JP2019025726A - 平版印刷用湿し水組成物、平版印刷用湿し水、及び、印刷方法 - Google Patents

平版印刷用湿し水組成物、平版印刷用湿し水、及び、印刷方法 Download PDF

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Abstract

【課題】希釈後の硝酸イオン及び亜硝酸イオンの含有量が100mg/L以下であり、連続印刷安定性に優れ、かつ、印刷時のローラーストリップの発生が抑制される湿し水組成物、平版印刷用湿し水、及び、上記湿し水組成物の水希釈物又は上記平版印刷用湿し水を使用した印刷方法を提供する。
【解決手段】硝酸イオン及び亜硝酸イオンを含有しないか、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの合計含有質量が、湿し水組成物の全質量に対し、0mg/Lを超え2,500mg/L以下であり、特定の構造を有すスルホン酸化合物と、2価以上であり、かつ、20℃における100gの水への溶解度が7.0g以上である有機酸よりなる群から選ばれた少なくとも2種の有機酸と、を含む平版印刷用湿し水組成物、平版印刷用湿し水、及び、上記湿し水組成物の水希釈物を使用した印刷方法。
【選択図】なし

Description

本開示は、平版印刷用湿し水組成物、平版印刷用湿し水、及び、印刷方法に関する。
平版印刷は水と油が本質的に混じり合わない性質を巧みに利用した印刷方式であり、印刷版面は水を受容し油性インキを反撥する領域と、水を反撥し油性インキを受容する領域からなり、前者が非画像領域(非画像部)であり、後者が画像領域(画像部)である。
平版印刷法では一般的に湿し水組成物を用いて、非画像領域を湿潤させて画像領域と非画像領域との界面化学的な差を拡大して、非画像領域のインキ反発性と画像領域のインキ受容性とを増大させることがなされる。
従来の湿し水組成物としては、特許文献1〜特許文献6に記載の湿し水組成物が挙げられる。
特許文献1には、「燐(P)を含有しない、強電解質中性塩(a成分)およびa成分以外の中性塩(b成分)を含有し、pH5.0〜9.0で、電導度(電気伝導率)が10,000〜30,000μS/cmであることを特徴とする平版印刷用の湿し水組成物。」が記載されている。
特許文献2には、「特定のグリコールエーテル溶剤を10〜80重量%、特定の水溶性セルロースエーテルを0.5〜10重量%、及び特定の化合物を0.5〜5重量%含有することを特徴とする平版印刷用濃縮湿し水組成物。」が記載されている。
特許文献3には、「特定の化合物の少なくとも1種及び特定の化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする、平版印刷用湿し水組成物。
」が記載されている。
特許文献4には、「湿し水濃縮組成物を準備する工程と、上記湿し水濃縮組成物を水により重量で25倍〜200倍に希釈して湿し水を調製する工程と、上記湿し水を用いて印刷する工程とを含む平版印刷方法であって、上記湿し水濃縮組成物が水溶性有機溶媒を10重量%以上含有し、上記湿し水濃縮組成物を水により重量で100倍希釈した水溶液のpHが3〜5で、その水溶液200mlに0.1規定水酸化ナトリウム水溶液を滴下していったとき、pH8になるまでの滴下量が5ml以上であることを特徴とする平版印刷方法。」が記載されている。
特許文献5には、「リンゴ酸金属塩を含有し、且つ4つの要素から成る下記の群(A)に属する物質を含有しない平版印刷用湿し水組成物。
群(A):アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物、硝酸化合物。」が記載されている。
特許文献6には、「次の(イ)、(ロ)及び(ハ)の条件をすべて満たす平版印刷用湿し水濃縮組成物。
(イ)下記の一般式(1)の化合物を含有する。
(ロ)下記の一般式(2)及び一般式(3)で表される化合物を少なくとも一つ含有する。
(ハ)下記の一般式(4)及び一般式(5)で表される化合物を少なくとも一つ含有する。」が記載されている。
(式(1)において、Rは水素若しくは炭素数が1〜4のアルキル基を示し、式中a、b及びcは整数であり、プロピレンオキサイド基の部分の分子量は1000〜3000であり、エチレンオキサイド基の部分の合計分子量は全分子量中の10〜50%である。)
(式(2)において、Rは水素若しくは炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。)
(式(3)において、Rは炭素原子数3〜18の直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。)
特開2004−106531号公報 特開2005−53189号公報 特開2007−276298号公報 特開2014−223807号公報 特開2015−174288号公報 特開2009−126132号公報
通常、平版印刷用湿し水組成物(以下、単に「湿し水組成物」ともいう。)には平版印刷版の非画像領域のインキ反撥性を維持するため、硝酸、亜硝酸、リン酸、ホスホン酸、硫酸、等の無機酸又はこれらの塩やクエン酸やリンゴ酸などの有機酸又はこれらの塩が添加されている。
特に、硝酸、亜硝酸又はこれらの塩は、湿し水に含まれる希釈用水(例えば、水道水又は井水)等に由来の塩化物イオンなどにより非画像領域がダメージを受け酸化した部分にインキが付着する、いわゆる酸化汚れを防止するために有効に用いられている。
また、リン酸、ホスホン酸又はこれらの塩は印刷版の非画像領域の親水性を高めるため、有効に用いられている。
しかし、近年では、水質汚濁防止法の改正に伴い、亜硝酸化合物及び硝酸化合物が有害物質に指定されたことをきっかけに、これらを含む湿し水は人への健康被害や土壌汚染、水質汚染の原因となることが懸念されている。
また、硝酸塩は印刷機の錆びを促進させる原因となることが知られる。特にドイツの印刷関連研究・認証機関であるFOGRAでは印刷機を錆びさせる原因物質の一つとして硝酸イオンを指定し、湿し水中で20mg/L以下にすることを求めており、EU市場や北米市場を中心に硝酸塩非含有の湿し水が主流となっている。
一方、湿し水は通常濃縮液の形態(湿し水組成物)で供給され、使用時に水道水や井水などで希釈して使用される場合がある。その水道水や井水に含まれているカルシウムイオンなどが湿し水中の成分と反応して不溶性の析出物を生成し、この析出物が印刷機のロールに付着して印刷に悪影響を与える原因となることがある。
更に近年、環境保全の観点から増加しつつある再生紙、さらには再生紙の白色度を高めるために、炭酸カルシウムのような多価金属の塩類を多量に含む塗工層を表面に設けた軽量コート再生紙などが増えてきている。これらの印刷用紙を用いて印刷した場合、湿し水の長期間の連続使用条件下において、湿し水が紙の表面コート層の炭酸カルシウムを溶解する結果、湿し水中のカルシウムイオンの濃度が増大していく傾向がある。
本発明者は、鋭意検討した結果、このようにして増大した湿し水中のカルシウムイオンが、前述のリン酸、ホスホン酸、有機酸又はこれらの塩と反応し、不溶性又は難溶性の塩を形成することがあることを見出した。
このような不溶性または難溶性の塩が印刷版の画像領域上に析出、付着したり、印刷機のインキロール上に析出、堆積したりすることにより、インキの正常な転移性を損ない、インキ着肉性の低下や、いわゆるローラーストリップ(インキロール上のインキ剥がれ)などの問題を引き起こす場合があった。
湿し水中のリン酸、ホスホン酸及びこれらの塩等を含まない湿し水組成物としては、特許文献1〜3に記載のものが提案されている。
しかし、本発明者は、これらの湿し水組成物では印刷版非画像領域の親水性が不足するため、良好なインキ反発性を十分に維持することができず、連続印刷安定性に劣ることを見出した。
また、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを含有しないか、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの合計含有質量が、湿し水組成物の全質量に対し、0mg/Lを超え2,500mg/L以下である湿し水組成物としては、特許文献4〜6に記載の組成物が挙げられる。
しかし、本発明者は、特許文献4〜6に記載された組成物の水希釈物である湿し水においては、上述のカルシウムイオンと、湿し水中の有機酸とが塩を形成してインキロール上に析出し、ローラーストリップ等の問題を引き起こす場合があることを見出した。
本開示に係る実施形態が解決しようとする課題は、希釈後の硝酸イオン及び亜硝酸イオンの含有量が100mg/L以下であり、連続印刷安定性に優れ、かつ、印刷時のローラーストリップの発生が抑制される湿し水組成物、平版印刷用湿し水、及び、上記湿し水組成物の水希釈物又は上記平版印刷用湿し水を使用した印刷方法を提供することである。
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 硝酸イオン及び亜硝酸イオンを含有しないか、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの合計含有質量が、湿し水組成物の全質量に対し、0mg/Lを超え2,500mg/L以下であり、下記式1aにより表される化合物、下記式1bにより表される化合物及び下記式1cにより表される化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種のスルホン酸化合物と、2価以上であり、かつ、20℃における100gの水への溶解度が7.0g以上である有機酸よりなる群から選ばれた少なくとも2種の有機酸と、を含む平版印刷用湿し水組成物。
式1a中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシ基を表し、nは0〜3の整数を表し、Mはプロトン又は一価のカチオンを表す。
式1b中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基又はヒドロキシ基を表し、mは0〜6の整数を表し、iは2〜4の整数を表し、Mはそれぞれ独立に、プロトン又は一価のカチオンを表す。
式1c中、Rはそれぞれ独立に、炭素数3〜8のj価の炭化水素基を表し、jは1〜2の整数を表し、Mはそれぞれ独立に、プロトン又は一価のカチオンを表す。
<2> 上記スルホン酸化合物として、上記式1aにより表され、かつ、n個のRの合計炭素数が0〜3である化合物、及び、上記式1bにより表され、かつ、m個のRの合計炭素数が0〜6である化合物、よりなる群から選ばれた少なくとも1種のスルホン酸化合物を含む、上記<1>に記載の平版印刷用湿し水組成物。
<3> 上記少なくとも2種の有機酸のうち、少なくとも1種が3価以上の有機酸である、上記<1>又は<2>に記載の平版印刷用湿し水組成物。
<4> 上記3価以上の有機酸が、クエン酸又はアニコット酸である、上記<3>に記載の平版印刷用湿し水組成物。
<5> 硝酸イオン及び亜硝酸イオンを含有しないか、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの合計含有質量が、湿し水組成物の全質量に対し、0mg/Lを超え100mg/L以下であり、下記式1aにより表される化合物、下記式1bにより表される化合物及び下記式1cにより表される化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種のスルホン酸化合物と、2価以上であり、かつ、20℃における100gの水への溶解度が7.0g以上である有機酸よりなる群から選ばれた少なくとも2種の有機酸と、を含む平版印刷用湿し水。
式1a中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシ基を表し、nは0〜3の整数を表し、Mはプロトン又は一価のカチオンを表す。
式1b中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基又はヒドロキシ基を表し、mは0〜6の整数を表し、iは2〜4の整数を表し、Mはそれぞれ独立に、プロトン又は一価のカチオンを表す。
式1c中、Rはそれぞれ独立に、炭素数3〜8のj価の炭化水素基を表し、jは1〜2の整数を表し、Mはそれぞれ独立に、プロトン又は一価のカチオンを表す。
<6> 平版印刷版に対して、印刷インキ、及び、上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の平版印刷用湿し水組成物の水希釈物又は上記<5>に記載の平版印刷用湿し水を供給して印刷を行う印刷工程を含む印刷方法。
<7> 機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光し、画像部と非画像部とを形成する露光工程、並びに、
印刷インキ、上記水希釈物及び上記平版印刷用湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも1種を供給し、上記非画像部を除去して上記平版印刷版を得る機上現像工程を含む
上記<6>に記載の印刷方法。
<8> 印刷工程において用いられる上記水希釈物が、上記平版印刷用湿し水組成物の体積基準で25倍〜200倍の水希釈物である、上記<6>又は<7>に記載の印刷方法。
<9> 印刷工程において用いられる上記水希釈物又は上記平版印刷用湿し水のpHが、3.0〜5.0である、上記<6>〜<8>のいずれか1つに記載の印刷方法。
本開示に係る実施形態によれば、希釈後の硝酸イオン及び亜硝酸イオンの含有量が100mg/L以下であり、連続印刷安定性に優れ、かつ、印刷時のローラーストリップの発生が抑制される湿し水組成物、平版印刷用湿し水、及び、上記湿し水組成物の水希釈物又は上記平版印刷用湿し水を使用した印刷方法を提供することができる。
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本開示において、数値範囲を示す「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、本開示における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
なお、本開示において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、特に断りのない限り、ポリマー成分における分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶剤とした場合のゲルパーミエーションクロマトフラフィ(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)又は数平均分子量(Mn)である。
(平版印刷用湿し水組成物)
本開示に係る平版印刷用湿し水組成物は、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを含有しないか、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの合計含有質量が、湿し水組成物の全質量に対し、0mg/Lを超え2,500mg/L以下であり、下記式1aにより表される化合物、下記式1bにより表される化合物及び下記式1cにより表される化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種のスルホン酸化合物と、2価以上であり、かつ、20℃における100gの水への溶解度が7.0g以上である有機酸よりなる群から選ばれた少なくとも2種の有機酸と、を含む。
式1a中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシ基を表し、nは0〜3の整数を表し、Mはプロトン又は一価のカチオンを表す。
式1b中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基又はヒドロキシ基を表し、mは0〜6の整数を表し、iは2〜4の整数を表し、Mはそれぞれ独立に、プロトン又は一価のカチオンを表す。
式1c中、Rはそれぞれ独立に、炭素数3〜8のj価の炭化水素基を表し、jは1〜2の整数を表し、Mはそれぞれ独立に、プロトン又は一価のカチオンを表す。
上述の通り、湿し水組成物については、硝酸、亜硝酸又はこれらの塩を使用せず、代わりにリン酸、ホスホン酸、有機酸又はこれらの塩を使用することが検討されている。
しかし、本発明者は、鋭意検討した結果、リン酸、ホスホン酸、有機酸又はこれらの塩を含む湿し水を使用した場合には、特に長時間の印刷時において、上述のローラーストリップが発生するという問題があることを見出した。
また、ローラーストリップの発生を抑制するため、湿し水中のリン酸、ホスホン酸及びこれらの塩を除いた場合には、上述の通り、連続印刷安定性に劣ることを見出した。
そこで、本発明者らは、本開示に係る湿し水組成物の水希釈物を使用することにより、希釈後の硝酸イオン及び亜硝酸イオンの含有量が100mg/L以下であり、連続印刷安定性に優れ、かつ、印刷時のローラーストリップの発生が抑制されることを発見し、本発明を完成するに至った。
上記効果が得られる詳細なメカニズムは不明であるが、以下のように推測している。
硝酸イオン及び亜硝酸イオンを含有しないか、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの合計含有質量が、湿し水組成物の全質量に対し、0mg/Lを超え2,500mg/L以下であることにより、例えば25倍以上に希釈後の水希釈物(湿し水として用いられる)中の硝酸イオン及び亜硝酸イオンの合計含有量は、水質汚濁防止法上の基準である100mg/L以下となると考えられる。
また、本開示に係る湿し水組成物は、特定のスルホン酸化合物を含有し、かつ、特定の有機酸を2種類以上含有することにより、印刷版における非画像領域の親水性が十分となり、連続印刷安定性に優れると考えられる。
更に、比較的溶解度の高い特定の有機酸を2種類以上含有することにより、例えば有機酸塩の混晶が形成される等の原因によって、不溶性の有機酸のカルシウム塩の結晶の析出が抑制されるため、ローラーストリップの発生が抑制されると推測される。
なお、ローラーストリップの発生が抑制されることを、湿し水の耐ローラーストリップ性が優れる、ともいう。
また、本開示に係る湿し水組成物を用いることにより、平版印刷物における非画像部の地汚れの発生や、網点ハイライト部分の飛びなどの画像欠落も抑制されやすいと考えられる。これは、上述の通り、有機酸のカルシウム塩の結晶の析出が抑制されることにより、記録媒体上の結晶の析出も抑制されるためであると推測される。
更に、本開示に係る湿し水組成物は、硝酸、亜硝酸又はそれらの塩の含有量を低く抑えたにも関わらず、スルホン酸塩化合物を含有し、更に2種以上の有機酸を含有することにより、平版印刷版の汚れの発生が抑制されやすいと推測される。
これらの効果は、特に長期間の印刷時に得られやすく、本開示に係る湿し水組成物の水希釈物を印刷に用いることにより、長期間の連続印刷安定性が得られやすいと考えられる。
加えて、本開示に係る湿し水組成物は、スルホン酸塩化合物及び2種以上の有機酸を含有することにより、印刷機を一旦停止した後の印刷再スタート時のインキ汚れが短時間で回復されやすいと考えられる。従って、印刷再開時の損紙の量が抑制されやすいと考えられる。上記効果は、特に長期間の印刷後に印刷機を一旦停止した場合に得られやすいと考えられる。
このように、本開示に係る湿し水組成物を用いることにより、安定に高品質の印刷物を得ることができ、印刷の能率化、生産性の向上を図りやすいと考えられる。
湿し水組成物は、通常、使用時よりも各成分を高濃度で含有する、すなわち、濃縮化された状態で販売されるのが一般的である。このような濃縮化された湿し水組成物を、使用時に適宜希釈(例えば、25倍〜200倍希釈)して湿し水として使用する。
本明細書中では濃縮化されたものを湿し水組成物と称する。
本明細書中に言及する各種成分の含有量や添加量は、「湿し水組成物の全質量に対し〜」など、湿し水組成物における濃度であると特に記載しない限り、使用時の湿し水の全質量に基づいた値である。
以下、本開示に係る平版印刷用湿し水組成物に含まれる各成分の詳細について記載する。
<硝酸イオン及び亜硝酸イオン>
本開示に係る湿し水組成物は、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを含有しないか、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの合計含有質量が、湿し水組成物の全質量に対し、0mg/Lを超え2,500mg/L以下である。
硝酸イオン及び亜硝酸イオンの含有量が上記範囲内であれば、水質汚濁防止法上の有害物質の含有量が十分に低い湿し水組成物が得られる。
具体的には、湿し水組成物を少なくとも体積基準で25倍(例えば、25倍〜200倍)に希釈することにより、希釈後の使用時の湿し水における亜硝酸化合物及び硝酸化合物の合計含有量が、水質汚染汚濁防止法の排水基準である100mg/Lの許容限度以下となる。
本開示に係る湿し水組成物は、水質汚染汚濁防止法上の有害物質の含有量を低下させる観点から、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを含有しないか、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの合計含有質量が、湿し水組成物の全質量に対し、0mg/Lを超え1,500mg/L以下であることが好ましく、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを含有しないか、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの合計含有質量が、湿し水組成物の全質量に対し、0mg/Lを超え500mg/L以下であることがより好ましく、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを含有しない(=0mg/L)ことが更に好ましい。
なお、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの濃度測定法は水質汚染汚濁防止法に定められたJIS K0102に従って測定する。
<特定スルホン酸化合物>
本開示に係る湿し水組成物は、上記式1aにより表される化合物、上記式1bにより表される化合物及び上記式1cにより表される化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種のスルホン酸化合物(以下、「特定スルホン酸化合物」ともいう。)を含む。
式1a中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
式1a中、n個のRの合計炭素数は0〜3であることが好ましい。
式1a中、nは0〜2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。
式1a中、Mはそれぞれ独立に、プロトン(H)又はアルカリ金属カチオンであることが好ましい。アルカリ金属カチオンとしては、Li、Na、K等が挙げられる。
また、Mはそれぞれ独立に、式1a中のSO -と結合していてもよいし解離していてもよい。
式1b中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。
式1b中、m個のRの合計炭素数は0〜6であることが好ましい。
式1b中、mは0〜3の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。
式1b中、iは2又は3であることが好ましい。
式1b中、Mはそれぞれ独立に、プロトン(H)又はアルカリ金属カチオンであることが好ましい。アルカリ金属カチオンとしては、Li、Na、K等が挙げられる。
また、Mはそれぞれ独立に、式1b中のSO -と結合していてもよいし解離していてもよい。
式1b中、R及び(SO -)はそれぞれナフタレン環のいずれの炭素原子に結合してもよく、ナフタレン環のα位又はβ位の炭素原子にそれぞれ結合することが好ましい。
式1c中、Rは、j価の炭素数3〜8の炭化水素基であることが好ましい。
また、Rは、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、環構造を有していてもよい。
式1c中、jは1〜2の整数であることが好ましい。
式1c中、Mはそれぞれ独立に、プロトン(H)又はアルカリ金属カチオンであることが好ましい。アルカリ金属カチオンとしては、Li、Na、K等が挙げられる。
また、Mはそれぞれ独立に、式1c中のSO -と結合していてもよいし解離していてもよい。
本開示に係る湿し水組成物は、特定スルホン酸化合物として、上記式1aにより表され、かつ、n個のRの合計炭素数が0〜3である化合物、及び、上記式1bにより表され、かつ、m個のRの合計炭素数が0〜6である化合物、よりなる群から選ばれた少なくとも1種のスルホン酸化合物を含むことが好ましい。
上記態様によれば、汚れの回復性に更に優れた湿し水が得られる。
式1aにより表される化合物、式1bにより表される化合物、及び、式1cにより表される化合物は市場で一般に入手することができ、本開示において市販品を使用することができる。
式1aにより表される化合物の例としては、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、及びそれらの一価のカチオンとの塩が挙げられる。
式1bにより表される化合物の例としては、ナフタレンジスルホン酸、ヒドロキシナフタレンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸、プロピルナフタレンジスルホン酸、ブチルナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ヒドロキシナフタレントリスルホン酸、メチルナフタレントリスルホン酸、エチルナフタレントリスルホン酸、プロピルナフタレントリスルホン酸、ブチルナフタレントリスルホン酸、ナフタレンテトラスルホン酸、ヒドロキシナフタレンテトラスルホン酸、メチルナフタレンテトラスルホン酸、エチルナフタレンテトラスルホン酸、プロピルナフタレンテトラスルホン酸、ブチルナフタレンテトラスルホン酸、及びそれらの一価のカチオンとの塩が挙げられる。
式1cにより表される化合物の例としては、直鎖または分岐鎖の脂肪族スルホン酸及びその塩類として、プロピルスルホン酸、ブチルスルホン酸、ペンタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、オクタンスルホン酸、及びそれらの一価のカチオンとの塩が挙げられる。
本開示に係る湿し水組成物において、特定スルホン酸化合物を1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。湿し水における特定スルホン酸化合物の含有量は、希釈後の湿し水の全質量に対し、0.001質量%〜1.0質量%の範囲であることが好ましく、0.002質量%〜0.05質量%であることがより好ましく、0.005質量%〜0.03質量%であることが更に好ましい。
特定スルホン酸化合物の含有量が上記範囲であれば、非画像領域の親水性の維持が良好である。
また、特定スルホン酸化合物の含有量が上記範囲であれば、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを含有しないか、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの合計含有質量が、湿し水組成物の全質量に対し、0mg/Lを超え2,500mg/L以下である(すなわち、硝酸、亜硝酸及びこれらの塩を含まないか、これら化合物の濃度が低濃度である)場合であっても、希釈用水(例えば、水道水又は井水)等に由来の塩化物イオンなどにより非画像領域がダメージを受け、酸化した部分にインキが付着する酸化汚れを防止でき、酸化汚れの抑制効果が得られる点で好ましい。
<特定有機酸>
本開示に係る湿し水組成物は、2価以上であり、かつ、20℃における100gの水への溶解度が7.0g以上である有機酸(以下、「特定有機酸」ともいう)よりなる群から選ばれた少なくとも2種の有機酸を含有する。
特定有機酸の溶解度は、20℃における100gの水への溶解度が7.0g以上であり、10.0g以上であることが好ましく、20.0g以上であることがより好ましい。
なお、例えばシトラコン酸のような、20℃において水と任意の割合で混和する化合物の20℃における溶解度は、無限大(∞)であるものとする。
溶解度の測定方法は下記の通りとする。
20℃相対湿度50%の環境下で、20gの水をガラス瓶に測りいれ、そこに1gずつ有機酸を添加し、5分間撹拌して残渣の発生を目視で確認する。24時間以上静置し残渣が残っていることを確認し、溶液部分を採取し純水を加えておよそ0.05%程度に希釈し、これを高速液体クロマトグラフ(HPLC)法のイオン排除法で分析し溶けていた有機酸量を求め、20℃における水100gに対する有機酸の溶解度を算出する。
また、特定有機酸の溶解度は、特定有機酸を塩の形で含有する場合であっても、有機酸塩の溶解度ではなく、対カチオンをプロトンとした化合物を用いて測定した有機酸の溶解度とする。
特定有機酸を少なくとも2種含むとは、有機酸の種類が異なる特定有機酸を少なくとも2種含むことを意味しており、例えば、特定有機酸としてクエン酸及びクエン酸3カリウムのみを含む湿し水組成物は、特定有機酸を2種含む湿し水組成物には含まれないものとする。
特定有機酸としては、特に限定されないが、カルボキシ基を2以上有する有機酸が好ましい。
また、非画像領域の親水性の維持の観点から、少なくとも2種の特定有機酸のうち、少なくとも1種が3価以上の特定有機酸であることが好ましい。上限は特に限定されず、20価以下であればよい。
3価以上の特定有機酸としては、カルボキシ基を3以上有する有機酸が好ましく、クエン酸又はアニコット酸であることがより好ましい。
ここで、3価以上の有機酸は、一般的にカルシウムと難溶性の塩を形成しやすいため、インキロール上に結晶が析出しやすいという問題点がある。
しかし、本開示に係る湿し水組成物においては、3価以上の有機酸であったとしても、上記結晶の水への溶解度が大幅に改善し、上記結晶の析出が起こりにくいと考えられる。
また、本開示に係る湿し水組成物は、2価の特定有機酸の少なくとも1種と、3価以上の特定有機酸の少なくとも1種と、を含有することが好ましい。2価の特定有機酸としては、カルボキシ基を2つ有する特定有機酸が好ましい。3価以上の特定有機酸の好ましい態様は上述の通りである。
20℃における100gの水への溶解度が7.0g以上である2価の特定有機酸を、3価以上の特定有機酸と併用することにより、非画像領域の親水性の維持が良好であり、かつ、インキロール上へのカルシウム塩などの析出、堆積が更に抑制されると考えられる。その結果、印刷時のローラーストリップの発生が更に抑制されると考えられる。
特定有機酸の合計含有量は、希釈後の湿し水の全質量に対し、0.001質量%〜1.0質量%であることが好ましく、0.002質量%〜0.05質量%であることがより好ましく、0.005質量%〜0.03質量%であることが更に好ましい。
また、特定有機酸を2種含有する場合、2種の特定有機酸の含有比率は1:9〜9:1の範囲であることが好ましぃ。2:8〜8:2であることがより好ましい。上記範囲内であれば、非画像領域の親水性の維持が良好で、且つインキロール上へのカルシウム塩などの析出、堆積を防止でき、インキロール上のインキ剥がれ(ローラーストリップ)に関して充分な抑制効果が得られる点で好ましい。
<アミン化合物>
本開示に係る平版印刷用湿し水組成物は、エチレンジアミンにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加した化合物、及びジエチレントリアミンにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加した化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有してもよい。
以下にこれらの化合物を説明する。
〔エチレンジアミンにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加した化合物〕
本開示において使用される、エチレンジアミンにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加した化合物は、重量平均分子量が500〜20,000のものであり、好ましくは500〜5,000であり、最適なのは重量平均分子量1,000〜3,000付近のものである。
上記化合物においてエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの付加モル数比率は、充分な印刷性が得られる観点から5:95〜50:50の範囲が好ましく20:80〜35:65がより好ましい。
エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの結合構造としては、先にエチレンオキサイドを付加し、その後プロピレンオキサイドを付加したブロック構造、先にプロピレンオキサイドを付加し、その後エチレンオキサイドを付加したブロック構造、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの両方を付加したランダム構造があるが、いずれの構造のものもほぼ同様の効果が得られる。
本開示において使用される、エチレンジアミンにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加した化合物は、常法に従って製造することができ、例えばエチレンジアミンに触媒の存在下でエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの少なくとも一方を反応させる。
本開示において使用される、エチレンジアミンにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加した化合物は、具体的に下記の式(2)で表される化合物である。
式中、A及びBはそれぞれ独立に−CHCHO−又は−CHCH(CH)O−を表し、A及びBは互いに異なる基であって、a〜hは各々0〜50の整数を表し、但しa、c、e及びgのうち少なくとも一つは1以上であり、及びb、d、f及びhのうち少なくとも一つは1以上である。a〜hは化合物全体の分子量が500〜20,000となるような値である。なお、各共重合鎖はブロック構造でも、ランダム構造でもよい。
上記化合物の分子量やエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの比率は、例えば水酸基価及びアミン価の測定、NMR(核磁気共鳴)測定などにより決定することができる。
式(2)の内、より好ましくは下記の式(3)にて示される。
式中、a、b、c、d、e、f、g及びhはそれぞれ、0〜50の整数を表し、但しa、c、e及びgのうち少なくとも一つは1以上であり、及びb、d、f及びhのうち少なくとも一つは1以上である。
上記式(3)の化合物の分子量やエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの比率は、例えば水酸基価及びアミン価の測定、NMR測定などにより決定することができる。
湿し水における式(3)で示される化合物の添加量は、希釈後の湿し水の全質量に対し、湿し水の濡れ性を向上させる観点から、0.001質量%〜1質量%が好ましく、0.005質量%〜0.5質量%であることがより好ましく、0.01質量%〜0.1質量%であることが更に好ましい。
〔濡れ性向上剤〕
本開示に係る湿し水組成物はさらに、湿し水の濡れ性を向上させる溶剤や界面活性剤などを含有してもよい。
溶剤の具体例として、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、ジエチレングリコールモノターシャリブチルエーテル及びトリプロピレングリコールモノターシャリブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノターシャリブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノターシャリブチルエーテル及びトリプロピレングリコールモノターシャリブチルエーテルなどがある。これらの化合物を1種単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。
中でも、プロピレングリコールのn−ブチルエーテル、イソブチルエーテル又はt−ブチルエーテル、及びエチレングリコールのt-ブチルエーテルが好ましく使用できる。
湿し水における溶剤の含有量は、希釈後の湿し水の全質量に対して、0.05質量%〜5質量%が好ましく、0.2質量%〜2質量%がより好ましく、0.4質量%〜1質量%が更に好ましい。
その他の濡れ性向上剤として、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ペンタプロピレングリコール、分子量200〜1,000のポリプロピレングリコール及びそれらのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノイソプロピルエーテル及びモノブチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシブタノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、ジグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、メトキシエタノール、ブトキシエタノールなどが挙げられる。
<ジオール化合物>
本開示に係る湿し水組成物は、ジオール化合物を含有してもよい。ジオール化合物としては、特開2009−96177号公報に記載の化合物が挙げられる。具体例として、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールなどが好ましい。
ジオール化合物の含有量は、希釈後の湿し水の全質量に対し、0.001質量%〜2.0質量%が好ましく、0.05質量%〜1.0質量%がより好ましく、0.1質量%〜0.7質量%が更に好ましく、0.2〜0.5質量%が特に好ましい。含有量が上記範囲内であれば、本開示に係る湿し水組成物の効果が十分に得られるとともに溶解不良や給水ローラー汚れなどの発生が抑制される。
<ピロリドン誘導体>
本開示に係る湿し水組成物は、下記式(4)により表されるピロリドン誘導体を含有してもよい。
式(4)中、Rは炭素原子数2〜12のアルキル基を表す。
上記ピロリドン誘導体の具体例としては、エチルピロリドン、ブチルピロリドン、ペンタピロリドン、ヘキサピロリドン、オクチルピロリドン、ラウリルピロリドンなどが挙げられる。
これらの化合物は1種又は2種以上を用いることができる。
これらの化合物の中でも、式(4)中のRが炭素原子数6以上のアルキル基であるものが好ましく、オクチルピロリドンが特に好ましい。
上記式(4)で示される化合物の含有量は、希釈後の湿し水の全質量に対し、0.0001質量%〜1.0質量%であることが好ましく、0.001質量%〜0.1質量%であることがより好ましい。
<界面活性剤>
本開示に係る湿し水組成物は界面活性剤を含有してもよい。
界面活性剤としては、特に限定されず、アニオン型界面活性剤、非イオン型界面活性剤、カチオン型界面活性剤等が挙げられる。
例えば、アニオン型界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカン硫酸エステル塩類、ジアルキルスルホこはく酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類(好ましくはアルキル基の炭素数が10以上、より好ましくは10〜14、更に好ましくは12)、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類(好ましくはアルキル基の炭素数が10以上、より好ましくは10〜14、更に好ましくは12)、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホこはく酸モノアミド2ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硬化ひまし油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。 これらの中でもジアルキルスルホこはく酸塩類、アルキル硫酸エステル類及びアルキルナフタレンスルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
また非イオン型界面活性剤としては、ポリオキシアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸部分エステル類、蔗糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシドなどが挙げられる。
その中でもポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー類、等が好ましく用いられる。
カチオン界面活性剤としては、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体等が挙げられる。また両性界面活性剤の例としては、アルキルイミダゾリン類が挙げられる。さらに、フッ素系界面活性剤が挙げられる、例えば、フッ素系アニオン界面活性剤としては、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、フッ素系ノニオン界面活性剤としては、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルプロピレンオキサイド付加物、フッ素系カチオン界面活性剤としては、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
界面活性剤は1種又は2種以上を用いることができる。
界面活性剤の含有量は、発泡性の観点から、希釈後の湿し水の全質量に対し、10質量%以下であることが好ましく、0.01〜3.0質量%がより好ましい。
<アセチレン化合物>
本開示に係る湿し水組成物はまた、アセチレングリコール類、アセチレンアルコール類、及びそれらの酸化エチレン及び酸化プロピレン付加物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでもよい。これらの化合物には、上述の界面活性剤に含まれる化合物も含まれる。
これらの具体的な化合物として、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2−ブチン−1,4−ジオール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、及びそれらの酸化エチレン、酸化プロピレン付加物などが挙げられる。中でも3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールの酸化エチレンが4〜10個付加した化合物が好ましく挙げられる。
アセチレン化合物の含有量は、希釈後の湿し水の全質量に対し、0.0001質量%〜1.0質量%が好ましく、0.001質量%〜0.1質量%であることがより好ましい。
<その他の成分>
本開示に係る湿し水組成物は、水溶性高分子化合物、糖類、グリセリン、pH調整剤、キレート化合物、防腐剤、着色剤、防錆剤、消泡剤などを更に含有してもよい。これらの添加剤について以下に説明する。
〔水溶性高分子化合物〕
水溶性高分子化合物の具体的な例としてはアラビアガム、澱粉誘導体(例えばデキストリン、酵素分解デキストリン、ヒドロキシプロピル化酵素分解デキストリン、カルボキシメチル化澱粉、燐酸澱粉、オクテニルコハク化澱粉など)、アルギン酸塩、セルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、それらのグリオキサール変性体など)などの天然物とその変性体及びポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及びその共重合体、ポリアクリル酸及びその共重合体、ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体などの合成物が挙げられる。これらの高分子化合物は単独でまたは混合して使用でき、その添加量は希釈後の湿し水の全質量に対し、0.0001〜5質量%であることが好ましく、0.003〜1質量%の範囲であることがより好ましい。
上記水溶性高分子化合物の中でも、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンが好ましく使用でき、ポリビニルピロリドンが特に好ましく使用できる。湿し水組成物に含有させる水溶性高分子化合物は分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)1000〜3,000,000のものが好ましく、2000〜500,000がより好ましく、3000〜100,000のものが更に好ましく、3000〜30,000のものが特に好ましい。
これら水溶性高分子化合物は1種単独でも、又は分子量の異なるものを2種以上組み合わせて使用することもできる。また、低分子量のポリビニルピロリドン、例えば重合度3〜5のビニルピロリドンオリゴマーと組み合わせることができる。
このようなポリビニルピロリドンとしては、市販品を使用することができる。例えば、ISP社製のK−15、K−30、K−60、K−90、K−120などの各種グレードのものを使用することができる。
湿し水における水溶性高分子化合物の含有量は、0.001質量%〜0.3質量%が好ましく、好ましくは0.005質量%〜0.2質量%である。
〔糖類又はグリセリン〕
本開示に係る湿し水組成物はまた、糖類及びグリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。使用する糖類としては、単糖類、二糖類及びオリゴ糖類などから選択することができ、水素添加によって得られる糖アルコールもこれに含まれる。具体例としてD−エリトロース、D−スレオース、D−アラビノース、D−リボース、D−キシロース、D−エリスロ−ペンテュロース、D−アルロース、D−ガラクトース、D−グルコース、D− マンノース、D−タロース、β−D−フラクトース、α−L−ソルボース、6−デオキシ−D−グルコース、D−グリセロ−D−ガラクトース、α−D−アルロ−ヘプチュロース、β−D−アルトロ−3−ヘプチュロース、サッカロース、ラクトース、D−マルトース、イソマルトース、イヌロビオース、ヒアルビオウロン、マルトトリオース、D,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズルシット、アロズルシット、マルチトール、還元水あめなどが挙げられる。これらの糖類は1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
またグリセリンを単独で使用してもよく、又は糖類と併用してもよい。
希釈後の湿し水において、糖類及びグリセリンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の含有量は0.01〜1質量%が好ましく、0.05〜0.5質量%であることがより好ましい。
〔pH調整剤〕
本開示に係る湿し水組成物は、エッチング効果により印刷版非画像部の親水性を保持するために、pH調整剤として、無機酸、スルホン酸系の酸類などの各種の酸を含有してもよい。その例としてスルファニル酸、p−トルエンスルホン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸、硝酸、硫酸、及びその塩類(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩など)などが挙げられる。
〔キレート化合物〕
本開示に係る湿し水組成物は、キレート化合物を更に含有してもよい。そのようなキレート化合物の例として、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのようなアミノポリカルボン酸類や2−ホスホノブタントリカルボン酸−1,2,4,そのカリウム塩、そのナトリウム塩;2−ホスホノブタントリカルボン酸−2,3,4,そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ホスホノエタントリカルボン酸−1,2,2,そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類あるいはホスホノアルカントリカルボン酸類を挙げることができる。
上記のキレート化合物のナトリウム塩あるいはカリウム塩の代わりに有機アミンの塩も有効である。
これらのキレート化合物は希釈後の湿し水中に安定に存在するものが選ばれる。
キレート剤の含有量は、希釈後の湿し水の全質量に対し、0.001〜3質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。
本開示に係る湿し水組成物は防腐剤を含有してもよい。防腐剤の具体例として、安息香酸及びその誘導体、フェノール又はその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンズトリアゾール誘導体、アミジン又はグアニジンの誘導体、四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン又はグアニジンの誘導体、ダイアジン又はトリアゾールの誘導体、オキサゾール又はオキサジンの誘導体、ハロゲノニトロプロパン化合物、ブロモニトロアルコール系のブロモニトロプロパノール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−エタノール、3−ブロモ−3−ニトロペンタン−2,4−ジオール等が挙げられる。好ましい添加量は細菌、カビ、酵母等に対して、安定に効力を発揮する量であって、細菌、カビ、酵母等の種類によっても異なるが、希釈後の湿し水の全質量に対し、0.001質量%〜1.0質量%の範囲が好ましく、また種々のカビ、細菌、酵母等に対して効力のあるような2種以上の防腐剤を併用することが好ましい。
〔着色剤〕
着色剤としては、食品用色素等が好ましく使用できる。例えば、黄色色素としてはCI No.19140、15985、赤色色素としてはCI No. 16185、45430、16255、45380、45100、紫色色素としてはCI No.42640、青色色素としてはCI No.42090、73015、緑色色素としてはCI No.42095、等が挙げられる。
〔防錆剤〕
防錆剤としては、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、チオサリチル酸、ベンゾイミダゾール及びその誘導体などが挙げられる。中でもベンゾトリアゾール及びその誘導体が好ましく使用できる。
本開示において使用するベンゾトリアゾール及びその誘導体として具体的に、下記式(5)で示されるものがある。
式中、R53は水素原子、アルキル基、アルカリ金属原子(K、Na、Li)又はNHを表し、R51及びR52は独立して水素原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、水酸基、ハロゲン原子又はハロゲン置換アルキル基を表す。)
53で示されるアルキル基の例として炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基があり、これらのアルキル基は置換されていてもよく、上記置換基として例えば、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基などがある。
51又はR52で示されるアルキル基及びアルコキシ基の例として、炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基及びアルコキシ基が挙げられる。R51又はR52で示されるハロゲン原子の例として塩素原子及び臭素原子などが挙げられる。
本開示において用いられるベンゾトリアゾール及びその誘導体の具体例には、ベンゾトリアゾール(1,2,3−ベンゾトリアゾール)、メチルベンゾトリアゾール(4−メチルベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾールなど)、ジメチルベンゾトリアゾール(4,6−ジメチルベンゾトリアゾール、5,7−ジメチルベンゾトリアゾールなど)、カルボキシベンゾトリアゾール、及び1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾールなどがある。
中でも、ベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール及びジメチルベンゾトリアゾールが好ましく使用される。
本開示において用いられるベンゾトリアゾール及びその誘導体としては、市販品を使用することができる。
本開示に係る湿し水組成物は、ベンゾトリアゾール及びその誘導体から選ばれる1種単独又は2種以上を組み合わせて含有してもよい。このようなベンゾトリアゾール類化合物を、希釈後の湿し水の全質量に対し、0.00001質量%〜0.1質量%の範囲で含有させることが好ましい。上記範囲内であれば、金属に対する防腐食及び防錆効果が発揮されやすい。より好ましくはベンゾトリアゾール類化合物を湿し水において0.00005質量%〜0.01質量%、特に好ましくは0.0002質量%〜0.005質量%の範囲で含有させる。
〔消泡剤〕
消泡剤としてはシリコン消泡剤が好ましく、その中で乳化分散型及び可溶化型などのいずれも使用することができる。また、非シリコン系の消泡剤も単独あるいはシリコン消泡剤との併用で使用することができる。
〔水〕
本開示に係る湿し水組成物の成分として残余は、水である。従って、水、好ましくは脱塩水、即ち、純水を使用して、上記の各種成分を溶解した水溶液として濃縮液である湿し水組成物を得ることができる。
このような濃縮液を、例えば、使用時に水道水、井水等を用いて体積基準で25倍〜200倍程度に希釈し、使用時の湿し水とする。
また、希釈時に、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液等を用いて、pHを調整してもよい。pHは、3.0〜5.0であることが好ましい。
湿し水組成物は、人体への影響や環境への影響の観点から、イソプロピルアルコールを含有しないことが好ましい。
開示に係る湿し水組成物では、揮発性を有する有機溶剤と併用することなしに、イソプロピルアルコールを完全に代替することが可能である。
従って本開示に係る湿し水組成物は、実質的に揮発性有機溶剤を含まない湿し水組成物とすることもできる。ここで「実質的に揮発性有機溶剤を含まない」とは、ASTM D2369−95の測定法に従って、濃縮液である湿し水組成物において揮発性有機溶剤量が10%以下であることを意味する。
ASTM D2369−95の測定法は、試料3mLを熱風オーブン110℃で1時間の条件で、次式により揮発性有機溶剤量を求めるものである。
式:{(試料の質量−加熱残分の質量−試料中の水分質量)/(試料の質量)}×100= 揮発性有機溶剤量(質量%)
また、イソプロピルアルコールの含有量が、希釈後の湿し水の全質量に対し15質量%以下であれば、印刷品質に更に優れた印刷物が得られやすい。
本開示に係る湿し水組成物は、種々の平版印刷版に対して使用することができるが、特にアルミニウム板を支持体とし、その上に感光層を有する感光性平版印刷版(予め感光性を付与した印刷板で、PS版ともいう。)を画像露光及び現像して得られた平版印刷版に対して好適に使用できる。かかるPS版の好ましいもの、例えば、英国特許第1,350,521号明細書に記されているようなジアゾ樹脂(p−ジアゾジフェニルアミンとパラホルムアルデヒドとの縮合物の塩)とシエラックとの混合物からなる感光層をアルミニウム板上に設けたもの、英国特許第1,4 60,978号及び同第1,505,739号の各明細書に記されているようなジアゾ樹脂とヒドロキシエチルメタクリレート単位またはヒドロキシエチルアクリレート単位を主なる繰り返し単位として有するポリマーとの混合物からなる感光層をアルミニウム板上に設けたもの、また特開平2−36552号公報、特開平4−274429号公報に記載のジメチルマレイミド基を含有する感光性ポリマー系をアルミニウム板上に設けたもののようなネガ型PS版、および特開昭50−125806号公報に記載されているようなO−キノンジアド感光物とノボラック型フェノール樹脂との混合物からなる感光層をアルミニウム板上に設けたポジ型PS版が含まれる。またバーニング処理されたポジ型PS版にも用いることができる。
上記感光層を形成する組成物は、上記のアルカリ可溶性ノボラック樹脂以外の、アルカリ可溶性樹脂を必要に応じて含有してもよい。例えば、スチレン−アクリル酸共重合体、メチルメタアクリレート−メタクリル酸共重合体、アルカリ可溶性ポリウレタン樹脂、特公昭52−28401号公報記載のアルカリ可溶性ビニル系樹脂、アルカリ可溶性ポリブチラール樹脂等を挙げることができる。更に米国特許第4,072,528号及び同第4,072,527号の各明細書に記されているような光重合型フォトポリマー組成物の感光層をアルミニウム板上に設けたPS版、英国特許第1,235,281号及び同第1,495,861号の各明細書に記されているようなアジドと水溶性ポリマーとの混合物からなる感光層をアルミニウム板上に設けたPS版も好ましい。
さらに、可視や赤外線のレーザーで直接露光するCTPプレートにも好適に使用することができる。具体例としてはフォトポリマータイプデジタルプレート(例えば富士フイルム(株)製 PN−V、PN−V2)や、サーマルポジタイプデジタルプレート(例えば富士フイルム(株)製 HP−F、HP−L)、及びサーマルネガタイプデジタルプレート(例えば富士フイルム(株)製 LH−NI3)、完全無処理サーマルCTPプレート(例えば富士フイルム(株)製ZP,ZD)などが挙げられる。
(平版印刷用湿し水)
本開示に係る平版印刷用湿し水は、硝酸イオン及び亜硝酸イオンを含有しないか、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの合計含有質量が、湿し水組成物の全質量に対し、0mg/Lを超え100mg/L以下であり、下記式1aにより表される化合物、下記式1bにより表される化合物及び下記式1cにより表される化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種のスルホン酸化合物と、2価以上であり、かつ、20℃における100gの水への溶解度が7.0g以上である有機酸よりなる群から選ばれた少なくとも2種の有機酸と、を含む。
式1a中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシ基を表し、nは0〜3の整数を表し、Mはプロトン又は一価のカチオンを表す。
式1b中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基又はヒドロキシ基を表し、mは0〜6の整数を表し、iは2〜4の整数を表し、Mはそれぞれ独立に、プロトン又は一価のカチオンを表す。
式1c中、Rはそれぞれ独立に、炭素数3〜8のj価の炭化水素基を表し、jは1〜2の整数を表し、Mはそれぞれ独立に、プロトン又は一価のカチオンを表す。
本開示に係る平版印刷用湿し水は、例えば、本開示に係る平版印刷用湿し水組成物を、水で25〜200倍に希釈することにより得られる。
水としては、特に限定されず、水道水や井水が使用可能である。また、イオン交換等で得られる純水を使用しても良い。
また、希釈時に、更にイソプロピルアルコールを添加してもよい。イソプロピルアルコールを添加する場合、得られる印刷物の印刷品質の観点から、添加量は、湿し水組成物の全質量に対し、15質量%未満であることが好ましい。
更に、本開示に係る平版印刷用湿し水は、含まれる各成分を混合することにより調製してもよい。
本開示に係る平版印刷用湿し水に含まれる各成分の好ましい態様は、上述の本開示に係る平版印刷用湿し水組成物に含まれる各成分と同義であり、好ましい態様も同様である。
また、本開示に係る平版印刷用湿し水は、水溶性高分子化合物、糖類、グリセリン、pH調整剤、キレート化合物、防腐剤、着色剤、防錆剤、消泡剤などを更に含有してもよい。これらの化合物は、平版印刷用湿し水組成物に係るこれらの化合物と同義であり、好ましい態様も同義である。
本開示に係る平版印刷用湿し水のpHは、3.0〜5.0であることが好ましく、PH3.5〜4.5であることがより好ましい。
本開示において、pHは、pH4とPH7の校正液で調整したpHメーター(型番:HM−31、東亜DKK社製)を用いて20℃で測定される値である。
(印刷方法)
本開示に係る印刷方法は、平版印刷版に対して、印刷インキ、及び、本開示に係る平版印刷用湿し水組成物の水希釈物又は本開示に係る平版印刷用湿し水を供給して印刷を行う印刷工程を含む。
本開示に係る印刷方法によれば、本開示に係る平版印刷用湿し水組成物の水希釈物又は本開示に係る平版印刷用湿し水を使用することにより、水質汚染汚濁防止法上の有害物質の使用量が低減され、かつ、印刷時のローラーストリップの発生が抑制される。
また、本開示に係る印刷方法は、本開示に係る平版印刷用湿し水組成物の水希釈物又は本開示に係る平版印刷用湿し水を用いることにより、印刷機を一旦停止した後の印刷再スタート時のインキ汚れが短時間で回復されやすいと考えられる。
更に、本開示に係る印刷方法は、本開示に係る平版印刷用湿し水組成物の水希釈物又は本開示に係る平版印刷用湿し水を用いることにより、長期間の連続印刷時の印刷安定性に優れると考えられる。
以上のように、本開示に係る印刷方法によれば高品質の印刷物が安定して得られやすく、印刷機の一時的な停止後の印刷再スタート時においても、印刷物の品質が回復しやすいと考えられる。
<印刷工程>
〔平版印刷版〕
本開示に係る印刷方法における平版印刷版は、特に限定されず、上述の平版印刷版であってもよいし、その他の公知の平版印刷版を用いてもよい。
また、本開示に係る印刷方法における平版印刷版は、例えば現像機中で、処理液を用いて平版印刷版原版を現像したものであってもよいし、印刷インキ、本開示に係る湿し水組成物の水希釈物及び本開示に係る平版印刷用湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも1種を供給して平版印刷版原版を現像(いわゆる、機上現像)したものであってもよい。
上記機上現像の方法としては、例えば、後述する機上現像工程に記載の方法により行われる。
〔印刷インキ〕
本開示に係る印刷方法における印刷インキとしては、特に制限はなく、所望に応じ、種々の公知のインキを用いることができる。また、印刷インキとしては、油性枚葉インキ又はヒートセットオフ輪インキ又は紫外線硬化型インキ(UVインキ)が好ましく挙げられる。
〔平版印刷用湿し水組成物の水希釈物〕
本開示に係る印刷方法における平版印刷用湿し水組成物の水希釈物は、本開示に係る湿し水組成物を、例えば、使用時に水道水、井水等で希釈し、使用時の湿し水としたものである。
上記水希釈物は、体積基準で25倍〜200倍の水希釈物であることが好ましい。
〔pH〕
印刷版の汚れ防止性の観点から、印刷工程において用いられる本開示に係る湿し水組成物の水希釈物又は本開示に係る平版印刷用湿し水のpHは、3.0〜5.0であることが好ましく、3.5〜4.5であることがより好ましい。
〔記録媒体〕
印刷工程において用いられる記録媒体としては、特に制限はなく、例えば紙を用いるなど、所望に応じ、公知の記録媒体を用いることができる。
本開示に係る印刷方法によれば、記録媒体として、例えば表面に炭酸カルシウムのコート層を有する再生紙などを用いた場合であっても、ローラーストリップの発生が抑制されやすい。
<露光工程、及び、機上現像工程>
本開示に係る印刷方法は、機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光し、画像部と非画像部とを形成する露光工程、並びに、印刷インキ、本開示に係る湿し水組成物の水希釈物及び本開示に係る平版印刷用湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも1種を供給し、上記非画像部を除去して上記平版印刷版を得る機上現像工程を含むことが好ましい。
機上現像工程においては、印刷インキと、本開示に係る湿し水組成物の水希釈物又は本開示に係る平版印刷用湿し水と、を供給することが好ましい。
〔露光工程〕
−機上現像型平版印刷版原版−
機上現像型平版印刷版原版としては、特に限定されず公知の機上現像型平版印刷版原版を使用することが可能である。
例えば、支持体上に、印刷機上で印刷インキ及び本開示に係る湿し水組成物の水希釈物の少なくともいずれかにより非画像部が除去可能な画像記録層を有する平版印刷版原版が挙げられる。
平版印刷版原版は、必要により、支持体と画像記録層との間に下塗り層(中間層ということもある)、画像記録層の上に保護層(オーバーコート層ということもある)を有してもよい。
本開示において用いられる機上現像型平版印刷版原版としては、特開2015−123683号公報に記載の平版印刷版原版が挙げられる。
−露光方法−
露光工程において、機上現像型平版印刷版原版(以下、単に「平版印刷版原版」ともいう。)は、線画像、網点画像等を有する透明原画を通してレーザー露光するかデジタルデータによるレーザー光走査等で画像様に露光されることが好ましい。
光源の波長は750nm〜1,400nmが好ましく用いられる。750nm〜1,400nmの光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。赤外線レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20マイクロ秒以内であるのが好ましく、また照射エネルギー量は10mJ/cm〜300mJ/cmであるのが好ましい。また、露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いることが好ましい。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、及びフラットベッド方式等のいずれでもよい。
画像露光は、プレートセッターなどを用いて常法により行うことができる。
露光工程においては、機上現像型平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光を行ってもよい。
−加熱処理−
露光前、露光中、露光から現像までの間に、平版印刷版原版の全面を加熱してもよい。このような加熱により、画像記録層中の画像形成反応が促進され、感度や耐刷性の向上や感度の安定化等の利点が生じ得る。現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行うことが好ましい。上記態様であると、非画像部が硬化してしまう等の問題を防ぐことができる。現像後の加熱には非常に強い条件を利用することが好ましく、100℃〜500℃の範囲であることが好ましい。上記範囲であると、十分な画像強化作用が得られまた、支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を抑制することができる。
〔機上現像工程〕
機上現像工程において、画像露光された平版印刷版原版に対し、印刷機上で印刷インキ、本開示に係る湿し水組成物の水希釈物及び本開示に係る平版印刷用湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも1種を供給することにより、非画像部の画像記録層が除去されて平版印刷版が作製される。
すなわち、平版印刷版原版を画像露光後、なんらの現像処理を施すことなくそのまま印刷機に装着するか、あるいは、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光し、ついで、印刷インキと本開示に係る湿し水組成物の水希釈物とを供給して印刷すると、印刷途上の初期の段階で、非画像部においては、供給された印刷インキ及び水性成分のいずれか又は両方によって、非画像部の画像記録層が溶解又は分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。一方、画像部においては、画像記録層が、親油性表面を有する印刷インキ受容部を形成する。
最初に版面に供給されるのは、印刷インキでもよく、本開示に係る湿し水組成物の水希釈物又は本開示に係る平版印刷用湿し水でもよいが、水性成分が除去された画像記録層の成分によって汚染されることを防止する点で、最初に印刷インキを供給することが好ましい。このようにして、平版印刷版原版は印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。印刷インキとしては、通常の平版印刷用の印刷インキが好適に用いられる。
また、上記機上現像工程後には、印刷機を停止することなく、上記印刷工程を連続して行ってもよい。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の実施形態の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本発明の実施形態の範囲は以下に示す具体例に限定されない。なお、本実施例において、「部」、「%」とは、特に断りのない限り、「質量部」、「質量%」を意味する。
下記表1又は表2に記載の組成に従って、各実施例及び比較例における湿し水組成物を調製した。表中、単位はグラム(g)であり、水を加えて最終的に1000mLとした。これらはいずれも濃縮タイプで、湿し水として使用する際に希釈する。
表1及び表2中、特定有機酸の化合物名の横に記載の「価数」の記載は、各特定有機酸における酸基の価数を、「溶解度」の記載は各特定有機酸の20℃における100gの水への溶解度(g)をそれぞれ示している。また、溶解度に「混和」と記載した化合物については、水と任意の割合で混和し、溶解度が無限大であることを示している。
特定有機酸として、特定有機酸の塩を使用した場合、上記溶解度の記載は、特定有機酸の塩の溶解度ではなく、対イオンをプロトンに置き換えた特定有機酸の溶解度として記載した。
また、表1及び表2中、「−」の記載は、該当する化合物を含有していないことを示している。
更に、「希釈後の湿し水のpH」の欄の記載は、湿し水組成物を後述の方法により希釈した後に、水酸化ナトリウム水溶液を用いて調整した湿し水のpHを示している。
実施例1〜12、比較例1、3、6、10及び11に係る湿し水組成物における硝酸イオン及び亜硝酸イオンの合計含有量は、2,500mg/L以下であった。
また、比較例2、4、5、7〜9に係る湿し水組成物における硝酸イオン及び亜硝酸イオンの合計含有量は、2,500mg/Lを超えていた。
表1又は表2に記載の化合物の詳細は下記の通りである。
<アミン化合物>
・TETRONIC 504:アミン化合物、BASF社製
<糖類>
・ソルビトール:Roquette製
<グリセリン>
・グリセリン:日本油脂製
<溶剤>
・エチレングリコール−t−ブチルエーテル:丸善石油化学製
・プロピレングリコール−n−ブチルエーテル:日本乳化剤製
・プロピレングリコール:三協化学製
・3−メチル−3−メトキシブタノール:クラレ製
<ジオール化合物>
・2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール:KH Neo Chem製
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール:KH Neo Chem製
<ピロリドン誘導体>
・オクチルピロリドン:ASHLAND製
<界面活性剤>
・プルロニックL31:(株)ADEKA製
・サーフィノール440:日信化学工業(株)製
・ネオペレックスGS:花王(株)製
<特定スルホン酸化合物>
・トルエンスルホン酸:東京化成工業製
・キシレンスルホン酸:東京化成工業製
・クレゾールスルホン酸:Sigma−Aldrich製
・ナフタレンジスルホン酸:東京化成工業製
・ナフタレンテトラスルホン酸:Sigma−Aldrich製
・オクチルスルホン酸:東京化成工業製
・p−トルエンスルホン酸ナトリウム:東京化成工業製
<特定有機酸 (価数/溶解度)>
・クエン酸 (3価/73):扶桑化学製
・アコニット酸 (3価/40):昭和化工製
・酢酸 (1価/混和):ダイセル製
・酒石酸 (2価/20.6):扶桑化学製
・マレイン酸 (2価/47.8):日本油脂製
・マロン酸 (2価/139):立山化成製
・リンゴ酸 (2価/55.8):扶桑化学製
・シトラコン酸 (2価/混和):東京化成工業試薬
・アジピン酸 (2価/2.2):住友化学製
・コハク酸 (2価/8):扶桑化学製
・クエン酸3カリウム (3価/73):昭和化工製
・フタル酸水素カリウム (2価/0.57):富山薬品工業製
<無機酸>
・85% リン酸:太平化学産業製
<硝酸塩>
・硝酸アンモニウム:昭和化学製
・亜硝酸ナトリウム:昭和化学製
<水溶性高分子>
・ポリビニルピロリドンK−15:ASHLAND製、重量平均分子量10,000
・カルボキシメチルセルロース:第一工業製薬製、セロゲン5A
・アラビアガム:スーダン産
・ヒドロキシプロピルセルロース:日本曹達製、HPC−SL
<その他添加剤>
・防錆剤(ベンゾトリアゾール):城北化学製
・防腐剤(イソチアゾリン系):ケイアイ化成製
・消泡剤(シリコン系):信越シリコン製
上記のように調液した実施例1、実施例3〜12又は比較例1〜11の組成物を、それぞれ、硬度400ppmの疑似硬水を用いて体積基準で50倍に希釈し、50%(w/v)水酸化ナトリウム水溶液を用いて、希釈後の湿し水のpHが表1又は表2に記載の値となるように調整し、実際に使用する湿し水とした。
また、実施例2は上記疑似硬水を用いて体積基準で200倍に希釈し、希釈後の湿し水の8質量%となる量のイソプロパノールを加えた後に、PHが4.8となるように50%(w/v)水酸化ナトリウム水溶液にて調整して、実際に使用する湿し水とした。
(評価方法)
印刷機はハイデルベルグ製 SM−74(アルカラー給水装置)を使用して、印刷インキとしては、東洋インキ(株)の環境対応型NonVOCインキ 名称 TOYO KING NEX NVのプロセス紅インキを、平版印刷版原版としては使用プレートとして富士写真フイルム(株)製の完全無処理サーマルCTPプレート ZPをそれぞれ用いた。
上記使用プレートは、活性光線吸収剤(赤外線吸収剤)、重合開始剤及び重合性化合物を含有する画像記録層及びその上に酸素遮断性保護層が設けられた光重合型平版印刷版原版である。
上記使用プレートを、サーマルレーザーセッター CREO社製 Quantumを使用しFM(Frequency Modulation)スクリーンTAFFTA20の画像を焼き込んだ後、印刷機に取り付け、各実施例又は各比較例における湿し水及びインキを供給して機上現像を完了し、以下のように、中越パルプ(株)製の軽量コート紙、名称エミネを用いて、下記の印刷テストを実施した。それぞれの評価基準における評価結果を下記表3に記載した。
(a)連続印刷安定性:
汚れを生じず、水負けを起こさない湿し水の量(最小水上げ量)を求め、その水目盛りで連続印刷を実施した。印刷物に汚れ又は水負けが発生し良好な印刷物が得られなくなるまでの印刷枚数により判定した。
水負けとは、湿し水によりインキが乳化してしまい、画像上にインキの乗りが悪い領域ができてしまう現象をいう。
〔評価基準〕
10,000枚以上:A
9,999枚〜3,000枚:B
2,999枚〜1枚:C
(b)汚れ回復性:
上記連続印刷安定性の評価における印刷と同様の条件により印刷を行い、3,000枚印刷後、印刷を停止し、印刷機上で1時間放置した後、印刷を再開した。印刷再開後、印刷を行いながら印刷物を目視により確認し、印刷版面のインキ汚れが解消するまでに要した印刷用紙の枚数を調べ、下記評価基準により判定した。
〔評価基準〕
15枚未満:A
15枚以上30枚未満:B
30枚以上100枚未満:C
100枚以上:D
(c)耐ローラーストリップ性:
50,000枚印刷したところで印刷機の運転を休止し、目視によりインキロール上における不溶性のカルシウム塩の析出、堆積およびインキロ−ルのインキハゲの発生の有無を調べ、下記評価基準により評価した。インキロールへのカルシウム塩の堆積及びインキハゲの発生が少ないほど、印刷時のローラーストリップの発生が抑制されている、すなわち、耐ローラーストリップ性が高いといえる。
〔評価基準〕
インキロールへのカルシウム塩の堆積及びインキハゲの発生が全く認められない:A
インキロールへのカルシウム塩の堆積が僅かに認められるが、インキハゲの発生は認められない:B
インキロールへのカルシウム塩の堆積が僅かに認められ、インキハゲの発生が僅かに起きるときがある:C
インキロールへのカルシウム塩の堆積が認められ、インキハゲの発生が認められる:D
(d)印刷機の錆やすさ:
上記(a)〜(c)の評価に使用した湿し水をビーカーに100mLずつ小分けした。印刷機に使用される金属部材と同じ材質のはがね、銅、真鍮製の小片を用意し、それぞれ湿し水に浸漬し、3日後に各金属部材に発生した錆の状態を評価した。
〔評価基準〕
錆がないか、表面のみ錆あり:A
錆による軽度の侵食あり:B
錆びによる侵食あり:C
(e) 水質汚染汚濁法の有害物質の含有量(有害物質の含有量)
上記(a)〜(c)の評価に使用した湿し水における硝酸イオン及び亜硝酸イオンの合計含有量を、水質汚染汚濁防止法に定められたJIS K0102:2013に従って測定した。測定結果を、下記評価基準により評価した。
〔評価基準〕
上記合計含有量が検出限界未満であった:A
上記合計含有量は検出限界以上であったが、合計含有量が排水基準(100mg/L)以下であった:B
上記合計含有量は検出限界以上であり、かつ、合計含有量が排水基準(100mg/L)を超えていた:C
上記の結果から、本開示における実施例に係る湿し水組成物の水希釈物は、連続印刷安定性、汚れ回復性及び耐ローラーストリップ性、のいずれについても優れており、印刷機の錆やすさが抑制されており、かつ、水質汚染汚濁防止法の有害物質の含有量が十分に低いことがわかる。
さらに実施例1、3及び4の湿し水組成物のように、揮発性有機溶剤を含有しない場合においても、実施例5〜13の湿し水組成物のように揮発性有機溶剤を含有する場合と同様に良好な性能が得られた。
本開示における実施例に係る湿し水組成物の水希釈物はまた、イソプロピルアルコール等の揮発性の高い溶剤成分を使用しなくても良好な印刷適性を示した。従って、有機溶剤による労働安全上の問題を解消でき、また有機溶剤の使用量を低減できるため、環境への影響を低減することが可能であると思われる。
また、実施例2のようにイソプロピルアルコールと併用した湿し水であっても、水質汚染汚濁防止法で有害物質に指定される環境負荷の大きな硝酸イオン及び亜硝酸イオンの含有量を十分に低い値としつつ、良好な印刷適性を得ることができた。

Claims (9)

  1. 硝酸イオン及び亜硝酸イオンを含有しないか、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの合計含有質量が、湿し水組成物の全質量に対し、0mg/Lを超え2,500mg/L以下であり、
    下記式1aにより表される化合物、下記式1bにより表される化合物及び下記式1cにより表される化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種のスルホン酸化合物と、
    2価以上であり、かつ、20℃における100gの水への溶解度が7.0g以上である有機酸よりなる群から選ばれた少なくとも2種の有機酸と、を含む
    平版印刷用湿し水組成物。

    式1a中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシ基を表し、nは0〜3の整数を表し、Mはプロトン又は一価のカチオンを表す。
    式1b中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基又はヒドロキシ基を表し、mは0〜6の整数を表し、iは2〜4の整数を表し、Mはそれぞれ独立に、プロトン又は一価のカチオンを表す。
    式1c中、Rはそれぞれ独立に、炭素数3〜8のj価の炭化水素基を表し、jは1〜2の整数を表し、Mはそれぞれ独立に、プロトン又は一価のカチオンを表す。
  2. 前記スルホン酸化合物として、前記式1aにより表され、かつ、n個のRの合計炭素数が0〜3である化合物、及び、前記式1bにより表され、かつ、m個のRの合計炭素数が0〜6である化合物、よりなる群から選ばれた少なくとも1種のスルホン酸化合物を含む、請求項1に記載の平版印刷用湿し水組成物。
  3. 前記少なくとも2種の有機酸のうち、少なくとも1種が3価以上の有機酸である、請求項1又は請求項2に記載の平版印刷用湿し水組成物。
  4. 前記3価以上の有機酸が、クエン酸又はアニコット酸である、請求項3に記載の平版印刷用湿し水組成物。
  5. 硝酸イオン及び亜硝酸イオンを含有しないか、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの合計含有質量が、湿し水組成物の全質量に対し、0mg/Lを超え100mg/L以下であり、
    下記式1aにより表される化合物、下記式1bにより表される化合物及び下記式1cにより表される化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種のスルホン酸化合物と、
    2価以上であり、かつ、20℃における100gの水への溶解度が7.0g以上である有機酸よりなる群から選ばれた少なくとも2種の有機酸と、を含む
    平版印刷用湿し水。

    式1a中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシ基を表し、nは0〜3の整数を表し、Mはプロトン又は一価のカチオンを表す。
    式1b中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基又はヒドロキシ基を表し、mは0〜6の整数を表し、iは2〜4の整数を表し、Mはそれぞれ独立に、プロトン又は一価のカチオンを表す。
    式1c中、Rはそれぞれ独立に、炭素数3〜8のj価の炭化水素基を表し、jは1〜2の整数を表し、Mはそれぞれ独立に、プロトン又は一価のカチオンを表す。
  6. 平版印刷版に対して、印刷インキ、及び、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の平版印刷用湿し水組成物の水希釈物又は請求項5に記載の平版印刷用湿し水を供給して印刷を行う印刷工程を含む印刷方法。
  7. 機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光し、画像部と非画像部とを形成する露光工程、並びに、
    印刷インキ、前記水希釈物及び前記平版印刷用湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも1種を供給し、前記非画像部を除去して前記平版印刷版を得る機上現像工程を含む
    請求項6に記載の印刷方法。
  8. 印刷工程において用いられる前記水希釈物が、前記平版印刷用湿し水組成物の体積基準で25倍〜200倍の水希釈物である、請求項6又は請求項7に記載の印刷方法。
  9. 印刷工程において用いられる前記水希釈物又は前記平版印刷用湿し水のpHが、3.0〜5.0である、請求項6〜請求項8のいずれか1項に記載の印刷方法。
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