JP2006066496A - 窒化ガリウムの結晶成長方法および窒化ガリウム基板の製造方法並びに窒化ガリウム基板 - Google Patents

窒化ガリウムの結晶成長方法および窒化ガリウム基板の製造方法並びに窒化ガリウム基板 Download PDF

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Abstract


【課題】 下地基板の上にマスクを設けその上にGaNをHVPE成長させマスク端部から立ち上がるファセットを維持しながら成長させると、マスクの部分は欠陥集合領域Hとなりファセット成長した部分は単結晶低転位領域となるが、欠陥集合領域Hが多結晶だったり方位が傾斜した単結晶だったりする。クラックの生じない自立GaN基板を製造する方法を提供すること。
【解決手段】
初め低温で成長させマスク上に多結晶微粒子を生成し高温でエピタキシャル成長させ露出部だけに窒化ガリウム薄膜が成長するようにし、マスクの端から傾斜して伸びるファセットを充分に広くなるようにし、ファセットから方位反転した爪状の突起がマスクの上方へ伸びるようにする。突起が伸び合体し、その上に成長する部分は方位反転結晶の欠陥集合領域Hとなる。熱膨張率異方性の違いがなくクラックが発生しない基板を与えることができる。
【選択図】図5

Description

この発明は、3−5族窒化物系化合物半導体からなる青色発光ダイオード(LED)や青色半導体レーザ(LD)などの発光デバイスの基板として用いられる窒化ガリウムの結晶成長方法に関する。また発光ダイオードや半導体レーザなど青色発光デバイスの基板に用いられる窒化ガリウムの結晶に関する。
窒化物系半導体を用いた発光デバイスは、すでに青色LEDを初めすでに実用化がなされている。窒化物半導体を用いた青色発光デバイスは現在でも殆どが基板としてサファイヤを用いている。サファイヤ基板の上に、窒化物半導体GaN、InGaN、AlGaN層を成長させInGaAsを活性層とする青色青緑色のLED、LDが作製される。サファイヤは化学的に安定な基板であり発光デバイスの基板として適合している。窒化ガリウムとサファイヤの格子ミスフィットは大きい。しかしだからといって欠陥が転位などから増殖するということはない。デバイスは安定である。それは一つにはサファイヤの優れた特性であり、もう一つはLEDの場合電流密度が低いので欠陥増殖などの劣化が進みにくいということもある。
サファイヤ基板にも欠点がある。それは、劈開性がない、絶縁体である、ミスマッチが大きいということである。
サファイヤ基板の上に作製したInGaN系の発光ダイオードの場合はサファイヤウエハ−を機械的にダイシングしてチップに切り分ける。サファイヤに劈開性がないから歩留まりが低くコスト高になっていた。青色半導体レーザの場合は共振器面を劈開面に作るということができない。共振器面を簡単に作ることができる半導体レーザの特性など品質の面で問題であった。
サファイヤは絶縁体基板なので、通常のLEDやLDのように基板底面にn電極を設けることができない。n型p型のGaN、InGaNのエピ層を積んだあと一部をエッチングしn型GaN膜を一部露出させそこをn電極とする。リードピンとn電極をワイヤボンデイングで接続する必要がある。横方向に電流を流すのでn型GaN膜は厚くしなければならない。そのため工程数、工程時間が増大しコスト高を招いていた。
p電極、n電極を上面から取り出すのでチップ面積を広くしなければならない。それもコストを押し上げていた。
サファイヤ基板の上に窒化物薄膜を積層すると格子のミスマッチのためにエピ層の中に多数の転位など欠陥が発生するという問題もある。現に市販されているサファイヤ基板の上に作製したGaNエピ層には10〜1010cm−2程度の高密度の転位密度が存在するといわれている。サファイヤよりも格子ミスマッチの小さいSiC基板を用いたGaN系エピ層でも同様な高密度の転位密度が見られ大差ないようである。
もっともこの高密度転位密度は発光ダイオード(LED)の場合は殆ど問題にならない。そこから欠陥が増殖しないからである。電流密度が高い半導体レーザ(LD)の場合は転位から欠陥が成長してゆく可能性があり、半導体レーザの寿命を制限する原因になるのではないかと考えられている。サファイヤ基板は青色、紫外発光デバイス(LED、LD)の基板として今も主流をなしている。
しかしそれにもかかわらず、GaN系発光素子の最も理想的な基板は窒化ガリウム(GaN)基板であると本発明者は考える。
もしも高品質のGaN単結晶基板が得られるならば、GaN、InGaN、AlGaNなどのエピ層との格子ミスマッチの問題は起こらない。
サファイヤと違い、窒化ガリウムは明確な劈開をもつ。チップ切り出し時に自然劈開によってきれいに切断できる。それは半導体レーザの共振器を歩留まり高く作製することを可能にする。
窒化ガリウムはドーピングできるので、n型不純物をドープすることによって導電性あるn型基板を作ることができる。そうすれば底面をn電極にできる。下面にn電極、上面にp電極を取ることができる。上下に電極を設けられるからチップサイズを減らすことができる。またワイヤボンデイング工程を一つ減らすことができる。
そのように窒化ガリウム単結晶基板が望まれる。しかし大型高品質単結晶の窒化ガリウム基板を製造する技術は未だ存在しない。
平衡状態を保った液相からの結晶化は、超高圧高温の環境で可能だと言われている。が、小粒の結晶粒が少量製造できるだけで実用的でない。
これに対し、異種物質の下地基板の上に、窒化ガリウムの層を厚く気相成長させて、そのあと下地基板を除去することによって窒化ガリウムの単体の基板を得るという方法が本発明者によって試みられている。
窒化ガリウム(GaN)の気相成長は、もともとサファイヤ基板の上に0.1μm〜2μm程度のGaN薄膜を成長させるときに利用された技術である。いまでもInGaN、GaN、AlGaN薄膜成長に用いられている。MOCVD法が主流である。これはGaの有機金属とアンモニアを気相で吹き込んで加熱されたサファイヤの上で反応させ反応生成物をサファイヤ基板の上に積層するものである。ドーパントの有機金属気体を添加することによってドーピングも容易に行える。
またGaN薄膜をサファイヤ基板の上に成長させると転位密度が高くなるのでそれを減らすためにエピタキシャルラテラルオーバーグロース(ELO:epitaxial lateral overgrowth)という手法が用いられる事もある。これはマスクを基板に付けておきマスク上を横方向成長するようにし横方向成長したものが衝突し成長の方向を横方向から縦方向に転換させ、その時に転位密度を減らすようにした工夫である。薄膜成長の工夫で、0.1μm〜0.5μm程度とごくごく薄い時に成長方向を変えて転位を減らす方法でその後はC面をもって成長させる。本来、薄膜の転位密度を減らすための手法である。
本発明者はELOを厚い基板の製造にも転用することを考えていくつもの発明をしている。サファイヤを下地にすると簡単には取れないので、下地基板にはGaAs単結晶を用いる。GaAs(111)基板の上に小さい窓を規則正しく配列したマスクを設けマスクの上からGaN膜を気相成長させる。初め、窓から露呈したGaAs基板の上にGaNが縦成長し横方向成長に変わってマスクに乗り上げる。転位の伸びる方向も横方向になり衝突して転位が減る。その後は上向きのC面成長となる。薄膜でなくて数百μm程度の厚いGaNをELOによって成長させ下地基板のGaAsを除去してGaNの自立膜を得るようにしたのが本発明者による特許文献1、2である。
本発明者による特許文献3はGaN膜をさらに厚く成長させて複数枚の基板を切り出し、一挙に複数枚のGaN基板を製造する方法を提案している。これらの新しい手法によってGaN基板の商業ベースでの製造が初めて可能になった。本発明者による特許文献1、2、3はELOを拡張して初期に転位を減らすようにして低転位の自立基板を得ようとしたものである。
ところが、これらC面成長する方法によるGaN基板は未だに転位密度の高いもので(1010cm−2程度)であった。その上に窒化物系の薄膜を積層するのであるが、基板自体に転位密度が多数ある場合は、もともとある転位から出発した多数の欠陥がエピ層に受け継がれる。だから基板自体が高品質のものでないと、その上に良好な発光デバイスを作ることができない。ELOはもともと薄膜(0.1μm〜1μm程度)の転位を減らすものであり厚い基板(数百μm)の場合はあまり有効でないということである。成長の初期に転位が一次的に減っても、その後増大する。
そこで転位密度の小さいGaN基板を製造することを目的として、さらに本発明者は研究を進めた。そして特許文献4にファセット成長法とでも呼ぶべき新規な優れた窒化ガリウム結晶成長法を提案した。それは従来のC面成長とは全く違って独自のものである。本発明者が創案したものは、三次元的なファセット構造を結晶表面に作り出し、例えば逆6角錐型のファセットからなるピットが多数並ぶような構造を作り、それを埋め込まないでピットを維持しながら気相成長を持続させ、ファセットの傾斜面の法線方向成長により転位をピットの底へ掃き込むことによって転位密度を実効的に減少させる。
平均するとC軸方向に成長しているが表面はC面でないファセット面を多数含む。かりにファセット成長法と呼ぶことができる。図1(a)、(b)によってそれを説明する。図1(a)は三次元的ファセットを持って成長する窒化ガリウム結晶4の表面のピットを含む一部を拡大した斜視図である。結晶4の表面には平坦部7(C面成長部)もあるが、逆六角錐形状のピット5が多数存在する。ピット5の六面はファセット面6である。これは{11−22}面であることが多い。平均的な成長方向は上方(c軸方向(0001))であるが、ファセット6はその法線の方向に成長するファセット面に存在した転位は傾斜面が法線方向に盛り上がるので稜線8の方へ移動する。転位は稜線8をさらに滑り落ちてピット5の底にたまる。ここで、{…}は面の包括表現、(…)は面の個別表現、<…>は方向の包括表現、[…]は方向の個別表現である。図2はピットの平面図で、転位の動きを水平面に投影したものである。ファセット6を維持しながら成長すると転位が稜線8へ移り、さらに稜線8を伝わって中心の多重点Dへ集まる。
三次元的なファセット構造は、逆12角錐状のピットであってもよい。これらのファセット面6の多くは、{11−22}面や{1−101}面である。ファセット成長法は、これらのファセットピット5を多数作り出し、これらを埋め込まないようにして成長を続ける。結晶成長とともにファセット面6も上方へと持ち上がってゆく。するとファセット面6に存在した転位は、ファセット面の法線をC面に投影した方向へ移動する。つまり転位は稜線の下とピットの中央へ集められる。
稜線の下に集積したものは6面の面状欠陥10となる(図1(b))。ピット底に集結したものは線状欠陥11となる。掃き集められた転位は線状欠陥(転位集合束)11、面状欠陥10に集められる。そのように多数の転位がピット中央の欠陥10、11に集まり集結する。方々に分散していた転位がピット底へ掃き集められるのだから、その他の部分の転位密度は減少する。ピット底の転位が集まった部分を転位集合部と呼ぶ。その他の部分の転位が減少するという優れた効果のある方法である。それが本発明者による特許文献4に述べられたファセット成長法である。極めて斬新な手法である。ELOのように成長の初期だけ転位を衝突させて減らすのではない。成長の間を通じて転位をピット底(線状欠陥11、面状欠陥10)へ集め続けるので効果が持続する。転位密度減少の度合いは高く、その他の部分の転位密度は10−5〜10−7程度に減少することもある。
このファセット成長法は優れた新規な方法であったが、なお問題があることが分かった。図3(1)、(2)によって特許文献4のファセット成長法の欠点を明らかにする。図3(1)はファセット成長によって転位がピット5底の線状転位集合部11に集められたものを示す。
(1)GaN膜を厚く成長させるに従って、ファセットピット6中央の転位集合部11(線状転位集合部)に一旦集まった転位が広がりはじめる。図3(2)のように転位13がピット底からモヤ状に分布し広がる傾向が現れる。つまり線状転位集合部11には転位を永久的に拘束する力がない。だからそれ以上周辺部の転位密度が下がらなくなる。モヤ状転位広がり13がファセット成長部の方へ拡大するとその部分の転位が再び増加する。
(2)ファセット面からなるピット5の生成位置はランダムである。偶然に支配される。積極的に制御できない。転位を集結させた転位集合束11の位置もランダムであり、予め決めておくことができない。どこにピット5ができるのか?ということは偶然に支配される。確率的なものである。デバイスを作るとき転位密度集結部を避けて作る必要があるとするとファセットピットの所在がランダムであるというのは不都合である。どこにピットができて転位が集結するのか?ということが予め決まった方が良い。ファセット成長法には、これらの新しい課題が浮かび上がってきた。これらの課題を解決するために、本発明者は次のような工夫を考えた。
本発明者らは、転位のモヤ状の広がり13がピット底から発生するのは、ファセット面からなるピット中央底(線状転位集合部11)に転位が集結しても、集結部分に転位が一時的に滞留するだけで転位間には反発力が働き成長がさらに進むと分散し始めモヤ状に広がるためだと推量した。単にファセットを維持して成長させるだけでは一旦補集した転位をつなぎ止めておくことができない。
そこで本発明者は特許文献6に示すドットマスクファセット成長法を新たに創案した。これは下地基板の上に孤立した円形、矩形の被覆部を規則正しくピッチpで並ぶようにドットマスクを作っておき、その上に窒化ガリウムをエピタキシャル成長させるものである。
図4によって説明する。下地基板21の上にマスク(被覆部)23を作っておく。下地基板露出部29で結晶成長はすぐに始まり薄膜が積層される。被覆部23の上の成長が遅れ、境界部にファセット26が生ずる。ドット状に被覆部23を作るから被覆部23の周りに必ずファセット26からなるピット25ができる。被覆部23の上に欠陥集合領域Hが生ずる。露呈部のファセット面26に続いて成長する部分Zは単結晶になるが、もともと存在した転位はピット25の底へ集まるのでファセット成長する部分Zは低転位となる。ファセット成長領域は、Hに伴って存在するから単結晶低転位随伴領域Zともいう。幾何学的にファセット成長する部分Zで全体を覆い尽くせないから、C面(27)成長する部分Yが残る。C面成長領域Yも転位がファセット領域に引き寄せられるので低転位になる。Zで覆い尽くせない領域ということで単結晶低転位余領域Yともいう。こうして
マスク被覆部の直上 =欠陥集合領域H
露出部直上ファセット直下=単結晶低転位随伴領域Z
C面成長部 =単結晶低転位余領域Y
という複合構造を持った窒化ガリウム基板となる。特許文献4のファセット成長法のときは、欠陥が集合する部分とその他の部分という区別だけがあったが、特許文献5では、その他の部分といってもファセット成長した部分(単結晶低転位随伴領域Z)とC面成長する部分(単結晶低転位余領域Y)があるということが初めて認識された。つまり2つの部分でなく、3つの区別される部分がある、ということが初めて明らかになった。そしてマスクの周辺部を上向きに延長した筒状体がHとZの境界となり、それが結晶粒界Kとなる。転位は欠陥集合領域H、結晶粒界Kに集められ、ここで一部消滅し残りは捕獲拘束され再び分散しない。モヤ状の広がり13はこれによってなくなる。そのような明確な転位消滅捕獲機構が欠陥集合領域H、結晶粒界Kによって作られた。
そのように特許文献5はマスクを予め下地基板の上に作っておきマスクの上に欠陥集合領域Hができるのだから、特許文献4の転位を集合する線状転位集合部11の位置が決まることになる。これは同時に低転位単結晶領域Z、Yの位置をも決めることになる。そして転位拘束は永久的でモヤ状再分散が起こらない。特許文献5はマスクを付けることによって、不安定であった転位集合部分11の代わりに、位置決めされた欠陥集合領域Hを作り、これによって転位捕獲を永久化した。偶然が支配し転位再分散を許した特許文献5のファセット成長法を著しく改善したものである。
特許文献6は平行線状の被覆部をもつマスクを下地基板に形成して窒化ガリウムをファセット成長するものである。マスクが平行線であるから半導体レーザなどのデバイスを作製する場合に便利である。
特許文献7はドッドマスクファセット成長法の特許文献5の優先権を主張した出願である。特許文献8はストライプマスクファセット成長法の特許文献6の優先権を主張した出願である。
特願平9ー298300号 特願平10−90080号 特願平13−102546号 特願2001−102307号 特願2001−284323号(ドット) 特願2001−311018号(ストライプ) 特願2002−230925号(ドット) 特願2002−269387号(ストライプ)
マスク23を下地基板21に付けておき、その上にファセット成長させるマスクファセット成長法はまことに優れた方法であった。そのマスクはELOのマスクとは違って、被覆部上(H領域)と露呈部上(Z、Y)にできるものがそもそも違うのである。転位を集結したH領域はマスク位置で一義的に決まる。H領域が一旦捕集した転位は永久に拘束される。転位のモヤ状広がり13ができない。
ところが、そのような精緻な方法にもなお問題があるということが分かった。マスク上にできる欠陥集合領域Hの正体がハッキリと定まらないということである。欠陥集合領域Hは多結晶の場合もあるし、結晶方位が正方向に少し傾いた単結晶であることもあり、結晶方位が負方向(180度近く)に少し傾いた単結晶であることもある。
そのように欠陥集合領域Hの本質が不定多種多様であるということは問題である。窒化ガリウムはc軸方向とa軸、b軸、d軸(4軸で表現して)方向ではその性質が異なる。熱膨張率もc軸方向とa軸方向では大きく異なる。気相成長法では1000℃もの高温にして成長させそれを室温にまで冷却するから、c軸方向の縮みとa軸方向の縮みはかなり違う。1000℃もの温度変化をするから、わずかな熱膨張率の相違であってもc軸、a軸方向の熱膨張率の差(熱膨張率異方性)が大きな応力を生じる。
欠陥集合領域Hが多結晶であれば、熱膨張率は平均の値になる。だから欠陥集合領域Hと周りの低欠陥単結晶領域Zとの熱膨張率の異方性が異なる。そのために冷却すると強い内部応力が生じマイクロクラックが発生する。下地基板を除くと窒化ガリウム結晶はバラバラになるか、そうでなくても破断しやすいものになる。
欠陥集合領域Hが正方向に軸の傾いた単結晶である場合、周囲の低欠陥単結晶領域Zと方位が異なるからやはり温度変化によって応力が発生し、クラックが生ずる。折角窒化ガリウム基板を作っても割れてしまって使えないということになる。
欠陥集合領域Hが負方向に軸の傾いた単結晶である場合も同様であり熱膨張率の異方性が内外で不一致になりクラックが発生する。
欠陥集合領域Hと単結晶低転位領域Zで熱膨張率の異方性を合わせる必要がある。そのためには方位が完全に合致しているか、完全に反転しているかどちらかでなければならない。それ以外の軸方向が食い違う単結晶だということでは必ず熱膨張率異方性の食い違いがクラックを発生させる。
欠陥集合領域Hと低欠陥単結晶領域Zの方位が合致していれば熱膨張率異方性が合致するからクラックは発生しない。それはいいのであるが、それだと全体が単結晶になり境界に不連続がないので転位を永久的に捕獲集結できない。モヤ状再拡散を阻止できない。
境界が転位を閉じ込め転位を集結した空間を閉鎖しなければならない。熱膨張率異方性を合致させ、境界になんらかの不連続を与えるためには欠陥集合領域Hと単結晶低転位領域Zの方位が反転しているという他はない。HとZがいずれも単結晶であって方位が逆転していれば判然と境界に欠陥ができる。それでいてa軸、c軸の熱膨張率異方性は一致するから1000℃の温度変化であっても熱膨張率の差が顕在化することはない。つまり低欠陥単結晶領域Zのa軸、b軸、d軸、c軸は、欠陥集合領域Hの−a軸、−b軸、−d軸、−c軸になる(図15)。熱膨張率はa軸方向でも−a軸方向でも同じなのであるから異方性は完全に一致する。
方位が逆転すると、その境界に必ず結晶粒界ができる。結晶粒界があれば転位を永久的に捕獲拘束できる。そういうわけでクラックを発生させないためには、マスク被覆部の上にできる欠陥集合領域Hは方位反転していなければならないということがわかる。
ところが特許文献5〜8の技術では、欠陥集合領域Hが多結晶になったり傾斜方位単結晶になったり反転方位になったりして一定しない。
必ず反転方位の欠陥集合領域Hを生成する、一段と進んだ技術が望まれる。本発明の目的はそのようにマスクファセット法においてマスク上に必ず方位反転した欠陥集合領域Hを形成する成長方法を提供しようとするものである。
本発明者は、熱膨張率の異方性によってクラックが生じないためには閉鎖欠陥集合領域Hが、周囲と180度方位が異なった反転方位でなければならないということに気付いた。しかし単にファセットを保持しながら成長しただけでは、閉鎖欠陥集合領域Hの位置が決まらないし反転方位にならない。マスクを予め下地基板に付けて結晶成長すると、閉鎖欠陥集合領域Hの位置は決まるが反転方位にならない。多結晶になったり単結晶になっても斜めに傾いている事が多くてクラック発生を防ぐことができない。方位が180度反転していることを本明細書では方位反転と呼んだり、あるいは極性反転と呼ぶこともある。
本発明者は、閉鎖欠陥集合領域Hが反転方位でなかったケースと反転方位になっていたケースの違いを徹底的に解析した。そして方位反転領域の形成されるメカニズムを解明することができた。
本発明者らは数多くの実験結果を検討し、反転方位が閉鎖欠陥集合領域Hに形成されるのは、ある特定の現象が成長の初めに生じた時のみであることを突き止めた。
反転方位領域は、マスク被覆部と露出部の境界の辺りの傾斜面の下部付近から反転方位結晶が横向き突起状に発生し伸びてマスク被覆部の上で合体し、被覆部を覆い、その上に反転方位結晶がそれを種として成長するのである。マスク被覆部と露呈部の境界から立ち上がる斜面の下部付近から、反転方位結晶が突起状に突然に多数発生する。そういう特異な現象が起こる。突起部分には反転方位が既に存在しており、それらが結合合体して、さらにはマスク被覆部の両側から延びてきたものが結合合体して、反転方位の種結晶を被覆部の直上に作るのである。反転方位種結晶の上に成長したものは当然に反転方位の欠陥集合領域Hとなるのである。
そのような突起発生がなくマスク被覆部へ接触しながら結晶が横方向に成長する場合は反転方位はできない。ELOと同じようになってしまう。
本発明者らは、マスク被覆部、露出部の状態と、結晶成長条件、結晶成長の経過などを、走査型電子顕微鏡などを駆使して研究を進めた。その結果マスク被覆部の上に、方位反転領域を安定して形成するためには次のような条件が必要だということがわかって来た。
(1)マスク材料はエピタキシャル成長を阻害する材料であること。
(2)被覆部上に成長する窒化ガリウム結晶の横方向の進行を、マスクの端部でせき止めた状態で比較的長い時間保持すること。そのときマスク端部でせき止められた傾斜面は{11−22}面であることが多い。マスク端部でせき止められマスクの上にかぶらない状態が続くので、ファセット面が広がる。そのような広いファセット面があって、次のような現象が起こる。
(3)マスク端部で横方向進行をせき止められたファセット面から、爪のような突起が所々に突出し始める。突起は他の部位と方位が180度反転した方位反転領域である。これが重要であり、ELOのようにマスクの上に乗り上げるのではなくマスクの上方で突起発生が起こる。
(4)形成され始めた反転方位の突起の数が増え成長が進み、それぞれが大きくなってくる。
(5)反転方位の爪状突起は上面が低傾斜角のファセット面であり{11−2−6}か、{11−2−5}面である。突起の下面はマスクから浮いておりマスクに接触していない。突起の下面は、対向するファセットと平行であるが法線方向が反対であり反平行の面となっている。しかし面指数は{11−21}である。それは方位反転しているからである。
(6)マスクの周囲、あるいは両側から複数の突起がマスクの上方へ伸びてきてマスクの中央部で合体する。合体してできたものは方位反転領域である。
(7)ぶつかった部分は格子不整合な境界(K’)をもったまま反転方位をもちながら厚く成長してゆく。ファセット成長している正方位領域と反転方位領域の間には方位反転に伴う結晶粒界(K)ができる。
(8)窒化ガリウムはファセットを維持しながら成長させるので、転位はファセットの斜面によってファセットの突き合わせ部の中心に向かって集められる。集められた転位は一部消滅し残りは方位反転領域H、その周囲の結晶粒界(K)や不整合による結晶粒界(K’)に捕獲拘束される。その他の正方位部分の転位は著しく減少する。そのように転位密度が集結する部分(H、K、K’)を予め決めることができる。低転位になる部分(Z、Y)をも予め決めることができる。
このようなメカニズムで成長した窒化ガリウム結晶には、反転方位領域がマスク上に明確に存在し、その内部では全体に渡って結晶方位が反転していることを確かめた。反転方位の欠陥集合領域Hが正方位の単結晶で囲まれているから熱膨張率の異方性が内外で一致する。そのために温度変化があってもクラックが発生せず歩留まり高く低転位高品質窒化ガリウム基板を製造できる。それは単結晶ではないが低転位単結晶部分(Z)を広く持っている。
そのように本発明の方位反転領域は、被覆部の端部から伸びる傾斜ファセット面の途中から発生し、延伸し合体し、マスクの上方、マスクと非接触の位置で連合した方位反転部を形成し、それを種結晶として上部へ成長するのでマスク被覆部の上方には方位が反転した領域が生ずるのである。つまりマスクの上にできる欠陥集合領域Hが反転方位になるのである。そのような現象は新規のものであって、本発明者の特許文献5〜8においては未だに知られていなかったものである。
本発明はマスク上にできる欠陥集合領域Hを必ず方位反転単結晶にすることができる。その他の部分とは方位が180度回転しているだけであるから、熱膨張率の異方性が同一になる。成長時の温度(1000℃程度)から室温までの温度変化が大きくても熱膨張率異方性が食い違わないから内部応力の発生は少ない。そのために下地基板をとってもバラバラにくだけないし基板としたときにクラックが発生しない。クラックがないから安定な自立基板として得る事ができる。これまで存在しなかった大型の窒化ガリウムの基板をそれによって歩留まりよく製造することができる。
図5によって本発明のマスクファセット反転方位成長法を説明する。
図5(1)のように下地基板61の上にマスク被覆部63をCVD、スパッタリングなどによって設ける。マスクはエピタキシャル成長を阻害するものである。マスクは孤立ドット状でも平行線状ストライプ状でもよい。被覆部63と露出部69の区別ができる。低温(300℃〜700℃)で窒化ガリウムを気相成長させる。
多結晶GaN微粒子70が露呈部69にも被覆部63の上にも付着する。これが重要である。高温で成長させると被覆部にはGaNが付かないが低温だから多結晶微粒子70が被覆部に付く。多結晶微粒子70が反転方位をファセット面に形成する重要な役割をする。
図5(2)においては高温(900℃〜1200℃)でエピタキシャル成長させている。露出部にはGaNの(0001)単結晶64の薄膜が成長する。しかしマスク被覆部63の上には窒化ガリウムが堆積しない。そのため被覆部両側に傾斜面ができる。それは低ミラー指数のファセット66であり、{11−22}面である事が多い。ストライプマスクの場合はマスクを<1−100>方向に作って{11−22}面が傾斜面に現れるようにする。ドットマスクの場合は{11−22}面よりなる逆六角錐ピットとなる。{11−22}面といっているが、これは包括表現であって6つの個別面を含む表現である。
ファセット成長する領域の外側に平坦面67をもって成長するC面成長領域Yが生ずる。それはマスクの形状による。ストライプマスクの場合は狭くできるが、ドット型マスクの場合はC面成長部Yがかなりの面積を占めることもある。マスクの阻止力が強くてなかなか被覆部63の上に結晶が溜まらないからファセット面66の面積がかなり広くなる。
図5(3)に示すように広くなったファセット面66から多数の爪状の突起68が内側向けて発生する。突起68は方位が反転しており、(000−1)単結晶となっている。突起68の上面は緩やかな傾斜面となっており、突起68の下面は対向するファセット面66の傾斜と平行で向きが正反対になっている。左のファセット面をA、左突起の上面をB、下面をC、右のファセット面をD、右突起の上面をE、下面をFとし、個別指数で表現すると、
A(11−22) D(−1−122)
B(−1−12−6) E(11−2−6)
C(−1−122) F(11−22)
となる。反平行であるのにA=F、D=CであるのはB、C、E、Fは方位反転しているからである(図15)。上向き面B、Eの第4指数が負であるのはやはり方位反転のためである。突起68は被覆部63と非接触であって浮き上がっている。それは被覆部に微少な多結晶70が存在しそれが接触を妨げるからである。
図5(4)に示すようにファセット66から伸びた突起68はさらに伸長する。突起68は数多く発生し、それぞれが中央に向かって伸びる。伸びている間、マスク63に触れない。
対向して伸長してきた突起68、68は中央部で合体する。図5(5)に示すように、合体した部分が格子不整合による結晶粒界K’となる。合体して緩やかな傾斜をもつ円錐(ドットの場合)またはV溝(ストライプの場合)となる。そのように突起合体部の上に成長した部分は二重傾斜の円錐、V溝となる。突起はもともと方位反転して(000−1)になり、それを種結晶としてその上には方位反転結晶が成長する。それが欠陥集合領域Hである。内部の結晶粒界K’も成長してゆく。結晶粒界K’は左右に揺らぐので常にマスクの中心にあるとは限らない。
ファセット成長した部分は正方位(0001)で低転位の単結晶となる。それが単結晶低転位領域Zである。C面成長した部分は単結晶低転位余領域Yである。そのように3つの領域ができる。それは特許文献5〜8と同様であるが、本発明では欠陥集合領域Hが必ず反転方位となっているということである。そして欠陥集合領域Hと単結晶低転位領域Zの間に反転によって結晶粒界Kが生ずる。結晶粒界Kは集結した転位を消滅捕獲する作用がある。
図6はドットマスクを下地基板に形成して本発明の手法によって窒化ガリウムを成長させた場合の成長後の状態を示す結晶一部の斜視図である。下地基板61の上にエピタキシャル成長した窒化ガリウム結晶64がある。逆六角錐のピットが多数見える。その底がドットマスクの位置に対応している。ファセット66の下の部分が低欠陥単結晶領域Zである。ピットのない平坦部(C面(0001))の下にあるのがC面成長領域Yである。これら3つの領域H、Z、Yは物理的、光学的、化学的に大きく異なる。
図9はストライプマスクを下地基板に形成して本発明の手法によって窒化ガリウムを成長させた場合の成長後の状態を示す斜視図である。下地基板61の上にエピタキシャル成長した窒化ガリウム結晶64がある。窒化ガリウム結晶64には平行山谷構造が見える。谷の底がストライプマスク63の位置に対応する。マスクと谷の間にあるのが方位反転欠陥集合領域Hである。谷の両側にファセット66がある。ファセット66の下の部分が低欠陥単結晶領域Zである。この場合はC面成長部Yがない。後で述べるがC面成長部Yは電気抵抗が高く発光素子を作る場合に、Y領域がない方が良いという場合もある。ファセット成長の条件を巧みに調整してファセット66を広く肥大させY領域を0にすることができる。図9はそのような場合を示す。山の稜線がするどく尖っている。その場合、…HZHZ…繰り返し構造となる。
ストライプマスクでC面成長領域Yがあるものもある。図10にそれを示す。単結晶低転位随伴領域Z、Zの間にC面成長領域Yがある。山の稜線が平坦になる。この場合は、…HZYZHZYZ…という繰り返し構造になる。
ドットマスクの場合もストライプマスクの場合もこれらH、Z、Yの3つの領域は物理的、光学的、化学的に大きく異なる。
ファセット面から方位反転突起が突出するには、ファセット面が充分に広くなるまで、マスク端部が結晶の乗り上げを防止していなければならない。
窒化ガリウムの結晶成長がマスク(被覆部)の端部でせき止められている時は、窒化ガリウムのファセット面は、{11−22}面であることが多い。
またこのとき、ファセット面{11−22}によって結晶の横方向の伸長がせき止められているときは、マスク(被覆部)の上には、窒化ガリウムの多結晶粒子が孤立して付着している。その多結晶微粒子が、結晶の横方向のマスクへの乗り上げを抑制しているらしい。
なぜ、方位反転した突起がファセット面から突出するのか?ということは未だによく分からない。詳細は不明である。マスクの上にある、多結晶微粒子の存在が重要な役割をしているものと思われる。マスク上の多結晶微粒子が、反転方位結晶の出現に誘発的な効果をもっているようである。
本発明の骨子は、窒化ガリウムのエピタキシャル成長において、下地基板上に、エピタキシャル成長を阻害する作用のあるマスクを、ドット状(孤立点状)またはストライプ(平行線状)状に設け、露呈部と被覆部を作り出し、露呈部上に正方位(0001)単結晶窒化ガリウムを成長させるのであるが、マスク被覆部が窒化ガリウム膜の成長を阻止し、成長の初期には露呈部だけに厚い結晶ができ、マスク端(境界)からファセット面が露呈部側に伸び、ファセット面が広くなり、対向するファセット面から、マスクより浮いて反転方位の突起が伸長し始め、突起がマスクの上を覆うように周囲から複数個伸長してマスクの上で合体し、その反転方位結晶を種結晶として、マスク被覆部の上方には反転方位領域が発生し、被覆部の上には正方位単結晶が生成し、正方位、反転方位の結晶が同時に堆積してゆき、複合的な窒化ガリウムの結晶を作り出す。方位反転領域と正方位領域の間には方位反転に伴う結晶粒界Kが発生する。この結晶粒界Kが転位を消滅捕捉拘束するという作用がある。
下地基板はそのまま使っても良い。予め窒化ガリウムの薄膜をその上に成長させておいた複合体を下地基板として用いても良い。GaN/基板の複合体を下地基板としてマスクをその上に作る。
ファセット面を埋め込まないで法線方向にファセットが成長するようにするので、ファセット面やそれに隣接する部分に存在した転位はファセット面の底の方へと移動してゆきマスク被覆部と露呈部の境界に到る。そこには先述の結晶粒界Kがあり、結晶粒界Kが転位を捕獲して一部を消滅させる。残りの転位も拘束して再び放散しないようにする。そうして結晶粒界Kがモヤ状の転位の再放散13(図3(2))が起こらないようにする。方位反転結晶Hの内部にも転位が集積される。それで方位反転領域を欠陥集合領域Hと呼ぶこともできる。ここに転位を集結するから、その他の部分の転位を減らすことができる。
露出部の上に成長する結晶は(0001)正方位の単結晶である。その上面はGa面である。被覆部の上に成長する結晶Hは方位反転(000−1)の単結晶である。その上面は窒素面である。
露呈部の上で被覆部の近くに生成する窒化ガリウムはファセット面をもって成長し、成長の途中でファセット面が消えることのないようにする。
そのファセット面は、ストライプマスクの場合は{11−22}面ファセットである。そうなるようにマスクを<1−100>方向の平行線状に形成するのである(図9、10)。
ドットマスクの場合は自然に{11−22}面が現れて被覆部を底とし、その周囲に逆6角錐(ロート状)のピットを形成する(図6)。{11−22}面といっても3回対称性があるから6つの個別面を含んでいる。マスクの廻りに逆12角錐が現れる場合もある。それは{11−22}面と{1−101}面である。これらの面の傾斜は55゜〜65゜程度で強い傾斜である。ファセット面として成長する部分はファセット成長領域Zと呼ぶ。
ファセットから反転方位の突起が側方へ発生する。方位反転した突起の上面は、ファセット領域Zの傾斜よりも緩やかな傾斜をもつ。それは水平に対し25゜〜35゜の傾斜をもつ。それは{11−2−5}面、{11−2−6}面あるいはそれから少し(5゜以内)傾いたファセット面である。
方位反転突起の下面は、対向するファセット面と同じ傾斜をもち、それは{11−22}面である(図15)。面の向きが反対であるのに同じミラー指数であるのは、方位が反転しているからである。
被覆部の上で反転方位の突起が合体するのであるが、それらの突起は方位が反転しているといっても別個にファセット面の斜面に発生するのだから、わずかに方位が食い違うこともある。その方位の食い違いのため反転方位突起が両側から伸び橋渡しをし、合体したときに合わせ目に不整合を有することがある。不整合が結晶粒界K’を発生する。その結晶粒界K‘は方位反転領域Hの真ん中にできる。周辺部の結晶粒界Kとは別のものである。発生する原因も異なる。反転方位が成長するに従い結晶粒界K’も上方に成長してゆく。
初めに形成するマスクは孤立点を多数周期的に配置するドットマスクでもよいし、平行線上に被覆部、露呈部を形成するストライプマスクでもよい。
ドットマスクの場合ドットは円、矩形などなんでもよいが直径dは5μm〜100μm程度がよい。周期配列のピッチはp=100μm〜1000μmの範囲であり好ましくはp=300μm〜500μm程度がよい。
ストライプマスクの場合、幅のある被覆部の幅はw=5μm〜100μmとする。ピッチはp=100μm〜1000μmの程度である。露呈部幅はs=200μm〜400μmの程度である。
ドットマスクの場合はファセット成長領域Z、Zの間にファセットが存在できない部分が残る。それは平坦なC面成長領域Yである。C面成長領域Yもファセット成長領域も方位は同じで単結晶であるが、電気的、光学的、化学的な性質が違う。だから露呈部上に成長した部分も二つ(Z、Y)に分けて考えるべきである。だから、…HZYZH…という繰り返し構造になる。
ストライプマスクの場合も、ファセット成長領域Z、Zの間にファセットが存在しないC面成長領域Yがあることもある。その場合は…HZYZH…という構造になる。しかし平行線のマスクだから常にC面成長領域Yができるわけではない。ファセット成長領域を広げるとY領域を消去できる。その場合は、…HZHZH…というようにYのない構造となる(図9)。
反転方位の突起が発生するためには、マスクの上に予め微細な多結晶粒子が分布しているという条件が必要なようである。
マスク材質は、SiO、SiN、Al、AlN、ZrO、Y、MgOなどが適している。
下地基板は、サファイヤ、Si、SiC、MgO、ZnO、GaAs、InP、GaP、GaN、AlNの単結晶などが適する。
あるいはサファイヤ、Si、SiC、MgO、ZnO、GaAs、InP、GaP、GaN、AlN等の単結晶に薄くGaN薄膜を成長させて表面をGaNで被覆したものであってもよい。
そのようにして得られた窒化ガリウムは単結晶でなく、3つの区別される領域からなる。それらの領域の定義と性質を次に述べる。性質の一部はまだ述べていないものもあるので、これより後で詳しく述べる。
欠陥集合領域H…反転方位領域。突起が合体した結晶から成長する。被覆部の上にできる。(000−1)の単結晶。酸素を多く含む。電気抵抗は低い。
低欠陥単結晶領域Z…ファセット成長した部分にできる領域。露呈部の上で被覆部に隣接する部分にできる。単結晶低転位随伴領域Zともファセット成長領域Zとも呼ぶ。酸素を多く含み、電気抵抗は低い。
単結晶低転位余領域Y…C面成長した部分にできる領域。ドットマスクの場合は必ず発生する。ストライプマスクの場合は存在することもあり存在しない場合もある。C面成長領域Yとも呼ぶ。酸素をあまり含まない。電気抵抗は高い。炭素を多く含む。
そして、HとZの間に結晶粒界Kが、Hの内部に結晶粒界K’ができる。これも重要である。
境界の結晶粒界K…方位が逆転しているからH/Z間にできる。ファセット成長によって集合した転位を捕獲し一部消滅させ、残りを拘束収容する。
内部の結晶粒界K’…突起の不整合によって欠陥集合領域Hの中心にできる結晶粒界であり成長とともに伸びるが欠陥集合領域Hの端に寄ることもあり左右に揺らぐ。
窒化ガリウムは透明なので肉眼でそれらを区別できない。光学顕微鏡でも違いが分からない。蛍光顕微鏡、カソードルミネッセンス(CL)によって区別することができる。
本発明はマスクとして平行線状(ストライプ)のものを採用しても、孤立点状(ドット)のものを採用しても実施することができる。ストライプマスクを使うものを実施例1とし、ドットマスクを使うものを実施例2として説明する。
[実施例1(ストライプマスクパターン)]
下地基板として2インチ径のサファイヤ基板(S1)、GaAs基板(S2)、予めMOCVD法によって1.5μmの厚さの窒化ガリウム膜をエピタキシャル成長させたサファイヤ基板(S3)を準備した。サファイヤ基板(S1)は、C面を主面とする。GaAs基板(S2)は主面を(111)A面とした。(111)A面というのはGa面のことで、(111)B面というのはAs面のことである。サファイヤ基板に成長させた窒化ガリウム膜はC面配向した鏡面状のものである。
S1:2インチサファイヤ基板
S2:2インチ(111)A面GaAs基板
S3:2インチGaN/サファイヤ基板
3種類の基板に、プラズマCVD法によって、0.1μm厚みのSiO膜を形成した。フォトリソグラフィによって下記の4種類の平行櫛形パターン(ストライプと呼ぶ)を形成した。ストライプパターンは、成長すべきGaNの<1−100>方位に平行になるよう規則的に設ける。
GaAs(111)A面にはGaAs<1−10>方向に平行にGaN<11−20>方向が、GaAs<11−2>方向にGaN<1−100>方向が軸を同一にして成長することが分かっている。上の方位はつまりGaAs(111)A面の<11−2>方位に平行にストライプマスクを形成するということである。
A1:線幅w 5μm、 ピッチp 300μm、露呈部幅s 295μm
A2:線幅w 20μm、 ピッチp 300μm、露呈部幅s 280μm
A3:線幅w 50μm、 ピッチp 300μm、露呈部幅s 250μm
A4:線幅w 200μm、ピッチp 500μm、露呈部幅s 300μm
S1〜S3の基板に、A1〜A4のストライプマスクを設けた。12種類のマスク付き基板の上に、HVPE法(Hydride Vaper Phase Epitaxy)によってGaN膜を成長させた。この実施例におけるHVPE法は、反応炉内部にGa金属を収容したGaボートを上方に備え、外部から炉の全体を加熱できるようにし、Gaボートを800℃に維持し、Gaメタル融液に対して上方からHCl+Hのガスを吹き付け、GaClを合成する。Gaボートの下方に、加熱された下地基板を設置しておき上方から流れてきたGaClにアンモニアガス(NH+H)を吹き付けてGaNを合成して基板の上にGaN膜を成膜するようになっている。水素(H)はキャリヤガスで最も大量に供給される。炉内部は全体としてほぼ1気圧である。
[バッファ層の形成]
基板温度: 490℃
HCl分圧: 0.002 atm (200Pa)
NH分圧: 0.2 atm (20000Pa)
成長時間: 15分
[エピタキシャル層の形成]
基板温度: 1010℃
HCl分圧: 0.02 atm (2000Pa)
NH分圧: 0.25 atm (25000Pa)
成長時間: 15分、
30分、
60分、
600分
成長時間は上記の4種類とし、その成長時間が経過すると試料を炉から取り出して観察、評価を行った。特に600分(10時間)成長させた試料については、観察評価したあと、研削加工によって下地基板、マスクを削り落とし、表面も研削加工し、平板な基板とした。その後研磨加工し平坦な表面をもつ基板とした。これは透明平坦平滑な基板である。様々な異なる部分構造をもつものであるが透明だから肉眼では区別が付かない。
(1)結晶成長の観察
GaAs下地基板の上に幅20μmの平行ラインを300μmピッチで設けた(露呈部幅280μm)マスクを設けた試料(S2*A3)について、15分、30分、60分、600分で取り出し、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡によって初期の結晶成長の様子を調べた。
窒化ガリウム膜の成長開始後15分で取り出した試料を観察したところマスクの上では連続的な被膜がなく、微細な多結晶粒子がわずかに乗っているだけであった。マスクで覆われていないGaAs露出部においてGaNの厚いエピタキシャル結晶成長膜が見られた。露出部のGaN膜厚は25μm程度であった。マスク上は空間で、GaAs露出部では厚い膜ができているから、マスクで落ち窪んだ形状になる。
結晶は平行に山と谷がいくつも並ぶ山溝形状となる(図5(2))。マスクの周辺で結晶は斜めの壁を形成する。斜め壁は{11−22}ファセットであった。そうなるようにストライプマスクの方向を予め<1−100>方向に決めたのである。
成長開始後30分で取り出した試料を見ると、マスク上では微細な多結晶粒子が僅かに乗っているだけで結晶成長が始まっていない。非マスク部(露呈部)では、窒化ガリウム膜の厚みは増加しており、膜厚は50μm程度であった。マスク周辺部での高低差が50μm程度になりマスク周辺部のファセット面が広がっている。{11−22}ファセット面において、斜面にゴツゴツした突起が内側向きほぼ平行に多数形成されていた(図5(3))。この突起はファセット面からマスク溝へほぼ平行に伸びて行く。突起の上面は、水平面に対して25゜〜35゜程度の傾きをもち、根元で{11−22}ファセット面に連続していた。
成長開始後60分で取り出した試料を見ると、線状マスク上では依然として微細な多結晶粒子が僅かに乗っているだけで結晶成長が始まっていない。非マスク部(露呈部)での結晶成長は進行し膜厚は100μm程度に達した。山谷構造がよりハッキリしてきた。マスクの左右では{11−22}ファセット面よりなる傾斜溝が生成される。対向するファセットを個別指数で表現すると(11−22)、(−1−122)である。30分成長の時に現れたゴツゴツした突起はさらに伸びる(図5(4))。突起の一部は、マスク(溝)の上方で結合している。隣接部位から伸びた突起もマスク上方で結合している。
突起が結合したものがストライプマスクの上を覆うようになる。結合突起とマスクの間には空間が残っていた。突起の伸長速度が同じでないため結合部はマスク中心線上にあるとは限らない。優勢な突起と劣勢な突起が結合した場合マスク中心より劣勢な突起の側へずれて結合する。結合した突起はゆるい傾斜のV溝を(図5(5)のBE)形成する。V溝の傾斜角度は水平に対して25゜〜35゜の程度であった。
だからマスクの上には2段傾斜のV溝ができる。外側のきつい傾斜は{11−22}、{1−101}ファセット面で水平面に対し約60゜程度の傾斜をもつ。その下端から続く内側の傾斜面は25゜〜35゜の緩い傾斜をもち突起が結合したことによってできたものである。そのようにV溝と山が一定ピッチpで平行に並ぶような形状となる。
成長開始後600分で取り出した試料を見ると、平均の厚みは約1mmに達していた。線状(ストライプ)マスクの近傍は、60分の試料と殆ど同じで、2重傾斜面のV溝が存在していた。つまり60゜程度の強い傾斜面(ファセット面)とその内側に25゜〜35゜程度の浅い傾斜面が続くV溝となる。マスク上部のV溝が埋め込まれることなく、そのまま維持されていた。マスクの直上は突起結合によって生じた浅い傾斜面であり、マスクから外れた部分に60゜程度の{11−22}ファセット面よりなる平行傾斜面ができる(図9、図10)。
このV溝は成長とともに広がる。隣接するV溝の間は平坦面(C面)となっている。線状(ストライプ)マスク直上で浅い傾斜面の下の平行直線部分が欠陥集合領域Hである。マスクの両側でファセットの下の部分が低欠陥単結晶領域Zである。隣接Z領域の間の平坦面はC面成長領域Yである。つまり、このGaNは平行な…ZHZYZHZ…構造よりなる結晶である。露出部では高い山ができ、マスクの上は低いV溝になっているので、マスク中央に稜線をもつ三角プリズムを多数平行に横に寝かせた形状を呈している。プリズムの稜線が鋭い線状の場合もある。それはYを欠落するもので、…ZHZHZHZH…というHとZが交代する構造である(図9)。プリズムの稜線が平坦面となっているものもある。平坦面はC面でありそれはC面成長領域Yである。その場合は上述のような…ZHZYZHZ…構造となる(図10)。
部分構造が異なるが透明なので目視ではこれらを区別できない。構造が異なる部分を含むのであるがクラックは全く発生していなかった。
この10時間成長後のGaN/GaAs基板について研削、研磨加工を行った。GaAs下地基板とマスクを研削加工によって削り落とした。表面の凹凸も研削で削り落とした。次いで、両面を研磨して平坦で透明なGaN自立基板とした。直径が2インチで厚みが約1mm程度の基板である。顕微鏡で表面を観察したが、全面においてクラックが発生していなかった。
(2)結晶の評価
こうして得られたGaN自立基板を透過電子顕微鏡(TEM)、電子線回折、CBED、CLなど種々の手段によって評価した。
マスク上を覆い尽くした浅い角度をもってV溝の部分を透過電子顕微鏡(TEM)により解析した。電子線回折によって評価したが、マスク上のV溝と、それ以外の山の部分で回折パターンに差異はなかった。
さらにCBED(Convergent Beam Electron Diffraction)という手法によって解析した。それによるとV溝では、それ以外の部分に対し結晶方位が丁度180度反転しているという事が分かった。それ以外の部分というのはマスクで覆われない下地基板露呈部の上に成長した部分である。
また研磨加工を施したGaN基板の表面をKOH水溶液中で温度を上げてエッチングした。表面側のマスクに対応する部分が選択的にエッチングされるということが分かった。GaNのGa面はKOHではエッチングされずN面がエッチングされることが分かっている。
この結果から、マスク上の成長部(H)は、それ以外(Y、Z)の部分に対して、C軸が丁度180゜反転している単結晶であることが分かる。つまりマスク以外の露呈部に成長した部分(Z、Y)は上面がGa面である(0001)結晶であり、マスク上に成長した部分(H)は、上面が窒素面である(000−1)単結晶であることがわかった。裏面はその反対である。図8にそのような構造を示す。
方位が反転し合う領域H、Zがマスク境界を上に延ばした面において隣接している。方位が反転しているので境界が粒界(K)となる。その粒界(K)が、集結した転位を一部消滅させ転位を捕獲して分散させない閉じた空間を形成する。転位がばらけたモヤ状の分散がこれによってなくなる。粒界(K)が生成するということが転位を減少させる上で極めて効果的である。しかも方位が180度反転しているから熱的な異方性の違いが顕在化せずクラックが発生しないという優れた利点がある。
マスク端部の{11−22}ファセット面の斜面から横向き求心的に発生したゴツゴツした爪状突起は初めから、C軸方向が反転した反転方位結晶である。突起の上に結晶成長がなされ、反転方位結晶がマスク上の全体に広がり、マスク上の領域全体が反転方位単結晶となる。そのようなメカニズムによってマスク上だけが方位反転単結晶(H)になる。ファセット領域Zとの境界が結晶粒界(K)となる。
さらにカソードルミネッセンス、蛍光顕微鏡を用いて結晶評価を継続した。
両面研磨して得られた基板は、大部分(Z、Y)の表面を(0001)面つまりC面とする基板である。ただストライプマスクのあった部分に成長した部分だけ(H)、表面が(000−1)面(窒素面)になっている。
カソードルミネセンス(CL)像によって結晶評価を行った。窒化ガリウム基板そのものの表面はフラットで透明均一に見えるが、バンド端の360nmを測定波長としてCL像を取ると、成長の履歴が色々のコントラストとなって現れるので上記の領域を区別して観察できる。
CL像によると、暗いコントラストの50μm幅程度の複数の領域が、ストライプマスク位置に対応し、規則正しく300μmピッチで平行に並んでいる。ストライプマスクに対応する暗いコントラストの領域は方位反転領域となっていることが分かった。マスク上の部分は暗いコントラストに見えるが一部は明るいコントラストの部分もあった。
外側の({11−21})ファセット成長した部分は明るいコントラストになっている。マスク上で成長した領域(H)とその外側のファセット成長した領域(Z)とは明確に区別できる。マスク上領域(H)と外部(Z)との境界が、結晶粒界(K)に相当している。結晶粒界(K)の部分は、明確な暗い線状のコントラストとして観察される。明るいコントラスト(Z)(Z)の間に、暗いコントラストの部分が線状に存在した。これはC面成長した部分(Y)である。同じ方位なのであるが、{11−21}ファセットで成長した履歴をもつものはCL像では明るく、(0001)C面で成長した履歴の部分はCL像では暗い。
さらにストライプマスク上の方位反転領域(H)の内部を観察すると、その内部にも結晶粒界(K’)に相当する明確な暗い線状のコントラストが認められる。それは線状マスク両側のファセットから伸びてきた爪状の突起(方位反転領域)が線状マスク上方で合体することによってできた結晶粒界(K’)である。異なるファセットから成長してくるから結晶方位が必ずしも一致せず幾分ずれるので粒界ができる。粒界(K’)の位置は、浅い角度をもったV溝の底に対応する。
さらに反転方位領域(H)の中の粒界(K’)の位置は結晶成長厚さによっても変化する。結晶成長初期の60分成長の試料においては、粒界(K’)がストライプマスク幅のほぼ中央に位置して存在していた。しかし結晶成長10時間のGaN基板についてCL像を観察すると、マスク幅の中央に粒界(K’)があることもあるが偏っていることもある。それは結晶成長の進行とともに粒界(K’)の位置が左右に変動してゆくためであろう。たとえばマスク幅中央から大きくずれて境界の粒界(K)と重なって存在する場合もある。そのように突起が結合してできた粒界(K’)は常に方位反転領域の中央部にあるとは限らない。
CLに限らず、蛍光顕微鏡を用いても、反転方位領域(H)の内部の粒界(K’)を観察できる。
反転方位領域(H)を含む試料を切り出して、透過電子顕微鏡で、内部粒界(K’)の解析を行った。反転方位領域(H)内の粒界(K’)の両側部分から、電子線回折をして比較を行った。20以上の点において測定を行った結果、粒界(K’)を境としてその両側で、結晶方位が少しずれた不整合面であることがわかった。もちろん特別な場合に方位がぴったり一致する場合もある。場所によってばらつきもある。試料によって差異がある。方位に少しの差異があるが、それでも粒界(K’)の両側の部分の結晶方位の差異は5゜以内であった。
成長初期の段階で取り出した試料(15分、30分、60分)を再び詳細に観察した。成長開始後30分に取り出した試料に現れていたゴツゴツした爪状の突起については、側方から見ると、上斜面と下斜面に囲まれた楔型断面をしている。これが何かということが問題である。
突起の上斜面の水平に対する傾斜角は、25度〜35度で緩やかな傾斜面となっている。下斜面の傾斜角は55度〜65度の強い傾斜を持っている。それは対向するファセット面{11−22}の傾きと丁度平行である。法線方向が反対だから丁度反平行であるということができる。もしも結晶軸が同一であれば、下斜面は、対向ファセット面と反平行だから指数にマイナス1を掛けて{−1−12−2}となる筈である。しかし既に説明したように突起は周囲とは方位が180度反転した単結晶で方位反転領域だということがわかっている。だから下斜面は再び面指数にマイナス1をかけて{11−22}面だということになる。突起の下斜面は、対向するファセット面と平行で法線方向が反対であるが、方位が逆転しているのでミラー(Miller指数)は同一になるのである。
方位が逆転しているから突起の上向き面の第4指数はマイナスに、下向き面の第4指数はプラスになる。突起の緩やかな上向きの傾斜面は{11−2−6}、{11−2−5}、一般に{11−2−n}(n≧3)と書くことができる。
30分成長の試料では、ファセット面から斜めに平行の突起群が発生しマスクに接触せずマスクの上方を内向きに伸長する。60分成長の試料では内向きの爪状突起が中間部で合体して浅い傾斜のピットを作っている。浅いピットの外側により強い傾斜面が連続することになる。二段傾斜のV溝となる。60分成長以後は、マスクの上の突起合体部の上に方位反転結晶が成長し、ファセット部分の上にはファセットを維持しつつ正方位の結晶が成長する。C面成長部分(Y)もそのまま上方へ成長し厚みを増してゆく。
そのような複雑な成長をする。600分で1mm近くに成長し研削、研磨した試料について、カソードルミネセンス(CL)によって転位密度を測定した。カソードルミネセンスによると貫通転位が存在すると黒点となって現れる。黒点の数を数えることによって貫通転位の数を知る事ができる。
方位反転領域(H)では、転位密度は10cm−2〜10cm−2で高い値であった。これは他の部分にあった転位を掃き集め、それが方位反転領域(H)に集積しているからである。ファセット成長した領域(Z)と、C面成長した部分(Y)での転位密度は10〜10cm−2であり、Z、Y領域(非反転;正方位単結晶)の部分の転位密度は大幅に減少していることが確認された。
通常サファイヤ基板の上に窒化ガリウム薄膜を成長させた場合、窒化ガリウム薄膜には、10cm−2〜1010cm−2の高密度の転位が発生する。それに比べて、本発明は、窒化ガリウム結晶中の転位密度を大きく低減でき著しい転位削減効果があることが分かる。
(3)マスクパターン種類の影響
以上の例では、A3マスク(平行;線幅w=50μm;ピッチp=300μm)のものについて述べてきた。A1、A2、A4マスクを用いたものについてもほぼ同様の結果が得られた。ただ、マスクA1(線幅w=5μm、ピッチp=300μm)を作製してGaNをその上に成長させたものは、マスクが狭い為にその上に発生する方位反転領域(H)が狭く、その内部に発生するはずの粒界(K’)が分かりにくくなる傾向があった。A1マスクの場合、(成長時間を長くして)GaN層を厚くすると反転方位領域(H)自体が消失することもあった。A1マスクは最良ではないが本発明が期待した効果を上げることはでき、マスク寸法の下限を与えるものと思われる。
マスクA2(線幅w=20μm、ピッチp=300μm)は、A3マスクとほぼ同じで良好な結果をもたらすことができた。
マスクA4(線幅w200μm、ピッチ500μm)の場合は、被覆部の幅が200μm、半幅が100μmであるから、突起が成長して結合するまで100μm伸長しなければならず結合までに時間がかかる。その後から方位反転領域(H)が成長するので転位の集積、消滅が不完全になることもある。またマスク被覆部の部分はデバイスの重要な部分には使えず、その比率が増加するので望ましくない。だからストライプマスクの線幅wの望ましい値は5μm〜100μm程度である。
(4)基板種類の影響
GaAsを下地基板(S2)とした場合について述べてきたが、下地基板として、サファイヤ基板(S1)を使用した場合、あるいはMOCVD法で1.5μm厚みのGaN層をサファイヤ基板上に被覆したGaN/サファイヤ複合基板(S3)の上に、同様のマスクA1〜A4を形成して、GaNをファセット成長させた場合も同じような結果が得られた。
サファイヤ基板を下地基板にした場合(S1)、前述のGaAs基板(S2)のときと同様のマスク、同様の成長条件で、GaNバッファ層、GaNエピ層を成長させた。成長時間も、15分、30分、60分、600分とした。初めは、下地基板露出部だけに成長がおこりストライプ(平行線状)マスクの上に成長がおこらない。露呈部に結晶の山ができマスクは谷になるから山谷が交代する平行畝構造となる。マスクの両側に平行ファセット面ができる。ファセットが充分に高くなるとファセットから爪状突起(反転方位領域(H))が伸び中央で合体して、その上に反転方位領域(H)が成長し、ファセット領域には単結晶低転位領域Zが成長し、ファセットとファセットの境界の平坦面にはC面成長部Yが成長した。反転方位領域(H)と単結晶低転位領域Zの間には粒界(K)が発生した。反転方位(H)が欠陥集合領域であることもわかった。反転方位領域(H)の内部にも粒界(K’)があることも確認された。それは爪状突起が結合合体したときの不整合が上方へ連続的に伸びた粒界(K’)である。
1.5μmのGaN膜をMOCVD法で被覆したサファイヤ基板(S3)を下地基板にした場合も同じように、線状(ストライプ)マスクを作り、その上に低温バッファ層、高温のエピ層を成長させた。成長時間の刻みも15分、30分、60分、600分とした。初め、露出部だけにGaN結晶成長がおこり、マスク部には微粒子が僅かに付着しているだけであった。マスク周囲に斜めのファセットが形成される。ファセットが広がりその側面から爪状突起が発生してそれが合体する。合体したものは方位反転領域であり、その上に成長したものは方位反転している。それが欠陥集合領域Hである。ファセット部分に続いて単結晶低転位領域Zが成長し、平坦部分にはC面成長部分Yができる。反転方位領域(H)と単結晶低転位領域(Z)の間には方位反転によって結晶粒界(K)ができる。反転方位領域(H)の内部にも結晶粒界(K’)ができる。そのようにGaAs基板(S2)の場合と同様であった。
[実施例2(ドットマスクパターン)]
実施例1と同様に、基板として2インチ径のサファイヤ基板(S1)、GaAs基板(S2)、予めMOCVD法によって1.5μmの厚さの窒化ガリウム膜をエピタキシャル成長させたサファイヤ基板(S3)を準備した。サファイヤ基板(S1)は、C面を主面とする。GaAs基板(S2)は主面を(111)A面とした。サファイヤ基板に成長させた窒化ガリウム膜はC面配向した鏡面状のものである。
S1:2インチサファイヤ基板
S2:2インチ(111)A面GaAs基板
S3:2インチGaN/サファイヤ基板
3種類の基板に、プラズマCVD法によって、0.1μm厚みのSiO膜を形成した。フォトリソグラフィによって下記の4種類のドットパターンを形成した。ドットパターンは、ELOとは異なり連続した1枚の被覆膜に窓を設けるのではなく、連続した露呈部分の中に、孤立した被覆部分を多数規則正しく配置するということである。
B1:ドット径d 5μm、 ピッチp 300μm
B2:ドット径d 20μm、 ピッチp 300μm
B3:ドット径d 50μm、 ピッチp 300μm
B4:ドット径d 200μm、 ピッチp 500μm
S1〜S3の基板に、B1〜B4のドットマスクを設けた。12種類のマスク付き基板の上に、HVPE法(Hydride Vaper Phase Epitaxy)によってGaN膜を成長させた。この実施例におけるHVPE法は、反応炉内部にGa金属を収容したGaボートを上方に備え、Gaボートを800℃に維持し、Gaメタル融液に対して上方からHCl+Hのガスを吹き付け、GaClを合成する。Gaボートの下方に、加熱された下地基板を設置しておき上方から流れてきたGaClにアンモニアガス(NH+H)を吹き付けてGaNを合成して基板の上にGaN膜を成膜するようになっている。水素(H)はキャリヤガスで最も大量に供給される。炉内部は全体としてほぼ1気圧である。
[バッファ層の形成]
基板温度: 490℃
HCl分圧: 0.002 atm (200Pa)
NH分圧: 0.2 atm (20000Pa)
成長時間: 15分
[エピタキシャル層の形成]
基板温度: 1010℃
HCl分圧: 0.02 atm (2000Pa)
NH分圧: 0.25 atm (25000Pa)
成長時間: 15分、
30分、
60分、
600分
成長時間は上記の4種類とし、その成長時間が経過すると試料を炉から取り出して観察、評価を行った。特に600分(10時間)成長させた試料については、観察評価したあと、研削加工によって下地基板、マスクを削り落とし、表面も研削加工し、平板な基板とした。その後、研磨加工し平坦な表面をもつ基板とした。これは透明平坦平滑な基板である。
(1)結晶成長の観察
実施例1と同様に、GaAs下地基板の上に50μm径のドットを300μmピッチで設けたマスクを設けた試料(S2*B3)について、15分、30分、60分、600分で取り出し、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡によって初期の結晶成長の様子を調べた。
窒化ガリウム膜の成長開始後15分で取り出した試料を観察したところマスクの上では連続的な被膜がなく、微細な多結晶粒子が薄く乗っているだけであった。マスクで覆われていないGaAs露出部においてGaNの厚いエピタキシャル結晶成長膜が見られた。膜厚は25μm程度であった。マスク上は空間でGaAs露出部では厚い膜ができているから、マスクで落ち窪んだ形状になる。マスクの周辺で斜めの壁を形成する。斜め壁は{11−22}ファセットあるいは{1−101}ファセットなどであった。
成長開始後30分で取り出した試料を見ると、マスク上では微細な多結晶粒子が僅かに乗っているだけで結晶成長が始まっていない(図5(2))。非マスク部(露呈部)では、窒化ガリウム膜の厚みは増加しており、膜厚は50μm程度であった。マスク周辺部での高低差が50μm程度になりマスク周辺部のファセット面が広がっている。{11−22}ファセット面において、斜面にゴツゴツした突起が内側向きに多数形成されていた(図5(3))。この突起はファセット面から求心的に伸びて行く。突起の上面は、水平面に対して25゜〜35゜程度の傾きを持ち、根元で{11−22}ファセット面に連続していた。
成長開始後60分で取り出した試料を見ると、マスク上では依然として微細な多結晶粒子が僅かに乗っているだけで結晶成長が始まっていない。非マスク部(露呈部)での結晶成長は進行し膜厚は100μm程度に達した。ドットの廻りでは{11−22}面、あるいはそれと{1−101}面からなるファセット面よりなる6角錘、12角錐のピットが生成される。30分成長の時に現れた突起はさらに伸びて、マスクの上方で結合している。隣接部位から伸びた突起もマスク上方で結合している。突起が結合したものがマスクの上を覆っていた。結合突起とマスクの間には空間が残っていた。
突起の伸長速度が同じでないため結合部はマスク中心にあるとは限らない。優勢な突起と劣勢な突起が結合した場合マスク中心より劣勢な突起の側へずれて結合する。結合した突起はゆるい傾斜の逆錘形状となる。その角度は水平に対して25゜〜35゜の程度であった。
だからマスクの上には2段傾斜の穴ができる。外側の穴は{11−22}、{1−101}ファセット面で水平面に対し約60゜程度の強い傾斜をもつ。その下端から続く内側の傾斜穴は25゜〜35゜の緩い傾斜をもち突起が結合したことによってできたものである。
成長開始後600分で取り出した試料を見ると、平均の厚みは約1mmに達していた。ドットマスクの近傍は、60分の試料と殆ど同じで、2重傾斜面の穴が存在していた。つまり60゜程度の強い傾斜面(ファセット面)とその内側に25゜〜35゜程度の浅い傾斜面が続く穴となりマスク上部の穴が埋め込まれることなくそのまま維持されていた。マスクの直上は突起結合によって生じた浅い傾斜面であり、マスクから外れた部分に60゜程度の{11−22}{1−101}ファセット面よりなる穴ができる。この穴は成長とともに広がる。擂り鉢形状の穴となる(図6)。
隣接する穴の間は平坦面(C面)となっている。マスク直上で浅い傾斜面の下の部分が欠陥集合領域Hである。ファセットの下部分が低欠陥単結晶領域Zである。隣接穴の間の平坦面はC面成長領域Yである。つまり、このGaNはH、Z、Yよりなる結晶である。構造が異なるが透明なので目視ではこれらを区別できない。構造が異なる部分を含むのであるがクラックは全く発生していなかった。
この10時間成長後のGaN/GaAs基板について研削、研磨加工を行った。GaAs下地基板とドットマスクを研削加工によって削り落とした。表面の凹凸も研削で削り落とした。ついで両面を研磨して平坦で透明なGaN自立基板とした。直径が2インチで厚みが約1mm程度の基板である。顕微鏡で表面を観察したが、全面においてクラックが発生していなかった。
(2)結晶の評価
こうして得られたGaN自立基板を種々の手段によって評価した。
透過電子顕微鏡(TEM)、電子線回折、CBEDにより実施例1と同じ評価方法によって、マスク上の成長部(H)は、それ以外(Y、Z)の部分に対して、C軸が丁度180゜反転している単結晶であることが分かった。つまりマスク以外の露呈部に成長した部分(Z、Y)は上面がGa面である(0001)結晶であり、マスク上に成長した部分(H)は、上面が窒素面である(000−1)単結晶であることがわかった。方位が反転した領域が隣接しているから境界が粒界(K)となる。その粒界が、集結した転位を一部消滅させ転位を捕獲して分散させない閉じた空間を形成する。転位がばらけたモヤ状の分散がこれによってなくなる。
ドットマスクを使用した場合においても、マスク端部の{11−22}ファセット面の斜面から横向き求心的に発生したゴツゴツした爪状突起は初めから、C軸方向が反転した反転方位結晶である。突起の上に結晶成長がなされ、反転方位結晶がマスク上の全体に広がり、マスク上の領域全体が反転方位単結晶となる。そのようなメカニズムによってマスク上だけが方位反転単結晶(H)になる。境界が結晶粒界(K)となる。
さらにカソードルミネッセンス、蛍光顕微鏡を用いて結晶評価を継続した。
両面研磨して得られた基板は、大部分(Z、Y)の表面を(0001)面つまりC面とする基板である。ただドットマスクのあった部分に成長した部分だけ(H)が、表面が(000−1)面になっている。
実施例1と同じようにCL像によって結晶評価を行った。CL像によると、ドット形状の明確な暗いコントラストで区別された領域が、マスク位置に対応し、規則正しく、300μmピッチで6回対称の位置に並んでいる。暗いコントラストのドットマスクに対応する領域は方位反転領域(極性反転)となっていることが分かった。その領域と外部との境界が、結晶粒界(K)に相当している。結晶粒界(K)の部分は、明確な暗い線状のコトラストとして観察される。
さらにドット状の方位反転領域(H)の内部を観察すると、その内部にも結晶粒界(K’)に相当する明確な暗い線状のコントラストが認められる場所も多い。それはドットマスク周辺部のファセットから伸びてきた爪状の突起(方位反転領域)がマスク上方で合体することによってできた結晶粒界である。異なるファセットから成長してくるから結晶格子が必ずしも一致せず幾分ずれるので粒界ができるのである。優先的に成長してきた反転方位領域が二つあれば、合体により粒界(K’)は一本観察される。この反転方位領域(H)内部にできる粒界の位置に関しては規則性は少ない。
さらに反転方位領域(H)の中の粒界(K’)の位置は結晶成長厚さによっても変化する。特に結晶成長10時間のGaN基板についてCL像を観察すると、方位反転領域の中に結晶粒界が見られない場合もある。その原因は、結晶成長の進行とともに、粒界の位置が変化してゆくためであろう。例えばマスク中央からずれて、方位反転領域の境界部と粒界(K’)が合致して存在する場合もある。その場合は、反転方位領域の内部に粒界(K’)が存在しないことになる。
その反転方位領域(H)の内部の粒界(K’)に対し、透過電子顕微鏡で、解析を行い、反転方位領域(H)内の粒界の両側部分から、電子線回折をして比較を行った。多数の点において測定を行った結果、ストライプマスクの場合(実施例1)と同様に、粒界(K’)を境としてその両側で、結晶方位が少しずれた不整合面であることがわかった。もちろん特別な場合に方位がぴったり一致する場合もある。場所によってばらつきもある。試料によって差異がある。方位に少しの差異があるが、それでも粒界(K’)の両側の部分の結晶方位の差異は5゜以内であった。
成長初期の段階で取り出した試料(15分、30分、60分)を再び詳細に観察した。成長開始後30分に取り出した試料に現れていたゴツゴツした爪状の突起については、側方から見ると、上斜面と下斜面に囲まれた楔型断面をしている。これが何かということが問題である。上斜面の水平に対する傾斜角は、25度〜35度で緩やかな傾斜面となっている。
下斜面の傾斜角は55度〜65度の強い傾斜面となっている。それは対向するファセット面{11−22}の傾きと丁度平行である。法線方向が反対だから丁度反平行であるということができる。もしも結晶軸が同一であれば、下斜面は、対向ファセット面と反平行だから指数にマイナス1を掛けて{−1−12−2}となる筈である。しかし既に説明したように(図15)突起は周囲とは方位が180度反転した単結晶で方位反転領域だということがわかっている。
だから下斜面は再び面指数にマイナス1をかけて{11−22}面だということになる。突起の下斜面は、対向するファセット面と平行で法線方向が反対であるが、方位が逆転しているのでミラー(Miller指数)は同一になるのである。方位が逆転しているから上向き面の第4指数はマイナスに、下向き面の第4指数はプラスになる。突起の緩やかな上向きの傾斜面は{11−2−6}、{11−2−5}、一般に{11−2−n}(n≧3)と書くことができる。ドッドマスクの場合ファセット面が{1−101}の場合もあり、それに対向する突起の場合は、下斜面が{1−101}で上斜面が{1−10−m}(m≧2)と書くことができる。
30分成長の試料では、ファセット面から斜めに突起群が発生しマスクに接触せずマスクの上方を内向きに伸長する。60分成長の試料では内向きの爪状突起が中間部で合体して浅い傾斜のピットを作っている。浅いピットの外側により強い傾斜面が連続することになる。二段傾斜の穴となる。60分成長以後は、マスクの上の突起合体部の上に方位反転結晶が成長し、ファセット部分の上にはファセットを維持しつつ正方位の結晶が成長する。C面成長部分(Y)もそのまま上方へ成長し厚みを増してゆく。
そのような複雑な成長をする。600分で1mm近くに成長し研削、研磨した試料について、カソードルミネセンス(CL)によって転位密度を測定した。方位反転領域(H)では、転位密度は10cm−2〜10cm−2で高い値であった。これは他の部分にあった転位を掃き集め、それが方位反転領域(H)に集積しているからである。ファセット成長した領域(Z)と、C面成長した部分(Y)での転位密度は10〜10cm−2であり、10cm−2以下の部分が多かった。Z、Y領域(正方位単結晶)の部分の転位密度は大幅に減少していることが確認された。
通常サファイヤ基板の上に窒化ガリウム薄膜を成長させた場合、窒化ガリウム薄膜には、10cm−2〜1010cm−2の高密度の転位が発生する。それに比べて、本発明は、窒化ガリウム結晶のZ、Yでの転位密度を大きく低減でき、著しい転位削減効果があることが分かる。
(3)マスクパターン種類の影響
以上の例では、B3マスク(ドット径50μm、ピッチ300μm)のものについて述べてきた。B1、B2、B4マスクを用いたものについてもほぼ同様の結果が得られた。
ただ、マスクB1(ドット径5μm、ピッチ300μm)を作製してGaNをその上に成長させたものは、マスクが狭い為にその上に発生する方位反転領域(H)が狭く、その内部に発生するはずの粒界(K’)が分かりにくくなる傾向があった。B1マスクの場合、(成長時間を長くして)GaN層を厚くすると反転方位領域(H)自体が消失することもあった。
B1マスクは最良ではないが本発明が期待した効果を上げることはでき、マスク寸法の下限を与えるものと思われる。
マスクB2(ドット径20μm、ピッチ300μm)は、B3マスクとほぼ同じで良好な結果をもたらすことができた。
マスクB4(ドット径200μm、ピッチ500μm)の場合は、ドットの直径が200μm、半径が100μmであるから、突起が成長して結合するまで100μm伸長しなければならず結合までに時間がかかる。その後から方位反転領域(H)が成長するので転位の集積、消滅が不完全になることもある。またドットの部分はデバイスの重要な部分には使えず、その比率が増加するので望ましくない。だからドットの望ましい直径dは5μm〜100μm程度である。
(4)基板種類の影響
GaAsを下地基板(S2)とした場合について述べてきたが、下地基板として、サファイヤ基板(S1)を使用した場合、あるいはMOCVD法で1.5μm厚みのGaN層をサファイヤ基板上に被覆したGaN/サファイヤ複合基板(S3)の上に、同様のマスクB1〜B4を形成して、GaNをファセット成長させた場合も同じような結果が得られた。
サファイヤ基板を下地基板にした場合(S1)、前述のGaAs基板(S2)の時と同様のマスク、同様の成長条件で、GaNバッファ層、GaNエピ層を成長させた。成長時間も、15分、30分、60分、600分とした。初めは、下地基板露出部だけに成長がおこりドットマスクの上に成長がおこらない。マスクの周囲にファセットピットができ、ファセットから爪状突起(反転方位領域(H))が伸び中央で合体して、その上に反転方位領域(H)が成長し、ファセット領域には単結晶低転位領域Zが成長し、ファセットとファセットの境界の平坦面にはC面成長部Yが成長した。反転方位領域(H)と単結晶低転位領域Zの間には粒界(K)が発生した。反転方位(H)が欠陥集合領域であることもわかった。反転方位領域(H)の内部にも粒界(K’)があることも確認された。それは爪状突起が結合合体した時の不整合が上方へ連続的に伸びた粒界(K’)である。
1.5μmのGaN膜をMOCVD法で被覆したサファイヤ基板(S3)を下地基板にした場合も同じように、ドットマスクを作り、その上に低温バッファ層、高温のエピ層を成長させた。成長時間の刻みも15分、30分、60分、600分とした。初め、露出部だけにGaN結晶成長がおこり、マスク部には微粒子が僅かに付着しているだけであった。マスク周囲に斜めのファセットが形成される。ファセットが広がり、その側面から爪状突起が発生して、それが合体する。合体したものは方位反転領域であり、その上に成長したものは方位反転している。それが欠陥集合領域Hである。ファセット部分に続いて単結晶低転位領域Zが成長し、平坦部分にはC面成長部分Yができる。反転方位領域(H)と単結晶低転位領域(Z)の間には方位反転によって結晶粒界(K)ができる。反転方位領域(H)の内部にも結晶粒界(K’)ができる。そのようにGaAs基板(S2)の場合と同様であった。
[実施例3(マスク種類の影響)]
これまでの実施例1、2においてはマスクの材質としてSiOを用いた。その他のマスク材質を検討した。サファイヤ基板上に、Si、Al、AlN、ZrO、Y、MgOの薄膜を0.1μmの厚さで堆積し、A3マスク(w=50μm、p=300μm;ストライプ)を作製した。実施例1に記載のように、GaNバッファ層、エピ層を成長させた。エピ層は30分成長させた。
その実験において、どのマスクを使った場合でも、山谷構造ができ溝の両側には{11−22}ファセットができた。そして{11−22}ファセットから突起が平行に内側向きに発生することも確認した。それはやはり反転方位領域であることが全てのマスクの試料について確かめられた。それはつまり上記のどのマスクを使っても本発明を実施することが可能だということである。
[実施例4(300nm〜2000nmの光に対する吸収係数)]
本発明のGaN基板は、欠陥集合領域(突起上成長部;反転方位)H、低欠陥単結晶領域(ファセット成長部;正方位)Z、単結晶低転位余領域(C面成長部;正方位)よりなり、…ZHZYZHZYZ…あるいは…ZHZHZ…という繰り返し構造を持っている。結晶方位と生成原因の違いについてはこれまで詳しく説明した。これら3つの領域は結晶方位、履歴の違いだけでなく、光学的、物理的、物性的な相違点がある。
ここでは紫外〜近赤外の300nm〜2000nmの光に対する吸収を測定した結果を説明する。実際には350nm帯、450nm帯、550nm帯、650nm帯の光源を用いて吸収を測定した。650nm以上の光に対してはH、Z、Y間で不均一性はない。
試料GaN基板は厚みd=0.4mmであり、0.1mmφの試験光を試料に当て、入射光Piと、反射光Pfと、透過光Ptの強度を測定し、
α=log{Pi/(Pi−Pt−Pf)}/d
によって吸収係数を計算した。欠陥集合領域H、単結晶低転位領域Z、単結晶低転位余領域Yの吸収係数をα、α、αとする。
Figure 2006066496
350nmの紫外光に対して吸収が大きいのはGaNのバンドギャップより大きいエネルギーを持ちバンドギャップ遷移が起こるからである。緑の550nm、赤の650nmに対してH、Z、Yともに1cm−1〜10cm−1の程度である。青色の450nm帯に対し、H、Z領域は吸収が小さい(1〜10cm−1)が、Y領域は吸収が大きく(10〜100cm−1)なる。その比率は5〜20倍になる。C面成長領域Yには炭素がより多く含まれているということを意味するのである。
[実施例5(燐酸:硫酸=1:1エッチング液に対するエッチング速度)]
燐酸:硫酸=1:1エッチング液に本発明のGaN基板を漬け、270℃に保持し10分間エッチングした。欠陥集合領域(突起上成長部;反転方位)Hのエッチング速度は速くて10μm/時以上であった。低欠陥単結晶領域(ファセット成長部;正方位)Z、単結晶低転位余領域Y(C面成長部;正方位)に対するエッチング速度は0.1μm/時未満であった。H領域のエッチング速度と、Y、Z領域のエッチング速度の比率は100以上である。Z、Y領域の表面はGa面であり殆どエッチングできない。しかし欠陥の多いH領域は表面が窒素面でありエッチング速度が速いのである。
Figure 2006066496
[実施例6(XRD)]
X線源: Cu−Kα1線
分光器: 2結晶(Ge(220))+ミラー
スリット: 0.5mm×0.2mm
入射方向: <11−20>
回折面: (0004)
X線を試料の(11−20)面に垂直な方向<11−20>から入射し、反対側の<−1−120>方向へ回折させたX線のスペクトルを求めピークの半値幅(FWHM(full width at half maximum))を測定した。これは(0004)面からの回折のピークである。ピークの半値幅が大きいという事は(0004)面の規則性が弱いということで、半値幅が狭いということは良質の単結晶だということである。単位はアークセカンドであり、1度の1/60である。
Figure 2006066496
どの領域も(0004)面からの回折X線のピークは鋭い。つまりH、Z、Y領域とも高品質の単結晶であるということである。しかし欠陥集合領域Hはやはり結晶の乱れが大きいので半値幅が広がる。それが他の部位の3〜10倍だということである。X線の(0004)回折でc軸方向の格子定数を測定できる。それによれば、H、Z、Y領域ともに、(0004)面間隔は0.5185nm±0.0001nmであった。つまりc軸長さは2.074nmである。この結果は3領域ともに同一の結晶系をもち格子定数も等しいということである。
[実施例7(電気抵抗)]
3端子ガイド法(図7)を用いて局所的な電気抵抗を測定した。
図7に示すように、対象となる基板の底面全体に電極52を付ける。上面の周辺部をガード電極53によって覆う(内径90μm)。上面中央部に測定用電極55(外径70μm)を付ける。上面の二つの電極間は10μmの間隙(平均直径80μm)がある。ガード電極53は接地、測定用電極55は電流計57を通して接地する。可変電源56から底部電極52に電圧Vをかける。電流計57に流れる電流Iを求める。VをIで割ったものがリング間隙(10μm)の抵抗Rである。
ρ(Ωcm)=R(Ω)×S(cm)/L(cm)
によって基板の局所的な抵抗率ρを求めることができる。それによってH、Z、Yの抵抗率を測定した。
Figure 2006066496
これまで述べたエッチング速度、XRDの不均一性は、欠陥集合領域Hが特異なものであったが、抵抗率ρに関しては、C面成長領域Y(単結晶低転位余領域)が特異で特に抵抗率が高い。それはH、Zでは酸素が大量にドープされるのに、C面成長領域Yでは酸素がドープされないことによると思われる。
[実施例8(ホトルミネッセンス;PL)]
波長325nmのHe−Cdレーザの光を、0.1mmφに絞ってGaN基板(0.4mm厚み)試料のH、Z、Y領域に当て、それらの領域から放射されるホトルミネッセンスのスペクトルを調べた。
図11は欠陥集合領域Hのホトルミネッセンスのスペクトルである。横軸は波長(nm)で縦軸はルミネッセンス強度である。バンドギャップに対応する360nmで鋭く高い(1730)ピークがある。緑黄橙色の波長にわたって低い(180)が幅広い山がある。
図12は低欠陥単結晶領域Zのホトルミネッセンスのスペクトルである。バンドギャップの360nmにはやはり高く細い(1750)ピークがある。黄色橙色の波長にわたって低い山(90)がある。
図13は単結晶低転位余領域(C面成長領域)Yのホトルミネッセンスである。縦軸が前の二つよりも約1/3の目盛りになっている。360nmのピークは著しく低く(70)なり、560nmを中心として黄色橙色の広いピークが持ち上がっており高く(160)なっている。これはC面成長領域に炭素が多く含まれるからであろうと推定される。360nmの山の高さを、560nmの山の高さで割った値で、バンドギャップ遷移の強さを表現できる。
H領域は1730/180=9.6
Z領域は1750/90=19.4
Y領域は70/160=0.44
である。ホトルミネッセンスに関していえば、Y領域(C面成長)が特異な領域だということである。
Figure 2006066496
これまで述べたエッチング速度、XRDの不均一性は、欠陥集合領域Hが特異なものであったが、ホトルミネッセンスに関しては、C面成長領域Y(単結晶低転位余領域)が特異である。それはH、Zでは炭素が混入しないのに、C面成長領域Yでは炭素が入ることによると思われる。
[実施例9(反り)]
基板の反りはデバイスをその上に作製する際に重要な評価基準となる。それは局所的な性質でなく、H、Z、Yの区別はない。本発明によって作られたGaN自立基板の反りは曲率半径Rで表現すると、最小でRmin=600mm、最大で50000mmである。本発明で作られたGaN基板は通常、反りの曲率半径が1500mm以上である。先に述べた実施例に係る基板の曲率半径を測定したが、反り曲率半径は1000mm〜50000mmの範囲にあって、反りの少ない良好な基板であることがわかる。反りの測定は触針法によって行った。針を基板の中心に当ててその高さを求める方法である。
[実施例10(不純物濃度の測定)]
研磨したGaN基板のH、Z、Yの領域について、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometer)によって不純物濃度を測定した。それはCsイオンを加速して対象に当て内部の原子をイオンとして叩きだし表面から出てくるイオンの軌道を質量分析磁石で彎曲させ、ある彎曲角へ来るイオンの数を計数して表面に存在する不純物濃度を求めるものである。
表面をエッチングして行く破壊検査であるから、ある程度の深さまでの不純物濃度を調べることができる。対象物の測定深さは0〜5μmである。測定領域は50μmφの局所的な範囲である。酸素(O)、シリコン(Si)、砒素(As)の濃度を、H、Z、Yについて測定した。
Figure 2006066496
シリコン、砒素の濃度についてはH、Z、Yについて差異はない。注目すべきものは酸素である。酸素濃度は、C面成長部Yにおいて特に低い。酸素はC面成長ではなかなか取り込まれない。ファセット成長面から酸素が容易にZ、Hへ入る。酸素のY/Z比、Y/H比は10−1〜10−5というように低い。それはY領域の抵抗が特に高いという電気伝導度の不均一性と整合している。
[実施例11(基板の寸法)]
本発明の方法で作製されたGaN自立基板は次のような寸法範囲をもつ。
矩形基板: 10mm≦1辺≦160mm
円形基板: 10mm≦直径≦160mm
厚さ: 5μm≦厚さ≦2000μm
矩形ウエハの場合、半導体レーザを作製するとき、共振器面の方位確認が容易である。円形ウエハの場合、エピタキシャル成長の時にガス流れが均一になるからエピタキシャル成長の異常が起こりにくい。
直径が10mm以下、一辺が10mm以下であると、ウエハプロセスにおけるスループットが低い。直径が160mm以上、一辺が160mm以上になると反りが大きくなる可能性があり、エピタキシャル成長時のガス流れが不均一になる。GaAsを下地基板とする場合は、市販されているGaAsの最大の大きさが6インチ(160mm)であるから、それによっても直径が限定される。
[実施例12(三次元的構造:図14)]
蛍光顕微鏡観察によって、各領域の厚み方向の幅の変動をも知る事ができる。H、Z、Y領域の幅は成長とともに僅かに変化する。H領域とY領域の幅は、エピタキシャル成長の進行とともに減少する。Z領域の幅は逆に増加する。であるからGa面(上面)における、H、Y領域の幅は、窒素面(下面)における幅よりも狭い。図14に、H、Z、Y領域の幅の変動を示す。厚みをtとすると、幅の変動は0.001t〜0.1tの程度である。
Figure 2006066496
本発明の方法によって、厚さ400μm、直径50mm、(H−H間)ピッチ400μmのGaN基板を作製した。N面(下面)でH領域の平均の幅は約20μmで、Ga面(上面)でH領域の平均幅は15μmであった。Z領域は下面で385μmの幅、上面で約380μmの幅を持っていた。Y領域は10μm〜40μmの幅を持っていた。
そのようにZ領域がGa面で広がるということは有利なことである。半導体レーザを作る場合、欠陥の多いH領域や、電気抵抗の高いY領域をさけ、欠陥が少なく電気伝導度の高いZ領域に電流狭窄領域を作らなければならない。Z領域の広い方が設計の自由度が高く都合が良い。Ga面の上にデバイスを作るのだからGa面側でZ領域が広がるのは好都合である。
[実施例13(転位密度)]
透過電子顕微鏡(TEM)またはカソードルミネセンス(CL)観察によって、各領域の転位密度を測定できる。
10μm×10μmの視野をもつTEMによって対象点から<1−100>方向に10視野を取り、H−H間を<11−20>方向に視野を走査して転位を計数し、対象点における転位密度を求めた。
欠陥集合領域Hで転位密度が高く、ファセット成長領域(単結晶低転位随伴領域)ZとC面成長(単結晶低転位余領域)Yは転位密度が低い。同じGaN基板でも場所によってばらつきがある。
次に2枚のGaN基板試料1、2について転位密度測定の例を示す。
[転位密度測定;GaN基板試料1(TEM)]
H; 1×10cm−2〜2×10cm−2
Z; 1×10cm−2〜1×10cm−2
Y; 2×10cm−2〜2×10cm−2
[転位密度測定;GaN基板試料2(TEM)]
H; 5×10cm−2〜1×10cm−2
Z; 3×10cm−2〜3×10cm−2
Y; 2×10cm−2〜1×10
cm−2
試料によって転位密度はばらつくが、欠陥集合領域Hで高く、ファセット成長領域Z、C面成長領域Yでは低いということは常に言える(H>Y、H>Z)。欠陥集合領域Hでの転位密度は、5×10〜5×10cm−2の範囲にある。Z領域での転位密度は50%以上の領域で5×10cm−2より低い。Y領域での転位密度は60%以上の領域で5×10cm−2より低い。
Figure 2006066496
[実施例14(熱伝導)]
本発明の方法で作製研磨した15mm×15mm×0.8mmの角型GaN基板を用いて熱伝導度を測定した。これは熱伝導の異方性の有無を調べるためのものである。だから初めから異方性がないドット型のものは測定していない。
ストライプ型の場合は、ストライプに平行方向の熱伝導と、ストライプを横切る方向の熱伝導に違いがある可能性がある。基板に直交する方向の熱伝導を測定するのは比較的容易である。が、横方向でしかも局所的な熱伝導を測るのは難しい。直接に熱伝導を測定できない。誘導的な手段で熱伝導度を求めた。
レーザフラッシュ法で熱拡散係数D(m/s)を測定した。示差走査熱量分析法(DSC;Differential Scanning Calorimetry)によって比熱C(J/kgK)を測定した。密度ρ(kg/m)はアルキメデス法によって測定した。熱伝導度Q(W/mK)は次の式によって計算することができる(W=J/sである)。
Q(W/ms)=ρ(kg/m)×C(J/kgK)×D(m/s)
密度ρ、比熱Cには方向性がない。熱拡散係数Dには方向性がある。GaN基板試料3〜7の5つの基板について、ストライプに平行のものDpとストライプを横切るものDtを測定した。それによってストライプ平行の熱伝導率Qpと、ストライプ垂直の熱伝導率Qtを求めることができる。
Figure 2006066496
試料によってばらつきはあるが、QtとQpに関しては前者が大きいもの(試料4、7)もあり、後者が大きい(試料3、5、6)もある。その差は試料間ばらつきよりも小さい。熱伝導度には異方性がないものと考えられる。その他の試料についても測定したが、本発明のGaN基板の熱伝導度の範囲は150W/mK〜220W/mKである。
[実施例15(ビッカース硬度Hv)]
本発明の方法で作製研磨した前述の試料3〜7(15mm×15mm×0.8mmの角型GaN基板)について、H、Z、Y領域の個別のビッカース硬度Hvを測定した。ダイヤモンド四角錘圧子を対象点に当て試験荷重P(kgf)を掛けて試料面に窪みを作った。できた窪みの対角線長aを測定し、そのときの試験荷重Pとから(JIS Z2244に準拠)次の式によってビッカース硬度Hvを計算した。
Hv=1.8544×P/a
試験荷重Pの範囲は、50〜200kgfである。
Figure 2006066496
試料4、5、6、7において、欠陥集合領域Hの硬度が最も低い。H領域は上面が窒素面でGa面より硬度が低いのではないかと思われる。試料3のようにZが最も硬度が低くなっているものもあり、ばらつきがある。C面成長領域Yが最も硬度が高い。それは結晶構造の規則性が高いためか炭素混入が多いためか、あるいは他の原因によるのか不明である。
H領域のビッカース硬度は1200〜1500Hv、Z領域のビッカース硬度は1200〜1800Hv、Y領域のビッカース硬度は1300〜1800Hvの程度である。
[実施例16(キズ密度の測定)]
本発明の方法で作製研磨した前述の試料3〜7(15mm×15mm×0.8mmの角型GaN基板)について、H、Z、Y領域の個別のキズ密度測定を行った。キズは研磨において発生したもので結晶成長とは直接に関係はない。キズがあまりに多いものは発光デバイスの基板として不適であるが、本発明のGaN基板はキズ密度も低くて満足できるものである。
キズの検査は微分干渉顕微鏡を用いた。対物レンズの倍率は40倍である。試料の縦300μm×横400μmの矩形範囲を微分干渉顕微鏡で写真撮影し、写真面に任意の部位に任意の方向に試験線を引き、試験線と交差するキズの数を数え、それを1mm長さの本数に換算してキズ密度(本/mm)とした。
Figure 2006066496
キズ密度は研磨に大きく左右される。試料間でのキズ密度ばらつきは大きい。試料4のように殆ど0本/mmのものもあり、試料3のように10本/mmを越えるものもある。しかしH、Z、Yの領域間ではばらつきはないようである。いずれの領域でもキズ密度は0〜1×10本/mmである。それはデバイス作製用の基板としては充分なものである。
実施例1のサファイヤ基板を用いて、A3のストライプパターンを形成し、実施例1と同じ条件にてバッファ層を形成し、その後、1000℃に昇温し、表12の条件でエピタキシャル層を60分成長して、マスク保護層上の極性反転領域(方位反転領域)Hの形成状況を確認した。
Figure 2006066496
成長の結果、極性反転領域Hの形成は、条件1および条件5では十分に形成なされず、連続していなかったり、あるいは形成されていない領域が見られたり、不十分であった。しかし、条件2、条件3、条件4においては、良好であった。これより、成長速度は、30〜100μm/hの範囲にあることが好ましいと考えられる。
特許文献4に提案したファセット成長法におけるファセットが法線方向に成長することによって転位を稜線とピット底へ集中させる転位の集結機構を説明するための斜視図。図1(a)は成長の初期を、図1(b)は成長が進行した後、線状の転位集合欠陥、面状の転位集合欠陥ができることを説明している。
特許文献4に提案したファセット成長法におけるファセットが法線方向に成長することによって転位を稜線とピット底へ集中させる転位の集結機構を説明するための平面図。
本発明者が提案したファセット成長法では転位の集合した束が一旦ピット底に形成されるが、成長とともに束がばらけて再び転位が周囲に拡散してモヤ状の転位広がりができることを説明する図。図3(1)が一旦転位がピット底に集められた線状転位集合束を示し、図3(2)はそれが成長の進行とともにモヤのように広がっていく様子を示す。
本発明者が特許文献4の転位集合部不確定、転位再拡散の問題を解決するために創案した(特許文献5〜8)マスクを下地基板の上に形成しておいてその上にファセット成長させることによってマスクを転位集合部とし、転位を閉じ込めた閉鎖欠陥領域Hとすることを説明する図。図4(1)はファセット成長することによって転位が閉鎖欠陥集合領域Hに集まる様子を示す。図4(2)はファセットが埋まらないように成長を続けると欠陥集合領域Hもそのまま成長しファセット面の上にもそのまま低欠陥単結晶領域Zが成長し、C面成長する単結晶低転位余領域Yも同じように成長して行く様子を示す。
本発明の窒化ガリウムの成長方法を示す結晶の一部断面図。図5(1)は下地基板の上にマスク(被覆部)を設け低温で窒化ガリウムを気相成長させると、被覆部の上にも多結晶微細粒子が付着することを説明する図。図5(2)は高温でエピタキシャル成長させると露出部の上だけに窒化ガリウムが成長し正方位(0001)の単結晶となり被覆部は膜ができないので、マスク被覆部から立ち上がるファセット面ができることを示す図。図5(3)はファセット面から横向きマスクに非接触で方位反転の突起が突出することを示す図。図5(4)は両方から突起がさらに延びたものを示す。図5(5)は延びた突起が被覆部の直上で結合して反転方位の種結晶となりその上に反転方位の単結晶が成長してゆくことを示す図。
ドットマスクを下地基板の上に形成して、その上から本発明の手法によって窒化ガリウムを成長させた成長後の複合基板の一部の斜視図。下地基板の上に窒化ガリウム結晶ができるが6角錐のファセットピットが多数できる。ピット底が欠陥集合領域Hであり、ファセットの下の部分が低欠陥単結晶領域Zであり、低欠陥単結晶領域Z、Zの間のC面成長する部分が単結晶低転位余領域Yである。
窒化ガリウム基板の局所的な電気抵抗率を測定するための電極形成を示す図。
本発明の窒化ガリウム基板において、成長の進行とともに、欠陥集合領域H、単結晶低転位余領域Yの幅は縮小し、単結晶低転位領域Zの幅は拡大する事を示す図。
ストライプマスクを下地基板の上に形成して、その上から本発明の手法によって窒化ガリウムを成長させた成長後の複合基板の一部の斜視図。下地基板の上に窒化ガリウム結晶ができるがマスクが平行線状なので山谷(V溝)構造が多数できる。プリズムを横平行に並べた形状になっている。マスクの上V溝の底が欠陥集合領域Hであり、ファセットの下の部分が低欠陥単結晶領域Zである。低欠陥単結晶領域Z、Zの間のC面成長する部分が単結晶低転位余領域Yであるが、ここではZが優勢でYは消滅している。
ストライプマスクを下地基板の上に形成して、その上から本発明の手法によって窒化ガリウムを成長させた成長後の複合基板の一部の斜視図。下地基板の上に窒化ガリウム結晶ができるがマスクが平行線状なので山谷(V溝)構造が多数できる。マスクの上V溝の底が欠陥集合領域Hであり、ファセットの下の部分が低欠陥単結晶領域Zである。低欠陥単結晶領域Z、Zの間のC面成長する部分が単結晶低転位余領域Yであり、…HZYZHZY…繰り返し構造を持っている。
本発明によって作製した窒化ガリウム基板の欠陥集合領域Hに350nmの紫外線を当てたときのホトルミネッセンスのスペクトル図。横軸はホトルミネッセンス波長(nm)、縦軸はホトルミネッセンス強度。360nmのピーク値を560nmのピーク値で割った360nm/560nmの発光強度比が1730/180=9.6である。
本発明によって作製した窒化ガリウム基板の単結晶低転位随伴領域Z(ファセット成長領域)に350nmの紫外線を当てたときのホトルミネッセンスのスペクトル図。横軸はホトルミネッセンス波長(nm)、縦軸はホトルミネッセンス強度。360nmのピーク値を560nmのピーク値で割った360nm/560nmの発光強度比が1750/90=19.4である。
本発明によって作製した窒化ガリウム基板のC面成長領域(単結晶低転位余領域)Yに350nmの紫外線を当てたときのホトルミネッセンスのスペクトル図。横軸はホトルミネッセンス波長(nm)、縦軸はホトルミネッセンス強度。360nmのピーク値を560nmのピーク値で割った360nm/560nmの発光強度比が70/160=0.44である。
ドットマスクを形成して本発明の方法で結晶成長させたときにファセットピットが発生しファセット面から内向きの突起が多数発生する様子を説明するためのピットの平面図。
ファセット面の内側の正方位(0001)結晶Z、Yとファセット面(11−22)の外側の反転方位(000−1)突起、欠陥集合領域Hの内部の結晶主軸が互いに全く反対であることを説明する図。
符号の説明
H 欠陥集合領域(反転方位領域)
Z 単結晶低転位随伴領域(ファセット成長領域)
Y 単結晶低転位余領域(C面成長領域)
K ZとHの間の結晶粒界
K’突起が結合されるときの不整合によってHの内部にできる結晶粒界
4 窒化ガリウム結晶
5 ピット
6 ファセット面
7 C面((0001)面)
8 ピットの稜線
11 線状転位集合束
13 モヤ状転位広がり
23 マスク(被覆部)
24 窒化ガリウム結晶
25 ピット
26 ファセット面
27 C面((0001)面)
29 露出部
63 マスク(被覆部)
64 窒化ガリウム結晶
65 ピット
66 ファセット面
67 C面((0001)面)
68 方位反転突起
69 露出部
70 多結晶微小粒子

Claims (43)

  1. 窒化ガリウムのエピタキシャル成長において、下地基板を準備し、下地基板の上にエピタキシャル成長を阻害する材料によって平行線状(ストライプ)または孤立点状(ドット)である所定のマスクパターンを部分的に形成し、マスクに覆われた被覆部とマスクに覆われない露出部を設け、その上から窒化ガリウムをエピタキシャル成長するに際して、その結晶成長の初期に、露出部ではエピタキシャル成長がなされるが、被覆部ではエピタキシャル成長がなされず、被覆部の端から露出部にかけて、窒化ガリウムのファセット面からなる斜面が形成され、その斜面から、露出部の窒化ガリウムとは極性が180度異なり反転した窒化ガリウムの突起が形成され、成長と共に露出部の窒化ガリウムの厚さが増加する一方、突起はマスクの被覆部とは接触しないで伸びて成長し、さらに被覆部の両側から突起の成長が進行し、当該マスク被覆部の上部中央付近で複数の突起が合体し当該マスク被覆部全面を覆い、さらに結晶成長の進行と共に、全体の厚さが増加し、当該マスク被覆部領域上にのみ、露出部とは極性の異なった極性反転領域Hを形成することを特徴とする窒化ガリウムの結晶成長方法。
  2. 窒化ガリウムの結晶成長の際に、成長温度400℃から600℃の低温である第1の温度で結晶成長した後、成長温度900℃から1100℃の第2の温度でエピタキシャル成長中にファセット面からなる斜面が形成され、その斜面から窒化ガリウムの突起が形成されることを特徴とする請求項1に記載の窒化ガリウムの結晶成長方法。
  3. マスクパターン上には、窒化ガリウムの微細な多結晶粒が付着していることを特徴とする請求項1または2に記載の窒化ガリウムの結晶成長方法。
  4. 窒化ガリウムのエピタキシャル成長の初期において、窒化ガリウムの極性の異なった極性反転領域がマスク被覆部全面を覆う段階の結晶成長速度を、30〜100μm/hとすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の窒化ガリウムの結晶成長方法。
  5. 下地基板を準備し、下地基板の上にエピタキシャル成長を阻害する材料によって平行線状(ストライプ)または孤立点状(ドット)であるマスクを形成し、マスクに覆われた被覆部とマスクに覆われない露出部を設け、窒化ガリウムをエピタキシャル成長させ、マスク被覆部には窒化ガリウム薄膜ができない状態を保ち、露出部にc軸が直上を向く(0001)窒化ガリウム単結晶膜を生成し、被覆部の端から露出部に向かって傾斜して立ち上がるファセット面を形成し、成長の初期にマスク被覆部に接触せず被覆部の上部へ伸びc軸が下を向いた(000−1)反転方位単結晶である突起をファセット面から突出するように生成し、露出部のファセットを維持しながら正方位(0001)窒化ガリウムを成長させるとともに、突起を伸長させて被覆部の上方で被覆部の両側から伸びてきた複数の突起を合体させ被覆部の上方に反転方位(000−1)単結晶領域Hを作り、露出部のファセット面を埋め込まないようにして、露出部の上に正方位(0001)のファセット面に続く単結晶低転位Z領域と、隣接する単結晶低転位領域Z、Zの間に平坦なC面を維持して成長する正方位(0001)のC面成長領域Yを生成し、反転方位単結晶Hとファセット成長した単結晶低転位領域Zの間に方位反転に伴う結晶粒界Kを生成し、反転方位単結晶Hの内部には突起が合体したときの不整合による結晶粒界K’を生成し、さらに気相成長を続けファセットを埋め込まずZ、Y、H領域が厚みを増すようにし、…HZYZH…構造、或いは…HZHZ…構造の窒化ガリウムと下地基板の複合基板とし、下地基板とマスクを除去し、表面を研磨し、…HZYZH…構造、或いは…HZHZ…構造の窒化ガリウム自立基板を得ることを特徴とする窒化ガリウム基板の製造方法。
  6. 窒化ガリウム以外の材料の基板の上に、薄い窒化ガリウム薄膜をエピタキシャル成長させたものを下地基板とすることを特徴とする請求項1または5に記載の窒化ガリウム基板の製造方法。
  7. ファセット面が上向きに成長することによりファセット面に存在した転位をファセット面集合の底へと集結し、反転方位単結晶Hと結晶粒界Kに集めて、一部は消滅させ残りは反転方位結晶Hと結晶粒界Kに永久的に拘束して、単結晶低転位随伴領域ZとC面成長領域Yの転位を減少させるようにし、反転方位単結晶Hが欠陥集合領域として機能するようにしたことを特徴とする請求項5または6に記載の窒化ガリウム基板の製造方法。
  8. 下地基板の上でマスクに覆われていなかった露出部の上には連続的に上面がガリウム面である正方位(0001)の単結晶Z、Yが、マスク被覆部の上には上面が窒素面である反転方位単結晶Hが連続的に成長することを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の窒化ガリウム基板の製造方法。
  9. 露出部の上で被覆部に隣接する部分に成長したファセット成長領域Zは{11−22}、{1−101}ファセット面を上面に保ちながら成長し、ファセット成長領域Z、Zに挟まれるC面成長領域Yは平坦なC面(0001)を上面に保ちながら成長し、被覆部の上で合体した突起の上に成長した反転方位領域Hは、より低い傾き角の上面を保ちながら成長することを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の窒化ガリウム基板の製造方法。
  10. 反転方位領域Hのより低い傾きの上面は、水平面に対して25度〜35度傾斜したファセット面であることを特徴とする請求項9に記載の窒化ガリウム基板の製造方法。
  11. 反転方位領域Hのより低い傾きのファセット面は、{11−2−6}面または{11−2−5}面であるか、あるいはそれからわずか(10度以内)に傾いた別のファセット面であることを特徴とする請求項10に記載の窒化ガリウム基板の製造方法。
  12. 成長の初期にファセット面から伸長する突起は反転方位をもち、上面は低い傾き角の{11−2−6}面または{11−2−5}面であるか、あるいはそれからわずか(10度以内)に傾いた別のファセット面であり、下面はより大きい傾き角の{11−22}ファセット面であることを特徴とする請求項9に記載の窒化ガリウム基板の製造方法。
  13. 成長初期に反転方位をもつ突起が合体したことによってできた不整合面から連続して伸びる結晶粒界(K’)を反転方位領域Hの内部に保持しながら成長し、内部の結晶粒界(K’)も集結した転位の一部を打ち消し、残りを捕獲拘束することを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の窒化ガリウム基板の製造方法。
  14. 下地基板の上に形成するマスクは一定幅wをもった被覆部をピッチpで平行に並べた平行線形状(ストライプマスク)であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の窒化ガリウム基板の製造方法。
  15. ストライプマスクの被覆部の幅はw=5μm〜100μmであり、ピッチはp=100μm〜1000μmである事を特徴とする請求項14に記載の窒化ガリウム基板の製造方法。
  16. ストライプマスクの被覆部、露出部はGaN結晶の<1−100>方向に伸びるものであることを特徴とする請求項14に記載の窒化ガリウム基板の製造方法。
  17. 下地基板の上に形成するマスクは一定寸法dをもった孤立被覆部をピッチpで規則正しく並べた孤立点集合形状(ドットマスク)であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の窒化ガリウム基板の製造方法。
  18. ドットマスクの孤立被覆部の寸法はd=5μm〜100μmであり、ピッチはp=100μm〜1000μmである事を特徴とする請求項17に記載の窒化ガリウム基板の製造方法。
  19. 窒化ガリウムの結晶成長の際に、成長温度400℃から600℃の低温である第1の温度で結晶成長した後、成長温度900℃から1100℃の第2の温度でエピタキシャル成長中にファセット面が形成され、そのファセット面から窒化ガリウムの突起が形成されることを特徴とする請求項5に記載の窒化ガリウム基板の製造方法。
  20. マスク上には、窒化ガリウムの微細な多結晶粒からなる層が堆積していることを特徴とする請求項5に記載の窒化ガリウム基板の製造方法。
  21. 成長の初期において低温で窒化ガリウムを成長したことによって被覆部の上に付着した微小な窒化ガリウム多結晶粒子が、ファセットと同じ方位をもった結晶がファセット下部から被覆部へ水平に伸びるのを防ぎ、方位反転した突起が被覆部から離隔してファセット途中から伸びるようにする作用を有することを特徴とする請求項5に記載の窒化ガリウム基板の製造方法。
  22. 窒化ガリウムのエピタキシャル成長の初期において、窒化ガリウムの極性の異なった反転方位(000−1)単結晶領域Hがマスク被覆部全面を覆う段階の結晶成長速度を、30〜100μm/hとすることを特徴とする請求項5に記載の窒化ガリウム基板の製造方法。
  23. マスク材質は、SiO、SiN、Al、AlN、ZrO、Y、MgOの何れかであることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の窒化ガリウム基板の製造方法。
  24. 下地基板は、サファイヤ単結晶、Si単結晶、SiC単結晶、MgO単結晶、ZnO単結晶、GaAs単結晶、InP単結晶、GaP単結晶、GaN単結晶、AlN単結晶の何れかである事を特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の窒化ガリウム基板の製造方法。
  25. 予め意図された複数の位置に予め意図された寸法形状の反転方位(000−1)をもつ単結晶である方位反転領域Hが存在し、方位反転領域Hに隣接して予め意図された寸法の複数の正方位(0001)をもつ単結晶低転位領域Zが連続して存在し、隣接する複数の単結晶低転位領域Z、Zに挟まれた(0001)方位単結晶であるC面成長領域Yが存在し、方位反転領域Hと単結晶低転位領域Zの境界に方位反転による結晶粒界Kを有し、方位反転領域Hの内部にも不整合面からなる結晶粒界K’を有し、結晶粒界K、K’において多数の転位を捕獲拘束しており、予め意図された寸法形状の…ZYZHZYZH…構造、あるいは…ZHZH…構造を有することを特徴とする窒化ガリウム基板。
  26. 方位反転領域H内部の結晶粒界K’は反転方位結晶を突き合わせた不整合面であり方位に5゜以内のずれがあることを特徴とする請求項25に記載の窒化ガリウム基板。
  27. 反転方位領域H、単結晶低転位領域Z、C面成長領域Yの、350nm帯の光に対する吸収係数は1000〜10000cm−1であり、550nm帯、650nm帯の光に対する吸収係数は1〜10cm−1であり、450nm帯に対する反転方位領域H、単結晶低転位領域Zの吸収係数は1〜10cm−1、C面成長領域Yの吸収係数は10〜100cm−1であって、吸収係数のY/Zの比およびY/Hの比は5〜20であることを特徴とする請求項25に記載の窒化ガリウム基板。
  28. PO:HSO=1:1のエッチング液に対する270℃でのエッチング速度が、反転方位領域Hにおいては10μm/時より速く、単結晶低転位領域Z、C面成長領域Yにおいては0.1μm/時より遅く、エッチング速度のH/Yの比、H/Zの比は100以上である事を特徴とする請求項25に記載の窒化ガリウム基板。
  29. (0004)面からのX線回折の半値幅(FWHM)が、単結晶低転位領域Z、C面成長領域Yにおいて10〜1000アークセカンドであり、反転方位領域Hにおいて100〜3600アークセカンドであり、半値幅のH/Y比およびH/Z比が3〜10であることを特徴とする請求項25に記載の窒化ガリウム基板。
  30. 電気抵抗率が、反転方位領域H、単結晶低転位領域Zにおいて10−4〜10−1Ωcmであり、C面成長領域Yにおいて10−2〜10Ωcmであり、電気抵抗率のY/H比およびY/Z比が10〜10であることを特徴とする請求項25に記載の窒化ガリウム基板。
  31. 紫外線を照射したときのホトルミネセンススペクトルには360nmと560nmにピークをもち、360nmのピーク値を560nmのピーク値で割った360/560比が、反転方位領域H、単結晶低転位領域Zにおいて1〜1000であり、C面成長領域Yで0.01〜10であって、ホトルミネセンスの360/560比のY/H比およびY/Z比が10〜10である事を特徴とする請求項25に記載の窒化ガリウム基板。
  32. 反りの曲率半径が600mm〜50000mmであることを特徴とする請求項25に記載の窒化ガリウム基板。
  33. C面成長領域Yの酸素濃度は1018cm−3以下で、単結晶低転位領域Zと反転方位領域Hの酸素濃度は1016〜1020cm−3であって、酸素濃度のY/H比およびY/Z比は10−1〜10−5であることを特徴とする請求項25に記載の窒化ガリウム基板。
  34. 一辺が10mm〜160mmで、厚さが5μm以上2000μm以下である矩形形状である事を特徴とする請求項25に記載の窒化ガリウム基板。
  35. 直径が10mm〜160mmで、厚さが5μm以上2000μm以下である円形形状である事を特徴とする請求項25に記載の窒化ガリウム基板。
  36. 反転方位領域Hと、C面成長領域Yの上面における幅が、下面に於ける幅よりも、厚みの0.001〜0.1倍だけ狭くなっており、単結晶低転位領域Zの上面に於ける幅が下面に於ける幅よりも厚みの0.001〜0.1倍だけ広くなっていることを特徴とする請求項25に記載の窒化ガリウム基板。
  37. 転位を捕獲拘束している結晶粒界K、K’の転位密度は10cm−2〜10cm−2であり、反転方位領域Hの転位密度は5×10cm−2〜5×10cm−2であり、単結晶低転位領域Zの50%以上において転位密度は5×10cm−2未満であり、C面成長領域Yの60%以上において転位密度は5×10cm−2未満であり、Z領域とH領域の転位密度の比率Z/Hは10−3〜10−1で、Y領域とH領域の転位密度の比率Y/Hは10−3〜10−1であることを特徴とする請求項25に記載の窒化ガリウム基板。
  38. 反転方位領域H、単結晶低転位随伴領域Z、C面成長領域Yが平行に存在する窒化ガリウム結晶であって、熱伝導度は平行方向、垂直方向に差異が無く、等方的であり、150W/mK〜220W/mKであることを特徴とする請求項25に記載の窒化ガリウム基板。
  39. 反転方位領域Hのビッカース硬度が1200〜1500Hv、単結晶低転位随伴領域Zのビッカース硬度が1200〜1800Hv、C面成長領域Yのビッカース硬度が1300〜1800Hvであり、C面成長領域Yのビッカース硬度が最大であることを特徴とする請求項25に記載の窒化ガリウム基板。
  40. 研磨した窒化ガリウム結晶であって、キズ密度については反転方位領域H、単結晶低転位随伴領域Z、C面成長領域Yによる差異がなく、0〜1×10本/mmであることを特徴とする請求項25に記載の窒化ガリウム基板。
  41. 反転方位領域H、単結晶低転位領域Z、C面成長領域Yは平行線状に…HZYZHZYZ…という順で繰り返し存在し、反転方位領域の幅は5μm〜100μmであり、繰り返しのピッチは100μm〜1000μmである事を特徴とする請求項25に記載の窒化ガリウム基板。
  42. 反転方位領域H、単結晶低転位領域Z、C面成長領域Yは<1−100>方向に伸びるものであることを特徴とする請求項41に記載の窒化ガリウム基板。
  43. 反転方位領域Hは5μm〜100μmの寸法をもつ孤立した複数の領域で100μm〜1000μmピッチで規則正しく並んでおり、単結晶低転位領域Zは孤立した反転方位領域Hを囲んで存在する複数の領域で、C面成長領域Yは連続した一つの領域であって全ての単結晶低転位随伴領域Zと接触していることを特徴とする請求項25に記載の窒化ガリウム基板。
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