JP2006071018A - 電動ブレーキ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】摺動部における、高い耐焼付、耐磨耗、耐剥離等を有する電動ブレーキ装置を提供すること。
【解決手段】電動モータ6の回転運動をボールねじ機構7で直線運動に変換し、インナパッド2とアウタパッド3をディスクロータ4に押圧する電動式ディスクブレーキにおいて、上記ボールねじ機構7のボール10cと案内面10dの少なくとも一方をフッ素油焼結膜、固体潤滑剤の焼成膜、硬質皮膜のいずれかで被覆する。
【選択図】 図1
【解決手段】電動モータ6の回転運動をボールねじ機構7で直線運動に変換し、インナパッド2とアウタパッド3をディスクロータ4に押圧する電動式ディスクブレーキにおいて、上記ボールねじ機構7のボール10cと案内面10dの少なくとも一方をフッ素油焼結膜、固体潤滑剤の焼成膜、硬質皮膜のいずれかで被覆する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、車両等に用いられる電動ブレーキ装置に関する。
一般に車両用の電動ブレーキ装置は、ディスクブレーキとドラムブレーキに大別される。いずれの電動ブレーキ装置も、摩擦面を備えた、車輪と共に回転する回転体と、摩擦面に押付けられる、回転体の回転を制動する摩擦部材と、ブレーキペダル等の操作により駆動される電動モータと、電動モータの駆動力を摩擦部材に伝達する伝達部材とから構成されている。
ところで近年、これらの電動ブレーキ装置の駆動に、電動アクチュエータが使用されるようになってきている。例えば、キャリパブレーキ(ディスクブレーキ)では、パッド(摩擦材)を貼付けたブレーキパッド(摩擦部材)をディスクロータ(回転体)に押圧する伝達部材として、電動モータの回転運動を直線運動に変換するボールねじ(例えば、特許文献1参照。)やトルクカム(例えば、特許文献2参照。)が利用される。
ボールねじは、電動モータの出力を高効率で伝達増幅でき、小出力の電動モータでの駆動が可能となるという利点がある。一方、トルクカムは、小さな回転力で大きな軸力を発生でき、電動モータの回転を減速する減速機構が不要となるという利点がある。
特開2002−213505号公報
特開2003−156083号公報
電動ブレーキ装置は、回転体の摩擦面に摩擦部材を押付け、車両の運動エネルギーを熱エネルギーに変換することで、所要の制動力を得ている。そのため、発熱量が非常に大きく、摩擦部材や回転体が300℃以上になることもある。
しかも、車両用の電動ブレーキ装置では、ブレーキ本体がタイヤのホイール内に露出した状態で搭載されるため、ブレーキ本体に対する防水処理が必要となり、この防水処理が摩擦部材や回転体の放熱性を低下させる。
また、車両用の電動ブレーキ装置では、大きな制動力を得るために、摩擦部材を非常に大きな荷重で回転体に押付ける。衝突回避のためのパニックブレーキ時には約350000Nとなることもある。そのため、例えば伝達部材としてボールねじを用いた場合、大きな負荷容量を確保するために転動体の大きさがある程度必要となる。
また、電動モータの出力に制限があるため、リードを小さくするのが望ましいが、上述のように負荷容量の確保のために転動体を大きくすると、転動体の大きさに制限されてリードが大きくなる。
これに対し、摩擦部材の移動量はディスクに接触してから1mmに満たない範囲であり、更に電動ブレーキ装置は応答の速さが求められていることから、非動作時においても摩擦部材と回転体の摩擦面との隙間は微小に保たれる。そのため、摩擦部材の移動量は数ミリとなる。これはボールねじの1回転分にも満たない。
このため、転動体が一回転に満たない運動を繰り返すこともあり、グリース(潤滑剤)が攪拌されず、一部に油膜切れが発生する恐れがある。このため、耐焼付、耐磨耗、耐剥離等の対策が必要となる。
また、電動ブレーキ装置内の摺動部は、高温、高荷重で微小領域を繰り返し動くため、これについても耐焼付、耐磨耗、耐剥離等の対策が必要となる。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、摺動部における、高い耐焼付、耐磨耗、耐剥離等を有する電動ブレーキ装置を提供することにある。
上記課題を解決し目的を達成するために、本発明の電動ブレーキ装置は次のように構成されている。
(1)摺動部を有する電動ブレーキ装置において、上記摺動部の潤滑にフッ素油焼結膜、固体潤滑剤の焼成膜、硬質皮膜のいずれかを用いることを特徴とする。
(2)(1)に記載された電動ブレーキ装置において、上記摺動部の潤滑に潤滑剤を併用することを特徴とする。
(3)電動モータの回転運動をボールねじで直線運動に変換して、ブレーキ部材を被制動部材に押圧する電動ブレーキ装置において、上記ボールねじの転動体と転動面の少なくとも一方をフッ素油焼結膜、固体潤滑剤の焼成膜、硬質皮膜のいずれかで被覆することを特徴とする。
(4)電動モータの回転運動をトルクカムで直線運動に変換して、ブレーキ部材を被制動部材に押圧する電動ブレーキ装置において、上記トルクカムの転動体と転動面の少なくとも一方をフッ素油焼結膜、固体潤滑剤の焼成膜、硬質皮膜のいずれかで被覆することを特徴とする。
(5)転がり軸受を有する電動ブレーキ装置において、上記転がり軸受の転動体と転動面の少なくとも一方をフッ素油焼結膜、固体潤滑剤の焼成膜、硬質皮膜のいずれかで被覆することを特徴とする。
(6)(3)〜(5)に記載された電動ブレーキ装置において、上記転動体と転動面の間には潤滑剤が供給されていることを特徴とする。
本発明によれば、電動ブレーキ装置の摺動部における耐焼付、耐磨耗、耐剥離を向上することができる。
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態について説明する。
まず、図1〜図3を参照しながら本発明の第1の実施の形態について説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係る電動式ディスクブレーキを示す断面図である。
図1に示すように、この電動式ディスクブレーキ(電動ブレーキ装置)はキャリパハウジング1を有しており、その内部にはインナパッド2(ブレーキ部材)とアウタパッド3(ブレーキ部材)が収容されている。
このうち、インナパッド2は、車輪(図示しない)と共に回転するディスクロータ4(被制動部材)の電動アクチュエータ5(後述する)側に配置され、アウタパッド3は、ディスクロータ4のインナパッド2と反対側に配置されている。すなわち、ディスクロータ4は、インナパッド2とアウタパッド3により挟み込まれている。
上記キャリパハウジング1と隣接する位置には、モータカバー8がキャリパハウジング移動機構(図示しない)を介して連結されており、その内側には電動アクチュエータ5が配置されている。この電動アクチュエータ5は、電動モータ6とボールねじ機構7(ボールねじ)を有している。
電動モータ6は、モータカバー8の内周面に固定される環状の固定子9と、固定子9の内側に狭小の隙間を持って配置される回転子16とから構成されている。そして、これら固定子9と回転子16の軸心線方向の両端面から所定間隔だけ離れた位置には、それぞれ玉軸受10、10(転がり軸受)が配置されている。
図2は同実施の形態に係る玉軸受10を示す構成図である。
図2に示すように、これら玉軸受10、10は、モータカバー8の内周部に固定されるアウターリング10aと、ボールねじ機構7を構成するナット11(後述する)が嵌入固定されるインナーリング10bと、アウターリング10aとインナーリング10bの間に転動可能に介装されるボール10c(転動体)とから構成されている。
アウターリング10aとインナーリング10bは、ボール10c側にボール10cを案内するための案内面10d、10d(案内面)を有しており、その表面には潤滑性、耐熱性、耐磨耗性、耐剥離性を有するフッ素油焼結膜が被覆されている。また、ボール10cの表面にもフッ素油焼結膜が被覆されている。
このフッ素油焼結膜は、官能基を有する含フッ素重合体を含有する潤滑油を、アウターリング10a、インナーリング10b、ボール10cの表面に塗布し、恒温槽に入れて100℃〜200℃で熱処理を行って形成する。
含フッ素重合体としては、フルオロポリエーテル重合体またはポリフルオロアルキル重合体が好まれる。フルオロポリエーテル重合体は、―CXF2X―O―(Xは1〜4の整数)という一般式で示される単位を主要構造単位とし、いずれも数平均分子量が1000〜50000の重合体のものが挙げられる。ポリフルオロアルキル重合体は、下記化学式1に示すものが挙げられる。
官能基としては、金属に対して親和性の高いもの(例えば、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、イソシアネート基、スルフォン基またはエステル基等)が好ましく、例えば化学式2や化学式3に示すものが挙げられる。
このような官能基を有する含フッ素重合体として、より詳しくは、パーフルオロポリエーテル(PFPE)あるいはその誘導体との混合物、具体的には例えばモンテカチーニ社の商品名フォンブリン(FONBLIN)Yスタンダード、フォンブリンエマルジョン(FE20、EM04等)またはフォンブリンZ誘導体(FONBLIN Z DEAL、FONBLIN Z DIAC、FONBLIN Z DISOC、FONBLIN Z DOL、FONBLIN Z DOLTX2000、FONBLIN Z TETORAOL等)、デュポン社のクライトックス157FSL,157FSM、157FSH等が好適に用いられる。
また、アウターリング10aとインナーリング10bの案内面10d、10dの間には、アウターリング10aの案内面10dとボール10c、及びインナーリング10bの案内面10dとボール10cの滑動性を高めるためのグリース(潤滑剤)が供給されている。
図3は同実施の形態に係るボールねじ機構7の一部を拡大して示す概略図である。ここでは、こま式を例に説明するが、チューブ式等、他の形式でも実施可能である。
図3に示すように、上記ナット11は、その内周面に複数のねじ溝11a(転動面)を備えており、その表面にはフッ素油焼結膜が被覆されている。また、ナット11の外周面には、所定間隔を空けて平坦状に削成されており、その内側にはそれぞれいわゆるコマと呼ばれる循環部材12が取付けられる。この循環部材12は、その内周面にボール案内溝13(転動面)を備えており、その表面にはフッ素油焼結膜が被覆されている。
ナット11の平坦部には、ナット11の内周面に設けられるねじ溝11aと連通する一対の透孔が設けられ、これらの透孔は循環部材12に設けられるボール案内溝13の両端に連通している。
ナット11の内部にはねじ軸14が挿入されている。このねじ軸14は、その外周面にねじ溝14a(転動面)を備えており、その表面にはフッ素油焼結膜が被覆されている。
ナット11とねじ軸14は、各々のねじ溝11a、14aが対向するように配置されており、これらのねじ溝11a、14aの間に介装されるボール15(転動体)により脱落しないよう組み合わされている。ボール15の表面にはフッ素油焼結膜が被覆されている。
これらのボール15は、循環部材12のボール案内溝13からナット11に設けられる一対の透孔を介して、透孔と対向するねじ溝11a内に充填されるようになっている。
これにより、ナット11とねじ軸14が所定回転数以上の回転をなして相対変位すれば、一方の透孔から出たボール15は、ナット11のねじ溝11aとねじ軸14のねじ溝14aに沿って転動し、他方の透孔から出て循環部材12のボール案内溝13に導かれ、更に一方の透孔に戻るようボール循環路に沿って循環することとなる。
また、循環部材12のボール案内溝13とねじ軸14のねじ溝14aとの隙間には、ボール案内溝13とボール15、及びねじ軸14のねじ溝14aとボール10cとの摺動性を高めるためのグリース(潤滑剤)が供給されている。
図1に示すように、ナット11の外周面には、上記電動モータ6を構成する回転子16が固定されており、電動モータ6を駆動することにより、ナット11を回転子16と共に回転できるようになっている。
また、ねじ軸14のディスクロータ4側の端面には、上記インナパッド2が取付け固定されている。ねじ軸14のディスクロータ4と反対側の端面には、枢支用孔17が設けられており、その内部には上記モータカバー8に取付けられる枢支ピン18が挿入される。これにより、ナット11はねじ軸14に対して、一対の玉軸受10、10と枢支ピン18により回転自在に支持されることになる。
枢支用孔17の内周面と枢支ピン18の外周面にはフッ素油焼結膜が被覆されている。更に、枢支用孔17の内周面と枢支ピン18の外周面の隙間にはグリース(潤滑剤)が供給されている。
上記構成の電動式ディスクブレーキにおいて、非ブレーキ作動時は、電動モータ6が不作動であり、ねじ軸14の位置が変わらない。そのため、インナパッド2とディスクロータ4、及びアウタパッド3とディスクロータ4の間に隙間が形成され、ディスクロータ4が車輪と共に自由に回転する。
この状態からブレーキペダル(図示しない)を踏み込むると、電動モータ6への通電により固定子9が励磁され、回転子16が回転駆動される。そして、回転子16の回転に連動して、回転子16と一体となっているナット11も回転し、ナット11の回転力がボール15を介してねじ軸14に伝達される。これにより、ねじ軸14は軸心線方向に沿って図中左方向に移動し、インナパッド2がディスクロータ4に圧接する。
その一方で、キャリパハウジング1はキャリパハウジング移動機構を介して図中右方向に移動し、キャリパハウジング1の内面に固定されたアウタパッド3がディスクロータ4に圧接する。
これにより、ディスクロータ4の両側面と各パッド2、3間に摩擦が生じ、ディスクロータ4に対する制動トルクが発生する。その結果、ディスクロータ4と一体の車輪の回転が規制され、ブレーキ動作がなされる。
上記構成の電動式ディスクブレーキによれば、循環部材12のボール案内溝13の表面、ナット11のねじ溝11aの表面、ねじ軸14のねじ溝14aの表面、及びボール15の表面に潤滑性、耐熱性、耐磨耗性、耐剥離性を有するフッ素油焼結膜を被覆している。
そのため、一回のブレーキ動作に対するボール15の回転量が小さく、グリースの攪拌が行われ難い電動式ディスクブレーキであっても、循環部材12のボール案内溝13とボール15、ナット11のねじ溝11aとボール15、及びねじ軸14のねじ溝14aとボール15の摺動による焼付、磨耗、剥離等が抑制され、ブレーキの長寿命化、作動性の向上を実現することができる。
しかも、循環部材12のボール案内溝13とねじ軸14との隙間にグリース(潤滑剤)を供給しているため、循環部材12とボール15、ナット11とボール15、及びねじ軸14とボール15の間の潤滑性を更に向上させることができる。
また、玉軸受10を構成するアウターリング10aとインナーリング10bの案内面10d、及びアウターリング10aとインナーリング10bの間で転動するボール10cの表面に潤滑性、耐熱性、耐磨耗性、耐剥離性を有するフッ素油焼結膜を被覆している。
そのため、上述のように、アウターリング10aとボール10c、及びインナーリング10bとボール10cの摺動による焼付、磨耗、剥離等が抑制され、ブレーキの長寿命化、作動性の向上を実現することができる。
しかも、ボール10cが介装されるアウターリング10aとインナーリング10bの隙間にグリース(潤滑剤)を供給しているため、アウターリング10aとボール10c、及びインナーリング10bボール10cの間の潤滑性を更に向上させることができる。
なお、本実施の形態では、ボールねじ機構7と玉軸受10における潤滑に対してフッ素油焼結膜を用いているが、摺動による焼付、磨耗、剥離等が生じる可能性のある部分であれば、限定されるものではない。
例えば、上述のように、枢支用孔17の内周面と枢支ピン18の外周面にフッ素油焼結膜を被覆すれば、枢支用孔17と枢支ピン18の摺動が円滑になり焼付、磨耗、剥離等により生じる回転軸の位置ずれを抑制することができる。
また、フッ素油焼結膜に限定されることもなく、例えば四フッ化エチレンや劈開性を有するMoS2 等の固体潤滑剤の焼成膜や、TiN、TiAlN、TiCN、CrN、DLC等の高い硬度と低い摩擦係数を有し、摺動性と耐焼付性に優れる硬質皮膜を用いても、上記同等の効果、すなわちブレーキの長寿命化、作動性の向上を得られることは言うまでもない。
次に、図4〜図6を参照しながら本発明の第2の実施の形態について説明する。
図4は本発明の第2の実施の形態に係る電動式ディスクブレーキを示す断面図、図5は同実施の形態に係るカム機構51を示す断面図である。
図4に示すように、この電動式ディスクブレーキ(電動ブレーキ装置)はキャリパハウジング21を有しており、その内部にはインナパッド22(ブレーキ部材)とアウタパッド23(ブレーキ部材)が収容されている。
このうち、インナパッド22は車輪(図示しない)と共に回転するディスクロータ24(被制動部材)のモータカバー25側に配置され、アウタパッド23は、ディスクロータ24のインナパッド22と反対側に配置されている。すなわち、ディスクロータ24は、インナパッド22とアウタパッド23により挟み込まれている。
キャリパハウジング21のインナパッド22側には、モータカバー25がボルト26により固定されており、その内部には電動アクチュエータ47が配置されている。この電動アクチュエータ47は、電動モータ50とカム機構51(トルクカム)を有している。
電動モータ50は、モータカバー25の内周面に所定間隔おきに配置されるコイル27と、コイル27の内側に上記コイル27と対応するよう配置される複数の磁石28とから構成されている。
一方、カム機構51は、電動モータ50により回転駆動される駆動側カム部材29と、駆動側カム部材29の回転により軸心線方向に進退する被駆動側カム部材37と、駆動側カム部材29と被駆動側カム部材37の間に介在するローラ41(転動体)とから構成される。
駆動側カム部材29は、軸部30の図中右側の端部が玉軸受10により回転可能に支持され、また図中左側の端部が滑り軸受49(摺動部)により被駆動側カム部材37の支持開口部32に回転可能かつ軸心線方向に相対的に移動可能に支持されている。
この玉軸受10は、第1の実施の形態と同様のものであり、モータカバー25の内周部に固定されるアウターリング10aと、駆動側カム部材29の軸部30が嵌入固定されるインナーリング10bと、アウターリング10aとインナーリング10bの間に転動可能に介装されるボール10c(転動体)とから構成されている。
アウターリング10aとインナーリング10bは、ボール10c側にボール10cを案内するための案内面10dを有しており、その表面には上記同様のフッ素油焼結膜が被覆されている。また、ボール10cの表面にもフッ素油焼結膜が被覆されている。
また、ボール10cが介装されるアウターリング10aとインナーリング10bの隙間には、各リング10a、10bの案内面10dとボール10cの間の滑動性を高めるためのグリース(潤滑剤)が供給されている。
一方、支持開口部32の内側に嵌入固定される滑り軸受49の内周面(摺動部)と、この滑り軸受49の内周面に回転可能に支持される駆動側カム部材29の図中左側の端部の外周面(摺動部)にはフッ素油焼結膜が被覆されている。
また、駆動側カム部材29と滑り軸受49の隙間には、これらの間の滑動性を高めるためのグリース(潤滑剤)が供給されている。
駆動側カム部材29の軸部30の外周面には、電動モータ50を構成する上記磁石28が所定間隔で固定されており、コイル27に通電することにより、軸部30が磁石28と共に回転力を受け、駆動側カム部材29全体が所定方向に回転するようになっている。
図5に示すように、駆動側カム部材29の外周面にはフランジ部34が形成され、フランジ部34の図中左側の端面には、駆動側カム面36が形成されている。この駆動側カム面36は、その周方向に対して滑らかな波状に形成されており、その表面にはフッ素油焼結膜が被覆されている。
被駆動側カム部材37は、フランジ部48の外周面に設けられたスライド支持部46により、モータカバー25に対して回転不能、かつ軸心線方向に移動可能に支持されている。スライド支持部46(摺動部)の外周面と、モータカバー25の内面のスライド支持部46に対向する摺動面25a(摺動部)にはフッ素油焼結膜が被覆されている。
被駆動側カム部材37のインナパッド22側に設けられた押圧部39は、モータカバー25内からキャリパハウジング21内に突入し、その先端部がインナパッド22を固定するためのバックプレート22aに当接している。
被駆動側カム部材37のフランジ部48の図中右側の端面、すなわち上記駆動側カム部材29の駆動側カム面36と対向する端面には、被駆動側カム面40が形成されている。被駆動側カム面40は、その周方向に対して滑らかな波状に形成されており、その表面にはフッ素油焼結膜が被覆されている。
上記構成の電動式ディスクブレーキにおいて、被駆動側カム部材37が図中左側に移動して、インナパッド22がディスクロータ24の一方の面に当接すると、その反力によりキャリパハウジング21が図中右側に移動する。
これによって、アウタパッド23がディスクロータ24の他方の面に当接し、ディスクロータ24はインナパッド22とアウタパッド23に挟持されて制動力が付与されるようになっている。
駆動側カム面36と被駆動側カム面40の間には複数、本実施の形態では4つのローラ41が90度の間隔で配置されている。これらのローラ41は円柱状に形成されており、その外周面にはフッ素油焼結膜が被覆されている。
更に、駆動側カム面36と被駆動側カム面40の隙間には、駆動側カム面36とローラ41、及び被駆動側カム面40とローラ41の滑動性を高めるためのグリース(潤滑剤)が供給されている。
また、ローラ41の数は、4つに限定されるものではなく、120度の間隔で3個配置したり、60度の間隔で6つ配置したりしてもよい。更に、ローラ41の代わりにボールを用い、その表面にフッ素油焼結膜を被覆してもよい。
次に、図6を参照しながら本実施の形態に係る電動式ディスクブレーキの動作について説明する。
図6は同実施の形態に係る駆動側カム面36と被駆動側カム面40の配置の態様を示しており、(a)は非ブレーキ作動時における両カム面36、40を展開して示す概略図、(b)は非ブレーキ作動時における両カム面36、40の一部を拡大して示す概略図、(c)はブレーキ作動の開始時における両カム面36、40の一部を拡大して示す概略図、(d)はブレーキ作動の最終状態における両カム面36、40の一部を拡大して示す概略図、(e)はブレーキ作動の解除時における両カム面36、40の一部を示す概略図である。
上記構成の電動式ディスクブレーキにおいて、非ブレーキ作動時には、図6(a)に示すように、駆動側カム面36と被駆動側カム面40が全てのローラ41が両カム面の谷部分に位置している。このときの両カム面36、40とローラ41の位置関係を図6(b)に拡大して示す。
この状態から運転者がブレーキペダルを踏み込むと、コイル27が通電されて磁石28と一体となっている駆動側カム部材29が回転する。このとき、図6(c)に示すように、被駆動側カム部材37が回転することなく基準位置Aに溜まっているのに対し、駆動側カム部材29は、図中白抜きの矢印方向にL1だけ回転移動する。
この駆動側カム部材29の回転移動の結果、駆動側カム面36と被駆動側カム面40との間で挟まれている各ローラ41は、その摩擦力により図6(c)の矢印方向に転動し、駆動側カム面36の凸面部分に乗り上げ、また被駆動側カム面40に対しても同様に作用するので、この面においても凸面部分に乗り上げる。これにより、各ローラ41は両カム面36、40の周方向に対して、それぞれ駆動側カム面36の移動距離L1の半分の長さであるL2だけ移動することになる。
また、駆動側カム部材29の回転によりローラ41が駆動側カム面36と被駆動側カム面40の凸面部分に乗り上げると、スライド支持部46により電動モータ50の軸心線方向に移動自在に支持されている被駆動側カム部材37は、電動モータ50の軸心線方向に移動することのない駆動側カム部材29に対して、図6(c)中の距離d1だけ軸心線方向に移動する。
駆動側カム部材29のこのような作動が継続して、ブレーキ作動の最終状態、すなわちインナパッド22とアウタパッド23がディスクロータ24を挟持する状態になると、図6(d)に示すように駆動側カム部材29がL3だけ回転移動して停止する。このとき、ローラ41は図示するような位置となり、その結果、被駆動側カム部材37は初期状態からd2の距離だけ移動した状態となっている。
また、運転者がブレーキペダルを開放すると、コイル27への通電が停止し、駆動側カム部材29に対する回転力が開放される。その結果、アウタパッド23に対してディスクロータ24を押さえつけていた反力により、インナパッド22にディスクロータ24から離れる力が作用し、被駆動側カム部材37を押し戻そうとする。
その力により被駆動側カム面40からローラ41に対して、図6(e)の矢印方向の力を作用させ、その力によりローラ41は同図の矢印に示す方向への回転力を生じ、両カム面36、40の凹部方向に回転しながら移動する。
その結果、アウタパッド23がディスクロータ24に対して押圧されると、常にローラ41が元に戻る力が作用するから、電動モータ50を逆転させることなく、またリターンスプリング等の戻し部材を用いることなくインナパッド22とアウタパッド23を元のブレーキ開放位置に戻すことができる。
上記構成の電動式ディスクブレーキによれば、駆動側カム面36、被駆動側カム面40、及びこれらカム面36、40の間に介装されるローラ41の表面に潤滑性、耐熱性、耐磨耗性、耐剥離性を有するフッ素油焼結膜を被覆している。
そのため、一回のブレーキ動作に対するローラ41の回転量が小さく、グリースの攪拌が行われないような電動式ディスクブレーキであっても、駆動側カム面36とローラ41、及び被駆動側カム面40とローラ41の摺動による焼付、磨耗、剥離等が抑制され、ブレーキの長寿命化、作動性の向上を実現することができる。
しかも、駆動側カム面36と被駆動側カム面40の隙間にグリースを供給しているため、駆動側カム面36とローラ41、及び被駆動側カム面40とローラ41の滑動性を更に向上させることができる。
更に、駆動側カム部材29の図中左側の端部の外周面と、これを支持する滑り軸受49の内周面に潤滑性、耐熱性、耐磨耗性、耐剥離性を有するフッ素油焼結膜を被覆している。そのため、駆動側カム部材29と滑り軸受49の摺動による焼付、磨耗、剥離等が抑制される。
しかも、駆動側カム部材29の図中左側の端部と滑り軸受49の隙間にグリース(潤滑剤)を供給しているため、駆動側カム部材29と滑り軸受49の間の滑動性を更に向上させることができる。
また、被駆動側カム部材37のスライド支持部46の外周面と、モータカバー25の内面のスライド支持部46と対向する摺動面25aに潤滑性、耐熱性、耐磨耗性、耐剥離性を有するフッ素油焼結膜を被覆している。
そのため、被駆動側カム部材37が軸心線方向に対する移動により、スライド支持部46とモータカバー25の内面の摺動が繰り返しされても、これらの摺動により生じるスライド支持部46やモータカバー25の内面の焼付、磨耗、剥離等を抑制することができる。
しかも、スライド支持部46の外周面とモータカバー25の上記摺動面25aの隙間にグリースを供給しているから、スライド支持部46とモータカバー25の間の滑動性を更に向上させることができる。
なお、本実施の形態では、カム機構51と玉軸受10の摺動部における潤滑に対してフッ素油焼結膜を用いているが、摺動による焼付、磨耗、剥離等が生じる可能性のある部分であれば、限定されるものではない。
また、フッ素油焼結膜に限定されることもなく、例えば四フッ化エチレンや劈開性を有するMoS2等の固体潤滑剤の焼成膜や、TiN、TiAlN、TiCN、CrN、DLC等の高い硬度と低い摩擦係数を有し、摺動性と耐焼付性に優れる硬質皮膜を用いても、上記同等の効果、すなわちブレーキの長寿命化、作動性の向上を得られることは言うまでもない。
本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
2…インナパッド(ブレーキ部材)、3…アウタパッド(ブレーキ部材)、4…ディスクロータ(被制動部材)、6…電動モータ、7…ボールねじ機構(ボールねじ)、10…玉軸受(転がり軸受)、10c…ボール(転動体)、10d…案内面(転動面)、11a…ねじ溝(転動面)、13…ボール案内溝(転動面)、14a…ねじ溝(転動面)、15…ボール(転動体)、22…インナパッド(ブレーキ部材)、23…アウタパッド(ブレーキ部材)、24…ディスクロータ(被制動部材)、25a…摺動面(摺動部)、46…スライド支持部(摺動部)、41…ローラ(転動体)、49…滑り軸受(摺動部)、50…電動モータ、51…カム機構(トルクカム)。
Claims (6)
- 摺動部を有する電動ブレーキ装置において、
上記摺動部の潤滑にフッ素油焼結膜、固体潤滑剤の焼成膜、硬質皮膜のいずれかを用いることを特徴とする電動ブレーキ装置。 - 上記摺動部の潤滑に潤滑剤を併用することを特徴とする請求項1記載の電動ブレーキ装置。
- 電動モータの回転運動をボールねじで直線運動に変換して、ブレーキ部材を被制動部材に押圧する電動ブレーキ装置において、
上記ボールねじの転動体と転動面の少なくとも一方をフッ素油焼結膜、固体潤滑剤の焼成膜、硬質皮膜のいずれかで被覆することを特徴とする電動ブレーキ装置。 - 電動モータの回転運動をトルクカムで直線運動に変換して、ブレーキ部材を被制動部材に押圧する電動ブレーキ装置において、
上記トルクカムの転動体と転動面の少なくとも一方をフッ素油焼結膜、固体潤滑剤の焼成膜、硬質皮膜のいずれかで被覆することを特徴とする電動ブレーキ装置。 - 転がり軸受を有する電動ブレーキ装置において、
上記転がり軸受の転動体と転動面の少なくとも一方をフッ素油焼結膜、固体潤滑剤の焼成膜、硬質皮膜のいずれかで被覆することを特徴とする電動ブレーキ装置。 - 上記転動体と転動面の間には潤滑剤が供給されていることを特徴とする請求項3〜5記載の電動ブレーキ装置。
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JP2004255761A JP2006071018A (ja) | 2004-09-02 | 2004-09-02 | 電動ブレーキ装置 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2008041540A1 (en) | 2006-10-02 | 2008-04-10 | Shoei Chemical Inc. | Nickel-rhenium alloy powder and conductor paste containing the nickel-rhenium alloy powder |
JP2008180286A (ja) * | 2007-01-24 | 2008-08-07 | Tsubaki Emerson Co | ボールねじ及び電動シリンダ |
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- 2004-09-02 JP JP2004255761A patent/JP2006071018A/ja active Pending
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