオーバーが防げる。
(6) 測定時間間隔は、必要に応じ、リーダ/ライタ5からのコマンドで変更することができる。
なお、以上に述べた埋込型RFIDモジュール2の構成は、本発明に用いることができるRFIDモジュールの一例を説明したに過ぎず、具体的な構成に関しては種々の改変が可能である。
次に、施工モデルについて、供試体を用いて積算温度との関係から強度推定する場合を、より具体的に説明する。
(A) 鉄筋コンクリートラーメン構造の建築構造物の梁の施工において、支保工の取外しは、安全性の問題から事前に検討し、12N/mm2 必要であるとした場合において、本発明のコンクリート管理方法を用いて打込み後の強度を推定し、脱型および支保工の取外し時期管理を行うこととする。
(B) 使用コンクリートはレディーミクストコンクリートで製造される普通セメントを用いた呼び強度18N/mm2 、スランプ18cm、粗骨材の最大寸法25mmの普通コンクリートとする(以下、コンクリート規格の呼び方として、普通18−18−25Nという表示形式を用いる)。
生産者は、予め、打込み日とは異なった日に練り混ぜた前述の規格に適合するコンクリート(以下、規格コンクリートと呼ぶこととする)を用いて、φ10cm×高さ20cmの円柱供試体に成型した供試体を作成し、予め常温で、供試体強度と供試体温度を連続測定して積算温度を求め、この規格コンクリートに対する積算温度式の各係数を設定する。供試体温度の測定は本発明の埋込型RFIDモジュールを、供試体中心に樹脂製の細い棒を利用して設置し、コンクリートに埋め込み測定する。
積算温度式は、一般式としては下のように与えられる。
Figure 2006071575
ここで、
t(n):測定開始からn番目における温度(℃)
I(n):n番目におけるコンクリート製造(打設)からの時間(i時間)
k:測定終了時のn
c:定数(本試験例では、−5℃を使用)
また、強度推定式は以下の式を用いることとした。
Figure 2006071575
ここで、
C :推定強度
28:配合強度(本例では、呼び強度18に対し、2割増とした21.6N/mm2 を使用)
a,b:コンクリートによって定める定数
図4には、打設されるコンクリートのコンクリート規格に対応する規格コンクリートによる供試体(打込み日とは異なった日に練り混ぜたコンクリートによる供試体)の試験値(塗りつぶした四角)と、その試験値から最小二乗法を用いて定めた定数aおよびb(af ,bf とし、それぞれ15.5および0.704)による強度推定式Aと、これに対し配合のばらつきを考慮して定めた信頼限界値における定数aおよびb(ar ,br とし、それぞれ22.0および0.70)による強度推定式(信頼限界による強度推定式)Bをモデル例として示している。
生産者は打設に必要な普通18−18−25Nコンクリートの製造と同時に、コンクリート輸送用アジテータトラック車に対応するコンクリートIDと、用いる強度推定式(式(2) )と、前述の供試体による試験結果に基づいて普通18−18−25Nのコンクリート強度推定に必要であるF28,af ,bf ,ar ,br 、あるいは上記強度推定式A,強度推定式Bを、インターネットからアクセス可能なデータベースに登録する。
(C) 構築するコンクリート構造物は、コンクリート設計基準強度が18N/mm2 である鉄筋コンクリートラーメン構造の建築構造物の梁(を模擬した試験体)であり、高さ600mm、幅400mm、長さ2.8mとする。
本発明の温度センサを備えた埋込型RFIDモジュールを、型枠内に配置される配筋と、樹脂製の棒を利用して、例えば図5に示した試験体断面内に、長さ方向で異なる4箇所に、合計24個設置する。RFIDモジールはモジュールIDを持つ通信周波数13.56MHzのものであり、温度センサとしてのサーミスタと、CPU、電池を搭載し、外径φ25mm、厚さ9mmに樹脂で成型したアンチコリジョン対応のものとする。
RFIDモジュール設置直後に、埋設位置の情報、およびコンクリート製造者、施工者、施工年月、設計基準強度、コンクリート規格等の使用コンクリートに関する付加的情報を、リーダ/ライタを用いてRFIDモジュールの記憶部に書き込む。
コンクリートの受入れ時にコンクリートIDを生産者から受け取り、コンクリートを型枠に直接打設した後、リーダ/ライタを用いて、打設したコンクリートに対応するコンクリートIDをRFIDモジュールに書き込むと同時に、1時間毎に温度を測定するように測定時間間隔を設定する。また、計測開始の指示をリーダ/ライタを用いてRFIDモジュールに与える(これにより、内部スイッチをONとして電池を用いた温度測定制御状態に切り換える)。
(D) 上述の(B) の信頼限界による強度推定式(図4のB)の代わりに、打設に使用したコンクリートと同一のコンクリートを用いて、現場の日平均温度より高い一定の温度で促進養生を行った供試体による強度推定式(図4のC)を用いる場合の供試体の作成等は次のように行う。
コンクリートを現場で実構造物の型枠に打設すると同時に、その同じコンクリートを用いて強度試験用にφ10cm×高さ20cmの円柱状の供試体を作成する。別途、供試体温度履歴測定用として、強度試験用供試体と同一形状の供試体にRFIDモジュールを埋込み、コンクリートIDをリーダ/ライタで書込むと同時に、測定を開始する。
生産者は供試体を持ち帰り、現場における日平均気温より高いと推測される、例えば日平均気温が15℃の場合、35℃にて促進養生を行う。生産者は24時間毎に促進養生した供試体を用いて圧縮強度試験を実施し、72時間経過後から試験終了次第、試験の結果から最小二乗法を用いて強度推定式定め(72時間経過後の係数ac ,bc はそれぞれ14.0および0.709)、コンクリートIDに対応したデータベースに適宜登録する。
表2は、現場での打設に使用したコンクリートと同一のコンクリートを用いて促進養生を行った供試体の積算温度と圧縮強度試験結果をまとめたものである。後に表3を用いて説明するように、打設に使用したコンクリートと同一のコンクリートによる供試体について促進養生を行った場合、同一規格ではあるが異なるコンクリートによる供試体について信頼限界を考慮した場合に比べ、より高い精度で強度推定が可能となる。すなわち、精度の点においては、打設に使用したコンクリートと同一のコンクリートによる供試体を用いて強度推定式を得ることが重要である。
Figure 2006071575
図4には、前述した規格コンクリートに対する強度推定式Aおよび信頼限界による強度推定式Bとともに、上記促進養生による供試体の試験の実測値(白抜きの丸)に基づく強度推定式Cのモデル例を示してある。
この場合には、打設したコンクリートと供試体のコンクリートは同じであるので、練混ぜ日(コンクリート製造日)が異なることによるコンクリート配合のばらつきを考慮する必要がない。
(E) コンクリート打設より一定時間経過後、リーダ/ライタを用いて各RFIDモジュールのコンクリートID、測定したデータ、および埋設位置情報を読み出す。
その後、リーダ/ライタをインターネットに接続し、コンクリートIDを指標として検索し、信頼限界による強度推定を行う場合には、強度推定式と係数であるF28, ar およびbr を、あるいは、促進養生による強度推定を行う場合にはその強度推定式と係数であるF28,ac およびbc を、リーダ/ライタに取り込むと同時に、式(1) を用いて打設したコンクリートの積算温度を各RFIDモジュールごとに計算させ、式(2) を用いてコンクリート強度を推定し、各RFIDモジュールに対する強度推定結果および埋設位置情報をリーダ/ライタ画面上に表示させる。それによって、例えば、表3に示すように各初期材齢での打設コンクリートの強度推定値を得ることができる。
表3は、規格が同一であるが、コンクリート製造日が、実際に打設に使用したコンクリートとは異なるコンクリートで作成した供試体の試験結果から信頼限界を考慮して求めた強度推定値と、打設に使用したコンクリートと同一のコンクリートで作成して促進養生した供試体の試験結果から求めた強度推定値を対比させて示したものである。埋め込み位置の違いによる推定強度の違いは範囲で示している。
Figure 2006071575
センサを内蔵したRFIDモジュールの埋設位置によってコンクリートの強度発現性に影響を与える温度履歴が異なるが、本発明によってコンクリートの各位置での強度が容易に把握でき、また各経過時間後のコンクリート位置の違いによる強度の違いや各材齢での強度発現の全体像も把握可能である。
この例では、支保工の取り外しが可能な12.0N/mm2 が確保できるのは、コンクリート規格に対応する信頼限界を考慮した強度推定値を用いた場合はおよそ144時間経過後であり、より精度の高い推定が可能となる実際に使用したコンクリートと同じコンクリートでの促進養生による強度推定式を用いた場合はおよそ72時間経過後であることを、各々施工現場において現場作業者が直接かつ容易に推測することができる。
上記信頼限界による強度推定値を用いる方法は、別途、促進養生等を行う必要がなく、過去の蓄積されたデータベース等も有効に活用し、コンクリートIDを手がかりにした検索を行うことで容易かつ効率的に実現可能な手法である。ただし、推定強度の精度面では同じコンクリート規格に相当するコンクリートであっても、練混ぜ日が異なることによる使用材料のロット、配合の違いの影響を安全率として考慮する必要があり、必ずしも十分とは言えない場合もある。
打設に使用したコンクリートと同一のコンクリートによる供試体の促進養生による強度推定値を用いる方法は、信頼限界による強度推定値を用いる場合より精度が高く、通常、短い時間で支保工の取り外しが可能となる。ただし、促進養生するための設備や熱源が必要となり、大量に行う場合は手間やコスト面に影響を受ける。
さらに、同一のコンクリートによる供試体の促進養生による強度の推定では、供試体の材齢が進むことによって精度が向上することから、強度試験の結果から得られた補正値を、直ちに現場で知ることができる。また、コンクリートIDを手がかりにしたデータベースを使用することで、生産者が実施した強度試験結果から得られる推定式を、現場で直ちに検索することができる。
以上、本発明の実施の形態では、具体的施工モデル例も含め、
(a) コンクリートIDを手掛かりにデータベースにアクセスし、供試体を用いないで強度推定をする。
(b) 予め、打設に使用するコンクリートと同じコンクリート規格のコンクリートによる供試体を用いて得た強度推定式や安全率、補正係数に関する情報をデータベースに登録しておき、コンクリートIDを手掛かりにデータベースにアクセスし強度推定をする(信頼限界による強度推定)。
(c) コンクリート打設時に作成した打設に使用したコンクリートと同一のコンクリートによる供試体を促進養生して得た強度推定式や補正係数に関する情報をデータベースに登録しておき、コンクリートIDを手掛かりにデータベースにアクセスし強度推定をする(促進養生による強度推定)。
の3通りの例を示したが、効率面、精度面で各々一長一短があるので、どの方法で強度推定するかは適宜選択すればよい。精度を重視するのであれば(c) 、効率を重視するのであれば(a) 、平均的なところでは(b) となる。
一方、本発明では上記強度推定するといった目的完了後も、例えば、コンクリート打設から数十年経過後にコンクリートの補修や解体時に、リーダ/ライタを用いて埋設位置の情報および施工業者、施工年月、設計基準強度、コンクリート規格等の使用コンクリートに関する付加的情報を読み出すことができる。そのメリットとしては、例えば、数十年経過後に施工記録や設計図書等の資料を探し出さなくともよいといったことが挙げられる。
また、既に搭載電池は消耗している場合でも、構成図である図3に示すように、これらの情報を書き込んである不揮発性RAM等へのアクセスは電池を必要とせず、リーダ/ライタから供給されるエネルギーによって稼動し、書込み情報は問題なく読み出すことが可能である。
本発明のコンクリートの管理方法の一実施形態を示す概念図である。 図1の概念図に対応するフローチャートである。 本発明で用いる埋込型RFIDモジュールの一実施形態を示すモジュール系統図である。 より具体的な実施形態の例における使用コンクリートの積算温度と強度との関係を示すグラフである。 埋込型RFIDモジュールの梁コンクリート内への配置例を示す断面図である。
符号の説明
1…アジテータトラック、2,2a…埋込型RFIDモジュール、3…コンクリート構造体、3a…コンクリート、3b…鉄筋、4…供試体、5,5a…リーダ/ライタ、11…データベース、12…ネットワーク、21…アンテナ、22…電源整流回路、23…受信回路、24…データ処理ロジック回路、25…送信変調、26…クロック抽出、27…CPU、28…不揮発性RAM、29…内蔵電池、30…内蔵温度センサ

Claims (4)

  1. 打設コンクリート中に温度センサを備えた埋込型RFIDモジュールを埋め込んで所定時間ごとに温度測定を行い、温度データから算出される積算温度等を用いて、該打設コンクリートの状態を把握し管理する方法であって、前記埋込型RFIDモジュールに、打設コンクリートとして使用するコンクリートのコンクリートIDを記憶させておき、該埋込型RFIDモジュールから読み取ったコンクリートIDにより使用した該コンクリートを特定し、特定された該コンクリートに対応する積算温度に基づく強度推定式、および/またはその他の強度推定に必要な蓄積データを用いて、前記打設コンクリートの任意の初期材齢における強度を推定することを特徴とするコンクリートの管理方法。
  2. 前記埋込型RFIDモジュールに、さらに該埋込型RFIDモジュールの埋込み位置に関する位置情報を記憶させておくことを特徴とする請求項1記載のコンクリートの管理方法。
  3. 前記埋込型RFIDモジュールに、前記コンクリートIDとともに、使用するまたは使用したコンクリートに関する付加的な情報も記憶させておくことを特徴とする請求項1または2記載のコンクリートの管理方法。
  4. 請求項1、2または3記載のコンクリートの管理方法にも用いられる埋込型RFIDモジュールであって、リーダ/ライタとの間で無線通信によりデータの送受信を行うアンテナ部と、前記アンテナ部に接続され、前記リーダ/ライタからの無線通信により得た電力で駆動され、前記リーダ/ライタからの指示に従って前記共有記憶部に記憶されている情報を前記リーダ/ライタに送信するRFID制御部と、測定対象の状態量を測定するセンサと、前記センサを動作させて前記状態量に関する情報を得るセンサ制御部と、前記センサ及び前記センサ制御部を駆動させるためのセンサ用電源と、前記RFID制御部並びに前記センサ制御部と接続され、前記RFID制御部または前記センサ制御部からの指示に基づきデータの読み書きが行なわれる共有記憶部とを有することを特徴とする埋込型RFIDモジュール。
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