JP4920289B2 - 平版印刷用湿し水組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、平版印刷用湿し水組成物に関するものであり、より具体的には平版印刷版のオフセット印刷法に有用な湿し水組成物に関する。
平版印刷は水と油が本質的に混じり合わない性質を巧みに利用した印刷方式であり、印刷版面は水を受容し油性インキを反撥する領域と、水を反撥し油性インキを受容する領域からなり、前者が非画像領域であり、後者が画像領域である。
平版印刷法では一般的に湿し水を用いて、非画像領域を湿潤させて画像領域と非画像領域との界面化学的な差を拡大して、非画像領域のインキ反撥性と画像領域のインキ受容性とを増大させることがなされる。
通常湿し水には平版印刷版の非画像領域のインキ反発性を維持するため、硝酸、リン酸、ホスホン酸、硫酸、塩酸またはこれらの塩等が添加されている。
特にリン酸及び/又はリン酸塩、ホスホン酸及び/又はホスホン酸塩は印刷版の非画像領域の親水性を高めるため、有効に用いられている。
一方、湿し水は通常濃縮液の形態で供給され、使用時に水道水や井戸水などで希釈して使用される。その水道水や井戸水に含まれているカルシウムイオンなどが湿し水中の成分と反応して不溶性の析出物を生成し、この析出物が印刷機のロールに付着して印刷に悪影響を与える原因となることがある。
さらに近年、環境保全の観点から増加しつつある再生紙、さらには再生紙の白色度を高めるために、炭酸カルシウムのような多価金属の塩類を多量に含む塗工層を表面に設けた軽量コート再生紙などが増えてきており、これらの印刷用紙を用いて印刷した場合、湿し水の長期間の連続使用条件下において、湿し水が紙の表面コート層から炭酸カルシウムを溶解する結果、湿し水中のカルシウムイオンの濃度が増大していく傾向がある。
このようにして増大した湿し水中のカルシウムイオンが、前述のリン酸及び/又はリン酸塩、あるいはホスホン酸及び/又はホスホン酸塩と反応し、不溶性の塩を形成することがある。このような不溶性の塩が印刷版の画像領域上に析出、付着したり、印刷機のインキロール上に付着、堆積して、インキの正常な転移性を損なうことになり、インキ着肉性の低下や、いわゆるローラーストリップ(インキロール上のインキ剥げ)などの問題を引き起こす場合があった。
これらの問題を解消するために、湿し水中のリン酸及び/又はリン酸塩、ホスホン酸及び/又はホスホン酸塩等を除去した湿し水が提案されているが(例えば特許文献1及び特許文献2参照。)、これらの湿し水では印刷版非画像領域の親水性が不足し、良好なインキ反発性を十分に維持することができない。
特開2004−106531号公報 特開2005−53189号公報
本発明の目的は、従来の技術にある問題を解消し、印刷版非画像領域の親水性を維持することが可能で、且つ湿し水中にカルシウムイオンが混入しても、これと反応して不溶性の塩を形成することなく、印刷版の画像領域上や、印刷機のインキロール上へのカルシウム塩などの析出を防止し、着肉性の低下やローラーストリップ現象の発生を抑制し、良好な印刷適性を示す平版印刷用湿し水組成物を提供することにある。本発明の目的はまた、動的表面張力が低く、高速度で回転する部材の条件下でも、良好で安定した印刷適性を発揮し、優れた印刷物を得ることができ、長時間の安定した連続印刷が可能な平版印刷用湿し水組成物を提供することにある。
本発明者は、上記課題を達成するために平版印刷用湿し水組成物について研究を重ねた結果、特定の化合物を組み合わせて使用することにより、優れた湿し水組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
従って本発明は、下記一般式(I)で示される化合物の少なくとも1種及び下記一般式(II)で示される化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする、平版印刷用湿し水組成物である。
Figure 0004920289
(式中、M1及びM2はそれぞれ独立して水素原子、Na、K、NH4又はN(R)4(Rは置換又は未置換のアルキル基を表す。)を表す。)
Figure 0004920289
(式中、A及びBはそれぞれ独立に−CH2CH2O−又は−CH2CH(CH3)O−を表し、A及びBは互いに異なる基であって、a、b、c、d、e、f、g及びhはそれぞれ、0〜50の整数を表し、但しa、c、e及びgのうち少なくとも一つは1以上であり、及びb、d、f及びhのうち少なくとも一つは1以上であり、及びpは0又は1である。)
本発明の湿し水組成物の好ましい実施態様では、pH緩衝性を有する有機酸及びその塩類から選ばれる少なくとも1種を含ませる。このような有機酸及びその塩類として特に、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、グルコン酸、乳酸及びそれらの塩類が挙げられる。
本発明の湿し水組成物の実施態様として、下記一般式(III)で示される化合物及び/又は2−エチル−1,3−ヘキサンジオールをさらに含ませることができる。
1O−(−CH2CH(R2)−O−)m−H (III)
(式中、R1は炭素原子数3〜8のアルキル基を表し、R2は水素原子又はメチル基を表し、mは1〜3の整数を表す。)
本発明の湿し水組成物は、リン酸、リン酸塩、ホスホン酸及びホスホン酸塩のいずれも含まない組成とすることが望ましい。
本発明の平版印刷用湿し水組成物は、印刷版非画像領域での水保持性が良く、良好なインキ反発性を維持することで印刷汚れなどの問題を生じることがない平版印刷用湿し水組成物である。また、印刷版の画像領域上や印刷機のインキロール上にカルシウム塩などの不溶性塩を析出させることなく、着肉不良やローラーストリップ現象の発生を充分に抑制することができる。
本発明の平版印刷用湿し水組成物は、印刷版面への濡れ性に優れ、長時間の連続印刷条件下においても、インキロール上のインキを印刷に好適な状態に安定に維持することができる。本発明の平版印刷用湿し水組成物によれば、印刷時に、印刷版の汚れ、ブラインディング、水負け、及びインキ着肉不良といった問題を発生させずに長期間安定に連続印刷をすることができ、印刷適性が良好である。
本発明の平版印刷用湿し水組成物によればまた、長時間にわたり印刷版を交換することなく多部数の印刷を行っても、非画像部に地汚れが発生したり、網点ハイライト部分の飛びなどの画像欠落を起こすことなく、安定に高品質の印刷物を得ることができ、印刷の能率化、生産性の向上を図ることができる。本発明の平版印刷用湿し水組成物によれば、印刷機を一旦停止した後の印刷再スタート時のインキ汚れの回復が早い。よって損紙が少なく印刷を再開することができる。
本発明の平版印刷用湿し水組成物はまた、印刷作業にあたって、専門的熟練を必要とすることなく、各種の連続給水式印刷機において湿し水組成物中のイソプロピルアルコールを代替することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
湿し水は通常商業ベースとするときは濃縮化し商品化するのが一般的であり、使用するときに、そのような濃縮液を適宜希釈して湿し水として使用することになる。本明細書中では濃縮化されたものを湿し水組成物と称する。
本明細書中で以下に言及する各種成分の含有量や添加量は、特に記載しない限り、使用時の湿し水の全質量に基づいたものである。
[一般式(I)で示される化合物]
本発明の平版印刷用湿し水組成物は、下記一般式(I)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種を含む。
Figure 0004920289
(式中、M1及びM2はそれぞれ独立して水素原子、Na、K、NH4又はN(R)4(Rは置換又は未置換のアルキル基を表す。)を表す。)
上記一般式(I)において、M1又はM2がN(R)4(Rは置換又は未置換のアルキル基を表す。)のとき、該アルキル基は一般に炭素原子数1〜8のアルキル基であり、置換基としては水酸基、炭素原子数6以下のアルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基などが挙げられる。
上記一般式(I)で示される化合物は市場で一般に入手することができ、本発明において市販品を使用することができる。一般式(I)の化合物の市販品の例として、東京化成工業社製のイミノ二酢酸、及び同仁化学研究所製の商品名IDAなどがある。
本発明の湿し水組成物において、一般式(I)で示される化合物を1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。湿し水における一般式(I)で示される化合物の含有量は、一般に0.001〜1.0質量%の範囲であり、この範囲にあると非画像領域の親水性の維持が良好で、且つインキロール上へのカルシウム塩などの析出、堆積を防止でき、インキロール上のインキ剥げに関して充分な抑制効果が得られる点で好ましい。その量はより好ましくは0.002〜0.05質量%であり、特に好ましくは0.005〜0.03質量%である。
[一般式(II)で示される化合物]
本発明の平版印刷用湿し水組成物には、さらに以下の一般式(II)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種を含ませる。
Figure 0004920289
(式中、A及びBはそれぞれ独立に−CH2CH2O−又は−CH2CH(CH3)O−を表し、A及びBは互いに異なる基であって、a、b、c、d、e、f、g及びhはそれぞれ、0〜50の整数を表し、但しa、c、e及びgのうち少なくとも一つは1以上であり、及びb、d、f及びhのうち少なくとも一つは1以上であり、及びpは0又は1である。)
本発明で使用する上記一般式(II)で示される化合物において、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの付加モル数比率は、5:95〜50:50の範囲が適当であり、より好ましくは10:90〜35:65の範囲である。
エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの結合構造としては、先にエチレンオキサイドを付加し、その後プロピレンオキサイドを付加したブロック構造、先にプロピレンオキサイドを付加し、その後エチレンオキサイドを付加したブロック構造、同時にエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加したランダム構造があるが、いずれの構造のものもほぼ同様の効果が得られる。
本発明で使用する一般式(II)で示される化合物において、その重量平均分子量は500〜20000の範囲が一般的であり、500〜5000が適当であり、好ましくは500〜3000であり、特に好ましくは重量平均分子量800〜2000のものである。
一般式(II)で示される化合物は、常法に従って製造することができ、例えばエチレンジアミンに触媒の存在下でエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを反応させる。
一般式(II)で示される化合物の例として、下記の化合物があり、このような化合物は例えば、アミノエタノールアミン(H2N-CH2CH2-NH-CH2CH2-OH)に、KOHを触媒として加え、プロピレンオキサイドを反応させ、次いでエチレンオキサイドを反応させることによって、合成することができる。
Figure 0004920289
(式中、a、b、c、d、e、f、g及びhはそれぞれ、0〜50の整数を表し、但しa、c、e及びgのうち少なくとも一つは1以上であり、及びb、d、f及びhのうち少なくとも一つは1以上である。)

上記一般式(II)の化合物の分子量やエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの比率は、例えば水酸基価及びアミン価の測定、NMR測定などにより決定することができる。
湿し水における一般式(II)で示される化合物の添加量は、湿し水の濡れ性を向上させる観点から0.001〜1質量%が適当であり、好ましくは0.005〜0.5質量%であり、より好ましくは0.02〜0.2質量%である。
[pH緩衝性を有する有機酸及びその塩類]
本発明の平版印刷用湿し水組成物には、pH緩衝性を有する有機酸及びその塩類から選ばれる少なくとも1種を含ませることが好ましい。
一般式(I)の化合物が印刷版の非画像領域の親水化に有効に機能するには、湿し水のpHを所定の範囲に維持することが望ましい。具体的には、湿し水のpHを酸性領域から中性領域に保持し、一般式(I)の化合物の化合物のカルボン酸基の一部を解離させた状態に維持しておく必要がある。この目的に適当なpH値は3〜8の範囲であり、pH4〜7がより好ましく、pH4.5〜6.5の範囲が特に好ましい。
このようなpH値を維持できるように、本発明の湿し水組成物にpH緩衝性を有する有機酸化合物を添加する。pH緩衝性を有する有機酸の具体例としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、グルコン酸、乳酸、酢酸、グリコール酸、蓚酸、アスコルビン酸、レブリン酸などが挙げられる。また、それらの塩類としてアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩が挙げられる。これらの中でもクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、グルコン酸、乳酸及びその塩類が、多部数の印刷を行っても地汚れや網点ハイライト部分の飛びなどの印刷トラブルを発生させることがなく好ましい。さらにリンゴ酸、コハク酸、グルタル酸及びその塩類が特に好ましい。これらの有機酸及びその塩類は、2種以上の混合物として使用してもよい。
上述の有機酸は、NaOHやKOH、アンモニア、有機アミン類などのアルカリ剤を添加するか、有機酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩あるいはアンモニウム塩、有機アミン塩などと併用することによりpH値を所望の範囲に調整して使用される。
これらの有機酸及び/又はその塩類の湿し水における添加量は、ローラーストリップを抑制する点から、一般に0.002〜0.2質量%が適当であり、好ましくは0.005〜0.1質量%であり、特に好ましくは0.01〜0.06質量%である。
[濡れ性向上剤]
本発明の湿し水組成物にはさらに、湿し水の濡れ性を向上させる溶剤や界面活性剤などを含ませることができる。
それらの中で、下記一般式(III)で示される化合物及び2−エチル−1,3−ヘキサンジオールが特に挙げられる。従って、本発明の湿し水組成物の実施態様として、下記一般式(III)で示される化合物及び/又は2−エチル−1,3−ヘキサンジオールを含ませることが挙げられる。
1O−(−CH2CH(R2)−O−)m−H (III)
(式中、R1は炭素原子数3〜8のアルキル基を表し、R2は水素原子又はメチル基を表し、mは1〜3の整数を表す。)
一般式(III)の化合物において、R1は炭素原子数3〜8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表し、R1としては具体的にn−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2-エチルヘキシル基などがある。mは1〜3の整数を表す。
一般式(III)の化合物の具体例として、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、ジエチレングリコールモノターシャリブチルエーテル及びトリプロピレングリコールモノターシャリブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノターシャリブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノターシャリブチルエーテル及びトリプロピレングリコールモノターシャリブチルエーテルなどがある。これらの化合物を1種単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。
中でも、プロピレングリコールのn−ブチルエーテル、イソブチルエーテル又はt−ブチルエーテル、及びエチレングリコールのt−ブチルエーテルが好ましく使用できる。
湿し水における一般式(III)で示される化合物及び2−エチル−1,3−ヘキサンジオールから選ばれる少なくとも1種の含有量は、0.05〜5質量%が適当であり、好ましくは0.2〜2質量%であり、特に好ましくは0.4〜1質量%である。
その他の助剤として、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ペンタプロピレングリコール、分子量200〜1000のポリプロピレングリコール及びそれらのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノイソプロピルエーテル及びモノブチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシブタノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、ジグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、メトキシエタノール、ブトキシエタノールなどが挙げられる。
本発明の湿し水組成物には少量の界面活性剤を添加してもよい。例えば、アニオン型界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホこはく酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホこはく酸モノアミド2ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硬化ひまし油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。これらの中でもジアルキルスルホこはく酸塩類、アルキル硫酸エステル類及びアルキルナフタレンスルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
また非イオン型界面活性剤としては、ポリオキシアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸部分エステル類、蔗糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシドなどが挙げられる。その中でもポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー類等が好ましく用いられる。
カチオン界面活性剤としては、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体等が挙げられる。また両性界面活性剤の例としては、アルキルイミダゾリン類が挙げられる。さらに、フッ素系界面活性剤が挙げられる、例えば、フッ素系アニオン界面活性剤としては、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、フッ素系ノニオン界面活性剤としては、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルプロピレンオキサイド付加物、フッ素系カチオン界面活性剤としては、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
これらの界面活性剤の含有量は発泡の点を考慮すると、湿し水中10質量%以下、好ましくは0.01〜3.0質量%が適当である。
本発明の湿し水組成物にはさらに、水溶性高分子化合物、糖類、グリセリン、pH調整剤、キレート化合物、防腐剤、着色剤、防錆剤、消泡剤などを含ませてもよい。これらの添加剤について以下に説明する。
水溶性高分子化合物の具体的な例としてはアラビアゴム、澱粉誘導体(例えばデキストリン、酵素分解デキストリン、ヒドロキシプロピル化酵素分解デキストリン、カルボキシメチル化澱粉、燐酸澱粉、オクテニルコハク化澱粉など)、アルギン酸塩、セルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、それらのグリオキサール変性体など)などの天然物とその変性体及びポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及びその共重合体、ポリアクリル酸及びその共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体などの合成物が挙げられる。これらの高分子化合物は単独でまたは混合して使用でき、その添加量は湿し水中、0.0001〜5質量%の範囲が適当であり、好ましくは0.003〜1質量%の範囲である。
上記水溶性高分子化合物の中でも、ポリビニルピロリドンが特に好ましく使用できる。湿し水組成物に含有させるポリビニルピロリドンは、ビニルピロリドンのホモポリマーを意味する。ポリビニルピロリドンは分子量200〜3,000,000のものが適当であり、好ましくは300〜500,000、より好ましくは300〜100,000のものである。特に好ましくは300〜30,000のものである。
これらポリビニルピロリドンは1種単独でも、又は分子量の異なるものを2種以上組み合わせて使用することもできる。また、低分子量のポリビニルピロリドン、例えば重合度3〜5のビニルピロリドンオリゴマーと組み合わせることができる。
このようなポリビニルピロリドンとしては、市販品を使用することができる。例えば、ISP社製のK−15、K−30、K−60、K−90、K−120などの各種グレードのものを使用することができる。
湿し水におけるポリビニルピロリドンの含有量は、0.001〜0.3質量%が適当であり、好ましくは0.005〜0.2質量%である。
本発明の湿し水組成物にはまた、糖類及びグリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含ませることが好ましい。使用する糖類としては、単糖類、二糖類及びオリゴ糖類などから選択することができ、水素添加によって得られる糖アルコールもこれに含まれる。具体例としてD−エリトロース、D−スレオース、D−アラビノース、D−リボース、D−キシロース、D−エリスロ−ペンテュロース、D−アルロース、D−ガラクトース、D−グルコース、D−マンノース、D−タロース、β−D−フラクトース、α−L−ソルボース、6−デオキシ−D−グルコース、D−グリセロ−D−ガラクトース、α−D−アルロ−ヘプチュロース、β−D−アルトロ−3−ヘプチュロース、サッカロース、ラクトース、D−マルトース、イソマルトース、イヌロビオース、ヒアルビオウロン、マルトトリオース、D,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズルシット、アロズルシット、マルチトール、還元水あめなどが挙げられる。これらの糖類は1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
またグリセリンを単独で使用してもよく、又は糖類と併用してもよい。
湿し水において、糖類及びグリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種の含有量は0.01〜1質量%が適当であり、好ましくは0.05〜0.5質量%である。
本発明の湿し水組成物には、エッチング効果により印刷版非画像部の親水性を保持するために、無機酸、スルホン酸系の酸類などの各種の酸を併用してもよい。その例としてスルファニル酸、p−トルエンスルホン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸、硝酸、硫酸、及びその塩類(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩など)などが挙げられる。
本発明の湿し水組成物には、さらなるキレート化合物を添加してよい。そのようなキレート化合物の例として、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのようなアミノポリカルボン酸類や2−ホスホノブタントリカルボン酸−1,2,4,そのカリウム塩、そのナトリウム塩;2−ホスホノブタントリカルボン酸−2,3,4,そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ホスホノエタントリカルボン酸−1,2,2,そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類あるいはホスホノアルカントリカルボン酸類を挙げることができる。
上記のキレート剤のナトリウム塩あるいはカリウム塩の代わりに有機アミンの塩も有効である。
これらのキレート剤は湿し水中に安定に存在し、印刷性を阻害しないものが選ばれる。添加する量としては湿し水中0.001〜3質量%、好ましくは0.01〜1質量%が適当である。
本発明の湿し水組成物には防腐剤を含めてもよい。防腐剤の具体例として、安息香酸及びその誘導体、フェノール又はその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンズトリアゾール誘導体、アミジン又はグアニジンの誘導体、四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン又はグアニジンの誘導体、ダイアジン又はトリアゾールの誘導体、オキサゾール又はオキサジンの誘導体、ハロゲノニトロプロパン化合物、ブロモニトロアルコール系のブロモニトロプロパノール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−エタノール、3−ブロモ−3−ニトロペンタン−2,4−ジオール等が挙げられる。好ましい添加量は細菌、カビ、酵母等に対して、安定に効力を発揮する量であって、細菌、カビ、酵母の種類によっても異なるが、湿し水に対し、0.0001〜1.0質量%の範囲が好ましく、また種々のカビ、細菌、酵母に対して効力のあるような2種以上の防腐剤を併用することが好ましい。
本発明の湿し水組成物には、さらに着色剤、防錆剤、消泡剤などを含ませてもよい。着色剤として食品用色素等が好ましく使用できる。例えば、黄色色素としてはCINo. 19140、15985、赤色色素としてはCINo. 16185、45430、16255、45380、45100、紫色色素としてはCINo. 42640、青色色素としてはCINo. 42090、73015、緑色色素としてはCINo. 42095、等が挙げられる。
防錆剤としては、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、チオサリチル酸、ベンゾイミダゾール及びその誘導体などが挙げられる。中でもベンゾトリアゾール及びその誘導体が好ましく使用できる。
本発明で使用するベンゾトリアゾール及びその誘導体として具体的に、下記一般式(IV)で示されるものがある。
Figure 0004920289
(式中、Rは水素原子、アルキル基、アルカリ金属原子(K、Na、Li)又はNH4を表し、R1及びR2は独立して水素原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、水酸基ハロゲン原子又はハロゲン置換アルキル基を表す。)
Rで示されるアルキル基の例として炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基があり、これらのアルキル基は置換されていてもよく、該置換基として例えば、アミノ基、N-アルキルアミノ基、N,N-ジアルキルアミノ基などがある。
1又はR2で示されるアルキル基及びアルコキシ基の例として、炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基及びアルコキシ基が挙げられる。R1又はR2で示されるハロゲン原子の例として塩素原子及び臭素原子などが挙げられる。
本発明で使用するベンゾトリアゾール及びその誘導体の具体例には、ベンゾトリアゾール(1,2,3-ベンゾトリアゾール)、メチルベンゾトリアゾール(4-メチルベンゾトリアゾール、5-メチルベンゾトリアゾールなど)、ジメチルベンゾトリアゾール(4,6-ジメチルベンゾトリアゾール、5,7-ジメチルベンゾトリアゾールなど)、カルボキシベンゾトリアゾール、及び1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾールなどがある。
中でも、ベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール及びジメチルベンゾトリアゾールが好ましく使用される。
本発明で使用するベンゾトリアゾール及びその誘導体は、市販品を使用することができる。
本発明の湿し水組成物には、ベンゾトリアゾール及びその誘導体から選ばれる1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。このようなベンゾトリアゾール類化合物を湿し水において、0.00001〜0.1質量%の範囲で含有させることにより、金属に対して適当な防腐食及び防錆効果を発揮することできる。より好ましくはベンゾトリアゾール類化合物を湿し水において0.00005〜0.01質量%、特に好ましくは0.0002〜0.005質量%の範囲で含有させる。
消泡剤としてはシリコン消泡剤が好ましく、その中で乳化分散型及び可溶化型などのい
ずれも使用することができる。
本発明の湿し水組成物には更に、硝酸マグネシウム、硝酸亜鉛、硝酸カルシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウム、硝酸アンモニウムなどの腐食抑制剤、クロム化合物、アルミニウム化合物のような硬膜剤、環状エーテル:例えば4−ブチロラクトンなどの有機溶剤、特開昭61−193893号公報記載の水溶性界面活性有機金属化合物などを湿し水中0.0001〜1質量%の範囲で添加することもできる。
本発明の湿し水組成物の成分として残余は、水である。従って、水、好ましくは脱塩水、即ち、純水を使用して、上記の各種成分を溶解した水溶液として濃縮液である湿し水組成物を得ることができる。このような濃縮液を、通常使用時に水道水、井戸水等で10〜200倍程度に希釈し、使用時の湿し水とする。
本発明の湿し水組成物では、揮発性を有する有機溶剤と併用することなしに、イソプロピルアルコールを完全に代替することが可能である。従って本発明の湿し水組成物は、実質的に揮発性有機溶剤を含まない湿し水組成物とすることもできる。ここで「実質的に揮発性有機溶剤を含まない」とは、ASTM D 2369-95の測定法に従って、濃縮液である湿し水組成物において揮発性有機溶剤量が10%以下であることを意味する。
ASTM D 2369-95の測定法は、試料3mlを熱風オーブン110℃で1時間の条件で、次式により揮発性有機溶剤量を求めるものである。
式:{(試料の質量−加熱残分の質量−試料中の水分質量)/(試料の質量)}×100=揮発性有機溶剤量(質量%)
また、使用時の湿し水中に15質量%程度までのイソプロピルアルコールを併用しても印刷品質上問題はない。
本発明の湿し水組成物は、種々の平版印刷版に対して使用することができるが、特にアルミニウム板を支持体とし、その上に感光層を有する感光性平版印刷版(予め感光性を付与した印刷板で、PS版と呼ばれる。)を画像露光及び現像して得られた平版印刷版に対して好適に使用できる。かかるPS版の好ましいものは、例えば、英国特許第 1,350,521号明細書に記されているようなジアゾ樹脂(p−ジアゾジフェニルアミンとパラホルムアルデヒドとの縮合物の塩)とシエラックとの混合物からなる感光層をアルミニウム板上に設けたもの、英国特許第 1,460,978号及び同第 1,505,739号の各明細書に記されているようなジアゾ樹脂とヒドロキシエチルメタクリレート単位またはヒドロキシエチルアクリレート単位を主なる繰り返し単位として有するポリマーとの混合物からなる感光層をアルミニウム板上に設けたもの、また特開平2−236552号、特開平4−274429号に記載のジメチルマレイミド基を含有する感光性ポリマー系をアルミニウム板上に設けたもののようなネガ型PS版、および特開昭50−125806号公報に記載されているようなO−キノンジアド感光物とノボラック型フェノール樹脂との混合物からなる感光層をアルミニウム板上に設けたポジ型PS版が含まれる。またバーニング処理されたポジ型PS版にも用いることができる。
上記感光層を形成する組成物には、上記のアルカリ可溶性ノボラック樹脂以外の、アルカリ可溶性樹脂を必要に応じて配合することができる。例えば、スチレン−アクリル酸共重合体、メチルメタアクリレート−メタクリル酸共重合体、アルカリ可溶性ポリウレタン樹脂、特公昭52−28401号公報記載のアルカリ可溶性ビニル系樹脂、アルカリ可溶性ポリブチラール樹脂等を挙げることができる。更に米国特許第 4,072,528号及び同第 4,072,527号の各明細書に記されているような光重合型フォトポリマー組成物の感光層をアルミニウム板上に設けたPS版、英国特許第 1,235,281号及び同第 1,495,861号の各明細書に記されているようなアジドと水溶性ポリマーとの混合物からなる感光層をアルミニウム板上に設けたPS版も好ましい。
さらに、可視や赤外線のレーザーで直接露光するCTPプレートにも好適に使用することができる。具体例としてはフォトポリマータイプデジタルプレート(例えば富士写真フイルム(株)製PN-V)や、サーマルポジタイプデジタルプレート(例えば富士写真フイルム(株)製HP−F、HP−L)、及びサーマルネガタイプデジタルプレート(例えば富士写真フイルム(株)製LH−NI)などが挙げられる。
次に本発明を実施例により更に具体的に説明する。なお、%は特に指定しない限り質量%を示す。
下記表1の組成に従って、実施例1〜6及び比較例1〜4の各種湿し水組成物を調製した。表中、単位はグラムであり、水を加えて最終的に1000mlとした。これらはいずれも濃縮タイプで、使用時に希釈する。表1の組成に記載した化合物(I-a)及び(I-b)の構造は次のとおりである。
化合物(I-a):一般式(I)においてM1及びM2がナトリウム原子であるもの
化合物(I-b):一般式(I)においてM1及びM2が水素原子であるもの
また表1の組成に記載した化合物(II)の構造は次のとおりである。
化合物(II):
Figure 0004920289
























Figure 0004920289
上記のように調液した実施例1〜6及び比較例1〜4の組成物を各々、硬度400ppmの疑似硬水を用いて40倍に希釈し、pHが4.8〜5.3付近となるようにNaOH/希硝酸にて調整して、実際に使用する湿し水とした。
[テスト方法]
印刷機はハイデルMOV(アルカラー給水装置)を使用して、T&K TOKA(株)の名称スーパーバイタルの紅インキと、使用プレートとして富士写真フイルム(株)製のポジ型PS版VSを富士写真フイルム製FQIチャートのフィルムを用い、ウシオ製PSライトで露光後、富士写真フイルム製現像液DP−4で現像処理を行い、富士写真フイルム製ガム液FP−2でガム引き処理を行って製版したものを用い、中越パルプ(株)の軽量コート紙、名称エミネを用いて、下記の印刷テストを実施した。それらの結果を下記表2に示す。
(a)連続印刷安定性:
汚れを生じず、水負けを起こさない湿し水の量(最小水上げ量)を求め、その水目盛りで連続印刷を実施した。印刷物に汚れ又は水負けが発生し良好な印刷物が得られなくなるまでの印刷枚数により判定する。
10000枚以上 A
10000〜3000枚以上 B
2999〜1枚 C
(b)汚れ回復性:
3000枚印刷後、印刷機上で1時間放置した後、印刷を再開した時、印刷版面のインキ汚れが解消するまでに要した印刷用紙の枚数を調べる。
20枚未満 A
20枚以上100枚未満 B
100枚以上 C
(c)耐ローラーストリップ性:
50,000枚印刷したところで印刷機の運転を休止し、インキロール上における不溶性のカルシウム塩の析出、堆積およびインキロ−ルのインキハゲの発生の有無を調べた。
A インキロールへのカルシウム塩の堆積、インキハゲの発生が全くない
B インキロールへのカルシウム塩の堆積がややあるが、インキハゲの発生はない
C インキロールへのカルシウム塩の堆積が多く、インキハゲの発生がある
Figure 0004920289
上記の結果から、本発明の実施例による湿し水は、連続印刷安定性、汚れ回復性及び耐ローラーストリップ性のいずれについても優れていることがわかる。さらに実施例1及び2の湿し水組成物のように、揮発性有機溶剤を含有しない場合においても、実施例3〜5の湿し水組成物のように揮発性有機溶剤を含有する場合と同様に良好な性能が得られる。本発明の実施例の湿し水組成物はまた、イソプルピルアルコール等の揮発性の高い溶剤成分を使用しなくても良好な印刷適性を示し、よって労働安全上の問題を解消でき、また有機溶剤の使用量を低減でき、環境上たいへん好ましい。

Claims (4)

  1. 下記一般式(I)で示される化合物の少なくとも1種及び下記一般式(II)で示される化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする、平版印刷用湿し水組成物。
    Figure 0004920289
    (式中、M1及びM2はそれぞれ独立して水素原子、Na、K、NH4又はN(R)4(Rは置換又は未置換のアルキル基を表す。)を表す。)
    Figure 0004920289
    (式中、A及びBはそれぞれ独立に−CH2CH2O−又は−CH2CH(CH3)O−を表し、A及びBは互いに異なる基であって、a、b、c、d、e、f、g及びhはそれぞれ、0〜50の整数を表し、但しa、c、e及びgのうち少なくとも一つは1以上であり、及びb、d、f及びhのうち少なくとも一つは1以上であり、及びpは0又は1である。)
  2. さらにpH緩衝性を有する有機酸及びその塩類から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1記載の平版印刷用湿し水組成物。
  3. さらに下記一般式(III)で示される化合物及び/又は2−エチル−1,3−ヘキサンジオールを含む、請求項1又は2記載の平版印刷用湿し水組成物。
    1O−(−CH2CH(R2)−O−)m−H (III)
    (式中、R1は炭素原子数3〜8のアルキル基を表し、R2は水素原子又はメチル基を表し、mは1〜3の整数を表す。)
  4. リン酸、リン酸塩、ホスホン酸及びホスホン酸塩を含有しない、請求項1〜3のいずれか1項記載の平版印刷用湿し水組成物。
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