JP2006070280A - めっき方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 希土類焼結磁石等のめっき対象物の腐食を防ぎ、めっき膜の密着性や信頼性を高め、しかも短時間でその処理を行うことのできるめっき方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 めっきの前処理として、酸洗浄後に、pH7.7以上のアルカリ性溶液を用いたアルカリ超音波洗浄処理をR−T−B系焼結磁石に施すことで、R−T−B系焼結磁石の表面を洗浄し、残存酸成分を除去するとともに、表面の活性度を抑える。これにより、めっき膜の密着性を向上させることができるとともに、めっき後にR−T−B系焼結磁石とめっき膜の界面に錆が生じるのを防止し、めっき膜の信頼性を高める。
【選択図】なし

Description

本発明は、例えばNd−Fe−B系に代表される希土類焼結磁石等の表面にめっきを施す際に用いるのに適しためっき方法に関する。
例えばNd−Fe−B系に代表される希土類焼結磁石等は、表面が酸化されやすいため、金属めっきや、樹脂によるコーティングによって、磁石本体の表面を保護する必要がある。
金属めっきを行う場合、磁石本体とめっき層との密着性、耐食性が求められるため、めっき処理に先立ち、磁石本体に対し、アルカリ脱脂、酸洗浄等といった、所定の前処理を施す必要がある。
この前処理の効果をより確実なものとするため、アルカリ脱脂、酸洗浄を経た後、酸性の薬液を用い、磁石本体の活性化を図り、めっき膜の密着性を高めるものがある(例えば、特許文献1参照。)。
また、磁石体の表面を酸で処理した後、超音波洗浄を用いるものもある(例えば、特許文献2参照。)。
特許第2520450号公報 特許第2968605号公報
ところが、特許文献1に記載された技術のように酸による活性化処理を行う場合を含め、めっき処理の際に、前処理に用いた薬品の残痕、特に酸成分が残っていると、めっき界面、すなわちめっき膜の下で磁石本体に錆(腐食)が生じる原因となってしまう。
この問題に対し、特許文献2に記載された技術においては、塩素イオン含有量が少ないイオン交換水等の中性の水や、残存酸成分を中和するための少量の塩基性化合物を溶解した弱アルカリ性の溶液を用い、超音波洗浄を行うことで、前処理後の磁石本体の表面を中性にすることを狙っている。
しかしながら、このように超音波洗浄を行っても、多数の磁石本体に対し、同様の処理を行うと、水や溶液が徐々に酸性化することもあり、残存酸成分を完全に除去するのは困難であった。
水や溶液を流しながら超音波洗浄を行ったり、超音波洗浄を行う時間を長くすれば、残存酸成分の除去効果は高まるが、それでは、製造工程上、時間がかかりすぎ、また超音波処理の間に磁石本体の表面が酸化してしまうため、好ましい解決方法ではない。
また、特許文献1の手法のように活性化処理を行うと、磁石本体の表面が非常に活性となり、活性化処理後、めっき処理を行うまでの間に、磁石本体の表面が酸化して酸化膜が形成されてしまうこともあり、これも品質上、好ましくない。
このように、従来の手法では、依然として、めっき後の磁石本体の耐食性、めっき膜の磁石本体への密着性は十分であるとは言いきれなかった。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、希土類焼結磁石等のめっき対象物の腐食を防ぎ、めっき膜の密着性や信頼性を高め、しかも短時間でその処理を行うことのできるめっき方法を提供することを目的とする。
かかる目的のもとになされた本発明のめっき方法は、めっき対象物を酸性溶液で洗浄する酸洗浄工程と、めっき対象物を、pH7.7以上のアルカリ性溶液に浸漬した状態で超音波振動を加えて洗浄するアルカリ超音波洗浄工程と、めっき槽中のめっき浴にめっき対象物を浸漬させて、めっき対象物にめっきを施すめっき工程と、を備えることを特徴とする。
このようにして、めっき工程に先立つ前処理として、酸洗浄工程、アルカリ超音波洗浄工程を行うことで、アルカリ超音波洗浄工程では、酸洗浄工程後にめっき対象物の表面に残存する酸成分を除去するとともに、酸洗浄工程において活性化されためっき対象物の活性度を低減させることができる。
なお、アルカリ超音波洗浄工程で用いるアルカリ性溶液のpH値を、7.7未満とすると、めっき対象物の残存酸成分を完全には除去できず、めっき対象物の酸化、表面への酸化膜生成等の要因に繋がる。また、複数のめっき対象物を順次洗浄する場合であっても、めっき対象物の残存酸成分によりアルカリ性溶液のpH値が徐々に下がり、作用が弱まってしまう。アルカリ超音波洗浄工程で用いるアルカリ性溶液のpH値を7.7以上とすることで、これらを回避することができる。
また、アルカリ超音波洗浄工程では、アルカリ性溶液の温度を5〜40℃とするのが好ましい。
ところで、このようなめっき方法は、いかなるめっき対象物であっても適用することができるが、特に、R−T−B(Rは希土類元素の1種又は2種以上、TはFe又はFe及びCoを必須とする少なくとも1種以上の遷移金属元素)系焼結磁石をめっき対象物とする場合に有効である。
本発明によれば、めっきの前処理として、酸洗浄処理後に、アルカリ超音波洗浄処理を施すことで、希土類焼結磁石等のめっき対象物の腐食、酸化膜の形成等を防ぎ、めっき膜の密着性や信頼性を高めることができる。しかも、そのための処理は短時間で確実に行うことができる。
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
ここでまず、本発明が適用される希土類焼結磁石について説明する。
本発明は、特にR−T−B系焼結磁石に適用することが望ましいが、他の希土類焼結磁石に本発明を適用することも可能である。以下、本発明をR−T−B系焼結磁石に適用する場合を例に挙げる。
R−T−B系焼結磁石は、希土類元素(R)を25〜37wt%含有する。ここで、本発明におけるRはYを含む概念を有しており、したがってY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuの1種又は2種以上から選択される。Rの量が25wt%未満であると、R−T−B系焼結磁石の主相となるR214B相の生成が十分ではなく軟磁性を持つα−Feなどが析出し、保磁力が著しく低下する。一方、Rが37wt%を超えると主相であるR214B相の体積比率が低下し、残留磁束密度が低下する。またRが酸素と反応し、含有する酸素量が増え、これに伴い保磁力発生に有効なRリッチ相が減少し、保磁力の低下を招く。したがって、Rの量は25〜37wt%とする。望ましいRの量は28〜35wt%、さらに望ましいRの量は29〜33wt%である。
また、本発明が適用されるR−T−B系焼結磁石は、ホウ素(B)を0.5〜4.5wt%含有する。Bが0.5wt%未満の場合には高い保磁力を得ることができない。一方で、Bが4.5wt%を超えると残留磁束密度が低下する傾向がある。したがって、Bの上限を4.5wt%とする。望ましいBの量は0.5〜1.5wt%、さらに望ましいBの量は0.8〜1.2wt%である。
本発明が適用されるR−T−B系焼結磁石は、Coを2.0wt%以下(0を含まず)、望ましくは0.1〜1.0wt%、さらに望ましくは0.3〜0.7wt%含有することができる。CoはFeと同様の相を形成するが、キュリー温度の向上、粒界相の耐食性向上に効果がある。
また、本発明が適用されるR−T−B系焼結磁石は、例えば、Al、Cu、Zr、Ti、Bi、Sn、Ga、Nb、Ta、Si、V、Ag、Ge等の元素を適宜含有させることができる。一方で、酸素、窒素、炭素等の不純物元素を極力低減することが望ましい。特に磁気特性を害する酸素は、その量を5000ppm以下、さらには3000ppm以下とすることが望ましい。酸素量が多いと非磁性成分である希土類酸化物相が増大して、磁気特性を低下させるからである。
次に、本発明を適用するR−T−B系焼結磁石の製造方法について説明する。
本発明を適用するR−T−B系焼結磁石は、以下のようにして製造することができる。
原料合金は、真空又は不活性ガス、望ましくはAr雰囲気中でストリップキャスト法、その他公知の溶解法により作製することができる。ストリップキャスト法は、原料金属をArガス雰囲気などの非酸化性雰囲気中で溶解して得た溶湯を回転するロールの表面に噴出させる。ロールで急冷された溶湯は、薄板または薄片(鱗片)状に急冷凝固される。この急冷凝固された合金は、結晶粒径が1〜50μmの均質な組織を有している。原料合金は、ストリップキャスト法に限らず、高周波誘導溶解等の溶解法によって得ることができる。なお、溶解後の偏析を防止するため、例えば水冷銅板に傾注して凝固させることができる。また、還元拡散法によって得られた合金を原料合金として用いることもできる。
R−T−B系焼結磁石を得る場合、R214B結晶粒を主体とする合金(低R合金)と、低R合金よりRを多く含む合金(高R合金)とを用いる所謂混合法を本発明に適用することもできる。
原料合金は粉砕工程に供される。混合法による場合には、低R合金及び高R合金は別々に又は一緒に粉砕される。粉砕工程には、粗粉砕工程と微粉砕工程とがある。まず、原料合金を、粒径数百μm程度になるまで粗粉砕する。粗粉砕は、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等を用い、不活性ガス雰囲気中にて行うことが望ましい。粗粉砕に先立って、原料合金に水素を吸蔵させた後に放出させることにより粉砕を行うことが効果的である。この水素放出処理は、希土類焼結磁石として不純物となる水素を減少させることを目的として行われる。水素吸蔵のための加熱保持の温度は、200℃以上、望ましくは350℃以上とする。保持時間は、保持温度との関係、原料合金の厚さ等によって変わるが、少なくとも30分以上、望ましくは1時間以上とする。水素放出処理は、真空中又はArガスフローにて行う。なお、水素吸蔵処理、水素放出処理は必須の処理ではない。この水素粉砕を粗粉砕と位置付けて、機械的な粗粉砕を省略することもできる。
粗粉砕工程後、微粉砕工程に移る。微粉砕には主にジェットミルが用いられ、粒径数百μm程度の粗粉砕粉末を、平均粒径2.5〜6μm、望ましくは3〜5μmとする。ジェットミルは、高圧の不活性ガスを狭いノズルより開放して高速のガス流を発生させ、この高速のガス流により粗粉砕粉末を加速し、粗粉砕粉末同士の衝突やターゲットあるいは容器壁との衝突を発生させて粉砕する方法である。
混合法による場合、2種の合金の混合のタイミングは限定されるものではないが、微粉砕工程において低R合金及び高R合金を別々に粉砕した場合には、微粉砕された低R合金粉末及び高R合金粉末を窒素雰囲気中で混合する。低R合金粉末及び高R合金粉末の混合比率は、重量比で80:20〜97:3程度とすればよい。低R合金及び高R合金を一緒に粉砕する場合の混合比率も同様である。なお、成形時の潤滑及び配向性の向上を目的とした脂肪酸又は脂肪酸の誘導体や炭化水素、例えばステアリン酸系やオレイン酸系であるステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、炭化水素であるパラフィン、ナフタレン等を微粉砕時に0.01〜0.3wt%程度添加することができる。
以上で得られた微粉砕粉末は例えば磁場中成形に供される。
磁場中成形における成形圧力は0.3〜3ton/cm2(30〜300MPa)の範囲とすればよい。成形圧力は成形開始から終了まで一定であってもよく、漸増または漸減してもよく、あるいは不規則変化してもよい。成形圧力が低いほど配向性は良好となるが、成形圧力が低すぎると成形体の強度が不足してハンドリングに問題が生じるので、この点を考慮して上記範囲から成形圧力を選択する。磁場中成形で得られる成形体の最終的な相対密度は、通常、50〜60%である。
印加する磁場は、12〜20kOe(960〜1600kA/m)程度とすればよい。印加する磁場は静磁場に限定されず、パルス状の磁場とすることもできる。また、静磁場とパルス状磁場を併用することもできる。
次いで、成形体を真空又は不活性ガス雰囲気中で焼結する。焼結温度は、組成、粉砕方法、平均粒径と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要があるが、1000〜1200℃で1〜10時間程度焼結すればよい。
焼結後、得られた焼結体に時効処理を施すことができる。この工程は、保磁力を制御する重要な工程である。時効処理を2段に分けて行う場合には、800℃近傍、600℃近傍での所定時間の保持が有効である。800℃近傍での熱処理を焼結後に行うと、保磁力が増大するため、混合法においては特に有効である。また、600℃近傍の熱処理で保磁力が大きく増加するため、時効処理を1段で行う場合には、600℃近傍の時効処理を施すとよい。
このようにして得られたR−T−B系焼結磁石は、NC(Numerical Control)制御の加工機械等により、所定形状に加工される。
この後、このR−T−B系焼結磁石をめっき対象物とし、本発明を適用してめっき処理する。
なおここで、本発明を適用してめっき処理するR−T−B系焼結磁石は、上記した製造方法に限らず、他の製造方法によって製造したものであっても良い。
R−T−B系焼結磁石は、めっき処理に先立ち、図1に示すように、まず、R−T−B系焼結磁石の表面を研磨するバレル研磨が行われる(工程S101)。続いて、バレル研磨によって生じる微粉や研磨時に用いる油分等を除去するため、R−T−B系焼結磁石をアルカリ性溶液で脱脂する(工程S102)。
そして、この後に行われるめっき処理によって成膜されるめっき膜とR−T−B系焼結磁石との密着性を高めるための前処理として、まず、0<pH≦2の酸性溶液による酸洗浄処理(いわゆる酸洗浄:工程S103)が行われる。
なお、ここまでの工程の詳細な条件や手順、用いる装置等については何ら限定するものではない。
次いで、R−T−B系焼結磁石に対し、アルカリ超音波洗浄処理を施す(工程S104)。
アルカリ超音波洗浄処理は、アルカリ性溶液を満たした処理槽中にR−T−B系焼結磁石を浸漬した状態で、処理槽に超音波振動子で超音波振動を加えることで、R−T−B系焼結磁石を洗浄する処理である。これにより、R−T−B系焼結磁石の表面を洗浄するとともに、工程S103の酸洗浄処理によって活性化されたR−T−B系焼結磁石の活性度を抑える。
このとき、用いるアルカリ性溶液は、pH値が7.7以上13以下となるように調製するのが好ましい。また、処理時のアルカリ性溶液の温度は、5〜40℃とするのが好ましく、さらには5〜30℃とするのが好ましい。
pH値がこれよりも小さいと、R−T−B系焼結磁石の表面の残存酸成分が十分に除去できない可能性が高い。さらには、残存酸成分によりR−T−B系焼結磁石の表面活性が高まり、アルカリ性溶液中に溶存している酸素が表面に吸着し、酸化皮膜等の異物を界面に形成してしまう可能性があるからである。
一方、pH値が前記した上限値よりも大きいと、R−T−B系焼結磁石の表面にアルカリ成分を残存させたままめっき処理が施されてしまう。また、残存酸成分は前記した範囲内で十分に除去されるので、それ以上pH値を大きくしても、いたずらにコストアップを招くだけで、有効ではない。
また、処理時のアルカリ性溶液の温度が、前記した上限値を超えると、R−T−B系焼結磁石の表面活性が落ちて、めっき膜との密着性の低下を引き起こす可能性がある。
なお、上記の工程S101、S102、S103、S104の間においては、R−T−B系焼結磁石を1分程度、水洗いするのが好ましい。
さて、上記のように前処理が施されたR−T−B系焼結磁石は、めっき槽に浸漬され、所定のめっき処理が施される(工程S105)。
ここで、めっきには、Niめっき、Cuめっき、Snめっき等を用いることができ、めっき槽には、用いるめっきの種類に応じためっき浴が満たされる。また、めっき法としては、電解めっきあるいは無電解めっきを用いることができる。
このようにして、めっきの前処理として、酸洗浄後にアルカリ超音波洗浄処理をR−T−B系焼結磁石に施すことで、R−T−B系焼結磁石の表面を洗浄し、残存酸成分を除去するとともに、表面の活性度を抑えることができる。めっきを行うまでの間にR−T−B系焼結磁石の表面が酸化して酸化膜が形成される等の事態も回避することができる。これにより、めっき膜の密着性を向上させることができるとともに、めっき後にR−T−B系焼結磁石とめっき膜の界面に錆が生じるのを防止し、めっき膜の信頼性を高めることができる。また、中性〜弱アルカリ性ではなく、pH7.7以上のアルカリ性溶液を用いることで、残存酸成分の除去処理を短時間で確実に行うことができる。
さらに、超音波洗浄を組み合わせているので、処理槽中において複数のR−T−B系焼結磁石が重なり合っているような場合であっても、確実に洗浄効果を発揮でき、また処理の短時間化にも貢献できる。
なお、本発明は、同じ種類のめっきを複数回行う場合や、複数種のめっきを順次行う場合にも適用できる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
ここで、アルカリ超音波洗浄処理による効果を確認したのでその結果を示す。
まず、めっき対象となるR−T−B系焼結磁石は、以下のようにして製造した。
ストリップキャスト法により、26.5wt%Nd−5.9wt%Dy−0.25wt%Al−0.5wt%Co−0.07wt%Cu−1.0wt%B−Fe.balの組成を有する原料合金を作製した。
次いで、室温にて原料合金に水素を吸蔵させた後、Ar雰囲気中で600℃×1時間の脱水素を行う水素粉砕処理を行った。
水素粉砕処理が施された合金に、粉砕性の向上並びに成形時の配向性の向上に寄与する潤滑剤を0.05〜0.1%混合した。潤滑剤の混合は、例えばナウターミキサー等により5〜30分間ほど行う程度でよい。その後、ジェットミルを用いて平均粒径が5.0μmの微粉砕粉末を得た。
微粉砕粉末を磁場中成形し、これによって得られた成形体を真空中およびAr雰囲気中で1080℃まで昇温し4時間保持して焼結を行った。次いで得られた焼結体に800℃×1時間と560℃×1時間(ともにAr雰囲気中)の2段時効処理を施した。
このようにして得られたR−T−B系焼結磁石を、縦40mm、横30mm、厚さ5mmの平板状に加工した後、バレル研磨、脱脂処理を行った。
続いて、めっき処理に先立つ前処理として、R−T−B系焼結磁石に、酸洗浄処理、アルカリ超音波洗浄処理を施した。
酸洗浄処理は、濃度5%の硝酸に、R−T−B系焼結磁石を3分間浸漬することで行った。
アルカリ超音波洗浄処理は、pH8.5(試料1)、pH13.0(試料2)のNaOH溶液(温度は10℃)に、R−T−B系焼結磁石を5分間浸漬し、周波数28kHzの超音波を加えた。
また、比較のため、pH7.5の弱アルカリ性のNaOH溶液(比較試料1)、pH5.0の酸性の硝酸溶液(比較試料2)に、同様にR−T−B系焼結磁石を5分間浸漬し、周波数28kHzの超音波を加えた。
なお、バレル研磨、脱脂処理、酸洗浄処理、アルカリ超音波洗浄処理の間においては、R−T−B系焼結磁石を、60L(リットル)の水に揺動させながら1分間浸漬することで、水洗いを施した。
この後、60L(リットル)のワット浴に、R−T−B系焼結磁石を浸漬し、電気Niめっきを行った。このとき、成膜速度は3(μm/hr)とし、浸漬後5時間経過した時点で、R−T−B系焼結磁石をめっき浴から引き上げた。
めっき処理後、試料1、2、比較試料1、2のそれぞれについて、R−T−B系焼結磁石の表面に形成されためっき膜を評価した。評価項目としては、めっき膜厚、密着性、信頼性とした。めっき膜厚は、蛍光X線分析で計測した。
密着性は、以下に示す方法で評価した。まずめっき後の磁石表面に10mmの幅で深さ30〜40μm、長さ20〜30mmの切れ目を2本平行に入れる。さらに、これら2本の切れ目の片端に、これら2本の切れ目とほぼ垂直になるように同様の深さの切れ目を形成し、ほぼコ字状の切れ目を形成した。この切れ目の先端部分(2本の切れ目にほぼ垂直に形成した切れ目の部分)から、磁石平面に対し垂直にめっき膜のみを引き剥がし、そのときの引き剥がし力を測定した。
信頼性は、35℃、濃度5%のNaCl水溶液を24時間噴霧して塩水噴霧試験を行い、試験後の試料について、めっき膜のハガレ、点錆、フクレを目視にて観察し、評価した。
その結果を表1に示す。
Figure 2006070280
試料1、2、比較試料1、2とも、めっき膜厚は、いずれも13〜17μmの値を示していた。
表1に示すように、密着性、信頼性に関しては、アルカリ性溶液で超音波洗浄処理を行った試料1、2では、密着性試験に何ら問題はなく、また信頼性についても、めっき膜のフクレ、点錆ともに認められず、良好な結果が得られた。これに対し、弱アルカリ性溶液または酸性溶液で超音波洗浄処理を行った比較試料1、2では、密着性試験において、10MPa以下の引き剥がし力でめっき膜のハガレが生じ、また信頼性の評価においては、いずれも点錆、めっき膜のフクレが認められた。これにより、酸洗浄後、アルカリ超音波洗浄を行うことで、密着性、信頼性が向上しているのがわかる。
次に、アルカリ超音波洗浄の温度を変化させた場合について、効果を確認したのでその結果を示す。
めっき対象となるR−T−B系焼結磁石は、実施例1と同様にして製造した。
バレル研磨、脱脂処理の後、前処理として、R−T−B系焼結磁石に対し、実施例1と同様の条件で酸洗浄処理を施した後、pH8.5のNaOH溶液にR−T−B系焼結磁石を5分間浸漬し、周波数28kHzの超音波を加えて、アルカリ超音波洗浄処理を施した。このとき、NaOH溶液の温度は、実施例1と同様の10℃(試料3)の他、30℃(試料4)、50℃(試料5)とした。
なお、バレル研磨、脱脂処理、酸洗浄処理、アルカリ超音波洗浄処理の間においては、実施例1と同様にして、R−T−B系焼結磁石を水洗いしている。
この後、実施例1と同様の条件でR−T−B系焼結磁石にめっき処理を施した。
めっき処理後、R−T−B系焼結磁石の表面に形成されためっき膜を、実施例1と同様にして評価した。
その結果を表2に示す。
Figure 2006070280
表2に示すように、アルカリ超音波洗浄処理における処理温度を10℃、30℃とした試料3、4においては、密着性、信頼性に関して何らの問題はなく、良好な結果が得られた。これに対し、処理温度を50℃とした試料5においては、密着性試験において、30MPa以下の引き剥がし力でめっき膜のハガレが生じ、また信頼性の評価においては、めっき膜のフクレが認められた。これにより、アルカリ超音波洗浄処理を50℃以上とすると、密着性、信頼性が低下してしまうのがわかる。
本実施の形態におけるめっき方法の流れを示す図である。

Claims (4)

  1. めっき対象物を酸性溶液で洗浄する酸洗浄工程と、
    前記めっき対象物を、pH7.7以上のアルカリ性溶液に浸漬した状態で超音波振動を加えて洗浄するアルカリ超音波洗浄工程と、
    めっき槽中のめっき浴に前記めっき対象物を浸漬させて、前記めっき対象物にめっきを施すめっき工程と、
    を備えることを特徴とするめっき方法。
  2. 前記アルカリ超音波洗浄工程において、前記アルカリ性溶液の温度を5〜40℃とすることを特徴とする請求項1に記載のめっき方法。
  3. 前記アルカリ超音波洗浄工程により、前記酸洗浄工程にて前記めっき対象物の表面に残存した酸成分を除去するとともに、前記酸洗浄工程において活性化された前記めっき対象物の活性度を低減させることを特徴とする請求項1または2に記載のめっき方法。
  4. 前記めっき対象物は、R−T−B(Rは希土類元素の1種又は2種以上、TはFe又はFe及びCoを必須とする少なくとも1種以上の遷移金属元素)系焼結磁石であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のめっき方法。
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