JP2012057681A - 電動式直動アクチュエータおよび電動式ディスクブレーキ装置 - Google Patents

電動式直動アクチュエータおよび電動式ディスクブレーキ装置 Download PDF

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Abstract

【課題】電動式ディスクブレーキ装置の応答性を高めることができるようにした電動式直動アクチュエータを提供すること。
【解決手段】ハウジング1のガイド筒2内に軸方向に移動可能な外輪部材5を組込み、その外輪部材5の軸心上に電動モータによって回転駆動される回転軸10を組込み、その回転軸10を中心にして回転自在に支持されたキャリア14により回転軸10により接触回転される遊星ローラ21を回転自在に支持する。遊星ローラ21の外径面に外輪部材5の内径面に設けられた螺旋突条6に噛合する複数の円周溝22を設ける。回転軸10の軸端部に位置決め部18を設け、その位置決め部18に向けてキャリア14を付勢する弾性部材29を設ける。
【選択図】図2

Description

この発明は、ブレーキパッド等の被駆動部材を直線駆動する電動式直動アクチュエータおよびその電動式直動アクチュエータを用いた電動式ディスクブレーキ装置に関する。
電動モータを駆動源とする電動式直動アクチュエータにおいては、電動モータのロータ軸の回転運動を運動変換機構によって軸方向に移動自在に支持された被駆動部材の直線運動に変換するようにしている。
電動式直動アクチュエータに採用された運動変換機構として、ボールねじ機構やボールランプ機構が知られているが、これらの運動変換機構においては、ある程度の増力機能を有するものの、電動式ディスクブレーキ装置等で必要とされるような大きな増力機能を確保することができない。
そこで、上記のような運動変換機構を採用した電動式直動アクチュエータにおいては、遊星歯車機構等の減速機構を別途組込んで駆動力の増大を図るようにしており、上記減速機構を組込む分、構成が複雑となり、電動式直動アクチュエータが大型化するという問題があった。
そのような問題点を解決するため、本件出願人は、減速機構を組込むことなく大きな増力機能を確保することができ、直動ストロークが比較的小さい電動式ディスクブレーキ装置への採用に好適な電動式直動アクチュエータを特許文献1および特許文献2において既に提案している。
ここで、上記特許文献1および2に記載された電動式直動アクチュエータにおいては、電動モータによって回転駆動される回転軸と軸方向に移動自在に支持された外輪部材との間に遊星ローラを組込み、上記回転軸の回転により、その回転軸との摩擦接触によって遊星ローラを自転させつつ公転させ、その遊星ローラの外径面に形成された螺旋溝または円周溝と外輪部材の内径面に設けられた螺旋突条との噛み合いによって外輪部材を軸方向に移動させるようにしている。
特開2010−65777号公報 特開2010−90959号公報
ところで、特許文献1および2に記載された電動式直動アクチュエータにおいては、外輪部材の内径面に設けられた螺旋突条のリード角を小さくし、回転軸の回転量に対し、外輪部材の軸方向への移動量を小さくすることで入力トルクに対して出力される軸方向荷重の割合、所謂、荷重変換率を大きくし、小さな入力トルクでもって大きな軸方向力を発生させるようにしているため、その電動式直動アクチュエータをディスクブレーキ装置に採用した場合に、以下のような問題が生じる。
すなわち、一般的なディスクブレーキ装置においては、ブレーキペダルを踏み込んでいない状態でブレーキパッドとブレーキディスクとの間に鳴きや摩擦による発熱を防止する目的から僅かな隙間が設けられており、その隙間が零になった状態で制動力が付与され始めるため、上記隙間が零になるまでの時間は短い方が好ましい。
特許文献1および2に記載された電動式直動アクチュエータにおいては、外輪部材の内径面に設けられた螺旋突条のリード角を小さくすることで荷重変換率を大きくしているため、その電動式直動アクチュエータをディスクブレーキ装置に採用した場合に、ブレーキパッドとブレーキディスク間の隙間を零にするまでに電動モータを大きく回転させる必要が生じる。このため、ディスクブレーキ装置の応答性が低く、その応答性を高める上において改善すべき点が残されている。
この発明の課題は、相反関係にあるリード角と荷重変換率を負荷される軸方向荷重の大きさに応じて変更できるようにして、電動式ディスクブレーキ装置への採用において、その電動式ディスクブレーキ装置の応答性を高めることができるようにした電動式直動アクチュエータおよび電動式ディスクブレーキ装置を提供することである。
上記の課題を解決するため、この発明に係る電動式直動アクチュエータにおいては、ハウジングに設けられたガイド筒内に外輪部材を組込み、その外輪部材の軸心上に電動モータによって回転駆動される回転軸を設け、その回転軸を中心にして回転自在に支持されたキャリアによって前記外輪部材の内径面と回転軸の外径面間に組込まれた遊星ローラを回転自在に支持し、その遊星ローラの外径面に前記外輪部材の内径面に設けられた螺旋突条に噛合する円周溝を形成し、前記回転軸の回転により、その回転軸との摩擦接触により遊星ローラを回転させて外輪部材を軸方向に移動させるようにした電動式直動アクチュエータにおいて、前記外輪部材に負荷される押込み方向の軸方向荷重が小さい場合に回転軸とキャリアを摩擦により結合して一体化し、軸方向荷重が大きい場合に、その負荷される軸方向荷重により結合を解除する摩擦締結手段を設けた構成を採用したのである。
また、この発明に係る電動式ディスクブレーキ装置においては、電動式直動アクチュエータによりブレーキパッドを直線駆動し、そのブレーキパッドでブレーキディスクを押圧して、そのブレーキディスクに制動力を付与するようにした電動式ディスクブレーキ装置において、前記電動式直動アクチュエータとしてこの発明に係る電動式直動アクチュエータを用いた構成を採用したのである。
上記の構成からなる電動式直動アクチュエータにおいて、電動モータの駆動により回転軸を回転すると、遊星ローラが回転軸との摩擦接触によって回転する。このとき、外輪部材に負荷される押込み方向の軸方向荷重が小さい場合は、回転軸とキャリアは摩擦締結手段により結合されるため、遊星ローラは自転することなくキャリアおよび回転軸と一体となって、その回転軸の周囲を公転し、その遊星ローラの外径面に形成された円周溝と外輪部材の内径面に設けられた螺旋突条の係合によって、外輪部材が軸方向に移動する。
上記のように、外輪部材に負荷される軸方向荷重が小さい場合は、遊星ローラは自転することなく公転のみの回転であるため、見かけのリード角が大きくなって、外輪部材は軸方向に大きく移動することになり、既に提案した従来の電動式直動アクチュエータより荷重変換率は小さなものとなる。
一方、外輪部材に負荷される押込み方向の軸方向荷重が大きくなると、摩擦締結手段は回転軸とキャリアの結合を解除する。その結合解除により、回転軸と摩擦接触する遊星ローラは自転しつつ公転し、その遊星ローラの外径面に形成された円周溝と外輪部材の内径面に設けられた螺旋突条の係合によって、外輪部材が軸方向に移動する。
外輪部材に負荷される軸方向荷重が大きい場合は、上記のように、遊星ローラは自転しつつ公転するため、既に提案した従来の電動式直動アクチュエータと同様の動作を得ることができ、見かけのリード角は小さくなって、荷重変換率が大きなものとなる。
この発明に係る電動式直動アクチュエータのように、外輪部材に負荷される軸方向荷重が小さい場合に回転軸とキャリアを摩擦により結合し、軸方向荷重が大きい場合に結合を解除することができる摩擦締結手段を設けることにより、外輪部材に作用する軸方向荷重の大きさに応じて、回転軸の回転運動を外輪部材の直線運動に変換する運動変換機構中の動力伝達経路を切換えることができ、その動力伝達経路の切換えによって相反関係にあるリード角と荷重変換率を負荷される軸方向荷重の大きさに応じて変更することができる。
したがって、この発明に係る電動式直動アクチュエータを電動式ディスクブレーキ装置に採用することにより、ブレーキパッドとブレーキディスク間の隙間を零にするまでに電動モータを大きく回転させる必要がなくなり、ディスクブレーキ装置の応答性を高めることができる。
この発明に係る電動式直動アクチュエータにおいて、摩擦締結手段として、回転軸の軸端部にキャリアの軸方向への移動量を制限する位置決め部と、その位置決め部に向けてキャリアを付勢する弾性部材とからなるものを採用することができる。
この場合、位置決め部は、回転軸の軸端側を大径端とするテーパ軸部からなるものであってもよく、あるいは、回転軸と直交するフランジからなるものであってもよい。
また、弾性部材として、皿ばね、コイルばね、ウェーブスプリングを採用することができ、その弾性部材は、ハウジングによって軸方向に位置決めされて回転軸のトルク入力側の軸端部を回転自在に支持する軸受部材とキャリアの軸方向の対向部間に組込むようにして、キャリアを位置決め部に向けて付勢する。
ここで、螺旋突条および円周溝のそれぞれを、断面V字状とすると、螺旋突条を円周溝にスムーズに嵌め合わせることができ、円滑な動作を得ることができる。そして、螺旋突条の側面および円周溝の側面の少なくとも一方を凸形の円弧面とすると、螺旋突条を円周溝によりスムーズに嵌め合わせることができ、より円滑な動作を得ることができる。
この発明に係る電動式直動アクチュエータにおいては、外輪部材に負荷される軸方向荷重が小さい場合に回転軸とキャリアを摩擦により結合し、軸方向荷重が大きい場合に結合を解除する摩擦締結手段を設けたことにより、外輪部材に作用する軸方向荷重が小さい場合に遊星ローラは自転することなく公転し、見かけのリード角を大きくして荷重変換率を小さくすることができると共に、軸方向荷重が大きい場合に遊星ローラは自転しつつ公転して、リード角を小さくして荷重変換率を大きくすることができるため、電動式ディスクブレーキ装置への採用において、その電動式ディスクブレーキ装置の応答性を高めることができる。
この発明に係る電動式直動アクチュエータの実施の形態を示す縦断面図 図1の一部を拡大して示す断面図 図2のIII−III線に沿った断面図 図1の外輪部材を示す縦断面図 図1の遊星ローラを示す正面図 (a)は、回転軸とキャリアの結合状態を示す断面図、(b)は、回転軸とキャリアの結合解除状態を示す断面図 この発明に係る電動式直動アクチュエータの他の実施の形態を示す縦断面図 (c)乃至(d)は、外輪部材に設けられた螺旋突条と遊星ローラに形成された円周溝の他の例を示す断面図 この発明に係る電動式ディスクブレーキ装置の実施の形態を示す縦断面図
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図3は、この発明に係る電動式直動アクチュエータAの実施の形態を示す。図1に示すように、ハウジング1は、ガイド筒2の一端に径方向外方に張り出すベースプレート3を設けた構成とされ、上記ガイド筒2の一端開口およびベースプレート3の外側面はハウジング1の一端部にボルト止めされたカバー4によって覆われている。
ガイド筒2内には外輪部材5が組込まれている。外輪部材5は回り止めされ、かつ、ガイド筒2の内径面に沿って軸方向に移動自在とされ、その内径面には、図4に示すように、断面V字形の螺旋突条6が設けられている。
図1に示すように、ガイド筒2内には、外輪部材5の軸方向一端側に軸受部材7が組込まれている。軸受部材7は円盤状をなし、その中央部にはボス部7aが設けられている。軸受部材7は、ガイド筒2の内径面に取付けた止め輪8によってカバー4側に移動するのが防止されている。
軸受部材7のボス部7a内には一対の転がり軸受9が軸方向に間隔をおいて組込まれ、その転がり軸受9によって外輪部材5の軸心上に配置された回転軸10が回転自在に支持されている。
ハウジング1のベースプレート3には電動モータ11が支持され、その電動モータ11のロータ軸12の回転は、カバー4内に組込まれたギヤ伝動機構13によって回転軸10に伝達されるようになっている。
外輪部材5の内側には回転軸10を中心にして回転可能なキャリア14が組込まれている。図2および図3に示すように、キャリア14は、軸方向で対向する一対のディスク14a、14bと、その一対のディスク14a、14bの外周部間に渡されて一対のディスク14a、14bの対向間隔を一定に保持する複数の連結ロッド14cとからなり、上記一対のディスク14a、14bのうち、軸受部材7側に位置するインナ側ディスク14aは、回転軸10との間に組込まれたすべり軸受16によって回転自在に、かつ、軸方向に移動自在に支持されている。
アウタ側ディスク14bには、中心部にテーパ孔からなる軸挿入孔17が形成され、一方、回転軸10の軸端部には位置決め部18が設けられている。位置決め部18は、回転軸10の軸端側を大径端とするテーパ軸部からなり、その位置決め部18は、軸挿入孔17の内径面に対する係合によってキャリア14の軸端方向への移動量を制限するようになっている。
キャリア14には、一対のディスク14a、14bによって両端部が支持された複数のローラ軸19が周方向に間隔をおいて設けられ、それぞれのローラ軸19に嵌合された一対の転がり軸受20によって遊星ローラ21が回転自在に支持されている。
遊星ローラ21のそれぞれは、回転軸10の外径面と外輪部材5の内径面間に配置される組み込みとされ、上記回転軸10が回転すると、その回転軸10の外径面に対する摩擦接触によって回転するようになっている。
遊星ローラ21の外径面には、図5に示すように、断面V字状の複数の円周溝22が軸方向に等間隔に形成され、その円周溝22のピッチPは、外輪部材5に設けられた螺旋突条6のピッチPと同一とされて、その螺旋突条6に噛合している。
図2に示すように、キャリア14のインナ側ディスク14aと遊星ローラ21の軸方向の対向部間には、ワッシャ23およびスラスト軸受24が組込まれている。また、キャリア14と軸受部材7の軸方向の対向部間にはリング状のばねホルダ25が組み込まれ、そのばねホルダ25と軸受部材7のボス部7aに嵌合された環状の軸受ディスク26間にスラスト軸受27が組込まれている。
ばねホルダ25には、キャリア14と対向する面の中央部にばね収容凹部28が設けられ、そのばね収容凹部28に収容された弾性部材29は、キャリア14を回転軸10の軸端方向に向けて付勢している。
弾性部材29は回転軸10の軸端部に設けられた前述の位置決め部18とで摩擦締結手段を形成する。この摩擦締結手段は、外輪部材5に負荷される押込み方向への軸方向荷重が弾性部材29の弾性力より弱い場合に、キャリア14のアウタ側ディスク14bに形成された軸挿入孔17の内径面を位置決め部18のテーパ状外径面に圧接させ、その圧接面に作用する摩擦抵抗により回転軸10とキャリア14を結合し、一方、外輪部材5に負荷される押込み方向への軸方向荷重が弾性部材29の弾性力より大きい場合に、位置決め部18から離反する方向にキャリア14を軸方向に移動させて結合を解除するようになっている。
ここで、図6に示すように、キャリア14のアウタ側ディスク14bに形成された軸挿入孔17の内径面が位置決め部18のテーパ状外径面に圧接する状態において、キャリア14のインナ側ディスク14aとばねホルダ25の対向部間には軸方向すきま30が形成され、その軸方向すきま30の範囲内においてキャリア14は軸方向に移動可能とされている。
弾性部材29として、ここでは皿ばねを採用しているが、コイルばねやウェーブスプリングを用いるようにしてもよい。また、弾性部材29の組込み位置はばねホルダ25とキャリア14の対向部間に限定されるものではない。例えば、図7に示すように、軸受ディスク26の内径面にばね収容凹部30を設け、そのばね収容凹部30内にコイルばねからなる弾性部材29を組込んで、キャリア14を位置決め部18に向けて付勢するようにしてもよい。
なお、図7に示す実施の形態では、図2に示すばねホルダ25を省略し、その代わりに間座31を用いるようにしている。
図2に示すように、外輪部材5のガイド筒2の端部開口から外部に位置する他端の開口はシールカバー33の取付けにより閉塞されて内部に異物が侵入するのが防止されている。
実施の形態で示す電動式直動アクチュエータAは上記の構造からなり、図9は、その電動式直動アクチュエータAを採用した電動式ディスクブレーキ装置Bを示す。この電動式ディスクブレーキ装置においては、電動式直動アクチュエータにおけるハウジング1のガイド筒2の他端部にキャリパボディ部40を一体に設け、そのキャリパボディ部40内に外周部の一部が配置されたブレーキディスク41の両側に固定ブレーキパッド42と可動ブレーキパッド43を設け、その可動ブレーキパッド43を外輪部材5の他端部に連結一体化している。
図9に示すような電動式ディスクブレーキへの電動式直動アクチュエータの使用状態において、図1に示す電動モータ11の駆動により回転軸10を回転すると、遊星ローラ21が回転軸10との摩擦接触により回転する。
このとき、図9に示す可動ブレーキパッド43とブレーキディスク41との間に軸方向隙間44が存在し、外輪部材5には押込み方向への軸方向荷重が負荷されていない状態にあるため、図6(a)に示すように、弾性部材29がキャリア14を押圧する押圧力によりアウタ側ディスク14bの軸挿入孔17が位置決め部18のテーパ状外径面に圧接して回転軸10とキャリア14は結合状態にある。
このため、回転軸10の回転により、遊星ローラ21は自転することなくキャリア14および回転軸10と一体となって、その回転軸10の周囲を公転し、その遊星ローラ21の外径面に形成された円周溝22と外輪部材5の内径面に設けられた螺旋突条6の係合によって、外輪部材5が軸方向に移動する。
このように、外輪部材5に軸方向荷重が負荷されていない場合、遊星ローラ21は自転することなく公転のみの回転であるため、見かけのリード角が大きく、外輪部材5は軸方向に素早く移動し、可動ブレーキパッド43はブレーキディスク41との間に形成された軸方向隙間44を素早く詰めることになる。
可動ブレーキパッド43がブレーキディスク41に当接し、その状態から外輪部材5がさらに上記と同方向に移動すると、外輪部材5に対する押込み方向の軸方向荷重が次第に大きくなる。
外輪部材5に対する押込み方向の軸方向荷重が弾性部材29の弾性力より大きくなると、キャリア14を介して外輪部材5に負荷される軸方向荷重が弾性部材29に負荷されるため、弾性部材29が弾性変形し、図6(b)に示すように、キャリア14はばねホルダ25との間に形成された軸方向すきま30を詰めるまで位置決め部18から離反する方向に移動する。
位置決め部18から離反する方向へのキャリア14の軸方向への移動により、図6(b)に示すように、アウタ側ディスク14bの軸挿入孔17の内径面と位置決め部18のテーパ状外径面に隙間45が形成されるため、回転軸10とキャリア14の結合が解除される。その結合解除により、回転軸10と摩擦接触している遊星ローラ21は自転しつつ公転し、その遊星ローラ21の外径面に形成された円周溝22と外輪部材5の内径面に設けられた螺旋突条6の噛み合いによって、外輪部材5が軸方向に移動する。
このように、外輪部材5に負荷される軸方向荷重が弾性部材29の弾性力を超えると、遊星ローラ21は自転しつつ公転するため、見かけのリード角が小さくなり、荷重変換率が大きなものとなる。
上記のように、弾性部材29によりキャリア14を回転軸10の軸端部に設けられた位置決め部18に向けて付勢して、外輪部材5に軸方向荷重が負荷されない場合に回転軸10とキャリア14を摩擦により結合し、外輪部材5に負荷される軸方向荷重が弾性部材29の弾性力を超えた場合に結合が解除されるようすることで、外輪部材5に作用する軸方向荷重の大きさに応じて、回転軸10の回転運動を外輪部材5の直線運動に変換する運動変換機構中の動力伝達経路を切換えることができる。
次に、外輪部材5に対して軸方向荷重が負荷されず、回転軸10とキャリア14が結合されて一体に回転し、遊星ローラ21が公転する場合、および、軸方向荷重が大きく、回転軸10とキャリア14の結合が解除されてキャリア14が回転軸10に対して相対回転可能となり、遊星ローラ21が自転しつつ公転する場合のそれぞれの場合における見かけのリード角α、αは、式(1)、(2)で定義することができる。
α=tan−1{(2・x)/(d・θ)} (1)
α=tan−1{(2・x)/(d・θ)} (2)
ここで、
α 軸方向荷重が負荷されない場合の見かけのリード角
α 軸方向荷重が大きい場合の見かけのリード角
外輪部材5の内径
回転軸10の外径
軸方向荷重が負荷されない場合の外輪部材5の軸方向移動量(=d/2・θ・tanα
軸方向荷重が大きい場合の外輪部材5の軸方向移動量(=d/2・(tanα−tanα)・θrev
α 外輪部材5の螺旋突条6のリード角
α 遊星ローラ21の円周溝22のリード角(=0deg)
θrev 遊星ローラ21の公転角度(=d/(d+d)・θ
θ 回転軸10の回転角度
であるから、式(1)、(2)は式(3)、(4)のように変換される。
α=tan−1(d/d・tanα) (3)
α=tan−1{d/(d+d)・tanα} (4)
また、荷重変換率βと見かけのリード角には、式(5)のような関係が成り立つため、見かけのリード角が小さくなれば荷重変換率βは大きくなる。
β=η/tanα (5)
η 直動機構効率
以上のことから、外輪部材5に軸方向荷重が負荷されていない場合、軸方向荷重が負荷されている場合と比較して見かけのリード角が大きくなり、回転軸10の回転量が小さくても軸方向に大きく移動することが分かる。つまり、制動開始初期(ブレーキ動作初期)のように荷重が小さい領域では、回転軸10の小さい回転量で外輪部材5が大きく軸方向に移動し、可動ブレーキパッド43とブレーキディスク41間の軸方向隙間44を素早く詰めることができ、電動式ディスクブレーキ装置の応答性を高めることができる。
一方、外輪部材5に負荷される軸方向荷重が大きくなると、見かけのリード角が小さく(荷重変換率が大きく)なり、小さなトルクで大きな軸方向力を発生させることが可能となるため、電動モータ11ひいては電動式直動アクチュエータの全体を大きくすることなく、電動式ディスクブレーキ装置に必要な大荷重を得ることができる。
また、弾性部材29によってキャリア14や遊星ローラ21に安定した荷重を付与することが可能となり、不安定な動作を回避することができる。さらに、キャリア14の一対のディスク14a、14bに形成するローラ軸19挿入用の軸孔を長孔から加工の容易な丸孔に変更することができ、加工コストの低減も図ることができる。
実施の形態では、位置決め部18をテーパ軸部とし、そのテーパ状外径面にアウタ側ディスク14bに形成した軸挿入孔17のテーパ状内径面を圧接させるようにしたが、回転軸10の軸端部にフランジを設け、そのフランジの側面にキャリア14のアウタ側ディスク14bを圧接させるようにしてもよい。
図2に示す実施の形態においては、図8(c)の拡大図で示すように、外輪部材5の内径面に設けた螺旋突条6を、その両側が相反する方向に傾斜する傾斜面とし、かつ、内径面を円筒面として断面V字状とし、一方、遊星ローラ21の円周溝22を、その両側が相反する方向に傾斜する傾斜面とし、かつ、溝底を円弧面とした断面V字状としているため、螺旋突条6を円周溝22にスムーズに噛み合わせることができ、円滑な動作を得ることができる。
図8(d)に示す例においては、螺旋突条6と円周溝22の噛み合わせをよりスムーズに行なわせるために、螺旋突条6の傾斜状側面6aおよび円周溝22の傾斜状側面22aの両方を凸形の円弧面としている。なお、螺旋突条6の傾斜状側面6aと円周溝22の傾斜状側面22aのいずれか一方を凸形の円弧面としてもよい。
A 電動式直動アクチュエータ
B 電動式ディスクブレーキ装置
1 ハウジング
2 ガイド筒
5 外輪部材
6 螺旋突条
7 軸受部材
10 回転軸
11 電動モータ
14 キャリア
18 位置決め部(摩擦締結手段)
21 遊星ローラ
22 円周溝
29 弾性部材(摩擦締結手段)
41 ブレーキディスク
43 可動ブレーキパッド

Claims (8)

  1. ハウジングに設けられたガイド筒内に外輪部材を組込み、その外輪部材の軸心上に電動モータによって回転駆動される回転軸を設け、その回転軸を中心にして回転自在に支持されたキャリアによって前記外輪部材の内径面と回転軸の外径面間に組込まれた遊星ローラを回転自在に支持し、その遊星ローラの外径面に前記外輪部材の内径面に設けられた螺旋突条に噛合する円周溝を形成し、前記回転軸の回転により、その回転軸との摩擦接触により遊星ローラを回転させて外輪部材を軸方向に移動させるようにした電動式直動アクチュエータにおいて、
    前記外輪部材に負荷される押込み方向の軸方向荷重が小さい場合に回転軸とキャリアを摩擦により結合して一体化し、軸方向荷重が大きい場合に、その負荷される軸方向荷重により結合を解除する摩擦締結手段を設けたことを特徴とする電動式直動アクチュエータ。
  2. 前記摩擦締結手段が、前記回転軸の軸端部に前記キャリアの軸方向への移動量を制限する位置決め部と、その位置決め部に向けてキャリアを付勢する弾性部材とからなる請求項1の電動式直動アクチュエータ。
  3. 前記位置決め部が、回転軸の軸端側を大径端とするテーパ軸部からなる請求項2に記載の電動式直動アクチュエータ。
  4. 前記弾性部材が、ハウジングによって軸方向に位置決めされて前記回転軸のトルク入力側の軸端部を回転自在に支持する軸受部材とキャリアの軸方向の対向部間に組込まれた請求項2又は3に記載の電動式直動アクチュエータ。
  5. 前記弾性部材が、皿ばね、コイルばね、ウェーブスプリングの一種からなる請求項2乃至4のいずれかの項に記載の電動式直動アクチュエータ。
  6. 前記螺旋突条および前記円周溝のそれぞれが、断面V字状とされた請求項1乃至5のいずれかの項に記載の電動式直動アクチュエータ。
  7. 前記螺旋突条の側面および円周溝の側面の少なくとも一方が、凸形の円弧面からなる請求項6に記載の電動式直動アクチュエータ。
  8. 電動式直動アクチュエータによりブレーキパッドを直線駆動し、そのブレーキパッドでブレーキディスクを押圧して、そのブレーキディスクに制動力を付与するようにした電動式ディスクブレーキ装置において、
    前記電動式直動アクチュエータが請求項1乃至7のいずれかの項に記載の電動式直動アクチュエータからなることを特徴とする電動式ディスクブレーキ装置。
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