JP2006069169A - 平版印刷用湿し水組成物 - Google Patents
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【解決手段】エチレンジアミンにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加した化合物であって重量平均分子量が500〜1500である該化合物と、ブロモニトロアルコール系化合物、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン化合物、p−ヒドロキシ安息香酸誘導体、アゾール系化合物及び複素環アルキルアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有することを特徴とする平版印刷用湿し水組成物。
Description
しかしながら、このイソプロピルアルコールは水と蒸発のし易さが異なるために、湿し水のイソプロピルアルコール濃度を一定に保つための特殊な高価な装置が必要である。また、イソプロピルアルコールは特有の不快臭があることと共に、毒性の面でも問題があり、有機溶剤中毒予防規則(有機則)第2種有機溶剤であって規制を受ける。さらに、危険物第4類アルコール類に該当し、引火し易い化合物であるため、取り扱いや保管管理に注意が必要で作業環境上好ましくない。また、このイソプロピルアルコールを添加した湿し水を、通常の水棒を用いるオフセット印刷に適用しても、ローラー上および版面上でイソプロピルアルコールが蒸発するため、その効果を発揮することができないなどの問題があった。
一方、イソプロピルアルコール代替化合物として不揮発性もしくは高沸点化合物を使用する技術も開発されている。例えば、特定のアルキレンオキサイド系非イオン系界面活性剤を湿し水組成物に含めることが提案され(例えば、特許文献2参照。)、及び、アルキレンジアミンのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物を湿し水組成物に含めることが提案されている(例えば、特許文献3及び4参照。)。しかしながら、このような湿し水組成物を用いたとき、印刷機停止時に版面上に残った湿し水が水滴となり水分が蒸発すると、これらの不揮発性もしくは高沸点の化合物が濃縮されて残存し、平版印刷版の画像領域を溶解し画像を損なうという欠点がある。
従って本発明は、エチレンジアミンにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加した化合物であって重量平均分子量が500〜1500である該化合物と、ブロモニトロアルコール系化合物、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン化合物、p−ヒドロキシ安息香酸誘導体、アゾール系化合物及び複素環アルキルアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有することを特徴とする平版印刷用湿し水組成物である。
本発明の好ましい実施態様として、使用するエチレンジアミンにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加した化合物において、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加モル数比率が5:95〜50:50であることが挙げられる。
本発明の湿し水組成物の別の好ましい実施態様として、ポリビニルピロリドンをさらに含有させることが挙げられる。本発明の好ましい実施態様としてまた、さらに糖類及びグリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有させることが挙げられる。従って本発明のより好ましい実施態様として、ポリビニルピロリドンと、糖類及びグリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種とを含有させることが挙げられる。
本発明の湿し水組成物はまた、その好ましい実施態様として、実質的に揮発性有機溶剤を含まない湿し水組成物とする。
本発明の湿し水組成物によれば、実質的に揮発性有機溶剤を含まずにイソプロピルアルコールを完全に代替することができ、労働衛生上及び消防安全上の問題が全くない上、高品質の印刷物を得ることができ、印刷の能率化、生産性の向上を図ることができる。
本発明で使用される、エチレンジアミンにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加した化合物は、重量平均分子量が500〜1500のものであり、好ましくは800〜1200であり、最適なのは重量平均分子量1000付近のものである。
このような分子量を有する上記化合物は、印刷機停止時に版上に残った水滴が放置により水が蒸発し、濃縮されて残ったときでも、画像領域にダメージを与えることがない。上記化合物はまた、揮発性を有する有機溶剤と併用することなしに、イソプロピルアルコールを代替することが可能である。
エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの結合構造としては、先にエチレンオキサイドを付加し、その後プロピレンオキサイドを付加したブロック構造、先にプロピレンオキサイドを付加し、その後エチレンオキサイドを付加したブロック構造、同時にエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加したランダム構造があるが、いずれの構造のものもほぼ同様の効果が得られる。
本発明で使用される、エチレンジアミンにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加した化合物は、常法に従って製造することができ、例えばエチレンジアミンに触媒の存在下でエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを反応させる。
該化合物の分子量やエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの比率は、例えば水酸基価及びアミン価の測定、NMR測定などにより決定することができる。
本発明で使用するブロモニトロアルコール系化合物は、下記一般式〔A〕〜〔C〕で表される化合物を包含する。
本発明で使用するブロモニトロアルコール系化合物のうち特に好ましいものは、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール(プロノポール)、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−エタノール(DBNE)、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−プロパノール(DBNP)、3−ブロモ−3−ニトロペンタン−2,4−ジオールなどである。ブロモニトロアルコール系化合物は、水難溶性物質のものが多いがメタノール、グリコール系の有機溶剤に溶解して用いることができる。また、有機溶剤を用いなくてもアニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤を併用することによっても湿し水として使用できる。
ブロモニトロアルコール系化合物の湿し水における含有量は、0.001〜5質量%が適当であり、好ましくは0.005〜3質量%である。
上記式中、Rがアルキル基を表すとき、低級アルキル基が好ましく、具体的に炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましく、特にメチル基が挙げられる。Xがアルキル基を表すとき、低級アルキル基が好ましく、具体的に炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましい。Xがアルコキシ基を表すとき、炭素原子数1〜4のアルコキシ基が好ましい。Xがハロゲン原子を表すとき、塩素原子、臭素原子が好ましい。
本発明で使用する1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン化合物のうち、好ましく使用されるものとして以下のものがある。
本発明で使用する湿し水には、p−ヒドロキシ安息香酸誘導体を1種又は2種以上使用することができる。
湿し水におけるp−ヒドロキシ安息香酸誘導体の添加量は、0.001〜5質量%が適当であり、好ましくは0.005〜3質量%である。
湿し水におけるアゾール化合物の添加量は、0.001〜5質量%が適当であり、好ましくは0.005〜3質量%である。
湿し水における複素環アルキルアンモニウム塩の添加量は、0.001〜5質量%が適当であり、好ましくは0.005〜3質量%である。
このような水溶性高分子化合物の具体的な例としてはアラビアゴム、澱粉誘導体(例えばデキストリン、酵素分解デキストリン、ヒドロキシプロピル化酵素分解デキストリン、カルボキシメチル化澱粉、燐酸澱粉、オクテニルコハク化澱粉など)、アルギン酸塩、繊維素誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、それらのグリオキサール変性体など)の天然物とその変性体及びポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及びその共重合体、ポリアクリル酸及びその共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体などの合成物が挙げられる。これらの高分子化合物は単独でまたは混合して使用でき、その添加量は湿し水中、0.0001〜5質量%、より好ましくは、0.003〜1質量%が適当である。
これらポリビニルピロリドンは1種単独でも、又は分子量の異なるものを2種以上組み合わせて使用することもできる。また、低分子量のポリビニルピロリドン、例えば重合度3〜5のビニルピロリドンオリゴマーと組み合わせることができる。
このようなポリビニルピロリドンとしては、市販品を使用することができる。例えば、ISP社製のK−15、K−30、K−60、K−90、K−120などの各種グレートのものを使用することができる。
湿し水におけるポリビニルピロリドンの含有量は、0.001〜0.3質量%が適当であり、好ましくは0.005〜0.2質量%である。
またグリセリンを単独で使用してもよく、又は糖類と併用してもよい。
湿し水において、糖類及びグリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種の含有量は0.01〜1質量%が適当であり、好ましくは0.05〜0.5質量%である。
上記のキレート剤のナトリウム塩あるいはカリウム塩の代わりに有機アミンの塩も有効である。
これらのキレート剤は湿し水中に安定に存在し、印刷性を阻害しないものが選ばれる。添加する量としては湿し水中0.001〜3質量%、好ましくは0.01〜1質量%が適当である。
消泡剤としてはシリコン消泡剤が好ましく、その中で乳化分散型及び可溶化型などのいずれも使用することができる。
これらの界面活性剤の含有量は発泡の点を考慮すると、湿し水中10質量%以下、好ましくは0.01〜3.0質量%が適当である。
これらの湿潤剤を単独又は2種以上の併用で、湿し水中0.01〜1質量%程度含ませることができる。
従って、上述の各種成分の湿し水における含有量や湿し水組成物の希釈率などを考慮して、水、好ましくは脱塩水、即ち、純水を使用して各種成分を適宜な濃度で溶解し、濃縮液である湿し水組成物を得ることができる。このような濃縮液を、通常使用時に水道水、井戸水等で10〜200倍程度に希釈し、使用時の湿し水とする。
ASTM D 2369-95の測定法は、試料3mlを熱風オーブン110℃で1時間の条件で、次式により揮発性有機溶剤量を求めるものである。
式:{(試料の質量−加熱残分の質量−試料中の水分質量)/(試料の質量)}×100=揮発性有機溶剤量(質量%)
また、使用時の湿し水中1〜15質量%のイソプロピルアルコールを併用しても印刷品質上問題はない。
さらに、可視や赤外線のレーザーで直接露光するCTPプレートにも好適に使用することができる。具体例としてはフォトポリマータイプデジタルプレート(例えば富士写真フイルム(株)製LP−NX)や、サーマルポジタイプデジタルプレート(例えば富士写真フイルム(株)製LH−PI)、及びサーマルネガタイプデジタルプレート(例えば富士写真フイルム(株)製LH−NI)などが挙げられる。
下記表1〜2の組成に従って、実施例1〜7及び比較例1〜7の各種湿し水組成物を調製した。組成の残余は水であり最終的に1000mlとした。組成物における各成分の含有量の単位は、リン酸第一アンモニウム、酢酸アンモニウム、クエン酸第二アンモニウム及びこれらの合計についてはモル/リットルであり、その他はグラムである。これらはいずれも濃縮タイプで、使用時に希釈する。
[テスト方法]
印刷機はハイデルMOV(アルカラー給水装置)を使用して、東洋インキ(株)の名称ハイユニティのプロセス4色(墨、藍、紅、黄)インキと、使用プレートとして富士写真フイルム(株)製のポジ型PS版VSのベタ部と30%網点部のフィルムを用いて、富士写真フイルム製FQIチャートのフィルムを用い、ウシオ製PSライトで露光後、富士写真フイルム製現像液DP−4で現像処理を行い、富士写真フイルム製ガム液FP−2でガム引き処理を行って製版したものを用いて、印刷テストを実施した。
(a) 連続印刷安定性:
汚れを生じず、水負けを起こさない湿し水の量(最小水上げ量)を求め、印刷物の汚れの発生、又は水負けにより良好な印刷物が得られなくなるまでの印刷枚数により判定する。
10000枚以上 A
10000〜3000枚以上 B
2999枚以下 C
10000枚以上 A
10000〜3000枚以上 B
2999枚以下 C
(c) 画像部劣化
印刷機を停止し、PS版のベタ部と30%網点部の画像部にシリンジを用いて、それぞれの湿し水を5μl、10μl、20μl及び50μlを滴下し、60分間放置する。その後印刷を再開し、画像領域の劣化について評価する。
問題なし A
若干劣化有り(リング状跡有り) B
劣化 C
テスト結果を下記の表1〜2に併せて示す。
Claims (8)
- エチレンジアミンにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加した化合物であって重量平均分子量が500〜1500である該化合物と、ブロモニトロアルコール系化合物、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン化合物、p−ヒドロキシ安息香酸誘導体、アゾール系化合物及び複素環アルキルアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有することを特徴とする平版印刷用湿し水組成物。
- さらにポリビニルピロリドンを含有する請求項1記載の平版印刷用湿し水組成物。
- ブロモニトロアルコール系化合物が2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−エタノール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−プロパノール及び3−ブロモ−3−ニトロペンタン−2,4−ジオールから選ばれる請求項1又は2記載の平版印刷用湿し水組成物。
- p−ヒドロキシ安息香酸誘導体が、p−ヒドロキシ安息香酸イソブチル,p−ヒドロキシ安息香酸イソプロピル,p−ヒドロキシ安息香酸エチル,p−ヒドロキシ安息香酸ブチル,p−ヒドロキシ安息香酸プロピル,p−ヒドロキシ安息香酸メチル、及びp−ヒドロキシ安息香酸ビニルから選ばれる請求項1又は2記載の平版印刷用湿し水組成物。
- アゾール系化合物が、α−(4−クロロフェニル)−α−(1−シクロプロピルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール、α−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−α−(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール、及び1−[[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−n−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾールから選ばれる、請求項1又は2記載の平版印刷用湿し水組成物。
- 複素環アルキルアンモニウム塩のアルキル基が炭素原子数8〜18のアルキル基である請求項1又は2記載の平版印刷用湿し水組成物。
- 実質的に揮発性有機溶剤を含まない請求項1〜7のいずれか1項記載の平版印刷用湿し水組成物。
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